part4
水口がプラスチック。柄杓の置かれてある二本の長竹も、実はプラスチック。きれいに角の丸くなった水穴も、いかにも機械でくり抜きましたといった味気なさです。
つまりは、観賞とは丸っきり対極の位置にある手水鉢です。
そのくせ図体がでかくて、やけに堂々としているところが、この手水鉢の不思議なところです。妙に自信たっぷりに見えるんですよ。
門をくぐってすぐ左、目立つ位置に置かれてあるところも、“俺って凄いだろ?”という強いアピールを感じます。
えーと、いったい、その自信はどこからやってくるの?
【奈良:福智院にて】
かわいらしい手水鉢だなと思います。周囲で色を添える椿の花や、上に乗っかっている草花のアクセントなど、華やかな雰囲気が一際目を惹きます。手水鉢自体は無粋と言ってもいいほどシンプルなものなんだけど、舞台装置がよく出来てるんですね。
それは、まるでこの手水鉢が見ている夢のよう。ロマンチックなおとぎの国。無粋な手水鉢も、ここでは美しいお姫さまです。
いつかこの手水鉢が長い眠りから覚めたとき、ささやかに美しいこの光景もぱっと消えてしまうのかもしれません。
【京都:雪舟寺にて】
デザインコンセプトは“花開く”と言ったところでしょうか。大変洒落たセンスの手水鉢です。それも感覚が新しい。
僕は“若者の手水鉢”と名づけました。それも最新のファッションに身を包んだトレンドな若者です。基本が真四角の手水鉢界において、くねくねと曲線ばかりで形成されるデザインはまさに新感覚派。既成概念にとらわれない、イマドキの若者なのです。
【和歌山:紀三井寺にて】
何気なく手水鉢で手を洗っていたら、いつの間にやら目の前に龍の姿が!!
どこからともなくやってきて、今まさに手水鉢の上にあがったところ。
のそっ、のそっ、と動きは緩慢ですが、いつ飛び掛ってくるかわかりません。
さあ、目が合いました。いよいよ、絶体絶命の大ピンチです!
【奈良:法隆寺にて】
まったく奇を衒うことのない正統派手水鉢です。こういうなんでもないような手水鉢でも、眺めているといいことが起こるというお話を一つ。
ほら、水口のところにトンボが止まっているでしょ? くるくるる〜と飛んできてそっと止まったんですよ。僕は「まだ、飛ばないで」と思いながら、そっとカメラを構えました。そして、一枚、二枚。
それからも、トンボはそこに止まっていました。しばらくの間、トンボと僕は仲良く手水鉢を眺め続けたのです。
【京都:二尊院にて】