part7
流れる雲に、ひょうたんが乗っかったような、ほわわっとした手水鉢。どっしりとしたものが多いこの業界において、ある意味異端の手水鉢といえるかもしれません。
そのうちに、するするるとどこかに滑って流れて、どろんと消えてしまいそう。
後に残された水口は、ただ呆然として水を地面に落とし続けるばかり。気まぐれに旅に出る手水鉢なんです。また戻ってきますから、どうか許してやってください。
【京都:霊雲院<東福寺塔頭>にて】
ごうごうと勢いよく燃え盛る炎を背に、不動明王がしっかりと見守る手水鉢。
でも。
随分炎が近いようだけど、まさか手水が熱湯になってるなんてことはないだろうね?
水口が妙に弧を描いているんだけど、まさか熱で曲がってしまったなんてことはないだろうね?
…柄杓で水をすくって、そっと指をつけてみます。
大丈夫、冷たい!
【広島:明王院にて】
地味ながら、大変美しい手水鉢です。
水口と柄杓、そして柄杓を置く二本の竹棒がピタッとあるべき位置に収まっています。これ、見たときちょっと感動しました。出来すぎだよ〜って。
最小限のパーツで、最大の美を紡ぎだす。その構成力は、まさに完璧。
考えに考えて作られた構成なのかな。たぶん、何気なく考えた結果なんだろうな。柄杓なんて、ホント自然な感じで置かれてる。
何かが欠けても何かが加わっても、世界は壊れてしまう。
“シンプル・イズ・ベスト”を絵で表現すると、まさしくこういうことになるんだろうな。
【京都:常照寺にて】
平安神宮の巨大手水鉢。応天門の前に設置された大変人目を引く手水鉢です。
夏に見ると“プールみたいだなぁ”なんて思ったりします。冬も間近の今の時期だと“なんだか温泉みたいだなぁ”と思います。手ぬぐいを頭に乗っけたオヤジたちが、いい気分で“いい湯だな〜”なんて唸ってそう。
応天門を眺めながら、温泉であったまる。それって、すごく贅沢な気持ちになれそうじゃないですか?
【京都:平安神宮にて】
にょきにょきっと生えてきたような不思議な手水鉢。根来型石手水鉢という、大変由緒あるものだそうです。
それにしてもモダンなデザインだな、と思います。なんとか現代美術館みたいなところに行ったら、“無題”なんてタイトルつけて置いてそうです。
けど、僕がタイトルをつけるとしたら“おしゃれ灰皿”だな。ほら、よく駅のホームなんかにおいてあるステンレスの円柱灰皿あるじゃないですか。実は、最初に見たとき、真っ先にあのステンレス灰皿を思い出したんですよ。
明るい雰囲気を持つ名庭のはじっこにちょこんと置かれています。いいバイプレイヤーぶりを発揮しています。
【和歌山:根来寺にて】