訪問日:2006/05/21
昨春に初めて鶴林寺を訪れたのですが、のんびりとした境内の様子にすっかりファンになってしまいました。お寺を取り巻く公園、さらに周囲の町並みまでもがまどろみの中で時を過ごすような、幸福感に満ちた世界です。
前回はバスで門前まで行ったのですが、この日はいいお天気ということもあり山陽電鉄の駅からてくてく歩いていくことにしました。強い日差しの中、時折自転車に乗った人や犬を連れた人とすれ違う、何気ない日常の風景です。でも、その日常がとても気持ちいい。そんな優しい空気に支えられた美しいお寺、それが鶴林寺です。
本堂は、正面左右の扉を全開にしてくれているので、風通しがとてもよくなっています。この日のように晴れた日なら、堂内からのどかな境内を眺めつつ、和やかな雰囲気に浸ることが出来ます。
普段お寺で本読みをするときは、お堂の縁側で庭を眺めながらとか、境内に置いてあるベンチでとかになるのだけれど、鶴林寺の本堂にはちょうどいい椅子が置いてあります。僕はそこに腰掛けて、静かに読書を始めました。
不思議ですね。外を歩いているときには風なんてまるで吹いていなかったのに、この本堂にいるときだけは緩やかな風が通り抜けていくんですよ。おかげで、とても気持ちのいい読書が楽しめました。
風もお参りに来てたってわけか。後になって、そんなことを思ったりしました。
本堂と並ぶ国宝の建築が太子堂です。国宝といえども、どちらかというと目立たない地味な佇まいです。
でも、ささやかに美しいお堂です。品のある色合いや形には、まるで食べるのがもったいなくなってくるような高級和菓子のような趣があります。じっくりと愛でるように眺め、そしてお堂の縁側に座って一休み。落ち着きのあるお堂だけに、ここにいると気持ちがすぅーっと落ち着きます。温かい日差しもほのぼのと気持ちいい。
この太子堂にしろ本堂にしろ、およそ気取りのない国宝ぶりが魅力なんだなぁ。
さて、境内の隅のほうに新薬師堂というお堂があります。中に入ってビックリ、とっても大きな薬師三尊像がどどーんと鎮座されています。その周囲では、あでやかな十二神将がしっかりと警護の目を光らせています。
なんでも本堂の仏さまは何十年かに一度しか公開されない秘仏なので、代わりに誰でも見ることの出来る仏さまをと、江戸時代に作られたものだそうです。その大きさはとても迫力があるけれども、道端に咲く花を見てふと和んだときのような、優しいお顔をされています。ご本尊を見ることが出来なくても、代わりにホントにいい仏さまがいらっしゃいます。鶴林寺の長い歴史から見ればまだまだ新入りの仏さまですが、その幸せオーラはこのお寺にまさしくピッタリだと僕は思うのです。
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