part4
ねえ、お坊さん。
いつ訪れても多宝塔を見上げているけど、そんなにお気に入りなんですか?
実は、僕も大好きなんですよ。特に今日のような青空の日の多宝塔が。だって、多宝塔って大きく翼を広げた鳥みたいじゃないですか。
え、そんな単純な発想じゃ困るって? そう言えばお坊さんは、大雨の日でも多宝塔を見上げてますね。
ねえ、お坊さん。
お坊さんは、いつもこの多宝塔に何を見てるの?
【京都:本法寺にて】
祇王寺は緑色が大好き。上も下も右も左も、境内のあらゆるところを緑グッズが埋め尽くしています。ちょうどそれは、女の子が部屋中をキティちゃんやくまのプーさんで埋め尽くすのと同じこと。祇王寺は日本一のグリーン・コレクターなのです。
大方、境内は緑でいっぱいになりました。後は建物を残すのみ。
さあ、屋根を埋め尽くすのはゼニゴケがいいかしらスギゴケがいいかしら、そんなことに頭を悩ますのもまた楽しい、最近の祇王寺のコレクター魂なのです。
【京都:祇王寺にて】
薬師寺の大講堂。シンプルででっかくて、見ていてとても気持ちのいい建物です。
当然大講堂はとっても誇らしく思っているのかといえば、実はちっとも満足していませんでした。だって、すぐ真上に広がる空を見てください。いくら大講堂とはいえ、そのスケールの大きさには到底かなわない。それはいつも共にある存在なだけに、自分の大きさなんてまだまだだと嫌でも思わされてしまうのです。
今のままでは絶対に飽きたらない。空のようになりたい、空になりたいといつも大講堂は思っています。
ことに鮮やかな青空の広がる気持ちのいい一日、大講堂は悔しさと憧れの混ざった複雑な気持ちで、ほっと切ないため息を漏らすのです。
【奈良:薬師寺にて】
雌雄を決する時がやってきました。
強い風が吹き荒ぶ中、その瞬間は刻一刻と迫ってきます。何の因果か鳳凰堂の屋根の上、向かい合う二羽の鳳凰。
勝負は一瞬、おそらく先に動いた方が負けです。抜き差しならぬ状況の中、互いに微動だにせず、ただ不気味な沈黙だけが辺りを支配しています。
積年の恨みか恋の争いか、運命の決闘はいよいよ緊張の極限に達しているのです。
【京都:平等院にて】
僕、寂光院の仮本堂です。本堂が火事で焼けちゃったので、新しい本堂が出来上がるまでの間、及ばずながら本堂の代わりを務めさせてもらっています。
だけどすぐ後ろを振り返れば、僕なんかよりもずっと立派な新本堂が、もう形を整えつつあります。僕の役目ももうあと少し。新しい本堂がお目見えする頃には、もうここに僕の姿はないことでしょう。
この先、年月が経てばもう誰も僕のことを覚えていないかもしれません。だけど仮本堂を勤めていた短い間、僕の前で手を合わせてくれた人たちの姿を僕は忘れることはないでしょう。
願わくば、その人たちが何かの折に僕のことを思い出してくれたら、僕はそれで幸せです。
【京都:寂光院にて】