訪問日:2005/04/24
芳春院の門をくぐると、真っ直ぐに力強く伸びる参道が視界に飛び込んできました。向こうに、庫裏がちょこんと頭だけを覗かせているのが見えます。
参道を味わうように、ゆっくりと歩きました。道の両脇には、色鮮やかな緑。春を歌う鳥の声。暖かい陽気。身体全体から春が沁みこんでくるような気がしました。
この参道だけで、僕はすっかり芳春院のことが大好きになっていました。春を歩くってこういうことなんだな、と思いました。
大徳寺には、数多くの塔頭寺院があります。けれども、その多くが非公開。門前から中を覗きこむだけでおしまい、というお寺ばかりです。
芳春院も普段は非公開なのですが、この日は特別公開の期間中でした。
何があるのか、どんなお寺なのか、予備知識はまるでありませんでした。実をいうと、芳春院というお寺があることすら、この日初めて知ったくらいなのです。
何の期待も持たずにふらっと寄ったお寺です。だけど、こういうときこそ、感動は不意打ちでやってくるものです。
方丈の前庭は、白砂の海の中をたくさんの大きな石が気ままに漂う、大らかな枯山水庭園でした(撮影禁止なので、写真はありません)。
晴れやかな春の日には持って来いの、のどかな庭。石たちも、春の陽気に誘われてリラックスムードです。見ているだけで、うつらうつらと眠気に襲われます。こんなところで寝てしまったら、夢の中でもまた寝てしまいそうです。
耳を澄ましても、境内は静寂の中。もしかして、お寺もあまりののどかさに眠ってしまってるんじゃないかなぁ、なんて思いました。
方丈の裏に回ると、今度は池泉回遊式庭園が現れました(こちらも撮影禁止です)。
池に臨む形で、呑湖閣(どんこかく)というシャレた建物が建っていました。紙細工で作られたような華奢な風貌と、江戸初期に作られたとは思えないモダンなデザインが僕の心を射抜きました。
芳春院は、たくさんの寺宝に囲まれた美しいお寺でした。参道や前庭、呑湖閣。だけど、このお寺の最も美しい寺宝は、きっと春なんだと思います。春をこれほど美しく描いて見せてくれるお寺なんて、他にはないもの。
春を謳う喜びが境内の至るところから溢れ出てる、そんなお寺だったんですよ。