金福寺(京都市左京区)

訪問日:2006/03/29

受付のおじさん、お休み中

金福寺の小さな山門をくぐって拝観の受付の前に立つと、中ではおじさんが気持ちよさそうに舟を漕いでいらっしゃいました。悪いなぁと思ったんですけど、ガラス窓をこんこんと叩いて起きていただきました。
おじさんは、慌てて目を覚ましました。“あぁ、いらっしゃい”。
でも、眠たくなる気持ちもよくわかるんです。こんなにのどかで静かなお寺だもの。
できれば僕も、おじさんの隣で一眠りしていきたい。そんな気持ちでしたよ。
この日は、朝から遠慮がちな雨。こんな小寺には、しとしとと降る雨がよく似合います。

日本昔ばなしの世界

金福寺の庭を見ていると、“むかぁしむかしの、ことじゃった…”と言ってみたくなります。昔テレビでやっていた「まんが日本昔ばなし」を思い出すんですよ。
植え込みを山と見立てて、山、山、山が重なるその上にぽつんと建つ素朴な民家。なんだか、山の奥のそのまた奥の、“小さな里”って感じなんですよ。“そうそう、あのアニメの舞台はいつもこんな雰囲気だったよ”と思います。
紅梅が、たくさんの花を咲かせてきれいでした。どうやら今日の昔ばなしは、“はなさかじいさん”のようです。

激動の人生の果てに

なんでも、金福寺は井伊大老のスパイを勤めていた村山たか女という女性が晩年を過ごしたお寺だそうです。大河ドラマにもなった有名な人らしいのですが、あいにく僕はこの人のことについて何も知りません。
激動の人生を送った人ゆえに、静寂に包まれたこのお寺では、さざ波のように穏やかな気持ちで晩年を送ることが出来たのではないでしょうか。お堂の縁側に座って静かにこの庭を眺めるたか女さんの姿が、目に浮かぶようです。

蕪村一門のささやかな句会

金福寺は芭蕉や蕪村といった文学者ともゆかりがあって、境内の一等高いところには蕪村のお墓も建っています。周囲には門人たちの墓も建っています。さらには芭蕉を始め、さまざまな俳人の句碑も立っています。おそらく、土の下では蕪村を中心にして日毎ささやかな句会が催され、生前に負けず劣らずの名句が次々と生み出されていることと思います。
高台から美しい京都の町並みが、一望の下に見渡せます。この美景を背景に催される、蕪村一門の句会。なんだか寂しげなこのお寺が、賑やかで楽しいお寺のように思えてきました。

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