釘抜地蔵<石像寺>(京都市上京区)

訪問日:2006/05/14

下町の社交場

西陣を訪ねると、ふと寄ってみたくなるのが釘抜地蔵です。
観光寺院ではないので、拝観料は一切要りません。中に入ると、いつも人で賑わっています。特におじいちゃんおばあちゃん。境内に設置された椅子に腰掛けて、世間話に花を咲かせています。どうやら、ここはご老人のいい社交場になっているようです。
僕も場違いな観光客ではありますが、椅子の空いているところにお邪魔して座らせていただきます。別段下町で育ったわけでもないのに、こうしているとなんだかとても懐かしい気持ちになります。

気さくな本堂

本堂では絶えず参拝の人が手を合わせていて、いつでもお線香の煙がもくもくとあがっています。こんな庶民的なお寺に漂うお線香の匂いは、朗らかな信仰の匂いとでも言うのでしょうか、とっても心地よいですね。
お堂の真ん中に、小さな仏さまが立っていらっしゃるのが見えます。周りにはお供え物だとか蝋燭だとか、なんだかんだでごちゃごちゃしているように見えました。その雑多な雰囲気も、また下町っぽくていいものです。

たくさんのお礼に囲まれて

さて、釘抜地蔵といえばなんといっても本堂の周囲をぐるりと埋め尽くす不思議な絵馬です。
写真を見ていただければわかるのですが、絵馬には長い釘2本と釘抜きが針金で留められています。もともとは2本の釘にまつわる伝説があるそうですが、今は“苦を抜く”が転じて“釘抜き”になったという逸話の方がよく知られているようです。
絵馬をよく見ると、上部に大きく“御礼”と書かれています。そう、ここに絵馬を納めていくのは、みんな願が叶った人ばかりなのです。この本堂は、たくさんのお礼に囲まれた美しくも幸せな世界なんですよ。

いたるところで会話が始まる

僕が絵馬を熱心に眺めていると、出し抜けにおばちゃんに声をかけられました。“えっ”と思う間もなく、おばちゃんは矢継ぎ早に僕にいろんなことを教えてくれます。釘抜地蔵がいかにご利益があるか、この絵馬はどういう意味があるのか、全国から人が集まってくること、などなど。
僕とおばちゃんが話してると、そこにまた新たなおばちゃんが加わって、また別の話題が始まります。そこへまたおばちゃんが加わってきます。僕がこっそり抜けても、おばちゃんたちはそのまま会話を続けています。きっと、それが釘抜地蔵の日常なんでしょうね。

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