訪問日:2004/11/21
この日、正法寺で一番長い時間を過ごしたのは、客殿の中にいる時でした。
客殿にはちょうど読書に適した長机が置いてあって、僕はここでいつものように文庫本を長々と読み耽っていたのです。
目の前には、“鳥獣の庭”という大変眺めのいい庭が広がっています(3枚目の写真)。僕が本を読んでいる間にも、さまざまな人がやってきて、ここで楽しい時間を過ごしていきました。
今回は、そんな人々の楽しげな様子を綴っていこうという趣向です。
鳥獣の庭という一風変わった名前は、石がすべて動物の形をしていることに由来しています。どの石が何の動物を表しているかという対応図も、客殿の廊下にきちんと用意されています。
幼い子供を連れた若い夫婦が、この庭を見に来ていました。子供がこの庭を見てはしゃいじゃって、とても微笑ましい光景でしたよ。親子で庭と対応図を照らし合わせて見ていたのですが、子供が「ふくがえる似てる!」だとか「ゾウ似てない!」だとか嬉しそうに論評を加えていくわけです。
お寺の庭でこれほど子供が喜んでいる様子を見たことがなかったので、ちょっと新鮮な気持ちを抱きました。
外国の人も来てました。一緒に来ていた日本の人に対応図の説明を受けながら、庭を楽しんでいるようでした。
「フロッグ、フロッグ(=かえる)!」なんて声が聞こえてきます。聞いている僕の方が楽しくなってきます。
このように様々な人がこの庭を楽しんでいたのですが、肝心の僕はほとんど庭を見ていなくて、本を読みながら訪れる人の反応を楽しんでいたばかりでした。鳥獣の庭は、どんな人からも美しい反応を引き出す名庭園です。だから、僕は訪れる人を見ているだけで充分に満足していたのです。
これまでにもいろんな庭園を見てきました。難しい哲学を投げかける庭園もあれば、広大な敷地に絵の具を振りまいたような鮮やかな庭園もありました。
だけど、これほど人の反応がストレートに伝わってくる庭園は初めてでした。誰もが平等に楽しめて、誰もが楽しい想い出を胸に帰路につきます。確かに、この庭は名庭です。
昭和時代に作られたあまり歴史のない庭です。けれどもこれから先、この庭はきっと美しい歴史を築いていくことでしょう。