相国寺(京都市上京区)

訪問日:2006/03/12

コワモテだけど愛嬌がある

相国寺の法堂の天井には、他の禅寺の例に漏れず大きな龍が住んでいます。眼光鋭く、堂内のどこに立っても、こちらをギロリと睨みつけてきます。
でも、呼べばすぐに返事をしてくれる愛嬌もあります。コミュニケーションは簡単です。龍の真下でぽんと手を叩く。間髪を入れずにぱぁんと龍が返事をしてくれます。いわゆる“鳴き龍”というやつです。お堂の残響を上手く利用した面白い仕掛けです。
ぽん、ぱぁん、ぽん、ぱぁん。
楽しいコミュニケーションが続きます。

そして息子もやってきた

境内の隣には大きな大学が建っていて、時折学生たちが談笑しながら、あるいは自転車を漕ぎつつ通り抜けてきます。亡き父もちょうどこの大学に通っていて、このお寺に幾度となく遊びに来ていたという話をしていたのを思い出します。
きっと父は、この広々とした境内を気持ちよく歩いたことでしょう。落ち着いた趣のあるお寺が大好きな人でしたから。
頻繁にここを訪ねたその無口な学生のことを、相国寺はちゃんと覚えてくれているでしょうか。それから何十年経ったか知らないけれど、無口な学生の無口な息子が、またこうやって広々とした境内を気持ちよく歩かせていただいていますよ。

なぁんにもない

方丈の前庭は、すごいなと思います。いつ見ても、白砂が広がっているだけのなぁんにもなしだ。
なぁんにもなしでも、ちっとも不安そうじゃない。なぁんにもなしでも、ちっとも欲しがるそぶりがない。
そして、この庭はなぁんにもなしで何百年もこのままやってきた。それって、すごいことだと思います。
何にもなくて、それでいて悠然としていられる。そんな風に生きていけたら、それが一番理想なんじゃないだろうか。この庭を見ていると、ふとそんなことを思います。

相国寺の清涼剤

前庭とは打って変わって、賑やかなことになっているのが裏方丈庭園です。明るい緑に包まれた陽気で立体的な庭です。
いつのことだったか、この庭にひらひらと舞いこんできたモンシロチョウを見て、羨ましいなと思ったものです。だって、チョウだったら、この庭を真上から眺めたり遠くから眺めたりできるもの。なんなら庭の真ん中に降り立って、そこいらを歩き回ったっていいんだから。
僕はただの人間だから、廊下を行ったり来たりするだけです。それだけでも、爽やかなこの庭の楽しさは充分に満喫できます。ストイックな禅刹の一抹の清涼剤。それが、この裏方丈庭園です。

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