訪問日:2005/11/06
新薬師寺から白毫寺へと向かう道程が、昔から大好きでした。
くすんだ土壁の家が並ぶ美しい小路は、子供の頃父に連れられて歩いた当時と何も変わっていません。確かあの時は、白毫寺で不思議な形の土鈴を買ってもらったんだっけ。
旅愁という美しい日本語があるけれど、旅の愁いはいつもこの道を歩いている僕を優しく訪ねてくれます。ことに秋。ほんのりと寂しいこの道程は、少し肌寒い初秋の頃に歩くのが一番合っているような気がします。
本堂の縁側に座って、いつものように読書。白毫寺の本堂は静かだし落ち着きもあり、本を読むのに最適の空間を提供してくれます。
何時間くらいそこに座っていたのかよくわからないのだけれども、久しぶりに文庫本を一冊まるまる読破してしまいました。
ああ、もう境内をゆっくり見て回る時間がないや。そう思ったけれども、まあさほど残念というわけでもない。充実した読書も、僕にとっては寺社巡りの醍醐味の一つなのです。
たぶんこの先、この本を手に取るときは、白毫寺のことを思い出すんだろうな。
始終穏やかな風の吹く白毫寺の境内ですが、宝蔵に入ると閻魔さまや太山王などおっかない仏さまがたくさんいらっしゃって、ぎょぎょっとします。
目をかっと見開いて大きな口をぐわっと開けて、ものすごい形相で睨んでいます。顔を合わせるやいなや叱られるんだから、たまったもんじゃない。
僕はとっても気が弱いので、こんな仏さまの前に引っ張り出されたら、何も悪いことしてなくても自分の舌を引っこ抜いて、“どうもすいませんでした”なんて自分から差し出してしまいそうです。悪いことは出来ないな。このおっかない仏さまたちを見ていると強く思います。
白毫寺には、昔からネコがいます。
天気のいい晴れた日には、本堂の縁側で昼寝なんかしてちょっとやそっとの音ではびくともしない。とっても人馴れしたネコなんです。
この日は門前の石段のところにちょこんと座っていました。カメラを向けても、「それが何か?」といった風情で、まるで動じない。
シャッターを切ると、ぱしゃっとフラッシュ。しまった、フラッシュ点けたままだった! これはとってもいけないことだ。ごめん、ネコくん。
それでも、やっぱりまるで動じないネコ。いや、君はたいした大物だよ。
なんとなく、この大物ネコくんを先ほどの閻魔さまと対決させたいなと思いましたね。