訪問日:2006/03/05
斑鳩のヒロイン、中宮寺。このお寺の持つしっとりとした優しさ、温かみは可憐な一輪の花を思わせます。
小さな境内です。ゆっくり歩いても、ほんの10分もあれば境内のすべてを回れてしまいます。でも、その10分が限りなくのどかで美しい。きれいに手入れされた庭木や草花、のびのびとした建物、大きな空。いつ来ても、どこに目を向けても、清々しいきれいな境内なんです。ここに来ると、いつでも気持ちよく見ていただこうという、お寺の人の気持ちがよく伝わってきます。
ざくざくと砂利道を歩く音も、静かな境内に心地よく響きます。なんだかそのざくざくが、“嬉しい、楽しい”という僕の心の声を表しているような気がしました。
中宮寺の本堂は、昭和時代後期に出来た新しいものです。でも、とっても堂々としています。僕ははじめて見たときから、この本堂のことが大好きでした。
屋根も柱もとても力強く、迷いがない。それでいて、清楚な境内の雰囲気を壊さない柔和で優しい印象も持ち合わせています。
このお堂は、木造ではなくコンクリート製です。でも、こんなに立派な建築が出来る。コンクリートにもちゃんと強い命が宿ることを、このお堂は教えてくれます。
本堂の中では、お寺の方が説明のテープを流してくださいます。僕はお寺の歴史や由来にはほとんど興味がないので、内容はてんで頭に入ってきません。でも、間をゆったりと取った優しい語り口がとても心地よく、この日のような暖かい一日では、陽だまりの猫のように心地よいまどろみの中に誘われていきます。
見上げれば、そこに国宝のご本尊。“眠ければ、寝てもいいよ”と優しい微笑で僕の心に語りかけてくださいます。いついかなるときでも、彼女の微笑は優しい。今度は膝の上の猫のように、心地よい安心の中に誘われていきます。
中宮寺の本堂から塀越しに、法隆寺夢殿が屋根をちょこんと覗かせているのが見えます。実は、ここから見る夢殿が一番美しいと思っています。屋根の天辺に乗っかっている大きな宝珠が、陽に燦々と輝いてとても神秘的です。
歴史あり風格漂う法隆寺の夢殿と、新しく若さみなぎる中宮寺の本堂。塀越しに、対照的な二つのお堂の間で、いったいどんな会話が交わされているのでしょうか。