福智院(奈良県奈良市)

訪問日:2004/09/18

突然の雷雨

福智院の門をくぐった途端に雨がぽつぽつと降り始めました。その日は傘を持ってきていなかったので、慌てて本堂へと駆け込みました。途端に大雨。どーん、とカミナリまで鳴りはじめました。
ふと前を見ると、そこには大きなお地蔵さま。福智院のご本尊です。
そのお顔を見た瞬間「あ、怒ってる!」と思いました。にこやかなお地蔵さまのイメージからは程遠いその険しい表情は、外のカミナリと相まって震え上がりそうなほどでした。その時、「普段優しい人ほど怒らせるともの凄いことになる」ということを思い出したのでした。

お地蔵様だって怒っている

しかし何をそんなに怒っているのかと言えば、堂内には僕しかいないのだから僕に対して怒っているとしか言いようがありません。普段の生活を思えば心当たりは掃いて捨てるほどあります。
なにしろ相手は、ただでかいだけでなく徳のある人物(仏さま)です。どうあがいても、かないっこなく、もはや平身低頭以外に策はなさそうです。おいとましようにも土砂降りの中傘はなし、怒りのお地蔵さまを前に完全に堂内に閉じ込められたような形になりました。そうこうしているうちに半時間ほど経ったでしょうか、少し勢いが弱まったかなと思ったら、あっという間に雨は上がってしまいました。

光は魔術師

雨が上がると明るい日が差し込み、堂内も幾分明るくなりました。外を見上げると、ところどころ晴れ間が広がろうとしています。はてご本尊はいかにと目を向けてみると、穏やかな表情とはいかずとも、さすがにもう怒っているようには見えませんでした。実際、光というのはたいした魔術師です。さじ加減一つで、仏像の表情も笑ったり怒ったり、自由自在に変化させることが出来ます。
明るい光の下でご本尊を見てみると、その表情は瞑想に耽ると言うよりも何かを憂えているように思えました。お地蔵さまだっていつも柔和に佇んでいるわけではない。それは怒りも悲しみもちゃんと飲み込んだ上での柔らかさ和やかさなのだと、この仏像は仄めかしているような気がしました。

雨上がりの境内

本堂を出ると、狭いながらも楽しい我が家とばかりに気持ちのいい境内が広がっていました。雨上がりのせいか空気がとてもきれいに見えます。雨に濡れた草木もきれいに光っています。先ほどの本堂でのことを思えば、まるで異界のトンネルを抜けて現実に戻ってきたような気分です。
この日の福智院は特別でした。特別面白いことがあった。こういうことがあるから寺社巡りは止められません。

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