訪問日:2004/07/24
不退寺は花のお寺。ことに春に訪れる不退寺の華やかさは最高です。さまざまな色のペンキをめちゃくちゃに振りまいたような、乱舞する色。陽気に浮かれる春の不退寺は、何よりも楽しいものです。
季節は変わって夏。この日の不退寺は、緑一色。およそ花の寺という雰囲気ではありません。だけど、夏の緑は明るくて気持ちのいいものです。明るい緑がのどかな境内と相まって、春の顔とは違った爽やかな魅力を放っています。
不退寺の五大明王はかわいらしい五人組です。子供のようにあどけない表情をしています。
中でも不動明王はやんちゃ坊主のような小憎らしい顔つきで、イタズラばかりしてご本尊の聖観音菩薩に怒られてそうです。いわばガキ大将的な顔つきなんですね。きっと、夜な夜な他の四人を引き連れて、憎めないイタズラを繰り返しているに違いありません。
「やれやれ、手のかかる子供を五人も抱えて大変だよ」と、ため息混じりにつぶやく聖観音菩薩の愚痴が聞こえてきそうです。
右の写真を見ても、多宝塔だとわかる人は少ないのではないでしょうか。多宝塔は明治時代の台風で二層目が崩壊してしまい、現在は一層目しか残っていません。
一層目だけの多宝塔。もはや“塔”とは呼べないかもしれません。
平和な雰囲気のこのお寺の中で一人何かを耐え忍ぶような多宝塔ですが、不思議と哀しい感じはあまりありません。逆に前向きな力強い明るさ感じるのです。それが不退寺というお寺の魅力。寂しさや悲しさはこのお寺にはちっとも似合いません。
不退寺には、翳りや曇りがまったく感じられません。もちろん、長い歴史の中には戦乱や災害に巻き込まれて幾度となく悲しい思いをしたこともあったのだろうけれど、そんなことは今の不退寺にはまったく関係のないことです。
僕がこのお寺の何を愛しているかと言えば、それは平和なのです。穏やかな顔の仏像や美しくのどかな庭園、あるいは健気に立つ多宝塔など、境内のどこを見渡しても平和を感じさせてくれるから大好きなのです。
不退寺の美しさは、すべてのどかな平和を基に成り立っているような気がします。