訪問日:2005/01/09
大阪から近鉄特急に乗って向かう吉野の町。車窓から外を見ると、そこには明るい青空。年末の大掃除で余計なホコリを全て洗い流してしまったかのような、きれいな正月の青空でした。
ところが金峯山寺の境内に入るやいなや空模様は一変、もの凄い雪に見舞われました。それは“横殴りの雪”と表現したいくらいの激しい雪。それは、異界に足を踏み入れてしまったんじゃないだろうかと思うほどの気候の急変ぶりでした。
ところが、いざ本堂の蔵王堂に入ってみると、そこは異界どころかすこぶる楽しい雰囲気。お寺の人も親しくしゃべりかけてくださったりして、とってもフレンドリーな空気が流れていました。
そして、そんな楽しい雰囲気を象徴していたのが、この時期公開されていたご本尊の蔵王大権現像でした。行く前までは怖い仏さまだという話を聞いていたので、構えていたところもあったのですが、一目見た瞬間「愉快な仏さまだ!」と思いました。率直なところ、この仏さまとなら気が合いそうだと思ったのです。
蔵王大権現は10mもあろうかというでっかい仏像でした。全部で三体、同じポーズで横に並んでいます。顔は怒りに満ち、腕を振り上げて、さらには片足を大きく上げて、身体全体で憤怒を表しています。
だけど、怖くない。むしろ楽しい。だって、僕の目には3人でダンスを踊っているようにしか見えないのだもの。3人でピシッと動きを合わせて、楽しげなダンスタイム。
たぶん、怖い顔してるのは“蔵王大権現”という立場や体面を考えてのことなんですよ。ホントは、ニコニコと楽しい顔で踊りたいのに違いないのだ。そんなことを考えながら、僕は愉快な気持ちでこの仏像を眺めていたのです。
いつしか鮮やかな青空が広がっていました。この日は雪が降ったり青空が広がったりの気まぐれ天気で、吉野の神さまもいたずらが過ぎるんじゃないのと思うくらいでした。
けれども、そんな茶目っ気が吉野なんだなぁと、僕は思うのです。それは蔵王大権現を見れば全てわかること。3人の愉快なダンスが、吉野の町を楽しく楽しく盛り上げているのです。