室生寺(奈良県宇陀市)

訪問日:2006/01/03

室生から始まる一年

毎年、寺社巡りのスタートとして訪れるのが室生です(2005年だけは吉野)。正月と言えども浮かれることなく、室生の村はいつも静謐の中にひっそりと佇んでいます。
初夏の石楠花、秋の紅葉、厳冬の雪。一年を通してさまざまな色に染まる室生寺も、まだ2006年のパレットを用意したばかり。雪はちらつくものの積もることは無く、境内に鮮やかな色は何一つありません。
けれども、そのくすんだトーンが、室生寺にはよく似合います。落ち着いた雰囲気の境内の中、金堂へといざなう石段・鎧坂を一段一段上がっていくと、ああ一年が始まる!!という思いに心がギュッと引き締まります。たとい色は無くとも質素な装いの室生寺は、僕にとって一年の扉を開く輝かしいエントランスなのです。

フェアリー・テイル

弥勒堂には大変美しいお釈迦さまもいらっしゃるのですが、僕はご本尊の弥勒菩薩立像にいつも見入ってしまいます。
なんだか、妖精みたいなんですよ。子供のような体つきで、あどけないお顔。おとぎ話の中から飛び出してきたみたい。かわいいと言えばそうも言えるのですが、薄暗いお堂の中に浮かび上がるその立ち姿は、とても神秘的です。
じっと見つめていると、何かを語りかけてくる。言葉ではない何かが、ずしんと心に響きます。
僕は、そっと手をあわせます。今年最初に手をあわせた仏さまが、この弥勒菩薩でした。

静寂の世界が、とても熱い

金堂の内部を最も美しく見ようと思えば、それはお堂の側面の格子からそっと覗き見するしかありません。お行儀が悪いと言われればその通りなのですが、しかし正面から見るのとはまったく違う、怖いくらいの美しさがそこにはあります。
前面に躍動する十二神将、後ろで静かに見守る大きな五体の立像。力強い木の柱、くすんだ白壁。堂内をゆらゆら漂う妖気と神秘。
冷めた熱気。そんな言葉を、思います。その静寂の世界が、とても熱い。その熱気にあてられた僕の顔は、おそらく紅潮していたことでしょう。

艶やかリトルプリンセス

さて、室生寺のリトルプリンセス・五重塔。可憐な立ち姿で、来る人を魅了します。
この塔の前に立つと、なぜかホッとします。くすんだトーンの境内の中で、一際艶やかな色を放っているせいでしょうか。なんだか心が解放されて「わぁーーーーーーっ、気持ちいいぞ!」と叫びたくなります。
一度災害で破壊されたというこの塔の以前の姿を僕は知りません。けれども、知ろうとも思わない。僕にとっては、この艶やかな塔こそが室生寺の五重塔です。
今年も、この塔に会えてよかった。なんだか、いい一年になりそうな気がしました。

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