訪問日:2006/02/05
晴れた日には、薬師寺に行こう。だって、そこには大講堂があるから。
青空を泳ぐ豪華客船、僕はいつもこの大講堂にそんなことを思います。大きな屋根に日の光をめいいっぱい受けて、ゆったりとのんびりと、気持ちよさげに青空の中を泳いでいく。
中に入ると船長の弥勒如来、航海士の法苑林菩薩、機関士の大妙相菩薩の三人が“ようこそ、豪華客船薬師寺号へ!”と温かく迎えてくれます。
外を見ると薬師寺の広々とした境内。なんて気持ちのいい青空の海の旅だろうと思います。
三重塔の奇抜なデザインについて語られることはとても多いのですが、金堂だって相当奇抜な形をしていると思います。
それでも、この金堂は紛れもなく寺社建築の最高傑作のひとつでしょう。僕には、青空に向かって両手を大きく広げ、“気持ちいいぞー”って叫んでいるように見えます。きっと、この金堂を作った人は、ここに立って両手を大きく広げてみたんだよ。“よし、これだ!”その刹那の瞬間、金堂の姿がありありと脳裏に浮かぶ。そして、この金堂が今ここに建っている。
そんなプロセスだったら、ホントに嬉しいなと思います。
薬師寺西塔は、昭和時代になって突如として東塔の前に出現しました。東塔は驚いたに違いありません。なにしろ、目の前に現れたのは、1000年以上も前、かつて美しい色彩に輝いていた頃の自分の姿そのものだったからです。
東塔はその艶やかな色彩を妬んだだろうか、それとも美しい好敵手の登場を嬉しく思っただろうか。
いずれにせよ、今はお互いを讃えあうかのように真正面から堂々と向き合う二人。僕には、高いところで交わされる二人の会話は聞こえてきません。
でも、今の平和な薬師寺の境内を見ていると、二人は仲良くやってんじゃないかな。おそらく東塔が語る薬師寺の昔話に、西塔が興味深く耳を傾けている、そんな毎日なんじゃないかな。
薬師寺を一言で表現すると、それは“華”だと思います。建築も中の仏さまも、どれを取っても一つ一つが主役を張れるような華があります。
長い間、広い境内は東塔と東院堂を残し、あとは何もない寂しい境内だったと言います。それが、今こうやって麗らかで大きな華が咲いています。金堂、西塔、大講堂。回廊、西門、そして玄奘三蔵院。近年、一気に建築が増え、なんと賑やかで美しい世界に生まれ変わったことだろう。
薬師寺は、その歴史の中で今一番幸せな時代を迎えていると言っても間違いではないと思います。