観心寺(大阪府河内長野市)

訪問日:2005/04/17

秘仏は僕たちのアイドルなんだ

この日は4月17日。年にたった2日しかない、秘仏・如意輪観音像公開の1日目です。
金堂に入ると、隅から隅までぎっしりと人で埋まっていました。すごい熱気。すごい一体感。みんなこの日を一年間待ち続けていたんだ。
互いに肩をぶつけながらぎゅうぎゅう詰めになって座っている人たちは、みんなこの仏さまを一目見ようとここに集まってきた人ばかり。人ごみの大嫌いな僕ですが、こういうのは楽しくていいなと思いました。

知らぬ間に最前列

最初のうちはお堂の最後列に立って、人の頭の隙間から遠慮がちに覗き込んでいるだけだったんですけど、知らず知らずのうちに前へ前へと身体がにじり寄っていきます。
気がつけば最前列。ほんの数メートル先に、いつも写真でしか見たことのなかった“あの”仏さまが確かに座っていました。
その時の僕の思いを、たぶん一番うまく伝える言葉。
その時ハートは盗まれた(I saw her standing there)。」

たぶん、たくさんの人で堂内は相当ざわついていたのだと思うけれども、僕の耳にはそのざわめきはまったく入っていませんでした。

人間的な美しさ

不思議だなぁと思います。これまでにも秘仏だけでなく、たくさんの仏さまを見てきたのだけれども、美術的でも宗教的でもなく、純粋に人間的な美しさばかりが伝わってきたのは、この如意輪観音像が初めてのことでした。
仏さまはまるで永遠に生きる時を愁いているのかのように、もの憂げな表情であらぬ方角を見据えていました。解説をしてくれたお坊さんは、どうすれば世の中の人を救うことができるのかをいつも考えていらっしゃるのだと言っていたけれども、僕はもっと人間的な愁いでこんなお顔をされているような気がしたんですよ。

これまでにない感覚だ

そう、例えば雨の日にわけもなく憂鬱な気分になるときの、あんな表情。
例えば夜中の三時に目が覚めたら物音一つせずシーンとしていて、急に独りぼっちを感じて寂しくなったときの、あんな表情。
そのお顔を見ていると、なんだか胸がしゅんとしてくるんですよ。
なんというか、これまでにない不思議な感覚がありました。
でも、それは病みつきになるようなとても心地いい感覚。そして、一年に一日だけ味わえる特別な感覚。来年ももう一度ここに来て、同じ感覚を確かめたいと、今から逸る思いなのです。

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