訪問日:2004/11/27
義仲寺の小さな境内に入ると、そこでは紅葉が鮮やかに色を振りまいていました。秋になると、こんな小さなお寺にも紅葉はちゃんとやってきます。
このお寺に眠る二人の英雄も、この紅葉を楽しんでいるだろうか。そんなことを、なんとなく思いました。
その二人の英雄とは木曽義仲と松尾芭蕉。一見接点のないこの二人が、義仲寺では仲良くお墓を並べて眠っています。
当然、土の下では義仲が芭蕉に武勇伝を語り、芭蕉も義仲に俳句の何たるかを伝授していることでしょう。お互い道を究めた者同士、きっと仲良くやっているはずです。このお寺のささやかな美しさを見るにつけ、僕はそんな思いを強くします。
そして今のこの季節、二人は肩を並べて紅葉を楽しんでいるのでしょう。
生前はそりゃあいろいろあった二人だけど、今こうして穏やかな空気の下で静かに時を過ごしているのだと思うと、それだけでなんだか嬉しくなってくるのです。
境内にはたくさんの句碑が、ところ狭しと置かれています。芭蕉のものもあるのですが、ほとんどが僕の知らない人の句でした。
全部で十九。ちょっとした句碑のサロンになっています。
これは芭蕉にとっては、随分楽しいプレゼントになっているのではないでしょうか。なんせ大好きな俳句に囲まれて永遠の時間を生きているわけです。
さて一方、義仲にはどんなプレゼントが贈られているのでしょうか。
義仲のお墓の隣に、ちょこんと小さな石塚があります。巴塚です。
巴塚は義仲の大切な側室・巴御前の塚です。
ちょっと強い風が吹けば、たちまち倒れてしまいそうな弱々しい塚です。元々は義仲の霊を慰めるために作られたのだろうけれど、僕の目には逆に義仲の霊に護られているようにしか見えません。義仲のお墓が堂々としているだけに、その思いは余計に強くなります。
だけど、それでいいんだと思います。大切な人を永遠に護り続ける。なんとも義仲らしい男らしさがそこにあるように思えます。
巴塚は本当に小さな石塚ですが、義仲にとってこれほど大きなプレゼントは他にないような気がするのです。