旧竹林院(滋賀県大津市)

訪問日:2006/01/16

気難し屋の旧竹林院

気難し屋の庭園だなぁと思いました。
ぐるぐる歩きまわっても、なかなか心晴れるような景色に行き着かない。あそこの階段を上ったら見晴らしのいい場所に出るんじゃないかなんて思っても、いざ行ってみると松の木なんかが邪魔してよく見えない。そんなもどかしさが、常について回る不思議な庭園でした。
けど、心配ご無用。最後の最後に、広々とした胸のすくような美景が待っているのですから。すべてはこのための前フリ。まるで、鮮やかなトリックがラストで暴かれるミステリー小説のような庭園だったんですよ。

墨絵のような美しさ

さて、その前フリの部分。背の高い木々に囲まれた薄暗い中をとぼとぼ歩いていると、ところどころで小さな茶室や東屋が顔をのぞかせます。周囲に埋もれるかのような地味な佇まいは、まるで“ごめんね、花の季節に来てくれたら、もっとここも見応えあるんだけど”と申し訳なさそうに萎縮しているかのようでした。
いえいえ、花の季節じゃなくとも、ちゃんと見るべきところはありますとも。だってごらんよ、侘しい佇まいの茶室がこの薄暗い中で、墨絵のような寂びた風情をちゃんと生み出しているじゃないか。冬の寒空の下、落ち着いたこの光景が、いかに心を和ませてくれることだろう。
美しさは、どんなところにも転がっている。それを見つけ出せるか出せないかだけの問題なんだ。

“こんにちは”が気持ちいい

庭師の方は気さくな方ばかりで、すれ違うたびに笑顔で挨拶してくださいます。
“こんにちは”“こんにちは”何気ない挨拶が、とっても気持ちいい。子供の頃は人見知りが激しかったので、他人に会うたびに親から“挨拶しなさい”なんて叱られていたものですが、今ではこの挨拶が寺社巡りの楽しみの一つになっています。“こんにちは”のたった五文字が、知らない人との距離をぐっと近づけてくれる。これって、素晴らしい魔法だなと思います。
挨拶を交わすと、庭師さんはとっとっとっと作業場まで歩いて行き、黙々とご自分の作業を始めました。なんだか庭を見ているよりも、その庭師さんを見ている方が楽しいような気がしてきました。

急に視界が開けた

庭園をぐるっと一周して、ラストに一面を見渡せる広い場所に出てきました。視界が急に開けるこの瞬間、胸の空くような気持ちよさです。ひょっとしてこの瞬間のために、旧竹林院は作られたんじゃないかなぁ、なんて思うくらいでした。
明るい緑の芝生の上を、植え込みがリズミカルに踊ります。さりげなく石灯籠のアクセント。さらさらと心地よい音を立てて流れる小川。
躍動感に満ちた、楽しさいっぱいの眺めです。
空気を胸いっぱいに吸い込んで、ぐーっと一つ大きな伸び。「気持ちいい!」が、全身から勢いよくあふれ出してきました。

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