西教寺(滋賀県大津市)

訪問日:2006/01/16

一目ぼれしちゃいました

門前に立った瞬間、ピンときました。

きっと好きになる。

軽快に構える山門、その向こうに真っ直ぐ続いていく坂道、すべてを包み込む大きな青空。地球サイズの爽快さが、心の中に広がっていきます。
いわゆる一目ぼれってやつです。僕のハートは、ズドンと射抜かれました。
たぶん、ここで引き返しても、僕は充分満足して帰ってこれたでしょう。けれども、中にはもっと凄いことがたくさん待ち構えていました。西教寺は、想像以上に豊富な宝物を持ったお寺だったのです。

命宿る欄間

本堂に上がらせていただきました。
中では尼さんが、可愛らしい声でお経をあげていらっしゃいました。お堂の中央には、大きな阿弥陀さま。全身を金箔に覆われて、このお寺らしい明るい輝きを放っていました。
さて、お堂を出ようと思いつつ、ふと見上げたところに欄間彫刻。これに目を奪われました。
たくさんの羅漢さんが思い思いのポーズを取っているのですが、どの羅漢さんも“俺を見てくれ!”と、ぐぐっと前にせり出してるんですよ。周囲を飾る鳥や植物も、賑やかにせり出してる。その立体感が凄い迫力。
生き生きとして、今にも動き出しそうな世界です。その生き生きとした姿のまま、魔王に石にされちゃった人みたいにぴたっと止まってる。動きのある一瞬を見事に切り出した、素晴らしい欄間でした。

哀しみの世界

客殿の渡り廊下にさしかかると、石版に彫られた石仏がたくさん並べられていました。なんでも富田民部進という人が、夭折した娘さんを弔うために作ったものだそうです。
どの仏さまも楽器を携えているのですが、笑顔はなく、愁いに満ちたお顔で静かに音を紡ぎ出しています。ここで奏でられているのは、哀しい葬送曲。娘だけでなく、もう弔う側の父親さえもこの世にはいないのに、葬送のメロディだけが永遠に奏でられていきます。
その哀しみのメロディは、ちゃんと天国の父娘に届いているだろうか。せめて、癒しの旋律となって、彼らに心の平穏をもたらさんことを。

また大好きなお寺が増えた

客殿には美しい襖絵や庭園など、見応えのある寺宝がたくさん並べられていました。この寺宝の豊富さは、外から見ただけではなかなか想像がつきません。まさに、開けてびっくり玉手箱なのです。

初めて門前に立ったとき“好きになる”と思ったのは、間違いではありませんでした。一目ぼれしてつき合ってみると、相性もぴったりだった、そんな感じ。
また一つ“とびっきり大好きです”と言えるお寺が増えました。

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