西明寺(滋賀県甲良町)

訪問日:2005/05/08

奇跡の森

閑散なる山奥にひっそりと佇む山寺。それが訪問前に漠然と抱いていた西明寺の印象でした。だから、境内の傍を名神高速が通り、車がびゅんびゅん走り抜けていくのを見て、多少面食らった部分は確かにあったのです。
だけど山門をくぐり、三分と歩かなかったでしょうか。ふと見渡せば、背の高い木々が空を遮り、苔むす石垣が左右を固め、いつの間にか周囲は森厳なる山寺の雰囲気に包まれていたのです。

そこから先は、奇跡の森。四方を緑に囲まれて、僕はさながら緑の海を泳ぐ魚のよう。
少し歩いては立ち止まり、また歩いては立ち止まり。さほど距離のある参道ではなかったのですが、実に一時間ほどかけてゆっくりとこの美しい道を歩いたのです。

西明寺のプリンセス

二天門と本堂、三重塔。
西明寺の主要な建築は、この三つしかありません。
けれども、この三つが凄かった。
二つの国宝(本堂、三重塔)と一つの重要文化財(二天門)。どれもが寺院建築の最高峰を成す、傑作中の傑作だったのです。
二天門は三つの建築の中では小さくて地味なのですが、周囲の大木たちに囲まれてたおやかに立つその姿は、なんだか勇敢な騎士たちに護られているプリンセスのようでした。
そのささやかな佇まいは、この静かなお寺にとてもよく似合っているような気がしました。

西明寺という優しさ

本堂は美しいというよりも、優しい建物でした。
特に檜皮葺の屋根。大きくて伸び伸びとしていて、見ていてとても気持ちがいい。
柱の古びた質感も、お堂全体のどっしりとした佇まいも、なんだかホッとするような安心感に満ちています。
僕は、本堂の優しい眼差しを感じずにはいられませんでした。
中に入れば、それはそれでまた素晴らしい寺宝の数々がずらっと並んでいたのですが、やはり外から眺めるこの本堂の優しさが何よりも素晴らしいと思いました。
僕は二天門の下に立って、長い間本堂を眺めていました。西明寺という優しさに包まれている幸せを、強く感じました。

言葉になんかならない

三重塔は最強です。
外見の美しさもさることながら、なんといっても内部が圧巻でした。
扉を開けた瞬間、まるで別世界のようだと思いました。そこには鎌倉時代に描かれたという壁画が、色鮮やかに残っていたのです。柱には仏さまが描かれていて、丸顔やうりざね顔など、様々なお顔が描き分けられているのがハッキリとわかります。壁には極楽鳥や蓮の花、極楽浄土など色鮮やかに描かれています。
一緒にいた初老のご夫婦の旦那さんが「へえ〜」「ほぉ〜」としきりに感嘆の声を上げていらっしゃいましたが、実際それは言葉になんかならないくらいの素晴らしさなのです。
塔を出てから、そのご夫婦と「すごかったですね」と感想を語り合いました。塔を出て、ようやく言葉が出てきたという感じでした。

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