part3
吉田寺には、知る人ぞ知る優美な多宝塔があります。この塔を一目見ようと、雲たちもこぞって空を通り過ぎていきます。
たくさんの雲を頭上に、おとなしげな多宝塔は少し照れくさそう。華奢なフォルムを縮こまらせて、なんだかうつむいてしまっているかのよう。
そんな多宝塔の様子をからかうように、次から次へと雲は集まってきます。
静かな境内の賑やかな空。
見ている僕は、なんともいい気分。
紅葉で有名な篠山の高源寺。シーズンにはきっとたくさんの人で賑わうことでしょう。
けれども、今はまだ9月。境内にいるのは僕一人きりです。
そんなたった一人のギャラリーにも、高源寺は惜しみなく美しい青空を見せてくれました。
僕は三重塔の縁に腰掛けて、深青染まる大空を眺めていました。“寂しかないよ”と大きな雲が、次から次へと通り過ぎていきました。
大阪にもきれいな空がたくさんある。このことを知ったのは、寺社巡りをするようになってからのことです。
この日も、とても美しい大阪の空を見ることができました。静寂にセミの声が心地よく響く道明寺の境内。僕は本堂の縁側に立って、じっとこの青空を眺めていたんですよ。
まだ暑さの残る一日でしたが、時折吹く涼風が“そろそろ秋支度を始めようかな”と言っているような気がしました。
小さなお寺の大きな空。夏らしい眩しい眩しい青空です。
周囲を見渡せばのどかな田園風景。しゃがんでみれば、草むらにバッタやハンミョウ。トンボやカナブンも我がもの顔にそこいらを飛び回っています。
美しい空の下には、美しい世界が広がっている。そんな当たり前のことを、観音寺は教えてくれます。
この幸せな世界を、観音さまはお堂の中からしっかりと眺めていらっしゃいます。
わたあめのような雲がふわりふわりと浮かぶ青空。夏満開の、明るくて気持ちのいい空でした。
銀閣寺みたいな観光寺院とこんな抜けるような青空が手を組めば、もうそこには怖いものなんてなにもありません。
世界一心地良く、世界一楽しく、そして心の底から“いい一日になった!”と思えるような最高の空間が、そこにはあります。