観劇日記〜2003年04月〜
●2日(水)19時〜 アドベンチャーズ・イン・モーション・ピクチャーズ「白鳥の湖」@オーチャードホール
●3日(木)16時〜 新国オペラ「ワーグナー:ジークフリート」@新国立劇場オペラ劇場
●4日(金)19時〜 古川展生「チェロリサイタル」@東京文化会館小ホール
●5日(土)17時〜 「オケピ!」@青山劇場
●6日(日) 16時〜 「桜吹雪狸御殿」@新宿コマ劇場
●11日(金)18時半〜 「ローラン・プティ グラン・ガラ」@赤坂ACTシアター
●19日(土)15時半〜 宝塚歌劇団雪組「春麗の淡き光に」「Joyful!」@東京宝塚劇場
●23日(水)18時半〜 新国オペラ「プッチーニ:ラ・ボエーム」@新国立劇場オペラ劇場
2003年4月2日(水)19:00-21:30
アドベンチャーズ・イン・モーション・ピクチャーズ「白鳥の湖」@オーチャードホール
B席8000円 2階7列11番
演出・振付・脚本:MATTHEW BOURNE
パンフレット:2000円
ザ・スワン/ザ・ストレンジャー:アダム・クーパー
王子:アンドリュー・コルベット
女王:マーガリート・ポーター
執事:リチャード・クルト
ガールフレンド:フィオナ=マリー・チヴァース
幼年の王子:サイモン・カレイスコス
とうとうmy楽です。そして,今日も主役はアダム・クーパー。まさか東京でこれだけ通え,そして全公演をクーパー主
演でみられるなんて思ってもみなかったo(^o^)o プロダクションもキャストも僕の数ある観劇の中で最高のもの。もっ
と通いたかったけれど,いかんせんチケットがないっ! レベルだの,ニンだのをまったく憂うことなく,ひたすら作品に
のめりこめる,というだけで奇跡みたい。アンサンブルの一人一人が,常にあちこちで小芝居を行っているんだけど,
それらが決して主役の邪魔をせず,かつ,ストーリーの微妙な伏線になっているので,目が10個は必要!! いか
にもイギリス的な凝った作品ですね。主役だけが頑張って,コールドは彫像と化す普及版とは大違い。
今日もまたクーパーのスターオーラと演技力には脱帽。20代前半の時の公演がDVDで残っているけれど,今の方
が10倍は良いよぉ。まずは荘厳な雰囲気で,まるでギリシャの彫像のごとき雰囲気で登場したかと思いきや,人間
への恐れ・威嚇・心の触れ合いを完璧に表現。ドン・ファンのごとく女性達を誘惑する時の小技・表情に「え!?王子
はどうでも良いの?」と観客すら欺いておきながら,王子をキッと見据える時の眼光の鋭さといったら!! ザ・スワン
としての演技の大筋を貫きながらも,場面場面でくっきり行う心理表現。技術だけでいえばDVDの方が体力アリなん
だけれど,見せ方・魅せ方の底力は段違い! 王子との甘いデュオと緊迫感あふれるデュオ、白鳥のリーダーとして
の貫禄とリンチにあって殺される時の無力感,誘惑する際のエロティックと王子を抱いて昇天する時の神々しさ,甘さ
と冷たさ,キレ味の鋭さ・流れるような柔らかさ,etc.etc... 一人のダンサーがほんの限られた時間内でこれほどまで
の表現ができるということに感動し,肉体と芸術の融合力にひれ伏した一夜となりました。おそらく,クーパーがこの
ヴァージョンの白鳥を踊ることはもうないだろうし,時間芸術の現場に居あわすことができたことに感謝!!
こんなに素晴らしいショーを観ちゃうから、他のショーがつまらなく&未熟に見えちゃうんですよねぇ。この公演に出
会えたことは嬉しいけれど、シアターゴーアーとしては後遺症に悩む日々が続きそうです。あ、最後になりましたけ
ど、王子役はベン・ライトの方が僕は好き。今日の人は農民風で王子としての気品が足りなかった!
2003年4月3日(木)16:00-21:55
新国オペラ「ワーグナー:ジークフリート」@新国立劇場オペラ劇場
E席3780円(会員割引) 4階3列12番
演出:キース・ウォーナー
指揮:準・メルクル
管弦楽:NHK交響楽団
パンフレット:1000円
ジークフリート:クリスチャン・フランツ
ミーメ:ゲルハルト・ジーゲル
さすらい人:ユッカ・ラジライネン
アルベリヒ:オスカー・ヒッレブラント
ファフナー:長谷川顯
エルダ:ハンナ・シュヴァルツ
ブリュンヒルデ:スーザン・ブロック
森の小鳥:菊地美奈
トーキョーリングもついにジークフリートです。映画「ロード・オブ・ザ・リング」の原作のような作品なんだけれど、長
いしストーリーはわけわからないのであまり好きな作品じゃないのです。が、今日のプロダクションは文句ナシで、面
白い・素晴らしい・歌手も最高と三拍子そろっていて、あっという間の六時間でした!! 演出は44mの舞台の奥行
きや、大規模なセリやスライディングステージを駆使した度肝を抜くものでしたが、実はよくわかってなかったりします
(笑) なぜ、11:53の時計が置かれているのか?だとか、なぜテーブルの足にタウンページが使われているのか
(オペラグラスで「タウンページ」の文字が判別できました!)、なぜジークフリーとはスニーカーにスーパーマンのTシ
ャツなのか、などなど。でも、わからないなりに、しっかり感動・納得してしまうのは、それだけプロの仕事がなされて
いるということでしょうね。
プロの仕事を見せ付けたのは演出だけではありません。中でも、一幕からエンジン全開でメリメリ・バリバリのドラマ
ティック声の喉自慢を繰り広げたフランツとジーゲルには感動よりも「これから6時間も大丈夫か!?」と心配すらして
しまったほど。そして、驚異的なスタミナで歌いきってしまった二人には思わずブラボー。でも、やっぱり、三幕愛の二
重唱なんかは長大すぎるなぁ、と思っってしまいました。イタリアオペラのようなストレートな感情表現ではなく、「どこ
が愛のささやきやねん!?」と突っ込みたくなるような観念的な歌詞で延々と数十分。取り立てて大きな動きがある
わけでもないし、フレーズはテンションを高くしておかないと、聴くだけでもヘトヘトになってしまいそうな長大なもの。
まったく、ドイツ人恐るべし、です。最後のシーンのみ登場するブリュンヒルデは通常一流ドラマティックソプラノが歌う
役ですが、もしかしたら、大スターを登場させたからにはタップリ歌わせないとならないという制約でもあったのか?と
変な考えを起こしてしまいましたさ。何もかもが大規模・ドラマティックな中、ドラマティックの直球で勝負を挑んだ長谷
川氏はあまりのレベルの差に爆死してしまいましたが、森の小鳥の菊池嬢はリリカルな声の響きとキュートな演技で
(ちなみに着ぐるみは「お母さんといっしょ」に登場しそうな可愛いマスコットタイプ)、一服の清涼剤となったのでした。
でも、実はいちばん嬉しかったのはN響の起用。弦の響きは厚いし、管は安定しているし、さすが日本一のオケだ
な、とあらためて感心。
2003年4月4日(金)19:00-21:00
古川展生「チェロリサイタル」@東京文化会館小ホール
全席指定5000円 B列18番
伴奏:坂野伊都子
パンフレット:無料
バッハ:無伴奏チェロ組曲第一番
シューベルト:アルペジョーネ・ソナタ
(休憩)
カサド:親愛なる言葉
尾崎豊:I love you
レノン:ラヴ〜イマジン(メドレー)
ピアソラ:アディオス・ノニーノ
ピアソラ:リベルタンゴ
フォーレ:夢のあとで
ショパン:序奏と華麗なるポロネーズ
(アンコール)
サン・サーンス:白鳥
グノー:アヴェマリア
カザルス:鳥の歌
2〜3000円が相場だったのに、いきなり入場料は5000円も取るし、かといってプログラムは散々繰り返している耳
タコの曲が並ぶし、はっきり言って「金儲けのための手抜き!?」とあなどり、「白鳥やジークフリートのデザート」感覚で
出向いたのですが、悪口が聞こえてしまったのか、もしくはクーパーの白鳥ばかり誉めているのに奮起したのか、の
び太君としては滅多に見られない集中力抜群のコンサートでした。何よりも、一曲一曲をとても丁寧に演奏。思わず
「おぉぉ」と感嘆してしまう至福の2時間となったのでした。そして、古いホールにもかかわらず、東京文化小ホールの
音圧と響きが、のび太の音にいちばん合っている気がしました。こう思ったのは僕だけではなかったようで、終演後
のロビーではCDも完売し、サインを求める大行列。それだけ、みなさんがのび太のコンサートを楽しんだという証明で
すね。今回は民音主催ということで、都内のコンサートとしては珍しい位、のび太初体験組が多かったようで、まずは
新規顧客開拓大成功。バッハの無伴奏組曲第一番で始まり、アンコールには同じくバッハの平均率(=グノーのア
ヴェマリア。無伴奏チェロ組曲のプレリュードと同じコード進行の曲ね)を演奏という、お洒落な選曲に唸ったのでし
た。アンコールはクーパーに張り合ってか、僕とらっしいの予想通り「白鳥」でした(笑) のび太はコンチェルトや大ソ
ナタよりも、今日のような小品集で実力と魅力を発揮するタイプだと思います。アコースティック楽器だけで、クラシカ
ルな曲で揃えたのも良かった。そして、今回特に嬉しかったのはピアニストとの相性が良かったこと。まだ若いピアニ
ストのにナカナカの実力差で、pppが目茶苦茶美しい!! おまけに、のび太も顔負けの「無駄な動き」「やたらと変化す
る表情」「視覚効果抜群の大きな動き(それも変なムーヴメント!)」と、見た目も楽しかった〜。もちろん、のび太もリ
ラックスしていて、華麗な足さばきを久しぶりに披露。のび太のソロコンサートの中では最良のものの一つとなりまし
た。それにしても、トークのみが固く、緊張しがちだったのは何故? 新しいお客様を前にしてあがっちゃったか!?
2003年4月5日(土)17:00-20:45
「オケピ!」@青山劇場
SS席12600円 1階L列13番
作・演出:三谷幸喜
パンフレット:2000円
コンダクター:白井明(真田広之)
ヴァイオリン:戸田恵子(戸田恵子)←カッコ内は初演キャスト
チェロ:瀬戸カトリーヌ(宮地雅子)
ヴィオラ:小林隆(小林隆)
ギター:川平慈英(川平慈英)
ピアノ:小日向文世(小日向文世)
ハープ:天海祐希(松たか子)
オーボエ:布施明(布施明)
トランペット:寺脇康文(伊原剛志)
サックス:相島一之(白井明)
ファゴット:岡田誠(北川潤)
ドラム:温水洋一(菊池均也)
パーカッション:小橋賢児(山本耕史)
三ヶ月クールの連続ドラマの舞台化、みたいな作り。出演者の一人一人にドラマがあり、それぞれに見せ場を作っ
てあるので、初演よりは短いらしいけれど、劇場作品としてはヤマバがない分しまりのない作品という印象は変わら
ず。初演を観ているのでどれ位の場面が残っているかの観る側での体力配分がわかっているので、それなりに楽し
んで来たけどね。ソリスト(ってミュージカルでも言うんだろうか?)が多いので、様子がわかってからは舞台のあちこ
ちを眺めていたけれど、それぞれのシーンは面白いんですよ。でも、それはそれ、これはこれ。木を見て森を見ないん
じゃ困りますよ>三谷さん。初めから時間を決めて台本を書くか、別演出家を立てるともっと良かったかも。
外国人が登場するわけでもなく、ダンスもほとんどないので、日本人が演じることによる違和感もないし、三谷さん
は細かな書き込みは得意とみえて、感情移入もしやすかったな。半分位のキャストが初演時と入れ替わっているん
だけれど、よくもまぁといえる程、似たようなタイプの役者が集まったものだなぁと感心。でも、ハープだけは別。松た
か子嬢もスター性のある女優だと思うけれど、今回の天海嬢があまりにあっぱれな出来のため影が薄くなっちゃっ
た。宝塚時代や退団直後のように肩に力が入っているわけでもなく、テレビドラマ向けとも思える台詞の数々が彼女
に合っていて、あとはもうその華やかさを堪能するばかり。「コーラスライン」のごとき群像ドラマのはずが、共演陣と
の見せ方の違いで、まるで天海嬢主演のように見えてしまいましたさ。ちょっとした仕草がいかにも大舞台出身という
印象。のびのび演じられる舞台は気持ちが良いですねぇ。綺麗だし、舞台は安定しているし、華やかだし、もう釘付
け。(あ、でも彼女の主演でブロードウェイミュージカルを観たいとは思わないけどね)。その他、生きの良さでは瀬戸
カtリーヌが、たった一曲でドラマを表現する役者歌のうまさでは布施氏が、歌唱力の豊さでは岡田氏が、舞台表現
の自在さでは戸田女史が際立ってました。前回は全体を仕切っていたコンダクターだけれど、白井氏はストレートプレ
イはともかくとして、ミュージカル役者としてはスケールの小ささが気になってしまいました。存在感がないのと、歌に
なると急に萎縮してしまうのが客席にも伝わってしまったのでね。
2003年4月6日(日)16:00-19:10
宝塚歌劇団OG「桜吹雪狸御殿」@新宿コマ劇場
A席5000円 中段H列57番
演出:植田紳爾、酒井澄夫、三木章雄
パンフレット:800円
狸吉郎/狸次郎:鳳蘭
御台所:初風諄
北の方:榛名由梨
お蓮:安奈淳
豆狸:瀬戸内美八
お黒:峰さを理
ポン太:平みち
お松:若葉ひろみ
きぬた姫/狸千代:麻路さき
日比谷の某劇場で同じスタッフによる別の和物ミュージカルが上演されているけれど、作品の出来としては似たよ
うなものだというのに、仕上がりが段違い。星組の歴代トップのスケールの大さを改めて感じまちたワ。「大作の星
組」だけのことがあります。最近の宝塚は「エリザベート」の弊害か、妙に文芸路線、本格路線に向かってしまってい
るけれど、本来はディズニー系作品、もしくはコマ劇場や明治座の座長公演が基本だと僕は思っているので、どんな
に駄作であろうと役者の力で盛り立てられるレベルの作品がベースだと思ってます。今日の出演者はいわゆる「理事
長の作品が得意」だった面々なんだけれど、台本の出来や自分の技術を超越して、スターとして、役に自分の魅力を
ミックスして見せきってしまう超人的技巧に舌を巻いてしまいました。最近は理事長作品は評価も人気も低いけれ
ど、もしかしたら、、本来あるべき姿の上演を見ていないからかもしれない、と狸御殿をみながら考えてしままいまし
た。下級生時代はもちろん技術の研鑚も大事だけど、トップに抜擢されたらもてる力でエンターテナーを目指さなくち
ゃスターとは言えないなぁ。技術は基本だけど、ハートが大事。そして、ハートがあれば自然と技術も付いて来ますっ
て! 鳳蘭はトップとしてのオーラがあまりに大きすぎるので、歴代トップの面々がどんなに自分をアピールしてもびく
ともしない存在感。こんな人が主役なので、下級生たちは、自分の得意分野を心置きなく極められるので、舞台全体
にやる気と喜びが満ち溢れていて、現役生の舞台よりも若々しくて生きが良いったらありゃしない!
出演者の一人一人は文章になんてできませんがな。元トップスターと、超ベテラン専科が集まっての舞台は凄いよ
ぉ、誰にもとめられない勢いがあるよぉ。劇中劇で「エリザベート」があったんだけど、「フランツ=音域が広くて難しそ
う」だったけど、峰ちゃんが歌うととても簡単な歌に聞こえてしまうし、ルミさんのルキーニは余興の域を越えてて、トド
さんもアサコも「弟子入りしなさい」と思える見事なアウトローっぷり。もともと演技派だし、この手の役が得意な人だっ
たけれど、圧巻の出来。マリコさんは退団して何年も主婦していたのが信じられない位ブランクを感じさせず、最近退
団していく方々よりも若々しいのにこれまたびっくり。相変わらず衣装裁き、腕や指の表現が色っぽくてスケールが大
きくて素晴らしい〜。初風さんは先週たしか帝劇で見たはずなのに「私だけに〜」と歌い上げてるし。もうね、これから
理事長作品が大劇場で上演される際は、今回の公演メンバーが揃って演技指導に駆けつけるべしっ!
で、作品なんですけど、笑って笑ってお腹がよじれちゃったなぁ。聞き古された駄洒落だって、彼女たちは強引に笑
いに持っていく術を心得ていらっしゃるのです。そして、久しぶりに理事長をエライ!と思ったのはマリコさんへのアテ
書き。「サ行」の発音が苦手な彼女のためにか、きぬた姫の台詞はすべて「チャ行」になってるのです!! いざしゃ
べろうとすると逆に難しいんだけれど、これを完璧に演じたマリコさんはエライ! そして、マリコさんがマジメにお姫
様を演じれば演じるほど、客席が爆笑となるのはこれまたスゴイ! 大先輩に囲まれた中、どんな演技を披露するの
かちょっと心配していたけれど、予想を裏切る大活躍。どこまで本気でどこからアドリヴかわからないけれど、この御
時世、そして、今週の超ヘビーな観劇の連続のトリとしてはこれほどまでにふさわしい作品に出会えて幸せ〜。
久しぶりに理事長を誉めてしまったけれど、誉めついでに言わせていただければ、振り付けも人員配置も、そのバ
リエーションの豊かさ、立体的構成の素晴らしさはこれ必見。大したダンス技術が出てくるのではないのに、お洒落
感といい、群舞としての魅力に満ち溢れていたよ。おかげで、同じようなスタッフでの公演なのに、技術に走りすぎ
て、ダンスとしては魅力なくなっている現役生公演とは楽しさが段違い。余裕のある舞台は良いねぇ。また観にいき
たいな!!
2003年4月11日(金)19:00-21:00
「ローラン・プティ グラン・ガラ」@赤坂ACTシアター
全席指定14000円 3列10番
振付:ローラン・プティ
パンフレット:2000円
「アルルの女」よりパ・ド・ドゥ(アバニャート&ベランガール)
「失われた時を求めて」よりモレルとサン・ルーノパ・ド・ドゥ(ルグリ&ムッル)
「ダンシング チャップリン」より「ティティナを探して」 「小さなバレリーナ」(ボニノ)
「ノートルダム・ド・パリ」よりエスメラルダとカジモドのパ・ド・ドゥ(上野水香&ツィスカリーゼ)
「マ・パヴロワ」より「タイス」パドドゥ(アバニャート&ベランガール)
「枯葉」(ムッル)
「チーク・トゥ・チーク」(上野水香&ボニノ)
「カルメン」(ルグリ)
「スペードの女王」よりパ・ド・ドゥ(リエパ&ツィスカリーゼ)
シンフォニーの第二楽章を集めたような公演でした。一つ一つは雅な雰囲気に満ち溢れていて、そして「世界のスタ
ーによるありえない饗宴」とサブタイトルがつけられている位に豪華なメンバーだったのですが、猫に小判、豚に真珠
でございました。プティの作品の一つ一つはとてもお洒落なもので、エスプリという言葉が実に似合うのですが、お洒
落=さりげないため、どうも決め手に欠けるのです、パ・ド・ドゥを集めてみても。ブラボーっと興奮しながら観る公演に
慣れてしまったせいか、静かに感動をかみしめるような公演は、、、船をこいでしまいました。ありゃりゃのりゃ。僕の
場合「私を見て〜」タイプが好みなので、もっと丁々発止と技を競い合うガラは好きというのもあるかも。タイプの出演
者がいないと、どんなに素晴らしい芸を見せられても面白くな〜い。 そんな中では水香ちゃんの成長振り(容姿
と芸風からして、Catsに出演してほしいなぁ!)とボニノさんの芸達者ぶりを堪能。芸術家にとって、他人とは違う個
性を持っているというのは強みですね。
一番良かったなぁ、というのはなんとカーテンコール。79歳のプティじいさんですが、どの出演者よりも元気いっぱ
い。実は一番盛り上がったのも彼が登場してからかな。出演者一人一人を大切に扱っているのが良くわかって、舞
台上の交流を眺めるだけで幸せいっぱいな気持ちになります。このような人と一緒に仕事できると嬉しいだろうなぁ。
2003年4月19日(土)15:30-18:40
宝塚歌劇団雪組「春麗の淡き光に」「Joyful!」@東京宝塚劇場
B席8000円 1階13列39番
演出:植田紳爾(春麗),藤井大介(Joyful!)
パンフレット:1000円
藤原保輔/藤原保昌:朝海ひかる
若狭:舞風りら
源頼光:貴城けい
藤原兼家:汝鳥伶
北の方:飛鳥裕
壬生内侍:灯奈美
野依知親:未来優希
鬼童丸:立樹遥
源頼信:壮一帆
碓井貞光:音月桂
初日は2階のてっぺんに近い列の端の席からだったけれど、今日は一階席からの観劇。やたら平面的演出の芝居
なので、この作品に関しては今日の席の方が絵面としては美しい。舞台の後ろがどんなにスカスカでもわからないか
らね。プロローグなんて、いきなり「タカラヅカ〜」という芝居には何の関係もない歌詞で椅子からずり落ちてしまうけ
れど、雛人形8段飾りのような舞台装置に、塊となって落ちてくる大量の桜吹雪でさすがの華やかさ。タカラヅカを観
に来た〜という気分が一気に盛り上がる。
じゃあ、楽しかったのかというと、芝居とショーともに拷問に近い2時間55分でした(残りの5分はプロローグね・笑)
でした。いえね、作品はそんなにひどくないんですよ。宝塚としてはごくごく標準のもの。出演者も一部を除けばまず
まずの出来。では何が良くなかったかといえば、チームワークの悪さ!これにつきます。自分がどこまで目立って良
いのか、もしくは目立たせなくてはならないのか、の加減に失敗している人続出。
中でもひどかったのはトップコンビ。観劇しながら「別の組のトップコンビだったらもっと盛り上げただろうなぁ」と思う
ことしきり。とにかく華もなければ実もない。いえね、下手でも良いんですよ。上手いにこしたことないけれど、宝塚で
すもの、トップオーラさえありゃとりあえずは合格。が、が、もう舞台がスカスカ。いっぱいいっぱいなのが客席にも伝
わってきて、芝居の台詞は棒読みで、盛り上げもなければ、情感が溢れることもないのです。トップスターはどの台詞
も同じトーンと同じ言い回し。そして、のっぺら棒な歌。トップ娘役は自分だけの世界に入り込んでしまい、回りの芝居
を無視して、ヒステリックに泣き叫ぶだけ。主役二人の波長がかみ合わないもんだから、舞台の上も客席もピュ−ピ
ュ−木枯らしが吹き荒れてましたよ。
そんな中、自分たちが盛り上げなくては、と頑張っちゃったのが未来優希と立樹遥。未来優希は上手いんですよ。
本専科さんが出演か?と思えるほど上手い。芝居も歌も組内一番でしょう。そして、その実力を如何なく発揮しての
大熱演。さて、主役二人が寒い芝居をしている中で、三番手(もしくは別格脇役)が熱演を繰り広げたらどうなるか…
…? はい、正解です。浮きまくりです。みんながすかしている中、一人だけ熱血漢がまざると、いつの間にやら周り
の人が「ス〜」っと引くでしょ。あんな感じ。未来嬢は「いよいよ私も主要スターだわっ」と張り切ってしまったのかどう
かわからないけれど、劇の中での己の位置付け・バランスを計算しなかったがために自爆。そして、もう一人の熱血
漢でもある立樹遥に関しては、実力があまりにもないため、その熱演が空回り。学年はいってるものの、声が出来上
がってないので、怒鳴る割りには散ってしまうのです。主人を思い、芝居の最後を締める大役だというのに、これまた
大根。まだ自分をアピールする技術がないだけ、悪目立ち度は低いかな!?
……というわけで、主要キャストに「のっぺらぼう」「勘違いした熱演」「超大根」の三役が揃い踏みしてしまったの
で、新人公演を観ているかのような気持ちでしたさ。今年初頭の「エリザベート」と出演者の学年はほぼリンクすると
いうのに、この差は何でしょう? 方やお披露目だというのが信じられない貫禄たっぷりの舞台、方やすでに二ヶ月
演じているというのにまだまだ「稽古はじまったばかり?」と感じる未熟な舞台。今の雪組に必要なのはスター専科。
轟悠も、スターとしての貫禄も実力もタップリの生徒がゴロゴロいる花組なんかではなく、雪組に出演すべきだと思い
ましたさ。
こんな状態なものだから、ショーも盛り上がらずじまい。サービス精神がない(orサービスする余裕がない)主要メン
バーが揃っているので、下級生もどこまでアピールして良いのかわからずに戸惑っている印象(ほら、トップさんより
目立つわけにはいかないでしょ、普通)
でも、どこかに救いがあるのも宝塚。二番手の貴城けい嬢が立派になりましたさ。何がうまいとか、アピールタップ
リとかいうわけじゃないんだけれど、存在しているだけで立派な二番手。そして、何が下手、というのがないというの
もスターには打ってつけかも。芝居だって、植田作品特有の大見得を切るような長台詞を丁寧にタップリ演じたのも彼
女だけだし(逆に上手い人がいろいろこねくり回すとこの手の台詞はよろしくなくなる)、台詞に自然な情感が入って
いたのも彼女がベスト。ショーもダンスの技術点でこそトップさんに譲るけれど、登場した時のインパクト、華やかさは
圧勝。さらに、(本来の)新人公演メンバーがショーでは大活躍。同じ銀橋渡りであるにも関わらず、客席のあちこち
に目線を飛ばしたり、ウィンクしたり、流し目に挑戦したり(あ、まだまだね・笑 早く僕を釣ってごらん〜。流し目大好
き・爆)、ニコニコと愛想を振り撒いたりと、やっとのアピール場面に生き生きしていた。あれっ、でもこれらのアピール
って普通じゃないの、宝塚では。これしきのことで下級生に食われてしまうトップさんて一体……。前々トップを専科に
追いやり、前トップをハロ・グッバイさせ、同期のライバルを組替えさせての鳴り物入りのトップがこれ!?!? いつもだっ
たら、トップさんが登場するとウワァ〜となるんだけれど、今回ばかりは下級生が出てきた方が嬉しいだなんて。。。
結局、出演者が格好良く見えない作品を与えてしまったスタッフの責任が問われる公演かと思います。歌も芝居も
サービス精神も駄目駄目駄目なトップコンビなんだから、もっと周りからフォローしなくては。あぁ、単にダンスの上手
なスターとしてだったら良かったのにね。トップスターとしては今までになく苦手なコンビです。
市川公演? 絶〜〜〜っ対パス。勘弁してください(涙)
2003年4月23日(水)18:30-21:35
新国オペラ「プッチーニ:ラ・ボエーム」@新国立劇場オペラ劇場
D席5985円(会員割引) 4階2列15番
演出:粟国淳
指揮:準・メルクルアントニオ・ピロッリ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
パンフレット:1000円
ミミ:フィオレンツァ・チェドリンス
ロドルフォ:オクタビオ・アレーバロ
マルチェッロ:堀内康雄
ムゼッタ:中嶋彰子
ショナール:アレッサンドロ・バッティアート
コッリーネ:久保田真澄
ベノア:築地文夫
アルチンドロ:山田祥雄
パルピニョール:中鉢聡
ミュージカルファンには「レント」の原作・元ネタと言うとピンとくるでしょうか? オペラでありながら,現在ブロードウ
ェイでロングラン公演を突っ走っている演目の登場です。ま,ね,話は単純。1幕で恋人同士が出会い,2幕はクリス
マス・デート。3幕では彼女が不治の病だからと関係解消,4幕は彼の元で死にたいからと彼女が戻って来る。幕。
「パリの屋根裏部屋,男女6人貧乏物語」なんてメロドラマ,今時テレビでも流行りませんがな。でもっ,これが感動
大作に仕上がってしまうのがオペラの魔術,プッチーニの才能。哲学的なドイツオペラもたまには良いけれど,感情的
であとさき考えない世話物イタリア・オペラは良いわぁ,と大満足。
何てったって,演出が素晴らしいんよぉ。ちんたらと男友達とのムサ苦しい生活をおくっている詩人の(今だとストリ
ートミュージシャンかあたり!?)ロドルフォが,近所に住むミミと(出会うやいなや)恋に落ちることによって,急にエネ
ルギーに満ち溢れてくるんだけど,ラテン男だけあって,情熱的なんですよ。テノールの必殺技ともいえるハイC(ハイ
シーぢゃないよ。ハイツェー。なぜか英独ちゃんぽん)で求愛。最初のアリア「冷たい手を」にして最大の聞かせどころ
なので,可哀相といえば可哀相なんだけど,今日のロドルフォは喉が温まってなかったのか,客席を急速冷凍。思わ
ず、こんな求愛にミミは応えちゃうの?
え、本気なの?? どうよ???と心配しちゃったんだけれど,ミミはエラかった!! 返礼の(これまたテーマ曲とも
いえる「私の名はミミ」を)たっぷりと情感豊かに歌い上げて,客席を瞬時解凍。もともとミミ歌いには勿体ないドラマテ
ィックなソプラノだけに「マイク使ってるよね!?」と4階席は騒然。繊細な表現なのにクッキリ・ハッキリ聞こえるという
神業。肺病患者=派手な歌がないので,今まではパッとしないヒロイン,というイメージの役なだけに目からウロコ。
こりゃ,フランス男が放っておかないわぁ。
で,出会ってほんの5分でクリスマス・デートに繰り出すのがかの地流o(^-^)o クリスマスで賑わう繁華街ということ
で,このオペラで唯一華やかな見せ場。演出家の腕のふるいどころ。二階建の巨大なセットを組んだり,ディズニーラ
ンドのワールドバザールも真っ青な歓楽街を再現したりと,毎回工夫を凝らした演出が楽しみ。で、今回はというと,
合唱団100万人が舞台上で酸欠にならないのか?と心配するほど密集しているものの,店舗のセットがいくつかあ
るだけ。新国ともあろうに,拍子抜け〜と思いきや,芝居に合わせてセットが回転するわ,前後左右に動き回るわ,そ
してもちろん合唱団もセットにあわせて舞台上を走り回るわで,今までにない展開。映画の得意分野って自在なカメ
ラワークによる色々な角度からの視点でしょ。まさかそれを舞台上で,それもスピーディに実現してしまうとはぶった
まげましたぁ(*_*) 今までみたどのプロして本日の真打ち登場。ムゼッタ。元々唯一お金のある役だし、派
手派手な大アリアはあるしで、僕好みの役なんだけれど、中嶋ムゼッタは芝居っぷりが最高。マルチェッロのことは
愛しているんだけれど、贅沢せずには暮らしていけず、ついついお金持ちのオトコに擦り寄ってしまうという、愛すべき
キャラクター。でも、散財しまくり、わがまま言いまくりの中から(わがままっぷりが素晴らしかった! 先輩に対する
遠慮を感じることが多い役なんだけれど、思い切り威張ってた! どうせやるならここまでやらなきゃ!)、マルチェッ
ロへの愛情をくっきり表現していて、まさかまさか「ムゼッタのワルツ」のシーンで僕の涙腺が緩みっぱなしになるな
んて予想外の展開。えっと、アルチンドロのお妾になったムゼッタ&紳士が、ミミたちと同じお店の隣りのテーブルに
座るんだけれど(金額的にそんなのアリ!?)、アルチンドロに言い寄ったり、ワガママ言っているようで、それらの台
詞は全てマルチェッロに向けられたもの(作詞家、ブラボーです!)というのが泣かせるではありませんか。そして、
隣りのテーブルではミミとマルチェッロが二人の世界に浸っているし、街路ではパルピニョール(中鉢さんです。サル
テイィンバンコのメイクかと思いましたさ。凄かった・笑)がおもちゃのセールス真っ盛り。マルチェッロは「ムゼッタに振
り回されるのはもう沢山」と背中を向けながらも、ムゼッタへの愛情を押さえきれないし、もうね、どこの誰を観るべき
かで悩んでしまうよぉ。それぞれが魅力的な芝居をしているんだもん。さらに最後の駄目押しとして、舞台上にブラバ
ン登場とあって、僕なんざ指笛を鳴らせるものだったら鳴らしたかったさ。あぁ、このシーンは観るだけじゃなくて出演
したいよぉ〜!!!
そして、次の幕はクリスマスとは打って変わって、正月明けの寒い、暗い、そしておっくうな職場の空気を表現。もう
ね、幕ごとに変化のつけ方が上手いんだわ。脱帽しまくり! ラブラブだった二人もすっかり落ち着いてしまい、その
場限りのことではなく、少し先(でもほんの少しだけというのが若気のいたりなのでしょうね)の心配をはじめるし、ヨリ
を戻したはずのムゼッタとマルチェッロは相変わらず喧嘩しているし。二幕とは打って変わって、しんしんと降り続ける
雪が全ての喧騒を吸い取ってしまう感じ。ほとんど何も置かれてない舞台は寒々としていて、観ているこちらまでしん
みり気分。相手を愛するがために別れをミミ&ロドルフォ、相手を愛しているんだけれどついつい喧嘩してしまうムゼッ
タ&マルチェッロ。どちらもありがちな愛の姿なんだけれど、コントラストがくっきりハッキリしてて、これまたミミたちの
悲哀が際立つんだわ。そして、この場面の音楽がこれまたお涙頂戴のプッチーニ節。もう、この時点で人生の悲喜こ
もごもを体験させられて魂を奪われてしまっております。
そして、そして、最後の幕なんだけれど、粟国さんの演出は芝居が細かいので、思考回路がストップした脳には、
エクスタシーの快楽しか残っておりません! 恋人と別れたロドルフォとマルチェッロは仕事(なのか? 趣味とちゃう
んか? 商売しているようにはみえんなぁ)が手につかず、ばら色の時間を過ごした後だけに寂しさが身にしみている
状態。これがね、ちょっとした仕草で表現されているんですよ。小劇場オペラならばともかく、この演出を大劇場で、そ
れも四階のてっぺんまで伝えられるという演出手腕は素晴らしいです。空間処理も抜群に上手いし。そして、その演
出の中で、これまた中嶋ムゼッタが絶品の演技を見せるのです。元彼の恋人が死にそうだからと、別れた彼氏のとこ
ろまでなんて普通連れてこないでしょ。おろおろしている男たちに指示は出すわ、男たちにお金がないとわかれば、
自分の身に付けていたものを売
りに出すわ、自分もミミが最後に欲しがったものを手に入れるために街に飛び出すわで、惚れ惚れするような活躍ぶ
り。本来、ミミとロドルフォが主役のオペラなんだけれど、今日に限っては、ムゼッタとマルチェッロの付いたり離れた
りの中から、本当の愛を見つけるまでのストーリーとして、すっかり主役を食ってしまってました。でね、視点を変えて
見てみると、見慣れたオペラもとっても新鮮。名作の底力を感じる公演となりましたさ。
演出が良く、ロドルフォ以外は歌手も良く(中鉢さんがやれば良かったのに!)、泣き・笑い、幸せな3時間でした。
はぁ〜。