観劇日記〜2004年03月〜
●02日(火)18時半〜 宝塚歌劇団月組「薔薇の封印」@東京宝塚劇場
●03日(水)18時半〜 来日カンパニー「Matthew Bourne's Nutcracker!」初日@東京国際フォーラムホールC
●04日(木)18時半〜 宝塚歌劇団月組「薔薇の封印」@東京宝塚劇場
●06日(土)15時〜  宝塚歌劇団宙組「BOXMAN」初日@日本青年館
●07日(日)11時〜  竜小太郎「江戸紫浮名仇夢」@浅草大勝館
●11日(木)18時半〜 藤原歌劇団「ロッシーニ:アルジェのイタリア女」@東京文化会館
●12日(金)19時〜  古川展生/アキコ・グレース「クロスオーバー・ナイト」@HAKUJU HALL
●16日(火)17時半〜 映画「ブラザー・ベア」@ヴァージンシネマズ六本木 スクリーン(2)
●18日(木)18時半〜 「スター誕生」@青山劇場
●20日(土)14時〜  映画「クイール」@AMCイクスピアリ
●21日(日)14時〜  都響メンバーによるおしゃべりコンサートIII@めぐろパーシモンホール(小)
●21日(日)17時〜  東宝「エリザベート」@帝国劇場
●23日(火)19時〜  ストリング・クヮルテットARCO「B→C」@東京オペラシティ・リサイタルホール
●25日(木)18時半〜 劇団四季「アンデルセン」@四季劇場[秋]
●26日(金)16時〜  新国立劇場「ワーグナー:神々の黄昏」プレミエ@新国立劇場オペラ劇場
●08日(木)18時半〜 宝塚歌劇団花組「飛翔無限」「天使の季節」「アプローズ・タカラヅカ!」@東京宝塚劇場


2004年03月02日(水)18:30-21:40
宝塚歌劇団月組「薔薇の封印」@東京宝塚劇場

 B席 3500円 2階-14列-20番 (パンフレット:1000円)
 演出:小池修一郎

 フランシス/アレクセイ/アンドリュー:紫吹淳
 ジェニファー/リディア/ポーラ:映美くらら
 ミハイル/マダム・ノアール/カイザー中佐/マイケル:彩輝直
 リムスキー/ガブリエル/レーム:星原美沙緒
 カッサンドラ/ディ・フラッソ男爵夫人:五峰亜季
 ロバート/フィリップ/エミール:大空祐飛
 クリフォード/ルイ14世:霧矢大夢
 ピーター/アンリ:月船さらら
 サラ/アンリエット:紫城るい
 ニコラ:北翔海莉

 主演のリカさんは、プロローグでは「エリザベート」のトート閣下みたいだし、第1話では中世のコスプレ、第2話ではロココ調、第3話では燕尾服、第4話ではチャラチャラのお洒落な服。ダンスもコンテンポラリー、クラシックバレエ、タンゴ、ジャズと踊りまくり。トップになってからの彼女は「チャラチャラと手抜きしている(ように見せる)のが格好良い」という印象が強く、こんなに真面目になって踊る彼女は久しぶり! それでいて、場面によっては軽〜〜〜く流すので、ONとOFFがくっきりした面白さがありました。残念なのは、相手役との相性が悪く、コンビとしての代表作が残せなかったこと。そして、リサイタル以外では、彼女のためのショーがなかったこと(前トップの遺作・歌メインの記念ショー・和物ショー)。それでも、最後の最後に素敵な作品に恵まれ、成果をあげて去っていく彼女は幸せなジェンヌだったな、と思えるのでした。彼女の足さばきが大好きでした。女役も素晴らしいのは知っているし、それはそれで非常に楽しみなのですが、エロエロダンスも続けてほしいなぁ。。。
 二番手で悪役のさえちゃんも、第1話では少年のような修道僧、第2話では女装、第3話では軍服、エピローグでは青年と、彼女の持つ武器をフル活用。ただし、ここまでで限界!?らしく、台詞も歌も下品な仕上がりになっているのが困ったちゃんでした。彼女はリカさんとは対照的に、常に全力投球。それが、余裕のなさに繋がってしまうのが痛い。が、「オンナ」をナマナマしく感じさせてしまうなんて、今までのトップにはない個性。宝塚のトップは技術はあるに越したことはありませんが、舞台上の風格があってナンボのもの(だと僕は思っている)ので、イッパイイッパイの姿を見せられてしまうと今後の月組がとってもとってもと〜っても不安。。。彼女の独自性が吉と出るか凶と出るか???
 エミクラは3役を見事に演じわけ、演技力の確かさを見せつけたし、祐飛君もポジション相応に舞台を盛り上げ、さららんは華やかさで目をひき、るいるいは歌唱力UPが目覚しく、男役→娘役への性転換も見事完了。それぞれ良かった〜。あ、シャンデリアに乗っての宙吊り場面は高所恐怖症なのか、鎖にしがみついてて痛々しかったなぁ。残念。
 キリヤンはクリフォードでははオトコ前だし、いかにもロンドンの劇場で見かけるようなマッチョなミュージカルスターで素晴らしかったけれど、ルイ14世はあまりにもロココのコスチュームが似合わないのと、歌のキーが合わなくて下手っぴ。北翔嬢は声をもっとなんとかしないと男役には見えない。。。浮浪者のように作りこんだ役はともかく、青年役がお姉さん役にしか見えないのはそろそろヤバイんじゃなかろうか??? スター路線ではないけれど、嘉月嬢のドクターはもはや名人芸になってますね。演技にメイクに凝りまくってて、最高!!
 ……とまぁ、細かなアレコレはあるけれど、何しろアテ書き名人・小池さんによるオリジナルとあって、各自ボロをホントにまぁフォローされてまして、団体芸として素晴らしい仕上がり。ことに、2階からの観劇が最高!! 近年稀にみる傑作だ……と僕は言い切ってしまいますが、個々のファンにとってはどうなんでしょうねぇ? ちなみに、宝塚作品には初参加の島崎氏が振付とあり、「男役」ではなく「男」のダンスが繰り広げられたのが印象的でした。


2004年03月03日(水)19:00-21:00
来日カンパニー「Matthew Bourne's Nutcracker!」初日@東京国際フォーラムホールC

 S席 12000円 1階-16列-17番 (パンフレット:1500円)
 演出・振付:マシュー・ボーン

 「カーマン」「スワンレイク」に続くマシューの全幕バレエの来日公演。初日とあって、客席がまず豪華。石丸幹ニさん、西島千博君、正木亮羽君、デヴィ夫人、フジテレビのアナウンサーの集団(サトちゃんだけ名前わかる・笑)、川平慈英さん、野村萬斎ファミリー、神田うのちゃん、柏木由紀子さん、小倉智昭さん、そしてもちろんマシュー・ボーン!と、ミーハー人間ならばウハウハの状態。で、なまじテレビなんかで見ているので、名前がとっさに出てこない時は知り合いと勘違いしてしまい、ついついお辞儀しそうになります(汗)
 さて、期待いっぱいの「ナットクラッカー」は、構成は面白いし、アイデアに富んだ舞台で、笑いいっぱいの楽しい作品に仕上がっていました。が、定番のゴージャス版をしのいだ出来でもないし、何度も観たくなるような仕掛けもなし、個人的にはペケ。いえね、全編良く踊っているんですよ。でも、常にめいっぱい踊っているし、美術もケバケバしいので観ていて疲れてしまうのです。単調な話と単調な振付は眠気を誘います。そもそも、出演者が少ないくせに、誰が主役かわからないつくりのため、舞台の中心軸がぶれてしまうんですよねぇ。チャイコフスキーの音楽との相性もいま一つだったと思います。帰宅途中でパンフを読んで「!」という部分もありましたが、時すでに遅し。。。まったくもって不完全燃焼です。これって僕だけの感想かと思いきや、同行者の一致した意見でもありました。そして、会場も盛り上がりが悪かった……。
 年末の新国版「くるみ割り人形」が楽しみ。もしくは、ナショナル・バレエのハロッズがスポンサーになっている、オモチャ箱をひっくり返したような「くるみ割り人形」←これ来日公演しないかな、といっつも思ってます。デパートがスポンサーとあって、小道具が凝ってて可愛いんですよぉ。


2004年03月04日(木)18:30-21:40
宝塚歌劇団月組「薔薇の封印」@東京宝塚劇場

 A席 5500円 2階-11列-57番 (パンフレット:1000円)
 演出:小池修一郎

 フランシス/アレクセイ/アンドリュー:紫吹淳
 ジェニファー/リディア/ポーラ:映美くらら
 ミハイル/マダム・ノアール/カイザー中佐/マイケル:彩輝直
 リムスキー/ガブリエル/レーム:星原美沙緒
 カッサンドラ/ディ・フラッソ男爵夫人:五峰亜季
 ロバート/フィリップ/エミール:大空祐飛
 クリフォード/ルイ14世:霧矢大夢
 ピーター/アンリ:月船さらら
 サラ/アンリエット:紫城るい
 ニコラ:北翔海莉

 小池修一郎様々な作品でした。彼の作品の美味しいとこ取りの印象がありますが、僕はすっごく好きです。ミュージカル処理は相変わらず抜群だし、時代と場所が移り変わるにもかかわらず、一本の芝居がしっかりと通っているので(もちろん細かな突っ込みドコロもリピーター用に用意されていますし・笑)、非常に見ごたえのある舞台です。舞台装置は分割可能な歩道橋、とでも言いたくなるようなシンプルなものを様々に組み合わせて利用するだけなので、予算制限が感じられるのですが、回り舞台やセリの効果的な活用、東京のシアターゴーアーにとっては「ピンク・フロイド・バレエ」や「ピュア・ラブ」でお馴染みの映像装置の併用により、非常にゴージャスな仕上がり。宝塚は生徒の力量も演出家の力量も2階席から観劇すると一発でわかるのですが、平面的には斜めの構図、そして階段を生かした立体的な人員配置を自然にこなすことに関しては小池氏の右に出られる人はいないでしょう。昨今の宝塚作品の中でも屈指の出来かと思います。各場面の雰囲気造り、音楽選びが圧巻。そして、彼だけではなく音楽スタッフの提案もあったのでしょうが、同じテーマ曲が場面に応じて、まるで別の曲のように響くよう編曲して使っているのも作品に統一感を与えていました。実は彼の作品は好きではあるものの、別の有名ミュージカルの替え歌が多かったのが気になっていたのです。今回は少なくとも僕の知らない曲ばかりだったので、違和感を感じることもなかったです(除く:ラインダンスの「踊りあかそう」)。おまけにフィナーレなんて、まるでサヨナラショーのようなつくり。リカさんならではのビラビラでオレオレな上着で(スミマセン、どこかの写真で確認してちょ)、銀橋ソロに始まり、組子たちとの群舞あり、スターたちとの別れを惜しむような絡みあり、ソロありで、宝塚ならではの美味しさでお腹いっぱい。まったくもって「餅は餅屋」の言葉通り、見事なあて書きに感服いたしました。非常に幸せな観劇体験。
 それにしても、月組の歌唱力の低さには困った。歌えるスターが皆無だし、コーラスもひどかった。。。歌に関しては別のキャストを希望!!


2004年03月06日(土)15:00-17:40
宝塚歌劇団宙組「BOXMAN」初日@日本青年館

 B席 5000円 2階-H列-41番 (パンフレット:600円)
 演出:正塚晴彦

 ケビン:和央ようか
 ドリー:花總まり
 テレサ:矢代鴻
 ロジャー:未沙のえる
 ファーマン:美郷真也
 ディケンズ:寿つかさ
 ダイアン:初嶺磨代
 リロイ:遼河はるひ
 バージル:悠未ひろ

 登場人物の誰も彼もが長台詞を披露するので、最初は面くらいましたが、台詞の量に慣れた瞬間から(笑)楽しかったです! どうしても宙組芝居というと、トップコンビ(もしくはトリオ)とその他大勢、というイメージがあるのですが、今回はコンビを立てつつも、下級生にいたるまでの生徒一人一人に見せ場が与えられ、出演者一同張り切っているのが感じられ、舞台に活気がありました。←じゃあ普段は何なのさ!?というのはおいといてください。。。矢代・未沙の両専科生もさることながら、美郷・寿の中堅組が大活躍。こんなに間で笑わすことの出来る実力者だったのか、と嬉しい発見をしました。ヒステリックな社長さんと、キザでナルシストな求婚者に客席は笑いと拍手の嵐でした。それにしても、彼女たちに、このような役を当て書きした正塚さんはエライッ!! 台本はいつもの正塚さんらしく「えっ、これで終わりにするの!?」と突っ込みまくりのあっけなさですが、役者の芸が楽しめます。みんな無理なく活躍、魅力も発揮。そして、フォロワーたちの集団怪演にも関わらず、すんなりと主役の座に君臨していられるのは宙組トップコンビならでは。焦るでなく、自ら熱演することもないのに、見事な位取りです。いえね、お花ちゃんはともかくとして、婿殿トップの和央さんの主役ぶりが素晴らしかった! 肩肘張っているところ、何を考えているのかわからないところ、熱くならないところなど、正に和央さんのイメージにピッタリ。はまり役です。そして、お花ちゃんは「傭兵ピエール」のような勘違い女喜劇よりも、容赦なく台詞攻撃をする突っ込みが似合うし、それでいて場面によっては綺麗で可愛い。彼女にはどうしてもおとぎの世界のお姫様、というブランドが付いて回っていましたが、意外なことに恋愛に、生活に、老母との関係に、と悩みまくりの現代物が似合ってました。彼女がこんなにも人間臭い役を演じきったのは初めてかもしれません。そして、月組観劇の直後だと、宙組のコーラスに感動的にうまいっ!


2004年03月07日(日)11:00-14:10
竜小太郎「江戸紫浮名仇夢」@浅草大勝館

 指定席 4000円 リ列-15番 (パンフレット:なし)

 第一部:歌謡バラエティーショー
 第二部:江戸情緒・人情芝居「友情の逆説」
 第三部:早変わり男形女形舞踊ショー

 「流し目のスナイパー」の異名を取る、竜小太郎さんの公演です。前回の博品館劇場よりも、この団体には浅草大勝館の方が似合います。作品と小屋がマッチするというのかな。浅草の年中お祭りという雰囲気、下町ならではの気取らない空気がピッタリ。今までは芝居→洋装での歌謡ショー→和装での舞踊ショーの流れでしたが、今回は和装での歌謡ショー→芝居→和装での舞踊ショーという流れ。「第一部は大したことないんです」と座長自らがMCでおっしゃっていましたが確かに大したことなく「あ〜あ、言っちゃったよ」と客席のこちらが心配になってしまいました。「芝居は最初の5分のインパクトが大切」だとどこかの演出家が以前話しているのを聞いたことがあるのですが、今回は残念ながら逆パターン。いきなり客席の心を鷲掴みにする迫力が感じられませんでした。そして続く第二部は役名=役者名という、観ていてお尻がムズムズしてしまうような設定。おまけに話の内容も「あらら」なので、スミマセン、今回はノリノリというわけには行きませんでした。とりあえず魂を預けてからだと楽しいのでしょうが、開演してすぐに名前も知らないゲスト歌手に場面を与えてしまうのもなぁ。。。「小太郎の舞台だよっ!」というアピールが欲しかった!!
 そんなわけで、いつもだったら大笑いしながらの観劇となる舞踊ショーもいつもほどには乗り切れず、不完全燃焼となってしまいました。でもね、実は今回が三度目の観劇なのですが、小劇場での大衆演劇に対するカルチャーショックを感じる事もなくなり、冷静に観られるようになった、というのも乗り切れない要因かもしれません。で、冷静にみての感想なのですが、我らがさとうみさこ嬢が際立ってる! これは嬉しいことではあるのですが、その他の新規参加メンバーからはみさこ嬢に匹敵するだけのエネルギーが感じられないのです。舞台を盛り上げよう、お客さんを楽しませようという意気込みを感じない舞台ぶりは、セットや衣装でハッタリをかますことのできない、大衆演劇の舞台ではとっても苦しい。少なくとも、前回までは舞台に熱気があったと思うのです。心なしか、座長もいつもよりは手抜きしていたような印象を受けてしまいました←りかちゃん型手抜き……と書くと宝塚ファンにはわかりやすいと思います。一般的な手抜きとはちと違うんですよね。文章にするのは難しいけれど、わかる方はわかってくださいまし(あぁ、僕も手抜き・汗)。これはたまたま僕の観方が悪いのか、それともカンパニーとしてのテンションが低いのかはわかりかねますが。。。
 とはいうものの、やっぱりこの手の「楽しんじゃえ」の舞台はよそではお目にかかれないので、いと楽しです。第一部のゲストは5日ごとに変わりますし、第二部のお芝居も10日ごとに変更で、二本目からは時代劇。そして、三本目ともなるとさとうみさこ嬢がヒロインに扮するとのことなので、スケジュールさえあればもう一度観たい、、、と思っております。容子さんに買っていただいた、小太郎サインハンカチもあるし(笑)


2004年03月11日(木)18:30-21:30
藤原歌劇団「ロッシーニ:アルジェのイタリア女」@東京文化会館

 C席 10000円 2階-R4列-8番 (パンフレット:1200円)
 演出:ジャン・ピエール=ポネル
 指揮:コッラード・ロヴァーリス
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 イザベッラ:アグネス・バルツァ
 ムスタファ:ロレンツォ・レガッツォ
 エルヴィーラ:斉田正子
 ズールマ:牛坂洋美
 リンドーロ:ホアン・ホセ・ロペラ
 タッデオ:ロベルト・デ・カンディア
 ハリー:佐藤泰弘

 かつて「バルツァ&ポネルによる"アルジェのイタリア女"」というと、ウィーンでスカラ座で大評判を取ったプロダクション。まさか今になって東京で観られるなんて思いもよらなかったので、大喜びでチケットを確保。「演出が古ぼけてないか」「バルツァってまだ歌えるの?」などと不安材料も多かったのですが、何の何の、蓋を開けてみれば非常に楽しい公演で、東京文化会館が寄席へと変貌したのでした。
 まず登場するのは宦官のコーラス隊。全員が肉布団と仮面を身につけているので、七福神の布袋様のような格好。もうそれだけで笑えるというのに、登場する人物の誰も彼もが胡散臭くて、おまけに演技がマンガチックでコミカルなので、楽しいのなんのって。ただ、女性ソリストの衣装が「ハクション大魔王」のアクビちゃんが着用するような物なのがかわいそう。だって、割とスタイルの良い人が集まったとはいえ、オペラ歌手ですよぉ。みなさんお腹ボッテリ。あらまあ。あ、ちなみにバルツァは「イタリア人」役なので、お腹丸出しはないです、はい。
 そのバルツァですが、かつてのネットリした歌唱は今いずこで、声のギアチェンジはますます激しく、逆にパワフルな声量もナリを潜めてしまいましたが、まだまだ他の追随を許さないスターぶり。ロッシーニならではの早口言葉に他の歌手が四苦八苦している中、一人涼しい顔でアジリダのパッセージをこなしたかと思えば、男性コーラスを従えての大ナンバーを堂々と披露したりするのです。「芝居のできるオペラ歌手」から「歌える女優」になったとでも言いましょうか。オペラグラスで顔を見ればすっかりお年を召しているにもかかわらず、遠目には姿勢の良さと動きの軽やかさで正に「ベッピンのイタリア女」に化けていました。おそらく歌だけCDにしてしまえば物足りないのでしょうが、舞台人としての存在感、スターぶりには脱帽です。ソロにアンサンブルに芝居にと、カンパニー全体をリードする姿に惚れ惚れとしました。
 そして、ポネルの演出は、セットはエキゾティックだし、光を利用した表現は多彩だし、立体的な人員配置やコミカルな振付、色彩豊かなコスチュームと、時代遅れなどを微塵も感じさせない愛らしいモノ。このプロダクションはこのまま新国が買い取り、定期的に上演を続けて欲しい!と思った程でした。今回限りなのが淋しい限りです。
 そして、ついついバルツァとポネルに意識を集中させてしまいますが、その他の面々も特出したメンバーはいなかったものの、堅実な歌唱を披露。ソロよりもアンサンブルで実力を発揮する人が多かったのかな。歌だけでなく芝居にも大活躍で楽しい一夜を披露してくださったのでした。満足!!


2004年03月12日(金)19:00-20:55
古川展生/アキコ・グレース「クロスオーバー・ナイト」@HAKUJU HALL

 全席指定 4000円 D列-4番 (パンフレット:無料)

 バッハ:無伴奏チェロ組曲 第1番 BWV.1007」よりプレリュード
 バッハ:無伴奏チェロ組曲 第6番 BWV.1012」よりアルマンド
 サマー:ジュリー・オウ
 ヒューゼン&バーク:It Could Happen to You
 エリントン&ティゾル:キャラヴァン
 宮沢和史:島唄
 わらべうた:Kagome Kagome
(休憩)
 サン=サーンス:白鳥
 バッハ/アキコ・グレース:シシリアーノ・スルー・マイ・アイズ
 チャップリン:スマイル
 岡野貞一:朧月夜
 アキコ・グレース:悠久の路
 ピアソラ:リベルタンゴ
(アンコール)
 モリコーネ:ニュー・シネマ・パラダイス

 前半はのぼちゃん→アキコさんとそれぞれのソロでした。
 おなじみのバッハですが、のぼちゃんが気持ち良さそうに演奏していたのが印象的でした。残響豊かな空間で、のぼちゃん自身が一つ一つの音を慈しんで弾いているような感じ。HAKUJU HALLは音響が素晴らしく、ppp音までくっきりはっきり聴こえるので、バッハの無伴奏チェロ組曲については、全曲聴きたい気分になりました。非常に弦楽器向きのホールです。
 続いて登場のアキコさん。モデルウォークでしゃなりしゃなりと登場し、気負いもなくいきなり演奏開始。ピアニストというよりも女優さんみたいな雰囲気♪ とはいえ、クラシックの基礎に裏づけされている彼女のピアノはpppが美しいので大好き。pppの奏法と音色のヴァリエーションの豊富さが武器の彼女の演奏は、Jazzピアニストにありがちな汚いfffがないので非常に聴きやすいのです。
 休憩を挟んでの後半は「クロスオーバー・ナイト」のタイトルにのっとった二人のコラボレーション。おなじみのクラシックのナンバーもJazzyなピアノアレンジによる響きがとても新鮮で、耳慣れない和音に一瞬音痴になってしまった気分(笑) 思いもかけない音を重ねてくるアキコさんとのアンサンブルがとても面白かったです。その他の曲もジャズならではのアドリブを要求する共演者なのでのぼぉちゃんの演奏は良い意味で緊張感があって刺激的でした。そして、普段は「PopsもOK」が売りののぼちゃんですが、アキコさんとの共演を通じて感じたのは「あぁ、のぼちゃんはやはりクラシックの人なんだな」ということ。フレージングの崩し方がやはり真面目で「ここで崩すぞ」というのが予想付くのですが、アキコさんは予想を裏切る演奏続出。相乗効果ゆえか、のぼちゃんもやりたい放題の弾きっぷりが楽しかった〜。そして、本日の白眉はリベルタンゴ。実はプログラムを見た瞬間「また、のぼがワガママ言って共演のピアニストをいじめてるよ」とムッとしたのです。今までタンゴなどに縁のないピアニストにぎこちない演奏をさせたり、筋肉のないピアニストにfffでの連打をさせて玉砕させたり、とにかくチェロのみ気持ち良さそうでピアノが痛々しいという聴いちゃいられない演奏がほとんどだったので、細腕ピアニストのアキコさんがどう演奏するのか気になっていたのです。が、が、アキコさんは偉かった! fffや狂乱が売りのようなリベルタンゴをpppで弾いたのです!! 音量でこそpppですが、音色とリズムの変化によってスケールの大きな演奏を繰り広げたアキコさんにはブラビッシモです。そして、ピアノの音量に力で対抗する必要がなくなったため、のぼちゃんの演奏もギコギコせずに伸びやか。Jazzの他のピアニストの演奏をほとんど知らないので、これがJazzピアノならではなのか、はたまたアキコさんの力なのかはわかりませんが、素晴らしい演奏でした。
 それにしても、プロ歴○年ののぼちゃんの方が、2002年にデビューのアキコさんよりもMCが素人っぽいのは何故!?!? ま、アキコ嬢に貫禄がありすぎっていうのもあるんだけど(笑) ま、それがのぼちゃんの魅力でもあるんですけどね。そして、演奏良し、話面白い、発声明瞭でアキコさん人気はもっともだなと感じました。


2004年03月16日(火)17:45-19:10
映画「ブラザー・ベア」@ヴァージンシネマズ六本木 スクリーン(2)

 当日一般 全席指定 1500円 L列-8番 (パンフレット:600円)

 このところ、ディズニーは映画を連発していて「ファインディング・ニモ」が上映中にもかかわらず「ブラザー・ベア」が始まり、来月には「ホーンテッド・マンション」が公開(これ楽しみ!)という進撃ぶり。中でも、「ブラザー・ベア」は前評判が高かったのと、フィル・コリンズが音楽担当ということで楽しみにしておりました。
 話はわかりやすいし、上映時間は短いし「子供向き」という印象を持ちましたが、六本木という土地柄か、客席はなぜか大人だけ。大人として格好付ける必要がないので、照れることなく観賞できて落ち着くわぁ(笑) とはいえ、ディズニー映画初見の際のお約束「涙でウルウル」が今回はありませんでした。たぶん、45度もつりあがっているアーモンド・アイでオーバーアクションが不自然なアジア人だとか、可愛くない子熊ちゃん、命の尊さを歌うわりに鮭の虐殺シーンが続くなど、感情移入しにくい要素が重なったからかな。
 しかし、それにも関わらず満足感を得られるのはさすがディズニー。心の交流が生まれる過程を眺めるのは気持ち良いし、意表をつくエンディングが印象的でした。「美女と野獣」を見た時に「野獣のままの方が良いじゃん」と思った方は満足するかも(笑)
 観賞後はディズニーランドの「カントリー・ベ・ジャンボリー」に行きたくなったのでした。これから観賞の方はイクスピアリで観賞するのがオススメ。ほら、そのままTDLにインパークできるでしょ(笑)


2004年03月18日(木)18:30-途中退席
「スター誕生」@青山劇場

 S席 10000円 2階-B列-9番 (パンフレット:2000円)
 演出:ラサール石井

 秋山ミオ:今井絵理子
 秋山ふみ奈:島谷ひとみ
 磯部すぐり:仲間由紀恵
 秋山隆仁:加藤茶
 増田惣一郎:布施明
 磯部松子:中尾ミエ
 駒井登世子:森公美子
 八重樫エイジ:諸星和己
 芦田太司:森山未来
 フローレンス三ヶ日:ROLLY

 「ミュージカルに縁のない人たちが作った作品だな」というのが第一印象でした。必要だから歌ったり踊ったりするのではなく、無理やり歌い踊りたいがために曲を挿入した、という作品。今回は「(社)日本音楽事業者協会創立40周年記念ミュージカル」という冠が付き、40曲もの歌謡曲を挿入する、という使命があったらしいのですが、とにもかくにも音楽のテイストがバラバラで、作品としてのまとまりが皆無。台本も手の打ちようがなかったようで、ヤマもタニもなくダラダラとしたものでした。さらに、出演者は100人もいるとのことでしたが、主役が誰なのかもはっきりせず、話の展開が強引。何よりも、音楽がストーリーを運ばないと言う時点で「ミュージカル」を観に来た者にとっては拷問のような作品でした。いっそのこと、ミュージカルではなく、コンサートにした方が良かったのでは? そもそも、雑多な歌謡曲を集めればそのままミュージカルになる、と考えたプロデューサーの発想が安直だし、かといってそれを力技で実現することのできるスタッフが集まったとも思えないのがツライかった。。。ミュージカルとしては、脚本・演出が高校演劇以下で、前代未聞の大駄作。いまだかつてこんなに酷い舞台は観たことない!!
 今井・島谷・仲間のアイドル三人は舞台慣れしていないのがアリアリで、台詞の粒も立たなければ役者歌もこなせず、そもそも二階席までエネルギーが届いていませんでした。ま、これはチラシを見た時からわかっていたのですが、彼女たちをフォローするにはワキのメンバーも弱すぎ〜。一部の客席も「役」として迎えるのではなく「アイドル」を迎えるという姿勢だったのもいかがなものでしょう?
 「役」として迎えられなかったのは加藤氏も同じ。登場と同時に拍手が巻き起こるのは、さすがのキャリアだと思うのですが、その拍手に乗って「ちょっとダケヨ」と加藤ちゃんネタを披露するのはいかがなものでしょう? 「作品や役」よりも「素の自分」が勝ってしまうのはマズイでしょ。
 そんな中、安心できたのが、布施・中尾・森のベテラン三人組。三人ともステレオタイプの役で「役というより素?」という印象があり、役作り云々の前に「またこんな役?」というつまらない状況でしたが(台本貰った時に降りなかったのは偉いのか偉くないのかちと悩みます。ギャラが良かったのかしらん?)さすがの存在感と実力で舞台の盛り上げに貢献。残念ながら、この三方の実力をもっても舞台が盛り上がらなかったのは台本・演出・音楽構成のせいです、キッパリ! 
 アンサンブルも人数ばかり多くて、芝居をするでなし、素晴らしいダンスを見せるでなし、合唱が揃うわけでもなし、こんなことだったら素人を大勢使うのではなく、少数のプロを起用した方が良いのに。。。
 ……ということで、あまりのくだらなさ、青臭さで椅子からずり落ちないためには、三点固定のシートベルトが必要です。10000円も出して見に行く演目じゃありゃしません。タダでも辛かった! せっかくいただいた招待券でしたが、一部が終わるのを待ち構えるように退場してしまいました。いえね、ブロックの端の席だったら途中でも帰ってた! 一部の最後は「帰ろうかな♪」というナンバーだったので、思わず「帰ろ、帰ろ」と心の中で歌ってしまいましたさ。出演者の盲目的なファンでない限り、最後まで見届けるのは無理!


2004年03月20日(土・祝)14:10-15:45
映画「クイール」@AMCイクスピアリ13

 全席自由 大人 1800円 K列-20番 (パンフレット:600円)
 監督:崔洋一

 多和田悟:椎名桔平
 渡辺満:小林薫
 クイール(成犬):ラフィー

 この春休みは「熊 vs 犬」なのだそうです。個人的にはこの春のイチオシなのが「クイール」です。「絶対に泣く」と覚悟していたせいか号泣はしなかったけど、エンディングの頃には涙少々、喉もヒリヒリ! 心地よく泣いてまいりました。実はテレビドラマ版は見てないので、原作としか比べられないのですが、短時間でヤマやタニを作ってまとめるために、原作をだいぶはしょってました(「スター誕生」のスタッフはこの映画から学ぶべしっ!)。おまけに、ワンちゃんたちの様子を見せるのが売りでもあるので、ストーリーはひたすらシンプルでわかりやすいものでした。実は「盲導犬」という面を前面に打ち出すものと想像していたのですが、クイールを取り巻く人間模様を描いていた様子です。素朴なBGMに乗って、淡々と進むドラマなのですが、産まれて間もなくパピーウォーカーに預けられ、愛情の絆がしっかり結ばれた1歳の誕生日には、育ての親とも別れて訓練センターで訓練士(椎名桔平)との生活開始。やがて盲導犬としてデビューし、パートナー(小林薫)が決まったと思いきや、彼の病気が原因で二年間で関係解消し、その後は特定のパートナーなしだったクイール。わずか12年の生涯にしては出会いと別れの多いのですた、クイールが無条件に人間に愛情を差し出してくれるのに、苦労をかけさせてしまうのが映画ならではの時間移動により際立っていて泣けて泣けて仕方ありませんでした。
 と、気持ちよく泣けたのも、ラフィー君を初めとしたワンちゃんたちの名演があってこそなのです。今回の撮影では、生後10日目、3〜5週目、3カ月、7カ月、成犬(ラフィー君♪)、老犬という六匹の他にも沢山のワンちゃんが出演しているのですが、嬉しいことにどの子も尻尾フリフリ。通常、動物映画というと、ワンちゃん大喜びのシーンにもかかわらず、演じている犬がしらけているということが多いのですが、今回のクイールに関してはどの子も可愛がられて嬉しい、という様子がスクリーンを通しても伝わってきて嬉しかった〜! このような状態になるということは、スタッフ・キャストにも可愛がられていたに違いない! 「可愛がられて嬉しい」という表情をちゃんとワンちゃんがするのです。その他、心配そうな顔、ONとOFFの表情の変化など、あまりの芸達者ぶりに脱帽。演技デビューとは思えない天才ワンちゃんでした。あー、犬欲しい!!!


2004年03月21日(日)14:00-15:55
都響メンバーによるおしゃべりコンサートIII「第3回 チェリスト古川展生の世界」
@めぐろパーシモンホール小ホール

 全席自由定 2500円 C列-6番 (パンフレット:無料)
 ピアノ:嶋田陽子

 バルトーク:ルーマニア民族舞曲
 コダーイ:チェロとピアノのためのハンガリー風ロンド
 バルトーク:チーク地方の3つの(ハンガリー)民謡
 コダーイ:チェロとピアノのための「アダージョ」
 ポッパー:ハンガリー狂詩曲
(休憩)
 コスマ:枯葉
 塩入俊哉:夢のしずく
 サン=サーンス:白鳥(ジャズ版)
 フォーレ:夢のあとに
 フォーレ:悲歌(エレジー)
 ピアソラ:アディオス・ノニーノ
 ピアソラ:タンティ・アンニ・プリマ
 ピアソラ:リベルタンゴ
(アンコール)
 サン=サーンス:白鳥(クラシカル版)
 BEGIN:涙そうそう

 前半は最近のお気に入りらしいレース多用の白シャツ、後半はファン仲間で勝手に「牛シャツ」と呼んでいる淡い色のシャツ(のぼ曰く「さくら色」)でした。白シャツはともかくとして、牛シャツは布地の関係もあり体のラインがあらわになってしまうことと、襟の高さが独特で「のぼには似合わない」というのが一致した意見でした←読んでるかしらん>ご本人様(笑)
 が、そんなことはピアニスト登場と同時にぶっとんでしまいました。嶋田さんのあまりに下品な姿に一同唖然。伴奏ピアニストというよりも、どこかのバーのお姉ちゃんみたいな毒々しいドレス。それも、スカートの右側に深いスリットが入っているので、演奏中は客席からはスカートの中が丸見えで、太ももの裏側まで拝めてしまう、というとんでもないもの。休憩後はのぼちゃんよりも、彼女の衣装変更が必要でした。誰も注意する人はいなかったのかいな??? 郊外のホールでの休日の昼下がりにはまことにふさわしくないピアニストでした。
 が、さらにウワテという方はいらっしゃるものでして、実は本日のハラハラワースト1は譜めくりstのお姉ちゃん。めくるべき場所でめくらずにピアニストが自分でめくってしまったり、めくったと思えばちゃんとめくれずに楽譜が宙を泳いでしまったり、はたまたあまりにも前から楽譜の端を折り曲げてスタンバイし「いつめくるんかいな?」と客席をイライラさせたり、とにもかくにもジェットコースターに乗ったかのようなハラハラ感。のぼちゃんが「おしゃべり」している間もピアニストと譜めくりstは譜めくりの相談をしてました。僕がピアニストだったら、終演後呼び出してお説教してますワ。代わりに譜めくりを申し出ようかと思った!! 嶋田さんも落ち着かなかったでしょうね(ポーカーフェイスなのはさすがプロ)。
 とまぁ、困った困ったの舞台面でしたが、演奏は非常に充実したもので、久しぶりに新曲の披露もあり、なかなか楽しいコンサートでした。のぼちゃんは歌物に関しては得意ですし、本人も気持ち良いのか実に伸びやか。ホールの大きさは手ごろだし、トークも若作りなし・背伸びなしで自然でした。何か話しかけては「え〜と、、、忘れました」発言多し!←なぜか怒りを感じないのは人徳ですねぇ。「アルツ友の会」はいつ入会でしょ?(笑) チェロの暖かな音色というのは、民族系の曲にはぴったりですね。素朴な感じと「そこはかとなく」漂う色気がたまりませんわ。で、この特性とのぼぉちゃんの演奏というのも一致しまして、しごく心地よい状態でした。圧倒的な熱演ではないので、客席が熱狂というのではないけれど、ジワジワと何かが伝わってくるのにゾクゾクしました。
 さて、しょっぱなからケチョンケチョンに攻撃してしまった嶋田さんですが、ピアノに感しては個性ある独特なタッチと音の方でした。低音のアクセントの付け方が女性ならではの「力入ってます」なタッチにも関わらず、出てくる音が野太いのです。そんなこんなで、後半の小品集に関しても、透明感よりも張りのある音が印象的に使われていました。ところで、ffとppでタッチと音色が大きくかわってしまうのはわざとだったのかしらん? フォーレに関してはいきなりの音色の変化にビックリ。あぁ、こんな弾き方もあるのかと興味深かったです。
 プログラムは「ハンガリーに留学していたからしっくり来る」のか「しっくりくるからハンガリーに留学した」のかわかりませんが、前述のように非常にのぼちゃんにぴったりの曲が並び、後半は適度に遊びの入った曲がズラリ。極端に別ジャンルではなく「クラシック奏者としての」演奏に徹してたのかな。本日登場の新曲「タンティ・アンニ・プリマ」は言われなければピアソラとは思われないであろうシンプルで透明なメロディラインが面白く、「涙そうそう(「涙がとめどなく流れる、涙ポロポロ」という意味の沖縄方言)は穏やかな編曲が暖かでした。

2004年03月21日(日)17:00-20:00
東宝「エリザベート」@帝国劇場

 A席 8000円 1階-T列-24番 (パンフレット:1500円)
 演出:小池修一郎

 エリザベート:一路真輝
 トート:山口祐一郎
 フランツ:石川禅
 ルキーニ:高嶋政宏
 マックス:村井国夫
 ゾフィー:初風諄
 ルドルフ:パク・トンハ
 ルドヴィカ:春風ひとみ
 マダム・ヴォルフ:伊東弘美
 エルマー:藤本隆宏
 リヒテンシュタイン:小笠原みち子
 少年ルドルフ:塩野魁土

 新演出で、装置も衣装も歌詞も出演者も……とにかく変更部分が多くてまったく別印象を与える「エリザベート」でした。散々観ているので、実は新演出と聞いた時には「前回の舞台の方が良かったと思っちゃったらどうしよう?」といらぬ心配をしていたのですが、蓋を開けてみれば何の何の、今までで一番面白い「エリザ」でした。主演者は変わらないし、前回と同じ小池さんの演出なので、非常にやりにくい&勇気が必要だったと思うのですが、大ブラボーです。ルキーニのボリュームが拡大されていて、劇中劇の形がはっきりしたし、オペラチックな演出と美術が絶品。ただ唯一、「ピンク・フロイド・バレエ」や「薔薇の封印」でも登場のの電飾セットはショーにはともかく、ミュージカルのセットとしては違和感が大きくて困ったわぁ。地方公演を睨んでいるのか、極力大道具を簡略化してましたのが原因? 新キャストはおしなべて成功! 人間役は人生を感じさせる深い演技をしてて、何度も見ている作品だというのにウルウル状態。出演者の得意分野と不得意分野をしっかり見極めてフォローしまくりの演出は小池さんならでは。「薔薇の封印」といい「エリザベート」といい、今月の日比谷は小池帝国ですね。凄い!! 照明とセットのバランスが良く、非常に立体的な印象を与えたのも印象的でした。
 エリザベート:一路真輝が一幕の幕切れの正装で階段を降りてくるシーンの貫禄、足元をチラリとも見ず堂々と降りてくる姿はまさに女王様! 圧巻でした。今回はエリザベートの不幸な中年女の苦悩が色濃く表現されていて、夢物語でもなく、単なる嫌な女でもなかった! 一路さんがこんなに人間味を感じさせるのって初めてかも。個人的には一幕初めの独身時代のシーンは別の女優さん(子役?)を起用しても良いかと思うのですが、さすがに、それはウィーンから許可が下りないのかな?
 トート:山口祐一郎はヴァンパイアのりかちゃんが足下にも及ばない程の超手抜き。売りのはずの歌も、リズムは崩しまくり、フルヴォイスも出さない、芝居も適当というとんでもない状態なのですが、それでも圧巻のスター性。なんなんでしょうねぇ、この人。前回まで気になっていた「トレパン」の衣装もなくなってて良かった。そして、コートの裾さばきと鞭さばきは常にビシっと決まるのも才能ですねぇ。。。
 フランツ:石川禅は今回のヒットその1の方です。芝居が細かいんですよ。それも、台詞に反応するだけでなく、ちゃんと音楽にも反応できるという、ミュージカル役者ならではの底力を見せ付けてくれました。おかげで、フランツという役の存在感が今までになく拡大されていて、皇帝の義務をまっとうすることにより、個人の幸せには恵まれなかった男の苦悩がしのばれ、二幕最後のトートと争う短いシーンで、それまで押さえていた感情が爆発したのが圧倒的でした。
 ルキーニ:高嶋政宏は相変わらず周りとのバランスを考えない&イタリア人に見えない独特の台詞回しの芝居には相変わらずうざいけれど、声楽指導でこってりしぼられたに違いなく、テクニックとしては決して上手くはないけれど、正統派歌唱で真っ向から立ち向かい逃げに走っていませんでした。実は僕の嫌いなタイプの役者なのですが、この人、きっと芝居も劇場も好きなんだろうな、というのが伝わってきて、はじめて「頑張れ〜」と応援しながら観てました。声楽指導に今回から謝さんが加わっていたけれど、彼女の指導があってたのかな?
 マックス:村井国夫は今回のヒットその2。今までのマックスパパは宝塚ではキーが低すぎて苦しいし、寺泉パパは音痴でお話にならないので、まずは歌が楽々なのが嬉しい。そして、歌に余裕があるので、芝居にも余裕がある(全編歌のミュージカルなので、歌えないとお話にならないのです)ので、チャーミングなパパっぷりを披露。一路ベートを優しく包み込む雰囲気と、いかにもボヘミアンな気質を感じさせるところが印象的でした。
 ゾフィー:初風諄は無理して強がっている様子が今までは好きではなく「この役だったらツレちゃんぷりぃず」と思っていたのですが、今回は心ならずも帝国のために憎まれ役に徹していたと思える場面が加わり、本当は優しいんだな、というのが垣間見える演出がお見事。それゆえに、カーテンコールでゾフィおばあちゃんが孫たちに手を引かれながらニコニコと登場する姿を見たらホッとして泣けました。
 ルドルフ:パク・トンハパクルドルフは四季の歌唱・発声癖がしみついてて悪目立ち(汗) 四季のままで良いのに。。。今回のワーストキャスト。歌も張り上げるべき部分で軽い発声で歌ったりするので「闇が広がる」の二重唱がキレイにハモらず不完全燃焼。そして王子様がとにかく似合わん。品位も位取りも全てペケ。ツルハシ持って踊る方がお似合い。
 ルドヴィカ:春風ひとみのような人がワキを固めると強い。チョイ役ではあるけれど、結構重要なキーを握る役でもあるので、短い時間でしっかり印象を残せるのが凄い!! そして、貴族としての品位とドレスさばきはさすが元タカラジェンヌ。
 マダム・ヴォルフ:伊東弘美は前回のリヒテンシュタインとは正反対のぶっとんだ衣装とメークに度肝を抜かれました。裏社会で生きているマダムという迫力は物凄かった! 地声で低音から高音までこなせるのも素晴らしい。ただし、鞭さばきは祐さんに出仕入れする必要あり。
 エルマー:藤本隆宏は大柄で、表情に迫力があるので、テロリスト臭プンプン。勢いがありました。
 リヒテンシュタイン:小笠原みち子はネッシーの同期だそうです。現役時代は存じませんが、恐らく男役だったと思います。ど迫力な歌声と表情は恐くて恐くて、僕がエリザベートだったら泣いちゃう。
 少年ルドルフ:塩野魁土も最近の子役らしく、ミュージカル初舞台とは思えない上手さ。子役がこんなに上手いと、ぽっと出の大人の立場がないですね。
 島崎さんの振付は月組と似たり寄ったり。もちろん、男性のプロダンサーたちだからもっと力技はあるし、スピードも技術も段違いで、悪目立ちがなくなったら印象も薄くなったけど、良く踊ってた「みたい」。……いかんせん、中央で踊っているのが、クネクネりかちゃんではなく、どすこい祐さんなので、すみません、あまりの面白さに祐さんばかりみてました。かつての宙組公演で、水さんのダンスではなく、さららんのダンスを観ていた時のような感じね(笑) セットの関係でダンスするスペースが狭いので(中日をにらんでる?)、大きな振付はないのだけれど、前回の大きく派手な振りではなく、小細工沢山の振りなので、はまるとたまらないかも。
 アンサンブルだけれど、やたらと目に付く人がいると持ったら秋園美緒さん。綺麗だわぁ。表情がとても豊かでキラキラしてる(*^_^*) それにしても、男役・女役に関わらず、そして、退団直後であろうとブランクがあろうと、ドレスの扱い、カツラの調整、メイクの変化について、宝塚出身者の活躍が目立った公演でした。舞台全体での品がグンとあがりましたもの。こうなるとツライのは男性陣。ヘアメイク・衣装の着こなし・動きナドナド、これらの分野の演技指導として、元タカラジェンヌが働くということはできないものでしょうかねぇ?


2004年03月23日(火)19:00-21:10
ストリング・クヮルテットARCO「B→C」@東京オペラシティ・リサイタルホール

 全席自由 3000円 (パンフレット:無料)

 バッハ:《フーガの技法》BWV1080から コントラブントゥクス1,6,7,9
 ベルク:叙情組曲
(休憩)
 ベートーヴェン:大フーガ 変ロ長調 Op.133
 ライヒ:ディファレント・トレインズ
(アンコール)
 ピアソラ:Four for Tango

 待ちに待った「B→C」です。思った通り、真剣勝負の充実した二時間でした。プログラムは上記の通りで、このシリーズにありがちな、前半は古典で後半がコンテンポラリー、ではなくて助かりましたそれだけ、コンテンポラリーが行っちゃってました。
 なぜか演奏家は一曲目に持ってきたがるバッハ。案の定、都会の喧騒からいきなり平均率(今回はフーガの技法でしたが)を聞かされて、ウトウトしない人っているのかしら? あまりに平和で美しい響きなのですが、猫に小判だったかも。このようなプログラミングの場合は、客席側も開演までにシフト・チェンジが必要ですね(通常滑り込みだから無理?)。今回は意識を失うということはなかったのですが、どのコンサートでも一曲目が平和だと結構寝ます(あ、書いちゃった・汗) 今回のARCOはひたすら透明でクリアなアンサンブル。音も決して押し付けることなく、ソット・ヴォーチェって感じ。オペラシティ・のリサイタルホールは天井が高くて残響があるので、とても美しい音空間となったのでした。
 そして二曲目がベルク。僕はベルクが大嫌いなので、捨て曲。メロディが美しいわけでもなく、響きが楽しいわけでもなく、音「楽」ではなく、音「が苦」状態なのです。技術的にとても難しそうな曲で、朗々と聞かせる箇所が一つもないのが嫌いな原因。いくらARCOといえども、すみません、拒絶反応です。ただし、出演者の面々が熱演状態だったのは確か。そして「B→C」のシリーズとして必要だったのも確か。でも、嫌い。。。この曲のどこに「叙情性」があるのかもわからないままです、はい。。。
 休憩後はまたもや古典に戻ってのベートーヴェン。あぁ、なんて平和で美しいんでしょう、と聞きほれました。ARCOは亮太郎君の音がワイルドになり、省太君の音も野太くなったので、非常に男性的なカルテットになった印象を持ちました。ベートーヴェンって滅茶苦茶好きって作曲家ではないので、ピアノソナタ全曲演奏シリーズなどには興味ないけれど(汗)、単品であれば、そのどっしりとした安定感がたまりません。そしてARCOがどっしり感を感じさせる演奏を繰り広げたことに、彼らの変化を感じたのでした。これからどうなるのでしょう?(年に数回の活動? それともメンバー交代?? はたまた自然消滅???)
 そして、ライヒは僕の頭がショートしてしまいました。全員がサイレント楽器を弾き、録音の音楽や台詞にあわせての演奏なのですが、ひたすら反復だったり、楽器が加わるごとにテンポ・アップしていったり、台詞の節回しと同じように演奏したり、などなど、一つ一つのアイデアは面白いのですが「必要だから様々なアイデアを組み合わせた」というよりも「アイデアを発表したいがためにつなぎ合わせた」という印象の曲でした。個人練習では絶対つまらないし、ARCOだけの演奏でもわけわからないし、録音と一緒の演奏にいたっては楽譜と睨めっこしてないとどこ弾くのかわからなくなりそうだし、仮に僕がプロの演奏家だとしても絶対に演奏したくないタイプの曲ですねぇ。最前列での観賞だったので、亮太郎君の楽譜が見えるのですが、見た瞬間にリジェクトしそうなものでした。ハノンとツェルニーを組み合わせたような感じ。そして、コンバスの楽譜並に休符が多いのだぁ!! こんな曲、誰が探してきたんでしょう???
 ……というわけで、BはともかくCが僕のキャパを超えてしまいました。アンコールのピアソラが古典曲のように聞こえましたさ。でも、僕が音楽もダンスもコンテンポラリーが苦手というのは、コンテンポラリーに関する教育を受けていないというのも関係あるのかもしれません。とはいえ「観客を楽しませる」のが演奏家の務めだと思っているので(このあたりは演奏家サイドは違う感覚なのでしょうが……)コンテンポラリー芸術はよっぽどでないとパスだなぁ。。。スミマセン>って誰に???>自分


2004年03月25日(木)18:30-途中退席
劇団四季「アンデルセン」@四季劇場[秋]

 B席 5250円 2階-7列-9番 (パンフレット:1000円)
 演出:浅利慶太

 アンデルセン:味方隆司
 マダム・ドーロ:高久舞
 ニールス:坂本登喜彦
 ペーター:有賀光一

 今月二度目の途中退席。まったくもって酷い公演でした。まずは、東京公演でありながらカラオケ!! コーラスまで録音されているので、舞台面とのギャップが目立つし、ダンスや芝居とのズレも生じゃないから調整されないし、何よりも臨場感に乏しい状態なのがツライ。ことに序曲の時の間抜けな空気はどうしたら良いのでしょう???
 アンデルセン役の味方氏は覚悟はしていましたがあまりの下手さ、地味さに唖然。華なんてこれっぽっちもないし、主役らしさが皆無なのです。歌は怪しく、芝居は四季ならではの棒読み、ダンスはこれといった見せ場もなしとあっては、チラシの写真がタイトルロールではなく高久さんになってしまったのもむべなるかな。彼が主役に抜擢されたのが謎です。どう見たって脇役の人でしょ。。。
 高久さんは「コンタクト」以来初めてで、歌や台詞は想像通りでしたが、プリマバレリーナ役にしては庶民的〜。四季はカジュアルな役者ばかりなので、高貴な役は彼女に限らずみなさん苦手としているのですが、衣装さばきといい、カツラの手入れといい、メイクといい、もっと上品にそしてキレイに見せなくっちゃ。話題のバレエシーンに関しては、秋劇場の狭い舞台にやたらとダンサーを登場させたのが災いして見せ場を失っていました。ゆえに、技術でプリマぶりを発揮できないので、品格でプリマを表現しなくてはいけないという、とんでもない難役になってしまったのは演出家・振付家のミス? そもそも、バレエダンサーが稽古の休憩時間にピクニックよろしく食事をするのって初めて聞いた! パ・ド・ドゥの一時間前から飲み食いなんかしちゃ踊れませんって!!←これは台本の問題ですね。。。
 ニールスの坂本さんは、バレエの舞台では何度も拝見していますが、道化だとかペトルーシュカといったキャラクターピースばかりだったので、二枚目役で、パ・ド・ドゥまであったのは楽しかった〜。心配していた歌も心もとないながら、正統派の発声を心がけているのが印象的でした。ただし、プリモとしては彼もツライなぁ。。。
 さてはて、上記だけでもだいぶオカンムリなのですが、一幕だけで席を立ってしまった原因はアンサンブル。二軍どころか三軍でしょうか? 歌や芝居はひたすらわめきちらし、ダンスは暴れまくるのみ。マリーさんじゃないけれど、勢いだけの舞台は下品です。おかげで芝居が非常に薄っぺらく、情緒もなければ感動もナシ。ただでさえステレオタイプの役ばかりの野暮ったい台本なのだから、出演者がもっと芝居で工夫したり、遊んだりの余裕を見せないと、まるで道徳の教科書を読み聞かせられているようで辟易することこの上なし。
 思えば、初演の市村さんは芝居で盛り上げたし、再演の幹ちゃんは歌で聞かせたし華やかでした。そして、日生劇場は舞台が広くてダンサーたちものびのびと踊っていました。版権の問題があったとはいえ、本公演で無理やりこの座組でこの作品を上演するのは無理がありすぎました。四季の昨今のミュージカルの中でも極悪の出来かと思います。ブーーーーーーーーーッ!
 そして、こんな出来にもかかわらず「良かったよ、観ておいでよ」と勧めてくれた友人にも怒りフツフツ。いくら初見の作品だったからとはいえ、出来不出来位はわかるでしょうに。あぁ、帝劇行けば良かった!!!


2004年03月26日(金)16:00-22:05
新国立劇場「ワーグナー:神々の黄昏」プレミエ@新国立劇場オペラ劇場

 C席 11550円 3階-R5列-3番 (パンフレット:1000円)
 演出:キース・ウォーナー
 指揮:準・メルクル
 管弦楽:NHK交響楽団

 ジークフリート:クリスチャン・フランツ
 ブリュンヒルデ:ガブリエーレ・シュナウト
 アルベリヒ:オスカー・ヒッレブラント
 グンター:ローマン・トレーケル
 ハーゲン:長谷川顯
 グートルーネ:蔵野蘭子
 ヴァルトラウテ:藤村実穂子
 ヴォークリンデ:平井香織
 ヴェルグンテ:白土理香
 フロスヒルデ:大林智子
 ノルン:中杉知子、小山由美、緑川まり

 四年越しだった「トーキョーリング」もいよいよ完結編。神々が、巨人族が、小人族が争奪戦を繰り広げてきた指環ですが、いよいよクライマックス。平日の夕方だというのにオペラ劇場は満席。いつもよりも男性客が多いようです。プレミエとはいえ、観客はすでにウォーナーの世界に馴染んでいるので、開演前にはワクワク感で劇場が期待で膨れ上がっているようでした。指揮の準・メルクルが登場するやいなや、期待がついに爆発したかのような、大拍手。一同が息を飲むなか開演しました。
 ウォーナー=ゆがんだ大規模な装置というイメージがあるのですが、今回は平面舞台を多用したオーソドックスなものでした。幕前芝居もあったりして意外な程におとなしめ。事前の予習も必要ない程でした(一幕の最初にノルンたちによる「過去」「現在」「未来」についてのレクチャーもあるしね・笑)。個人的に楽しみにしているブリュンヒルデの馬も、今までは巨大だったり小さかったりだったのが、今回はついにミニマム化。着せ替え人形に登場するようなおもちゃの馬が登場するので客席は大笑い。どうやら、歌詞内容とビジュアルとのギャップを狙っているようでして、何も恐れず勇ましい馬→すぐに壊れるおもちゃの馬、英雄ジークフリート→単純で頭の回転がにぶいアメリカ人、絶世の美女ブリュンヒルデ→いかめしく小錦のような女性……だったりするので、その素直じゃないところが「おぉぉ、イギリス人!」と感じる演出でした。特に今回は美術や衣装も60〜70年代のアメリカを意識しているようで、ギービヒ家の直線のみで構成された飾り気のない家具、厚手の生地を用いたピンクブロンドにピンクのミニスカートのスーツが印象的でした。(ジークフリートはちゃんとスーパーマンのTシャツ着用です・笑) ま、作品があまりに巨大なので、演出については一度観ただけでその意図までわかるのは無理ってものですが、少なくとも「面白い!」というのは確かです。スライディング・ステージと大迫りを多用した新国ならではのスケールの大きいステージングに圧倒されました。
 さて、演奏ですが、これはもの凄い! 現在の日本での最高レベルの集団という迫力です。何しろ、オケピに入っているのはN響なので、音の厚みといい安定感は圧巻。今さらだけど、管も弦もうまいわ。おまけに音色の表現分けまでやってのけるので、オケだけのシーンですらあまりのドラマティックさに「ほほぅ」と聞きほれてしまう次第。東フィルから交代したのも納得。ホルンの8人がビシッと揃い、強弱どころか音色までコントロールしてて感動的。
 「神々の黄昏」ではジークフリートとブリュンヒルデが大活躍するのですが、とにかくドラマティックな声で延々と歌わなければならないという超難役。何しろワーグナーですから、他オペラに比べて歌っている時間が長く、歌唱力だけでなく体力も必要なのです!! フランツは出だしこそ「ウォーミングアップ?」と感じさせたものの、後半に向かって尻上がりの好演。ことに、第3幕が圧巻でした。最後の最後の筋肉疲労最悪になってからのハイCの連発もピシリと決め、軽やかなメロディからドラマティックな絶唱まで自由自在な歌いっぷり。表情の豊かさと、素直に悪人に騙されてしまいそうな人の良さそうなキャラクターがこの役にピッタリなのも嬉しい。
 対するブリュンヒルデのシュナウトは登場の時点からアクセル全開。メゾのような安定した低音から、トランペットのような高音までをムラなく響かせまくり。それでいて繊細な表現も出来ちゃう(=筋肉が張ったままにはなってないってこと!)神業を披露。幕切れはたった一人で全○十時間にも及ぶ「リング」を締めくくるという大役を余裕でこなし、深い感動を呼び起こしたのでした。
 公演の成功には主演コンビの力量ももちろんなのですが、実は今回は脇役も凄かった! 他の作品だったらプリマを張っちゃう人たちが3人口で歌ってたりするので、チョイ役ですら見逃せない・聞き逃せないという贅沢さ。ちょっとしたフレーズですら聴きどころになってしまうのです! 中でもヴァルトラウテの藤村さんは圧巻。彼女の声は日本人離れしたスケールの大きさがあるのですが、前回公演でエルダを演じていたとは思えない若々しさ(注:今回はエルダの娘の役です。「リング」は同じ歌手が別の役で再登場することが多いのでわけわからない。。。)短い出番にもかかわらず、大喝采でした。ノルンの三人もアンサンブルとしての響きもピシッと揃っているし、ソロはソロでドラマティックだし、素晴らしい出来でした。その他の女声陣は、さすがにスタミナが足りないというか、声のボリュームが作品に追いつかない感がありました。ま、周りのレベルが高いのが原因ですけど。。。
 唯一残念だったのが長谷川氏。「歌いきった」ということでブラボーを浴びてはいましたけれど、いっぱいいっぱいで余裕なし。まずは外来キャストに比べて声量がないのでめいっぱい張り上げているのですが、フランツやシュナウトといった余裕綽々キャストが共演なので、頑張れば頑張るほど、力尽きていくのが気の毒でした。歌に余裕がないので、芝居に回す余力もないようで、表情も固まったまま。本来、主役に対抗する悪役として、舞台を引っ掻き回す美味しい二番手役のはずなのですが、しょっぱなから白旗を振っている状態。ん〜、この役も外来キャストにするべきだったんじゃないかしらん? 彼は低音になると音圧がなくなるタイプなので、迫力負けしてしまうのです。舞台を眺めながら「(歌は別として)わたさんがこういう役演じると上手いんだよなぁ」と考えてしまいました。
 ま、無傷ではありませんでしたが、なかなかのレベルでの「リング」完結に、幕が降りると同時に劇場が破裂するのではないかと思える大拍手。作品への感動、演出・出演者への感動、そして、このチクルス上演にこぎつけた日本オペラ界と上演に踏み切った新国への感動と、色んな思いがよぎって、感動的でした。出演者も「やり遂げた!」という清々しい笑顔(一部は疲れ果ててましたけど・汗)。残念だったのはキース・ウォーナーがカーテンコールの際に登場しなかったこと。休憩時間にロビーでサイン会はやってましたけれど、日本オペラ史に残るであろう公演の初日なのだから、やはり舞台でご挨拶していただきたかったなぁ。


2004年03月28日(日)15:30-18:25
宝塚歌劇団花組「飛翔無限」「天使の季節」「アプローズ・タカラヅカ!」@東京宝塚劇場

 S席 8000円 1階-15列-42番 (パンフレット:1000円)
 演出:「飛翔無限」:植田伸爾
     「天使の季節」:植田伸爾、中村一徳
     「アプローズ・タカラヅカ!」:三木章雄、藤井大介、齋藤吉正

 ギスターブ/ペスカトーレ:春野寿美礼(太郎:轟悠/権左衛門:古代みず希)
 マルゲリタ:ふづき美世(お花:朝霧舞)
 アッサーラ:瀬奈じゅん(銀之丞:海峡ひろき)
 マカローニ:夏美よう
 カルボナラ:梨花ますみ
 ペペロンチ:矢吹翔(みみずく:早乙女幸)
 ミネストロ:翔つかさ
 ラザーニア:大伴れいか(志津:灯奈美)
 アベルタン:彩吹真央(三郎丸:一路真輝←主役))
 ジョルジュ:蘭寿とむ(次郎丸:高嶺ふぶき)
 近衛士官:愛音羽麗

 宝塚90周年イヤーにおける最初の作品ということで、祝典色の強い、ゴージャスな三本立て公演でした。
 「飛翔無限」では花組トップトリオは主演しない作品。花組の誇る歌手たちによるアンサンブルで幕があがるのですが、柔らかな音色、伸びやかな高音が祝典にふさわしく、ほほぅと聞きほれているうちに、春日野八千代、松本悠里、轟悠の専科にして理事の三名が登場しての祝舞になるのですが、専科の三名は歌うでなく語るでなく、ひたすら舞うだけにもかかわらず、存在感の確かさでしっかり舞台を固めます、といった印象を受けました。お三方共に、舞台センターに立つのが慣れているのですが、お年を召した春日野さん、女役の松本さん、やや地味なトップだった轟さんというトリオのせいか、華やかな中にも落ち着きと格調高さがありました←良い意味でね。通常のトップとは違う「専科」としての存在意義を見せつけられて気がします。春日野さんは間もなく88歳で、20周年記念〜90周年記念までの節目節目の公演に出演しているという「生きた宝塚の歴史」の方なのですが、小さな動きにもかかわらず、かもし出される貫禄は圧巻で、いつもだと保護者だとか教頭先生と揶揄される松本さんや轟さんが可愛らしく見えてしまうのが印象的でした。舞台転換のほとんどない和物の舞踊なので「飽きるかな?」と実は危惧していたのですが、どうしてどうして、あっという間の20分で、見惚れてしまいました。理事三名の力量に感服。
 そして休憩なしに始まる洋物芝居が「天使の季節」という一幕のコメディ←矢吹翔さんも出演。上記配役表では「恋さわぎにおける役名・配役を表記してみました)。が、理事長の作となっていますが、これは1991年に上演された、酒井澄夫の作・演出による「恋さわぎ」のパクリ。和→洋にはなってはいても90周年記念作品なのに焼き直しってのはどうよ? それも他の演出家の作品の構成・落ちが一緒という時点で白けてしまいました。「恋さわぎ」の時は「どちらが美人か」だとか「狐憑き」だとか、人を傷つけない笑いを提供していたのが、今回はどの家庭も恐怖に震えているであろう「アルツハイマー(東京公演ではまだらボケと改称)」だとか出演者の顔の長さだとか「どこが”清く・正しく・美しく”や!」と怒り出したくなるような、後味の悪いコメディセンスに辟易。そして、30分作品を65分にリフォームなので間延びしまくり〜。これは一度で満足かなぁ。オサは二役ということで笑いを取ってナカナカの芸達者ぶりを見せてくれましたが、そもそも話を動かす役じゃないからトップとしては可哀想。アサコちゃんはステップを踏むだけで怪しくおかしく、蘭とむは女装するとハリウッドビューティーっといった趣のべっぴんさん♪ 今日は元・星組トップの麻路さきさんがご観劇のため“アッサーラ”王子を追いかける場面はいつのまにやら“アッサージ”王子と台詞が変わってるし、オサはいきなり「4代目トートです」と言ってアカペラで「エリ〜ザべ〜〜〜ト」と歌いだしちゃうし、アサコちゃんは客席降りの際、マリコさんにかくまってもらっちゃうしお遊びは満載(^O^)
 休憩を挟んで上演されたのは、アサコちゃんが「(秋のリサイタルへ)カモ〜ン、アプローズ、カモ〜ン」と歌い踊る(と勝手に決めこんでいる)「アプローズ・タカラヅカ!」 元旦の舞台中継とは打って変わった充実感(*^_^*) 宝塚はやはり生が良いですね〜。オサは貫禄で歌い上げるし、アサコちゃんは番長のごとく見栄を切りまくり気障りまくるし、この二人は売りが異なるのですごく良いコンビ。真ん中二人がで〜んと君臨していて、それぞれの得意分野に関しては他の追随を許さないものだから、下級生は手加減なしで歌い踊ることができて、組全体に勢いと熱気があります! 客席もそれぞれのスターに対してヒューヒュー声があがって、非常に賑やかでした。それにしても、歌うべき人が歌い、踊るべき人が踊るっていうのは気持ち良いなぁ。花組って博多座公演以外はトップと二番手がガップリという舞台が皆無だったから、ショーとはいえ、この充実感は嬉しい! 今後のアサコちゃん不在は寂しいです。。。ふーちゃんは泣き台詞とキンキン歌唱で僕はパスッ。あすかちゃんの方がスターとして堂々としてない? 
 ということで、僕にとっては『飛翔無限』と『カモ〜ン』だけでも充実してまんねん。←一日二回見るには重いかもね。胃もたれしそう(笑)