観劇日記〜2004年07月〜
02日(金) 21時30分 アキコ・グレース meets 古川展生 JZ Brat
03日(土) 15時 新国立劇場オペラ「ヴェルディ:ファルスタッフ」 新国立劇場オペラ劇場
06日(火) 19時 来日カンパニー「42ND STREET」初日 オーチャードホール
10日(土) 11時 宝塚歌劇団雪組「スサノオ」「タカラヅカ・グローリー!」 東京宝塚劇場
11日(日) 13時 新国立劇場オペラ「ビゼー:カルメン」 新国立劇場オペラ劇場
17日(土) 17時 東宝「レ・ミゼラブル in CONCERT」 東京芸術劇場中ホール
24日(土) 15時 二期会「モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ」 東京文化会館
25日(日) 13時 来日カンパニー「Matthew Bourne's PLAY WITHOUT WORDS」千秋楽 シアターコクーン


2004年07月02日(金)21:30-22:50
アキコ・グレース meets 古川展生@JZ Brat

 全席指定 ミュージックチャージ3150円 (パンフレット:なし)
 納浩一(b) /嘉本信一郎(ds)

 ポーター:ナイト&デイ
 パーカー:Donna Lee
 モリコーネ:シネマ・パラディソ
 バッハ/アキコ・グレース:シシリアーノ〜スルー・マイ・アイズ〜
 アキコ・グレース:悠久の路
 アキコ・ブレース:東京狂詩曲
 ガーシュウィン:サマータイム
 宮沢和史:島唄
(アンコール)
 リベルタンゴ

 勝手にベストと思っているアキコさんとのぼちゃんの組み合わせ公演です。演奏は「CD録音しようよ」と思うものですたー。この二人の組み合わせ、好きですねぇ。のぼちゃんは話たがるクセに話はつまらないので(昔は曲目解説とかしてくれたのに、最近は「好きなんです」しかないのが淋しい、、、というもっぱらの評判)アキコさんがコントロールしてくれて、上手に色んな話を引き出してくれるので、彼女と一緒の時は安心して聞く事が出来ます。へへへ。
 アキコさんの仲間たちは、アキコさんがクラシック出身のせいか(東京狂詩曲なんてベートーヴェンの熱情ソナタみたい)、音のきれいな人が多いので僕好みというのもお気に入りの理由かな。ベースは小気味良く軽やかに響くし、ドラムは風を感じさせるもので、お二人ともppを大切に大切に演奏しているのと、同じパッセージの繰り返しでも音色に変化をつけているのが嬉しい。そんな中、潤いある音色のアキコ嬢のピアノが颯爽と駆け抜けるので、非常に洗練された響きに満たされるのです。
 のぼちゃんはというと、わざと音程を大きく揺らし、ちょっと胡弓のような朴訥とした響きで乱入。ソリストとしてのぼ節を披露したのでした。アンコールでのリベタンはいつもはアキコさん主導で始まるのですが、今日はのぼちゃんヴァージョンとでもいいましょうか、パワフルな編曲となっていました。楽しかった〜。


2004年07月03日(土)15:00-17:50
新国立劇場「ヴェルディ:ファルスタッフ」@新国立劇場オペラ劇場

 C席 9975円(ATRE会員割引) 3階-L5列-3番 (パンフレット:800円)
 演出:ジョナサン・ミラー
 指揮:ダン・エッティンガー
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 ファルスタッフ:ベルント・ヴァイクル
 フォード:ウラディーミル・チェルノフ
 フェントン:ジョン・健・ヌッツォ
 医師カイウス:ハインツ・ツェドニク
 バルドルフォ:中鉢聡
 ピストーラ:妻屋秀和
 フォード夫人アリーチェ:スーザン・アンソニー
 ナンネッタ:半田美和子
 クイックリー夫人:アレクサンドリーナ・ミルチェーワ
 ページ夫人メグ:増田弥生

 名誉だけでお金のないファルスタッフは誘惑ついでにお小遣いもいただこうと、よりにもよって同じ文面の手紙を出してしまったことで大騒ぎになる、というイギリスの戯曲を元にしたイタリアオペラを、オランダに場面を移した演出で、ドイツやロシアなどの歌手が日本で上演する、という面白い状況でしたが、アンサンブルオペラとしては息がぴったり。もっとも、シェイクスピアの戯曲を二つ合体させているので、ストーリーに無理があるのと、説明過多な部分が多くて、あまり好きではないのですが、なぜかヴェルディが晩年はシェイクスピアに興味を持ってしまったのですからいたしかたありますまい。とにかく、アリアを挿入する余裕がないほど、登場人物がしゃべりまくりますが、このしゃべりまくりの面々に主役級ソリストを揃えてしまったので、アンサンブルが立派ですこと立派ですこと。ヴァイクルなんて、食べながら、飲みながら歌うという、信じられないことをしているのですが、パンだのソーセージで頬っぺたを膨らませたまま、タップリとした声量を披露してしまうのですから、その底力には圧倒されます。そして、演出が丁寧で、歌わずに舞台の隅にうだうだする場面であっても芝居を続行しているのが舞台を生き生きとしたものにしていました。
 とはいえ、話に魅力がなく、これといった曲もない作品なので、いざ聴きに来たものの、やっぱり好みじゃないわぁ。期待の中鉢さんの女装ですが、主要メンバーの中でもっとも小柄なので、違和感がないかと思いきや、ウェディングドレスをお召しになっても、とても男性的。女装になりきれてないのに、お笑いでもなく、たまたま女性のドレスを着ている男性、というだけという不思議な感覚を味わいました。
 全体的に男性陣が活躍していましたが、外来組も含めて、女性陣はかげが薄くて、ドラマにあまりからんでこなかったような気がします。個性をぶつけ合うというレベルにいたっていなかったのが原因かもしれません。クセモノのファルスタッフ&嫉妬深いフォード氏を卓越したひらめきでやり込めて行くたくましき女性達というにはあまりに迫力不足でした。残念。


2004年07月06日(火)19:00-21:45
来日カンパニー「42ND STREET」@オーチャードホール

 S席 12600円 1階-6列-30番 (パンフレット:1800円)
 演出:マーク・ブランブル

 ジュリアン・マーシュ:ロン・スミス
 ペギー・ソーヤー:マーラ・ダヴィ
 ドロシー・ブロック:ナタリー・バスター
 マギー・ジョーンズ:モーリーン・ヴェロニカ・イルメンシー
 バート・バリー:イヴァン・アルブーム
 ビリー・ローラー:カイル・ディーン・マーシー
 ビル・ヘンズリー:アブナー・ディロン
 パット・デニング:デヴィッド・グラント

 '85年の来日時は「舞台装置があまりに大掛かりなので、NHKホールでないと上演できない」と言われていたので(ちなみに約20年前にして、S席25000円でした)舞台袖の狭いオーチャードホールではどう上演するんだと心配だったのですが、クラシックにゴージャスに、という前回公演とは異なり、軽やかでシャープな作品に衣替え。いかにもお金をかけています、というバブリーな前回の公演も大好きでしたが、今回のものは、規模も予算も桁違いですが、どことなく親しみを感じるものでした。手の届かない存在が身近になった感じ。なんでかなぁ、と考えながら観劇してたのですが、衣装といい装置といい宝塚の地方公演。ついでに、カンパニー全体の温かみまで宝塚チックとあって、勝手に馴染んでるんですよねぇ。これは、作品がクラシックなこと、レビューシーンが多いこと、衣装がカラフルなことも影響しているのかもしれません。
 古いタイプの作品らしく、歌担当、ダンス担当と役によって分かれているのですが、今回のカンパニーはどちらかというと歌重視の印象を受けました。これは、オケピの関係で席番こそ6列目ですが、実際は最前列で全体が見えなかったというのも影響しているのかもしれません。でも、舞台使いが狭いので、ちと踊りにくそう。それに反して、オーチャードの音響ともあって、歌手にとっては歌いやすそう。
 それにしても、この作品は名セリフの宝庫なのです。中でも僕のお気に入りは「無名の新人として楽屋を出て行くけれど、スターとして戻ってくるんだ」というもの。いかにもアメリカンドリームな台詞ですけど、大好きなんですワ。登場人物の誰もが良い人、というのは一歩間違えると平坦でつまらないドラマになってしまうし、さらには展開だってわかりやすいのですが、その流れに乗って楽しんじゃってます。


2004年07月10日(火)11:00-14:10
宝塚歌劇団雪組「スサノオ」「タカラヅカ・グローリー!@東京宝塚劇場

 2階16列席 2500円 2階-16列-67番 (パンフレット:1000円)
 演出:木村信司(スサノオ)/岡田敬二(グローリー!)

 スサノオ:朝海ひかる
 イナダヒメ:舞風りら
 アマテラスオオミカミ:初風みどり
 アオセトナ:水夏希
 アシナヅチ:未来優希
 月読:壮一帆
 アメノウヅメ:音月桂
 アワジヒメ:美穂圭子
 タヂカラオ:天希かおり
 オキノヒメ:白羽ゆり

 まだ一度も観てないのに、明日は千秋楽ということで一大決心して早朝から日比谷入り。目的は徹夜明けの友:立見券。本日の当日座席券は約50枚。僕は70番目位だったので無事立見券を確保……のはずが、キャンセル待ち希望が多かったせいか、残り6枚の中から座席券を選ぶことに(完売にならないと立見券は発売されないのです)。とまぁ、上演中に寝てしまうのではないかと心配しながら客席に着いてはじまった「スサノオ」は何十人もの太鼓の連打で開幕。ちょうどサントリーホールのひな壇に沢山の太鼓を並べた感じと言ったらわかりやすいでしょうか。この装置が最後まで使いまわされるのですが、段差がつけられた舞台は非常に見やすく、いきなり「剛」を感じさせる幕開きに思わず拍手。続いて登場するトップの朝海嬢もあいかわらず女の子にしか見えないけれど、とりあえずは舞台の中心に立つ姿が様になってきた気がします。とはいえ、まだまだ求心力が弱いのも事実。先日読んでいた小説の一節ですが「60年代までが個人プレーの時代」とのこと。となると、宝塚といえども、トップのオーラが翳ってきているのも致し方ないことなのかもしれません。時代とともに変化する姿に感慨をおぼえました。で、この「スサノオ」という作品の第一印象ですが、日本オペラ振興会、もしくは新国オペラの日本人作曲家シリーズの作品をなぜか宝塚が上演しちゃった感じ。場面数がたったの4場で、装置もほとんど変化ナシ。出演者のほとんどが着たきり雀で白一色。おまけに政治色が強いのも(パンフでわざわざ日本の神話をベースとしたファンタジーと断っているのが反語的色合いを感じさせます)「宝塚歌劇」としてはどうなんでしょう? 若手・中堅スターも完全に役不足で気の毒でした。
 ショーの「タカラヅカ・グローリー!」は今にも狸組の面々(ツレちゃんとかルミさんとか…)が登場しそうなクラシックな作品でした。つい最近、コマ劇場で似たような「タカラヅカ・メドレー」を楽しんだのですが、やはり最近の現役スターさんは技術はあれどもアピールしよう、お客を楽しませよう、という気迫に欠ける気がしました。よって、技術で見せる場面はそこそこ盛り上がるのですが、雰囲気で見せようという場面になると途端にスカスカ。そんな中、初舞台生の勢いとハツラツとした生きの良さが際立っていました。今の段階では舞台の出場場面に全力投球。うん、これが気持ち良いですねぇ。もっとも、いつまでたっても100%の舞台というのじゃ困るんですけど。何はともあれ、初舞台生50人が加わることによって、久しぶりに宝塚の人海戦術を見ることができて満足です。ここ最近、二階席から観ると、舞台の後ろ半分がスカスカで淋しいことが多かったのですが、とにかく、舞台に役者がぎっしりと居並ぶと、それだけで嬉しくなってしまいます。ハロー・ゴージャスです!
 さてはて、そんな中、トップの朝海嬢ですが、「スサノオ」では和物の作品ではありながらファスナーがあちこちにつけられた、パンク風ジャケットと、長髪という独特のコスチュームが似合っていたし、見かけに反した力強い発声も「戦いの神」にふさわしかったかと思います。彼女もトップに就任して3作品目。ようやくこれから個性発揮といったところでしょうか。トップ就任後、初の満員御礼というのも、まずは喜ばしい限りです。今回は押しの一手のため、芝居に歌に疲れることが多かったので、今後は余裕を前面に出していただるとよりトップさんらしくなるのでは、と思いました。彼女の場合は単独三番手も単独二番手もなくトップになってしまったので、これからの変化に期待。まだまだ殻をかぶっている気がします。ショーでは良く踊っていたけれど、まだまだ技術優先の感があります。宝塚のトップさんは4作目以降で化けることが多いので、彼女も次回作に期待!
 二番手でありながら、スターとしての存在感を存分に発揮したのがアオセトナ役の水嬢。「スサノオ」では登場シーンが短いにもかかわらず、インパクトと印象の強さにおいてはトップさん以上。技術うんぬん以前に、宝塚スターとして存在感があるのが頼もしい限り。今まで線の細いスターだと思っていたのが、いつの間にやら余裕を身に付けたようです。今が旬の人かもしれません。ショーでは、バレエがベースの朝海嬢のダンスvsジャズがベースの水嬢のダンス合戦がなかなかの見ものでした。ダンスだけでなく、スター性まで張り合っているような錯覚をおぼえました。
 アマテラスオオミカミ役の初風さんもまた登場時間が短い上に、女役に回され、難曲を歌わされるという、あまり美味しくない立場でしたが、アマテラスオオミカミ本人の部分と、アオセトナが変身したニセ・アマテラスオオミカミを演じ分けたのはさすがです。が、宙組では感じませんでしたが、雪組に出演ともなると、さすがに「スター専科」というよりは「本専科」といった味わいを感じます。その立場と、彼女のファンの(おそらく彼女も)スターとしての存在を求める気持ちとのギャップに違和感を感じました。別格脇役として各組に出演する立場と割り切っていただけるのであれば、これほど心強い人はいないのですが、今の中途半端な状態はファンではない僕がみてても痛いかなぁ。そして、彼女は技術的にはバランスの取れたスターさんではありますが、「ショー」における、朝海・水と並んでのダンスはさすがに年齢を感じさせられてツライ!!
 さて、イナダヒメ役の舞風りら嬢ですが、いかんせん、上記三人がメインの芝居なので、トップ娘役といえども、しどころナシといった印象でした。朝海嬢が情感に乏しく、舞風嬢との芝居の駆け引きがない、というのも原因かもしれません。とはいうものの、いつの間にやら雪組の雰囲気にも馴染んでいたようです。でも……正直なところ……印象に残ってないんです、ほとんど(汗) 多分、芝居もショーもダンスをほとんど封印され、歌に専念していたからかもしれません。彼女は歌がダメってわけじゃないのですが、やはりダンスを期待するのが人の常ってものでして、ショーにおいては、コム・ミズ・ガイチのダンスではなく、コム・ミズ・リラのダンス、ガイチの歌という構成が良かったな〜。歌手は年齢と共に熟すことが出来るけれど、ダンスばかりはいろんな意味で30歳前後がベストシーズンなわけですから、踊れる時に踊っておかないとね。


2004年07月11日(日)15:00-18:50
新国オペラ「ビゼー:カルメン」@新国立劇場オペラ劇場

 C席 8977円(アトレ割引) 3階-2列-8番 (パンフレット:800円)
 演出:マウリツィオ・ディ・マッティーア
 指揮:沼尻竜典
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 カルメン:ナンシー・ファビオラ・エッレラ
 ドン・ホセ:ヒュー・スミス
 エスカミーリョ:チェスター・パットン
 ミカエラ:大村博美
 スニガ:長谷川顯
 モラレス:青山貴
 ダンカイロ:今尾滋
 レメンダード:市川和彦
 フラスキータ:大西恵代
 メルセデス:片桐仁美

 素晴らしいミカエラでした。彼女は二期会で「椿姫」も歌っ ていると聞いていたのですが、予想に反して立派な声。ソプラ ノでありながら安定した低音が出せるので、もしかしたら、カ ルメンだって歌えるかもしれません! 次回の新国への登場が 「蝶々夫人」のタイトルロールと聞いて、なるほどなぁ、と納 得。日本人離れした実の詰まった、それでいて抜けの良い声に まずは聞きほれてしまいました。(ヴィオレッタ聴いておくべ きでした)。そして、彼女のミカエラは「風と友に去りぬ」の メラニーのごとく、一見おとなしそうだけれど、芯は強い女、 というのを見事に表現していました。歌でドラマが語れるとい うのはオペラ歌手としてすごい武器ですね。演出や指揮者から の提言もあったのかどうかはわかりませんが、これが見事に彼 女の声とマッチし、感情的にわめきがちなストーリーの中、見 事に作品の引き締めとなったのでした。カーテンコールでの拍 手も最高。
 今回は日本人が大活躍の舞台で、しょっぱなのソロを披露す るモラレス役:青山氏のあまりの美声とソリスティックな声の 通りの良さに「誰よ誰よ?」とパンフをごそごそ。思わず「上 手いっ!」とうなってしまいました。チョイ役なのがもったい ないけれど、これからの活躍は要チェックですよぉ。そして、 密輸業者のダンカイロとレメンダードを演じる新国常連メンバ ーの今尾氏と市川氏は、ラテンの血を感じるお二人で、自由き ままに動き回る姿とちょっとしたうさん臭さはジプシーにピッ タリ。非常に生活感豊かな役作りでした。ジプシーといえば、 フラスキータとメルセデスはこれまた豪華に大西氏と片桐氏。 残念ながらこのお二人は調子が悪かったみたいで、片桐氏にい たっては、夏風邪でもひかれたのか(?)金切り声になってい る部分が多くで気の毒な程。でも、シングルキャストというこ ともあってか、このジプシー四人衆のアンサンブルがバッチリ で、二幕で歌われるかの有名な五重唱の小気味良さといったら ! 調子の良い時に是非もう一度出会いたい方々でした。
 さらにさらに、絶好調なのが合唱団と助演メンバー。集団演 技として最高の出来。老若男女がまさに舞台の上で生活してい る様はまるで映画を見ているようでした。もちろん、主役の邪 魔をしない範囲ではあるのですが、舞台の上で逢引していたり 、喧嘩したり、追いかけっこしたり、甘えたり、ナイショ話し たりと、ついついオペラグラスで主役を押しのけて覗いてしま う面白さ。脇役の集団演技というと宝塚もナカナカですが、ど うしても若いお嬢さんのみということで生活感は今ひとつなの ですが、「庶民の」生活を感じさせる演技に関しては、新国合 唱団が他オペラに比べても段違いの演技力。やっぱり舞台人は 場数ですね。もちろん、段取り演技の人や大根の人もいらっし ゃいますけれど、要所要所に引き立て役が配置されていてアッ パレの出来。舞台人は舞台に乗ったら照れてはいけません。な りきってこそ舞台人!
 さてはて、順番が逆になってしまいましたが、ようやく主役 陣。まずはタイトルロールのエッレラ氏ですが、カルメンとし ての存在感や色気はダントツ。多分、僕が今まで観た数多くの カルメンの中でも屈指の「女優」さんです。役に入っちゃって いて、そののめりこみ具合、集中力は特筆物。何しろ、ホセに 刺し殺された後も、強烈なライト(スペインですから…)の下 、カ〜ッと目を見開いたままなのですから。ニ幕でのダンスも 色っぽく、これで声さえ出れば文句なしだったのです。残念な がら、周囲に声自慢を集めてしまったがためか、ミカエラより もか弱い低音が……。彼女にとって、新国オペラ劇場は大きす ぎたのかもしれません。
 ビジュアル面ではエスカミーリョも負けてはいません。長身でスマートで足まで長いときたもんだ。「闘牛士の歌」という超有名ナンバーを与えられてはいるものの、実は大した役じゃないだけに、カルメンがホセからいきなりエスカミーリョに鞍替えするのが納得できない公演も多い中、なぜか納得できてしまうルックス。一言で言えばオペラ歌手っぽくないんですよ。今にもフラメンコを踊りだしそう。でも、声量はないし、音程も怪しく、音楽面ではからっきしハズレでした。プロフィールを見るとメトでも歌ってるそうですが、声通るのかしらん? 何よりも、受けを狙って、わざとテンポを揺らしたり、音を延々と伸ばしてみたり。でも、この手のハッタリは新国では通じないんですよねぇ。本番でいきなりこうなっちゃったんだとしたら本人の計算ミス。。。
 そして本日のワーストキャストがドン・ホセ。こんなでくの坊みたことない! まずはまっすぐ立てないんだもの。常に仁王立ちして、客席見て歌うだなんて、アンタいったいいつの時代の歌手よ??? 芝居なんてあったもんじゃありません。そりゃ、オペラ歌手に感動的な芝居は期待しないけれど、ここまで大根役者の歌手はコンサートに専念していただきたい! が、今日のホセは歌までペケ。声の立ち上がりが悪いので、とにかくテンポが崩れること崩れること。「花の歌」なんて「いつ終わるのかしらん?」と思わず時計を覗き込んでしまう程、テンポが落ちていくのです。おかげで、終幕の二重唱など、歌も芝居もカルメンの足を引っ張ってしまいました。タイトルロールの足ひっぱってどうするんでしょ。まったく怒りまくりです。このはは今回限りで結構です。
 ……とまぁ、個人的に歌手にあたっていたのですが、カーテンコールではいがいと観客のみなさんは大人しく「???」と思っていたら(新国のお客さんは結構厳しいのでブーが良く飛ぶので…)、指揮の沼尻さんが登場するやいなや大ブーイング。なるほど、歌手を生かすも殺すも指揮者次第ってわけですか。。。個人的にはうねりを生かしたフレージングが好きでしたけど、歌手に合わせたのだか本人の意思か知りませんけど、あのテンポの揺れは確かにブーイングものなのかもしれません。スミマセン、あまり印象に残ってないです(汗)


2004年07月17日(土)17:00-19:35
東宝「レ・ミゼラブル in CONCERT」@東京芸術劇場中ホール

 S席 8350円 1階-M列-16番 (パンフレット:1500円)

 ジャン・バルジャン:山口祐一郎
 ジャベール:佐山陽規
 エポニーヌ:本田美奈子
 ファンティーヌ:マルシア(井料瑠美の代役)
 コゼット:剱持たまき
 マリウス:岡田浩暉
 テナルディエ:三遊亭亜郎
 テナルディエの妻:瀬戸内美八
 アンジョルラス:岡幸二郎

 バブル時代の象徴とでむ言える、大掛かりな舞台装置が売り の一つともいえるレミゼのコンサート・ヴァージョンです。な ぜか会場は芸劇中ホール(約850席)だし、出演者は日替わり だし、今までレミゼに参加していたOB・OGキャストが出演する 日もあり、なによりも公演数が少ないということで、チケット 争奪戦! どうせコンサート形式なんだから、いっそのこと大 ホールでやれば良いのに! ……なぁんてほざいていたのです が、いざ客席に身を沈めると贅沢感にドップリ。芸劇中ホール は公共施設にもかかわらず、リッチな雰囲気があって大好きで す(ちなみに大ホールはキッチュです)。オケピがないから舞 台は近いし、マイクいらないんじゃない?と思える程に出演者 の声は響き渡るし、気持ち良かった〜! 役者さんは舞台上の 椅子に並んでこしかけ、出番になるとマイクの前に移動して歌 う、という形式でしたが、衣装を身に着け、若干の芝居が入る ので、本公演を観たかのような満足感を得ることができました ! ONとOFFの顔が見られる状態というのは、シェイクスピア 芝居のようで、興味深かったです。
 さて、本日は祐さんヴァルジャンの最終日だそうで、プロロ ーグ〜第一幕へのつなぎの大ナンバー(心を入れ替えて生きて いこうって歌ね)は、それはそれはドラマティックで、早くも 客席は大興奮。ちょっと張り上げ過ぎの気もしますが、僕は客 席を盛り上げるタイプの役者さんて好きなので、もちろん大喜 び。が、テナルディエの酒場のシーンからなぜかボロボロ。舞 台の上でのアドリブは構わないけれど、お客さんよりも誰より も自分で受けちゃって、そのまま仕事モードに戻らなかったの が痛い! 常に平均点の役者もつまらないけれど、金メダルと 予選落ちをくり返す役者というのは非常にスリリングで心臓に よろしくないかも(笑)
 そんな中、舞台の手綱を締めたのがルミさんこと瀬戸内美八 サマ。恐くてコミカルで人間臭くて、圧巻でした。彼女の強み は客席の空気に合わせて、芝居をコントロールできることでし ょうか。それどころか、場面によってはお客さんまでコントロ ールしてしまうのですから、本日の舞台がここまで盛り上がっ たのはルミさん効果。舞台上にいるのが自然なんですよねぇ。 素晴らしかったです。
 一体何年ぶりよ!?の佐山さんをはじめ、島田歌穂以来最高の エポニーヌ役者の本田嬢、急な代役で活躍のマルシア(彼女の wの発音は苦手だ……)、そして、最新メンバーのみなさんと の共演ですが、面白いことに、登場した時代や役によってカラ ーが異なり、アンサンブルとしては微妙に不協和音を奏してい たのが意外でした。こってりフレンチとあっさり和食が一緒に 出されてしまった感じとでも言いましょうか。今まで勝手に妄 想キャストを組んで楽しんだりしていましたが、アンサンブル が主役とも言えるレミゼに関しては、上演時の組み合わせこそ がベストなのだな、と再認識しました。最新版レミゼが軽い印 象なのは、リニューアルによる編曲ばかりが原因じゃなかった んですねぇ。


2004年07月24日(土)15:00-18:00
二期会「モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ」@東京文化会館

 C席 7000円 3階-R4列-16番 (パンフレット:1000円)

 演出:宮本亜門
 指揮:パスカル・ヴェロ
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 ドン・ジョヴァンニ:黒田博
 騎士長:堀野浩史
 ドンナ・アンナ:吉田恭子
 ドン・オッターヴィオ:望月哲也
 ドンナ・エルヴィーラ:佐々木典子
 レポレッロ:境信博
 マゼット:斉木健詞
 ツェルリーナ:林美智子

 場所をアメリカ、時代を9.11に移した演出でした。亜門さん の演出家魂は満たされたかもしれませんが、二期会の歌手と二 期会の観客を考えるといかがなものでしょうね。別に亜門さん が演出するからといって、若者が沢山劇場に押しかけていた、 という印象も受けませんでしたし。。。最近の亜門さんは、エ ンターテイメントとして、お客さんを楽しませようというより も、自分の趣味に走りすぎてしまうきらいがあって、その演出 は山や谷のない、いわば山の連続という状態。二期会デビュー の「フィガロの結婚」はシンプルな中にも、人間の面白さとい うものを感じさせられたのですが、今回は人間ドラマは脇に置 いてしまったがため、とにもかくにも演出が空回り。とにかく 「マイッタ」の一言です。音楽と演出がこれほどまでにかみ合 わない舞台というのも結構苦痛なものです。さらに、装置も「 今から野田秀樹の芝居!?」と思わせる雑多&大掛かりなものの ため、歌手は歌う前に疲れ果てている始末。若手で揃えたキャ ストではありましたが、途中から演技を放り出す歌手あり、息 絶え絶えになってしまう歌手ありで、気の毒でした。
 アイデア満載なのは認めます。凄いです。騎士長はアメリカ の軍人だし、「カタログの歌」では携帯が登場するし、ドンナ ・アンナはオッターヴィオに愛を語りつつ実は浮気をしている し、レポレッロはドン・ジョヴァンニを愛するゲイだし、マゼ ットとツェルリーナはドラッグ漬けで、ドン.ジョヴァンニが 催すのは乱交パーティだし(Go-Goまで登場!)、披露宴での ご馳走はケンタッキー・フライドチキンだし、おまけにフィナ ーレは巨大な星条旗が降りてくるわ、出演者はこれまた星条旗 の小旗を振るわで、あたしゃもう呆然。最近の二期会は世代交 代が激しく、スター歌手不在状態で、演出重視に動いているよ うですが、話題の演出となった、という面では成功なのでしょ うね。でも、僕はこの演出大ッ嫌い。
 いえね、前衛的な演出ってあっても良いと思うんですよ。た だ、今回の亜門版はあからさまにアメリカ賛歌色が強すぎて、 音楽をないがしろにしていて、「オペラの演出としてはどうよ!? 」状態。実は来年も亜門さんは二期会と契約があり「コシ・フ ァン・トゥッテ」を演出とのこと。亜門版「コシ」といえば、 かつて紀伊国屋ホールで上演した、傑作コメディ版がありまし た。規模も時代も異なりますが、あれは楽しかったなぁ(遠い 目)


2004年07月25日(日)13:00-15:00
来日カンパニー「Matthew Bourne's PLAY WITHOUT WORDS」千秋楽@シアターコクーン

 S席 13000円 1階-F列-8番 (パンフレット:1500円)

 振付・演出:マシュー・ボーン

 アンソニー(英国青年貴族):サム・アーチャー、リチャード・ウィンザー、ユワン・ウォードロップ
 グレンダ(彼のフィアンセ):ミケーラ・メアッツァ、サラーン・カーティン、エミリー・パーシー
 プレンティス(彼の召使):スコット・アンブラー、エディー・ニクソン、スティーヴ・カーカム
 シーラ(彼のメイド):ヴァレンティナ・フォルメンティ、ベリンダ・リー・チャップマン
 スペイト(彼の友人):アラン・ヴィンセント、エディー・ニクソン、ユアン・ウォードロップ

 一つの役を三人で演じるという非常に凝った作りの作品でし た。トリプル.キャストではなく同時に三人。三人が同じ動き の事もあれば、本音と建前を演じ分けたり、実際と妄想、過去 と現在と未来だったりと、表現が多彩なことこの上なし。歌や 台詞がないので、互いに邪魔することもなく、意外とすんなり 作品世界に入っていくことができました。この手法、面白いで すねぇ。おまけに、会場がシアターコクーンという小劇場だっ たので、舞台と客席との一体感を感じることができました。し ぐさや動きがちゃんと客席に伝わるから、非常に細やかな演技 でした。大劇場芝居に慣れているので、こういうのは新鮮です ね。映画の世界に入り込んだみたいです(笑) 英国の作品ら しく、階級の差による傲慢さや憎しみがキーポイントになる作 品で、シニカルな笑いに溢れていて、結構、僕の好みでした。
 アンソニーが新居を購入し、新しい召使を雇ったところ、召 使はメイドも一緒に連れてくるのですが、最初は着替えから食 事、入浴にいたるまで至れり尽せりで、僕なんかからしたら鬱 陶しい位に世話される殿様生活を送っているものの、ジワジワ と主導権を握られ、最後にはフィアンセまで失ってしまうとい うドキドキハラハラのストーリー。ダンサーたちは、テクニッ クよりもキャラクター重視で選ばれているのか、登場するだけ でノーブルな雰囲気を漂わせる人、危険な香りを漂わせる人、 登場するだけで空気が変わってしまうというのは、多民族国家 のカンパニーならではかしらん? こういう部分は日本人だけ のカンパニーでじゃかもし出せないので、来日公演の醍醐味と も言えるでしょう。
 派手なダンスの見せ場があるわけでなし、舞台装置も一つの セットの方向を変えて使いまわすだけなので、大盛り上がりと いう千秋楽ではありませんでしたが、落ち着いた空気の中で「 大人の芝居を観たな」という気分です。うん、ダンスを観たは ずなのに、ストレート。プレイを観てきたかのような気分。こ れって凄くないですか!?