観劇日記〜2004年09月〜
05日(日) 15:30 宝塚歌劇団月組「飛鳥夕映え」「タカラヅカ絢爛II」 東京宝塚劇場
12日(日) 17:45 東宝「ミス・サイゴン」 帝国劇場
15日(水) 19:00 新国オペラ
「マスカーニ:カヴァレリア・ルスティカーナ」
「レオンカヴァッロ:道化師」
新国立劇場オペラ劇場
18日(土) 18:00 藤原歌劇団「ビゼー:カルメン」 東京文化会館
20日(月・祝) 15:30 宝塚歌劇団月組「飛鳥夕映え」「タカラヅカ絢爛II」 東京宝塚劇場
25日(土) 17:00 新国オペラ「プッチーニ:ラ・ボエーム」 新国立劇場オペラ劇場
26日(日) 17:00 竜小太郎特別公演「其往昔戀幻燈畫」 博品館劇場


2004年09月05日(日)15:30-18:40
宝塚歌劇団月組「飛鳥夕映え」「タカラヅカ絢爛II」@東京宝塚劇場

 SS席 10000円 1階-5列-32番 (パンフレット:1000円)
 演出:大野拓史(飛鳥)/草野旦(絢爛)

 蘇我鞍作 入鹿(そがのくらつくり いるか):彩輝直(トップお披露目)
 瑪瑙(めのう):映美くらら(サヨナラ)
 中臣鎌足(なかとみのかまたり):瀬奈じゅん(花組)
 軽皇子(かるのみこ):貴城けい(雪組)
 蘇我石川麻呂(そがのいしかわまろ):大空祐飛
 笠置(かさぎ):高ひづる(専科)
 蘇我蝦夷(そがのえみし):箙かおる(専科)
 皇極帝(こうぎょくてい):夏河ゆら
 阿倍倉梯麻呂(あべのくらはしまろ):光樹すばる
 小足媛(おたらしひめ):美々杏里
 唐津(からつ):嘉月絵理

 彩輝直のトップお披露目公演ではあるのですが、特別出演組に食われまくりとなってしまいました。口さがないファン仲間は「動員確保のための特別出演」と言っていますが、まさにその通り! 宝塚の舞台はいくら下級生が頑張ってもトップさんが引き締めができないと、観ていて辛いですわ。僕はとりたてて彼女のファンでもアンチでもなかったのですが、あまりに舞台の中央が似合わない姿に怒りを通り越して哀れみを感じてしまいました。直視できないんですもの。ま、その他も「なんでこの人事!?」と思える配役だらけで、なんだか新人公演を観ているような気分にすらなりました。ほら、役者のニンでない役が振られることってあるでしょ。あの状態です。
 芝居は政治と色事が適度にからんだ佳作だと思えるのですが、いかんせんメリハリなし、技術的に問題山積の主演者ゆえ、盛り上がりなし。さらに、演出も金太郎飴状態で、場面場面がぶつ切りで、ちょこっと会話があったかと思うと、すぐに話の流れをさえぎる不必要なダンスシーンの連発、トップさんの聞き苦しいソロの連発で、まさに拷問状態でした。そんなわけで、観ながらちょっとした台詞に過剰反応してしまうのですが、鎌足が入鹿にトップの座を狙っているのでは?とカマをかけられた際に「ご冗談でも困ります!」だとか「私の居場所がなくなるようなことは、どうかもちかけないで下さい」などと言い返すのですが、これがそのまま今回のトップさんと特別出演との関係を言い表していて、思わず客席で悶絶。宝塚の舞台は結構キツイ台詞が登場することがあって、意外とブラッキーです。おまけにクライマックスでの入鹿の台詞が「駄目だ、駄目だ、鎌足〜〜〜っ!」って、駄目なのはアンタやん、と劇場中が思ったに違いありません。そして、もう一つのブーイングが組長さん。元来、月組は庶民的な役者が揃っているので、高貴な芝居は苦しいのですが、あまりに品位の低い役作りに度肝を抜かれてしまいました。大きな目を見開いてギロリと睨み付けるサマは、役の上での恐さを通り越して、まるでいっちゃってる人! おまけにトップさんとのラブシーンもどきはあるわ、ソロナンバーはあるは(彼女がこんなにたくさん歌うのは初めて!)で、別格トップ娘扱い。次回作「エリザベート」ではきっとあの○○○○役になるのでしょうが、その前哨戦として、背筋が寒くなるものがありました。ビビアンも石川さんとの絡みがあるし、そういや、若手娘役はどこよ!?と探してみても、ちょい役でしかなかったりして「う〜む」と唸ってしまうのでした。そんな中、特別出演組の二人はノーブルな美しさで、ある意味、この二人がいなかったらどうなることかとすら思わせる公演でした。瀬奈嬢は和物は苦手らしく、いつもの精彩はないものの、押し出しの良さを感じましたし、貴城嬢は洋物だと気になる線の細さが和服に助けられて、錦絵から抜け出してきたかのような美丈夫ぶり。他組に出演というプレッシャーもあるでしょうが、「特別出演」と言われるだけのものがあるなぁ、と納得させられました。
 さて、ショーともなると、ますます特別出演組が大活躍。一体誰が主演!?という状態ですらありました。通常、お披露目公演というものはトップが映えるような芝居と、ワンマンショーに近いショーというパターンが多いのですが、こんなにもボロ出しまくりのトップさんも珍しい。。。いえね、美しいんですよ、とっても。ただ、役ではなく、彩輝直としてしか見れず、男役にも見えないのがツライ、とってもツライです。いやぁ、彼女がこんなにステキに見えない公演がトップお披露目だったとは、皮肉なものです。組子を率いてキザに踊ったり、華やかな掛け声で舞台を盛り上げたり、朗々と歌い上げていたりするのは瀬奈嬢が貴城嬢なんですもの。ちなみに、貴城嬢は狸組や星組公演を経て、押し出しが強くなったのですが、なんとピーターそっくりです。これは、貴城嬢が男っぽくなったのか、ピーターがあまりに美しく女装しているのか図りかねるところですが、とにかくキレイ。そして、瀬奈嬢はショースターとしての実力をいかんなく発揮。ちょっとした振り付けでもキザリ方、崩し方が他出演者とは段違い。舞台上での余裕がありました。彼女はいわゆる歌手と呼ばれる役者ではないのですが、賑やかなショーにおいては、ささやくような感情表現は舞台の賑やかさにかき消されてしまうので「まずは声量!」と思っている僕にとっては、今回のショーでのベストシンガーは瀬奈嬢! その他の出演者は貴城嬢も含めて(彼女は声量なさすぎ。。。)ささやいちゃってて「この作品にその歌い方はどうよ!?」状態。ま、そう思ったのは僕だけではないようで、オケピのトランペットも見事にこけてくれました。トランペットといえば、東宝劇場のトランペットはあまたある楽団の中でももっとも笑わせてくれます。そして、ショーでも組長さんは大目立ち。いつものようなダンサーとしてではなく、まるで「塩沢とき」のような巨大な鬘をかぶっての登場。とっても動きにくそうではあるのですが、僕が彼女に期待しているのは、こういう色物系統なので、結構好きでして、見とれてしまいました(笑) 出番が手ごろというのもありましたけど。このショーは星組版とほとんど同じ構成で、技術的にはもしかした星組の方が高いのかもしれませんが、雑多なエネルギーが充満しているという面では月組の方が面白く感じました。こういうのが続演の醍醐味ですね。
 とはいうものの、さすがに営業面でも苦戦しているらしく、通常の公演だとサバキなんてしようもんならすぐに係員がすっ飛んでくるのに、今回はサバキが堂々と行われているのに唖然。ご都合によりこんなに格差があって良いのやら? 憶測ですが、劇団から各生徒の会がたっぷりチケットを押し付けられているのでは???


2004年09月12日(日)17:15-20:00
東宝「ミス・サイゴン」@帝国劇場

 B席 4000円 2階-K列-27番 (パンフレット:1500円)
 演出:ニコラス・ハイトナー

 エンジニア:筧利夫
 キム:新妻聖子
 クリス:坂元健児
 ジョン:岡幸二郎
 エレン:高橋由美子
 トゥイ:tekkan
 ジジ:杵鞭麻衣
 アンサンブル:め組

 いきなりオカマちゃんの筧エンジニアが登場。度肝を抜かれました。その後も舞台上を走り回るわ、アドリブは入れまくりで笑いを取るわで大活躍。よくもまぁここまで役を自分のものにしたもんだ! そして、OKを出した演出家もエライッ!! 舞台から離れた内容で笑いを取るのと、下品な芝居が多いので好き嫌いは別れるタイプですし、帝劇の座長にはどうよ!? という印象もありましたが、お客さんをグイグイ引っ張っていくテンションの高さと、熱演にも関わらずうざったくならないので僕は楽しかった〜。残念なのは筧さんがミュージカルや大劇場に慣れていないのがはアリアリとしていて、聞いてるこちらの喉が痛くなる発声での一本調子の歌。もちろん、それをフォローするために表情豊かに演技し、走り回っているので、途中からそんなことは気にならなくなるのですが、テレビやCDに収まるタイプではないので、ライヴ限定の方なのでしょうね。芝居は絶妙ですが、歌や踊りが映えないタイプ(というかミュージカルは初めて?)の筧さんをアンサンブルの誰もが彼を盛り立てようという姿勢なので、まことに良い感じ。東宝のプロデュース公演ではありますが、まるで劇団公演のような集団力。筧さんも「ほい任せた!」とその上に乗っかっちゃうもんだから、スターとしての貫禄充分。クアトロキャストの公演なので、どうしても座長色を出しにくいはずですが、何の何の、筧カラーに染め上げたのは並の実力ではありません。市村エンジニアが哀愁漂う正統派だとすれば、筧エンジニアは叩かれても叩かれてもいつの間にか立ち上がっているタイプなのですが、同じ役を違った個性の実力派が演じ分けるのはまことに見応えがあります(実力も華もない誰かさんはこの際無視)。公演を重ねて、表現が大きくなったら物凄いスターになれるかもしれません。
 で「ほい、任された!」と絶唱を繰り広げたのが新妻嬢。喉の筋肉がたくましく、高音の伸びが素晴らしいのです。先日の松キムは娘→母への変化をドラマティックに見せ付けましたが、新妻キムは娘のまま突っ走る感じ。正直、タムへの母性愛はあまり感じられなかったのですが、ストレートに歌い上げる唱法と相まって、雑念に惑わされない芯の強さが魅力的でした。あと何年後の彼女でもキムを見てみたいです。
 サカケン・ジョンは結構叩いていた僕ですが、今回のサカケン・クリスはなかなか好みです。まずは兵隊さんらしいのと、直球の生き様表現がこの役にドンピシャリ。そして、彼の登場シーンは戦時下だという緊張感が漂っていました。歌は音域によって得意不得意があるのですが、ドラマティックな歌い上げはやはり気持ち良いものです。ところで、女性の扱いがとっても不器用に見えるのは演技なのか、自なのかちょっくら気になるところです。初々しいんですよ。
 ジョン=熱演というイメージを覆したのが岡さん。ルックスもさることながら、冷静で適確な判断を下していく、とてもスマートな兵隊さんでした。軍広報官としてニュースに出ても違和感ありません。まったく、役になりきっちゃうことにかけてはこの人の右に出る人はいないんじゃないでしょうか(演技力とは別です、念のため)。戦後、ブイドイのための組織で演説し、バンコクまで自ら調査にやってくるのも納得のジョンでした。サカケン・クリスとの対比も鮮やかに出て、良いコンビですね。


2004年09月15日(水)19:00-22:05
新国オペラ
「マスカーニ:カヴァレリア・ルスティカーナ」
「レオンカヴァッロ:道化師」
@新国立劇場オペラ劇場

 ランク8 2992円(アトレ割引) 4階-3列-40番 (パンフレット:800円)
 演出:グリシャ・アサガロフ
 指揮:阪哲朗
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 サントゥッツァ:エリザベッタ・フィオリッロ
 ローラ:坂本朱
 トゥリッドゥ:アティッラ・B・キス
 アルフィオ:青戸知
 ルチア:片桐仁美

 カニオ:ジュゼッペ・ジャコミーニ(セルゲイ・ラーリンの代役)
 ネッダ:ジュリエット・ガルスティアン
 トニオ:ゲオルグ・ティッヒ
 ペッペ:吉田浩之
 シルヴィオ:ルドルフ・ローゼン

 新シーズンのオープニング作品に選ばれたのはヴェリズモ・オペラの傑作二本立てです。ヴェリズモ・オペラというとなんだか重苦しいイメージがありますが、要はワイドショーネタのオペラとでも言いましょうか。今回の作品だって「カヴァレリア〜」は、婚約者(サントゥッツァ)を妊娠させておきながら、人妻(ローラ)と浮気をした男(トゥリッドゥ)が、婚約者の密告により浮気相手のダンナ(アルフィオ)に殺されるという話ですし、「道化師」も、とある若妻(ネッダ)は、不細工男(トニオ)からの求愛をこっぴどく拒絶したがために、若者(シルヴィオ)と浮気しているのを、年の離れたダンナ(カニオ)に密告されて、殺されてしまうという「スクープ! 男の浮気と女の浮気」という、とっても芸術的とは思えない題材なのです。浮気されて、ヨヨヨと泣き崩れると演歌の世界ですが、逆上して怒りを爆発させるわ、浮気がばれた側も謝るどころか逆切れしちゃうし「週刊○○」あたりが喜びそうなネタでしょ!?
 ……というわけでまずは「カヴァレリア〜」ですが、音楽が実に美しいのです。オケや歌手による様々な音ががミルフィーユのように幾層にも折り重なり、繊細なのにボリューム感のある、実に美味しい響きなのです。このところ当たり外れの大きい東フィルも今回は最高の響きをかもし出し、音楽の力をまざまざと見せ付けてくれました。そして、歌手は歌手で歌合戦状態。全員の声が自由自在に鳴りまくりという公演も出演者の多いオペラの舞台では珍しいことなのです。一体誰が主役なんだ!?とわからなくなった人もいたかもしれません。サントゥッツァは低音の響きがまるでテノールのようで、搾り出す低音が苦手な僕としては嬉しい限りでしたし、ローラの坂本さんは歌はもちろん、華やかな舞台姿と表情(演技もなかなか色気があってステキでした)だし、キスは婚約者には威張りちらし、浮気相手にはエロエロに迫り、母親(ルチア)には甘えん坊という、男の表裏三態を面白く見せてくれました。重量級の声が大喧嘩を繰り広げた直後に流れるのが有名な「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲なのですが、あまりに清く美しい調べが、とんでもないストーリーと対照的で、サントッツァのささやかな(そしてかなえられない)願望への祈りにすら感じられて感動的でした。新国は公演数が多いので、アンサンブルのこなれ方が他カンパニーとは段違いで、裏芝居も楽しみの一つです。
 そして「道化師」ですが、こちらは血なまぐさい話を華やかに彩る音楽。お祭りにやってくる巡業劇団のお話なのですが、実に華やかな印象を受けました。装置も衣装も「カヴァレリア〜」と同じにもかかわらず、この第一印象の変化はまさに群集芝居の賜物。ファンの僕ですら、コーラスとしてはまだまだと感じることの多い新国のコーラスですが、芝居として見せる実力に関してはホント素晴らしい団体です。劇中劇の関係で舞台上に小舞台があり、さらに装置に内蔵された電飾の効果もあり、ミュージカル「キャバレー」のような味のある劇空間でした。こちらも歌手が揃っていて、個人的に代役の方が豪華やん、と思っているジャコミーニおじさんをはじめ、歌良し・芝居良しのティッヒの悪役ぶり、そして、ガルスティアンの艶やかさといったら!! 「道化師」は「カヴァレリア」に比べ、躍動感があり、ドラマティックな音楽が聞き応えありました。余談ながら、劇中劇の場面では、アイスクリームだかチョコレートだかを観客役の人たちが実際に食べていて、なんだかとっても羨ましかったです、はい。
 とまあ、オケ最高、ソリスト絶好調、アンサンブルも盛り上げまくりで、非常に充実した舞台でした。シーズンオープニングとしてまことに誇らしい限り。ランク8の当日券での入場は初めてでしたが(ま、今回からの制度ですけど)4階席正面は音がストレートに飛んできて実に素晴らしい響きが堪能できます。オススメです。


2004年09月18日(土)18:30-21:35
藤原歌劇団「ビゼー:カルメン」@東京文化会館

 E席 4500円 5階-L2列-31番 (パンフレット:1200円)
 演出:ジェローム・サヴァリ
 指揮:チョン・ミョンフン
 管弦楽:フランス国立フィルハーモニー管弦楽団

 カルメン:エカテリーナ・セメンチュク(ベアトリス・ユリア=モンゾンの代役)
 ドン・ホセ:ヴィンチェンツォ・ラ・スコーラ
 エスカミーリョ:エルウィン・シュロット(ミケーレ・ペルトゥージの代役)
 ミカエラ:アンナリーザ・ラスパリョージ(ノラ・アンセルムの代役)
 モラレス:三浦克次
 スニガ:妻屋秀和
 フラスキータ:カン・ヘミョン
 メルセデス:鳥木弥生
 ダンカイロ:柴山昌宣
 レメンダード:小山陽二郎

 フランスのオランジュ音楽祭との共同制作によるプロダクションです。オランジュ音楽祭は間口100mにもわたる野外劇場での上演なので、それを東京文化にどう納めるのか興味深々だったのですが、無理やりそのまま上演したという感じ。小屋にあわせての調整を行っていないせいかとっても中途半端な公演となってしまい、演出家に対しては個人的に大ブーイング。舞台のあちこちで、本筋には関係のない芝居やパフォーマンスが行われているのですが、広い広い舞台ならばともかく、限られた空間の中でそれを行われてしまうと、主役への求心力が損なわれてしまうのです。第3幕ではなぜか馬の死体がゴロゴロ(何だったんでしょ!?)。おまけにコーラスの処理が最悪。いきなりゾロゾロと登場し(人数はやたらと多かった!)、芝居に関係なく四方八方へはけていくという、摩訶不思議な集団となっていました。そりゃオランジュの舞台では移動距離が長いのでそれで精一杯でしょうし、移動時間も長ければなんとなく間は持つでしょうが、歩く速度はノロマな亀さんだし、歌い終われば役を離れてしまうというのも困ったものです。さらに、藤原歌劇団の合唱部と韓国国立オペラ合唱団、そして小松原庸子スペイン舞踊団とそれぞれの集団芝居がかみ合わず、舞台上にいくつものグループが出来てしまい、狭い空間上だととっても違和感がありました。表情の付け方だとか、脇役芝居の手法が違うのと、別グループの人とは絡まないということがあって、変な感じ。いっそのこと、代々木体育館などで上演した方がしっくりくる演出かと思います。そして、主役陣は定位置に突っ立つだけで、愛を訴えるのにも離れた距離でそっぽを向いたままだし、細かな芝居は皆無だし(メルセデスたちはちゃんとカードを切って占うのに、カルメンはカードを持っているだけで占えるなんてとってもおかしい)、とにもかくにも「出演者同士仲が悪い?」のかしらんと勘ぐってしまいました。劇場での上演はポイントを押さえて、観客の視線をコントロールする必要があるのではないでしょうか。主役の芝居が見えないかもしれない、という巨大野外劇場と同じ扱いではねぇ。。。こんな無茶な共同制作でGOサインを出した方の良心を疑ってしまいました。
 主要4役のうち、ドン・ホセ以外は配役変更ということでしたが、あれだけ声の通りの良い東京文化の5階席だというのに、ことごとく鳴りが悪かったのはやたらとだだっ広い舞台装置も影響しているのかもしれません(音を反射させるものがないので……)。カルメンのセメンチュクはとにかく色白。スペインの工場で働くジプシーという風情には乏しかったのですが、ロシア出身の歌手にありがちなたくましい声をいかし、丁寧に歌うカルメンでした。低音も決して怒鳴らず、リリカルに響かせるので、魔性の女のお話ではなく、一般的な一人の女のお話だったかな。そして、ドン・ホセのスコーラは不調でした。とにかく声が伸びず、高音はひっくり返り、ハラハラドキドキ。台詞はほとんどカット、レチタティーヴォ部分もなく、アリアからアリアへいきなり移行するので、感情表現をするもなく、次のシーンへと移ってしまうのと、前述のようにカルメンとの芝居での絡みがないので、くっつくのも拒絶されるのも唐突。こんなによそよそしい二人なのに何故、殺傷事件にまで発展したのか理解に苦しみます。エスカミーリョのシュミットは女ったらしらしいフェロモンを放出していて、登場した瞬間「ホセ、やばいよぉ」とワクワクしたのですが、それまでの方でした。このプロダクションを投げ出しているのはありありとしていて、帽子を投げるのもキザって見得を切るのも投げやり。終幕での闘牛士のパレードでのへっぴり腰、だらだらぶりはとてもとてもこれから牛と戦う人には見えませ〜ん。おまけに歌いだすと半拍ずれて聞こえるのがとっても気持ち悪いのです。クラシックの低音歌手は音の立ち上がりが悪い方が多いのですが、カラオケじゃないんだから、歌っている本人は陶酔できなくとも、お客さんには時差なく聞こえるよう調整していただかないと困ります。プロでしょうに。。。そんな中、クリーンヒットだったのがラスパリョージのミカエラ。第3幕のアリアは情感豊かで素晴らしかったです。……こんな状態ではあるのですが、客席の盛り上がりは大したもので、カーテンコールでは熱狂状態。日本デビューの面々はとっても嬉しそうな顔をしていました。どうぞ、このまま日本贔屓になって、次回はぜひ熱のこもった舞台を見せてくださいませ。
 「カルメン」の魅力はソロ以外にもたくさん登場するアンサンブルなのですが、残念ながらこちらも今ひとつ。ジプシー連中は各々の声量や声質がかみ合わず、ハーモニーとして美しく響いてないし、コーラスもやたらと人数は多いにもかかわらず、音の塊としてのパワーが感じられないし(エネルギーが四方八方に向かって消滅してしまう感じ)もったいないことこの上なしでした。三浦モラレスはそれでもコーラス隊になにかとちょっかいをだして絡んでいましたが、妻屋スニガなどはニマニマ・テカテカおまけに台詞はベタベタとして、カルメンじゃなくても「近寄らないでよ!」状態。ん〜、藤原オペラのアンサンブルは悪くないはずなのにどうしちゃったんでしょう? 稽古期間が短すぎたのか、演出家が手抜きしすぎたのか(謎)。。。
 では、途中で席を立ちたくなる公演だったかというと、そんなことはないのがオペラのケッタイなところでして、楽しかったんですよ、結局。それもこれも、チョンさん&フランス国立交響楽団のおかげ。不感症の舞台に反して、オケは歌う歌う。弦の出だしは揃わないし、管やパーカスなんて目立ちたがり屋が多く、はっきり言ってバランスはとっても悪いオケなのですが、その色っぽさと表情の豊かさは他のオケの追随を許しません。通常よりもずっと浅めにオケピが設置されていた関係で演奏中の彼らの姿が良く見えるのですが、楽しそうに、幸せそうに演奏している姿が印象的でした。チョンさんの指揮はテンポを速めに取り、演奏家がノビノビと演奏できるよう心を配り、重厚な音ではないのにちゃんとドラマティックに盛り上げるのには脱帽。スゴイ才能ですね。韓国からのテレビ取材も入っていましたし、客席には韓国系らしき方を沢山見かけましたが、故郷の方にとっては誇らしい方だと思います。現在は東フィルの監督ですが、都響のさっぱりサウンドとの相性も良さそうなので、機会があればチョンさん&都響のコンサートを聴いて見たいなぁ。


2004年09月20日(月・祝)15:30-18:40
宝塚歌劇団月組「飛鳥夕映え」「タカラヅカ絢爛II」@東京宝塚劇場

 A席 5500円 1階-24列-17番 (パンフレット:1000円)
 演出:大野拓史(飛鳥)/草野旦(絢爛)

 蘇我鞍作 入鹿(そがのくらつくり いるか):彩輝直(トップお披露目)
 瑪瑙(めのう):映美くらら(サヨナラ)
 中臣鎌足(なかとみのかまたり):貴城けい(雪組)
 軽皇子(かるのみこ):瀬奈じゅん(花組)
 蘇我石川麻呂(そがのいしかわまろ):大空祐飛
 笠置(かさぎ):高ひづる(専科)
 蘇我蝦夷(そがのえみし):箙かおる(専科)
 皇極帝(こうぎょくてい):夏河ゆら
 阿倍倉梯麻呂(あべのくらはしまろ):光樹すばる
 小足媛(おたらしひめ):美々杏里
 唐津(からつ):嘉月絵理

今回の公演は同期三人による役替りになっていまして、
 (1)瀬奈鎌足×貴城皇子×大空石川
 (2)貴城鎌足×瀬奈皇子×大空石川
 (3)大空鎌足×瀬奈皇子×貴城石川
の3パターンもあるのですが、前回は(1)を本日は(2)を観劇。ちなみに(3)はパスしました。観劇前のイメージとしては(1)が俺様による悪役、雪の王子による皇子様がピッタリだと思っていたのですが、意外にもこの二人を入れ替えた公演の方が面白かったです。というのも、(2)だと目一杯作りこまなければならないので、逆にそれが芝居の勢いにもつながり、鎌足はより危険に、皇子はより高貴になるのですから、宝塚の「なんでこの人にこの役を!?」というシステムも時には面白い効果をあげるものですね。貴城嬢は今まです〜っと登場して涼しげに歌って去っていくという、押しの弱さ、アピール不足を感じることが多かったのですが、ナルシスト集団の星組、同期との競演による月組と、ボケボケできない状況での公演とあって、いつの間にやら芝居もショーもあれこれ自己主張を始めたのが頼もしい限り。瀬奈嬢も、いつもの俺俺はどこへやら、すっきり品ある皇子様でしたし、下克上の恐れのないショー(このショーの主演は瀬奈嬢でしたもの)では余裕のあるスターぶり。この同期二人に刺激されたのか、大空嬢も表現が大きくなり、ショーでも存在感が増していました(でも苦手なんです。ごめんね〜)。
 そんなこんなで、特出&役替りにすっかりお株を奪われてしまったのがトップさん。歴史上の善玉と悪玉を入れ替えた、「周りはみんな悪い人ばっかり(byうさどん)」という面白い台本ではあるのですが、主役の粒が立たないと対立部分がクローズアップされにくいんですよねぇ。ショーともなるとすっかり脇役。いえね、下手でもそれをカヴァーする何かがあれば構わないんですよ。組子を自由に泳がせる大将のような存在感だとか、とにかくお客さんを楽しませようとするサービス精神だとか、圧倒的美しさだとか(……と書きながら過去のトップさんたちを思い出したりします)。
 追記。前回、ショーでの組長さんを「塩沢とき」と表現しましたが、芝居での組長さんは「久本雅美」でした。目をひんむき、表情は作りすぎてこわばり、声色はドスがききすぎて女帝というより女番長! いっそのことお笑いとして作った方が盛り上がったかもしれません(笑)


2004年09月25日(土)17:00-19:50
新国オペラ「プッチーニ:ラ・ボエーム」@新国立劇場オペラ劇場

 ランク6 6615円(アトレ割引) 3階-R1列-3番 (パンフレット:800円)
 演出:粟國淳
 指揮:井上道義
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 ミミ:アディーネ・ニテスク
 ロドルフォ:ジェイムズ・ヴァレンティ
 マルチェッロ:カール=マグヌス・フレドリクソン
 ムゼッタ:水嶋育
 ショナール:河野克典
 コッリーネ:シャオリャン・リー
 べノア:大久保眞
 アルチンドロ:晴雅彦
 パルピニョール:樋口達哉

 決して突出したキャストがいるわけではないのですが、作品とプロダクションの良さに支えられて、落ち着いて楽しめました。個々の歌手にとらわれずにじっくり作品を、舞台の空気を味わう感じ。「寒々とした屋根裏部屋」「クリスマスで賑わうパリの繁華街」「降りつづける雪が美しいけれども観ているこちらまで凍えてしまいそうな屋外」、それぞれの場面でそれらしき空気を感じることができ、すんなりと作品世界に入り込めるのが嬉しいですね。ドラマティックな展開があるわけでもなく、パリの貧乏な芸術家集団の日常生活の話なので(なのか?>自分)、実はスター歌手を揃えるよりも、中堅どころがじっくり作品を練り上げるという上演スタイルがこの作品にはふさわしいのかもしれません。まあ、欲を言えば、ロドルフォ&ミミのラブラブカップルと、マルチェロ&ムゼッタの丁丁発止カップルとの対比を際立たせるためにも、ロドルフォにはより甘さが、ムゼッタにはかなり華やかさが欲しかったです。でも、テレビドラマ的とでも言いましょうか、全員が思い切り好きなキャストじゃないのに、いつの間にやら愛着を持ち、後味は良好。演出の粟国さんも、指揮のみっちーも良い仕事をしました!!


2004年09月26日(日)17:00-20:40
竜小太郎特別公演「其往昔戀幻燈畫」@博品館劇場

 全席指定 4500円 H列-5番 (パンフレット:なし)

 いつの間にやら恒例となった竜小太郎公演。実は昨年(だったかな)の博品館劇場公演では、劇場の雰囲気と芝居の雰囲気がかみ合わず、どちらにとっても残念な結果に終わってしまったので、今回もちょっと心配していたのですが、数日で芝居が入れ替わるという方式ではなく、ジックリ一作品に取り組んだからか、はたまた「雪之丞変化」という芝居が非常に演劇的なせいか、安定感のある公演となりました。役替り、作品替りというのは豪華な印象を与えますが、やはりどことなく深みが薄れてしまうのは仕方ないことなのかもしれませんね。
 さてはて、そんなわけで、今回の芝居は「雪之丞変化」のみ。三本立て作品公演のため、時間に制約があり、また博品館は舞台が狭いため、お客さんにも想像力を要求される公演となりました。ま、小太郎さんの早変わりだとか、女形の美しさを前面に出すのがこの一座の売りなので、はしょれる部分はどんどんはしょってしまうスピーディな展開。もう、台本なんざぁどうでも良いのです。となると、役者さんに求められるのは、登場すると同時に役のイメージをお客さんに伝えられるか、ということ。雪様の小太郎さんは普段の舞台人生活が雪之丞のようなものなので(って勝手に決めてるだけですが・笑)ピッタリの配役。ただし、今回はいつもよりも男っぽさを強調した芝居に見えたのですが、これは「女の恰好をしているけれど実は男だよ」という芝居だったのか、はまたま僕たちが小太郎さんを見慣れて男の部分が見えてしまったのかは不明です。色々な見せ方があるので、役者さんにとっては面白いでしょうね、雪様役は。
 さて、AHAが誇る期待の星、さとうみさこ嬢は浪路という大役で登場。小太郎さんを差し置いての位取りを表現するにはまだまだ奥ゆかしさが邪魔しているようですが、いつの間にやら色っぽさを発揮するようになっててビックリ。小太郎さんは作り込んだ美しさだけど,みさちゃんの場合は素の美しさかな。今後、女形役者にとって、危険な存在になるかもしれません。ま、小太郎さんには本物の女にはない妖しい美しさを磨いていただいて、みさちゃんと舞台上で異なる魅力で張り合う姿が見られるようになると嬉しいなぁ。で、みさこ嬢ですが、位取りはともかくとして、その他大勢のアンサンブル役者からは完全に脱出したようです。舞台上での生き様が違います。のめり込み具合とでも言いましょうか、プロとしてどこまで魅せるかへの意識が違います。台詞がない瞬間もたたずまいで芝居していたので、離れた位置(=客席ね)から見ると、生き生きとして見えるのです。そして、何と行っても、照明の当たる角度を計算して(無意識?)目が必ず輝くようにしているのですから! おのずと顔の正面にキレイにライトがあたり、視線も遠くへ飛ぶので、スター然として見えます。「立派になったな〜」というのが今回の率直な感想です。そりゃ、ヒロインのくせにいつの間にやら舞台裏で死んでいて、クライマックスの場面なんてつづらの中に閉じ込められたまま、指一本として登場しなかった、という恨みもありますが(これは台本の問題。ま、序列的に仕方ないかな?・笑) ショーでは「流し目のスナイパー」の小太郎さんに対抗して(?)「横目のスナイパー」としてお客さんを一本釣りしながら、ピチピチ元気に踊っていました。そういや、ダンス・キャプテン的なポジションにいることが多かったかも。(大衆演劇の場合、ダンス・キャプテンのことをなんと言うんでしょう?) そうそう、フィナーレはマツケンサンバを意識してってことではなく、そのまんまマツケンサンバの曲で良かったんだけどなぁ。「VIVA VIVA サンバ、コ・タ・ロ・ウサ〜ンバ〜」とゴロも合うでしょ(笑) 公演ごとに通っているので、いつの間にやらショーはどのシーンもお馴染み状態になりました。お約束のお笑いでもきっちり笑いを取っていく小太郎さんのサービス精神、まったりムードの不思議なゲスト歌手のみなさん、芝居では格好つけているのにダンスシーンともなると「スポーツクラブデビューなのに、上級エアロクラスに参加してしまった初心者」になってしまう男優ダンサーたちなど、毎回楽しい思いをしております。客席はというと、役者に気を使ってのわざとらしい笑いではなく、心から笑っているであろうおばちゃま達が実に幸せそうでした。笑いというのはジェネレーション・ギャップを非常に感じる分野で、僕なんかは笑えない場面も結構あったりもするのですが(レトロなネタはわからない。。。)、僕よりも若い小太郎さんがおばさま方のハートをガッチリ掴んでいるのは驚異的です。今、人気爆発中のヨン様や、氷川きよしの生ってどんな感じなんでしょうね?