観劇日記〜2004年11月〜

06日(土) 13:00 瀬奈じゅん+宝塚歌劇団月組「SENA!」 日本青年館
06日(土) 17:15 東宝「ミス・サイゴン」 帝国劇場
07日(日) 14:00 「モーディアニュークラシックス」 四ッ谷区民ホール
09日(火) 19:00(おそ割) 東京都交響楽団「第599回定期演奏会」 サントリーホール
13日(土) 12:30 東宝「ミス・サイゴン」 帝国劇場
13日(土) 17:30 劇団四季「南十字星」 四季劇場[秋]
18日(木) 19:30 吉例顔見世大歌舞伎「河内山」 歌舞伎座
21日(日) 14:00 ニューフィルハーモニーオーケストラ千葉
「第76回定期演奏会 ドヴォルザーク没後100年記念」
千葉県文化会館大ホール
23日(火・祝) 13:00 劇団四季「キャッツ」 キャッツ・シアター


2004年11月13日(土)13:00-15:15
宝塚歌劇団「SENA!」@日本青年館

 S席 6500円 1階-F列-32番 (パンフレット:800円)
 演出:三木章雄

 (花組)
   瀬奈じゅん
 (月組)
   美鳳あや・音姫すなお・青樹泉・彩那音・夏輝れお・彩橋みゆ
   龍真咲・白鳥かすが・麻月れんか・羽咲まな・光月るう・流輝一斗

 「第I部」
  第1景:オープニング
  第2景:SENA in "S"
  第3景:DO YOU WANT TO DANCE?
  第4景:East to West
 「第II部」
  第1景:ロマネスク
  第2景:ジャズ・エイジ
  第3景:ラテンメドレー
  第4景:紅〜Hon
  第5景:ザ・ダンサーズ
  第6景:フィナーレ

 「俺様コンサート」に行ってきました。実は「アサコちゃん=歌が下手」という刷り込みが出来上がっていたので、歌いまくりのステージがどうなることかと密かに心配していたのですが、押しの強い曲に関してはいつの間にやら上手になっていたのが頼もしい限りです。今回のショーは全体に賑やかな音楽が多いので、あれこれ声楽技法を駆使するよりも、パワー全開で押していく歌唱法の方が雰囲気に合っていたと思います。ただ、息を抜く場がなかったので、後半は観ているこちらがスタミナ切れ。剛と柔、強と弱の使い分けが演出的にも、彼女自身にも欲しかったです。とはいえ、一つ一つの場面は力の入った立派なもの。ロック系やラテン系に関しては宝塚でも屈指のショースターです。波に乗っていて絶好調のスターさんを観るのは気持ち良いものですね。いぶし銀のような技術が云々のスターではないので、のぼり調子のうちにトップに就任していただきたいなと思ってます。
 宝塚のスターには、とにかく登場してポーズをとるだけで値千金のタイプと、登場したら何かやらかしてくれるだろうと客席が期待する動いてナンボのタイプがあると思うのですが、彼女は典型的な後者タイプ。このタイプのスターは見得を切り方や目線の使い方などに工夫を凝らすので楽しいです。中でも、土臭さを感じさせるような力感溢れる場面に彼女ならではの魅力を感じました。王子様よりも殿様、貴公子よりも俺様が似合います。MCも元気一杯で、客いじりも堂々としたもの。サッカー部のキャプテンが学園祭のライヴでも活躍している……そんな印象のステージでした。
 残念だったのが共演の月組の生徒たち。ショースター不在のため、歌・ダンス・トークのどれをとってもつたなさばかりが目立ってしまいました。非常に無理をしているのが明らかなため、ショーの勢いが月組生のシーンになると急速にトーンダウン。花組との温度差を感じてしまいました。 技術点低すぎ。。。せめて、娘役はキレイな子を起用するとか、ベテランダンサー(組長とか)を芯に据えるとかの配慮が欲しかったです。とはいえ、共演者の助けがなくても(逆に共演者をフォローしながら)舞台の真ん中で輝けるようになったアサコちゃんは宝塚スターとしての完成も間近ですわ。それにしても、客席降りで近くに来た時の彼女の細かったこと!!


2004年11月06日(土)17:15-19:55
東宝「ミス・サイゴン」@帝国劇場

 A席 9000円 1階-T列-16番 (パンフレット:1500円/2000円)
 演出:ニコラス・ハイトナー

 エンジニア:橋本さとし
 キム:新妻聖子
 クリス:石井一孝
 ジョン:岡幸二郎
 エレン:ANZA
 トゥイ:戸井勝海
 ジジ:杵鞭麻衣
 アンサンブル:つ組

 橋本エンジニアに関しては、若いし男前だし、ズバリ「客引きなんてしてないでアンタがホストになったらよろし」状態ですね。「キムと俺は兄弟」と嘘をつく場面も無理のない並びに納得です。ニ幕の幕切れも哀愁を感じさせる前に「キムに託した夢は潰えたけれど、すぐに次の”ミス・サイゴン”を見つけるんだろうな」という未来を感じさせられたのが新鮮でした。ただ、残念なのは苦手な歌を「歌っちゃってる」こと。台詞の時は良く通る声なのに、歌になると急に喉が閉じてしまって、聞き苦しくなっています。個人的に喉に負担を感じる歌って駄目なんですよぉ。ようやく全エンジニアを観たので各エンジニアの歌唱処理の印象を記してみれば、「語れなきゃ、歌ってしまえ、別所さん」、「歌えても、語りになってる、市村さん」、「歌えなきゃ、語ってしまえ、筧さん」に続いて「歌えなきゃ、無理して歌おう、橋本さん」ってところでしょうか。オリジナル・キャストのジョナサン・プライスも歌は苦手な役者さんなのですが、エンジニア役はその成り立ちからしても、役作りに関しても「語る」というのがとても重要ではないでしょうか。また、市村さんと筧さんが独自色を濃厚に出しているのに対し、残念ながら橋本さんは余裕のなさを感じてしまいました。いっぱいいっぱいの舞台は厳しいです。また、ダンスも苦手なのか、ショーシーンでの存在感のなさ、見得を切るシーンの締まりのなさは何ともしがたく、千秋楽も目前に迫っている割には舞台の温度が低かった印象があります。でも、ミュージカル俳優としての技術面はともかくとして「演じよう」という意思はひしひしと伝わってくる舞台なので、今後のヴォイストレーニング次第によっては良い歌役者になれるかもしれません。また、体は良く動いているのでダンスレッスンも。ダンスのないような役でも、音楽に乗せて進行するミュージカルというジャンルでは、リズム感のある体かどうかというのは結構仕上がりに影響を与える気がします。帝劇はステージが大きいので、ちょっとした動きのタイミングによって、細かな芝居が映えたり映えなかったりですから。
 そして、本日my初日になるのが戸井トゥイ。ベトコンとして登場したシーンではあまりのみすぼらしさに唖然としてしまいましたが、政変後の軍人として登場した時にはまるで別人。キリリとした雰囲気で軍服がとても似合い立派なことこの上なしでした。そして、キムに撃ち殺されるシーンでの死に様は様式としての型を見せるのではなく、ダイナミックな死にざまは迫力がありました。個人的にはこのシーンの芝居に関しては戸井トゥイは好きですね〜。歌の安定感も戸井さんならでは。
 前回は「役に合ってない」と思った岡ジョンはいつの間にやら安定していて、「ブイ・ドゥイ」の歌い上げも見事。石井クリスとのバランスも良く、コンビの妙を感じさせられました。他の組み合わせだとどうなのでしょうね。
 僕が観る際のアンサンブルは「め組」ばかりでしたが、ようやく「つ組」と再会できました。「め組」が宙組レベルだとすれば「つ組」のコーラスは星組レベルでしょうか。テクニックと声量、芝居の温度の差が開いてしまった印象があります。とりあえず「め組」に関しては、本日がmy楽。そして、いよいよ来週は「ミス・サイゴン」自体のmy楽です。


2004年11月07日(日)14:00-16:10
「モーディアニュークラシックス」@四ッ谷区民ホール

 全席自由 前売:3000円 1階-G列-12番 (パンフレット:無料)

 MODEA
 CAPPELLATTE
 加納愛実(Pf)、七海良美(Fl)、毛利沙織(Hp)、古川展生(Vc)

 今日は2004/2005年シーズンののぼぉちゃん解禁日。中鉢さんが大本営で呼び込みを行うのもむべなるかなの客入り。のぼぉ倶楽部もG教授以外にはメンバーと会えなくて残念。さて、今回のコンサートはかつてのSTBにおけるJ-CLASSICSのような、はたまた音大の学園祭のような、若さと華やかさに満ちたステージ。ピアノのソロあり、クラシックの声楽あり、教会音楽あり、民族音楽あり。おまけに、のぼぉちゃん以外は全員女性で一人一人が髪型や衣装に凝っているのと、演奏にあわせて音響反射板にコンピューターグラフィックスが投射されるのとで、目に耳に楽しいコンサートでした。このグラフィックスがかなりの力作で、音響反射板は平面ではないだけに、立派な舞台装置が組まれているような錯覚が味わえます。おまけに静止画ではないので、いつの間にやら舞台に吸い込まれて、乗り物酔いまでしちゃいそうな迫力。なかなか面白い趣向でした。
 前半のプログラムまで書き出すと膨大な量になってしまうし、そもそも知らない曲が多かったので、のぼぉちゃんが登場した最終ステージの演奏曲目のみ書き出してみると、まぁ、選曲自体は目新しいものはなく、すっかりお馴染みの
 バッハ:無伴奏チェロ組曲第一番より「プレリュード」
 カッチーニ:アヴェ・マリア
 塩入俊哉:夢のしずく
 ピアソラ:リベルタンゴ
だったのですが、のぼぉちゃんが赤シャツで登場するまでは低音楽器なしのアンサンブルだっただけに「あぁ、低音が加わるとなんて安定感があるんだろう」とそれだけで嬉しくなってしまいましたさ。「ひょんなことでゲスト出演することになりました」としゃべり出すから「ではそのひょんなことを伺おうじゃないの」と客席は身構えるのですが、「起承転結」の「起」のみで、「承転結」は省略という相変わらずの肩透かしトークもなぜか微笑ましいです。それにしても、のぼぉちゃん上機嫌でしたねぇ。(多分)年が離れている女の子たちなので、無理して兄貴ぶらなくても自然にお兄ちゃんしてるし、女の子たちからは「古川さんと共演できて光栄です♪」とキラキラお目目で見つめられちゃうし、いつもと違う編成のアンサンブルもできたし、楽しかったんじゃないかなぁ。何だか、学生たちにまざった顧問の先生という趣もありましたが、楽しく上機嫌なのが音楽にも反映されるのであれば、それはそれでファンとしては嬉しいものです。年内はこの後、コンチェルトや室内楽が続きますが、そろそろどっぷりクラシックのリサイタルも聴きたいなぁ←聞いてる?>のぼ。


2004年11月09日(火)19:00-21:10
東京都交響楽団「第599回定期演奏会」@サントリーホール

 B席 2250円(おそ割) 2階-LD6列-7番 (パンフレット:無料)

 指揮:ジェイムズ・デプリースト
 ヴァイオリン:四方恭子

 ベルク:ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出のために」
 マーラー:交響曲第1番ニ長調「巨人」

 休憩後を半額で聴くことのできる「おそ割」を利用しての入場。これ、良い制度ですね。19時の予定の立てられない社会人にはありがたいです。定価で半分しか聴けないのは財布が許さなくても、半額ならば文句なしですし。そんなわけで、ヴァイオリン協奏曲はパスして、マーラーのみの鑑賞。
 一時期、マーラーというと、オーケストラがその威信にかけて取り組む一大プログラムだったものですが、本日の都響のマーラーは普段着感覚。ごく自然にサラリと演奏してしまい「マーラーってこんなに親しみやすかったっけ?」と思うほど。都響はマーラーの演奏が多いというのも影響しているのでしょうね。おまけに、サントリーホールはpppが非常に通るので(逆に通りすぎて怖いほど)、都響のアッサリ爽やか系の音が冴え渡り、非常にリリカルな音楽空間でした。デプリースト氏の指揮は初めてでしたが、大仰な表現はなく、シンプルに、でもジワジワと盛り上げてくる音楽で、伝統的こってりマーラー好きの人にはどうか知りませんが、平日の夜、仕事帰りに聴くにはピッタリ。ほら、いきなり濃厚な音楽だと消化不良になっちゃうでしょ。ピリピリした仕事モードからリラックスムードを経てのクライマックスの組み立ては、非常に都会的な音楽作りだと感じました。サントリーはfffになると音が散ってしまうので、弱音を丁寧に響かせた演奏に大満足です。そして、こんなことを書くとまた叱られちゃうけれど、都響とは思えない金管の安定感も嬉しい限りでした。ところで、最終楽章で、ホルンパートがいきなり立ち上がりましたが、今までってそんなことしてなかったですよね!? ブラバン時代を思い出しましたさ(笑)
 残念ながら入りは良くなかったけれど、客席の雰囲気も舞台の雰囲気も温かみに満ちていて、デプリーストさんに対する歓迎感溢れていました。都響のコンサートは久しぶりでしたが幸せ気分。行って良かった♪ どうでも良いけれど、のぼぉちゃんの燕尾姿も久しぶり!


2004年11月13日(土)12:30-15:15
東宝「ミス・サイゴン」@帝国劇場

 A席 9000円 2階-F列-33番 (パンフレット:1500円/2000円)
 演出:ニコラス・ハイトナー

 エンジニア:橋本さとし
 キム:笹本玲奈
 クリス:井上芳雄(石井一孝の代役)
 ジョン:岡幸二郎
 エレン:ANZA
 トゥイ:戸井勝海
 ジジ:高島みほ
 アンサンブル:つ組

 ついに「ミス・サイゴン」のmy楽です。木曜日にらっしいが観劇した際に石井さんの調子が非常に悪く、途中からひどい状態だったそうですが、何とその後の公演はキャンセル。本日も井上君が代役で登場。実は井上君は初日近くに一度観ただけなので、約3ヶ月ぶり。場数を踏んだせいか、これがとっても良かった! 笹本キムとの並びはまるで高校生カップルといった若々しさ。ロミオとジュリエットじゃないけれど、若さゆえの勢いというのが感じられました。声が声なので、迫力ある歌唱、というわけにはいかないのですが、逆にそれが、運命のままに流されていく、個の人間の脆さを感じさせることになったのでした。ヒステリーを起こそうが、激昂しようが、馬鹿っぽくならないのが彼の強みでしょうか。ちなみに、井上君は芸大出身ですし、ジョンの岡さんといえば元・晋友会なので、この二人の声のバランスはクラシックコンビで非常に美しかった! 感情のままに歌っているようにみせかけながらも、実は「ここは押さえて、ここもまだ押さえて、ここからぐわ〜っと歌い上げるぞ!」という曲作りが見事。恐らく、今回のメインキャストの中では音楽面で最強コンビかもしれません(でも、好き嫌いはまた別問題ですけどね)。
 笹本キムも実年齢が若いということを差し置いても、本能のままに生きていく17歳〜20歳の女の子という役割を実に見事に表現していました。上手い下手以前に、存在自体がキム。地声での音域が広いので、歌い上げもなかなかのもの。最後の最後にステキなカップルを見せていただきました。満足です。技術のあるカップルだからこそ、感情で動いているように見せる演技が自然なんだと納得。技術が中途半端だと、演技の組み立てまで丸見得になってしまうでしょ。もちろん、そんなハンデを逆に生かしてしまう、超人もいますけれど。
 そんな中、割を食ってしまったのが橋本エンジニア。「俺が主役だ!」という意欲はもしかしたら四人のエンジニアの中では最も強いのかもしれませんが、いかんせん技術が追いつかないので空回り状態。何よりも、大ナンバーを音楽面で組み立てることができないので、せっかくの楽曲も一本調子。全てをffで演奏するのは労力ばかりで効果ナシ、の見本状態。ちなみに、歌だけでなく、台詞のちょっとした間でも気になる部分があったので、僕とは心地良いと感じるリズムが違う役者さんなのかもしれません。若さみなぎる八方破れのエンジニアというのもアリなので、キムが自殺した場面で頭の中が真っ白になっている様子が非常にリアリティがありました。結局、この最後の芝居があってこそ、エンジニア=主役、といえる作品なのですが、恐ろしいことに、この場面では台詞が皆無。おまけにキムは自殺という大芝居だし、タムという子役が一緒に舞台に乗っているのでお客さんの視線を集めるのがこれほど難しい場面はないと思うのですが、ここは役者によってかもし出すものが違って個人的に興味ある場面です。橋本エンジニアだと「明日考えましょっ」ととりあえず思考回路をストップ。そういえば、彼の役作りはスカーレットのようでもありました。(ちなみに市村エンジニアだと「俺の人生終わったよ」ですし、筧さんだと「キム次のミス・サイゴンを見出してもう一花咲かせるぜ」かなぁ。別所エンジニアは……すみません、記憶にございません)。そうそう、先週の杵鞭ジジはお姉さまでしたが、本日の高島ジジはオ姐さまでした(わかる?)


2004年11月13日(土)17:30-20:00
劇団四季「南十字星」@四季劇場[秋]

 C席 3150円 2階-9列-12番 (パンフレット:1300円)
 演出:浅利慶太

 保科勲:阿久津陽一郎
 リナ・ニングラット:樋口麻美
 島村中尉:田代隆秀
 原田大尉:鈴木周(劇団俳優座)
 塚本少尉:前田貞一郎
 ニングラット博士:武見龍磨
 ルアット・ニングラット:内田圭
 ニルワン:藤川和彦
 キキ:丸山知紗
 オットー・ウィンクラー:吉賀陶馬ワイス
 原田春子:中野今日子(劇団俳優座)
 岡野教授:三枝明彦

 昭和の戦争モノは僕がとっても苦手とするジャンルなのですが「李香蘭(満州)」「異国の丘(シベリア)」と三部作をなす「南十字星(南方戦線)」は、最後のシメとして観劇してきました。三作品とも、重く暗い時代を扱ってはいるものの、「南十字星」は暖かな国が舞台とあっかて、どことなく開放的で明るい印象を受けました。舞台の色合いもインドネシアの民族衣装に民族舞踊、スライディングステージを利用によって出現する舞台上の水面に反射する照明などがとってもキレイ。ストーリーもなかなか力が入っていて、政治的主張や、感情論ではなく、軍人としての生き様、死に方をここまで理論的に哲学的にかっちり描いた作品を僕は知りません。東京裁判に代表される、戦後の連合国による報復裁判で、誤まった判決を下されても静かに受け入れる。それによって、興奮状態である戦勝国の人々の溜飲を下げ、今後の日本国民が平和で暮らせるならば、自分の命を投げ出します、という軍人の死に対する姿勢には感銘を受けました。散り際の美学ってやつですね。そして、その決心が揺らぐことのないよう、現世に未練のこさなようにと、静かに自害する妻。どことなく、をフランス革命におけるマリー・アントワネットの最期を彷彿とさせるものもありますが、四季のオリジナル作品としては珍しく「人間が描かれているな」ということで、面白かったです。特にニ幕後半の展開がとても素晴らしかったです。
 が、これがミュージカル作品としてエンターテイメントしてたかというと「どうよ!?」というのも正直なところ。ストレート・プレイとして、テレビドラマとして制作されれば佳作になったことでしょうが、(少なくとも)今回はミュージカル作品としては中途半端な作品。何よりも、主人公に据えている若者二人の人物像の書き込みが浅いため、メインストーリーが盛り上がらないのです。愛し合う二人という設定にもかかわらず、説明されなければそうとはわかりにくい台本・演出。四季の役者さんはラブ・シーン苦手ですから(あの台詞回しだとラブシーンは無理ってもんです)せめて台本でしっかりタップリ書き込んでおいて欲しいものです。そして、クライマックスには大ナンバーを持ってきてタップリ盛り上げていただかなくては。不思議なことに、「南十字星」における大ダンスナンバーは「田植えダンス」ですよ! おまけに、いきなり振付が都会的になっちゃう。ん〜、謎です。加藤敬ニさんは素晴らしいダンサーだとは思うけれど、振付家として良い仕事はしてないなぁ。。。あ、樋口リナのバリの踊りは動きはキレイだし、大きな目が生きていて見応えがありました。でも、作品の盛り上がりには貢献してないかも。必要な歌、ダンスというのではなく、ミュージカルだから取り合えず入れときました、という印象が強かったです。音楽処理も中途半端で、歌によってスピーディに処理できそうな部分で延々と台詞を聞かされたり、必要ない場面でいつまでも歌い踊っていたり、バランス感覚がとっても変。今後、レパートリー作品として上演するには大幅なテコ入れが必要でしょう。何よりも主題歌が全然耳に残ってないのです。「ブンガワンソロ」は挿入曲だし。
 さて、文句ついでですが、今回はアンサンブルの役者の面々の手抜きも目だったのも盛り上がらない原因かもしれません。そもそも、インドネシア人役にもかかわらず黒塗りメイクをしてないとか、オランダ人役なのに、ジェスチャーが日本人のままだとか、芝居も個々でおこなってないので、単なる背景になってしまっているだとか……あぁ、文句タラタラ。最近の四季はどうしちゃったんでしょうね。。。作品がひどくても役者が盛り上げようと頑張らなくては、少なくとも観に来たお客さんに失礼というものです。
 さて、そんな中でのメインキャストですが、阿久津さんは表現のしようのない役を丁寧に演じていました。でも、真面目にやりゃ良いのでないのが舞台の難しいところ。ミュージカルとしての見せ場はリナの樋口嬢に持っていかれるし、芝居の見せ場も客演のおじ様方にさらわれてしまい面目丸つぶれ。軍人として生き、家族での意見の食い違いあり、国際恋愛あり、と結構ヤマやタニがある役なのですが、盛り上がり皆無。リナが様々な心の葛藤を見せる芝居を見せても受け止めることをしないので空回り。今後、彼が四季の看板役者になれるかどうかは微妙なところかもしれません。
 同じ時代、同じ場所を扱った作品に「ジャワの踊り子」がありますが、不思議と「ジャワの踊り子」の方がレトロな印象。そして、観劇後の印象もマッタク別物。個人的にはやっぱり豪華絢爛な舞台が好きです、はい。


2004年11月18日(木)19:30-21:00
吉例顔見世大歌舞伎「河内山」@歌舞伎座

 一幕見席・全席自由 900円 4階-ろ列-27番 (パンフレット:1000円)

 河内山宗俊:仁左衛門
 高木小左衛門:左團次
 宮崎数馬:信二郎
 腰元浪路:孝太郎
 北村大膳:芦燕
 和泉屋清兵衛:段四郎
 後家おまき:東蔵
 松江出雲守:梅玉

あらすじ
 「第1場」悪巧みに長けた御数寄屋坊主の河内山宗俊は、腰元勤めに出ている上州屋の娘浪路が、奉公先の松江出雲守に幽閉されていると聞き、お金欲しさにその奪還を請け負う。
 「第2場」上野寛永寺の使僧を装い松江邸に赴いた宗俊は、家老の高木小左衛門や宮崎数馬を尻目に、堂々とした振る舞いで交渉を成立させる。
 「第3場」帰りがけに北村大膳に正体を見破られても、開き直って啖呵を切る始末。松江候に地団駄を踏ませて、悠々とその場を引き上げる。

 あらすじだけ読むと結構変化に富んだ面白そうな題材でしょ。とにかく動きの少ない舞台なので僕向きではなかった! まだ第1場は大勢の役者の出入りがあり、事の発端が語られるので良いのですが、第2場は浪路が登場して花を添えるものの、一同に並んだ女形連が一言ずつ台詞を繰り返すばかり。個々によって異なる台詞回しの差が楽しい場面ではありましたが、いかんせん動きがないためちと辛し。おまけに第3場になると羽織袴姿の立役者連がこれまたズラリなのですが、4階席からの眺めはというと、座布団が並んでいるような、カメムシが並んでいるような、これまた変化のない舞台。どうも今回の演目は台詞の応酬が面白さのツボらしいのはわかったのですが、歌舞伎ならではの台詞回しは、開演後しばらくたって、僕の集中力が切れてくるに伴い外国語を聞いているような気分になってしまい、スミマセン、気が付いたら最後の決め台詞「ば〜〜〜かっめ!」の場面でした(汗) 見得はらずにイヤホンガイドを借りるべきだったかな。そもそも、観劇当日になって、配役はおろか、あらすじも知らないというのは、歌舞伎ビギナーには危険すぎます。反省至極の観劇となりました。「ぴあ 歌舞伎ワンダーランド」によるとそんなに上級者向きという舞台ではないらしいのですが、「河内山」よりも難易度が高いと「ぴあ」に書かれている演目でも好みのものだと楽しめることがあるので、これに懲りずに色々な演目を観にいきたいと思っています。何はともあれ、一幕見席バンザイ!


2004年11月21日(日)14:00-16:05
ニューフィルハーモニーオーケストラ千葉「第76回定期演奏会 ドヴォルザーク没後100年記念」@千葉県文化会館

 S席 4000円 1階-9列-19番 (パンフレット:無料)
 指揮:井崎正浩
 チェロ:古川展生

 ドヴォルザーク:チェロ協奏曲ロ短調作品104
(休憩)
 ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調「新世界より」作品95
(アンコール)
 ドヴォルザーク:スラヴ舞曲第10番

 のぼぉちゃんは昨日横浜で別のオケとドヴォコンを演奏しているのですが、友人による報告だと「ソロが聴こえてこない〜!」だったとか。……ということは、本日はリベンジで名演奏が聴けるのでは?と、ご本人様が聞いたら怒りそうな不純な気持ちでホール入りしました。ま、みなとみらいは音が上に飛んでしまうホールなので、一階席だと結構弦の音が聞こえないことがあるのですが、本日は古い古い千葉県文化。これがねぇ、意外にもソロがくっきりはっきり素晴らしく良く聞こえるんです。都内のあちこちのコンサートホールで色々なコンチェルトを聴いていますが、もしかしたら、音の分離に関しては、千葉のホールも捨てたものじゃないかも。オケの音圧とのぼぉちゃんの音量とのバランスも良く(指揮の井崎さんも気配りのオケ処理)、実に気持ちの良いコンチェルトでした。ややゆったりテンポでたっぷりとドヴォルザーク節、のぼぉ節を聴くことができ、とにもかくにも「心地良い」演奏。弾いている本人も気持ち良いのか、客席から見る限り、のぼぉちゃんもナルシスト入ってたかも。都響の定演なんかですと楽章間は客席の咳払いで結構賑やかなのですが、今日は割と静か。それでいて堅苦しくなく「音楽を楽しみましょう」という空気が満ちていて「遠いホールだけれど、行って良かった」とご機嫌のコンサートでした。
 そして、「新世界」はいつ聴いても良い曲ですねぇ。そういや、僕が好きな曲というのは、どこか民族色の強いものが多いかもしれません。都会的に洒落ている音楽も素敵ですが、力強さやノリの良さを感じられるからかな。超高音でキンキンではなく、中低音の色っぽい弦による旋律を聴かされるとゾクゾクしてきます。今日の演奏は、ホールの特性か、オケの能力なのかわかりませんが、音が固まりとしてではなく、各パートが分散して聞こえる状況だったので、コンチェルトでは嬉しい音響空間も、シンフォニーに関しては、クライマックスで盛り上がりきれなかったのですが、その分、第2楽章の物憂いメロディを様々な楽器が歌い継ぐ場面が素晴らしかった〜。

2004年11月23日(火・祝)13:00-15:35
劇団四季「キャッツ」@キャッツシアター

 B席 6300円 1階-8列-5番(見切席のため全額返金) (パンフレット:1800円)
 演出:浅利慶太

 グリザベラ:早水小夜子
 ジェリーロラム=グリドルボーン:秋夢子
 ジェニエニドッツ:高島田薫
 ランペルティーザ:章ヤヤ
 ディミータ:増本藍
 ボンバルリーナ:南千繪
 シラバブ:荒井香織
 タントミール:高倉恵美
 ジェミマ:王クン
 ヴィクトリア:坂田加奈子
 カッサンドラ:大口朋子
 オールドデュトロノミー:石井健三
 アスパラガス=グロールタイガー/バストファージョーンズ:村俊英
 マンカストラップ:趙宇
 ラム・タム・タガー:芝清道
 ミストフェリーズ:松島勇気
 マンゴジェリー:百々義則
 スキンブルシャンクス:キムスンラ
 コリコパット:徐元博
 ランパスキャット:幸田亮一
 カーバケッティ:三宅克典
 ギルバート:千葉ヒカル
 マキャヴィティ:上田龍雄
 タンブルブルータス:齊藤翔

 実は札幌公演や大阪公演も観ているので、そんなに「久しぶり」という実感はなかったのですが、東京では8年ぶりの四演目になるそうです。今回は見切席ということで、入場と同時に全額返金。代替席(二階C席脇の発売していなかった席が割り当てられていました)も用意されていましたが、大騒ぎするほど観にくいということもなく、ほとんどのお客さんが当初の予定の席で観劇していたようです。今回のキャッツ・シアターは改装前のコマ劇場のような座席配置で、円形舞台が2/3まで張り出しているということもあり、今回の座席からは、ほとんどの場面は真横から、そして、センター前面で歌い踊るキャストについては背後からの観劇となり、気分は「舞台袖で自分の出番待ちをしている役者」でした。観客の反応だとか、キャストに出される各種の指示、ちょっとした舞台の仕組みなどを見ることが出来て、面白い席ではありましたが、音のバランスは変だし、ダンスのフォーメーションはキレイに見えないし、正面舞台奥はセットに隠れてしまうし、(その場面場面での)主役の芸をじっくり見たい人にはオススメできない席です。あくまで、リピーターが「舞台裏を眺めるつもりで」楽しむ席と言えましょう。猫の出入口の真横のため、スタンバイしに来る物音まではっきり聞こえるんですよ〜。
 さて、この新しい「ゴミ屋敷」ことキャッツシアターはとにかくコンパクトに出来ています。ロビーなんてさんざん噂は聞いていましたが、あまりの狭さにビックリ。こりゃ単なる廊下です。そんな中にトイレや売店、バーにエレベーターが設置されているので、ラッシュ時の電車の中のような様相。きっと「せっかく巨大ゴミのセットを沢山こしらえたんだから、休憩時間は美術観賞してよねっ!」という美術さんたちの思いが劇場設計に影響したに違いありません(笑) ちなみに、この公演は資生堂が大きく関わっているのですが、ロビーでは資生堂パーラーのお菓子は各種取り揃えてあるくせに、劇場の定番サンドイッチは扱ってない様子。空腹の方は駅前で食料調達が必要です。
 さて、客席の作りとしてはニュー・ロンドン・シアターを彷彿とさせるもので、相変わらずオケピがなくカラオケでしたが、ジェリクルシートまでちゃんと設置されていました。オーディトリアムの形は新国立劇場中劇場のミニチュア版といったところでしょうか(キャパはキャッツシアターの方が多いハズなのですが……)。ただし、急傾斜な新国立劇場に比べ、一階席の傾斜がゆるやかで、二階席が低い位置にあるので、劇場客席の一体感があります。二階席前方には「スターライト・エクスプレス」のスケートコースのようなネコ用通路まであって、何だかあちこちの劇場の美味しいところ取りみたい。でも、何だかとっても愛らしく親しみを感じてしまうのはなぜなんでしょう。レンガを敷き詰めた街の様子まで再現されていてなかなか良い雰囲気です。個人的には今回のキャッツシアターの客席は結構好きですね。
 新版の演出は二階建ての客席にあわせた趣向、振付の変更など、まったくの新版。劇場中を舞台として使う面白さがありました。残念だったのは、タイヤが上昇する場面でスモークがケチられていたこと。この場面は思いっきりたっぷりスモークをたくことによって、タイヤが本当に浮いているように見えるのが見せ場で、今まで四季の公演では「これでもか〜」というほどスモークをたいていたのが誇らしかったのですが、今日はスモークがちょろちょろで、装置が丸見え。経費削減かしらん?
 今までの東京CATSは「劇団の総力を挙げて」という様相を呈していましたが、今回は初日からして「既に一年たったロングランメンバー」という公演。そういう意味で、キャストは結構弱い印象を受けました。まずは歌唱力の低下、そして没個性。歌唱力に関しては、カラオケと録音歌唱によりそこそこカヴァーされていましたが、個性については「新人公演」の域。いかんせん、個性のぶつかり合いが売りの作品なので、こんなにキレイにまとめてしまって良いのかしらん?と思ってしまいました。そんな中、一人個性を振りまいていたのがラム・タム・タガーの芝さん。最近でこそオッサン役が多いものの、この人は勢いで押すような役が本当に良く似合います。さすがに若手に混ざってのダンスは年齢を感じさせるものがありましたが、それを補う細かな仕草やいたずらっ子の目つきは他キャストとは段違い。キャリアの差と言ってしまえばそれまでですが、はっきり言って、グリザベラやオールドデュトロノミーを差し置いて、舞台を引き締めていました。芝さん以外はその他大勢。技術の差こそあれど、印象度はみなさんドングリの背比べ。どの場面もモヤモヤと固まりでしか思い出せないのです。これは、観る角度も原因だったのかもしれませんが、舞台からのエネルギー不足は絶対あると思います。客席のみなさんも楽しんではいましたが予定調和の域。
 とはいえ「CATS」は無条件に楽しい作品です。タダ見ということを差し引きしても。特に第2幕に関しては変化に富んでいるのと進行がスムーズなのとで、いつ観てもワクワクします。最後の最後、「memory」〜「the journey to the heaviside layer」〜「the ad-dressing of cats」における流れ、盛り上がりは何度聴いても素晴らしいです。何しろジャンルがバラバラのナンバーにも関わらず、盛り上げて、収斂させて、平安をもたらすという、ミュージカルならではの起伏の大きさを味わえるのですから。キャストの出来不出来をも飲み込んでしまうこの作品ってやっぱりスゴイ。