観劇日記〜2005年04月〜
03日(日) 15:30 宝塚歌劇団宙組「ホテル ステラマリス」「レヴュー伝説」千秋楽 東京宝塚劇場
09日(土) 18:30 中鉢聡「第4回 中鉢聡を囲む会」 上野 東天紅本店
17日(日) 11:00 宝塚歌劇団月組「エリザベート」 東京宝塚劇場
17日(日) 15:00 新国オペラ「モーツァルト:フィガロの結婚」 新国立劇場オペラ劇場
18日(月) 13:20 映画「アビエイター」 VIRGIN TOHOシネマズ 六本木ヒルズ
5 SCREEN
21日(木) 11:00 東京藝術大学「2005年度 第2回 奏楽堂 モーニングコンサート」 東京藝術大学奏楽堂
21日(木) 14:00 東京藝術大学「第189回 芸大生による木曜コンサート」 旧東京音楽学校奏楽堂
23日(土) 13:30 映画「Shall We Dance?」 TOHOシネマズ市川コルトンプラザ
1 SCREEN
29日(金・祝) 20:30 LA FOLLE JOURNEE AU JAPON「小山実稚恵」 東京国際フォーラム ホールB7
29日(金・祝) 22:00 LA FOLLE JOURNEE AU JAPON「樫本大進/趙静/クレール・デゼール」 東京国際フォーラム ホールB7
30日(土) 20:30 LA FOLLE JOURNEE AU JAPON「庄司紗矢香」 東京国際フォーラム ホールB7


2005年04月03日(日)15:30-19:30
宝塚歌劇団宙組「ホテル ステラマリス」「レヴュー伝説」千秋楽@東京宝塚劇場

 S席 8000円 1階-16列-42番 (パンフレット:1000円)
 演出:正塚晴彦(ステラマリス)/草野旦(レヴュー伝説)

「ホテル ステラマリス」
 ウィリアム・オダネル(アダムズ・ファイナンスのエリート社員):和央ようか
 ステイシー・ランカスター(コンシェルジュ。モーリスの娘):花總まり
 アレン・ケンドール(ホテルの支配人。ステイシーの幼馴染で婚約者):水夏希(今公演後、雪組に異動)
 ガイ・プレスコット(ホテルの宿泊客):大和悠河
 モーリス・ランカスター(ホテルの社長):未沙のえる(専科)
 ミセス・サランドン(ルームメイドのチーフ):出雲綾(今公演、後専科に異動)
 サリー・ブランシェット(バンケット・キャプテン):貴柳みどり(今回がサヨナラ公演!)
 ウォルター・グリーン(ホテルの宿泊客):美郷真也(今公演後、組長に)
 ティモシー・マクファーソン(ホテルの宿泊客。海洋生物学者):寿つかさ(今公演後、副組長に)
 ダニエル・スカリエッティ(料理長):遼河はるひ
 アリソン・オーウェル(ウィリアムの婚約者):彩乃かなみ(今公演後、月組に異動)
 リンドン・マクモレア(ドアマン):悠未ひろ

 今回の作品は間もなく全国ツアーに出るのですが、トップコンビ以外の主要キャストのほとんどが、組替えや他公演に出演のため、東宝公演が最後……ドウナルンデショ?>全国ツアー
 芝居のストーリーは結構簡単です。カルフォルニアの海沿いに建つホテルステラマリスは開業当初の栄光は今いずこ、閑古鳥は鳴き、従業員は士気を失い不平だらけ。そんなホテル経営を引き継いで経営しようと、ロンドンの会社がウィリアムを派遣。ホテルの再建に成功したら帰国して婚約者のアリソンと一緒になるつもりだったウィリアムは、ホテルの社長の娘で、支配人のフィアンセのステイシーが好きになってしまう。そして、偶然に偶然が重なり、ホテルは息を吹き返してハッピーエンド。
 宙組というと、トップコンビありきで、その他の組子はその他大勢、というイメージがあるのですが、今回の台本は意表をついて、各生徒に見せ場ありのものでした。いやはや、座付作者万歳です。しかし、ミュージカルとしてはそれがあだとなって駄作になってしまいました。そもそも、正塚氏のホンは「起・承・転・結」ならぬ「起・起・起・結」なところがあって、人間関係や状況をたっぷり丁寧に説明したところで時間切れとなり、無理やり話を終わらせる、というパターンが多いのです。今回も登場人物紹介にほとんどの時間を費やしてしまい、ようやくドラマが動き出したかと思ったところで時間切れ。よって、トップさんの役が「エリート社員だ」なんて解説によって観客が無理やり思い込まされる状況。てなわけで、主人公が何もせずに、回りの状況が変わりました、はいハッピーエンド、と言われて幕なので、客席で僕は置いてきぼりにされた気分です。おまけに「転」にあたる部分は、大事な台詞を脇役がサラリと話すだけで、主役コンビはノータッチ。座付き作者同士を比較するのは悪趣味ではありますが、植○氏のような大芝居や、○池氏のように転換鮮やかな歌とダンスによるミュージカルナンバーで盛り上げるわけでもないので、肩すかしをくらったようで、観劇後の満足感が乏しいです。あらかじめストーリーを予習しておかない限り、よっぽど座組みや生徒の番手に詳しい観客でなければ退屈してしまうような舞台は、どこかの演劇学校の研修生公演だったら良いかもしれませんけど、商業演劇として、宝塚としてはどうよ!? そして、そんな中、せっかく見せ場を与えてもらったのですから、自分の場面はしっかり盛り上げてください>印象の薄〜〜〜い下級生たち。
 和央ようかも、そりゃ「状況に流される役」に関して宝塚では右に出る者はいませんが、「座長」としてはしどころがない役を抑揚なく演じていて印象に残らないのがツライです。残念ながら、舞台の中心が安定しない公演となりました。確かに彼女は立ち姿が美しいので、舞台に登場すれば何となく様にはなりますが、芝居上では金太郎飴の人なのでねぇ。。。でも、これは恋敵として対立させれば面白いであろうアレン支配人や、ミステリアスな雰囲気で芝居に大きく絡みそうなそぶりを見せながら尻切れトンボに終わるガイの役がつまらないのにも責任あり。そして、フィアンセと浮気相手の女の戦いを現トップのお花様vs次期月組トップ内定のかなみ嬢で見せるワクワクするような場面でも、お花様はどこか一点を見つめたままフリーズし、妙にさばけたかなみアリソンはお花ステイシーにKissして去っていくだけ。お願い、どうか舞台に波風を立たせてください(泣)
 そんな中、ちょっとした間や言い回しで、舞台に彩りを与えていたのがベテラン三人。専科の未沙のえる、組長の出雲綾、副組長の貴柳みどりです。大劇場サイズ専門の役者さんたちなので、サラサラ芝居の宙組では確かに異質ではありますが、彼女たちがいなかったら、それこそ平坦でどこにもひっかかりのない公演になったかもしれません。実際に、人間ドラマを感じさせ、ストーリーを動かしていた、裏の主役はモーリス社長ですし。さすがの存在感と実力です。
 すっかり芝居についての感想が長くなってしまいました。ショーについてはお花様が主役です。お花様のために、宙組生が一丸になって歌い踊り、あげくの果てに劇中劇でも主役はお花様という、他組では決して許されない構成。ここではトップさんも一歩引いてます(ぎゃっほーーー)。でも、この二人の並びはキレイですねぇ。個人的に、タカ・ハナのデュエットダンスは、お花様の腕の動きが好きなのです。たおやかになびく様は、フワリと空中で舞う布を思わせます。テクニカル点というよりも芸術点にあたるのでしょうか。デュエットダンスのあるべき姿の一つですね。残念ながらお花様は本日調子が悪く、中詰めでのスッテンコロリンを差し引いても、声にダンスに精彩がなかったです。和央さんもゲッソリお疲れの表情で、宝塚の舞台化粧を通してでさえ、肌の張りのなさが丸わかり。とにもかくにも千秋楽までお疲れ様でした。
 残念(?)だったのは大和悠河。実は「シートベルトぷりぃず」の彼女の歌はそれなりに楽しみだったのです(悪趣味>自分)。が「……下手じゃない……」 おまけに声量とパンチがあるので、ショーの歌としてはナカナカ気持ち良かったりしましたぁ。あらら、意外! ダンスも伸びやかで、水君と並んでも遜色のないW二番手状態。水君も宙組に来た頃は小柄ゆえか、ジャンボーズに押しつぶされそうでしたが、いつの間にやら組子を率いて場面を引っ張る頼もしい上級生になりました〜♪ そうそう、宙組は長身の男役が多いので、ちょっと位大きくても目立たないのに、なぜか萎縮して小さく踊る男役が多いのが目に付きました。大柄でも大きく踊ってかまわないのに。。。娘役はのびのび踊れて気持ち良さそう(副組長さんが今回は歌いまくり、踊りまくりで、良いサヨナラ公演でした。釘付け!)。


2005年04月09日(土)18:30-未確認
中鉢聡「第4回 中鉢聡を囲む会」@上野 東天紅本店

 10000円 10番テーブル (パンフレット:無料)

 ソプラノ:服部礼子
 ピアノ:相原郁美

 トスティ:かわいい口もと
 トスティ:4月
 チレア:「アドリアーナ ルクヴルール」より やさしい母の面影が
 チレア:「アルルの女」より フェデリーコの嘆き
 バーンスタイン:「WSS」より マリア
 バーンスタイン:「WSS」より トゥナイト
 ディカプア:私の太陽よ
 モリコーネ:ニューシネマパラダイス
 武満徹:小さな空
 レハール:メリーウィドーワルツ

 予定としてはのんびり桜見物をしながらの会場入り、だったのですが、近年珍しく、満開見ごろの週末だったため、酔っ払いにあふれかえっている上野公園を通り抜けて会場入り。進みたい方向に進めないのがもどかしい〜。でも、会場に到着すれば至れり尽くせり。まずは「中鉢さまの集いでございますね」と東天紅のスタッフさんのお出迎え。そして、宴会場入り口にはDue Baci(ファン倶楽部の名称です)のスタッフさんのみならず、中鉢さんご夫妻直々のお出迎え。
  礼子夫人:「あ〜〜〜♪」
  スタッフのOさん:「お待ちしてました〜」(と名札一式 を差し出す)
  ご本人さま:ニコニコ
いきなり「あ〜〜〜!」ですよ「あ〜〜〜!」。そして、いきなり名札一式ですよ。名乗りあげてもいないし、参加証も取り出してないというのに!! あらら、ご祝儀袋持って来てないわぁ(汗) 差し入れも持ってきてないよぉぉ(大汗)何よりも、悪さできない〜(爆) 実は、中鉢氏のファンの集いに参加するのは初めてだったのですが、同行予定の「ら。」が仕事の都合で遅刻のため「一人でポツンとなるのは嫌だなぁ」と心細かったのですが、フレンドリーな受付でいきなり解凍。おまけに、テーブルで一緒になった皆さんとも楽しくお話ができ「さっきまでの心配は何だったの?」でございました。ファン同士だと話題探しも楽だし良いですねぇ。「ら。」からも「遅れて会場に入ったら、テーブルの人と歓談しているので安心したよ」とのお言葉を頂戴しております。個人的な感覚ですが、クラシック・ファンは知らない人にすぐ話かける傾向があるようです。仲間意識が強いとでも言うのでしょうかね!? 要は社交意識が高いのだぁ!!
 ミニ・リサイタルは「いつもいらしてくださる皆さんのために、普段歌ってない曲を集めてみました」という嬉しいプログラミング。さらに「知らない曲ばかりでは申し訳ないので」とミュージカルナンバーも登場。お約束の礼子さんとのデュオあり、「みんなで歌おう」のコーナー(結構、駄目だしは厳しく、歌い直しを命じられたりするのもまた楽し)あり。あ、今後の出演公演チケットの割引販売もありました〜♪ 「来たからには楽しんで帰ってもらうよー」という意気込みが嬉しいじゃないですか!
 コンサートの後はお食事タイムやゲームコーナーがあったのですが、お客さんが豪華な中華ビュッフェに舌鼓を打っているというのに、中鉢夫妻は「どんどん食べてってくださいね」と、ひたすらホスト・ホステス役。「中鉢さんも食べましょうよ」と声をかけたら「今日はみなさんに楽しんでいただく会なので僕たちは良いんです」ですと。おぉぉ、すんなり出てくる台詞がこれです。かっこいい〜。かといって、まじめ一本ではなく、夫婦漫才も繰り広げられるので、かしこまり専門でないのが気楽。ほら、なまじハンサムが澄ましてばかりだとこちらも肩こっちゃうでしょ。今や藤原歌劇団の第一テノールだというのにこの腰の低さ。恐らく、ふんぞり返るよりもこちらの方がご本人様は落ち着くんでしょうね。でも、年齢層が高いファン(僕たちが最年少クラスです)を引き付け続けるのは、演奏だけでなく、ホスピタリティも大きく関わっている気がします。素敵なお兄ちゃまです(ちなみに礼子さんは同い年)。
 お開きの際も、会場出口で一人一人に記念品の包みをを手渡しながらのお見送り。気になる中身は、ロット番号入り、直筆サインとイラスト入り、中にはチョコレートがコロンと入ったのマグカップ。イラストは何気に今回の会でのトークに関連したもので(イカだとかトロンボーン)適当にしゃべっているようでいて、実はいろいろ下準備をされていたのが伺えます! 中鉢氏のステージトークにはいくつか特徴があるのですが、
  (1) 宣伝だとか、自己アピールで照れると首筋をポリポリ
  (2) ファンが喜ぶようなプライベートネタを適度に織り交ぜる
というところでしょうか。「好きなんです」だとか「良い曲なんです」といった単語を使わず、具体的な思い出話などを展開しながら「この曲が好きで好きでたまりません」ということが伝わるところが素敵だなと思っております。真似したいんだけど、なかなか出来ない(汗)
 礼子夫人は、中鉢氏ご自身が照れちゃう自己宣伝を引継ぎ、調子が悪ければ飲み物持って駆けつけたり、トークで場を和ませたり、オペラの演技についてお客さんから質問があれば舞台上で相手役としてポーズを決めたり大活躍。とってもとっても気遣いさんなんだけど、いつも元気で気取りがなくって大好き♪
 それにしても、この料金・会場で、コンサート・料理・記念品と、赤字出てないのか心配になってしまいました〜。なまじ音楽事務所が絡まない方が良いのかな。スタッフの皆さんには頭の下がる思いでいっぱいです。手作り感覚いっぱいで、幸せな空気にあふれた集いでした。


2005年04月16日(日)11:00-14:00
宝塚歌劇団月組「エリザベート」@東京宝塚劇場

 S席 8000円 1階-11列-64番 (パンフレット:1000円)
 演出:小池修一郎

 トート(死、黄泉の帝王):彩輝直
 エリザベート(シシィ、オーストリア=ハンガリー帝国皇后):瀬奈じゅん
 フランツ・ヨーゼフ(オーストリア=ハンガリー帝国皇帝):初風緑
 ルイジ・ルキーニ(エリザベート暗殺者):霧矢大夢
 ルドルフ(オーストリア=ハンガリー帝国皇太子):大空祐飛
 マックス公爵(バイエルン公爵、エリザベートの父):星原美沙緒
 グリュンネ伯爵(皇帝の側近):磯野千尋
 ルドヴィカ公爵夫人(エリザベートの母):夏河ゆら
 ラウシャー大司教(皇帝の側近):光樹すばる
 皇太后ゾフィー(フランツ・ヨーゼフの母):美々杏里
 エルマー・バチャニー(ハンガリーの革命家):月船さらら
 リヒテンシュタイン伯爵夫人(女官長):紫城るい
 シュテファン・カロリィ(ハンガリーの革命家):北翔海莉

 いよいよ宝塚5組目による「エリザベート」の登場です。星組公演時の新人公演でトート役を務めた彩輝直のサヨナラ公演であり、次期月組トップの瀬奈じゅんが女役に回りタイトルロール、という話題性タップリの公演。歌えない&踊れないトート。元来歌が苦手で、公演前に放送された「情熱大陸」では、ヴォイス・トレーニングを積んだものの、初日までには歌いこなせませんでした、というとんでもない放送をされてしまったエリザ。……期待値が低かったせいか、観劇後の友人知人から漏れ聞く感想は何ともやさしいこと、やさしいこと。ただし「思ったより」「意外と」など、必ず接頭語が付きます。「情熱大陸」が放送された時点で、既にチケットは完売していましたから、もしかしたら「情熱大陸」は「観劇前のハードルを下げる」ありがたい放送だったのかもしれません。とりあえず、全員どうにか及第点。赤点ギリギリの人はいましたが、それでも全体的なレベルがここまで上達できるというのもスゴイ(Rさんもおっしゃってましたが、逆に、なぜ「エリザ」以外の公演だとレベルがあがらないのか、も不思議ですねぇ)。
 主役の瀬奈エリザは、甘〜い砂糖菓子のようなお姫様ではなく、史実に近いハードな役作り。「嫌よ、大人しいお后なんて。なれない、可愛い人形なんて。」と劇中で歌っていますが、まさにその通り。王妃としての押し出しの良さと、シシィとしての宮廷に収まりきれない奔放さは、娘役よりも男役が演じた方がふさわしい役なんだな、と新たな発見(雪組版ではトートを、東宝版ではエリザを演じている一路真輝については、元々女性的な男役だったのでこんなことは考えませんでした〜)。同じ作品、同じ演出でも、演じ手が変わるとこうも印象がかわるんだ、と嬉しくなりました。数年前に上演された「風と共に去りぬ」では、どう贔屓目に見てもオカマちゃんだった瀬奈じゅんも、今回は歌もドレス姿も花丸の見違えるように見事な女役。これなら、いつ退団しても安心して応援できそう(次期トップ=退団までのカウントダウン開始なのです・涙) でも、安心して見聞きできる技術ではなので、手に汗を握りましたヨ。「私だけに」なんて、ちゃんと歌いきれるかどうか息つめて聞いてたので、窒息しそうでしたぁ。
 トートの彩輝直はとりあえず「頑張ったね」としか言いようがないなぁ。パンフの写真は外部のメイクさんが行ったとはいえ、妖しいを通り越して怪しいのが可哀想(最後の公演なのに……)。なお、トップさんにあわせて、演出に手が入れられるのが宝塚の特徴ですが、今回はフィナーレも含めて、トート役のダンスがほとんどカットされていました。基本は腕をヒラヒラさせるだけで、複雑なステップもなければ、足を頭上に蹴り上げるなんてこともナシ。歌は特訓をされたようで、心配していた低音は出ているし、「愛と死のロンド」などは彼女なりにまとめ上げていたので「おぉ〜」とはじめは喜んでいたのですが、次第にいつものヴィヴラート過多&音程不安定になってしまったのが残念。なまじ普段が鼻歌なので、たまにお腹から声を出すだけで拍手喝采となるのは、ズルイ〜〜〜。演技面ではかなり女性的なトートでした。ひたすら悶々と悩んでいるんです。ま、トート=死としては、男っぽくなくても成り立つので、中性的なトートというのもありでしょう。トート=エリザが死を意識した時に登場する幻なのですから。そして、彼女お得意の苦悩の表情にはドキっとさせられましたが、トートとエリザの駆け引きという部分は表現されていないので、ちと片手落ちの印象を受けました。(余談ながら、フィナーレでも、トートとエリザが勝手に踊っていて、デュエットにはなってなかったです、ええ)。ただ、黒天使もトートにあわせてか、ユルユル状態で、独自の雰囲気もかもしだせず、群集に埋もれてしまったのは大減点。「アンタら、そんなところでフラフラしてたら邪魔!」です。あ、舞台上を走る姿は花組のような女の子走りではなくなっていてホッ。
 フランツ役の初風緑は、今回もっともテクニックが安定していた人でしょう。低音から高音までムラなく楽に出てくる声、年齢に応じて自在に歌い分ける歌唱力、エリザベートへの愛情と皇帝の立場とのギャップに苦悩する芝居、どれをとっても「専科」の名にふさわしい名演。ただし、古巣の月組への出演にもかかわらず、カンパニーの中では浮いてしまっていました。男役の濃度が高いがゆえに、彩輝直をはじめとする男性度の低い月組男役の中に入ると時代がかっているのです。俺様=瀬奈じゅんが女役に回ってしまったので、余計にそう感じたのかもしれません。コマ劇場の「狸組」だったらすぐにでも溶け込めそうですね。
 ということで、あっさりな月組(サッパリな宙組とは違います)の男役の面々ですが、霧矢大夢はイタリアンというよりアメリカンな印象。これは芸風から来るのかもしれません。色香がなくて、爽やか兄ちゃん。彼女は男役としては低音が苦手なのですが、名歌手だけあって、出ない音のごまかし方が上手。若手の男役にありがちな、聞いている客までノドを締め付けられるような音を出すのではなく、自分の出せる範囲の音域で上手に編曲・調整。調整といえば、オーケストレーションも手が加えられていて、歌い手のメロディに合わせて、伴奏も変更という箇所がいくつかありました。カンパニーとしてのまとまりが感じられて結構なことです。閑話休題。現在の月組の男役は「可愛い」系が揃っているので、革命家も黒天使も愛らしい顔立ちが邪魔して、凄みは効いてなかったかな。
 さて、今回、彩輝直と同時退団するのが美々杏里。雪組〜宙組〜月組と三度目の出演のエリザとなります。学年の推移に伴い、アンサンブル〜リヒテンシュタイン〜ゾフィーと演じる役も出世。実は「唯一、開幕が心配でない役者」だったのですが、いざフタをあけてみたら、キーがまったく合わず、得意の歌でまさかの沈没。最後の最後で「何てことっ(byゾフィー)」。そういえばゾフィー役って、花組公演では元来男役の夏美ようが演じたんでした。そして、星組&宙組でこの役を演じた出雲綾は、男役のパートと女役のパートを自在に歌い分け、一人デュエットが出来る人でした〜! あらら、月組公演を観ながら、出雲綾に思いをはせるとは(汗)。とはいえ、ビビアンも、最後の最後のエトワールで、ドラマティックな歌唱を披露して本領発揮。彼女にエトワールを与えてくれてどうもありがとう!>小池さん でも、リピートはパスッ。観る側も精神力と体力が必要とされすぎますヮ。。。


2005年04月16日(日)15:00-18:35
新国立劇場オペラ「モーツァルト:フィガロの結婚」@新国立劇場オペラ劇場

 ランク6 6615円(会員割引) 3階-R4列-3番 (パンフレット:800円)
 指揮:平井秀明
 演出:アンドレアス・ホモキ
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 アルマヴィーヴァ伯爵:ヴォルフガング・ブレンデル
 伯爵夫人:エミリー・マギー
 フィガロ:マウリツィオ・ムラーロ
 スザンナ:松原有奈
 ケルビーノ:ミシェル・ブリート
 マルチェッリーナ:竹本節子
 バルトロ:妻屋秀和
 バジリオ:大野光彦
 ドン・クルツィオ:中原雅彦
 アントーニオ:晴雅彦
 バルバリーナ:中村恵理
 二人の娘:三浦志保、小林昌代

 お芝居としても逸品で、音楽も変幻自在で、もしかしたら、もっとも完成度の高いオペラかもしれません。キャストは総入れ替えになりましたが、初演の際に高い評価を得たプロダクションなので、今回の再演を心待ちにしていました。
 が、期待が高すぎたせいか、スミマセン、気に入らなかった〜(涙)このプロダクションは舞台上は沢山のダンボールとタンスがあるだけという、想像力をかきたてるシンプルな美術と、人間心理を深く掘り下げた演技や設定が特徴なのですが、どうしても歌詞と舞台上での出来事のギャップが激しくなりますし、演出の毒というかあくどさが目立ってしまい、本来のストーリーの大筋が見えにくくなってしまいますので、初見時は楽しかった独創的な演出も、二度目の観劇ともなると無粋に感じられてしまいました。緩急がなく、常にフルスピードというのは観ていて疲れるものです。これが初見で、演出を追うのにいっぱいいっぱいの場合は、結構楽しかったりするのですが、リピートするならオーソドックスなものの方が良いですわ。滅多に上演されない作品であればともかく、定番作品、それも新国の大規模なプロダクションとしては、舞台をきっちり飾り立てていただきたいなと思っています(ま、好みの問題ですけど)。なんだか、新国のレパートリー公演ではなく、二期会の単発公演を観ているような気分です。
 今回のプロダクションの特徴としては、貴族と庶民の表面的な差は極力排除し、人間としての本質に迫る、というものかと思われます。ミュージカル「レミゼ」の中で「金持ち、貧乏人。ズボンを脱いだら同じさ」と歌われていますが、「フィガロ」に登場する人物は誰も彼もが色ボケ状態。結婚間もないのに既に倦怠期突入、おまけに使用人にレイプまがいの行為を働く伯爵。欲求不満で思わずケルビーノにも色目を使ってしまうほど悶々としている伯爵夫人。知らなかったとはいえ自分の息子に結婚を迫るマルチェリーナと、彼女のセックスフレンドのバルトロ。女と見れば年増から未成年まで見境なく肉体関係を迫るケルビーノ。まだ未成年なのに、興味本位で性の世界に足を踏み入れ、堕落した自分に落ち込んでしまうバルバリーナ。そして、結婚式当日だというのに、ケルビーノを誘惑するスザンナ。。。誇り高いスペインの貴族の館というのは表向きであって、実際は欲望の渦巻く淫乱の館(おぉ、ブルブルッ!)。唯一真面目なのが、スザンナの言動に翻弄されるフィガロだけというのも恐ろしい限り。伯爵は自分の分身のようなケルビーノの毛嫌いし、スザンナとマルチェリーナは好き者同士として犬猿の仲ながら、利害が一致するとなると固い絆で結ばれます。「コジ・ファン・トゥッテ」は「女はみんなこうしたもの」ですが、「フィガロの結婚」は「人間、脱いだらこうしたもの」かもしれません。ちなみに、色欲が進行するにつれ、出演者の衣装はだらしなくはだけて来ます、はい。
 出演者はおしなべて力のある人たちが集まっていましたが、残念なのは調和が取れていなかったこと。先月の「コジ・ファン・トゥッテ」も歌唱法の違いが散見されましたが、今回はさらに輪をかけた感じ。個々は良いのですが、アンサンブルとしては美しくないのです。動きの激しい演出に気を取られちゃったのかなぁ。ちなみに、本日が今回の最終公演。最後の最後でこのレベルというのもなぁ。。。困ったといえば、今回、一番悪目立ちしていたのがスザンナ。歌も芝居もオキャンなのと下品とを取り違えてます。どんなにくだけたプロダクションであっても、品位まで落とすことはないでしょうに。誘惑のシーンも笑うに笑えなくなってしまいます。


2005年04月17日(月)13:20-16:25
映画「アビエイター」@VIRGIN TOHOシネマズ 六本木ヒルズ 5 SCREEN

 全席指定 1300円 D列-7番 (パンフレット:700円)
 監督:マーティン・スコセッシ

 ハワ−ド・ヒューズ:レオナルド・ディカプリオ
 キャサリン・ヘップバーン:ケイト・ブランシェット
 エヴァ・ガードナー:ケイト・ベッキンセール
 ノア・ディートリッヒ:ジョン・C・ライリー
 ホアン・トリップ:アレック・ボールドウィン
 オーウェン・ブリュースター上院議員:アラン・アルダ
 フィッツ教授:イアン・ホルム
 ジャック・フライ:ダニー・ヒューストン
 ジーン・ハーロウ:グウェン・ステファニー
 エロール・フリン:ジュード・ロウ

 ミュージカル好きにとっては、アンドリュー・ロイド=ウェバーの「サンセット大通り」に、旅行好きには「地球の歩き方・ラスベガス編」に登場する、馴染みのある名前がわんさか登場する映画です。ストーリーは世間を賑わすホリエモンのアメリカ版と言いましょうか。「Shall we ダンス?」のハリウッド版では、竹中直人が扮するサラリーマンが、リチャード・ギアの扮する弁護士と変化したように、野暮ったいホリエモンから、スマートなデカプーに変化しています。あはは。スケールの差こそあれ、ヒューズとホリエモンには共通する態度だとか台詞が多いように見受けられるのですが、きっとホリエモン氏もヒューズについて意識するところがあったんだろうな、なぁんて思いながらの観賞でした。
 さて、題材としてはとても面白いです。「映画」と「飛行機」の両分野において、数々の改革と成功を収めた男の物語。美女とのゴシップが多々あり、愛する人への無償の愛あり、政治ドラマあり、成功の陰に隠れた病あり。一つ一つのエピソードごとに一本の映画が作れるほどの材料が揃っています。監督は一流、制作費も150億円と高額、出演者は脇役にいたるまで豪華メンバー。しかし、料理の際に棚にある調味料を全部いれてしまいました、のような仕上がりになってしまいました。一口食べただけでギブアップのマズさです。もったいなくともエピソードを削って山場を作るか、いっその事ミュージカル処理をして、複数のストーリーの同時処理を行えば良かったのになぁ。この手の「男の夢と挫折の一生」で思い浮かぶのは小池修一郎氏。扱う題材といい、ストーリーといいドンピシャリでしょ!? 何しろ「アビエイター」は「カステル・ミラージュ」と「失われた楽園」と「華麗なるギャツビー」を合わせたような作品なのですから。ほら、情報量の多い小池作品ですら、すぐに3作も出てきた!(笑) ヒューズを演じられる俳優は、すみれコードにはひっかかりますが、杜けあきや久世星佳だったら可能? ちょっと地味になっちゃうか。。。でも、男優だとトンと思いつかないです、はい。いずれにせよ、ストレート・プレイの映画で3時間で描こうだなんて、どだい無理な話です! 劇中のレオさまの台詞に「第10巻の部分、観客が飽きてたからカットしろ」(だったかな)というのがありましたが、それをそのまま申し上げましょう。
 さて、出演者はおしなべて好演です。なまじ有名人だらけなので、役者としては演じるのが難しかったでしょうが、イメージをしっかりとらえながらも、モノマネに終わってないのがお見事! ケイト・ブランシェットとケイト・ベッキンセールについては、出番こそ多くないものの、印象の強さは強烈。とはいえ、フィルムの大半はディカプリオ、ディカプリオ、ディカプリオのオンパレード。舞台化するなら一人芝居でもOKかも、と思える露出度です。思い入れのある役というだけあって、物凄くのめりこんでいる様子でが、ヒューズ役とディカプリオだと柄違いという印象がぬぐえませんでした。無理やりなのか史実に基づいてなのか知りませんが(スミマセン、勉強不足です)、眉間にシワを寄せたままの表情もシックリしませんねぇ。そして、大人の女優たちと対等にやりあうには、まだまだベビー・フェイス。ま、時折登場するクシャクシャっとゆがめた表情は、さすがの効果が出ますけどね。
 ハリウッド黄金期の話なので、衣装や美術、メイクについてはナカナカ見応えがあります。ディカプリオ・ファンにとってはたまらない映像のオンパレードでしょう。でも、とりたてて彼のファンではない僕にとっては「30過ぎて、急に老け込み、美貌も衰えたなぁ」という印象ばかり残ってしまいました。肌の状態が極端に悪くなり、目元に関しては「差し入れするならドモホルンリンクル」状態。年とったシーンだけではなく、全編において老化が感じられました。それでいて、中年のシーンになると若さが出てしまい、50代の実年には絶対見えない!! う〜ん、今が一番中途半端な時期なのかもしれませねん。この手の俳優は今後どのような役をチョイスしていくのか興味深々です。


2005年04月21日(木)11:00-11:55
東京藝術大学「2005年度 第2回 奏楽堂 モーニングコンサート」@東京藝術大学奏楽堂

 全席自由 無料 1階-13列-5番 (パンフレット:無料)
 指揮:佐藤功太郎
 管弦楽:藝大フィルハーモニア

 ハープ:津野田圭(4年)
 ピアノ:伊藤わか奈(4年)

 ヘンデル:ハープ協奏曲 変ロ長調
 サン=サーンス:ピアノ協奏曲 第2番 ト短調 Op.22

 藝大フィルハーモニアはなにげにおじさん度が高く(教授たちでしょうか?)レベルが高くてびっくりしました。「都響です」といわれれば「さようでございますか」とだまされる人もいるかもしれません。低音がズンズン気持ち良く響いて気持ちの良い音空間なのは、オケの特質なんだかホールの音響なんだか?? 指揮者もオケも「ソリストを盛り上げまっせ〜」と暖かく演奏を支え、客席一同も応援団。ソリストの二人は、その雰囲気にうまく乗って、勢いのある若々しい演奏を披露してくれました。ハープの津野田圭は水色のドレス姿も愛らしく、アイドルとしても売り出せるかも! 伊藤わか奈は表情が固かったけれど、ただただ「上手い」の一言。藝大ってスゴイわぁ、と感服してしまいました。場数を踏んでいるのか、オケやお客さんの前でも堂々としているのがサスガ(実は心臓バクバクだったりして!?) 今日はたまたまお休みだったので初めてモーニングコンサートに足を運んでみましたが、このシリーズは年間13回も開催され、基本的にコンチェルト二本立てとのこと。指揮者も一流どころが続々と登場しますし、時間さえあえば毎回通いたい! 未来のスターを探せ!!という気分になりますよ。ちなみに、終演時間とお昼休みが重なるので、学食は非常に混みあいます。演奏時間も一時間なので、クラシック入門に良いかも。オススメです。


2005年04月21日(木)14:00-16:00
東京藝術大学「第189回 芸大生による木曜コンサート」@旧東京音楽学校奏楽堂

 全席自由 300円 け列-20番 (パンフレット:無料)

 1.福冨彩子
  スカルラッティ:ソナタK.27(L499)
  スカルラッティ:ソナタK.13(l486)
  ショパン:エチュードOp.25-11
  リスト:超絶技巧練習曲 第7番 「エロイカ」
 2.崔理英
  ラフマニノフ:コレルリの主題による変奏曲Op.42
 3.松原賢司
  ショパン:前奏曲集Op.28より 1.3.4.7.8.11.12.14.16.21.22.23.24
(休憩)
 4.岩田珠美
  ベートーヴェン:ソナタ 第26番「告別」
 5.東浦亜希子
  シューマン:6つの間奏曲Op.4
 6.前田健治
  滝廉太郎:憾
  武満徹:遮られない休息
  メシアン:幼子イエスにそそぐ20の眼差しより 第13曲「ノエル」

 「モーニングコンサート」は客席に結構余裕があったので、ノンビリしていたのですが、「木曜コンサート」は有料にもかかわらず(といっても300円ですが)満席! 発表会形式のコンサートで、個々のプロフィールもわからないのですが、出演者それぞれやはり高いレベル。かつて田村教授が「藝大に入ってこれるような奴は、みんなそこそこの才能を持っている宝石たちで、私たちは埃をはらってやるだけなんですよ」と発言されていたのを思い出しました。出演者それぞれの「売り」があり、それを伸ばした演奏なので爽快感タップリ。まだ、オールマイティではないゆえか、今まで聴いたことのないような曲作りをされている人がいたりして、非常に興味深く、勉強になりました。それにしても、みなさん指が回ること回ること。個人的には松原賢司の演奏が印象に残りました。「俺様の演奏を聴きやがれ〜」という押しの強さが気に入った!(「のだめカンタービレ」の影響かしらん?)。ちなみに彼は学ラン姿でしたが、もしかして新入生???。最近、学生さんたちの年齢がトンとわからない。。。
 芸大生のコンサートは旧奏楽堂でも月1回のペースあるようです。今回はピアノ科でしたが、毎回異なる科が出演とのこと。個人的には「いかにも音大」なマニアックなプログラムになりがちな「木曜コンサート」よりも、ポピュラーな協奏曲が登場する「モーニングコンサート」の方が嬉しいかな。
 それにしても、女性陣は色とりどりのドレスに凝ったヘアメイクで部隊映えするのに、男って何だかツマラン。。。ブツブツ。


2005年04月23日(土)13:35-15:35
映画「Shall We Dance?」@TOHOシネマズ市川コルトンプラザ 1 SCREEN

 全席指定 1300円 J列-24番 (パンフレット:600円)
 監督:ピーター・チェルソム

 ジョン・クラーク:リチャード・ギア(役所広司)
 ポリーナ:ジェニファー・ロペス(草刈民代)
 ビヴァリー・クラーク:スーザン・サランドン(原日出子)
 リンク・ピーターソン:スタンリー・トゥッチ(竹中直人)
 チック:ボビー・カナヴェイル(徳井優)
 ボビー:リサ・アン・ウォルター(渡辺えり子)
 ヴァーン:オマー・ミラー(田口浩正)
 ミス・ミッツィー:アニタ・ジレット(草村礼子)
 ディバイン探偵:リチャード・ジェンキンス(柄本明)

 周防正行監督の「Shall We ダンス?」のハリウッド版リメイクです。原作を尊重し、その上でハリウッドならではの色づけを行っているので、日本人としては好感が持てますし、何よりも、日米の文化の比較も出来てなかなか面白い作りでした。実は「大味になってしまうのかな?」と密かに心配していたのですが、スケールは大きくなったものの、細かな心理描写はそのままで一安心。逆に「言わなくても通じ合えるよね」という暗黙のお約束が成り立つ日本映画と異なり、登場人物が自分の心情を表示し、相手にもそれを求めるという部分で、よりわかりやすい映画になった気がします。
 主人公が地味なサラリーマンから弁護士に変更になり、奥様もパートタイマーからキャリアウーマンに変更になって、華やかさが増しました。それにしても、アメリカの弁護士さんって華やかですねぇ……って映画の世界でしか知りませんけど、日本の弁護士って結構地味じゃないですか。そして、民事か刑事かという大雑把な専門ではなく「遺産相続」の書類作成だけで商売が成り立つというのもさすがアメリカですね。仕事は単調かもしれないけれど、終業時間はハッキリしているし、定期的にスポーツジムに寄り道しているし、何よりも自宅の庭の手入れを明るい時間に行える余裕。さらには、正装姿がなんと似合うことでしょう(あ、これはギア様だから?) 日本ももっと弁護士の環境とイメージが変わりますように! 実はギア様ってそんなにハンサムとは思ってないのです。そして、部屋着姿など、結構さえないおっちゃんなのにもかかわらず、ドレスアップした姿の格好良いこと! まずは堂々とした態度、照れることなく、下品にならずにキザな仕草や台詞が決まること! クライマックスのシーンで、薔薇の花を一輪だけ捧げてエレベーターで昇ってくる姿はハリウッドスターの面目躍起です。ストーリーの上では、奥様と仲直りをするためのシーンなのですが、もうここは「自分が格好良く見えている」「絶対、奥様の機嫌が直る」という自信満々。圧巻でした。こればかりは日本人には無理だぁ。
 さて、奥様のスーザン・サランドンですが、彼女の参加によって、ハリウッド版のスケールが大きくなったといっても過言ではありません。バリバリ働く姿と、家庭的な姿を適確に演じ分けることにより、リアル感が増しました(原日出子的奥様というのは今は昔〜のイメージあり)。自分の不満はきっちり相手に伝えるし、相手の考えも確認を希望。理不尽なことがあれば立腹するけれど、理論的な話し合いで解決することができる。という、非常に理知的で、いかにも働く女性、という感じ。
 そして、草刈民代とは大きくイメージが異なるものの、ハリウッド版としてはそのゴージャス感がピッタリのジェニファー・ロペス。常日頃、テレビや映画を見ていて僕が不満なのは、ダンスシーンでカメラを動かしすぎること。せっかくのステップやフォーメーションが全然わからず、ひたすら顔のアップばかり。ま、踊れない人たちのゴマカシというのもあるのでしょうが(テレビばかりのスターがたまに劇場で踊るとボロでまくりです。。。) が、この映画の中では、全身を映しての劇場中継のようなカメラ割り。ジェニファーの雌豹のようなしなやかなダンスがタップリ堪能できて満足満足。彼女は決めのポーズや表情付けがクッキリ、ハッキリしていて、いかにも大劇場でのダンサーというイメージ。動的エネルギーに満ちているのに、押さえた演技をすることによって、ミステリアスな空気が醸し出されていて、これまたステキでした。空腹でフラフラになった際に「ケーキが食べたい」とギア様に甘えるアナタ。いきなり食事をすっとばしてケーキという発想にしびれました。そして、1カットの大きさと、持ち歩きしやすいように工夫されたケースに、シカゴのケーキ事情があらわれていて、思わずニッコリ。
 脇役も基本的には日本版を踏襲。よくもまぁ、似たようなタイプの役者を探してきたもんだ、と感嘆です。あ、チック役はひたすら「女の子にもてるため」と強調しているのに、ラストシーンではいきなりゲイ・クラブで踊っているので、お見逃しなく! このシーン以外でも、一瞬だけ登場する「その後」だとか「過去」だとかの「気付く人だけ気付いてね」という芸の細かさが面白いです。
 日本版とはどちらも甲乙付けがたいのですが、個人的にはハリウッド版に軍配。見終わった時の幸福感と、エンターテイメントとしての華やかさに満ちていますので。。。人間愛と、ダンスへの愛、そしてリッチな生活バンザイ!の素敵な映画でした。


2005年04月29日(金・祝)20:30-21:15
LA FOLLE JOURNEE AU JAPON「小山実稚恵」@東京国際フォーラム ホールB7

 全席指定 1500円 2列-11番 (パンフレット:無料)

 ピアノ:小山実稚恵

 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番ホ長調 Op.109
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32番ハ短調 Op.111

 小山さんのピアノは女性的な繊細な表現を持ち味としながら、豪快な力強さを持ち合のが魅力で、日本人ソリストの中では最も好きなピアニストの一人です。アカデミックに演奏しているように見えて、気がつけば魂を奪われるような情熱的な演奏にシフトし、でも最後はきちんと現世へ連れ戻してくれる人、というイメージがあります。
 そして、ベートーヴェンに限らないのですが、大作曲家の晩年の作品というものは、音楽のつくりが大きすぎて、僕の手にはおえないことが多いのです。よって、今宵のベートーヴェンの後期ソナタについては、小山さんがどのように料理してくれるのか、非常に楽しみでした。だって、中期のロマンティックな作品ならば「得意そう」だけれど、ピアノという楽器の限界に迫っている本日のソナタたちは、肉体的にも精神的にも「実年のマッチョな男性ピアニスト用」と思っていましたから。。。
 で、彼女の中ではすでにこの曲は完成しているようで、あの手この手の技法を駆使しての演奏は勉強になりましたが、かもし出される音楽には僕にはまだついて行くことができませんでした。耳に心地よい響きのうねりにうっかり身をゆだねようものならば、途中で振り落とされる……の繰り返しなのです。ベートーヴェン、手ごわいですわ。ピアノを弾く時というのは、一つ一つの音、小説、フレーズ、楽章、曲全体と、あれこれ考えながら弾くものですが、本日の曲に関しては、そのどれをとっても「こうあるべき!」という姿が見えず、かといって、ショパンを代表するロマン派ピアノのように、自由な解釈が許されるというものでもなさそうで、聴衆の立場としても完敗。ピアニストが晩年になると「ベートーヴェンのソナタにもう一度取り組みたい」という発言をされますが、きっと技術だけでなく、精神面だとか、教養面だとかで、準備が必要なのでしょうね。今はまだ、、、弾きたいとも思わないですわぁ。だって、弾きにくく、エクスタシーも得られないのに、聴き映えしない曲って僕の性格では許せないもの(って、まず弾けるようになってから言え、ですね・汗)
 小山さんのように第一線で活躍を続けるピアニストにとっては、技術的にはいつでも弾けるでしょうし、その時点その時点でのベストな状態に持ってきているという自信は伝わってきましたが、実は「今、彼女はこれらのソナタを弾いて幸せ?」とも思っておりました。ものすごい、エネルギーを費やして弾いているにもかかわらず、完全燃焼していないような……。通常のリサイタルの半分のボリュームのプログラムではありましたが、満腹感がありました、はい。彼女では、別のプログラムを聴いてみたいです。


2005年04月29日(金・祝)22:00-22:50
LA FOLLE JOURNEE AU JAPON「樫本大進/趙静/クレール・デゼール」@東京国際フォーラム ホールB7

 全席指定 1500円 12列-30番 (パンフレット:無料)

 ヴァイオリン:樫本大進
 チェロ:趙静
 ピアノ:クレール・デゼール

 フンメル:ピアノ三重奏曲第2番ヘ長調 Op.22
 ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第5番ニ長調「幽霊」 Op.70の1

 このメンバーがこれらの曲を演奏を披露するのは初めて、とのことですが、のぼぉちゃんを応援し始めた頃を思い出させる、爽やかさと勢いのある素敵なコンサートでした。出演者三人が非常に楽しそうなのが何より。リラックスした雰囲気で舞台上に登場し、チューニングを調整すると「じゃ、行きますか!」とお互いニッコリしてからの音出し。演奏中も「行きま〜す」だとか「やばい、よろしく」だとかの目配せがこれまた楽しい。演奏が終われば「うまくいったね〜」という喜びが舞台から客席まで広がり、いかにも「音楽祭」といった華やかな空気が充満したのでした。満足、満足〜。
 フンメルのトリオはまるでいたずらっ子をテーマにしたかのような茶目っ気タップリの曲で、フレーズごとに奏者間で作戦会議が行われたり、一転して対立して張り合ったり、はたまた協調して盛り上げたりと、おもわず「この曲弾きたい!」と思える自由な空気。作曲された時代が時代なのでアカデミックな作品にもかかわらず、演奏者に遊びを許している、愛らしいトリオでした。思わす終演後に「この曲弾きたい〜」と叫んでましたさ。これはね、僕の曲です、ええ(笑)
 ベートーヴェンになってもその自由な精神は変わらず、若さとあふれるノリの良い演奏。それでいて、三者ともに繊細さを備えていて、ピアニストはまるでコロラテューラ・ソプラノのような細やかなパッセージを鮮やかに決めているのがお見事。勢いに乗っている演奏家に接するのは嬉しいものですね〜。青年たちの演奏から、大人の演奏へ脱皮する瞬間に立ち会った気分です。大進「君」は何時の間にやら音が太く柔らかくなり(楽器変えたんでしたっけ?)、チェロは軽やかな足取り。何よりも、ピアノがキラキラしていてまことに雅やか。素敵なトリオでした。


2005年04月30日(土)20:30-21:25
LA FOLLE JOURNEE AU JAPON「庄司紗矢香」@東京国際フォーラム ホールB7

 全席指定 1500円 7列-14番 (パンフレット:無料)

 ヴァイオリン:庄司紗矢香
 ピアノ:フランソワ=フレデリック・ギィ

 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第4番イ短調 Op.23
 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調「春」Op.24

 人気者の庄司紗矢香の登場です。チケットは早々に完売し、いやが上にも期待が高まるコンサート。が、演奏とは生ものでして、ネームバリューも人気も、本番の演奏の前では無力です。そして、残念ながら、今宵の演奏は空中分解してしまいました。
 何しろ、ヴァイオリンとピアノがまったく噛み合わず、舞台の上で「合わせよう、合わせよう」としているにもかかわらず、結局最後まで平行線のまま。まずは4番のソナタが終わった時点で、客席を立つ人たちがいてヤバイなぁ、という空気に。そして、流麗なはずの「春」もギクシャクした固い演奏のまま終了。彼女のヴァイオリンは非常にエネルギッシュなのですが、そのエネルギーを使いあぐねているように感じられました。例えるならば、小学生が消防車の高水圧のホースを持たされたような、とでも言いましょうか。方向性と演奏が一致した時にはとてつもない演奏効果をあげるものの、一致しない時は被害甚大。今日に関しては、ピアノとの調和に気を取られたのか、フレーズとして、楽章としての音楽が膨らまないまま、どもりがちな演奏。ん〜、かなり不満足です! おかげさまで、やたらと長く感じるコンサートでした。
 でも、輪をかけてひどいのがピアノ。昨日のキラキラした音を出したのと同じ楽器だとは思えない!! まるでソフトペダルを踏みっぱなしのようなモコモコした音。おまけに切れ味も鈍けりゃ、音色の変化もナシ。ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタは、ピアノとヴァイオリンが同等に書かれている、ピアニストにとっては美味しい作品なのにもかかわらず、音で遊ぶわけでもなく、ひたすら無表情な演奏。個人的にこの手のやる気がなさそうに聞こえる演奏って大ッ嫌いなんです。音を追うだけのプロだなんて情けないったらありゃしない! ものすご〜〜〜くイライラしました。そもそも、彼のピアノと庄司紗矢香のヴァイオリンは、個性も方向性も正反対の気がするのですが、この組み合わせって本人達の希望なのかしらん?