観劇日記〜2005年10月〜
01日(土) 18:00 宝塚歌劇団星組「ベルサイユのばら」「ソウル・オブ・シバ!」 市川市文化会館
04日(火) 16:30 芸術祭十月大歌舞伎
「双蝶々曲輪日記 引窓」「日高川入相花王」「心中天網島 河庄」
歌舞伎座
12日(水) 19:00 来日カンパニー「Riverdance 〜THE 10th ANNIVERSARY〜」初日 オーチャードホール
14日(金) 09:30 映画「チャーリーとチョコレート工場」 ヴァージンTOHOシネマズ 六本木ヒルズ 7 SCREEN
16日(日) 14:00 「都響 チェロ・スーパーセッション」 行徳文化ホール I&I
21日(金) 18:30 昭和音楽大学「ベッリーニ:夢遊病の娘」 新国立劇場中劇場
22日(土) 11:00 宝塚歌劇団星組「龍星」 日本青年館
22日(土) 15:00 新国立劇場オペラ「ロッシーニ:セビリアの理髪師」 新国立劇場オペラ劇場
29日(土) 15:00 新国立劇場バレエ団
「ライモンダ 第1幕より夢の場」「カルミナ・ブラーナ」
新国立劇場オペラ劇場


2005年10月01日(土)18:00-21:00
宝塚歌劇団星組「ベルサイユのばら」「ソウル・オブ・シバ!」@市川市文化会館

 A席 5000円 2階-11列-5番 (パンフレット:1000円)
 演出:植田紳爾、谷正純(べるばら)/藤井大介(シバ)

 ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン(スウェーデンの貴族):湖月わたる
 マリー・アントワネット(フランス国王類16世の妃):白羽ゆり
 メルシー伯爵(アントワネットの後見人。オーストリアの伯爵):未沙のえる
 グスタフV世(スウェーデン国王):英真なおき
 シモーヌ(フェルゼンの姉):万里柚美
 アンドレ・グランディエ(オスカルの幼馴染):立樹遥
 オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ(男装の王妃付き近衛隊隊長)
 ジェローデル(近衛少佐):麻尋しゅん

 「バスティーユに行ってきます!」と宣言して観に来たのですが、バスティーユの場面がバッサリカットされていました。「オスカルは死にました」でオシマイ。今回、オスカルははっきり脇役扱いで、アンドレにいたっては出てこなくても問題ないようなチョイ役。今回のオスカル役者、アンドレ役者のスターとしてのポジションというのも影響しているのでしょうが、今回はオスカルとアンドレが(ほとんど)登場しないヴァージョンとも言えます。オスカルが女性でありながら軍人として生きていく苦悩や、アンドレとの甘いシーンがないため、登場してはヒステリックに怒り狂うばかりのオスカルという役があまり素敵に見えませんでした。というわけで、ひたすらフェルゼンとアントワネットの道ならぬ恋に焦点が当てらた今回のヴァージョン。アントワネットとフェルゼン、そしてフェルゼンに片思いのオスカルという三角関係がシンプルに表現され、ストーリーとしてはスッキリまとまりましたが、「ベルばら」のフィクション部分がないというのもちょいと寂しかったです。単なる「かなわぬ恋に苦しむ男女の話」なので、社会状況だとか、革命に関する人間ドラマ、男装の麗人に関する華やかな宮廷絵巻がないのですもの。ということで、華やかな舞台を期待していった僕としては肩透かしな公演でした。来月には韓国に持っていくプロダクションですが、あちらの方にはどう迎えられるのか気になるところです。
 今回は地方公演用に95分版として作られていますが、多分、今回の台本にオスカルやアンドレの部分を加えて一本物となる来年の本公演は、もしかしたら見ごたえがあるかもしれないと期待しております。2001年の「ベルばら」でも思いましたが、宝塚スターが歌いやすい音域・メロディーのようでして、歌の不自由な男役が多い今回の公演でもさほどボロが出なかった事、トップお披露目の白羽ゆりがたっぷりとした大芝居を情緒ある芝居で見せきったこと(声に潤いがあってまことに心地良いです)、大浦版に近い作りなので、踊るフェルゼンとして湖月わたるが踊りまくったこと、フェルゼンに帰国を迫るメルシー伯爵役の未沙のえるが押さえた芝居で通しきり、静かな中に重々しい迫力を見せたこと、その他、地方公演にしては上級生がかなり出演していて、本公演前のコマーシャル版としてはかなりのクオリティだったかと思います。下級生たちも張り切っていて、良いカンパニーでした。でも、小公子はぴったりだったけれど、ジェローデルは麻尋しゅんにはあまりに大人の役すぎました。一人だけお子ちゃまが紛れ込んでいて違和感あります。そして、オスカル応援団&フェルゼン応援団のマダムたちがひたすら下品で、いきなり吉本新喜劇を繰り広げてしまうのが、かなり違和感がありました。宝塚のコメディセンスってとっても変! カットするならばこのシーンをバッサリ切って欲しかった。。。
 ショーは下級生たちがノビノビと大活躍。こちらはすでに秋に本公演を行った作品なので、役代わりはあるものの、手馴れた雰囲気。「ベルばら」とは打って変わって、現代的でシャープな作品で、カップリングとしてはなかなか楽しい。Wトップ扱いだった作品なので、どうなることかと思っていましたが、わたさんワンマンショーとして違和感なくまとまっていて、なかなか楽しかったです。中心が輝いているから、下級生たちもパワー全快で踊りまくっているのが気持ち良いですね。それにしても、立樹遥がこんなに何曲も歌う公演って初めてでは?


2005年10月04日(火)16:30-20:35
芸術祭十月大歌舞伎
 「双蝶々曲輪日記 引窓」「日高川入相花王」「心中天網島 河庄」@歌舞伎座

 3階B席 2520円 3階-11列-13番 (パンフレット:1200円)

 「引窓」
   南与兵衛 後に南方十次兵衛:菊五郎
   女房お早:魁春
   平岡丹平:團蔵
   三原伝造:権十郎
   濡髪長五郎:左團次
   母お幸:田之助
 「日高川入相花王」
   清姫:玉三郎
   船頭:竹志郎改め薪車
   人形遣い:菊之助
 「河庄」
   紙屋治兵衛:雁治郎
   粉屋孫右衛門:我當
   丁稚三五郎:壱太郎
   五貫屋善六:竹三郎
   江戸屋太兵衛門:東蔵
   河内屋お庄:田之助
   紀伊国屋小春:雀右衛門

 ここしばらく一幕見席専門だったので、久しぶりの全幕鑑賞です。前日予約だというのに、結構チケットが余っていたので実は期待していなかったのですが、じっくり芝居に取り組んだ素敵な公演でした。これといったイベント公演ではないものの、丁寧な芝居に感銘を受け、芸術の秋を堪能してきました。
 「引窓」は実子の長五郎と継子の与兵衛との間に入って苦悩するお幸、夫の与兵衛を愛しながら姑のお幸の心情を思うお早、そして男たちの思いが交錯する人情物。登場人物が思いやりと愛情に満ちているので、人情物の泣き芝居ではあるものの、爽やかな後味を残します。確かに長五郎は設定の上では殺人犯なのですが、家族思いの優しい心の持ち主として登場するし、長五郎なんて継母に対しての心遣いだとか愛情に満ち溢れているので「母者人、あなたは何故物をお隠しなされます」以下の長台詞では継母への愛情に満ち溢れていて思わず涙。登場人物の一人一人が実に思いやりあふれていて見ごたえがありました。
 続く「日高川入相花王」は、人形浄瑠璃の歌舞伎化。登場人物に台詞がなく、浄瑠璃によってすべてか語られるのが僕としては苦手なのですが(日本人の癖に、音程が不安定な浄瑠璃を聞いていると変な気分になってくるんです)、玉三郎のコッペリアぶりが見事で思わず乗り出して見入ってしまいました(ちなみに後ろの二列は空席でした、念のため)。玉三郎ば舞っているとわかっているのに、人形遣いの菊之助によって踊らされているかのような見事な人形芝居。無表情な演技ゆえ、大蛇に化けてからの毛振り(という表現であってるのかな?)がより尋常でない様子に見え、迫力がありました。女の執念を実に見事に表現した演出だと感服。
 さて、最後の「河庄」は完全に失敗作。かつてホロヴィッツが来日された際に「ヒビの入った骨董品」という酷評をされましたが、本日の雀右衛門がまさにそれ。美貌といい、動きといい実に醜い状況でした。歌舞伎のディープなファンにとっては出演するというだけでありがたいのでしょうが、歌舞伎役者のほとんどを知らず、よって思い入れもない僕としては、劇の進行を妨げる人としか思えませんでした。何しろ、台詞が全く三階席まで届かず、一人だけ粒が立たない状態。おまけに、台詞が全然入ってなくて、プロンプターの声の方がはっきり聞えてしまうという体たらく。改めて、森光子は凄い女優なんだな、と変なところで感心した次第。春日野八千代のように、短時間の出番で位取りだけを表現して引っ込むならばともかく、ヒロインとしての登場にはかなり怒りを覚えております。引き際の美学ってないのかしらん? 雀右衛門に比べれば、花○まりのトップ在位12年なんてまだまだいけますっ! でもって、作品が好きならば何とかなったのでしょうが、実はこの話大嫌いなんです。ウジウジ&ダラダラとなさけない男のたわごとを一時間半にわたって聞かされてみてください。治兵衛役の雁治郎が僕の神経を逆撫でするような名演を見せてくれるので、血管が切れそうになりました。プロダクションとしても、作品としても今回限りで結構です(思い切り初心者の感想ですね。。。)


2005年10月12日(水)19:00-21:20
来日カンパニー「Riverdance 〜THE 10th ANNIVERSARY〜」初日@オーチャードホール

 B席 8000円 2階-6列-41番 (パンフレット:2000円←高い!翻訳もこなれていない上に写真も古い!!)
 演出:ジョン・マカルガン

 SCENE01:REEL AROUND THE SUN
 SCENE02:THE HEART'S CRY
 SCENE03:THE COUNTESS CATHLEEN
 SCENE04:CAOINEADH CHU CHJLAINN(LAMENT)
 SCENE05:THUNDERSTORM
 SCENE06:SHIVNA
 SCENE07:FIREDANCE
 SCENE08:SLIP INTO SPRING - THE HARVEST
 SCENE09:RIVERDANCE
(休憩)
 SCENE10:AMERICAN WAKE
 SCENE11:LIFT THE WING
 SCENE12:HARBOUR OF THE NEW WORLD
       T)HEAL THEIR HEARTS - FREEDOM
       U)TRADING TAPS
       V)MACEDONIAN MORNING / THE RUSSIAN DERVISH
       W)OSCAIL AN DORAS(OPEN THE DOOR)
       X)ANDALUCIA
 SCENE13:HOME AND THE HEARTLAND
 FINALE

 朝からワクワク・ソワソワ落ちつかないほど大好きな「リバーダンス」の初日に行ってきました。いやぁ、お酒なんて飲まなくてもナチュラル・ハイ。世の中はバラ色だし、行き交う人々がみんな幸せに見えるし、劇場帰りはこんな気分にならなくてはっ! 幸せ気分でフラフラする松涛のお屋敷街は最高です。でも、きっと怪しいおじさんに見えているんだろうなぁ(汗) このショーにはお酒以上に人を酔わせる力があります。それも、悪酔いなしという素晴らしい媚薬です。ショー好きの方は、今月はオーチャードホールをチョイスなさることをオススメします。どこそこの劇場とは満足度が段違いですョ。
 さて、今までの来日公演の会場は国際フォーラムホールAだった「リバーダンス」。最初のNY公演はラジオシティでしたし、ロンドンでの会場はハマースミスでした。その他、アリーナ公演がメインの大規模なショーという印象があったのですが、今回の会場はオーチャードホール。舞台の大きさに合わせて、装置は簡略化され、バンドや出演者の数も減っているため、何だか宝塚の地方公演に通じるような寂れた印象を受けてしまいましたが、それでも出演者の熱演により盛り上がった公演でした。そうそう、通常は舞台下手花道を張り出して設置されるひな壇にズラリといならぶリバーダンス・オーケストラですが、今日は舞台上。したがって舞台が非常に狭いのです。おまけに奥行きを1/3位しか使わない(東京文化のオケピット部分のみで踊っているとでも思ってください)ので、何だかせせこましいのです。広い舞台を高速で大移動したり、ズラリと並んだダンサーが一糸乱れずに踊り狂うサマは残念ながら今回はオアズケ。一回りも二回りも小さなスケールでの公演となってしまいました。群舞でフォーメーションを組もうにも、ダンサーが少ないんですもの。移動距離が短いし、すぐに人や壁にぶつかってしまうので、動きもかなり小さくなっていましたし。したがって、客席もいつも程には盛り上がってなかったみたい。ま、この作品に観客が慣れた、というのもあるのでしょうが。その代わり、どの客席からも舞台が近いし、何よりも音響が最高なので、いつもと違った「リバーダンス」が楽しめました。人数が少ないと、アンサンブルのダンサー1人1人にも目が行きますし。でもね、この料金でここまでのクオリティのショーを見せられると、他劇団の公演がショボクて堪えられなくなるという副作用があります。それもかなり強烈です。常日頃、素晴らしい公演を観たいと願っているのに、いざそんな公演に出会った際、目や耳がそれに慣れてしまうのも困りものです。
 今回のカンパニーは全体に若々しい印象を受けました。それは、プリンシパルのお二人のルックスだとか、別格として登場するフラメンコダンサーの若返りゆえかもしれません。スター不足が叫ばれるショービジネス界ですが、ダンス界もどうやら同じようでして、今日のプリンシパルも、テクニックは今までのプリンシパルに負けないだけの鮮やかさを持つものの「どうだ、凄いだろう」だとか「俺様を見やがれ!」という迫力が希薄なのです。舞台姿がスマートなので、アイルランドのちょっと野暮ったいダンスショーも、この10年でだいぶ洗練したものだなぁ、という印象を受けました。とはいえ、ちょっとやそっとアッサリ気味のダンサーであっても、超絶技巧を繰り広げられればあっという間に会場は興奮のルツボ。いやぁ、何度見ても飽きませんね。10年間も続いているショーの面目躍起で、素晴らしいの一言。フラメンコダンサーは今までは大御所が登場でしたが、今回はだいぶ若返り、動きが大きく鋭く鮮やか。たった一人で舞台を占拠し、遠くの席までエネルギーをビシバシ飛ばしまくっていました。ロシアン・ダンサーはアレグリアも真っ青の難技をさらにグレードアップして登場。タップダンサーはあいかわらずジャジーで茶目っ気タップリ。ダンス・ダンスの競演にひたすら身をゆだねる至福のひと時でした。そして特筆すべきはバリトン歌手。柔らかで線の太い美声が、オーチャードの空間に朗々と響き渡るのです。マイクを通してはいますが、ちゃんと生声が二階の後ろまで高い音圧で届くのです。無理はしていないのに、空間にいっぱい音が充ちる感覚はライヴならでは。カラオケではありえない、醍醐味ですね。ということで、どのシーンもどの曲もお馴染みなのですが、どれもこれも新鮮に楽しめました。


2005年10月14日(金)09:30-11:40
映画「チャーリーとチョコレート工場」@ヴァージンTOHOシネマズ 六本木ヒルズ 7 SCREEN

 全席指定 1800円(当日大人) 1階-M列-35番 (パンフレット:700円)

 監督:ティム・バートン

 ウィリー・ウォンカ:ジョニー・デップ
 チャーリー・バケット:フレディー・ハイモア
 ジョーおじいちゃん:デイビッド・ケリー
 バケット夫人:ヘレナ・ボナム=カーター
 バケット氏;ノア・テイラー
 ボーレガード夫人:ミッシー・パイル
 ソルト氏:ジェームズ・フォックス
 ウンパ・ルンパ:ディープ・ロイ
 ドクター・ウォンカ:クリストファー・リー
 ティービー氏:アダム・ゴドリー
 グループ夫人:フランツィスカ・トローグナー
 バイオレット・ボーレガード:アナソフィア・ロブ
 ベルーカ・ソフト:ジュリア・ウィンター
 マイク・ティービー:ジョーダン・フライ
 オーガスタス・グループ:フィリップ・ウィーグラッツ
 ジョージナおばあちゃん:リズ・スミス
 ジョゼフィーンおばあちゃん:アイリーン・エッセル
 ジョージ・おじいちゃん:デイビッド・モリス

 ディズニーランドのアトラクションのような映画でした♪ CGももちろん使われているのですが、大規模なセットが組まれ、チョコレートの川をキャンディの船に乗って進んで色々な部屋を覗くなんて、そのまんまTDLのアトラクションみたいでしょ!? チョコレートの宮殿にチョコレートの滝や川、各種研究室にガラスのエレベーターなどなど、変化に富んでいて、楽しさ満載の映画でした。
 登場する子供たちは五人。(1)好きなものを際限なく食べ続ける食いしん坊 (2)常に自信満々で数々の賞を獲得している女の子 (3)欲しい物は何でも手に入れるお金持ちのお嬢様 (4)頭脳明晰で科学に詳しい天才少年。そして (5)足の速さも腕力も頭の出来も人並みなチャーリー。チャーリー以外は書き出してみただけだと羨ましい子たちですよね。人間の欲望がそのまま、という感じで。でもね、彼らはとっても憎たらしくて可愛くないんです。社会人としての生活を送ってないせいか怖いもの知らずで、自己主張ばかり強くてわがままいっぱい。気遣い皆無&人を見下した態度憎たらしいったらありゃしない! パンフによると、子役の中には新人もいるようですが、彼らがとっても上手で、僕がウォンカ氏だったら、もっといじめたくなる人相の悪さ。そんな彼らが、自業自得で困難に陥るのですが、教訓的でありながら、結構シュールな場面として描かれるので、ひねくれたままオッサンになった僕としては「フフフ」と笑いながら鑑賞しておりました。そう「ゲラゲラ」だとか「あはは」といった開放的な笑いではなく、「ふふふ」とほくそえむ笑いなんです。この皮肉具合はイギリス映画かと思いきや、しっかりアメリカ映画だったのが意外でした。教訓めいた部分はウンパ・ルンパによるカラフルなミュージックナンバーで処理されているので、押し付けがましさよりもコミカルさが強いんですね。
 さて、残る一人の平凡な男の子のチャーリーですが、これといったアピール力はないけれど、最後まで困難に巻き込まれることなく、おまけに偏屈物(というか、大人になれないまま体だけ大きくなっちゃった人)のウィリー・ウォンカ氏を感化させてしまうというとてつもないことをやり遂げてしまいます。でも、チャーリーは何か大それたことを行うのではなく、人を思いやる心と家族への愛情を素直に表現しているだけなんです。そのベースとなっているのはバケット一家。貧乏にも関わらず家族への愛情いっぱいの両親、口こそ忙しく、結構意見の食い違いもしているけれど、互いへの思いやりに充ちた四人あわせて381歳のおじいちゃん&あばあちゃん(ひいおじいちゃん&ひいおばあちゃん並の年齢!?)。どん底の貧乏生活ではあるけれど、誰一人愚痴ったり不平不満を言うことなく、明るい未来を信じていたわりあって生きている様は心温まるものがありました。ベテラン俳優たちがズラリなので、台詞のない部分も、ちょっとした眼差しや表情によって感情表現が出来てしまうのが圧巻です。チャーリーの夢をみんなで応援し、チャンスのためならば欲望に惑わされないようはげまし、家族の愛情を踏みにじるような外者(=ウォンカ氏)には一丸となって対立、それでいて、愛する心を取り戻したウォンカ氏を家族の一員として迎え入れる懐の大きさ……って書いていて思ったのですが、演出こそディズニー的でしたが、脚本としては宝塚チックな作品だと思いません? 愛が何よりも強力というあたり。。。


2005年10月16日(日)14:00-16:05
「都響 チェロ・スーパーセッション」@行徳文化ホール I&I

 S席 3000円 1階-6列-6番 (パンフレット:無料)

 Vc:田中雅弘、古川展生、松岡陽平、平田昌平、江口心一、高橋純子、柳瀬順平、長谷部一郎
 Sop:山本真由美

 フンク:組曲より第1曲「アダージョとフーガ」
 バーバー:アダージョ
 ロシア民謡
 ヴィラ・ロボス:ブラジル風バッハ第5番
(休憩)
 ポッパー:ポロネーズ
 フィッツェンハーゲン:アヴェ・マリア
 オッフェンバック:歌劇「ペルゴール」より「ボレロ」
 2つのアルゼンチンタンゴ
 ピアソラ:リベルタンゴ
 ビートルズ:イエスタディ
 アンダーソン:トランペット吹きの休日
 アンダーソン:フィドル・ファルド
(アンコール)
 ホルスト:組曲「惑星」より「木星」

 朝、カーテンをあけたら雨模様。「ったく、のぼぉは雨男だなぁ。。。」とブツブツ言いながら一日がスタート。本日の会場は昨年オープンした割と新しいホールなのですが、同じ市川市と言えども、僕が住んでいる京成・総武線沿線と、東西線沿線というのはほとんど交流がなく、市内だというのに、日本橋だとか船橋を経由しないと移動できないのです。よって、移動時間もかなりかかってしまい、実は都内のホールよりも僕にとっては不便な状況。あれ、のぼぉちゃん宅経由で、車に乗せてもらうというのが一番楽なルートじゃないすか!
 さて、メンバーが入れ替わったり、人数が変わったりしている都響のチェロ・セクションですが、相変わらず仲の良さそうな集団で、演奏ぶりにもそれが現れていて、日曜日の午後に気軽に楽しむコンサートとしてはピッタリ。いつもはハラハラドキドキさせられるのぼぉちゃんのMCも、今日はだいぶ滑らかで、相変わらず敬語はかなり片言でしたが、メンバー紹介の際に自己紹介を忘れることも、誰かの名前を忘れることも、はたまた誰か一人だけを褒め殺しにして、その結果褒められなかった誰かが不機嫌な顔をすることもなく、良い感じで進行。(靴が舞台上の誰よりも靴がピカピカでした。意外!) が、休憩後はえぐちゃん、高橋さん、順平さんのトリオで始まるかと思いきや、マイクを握ったえぐちゃんは曲の解説ではなく「一人、楽譜を忘れたので楽屋に戻ってます」発言。と、その直後に楽譜をかかえたのぼぉちゃんが登場。満場大笑い。でもって、座ってからも該当曲を探すのでガサゴソといつもののぼぉちゃんが登場。そして、そんなのぼぉちゃんに「慣れっこよ」という調子で楽譜整理のお手伝いをする他メンバー。それらの様子をフフフと笑って眺めている田中父ちゃん。時折、美しいバリトンで場を締める以外は、組子達を自由にさせておく余裕と眼差しが暖かです。誰が誰とは言いませんが、「サザエさん」を彷彿とさせるステージは密かに僕のツボです。今日はのぼぉちゃんと田中さんばかりが芯というわけではなく、出演者一人一人に聴かせどころが用意されているのも楽しかったです。
 さて、演奏ですが、ホールの音響があまり良くないので、響きの美しさよりも、アンサンブル能力の高さだとか、連携プレーだとかが聴き物だったかと思います。テンポの速い曲でも、かっちりタイミングが合うので実に気持ちよかったです。のぼぉちゃん=アイコンタクトというイメージが強いけれど、都響のチェロアンサンブルの時は、さほどそれが目立たないというのは、それだけちょっとした何かで相手の出方がわかるんでしょうね。「ブラジル風バッハ」はもはやこの団体のお約束の曲になっていますが、摩訶不思議な「どこがバッハなんじゃい!」という曲を、ドラマティックに聴かせるようになって、回を重ねるごとに安定感が増していました。次回はもう少し音響の良いホールでジックリ&ユッタリ楽しみたいと思います。
 そうそう、最後の曲の演奏が終わると同時に、大きな地震がグラリ。客席は結構動揺してザワザワしているのに、出演者は平気な顔してご挨拶に出てくるものだから、思わず楽器の心配をしてしまいました。落としちゃったら大変!!


2005年10月21日(金)18:30-21:20
昭和音楽大学「ベッリーニ:夢遊病の娘」@新国立劇場中劇場

 B席 3000円 1階-15列-65番 (パンフレット:無料)

 指揮:星出豊
 演出:ピエールフランチェスコ・マエストリーニ、馬場紀雄
 管弦楽:昭和音楽大学管弦楽部

 アミーナ:伊藤真友美
 エルヴィーノ:小山陽二郎
 ロドルフォ:中村靖
 リーザ:納富景子
 テレーザ:吉田郁恵
 アレッシオ:新後閑大介

 「夢遊病の娘」とありますが、どちらかというと「夢遊病の女」というタイトルの方がポピュラーではないでしょうか。本日、ご挨拶に立った、五十嵐学長(=元新国芸術監督)も「夢遊病の女」と口走ってましたし。さて、昭和音大オペラというと、オケや合唱はもとより、バレエや裏方にいたるまで、学生が多く参加しての公演というのが特徴。学校の総力をあげての、勢いがあって素敵な公演でした。藤原歌劇団とのつながりがあるせいか、衣装や装置が学生オペラのレベルを超えた豪華なものなので、出演者も嬉しいでしょうね。それにしても、昭和音大は女性率が高いですね。4年生が主体のコーラスも男声のみ3年生も参加していますし、オケなんてほとんどレディス・オーケストラ、バレエも女性ダンサーのみ。今日が初日ということもあってか、みなさん固くなっての演奏(&ダンス)でしたが、終盤になるにしたがって熱のある演奏となったのが何より。次回は「ラ・ボエーム」のような青春物を見てみたいな。
 さて、この作品、実はあまり好きじゃないんです。ベッリーニのいつものパターンではあるのですが、台本上では、怒ったり、嘆いたりしているにもかかわらず、奏でられる音楽はひたすら美しいという嘘八百。元々、現実離れしまくりのお話だけに、音楽がマッチしてないとなると、感情移入できないんです。ベッリーニ以降の激しいオペラを主に聴いている僕としては、居心地の悪さを払拭できないまま終演となってしまいました。これはねぇ、、、学生オペラに対してだから書きにくいのですが、、、出演者の力量に追うところが大きいと思うんです。嘘を真に見せる錯覚というか魔力が感じられなかったのがよろしくないなぁ。ま、そこに至るには音楽的に難しすぎたのでしょうね。みなさん、歌うだけで精一杯でしたもの。ですから、ソロも重唱も「おぉい、どこへ行っちゃうんだぁ!?」という場面が沢山ありました。音程が歌っているうちにフラットになってしまう某氏なんて、まるで僕が夢遊病になったかのような気分にまでさせてくれましたし。いやはや、オモロイものを聴かせていただきました。それにしても、オケもコーラスも若手がズラリなので、小山氏なんて、二枚目の役なのに「なぜか紛れ込んでしまったおじさん」と成り果ててました(爆)。
 実は僕は芸大以外の音大オペラを見るのは初めてなのですが、鑑賞しながらも「芸大って凄いんだなぁ」と思っておりました。(某劇場にて「のぼぉ、ぷりぃず」と呟いている時と同じ心境かも・笑) 本日のいただいた名言です→「芸大だから偉い偉くないとか、そういうことじゃないのよ。ただね、芸大はやっぱり凄いのよ。」 納得。


2005年10月22日(土)11:00-13:35
宝塚歌劇団星組「龍星」@日本青年館

 A席 7000円 1階-Q列-36番 (パンフレット:600円)

 演出:児玉明子

 龍星:安蘭けい
 李霧影:柚希礼音
 砂浬(龍星の妃として、異国である西夏から送られてきた人質):南海まり
 花蓮(金国の女剣士):陽月華
 鳥延将軍(金国の猛将):星原美沙緒(専科)
 李宰相(宋国の宰相):磯野千尋(専科)
 皇后(皇太子の生母):朝峰ひかり
 阿爛(金国の武将):美稀千種
 李夫人(李宰相の賢妻):涼乃かつき
 飛雪(龍星の忠臣):彩海早矢

 今年観ている宝塚のお芝居のベストです。台本は面白いし、舞台はやる気満々で、出演者も熱演。全てが良い方向に向かった公演でした。実は「安蘭けいでまたアジア物?」「演出は児玉明子さん!?」とほとんど期待しておらず、「とりあえずの観劇なのに一階席かぁ。。。」とテンション緩めての劇場入りだったのですが、予想外な好演ぶりにいつも以上に楽しんでまいりました。とりかえばや物語は良く劇場でとりあげられますが、今回はとりかえばやの二乗。三重に嘘が重なり合うので、舞台上では常にスリルに充ちていて、面白いの何のって。チラシやパンフレットに書かれているアラスジを読むと何だか混乱してしまいそうですが、何も読まずに素直に舞台を受け入れた方がわかりやすく、楽しいかと思われます。
 装置は博多座サイズの大階段が全場面で置かれたまま。そこにハーフミラーだとか、迫り上げ装置、障子を思わせる機能的な幕などを利用したもの。階段利用というのはHITですね。客席からの見栄えに立体感があり、低予算でも豪華な印象を受けました。それに、宝塚の生徒は階段に慣れているので、もちろん階段幅や段差は本好演の大階段とは違うものの、階段上での移動やダンス、芝居はまったく不安なく、むしろ見せ場とさえなっていました。宝塚の得意技を生かした素晴らしい演出でした。
 得意技といえば、個々の生徒はそれぞれ得意技を駆使しての直球勝負。安蘭けいはギラギラとした目で睨みを聴かせるわ、歌いまくるわ、芝居では心情の変化を表現しているわで大活躍。音響の悪い日本青年館にもかかわらず、歌詞も台詞もクッキリ聞かせられるなんてさすがのキャリアと実力! そして、新人ながら、安蘭けいに拮抗していたのが柚希礼音。上手い・下手以前にスター芝居としての存在感と華やかさが圧巻でした。嬉しかったのは、主役の龍星と準主役の李霧影役が非常に良く書き込まれていて、男役二人ががっぷり組んでの芝居……とんと本公演ではご無沙汰しているタイプのものでしたが……やはりドラマが盛り上がりますし、非常に見ごたえがあったこと。今回は龍星が主役として書かれていましたが、李霧影を主演にすえてもちゃんと芝居が盛り上がるであろう充実ぶり。もしかしたら、ちょっと悪役がかり、一応相手役として妃のいる役ではあるけれども、これといったラブシーンのない龍星よりも、もしかしたら李霧影の方が正統派の役かもしれません。そんな充実した主役陣を取り囲むのが、星原美沙緒や磯野千尋といったベテラン。懐の深い大人物を演じさせたら宝塚一の星原美沙緒がドラマを引き締め、頭脳派プレーの得意な磯野千尋があれこれ主役陣に絡んできて、さすが「専科」の面目躍起。ベテラン役者の層の薄い現在の宝塚にとってお二人の存在は貴重ですね。そして、上級生が乗りに乗っているせいか、下級生も全力投球で熱演。宝塚の下級生が熱演すると観ているこちらが恥ずかしくなるような破れかぶれ状態になることがあるのですが、今回はそんなこともなく、実に格好良い軍人集団でした。それにしても星組の下級生って長身揃いですね。。。
 娘役・女役も負けていません。南海まりが正統派の宝塚娘役芝居を見せたかと思うと、陽月華が颯爽として女剣士役で大活躍。「花蓮の姉貴〜」と男役による軍人たちに慕われ・頼られ、剣術に関しても、そこんじょそこらの男役なんて足元にも及ばぬ切れの良さ、勢いの良さ。彼女のベストプレイですね。キリリとしていて格好良いの何の! 実に惚れ惚れ。今回の軍人役の中で陽月華が一番りりしかったです。彼女でオスカルなんてやってくれないかなぁ。格好良いのに。
 あ、この作品、好きではあるのですが、突っ込みどころも満載なのです。(1)ニックネームが「キンさん」の朝峰ひかりに「にっくきキン!」だとか「キンを滅ぼせ」だとかいう台詞が振られていたのです。いえね、芝居の上では全然問題ないのですが、観客の多くが朝峰ひかり=キンさんと知っているでしょうに、彼女にこんな台詞を振った児玉明子、オソルベシ。。。僕は椅子からずり落ちてしまいましたさ。でも、そんな台詞も大見得を切って見事に言い切っちゃうキンさんもド迫力でしたが。 (2)花蓮が李霧影とつかの間のデートをするシーンで「こうして二人でそぞろ歩きするのははじめてね」と初々しく恥じらいを見せた直後、実は花蓮が李霧影の子供を身ごもっていることが発覚! あれ、一緒にデートしたことすらないのに、しっかり子作りはしてたのね、とこれまたツボにはまってしまい、客席で悶絶しておりました。(3)歌の苦手な陽月華にはソロがなく一安心し、安蘭けいが「朕は、皇帝なり〜〜〜!」と格好良く言い切って幕が降りそうになったので喜んでいたら、なんと最後のシーンは陽月華のソロ! 昔よりもだいぶマシな歌になっていたのですが、安蘭けいではなく、陽月華による、それもソロ歌による幕切れだとは思いもしませんでした〜。
 そういえば、この好演、まるで安蘭けいのサヨナラかと錯覚を起こしそうでした。「思い残すことはない」だとか「せめて(トップの←こんなことは言いませんが)名前が欲しかった」とか、サヨナラ公演用の台詞がテンコ盛り。おまけに、ラブシーンは二番手の柚希君が引き受けているので、退団トップさんと、プレお披露目の二番手さんという図式が成立。でも、冗談ですまなそうなのが現在の安蘭けいのポジションですね。彼女で気になったのが、このところとみに女性化が進んでいること。キャリアのある方なので、見得を切る部分は惚れ惚れするような男っぷりなのですが、ちょっと気を抜いた時の立ち姿だとか、歌が「女優さん」になってしまっているのです。 おまけに丈の長い衣装が時にはドレスのようにも見えたりして。。。さっきまで格好良い皇帝だったのに、いつの間にか性転換してる〜〜〜って。熱演だし、文句なしに彼女の代表作だと思うだけに、この点が非常に残念!


2005年10月22日(土)15:00-18:05
新国立劇場オペラ「ロッシーニ:セビリアの理髪師」@新国立劇場オペラ劇場

 D席 6615円(会員割引) 3階-3列-50番 (パンフレット:800円)

 指揮:ニール・カバレッティ
 演出:ヨーゼフ・E.ケップリンガー
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 アルマヴィーヴァ伯爵:フェルディナンド・フォン・ボートマー
 ロジーナ:リナート・シャハム
 バルトロ:柴山昌宣
 フィガロ:ダニエル・ベルチャー
 ドン・バジリオ:フェオドール・クズネツォフ
 ベルタ:与田朝子
 フィオレッロ:星野淳
 隊長:木幡雅志
 アンブロージオ:古川和彦
 公証人:藤沢敬

 今までの粟国さん演出によるプロダクションもとっても素敵だったので「新演出に切り替えなくても良いんじゃない?」と思うのですが、とにもかくにも新演出です。最近はやりの序曲の間に幕が上がるスタイルで始まるのですが、まるでワーグナーの指環のように、舞台奥から回り舞台に乗ったセットが迫り出して来ます。個人的にはこんなことする必要性を感じないけれど。その後はセットが変わることもなく、回り舞台を駆使して、セットの色々な面を利用しての上演。というと、ポネルによる名演出が思い出されるでしょうが、これはマッタク違う味わいのものでした。まずは時代がフランコ政権下のスペインに変更されていて、ロマンティック→武骨なものに路線変更。そして、三階建てのセットはリカちゃんハウスをそのまま巨大化したかのような、キッチュで遊びタップリのもの。実際、演出も遊びまくっています。僕はお遊びのある舞台は好きですが、でも、さすがに今回はやりすぎの印象を受けました。ストーリーに直接関係のない裏芝居に懲りすぎてしまい、主ストーリーへの集中をそぐんですもの。ラテン色が濃く出ているのですが、何よりも「部屋位、ちゃんと片付けなさい!」と今すぐにでも舞台に飛び乗って掃除を始めたくなるんですもの。オペラ鑑賞以前の問題ですね。スペイン人らしい味付けといえばそうかもしれないし、○ちゃんや△ちゃんならば、これ位の散らかり具合はどうってことないのでしょうが、僕はとっても苦手。「掃除道具全部出せ!」ってなっちゃう。おまけに、合唱団も含めて、登場人物がやたらと舞台を駆け回るので、ドタバタする足音が音楽をかき消してしまうシーンも多々。新演出にかける意気込みは買いますが、詰め込みすぎで空回りした印象を受けてます。既に出ている公演評では褒められているものも見受けられますが、僕は嫌い、嫌い、大嫌い〜。笑いも下品なものにすりかえられていて、楽しいのではなく、イライラ(大阪の笑いが好きな人は好きかも)。
 さて、ではせめて演奏だけでも、と思うのですが、こちらは満場一致(?)で大ボケ。歌手のレヴェルがあまりに低すぎます。アルマヴィーヴァ伯爵は装飾タップリの歌唱が売りの役なのにもかかわらず、装飾技術が皆無で、おまけに高音が不安定なので、とっても不満。そのせいかどうか知りませんが、前回までは歌われていた大アリアがばっさりカットされていました。ホッ。彼であの曲を歌われたらきっと石投げてます。カットしようのない「私は貧しい学生で〜」の方のアリアは、心優しきオーディエンスが集う週末公演にもかかわらず拍手なし。ブーが飛ぶよりもスマートな方法で、かつ怖いですね、コレ。ロジーナも装飾音に難アリの歌手で、音の粒が全然立たず、一泊目のみポンッと音を出し、その後の音は全部音を抜いて歌っちゃうの(文章にすると難しいなぁ。音は出ているんだけれど、逃げの発生とでも言いましょうか。エセ・コロラチューラ。宝塚ファンだと「With a song in my heart」のエトワールのような歌唱と言うとわかるかしらん)。おまけに二人とも声量がないので、伯爵やロジーナが歌いだすと、オケが思わずディミヌエンドしちゃうのです。「ロッシーニ・クレッシェンド」は知っていましたが「ロッシーニ・ディミヌエンド」は初めての経験でしたよ。おまけに、リタルダンドまでかかっちゃって、あらあら状態。かといって、フィガロがそれをカヴァーできる程でもなく、キャラクターも歌も小粒に。。。全員が小粒という意味ではバランスが取れたプロダクションと言えなくもないけれど、新国の新プロダクションとして、これってどうよ!? 歌手の状態が原因か、指揮者の指示が原因かわかりませんが、東フィルも精彩を欠いた演奏。こんなに音楽がもりあがらない「セビリア」も珍しいものです。普通に演奏すればそれなりに盛り上がる作品だとばかり思っていたもので。。。
 歌はともかく、今回の演出にベルチャーのフィガロはあっていました。現代的でスマートな風貌と茶目っ気ある表情が楽しかったです。そして、柴山氏と与田女史の存在感のある立派な歌唱とお芝居が、今回のプロダクションのクオリティを上げていた気がします。実際、この二人への拍手がとても大きかったんです! スター路線の方々ではないけれど、きっちり自分の仕事をこなしている姿に好感。そして、新国合唱団は芝居心が出てきたのか、みなさんしっかり役を作りこんでいて、ドタバタシーンにおいては、ただ舞台上でアタフタしているだけの主役陣よりも、コーラス隊を観ている方がよっぽど面白かったです。だるまさんが転んだ、までこなしちゃう、集団演技はここならでは。あぁ、新国で「モーツァルト!」だとか「エリザ」をやってくれたら凄いんだけどなぁ。。。
 今回のパンフは「今の歌声は」のカデンツァについて、楽譜入りで解説が入っていて、とっても読み応えがありました。ロジーナ役って、メゾが歌うこともあれば、ソプラノが歌うこともあるのです。そして、その時の歌手によって、メロディが違ったりして結構面白いんですよ。ソプラノとメゾとで、Wキャスト組んでくれたら、聞き比べが面白いでしょうね。


2005年10月29日(土)15:00-17:15
新国立劇場バレエ団「ライモンダ 第1幕より夢の場」「カルミナ・ブラーナ」@新国立劇場オペラ劇場

 D席 3780円(会員割引) 3階-1列-1番 (パンフレット:800円)

 振付:マリウス・プティパ(ライモンダ)/デヴィッド・ビントレー(カルミナ・ブラーナ)
 指揮:バリー・ワーズワース
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
  ソプラノ:佐藤美枝子
  カウンターテナー:ブライアン・アサワ
  バリトン:河野克典
  合唱:新国立劇場合唱団

 ライモンダ:厚木三杏
 ジャン・ド・ブリエンヌ:デニス・マトヴィエンコ
 運命の女神フォルトゥナ:シルヴィア・ヒネメス
 神学生1:グリゴリー・バリノフ
 神学生2:吉本泰久(ドミニク・アントヌッチの代役)
 神学生3:イアン・マッケイ
 恋する女:さいとう美帆
 ローストスワン:真忠久美子

 2005-2006年シーズンのオープニング公演の初日です。「ライモンダ 第1幕より夢の場」「カルミナ・ブラーナ」の二本立てですが、チラシといい、宣伝といい「カルミナ・ブラーナ」が売りなのは一目瞭然。「ライモンダ」は完全に前座になってしまいました。客席の空気が全然違うんですもの。もちろん、ダンサーはどちらの作品も素晴らしく踊っているのですが、この温度差はいかんともしがたいものがありました。それにしても、二本立てにするにしても、この作品のチョイスについてはちと疑問を感じております。バランスとしてどうよ!?
 「ライモンダ」は2004年10月に新国初演されているので、今回はその一部ではありますが、一年ぶりの再演。新国バレエ団ではおはな様(花總まりではありませぬ。酒井はなです!)を応援しているので、厚木三杏の主演作品は実はこれが初めて。いやぁ、たくましいダンサーです。長身な上にマッチョ。お顔立ちもクッキリはっきり系なので、男役が踊っているかのよう。踊り自体は、動きも固く(緊張してたのか?)、肉体的特長をもてあましているような印象を受けました。今回は娘・娘した役でしたが、次回はキトリ系の役で彼女で見てみたいものです。相手役のマトヴィエンコは「そろそろパンフの写真を変えないと実物とのギャップが。。。」と心配してしまう位、新国ではお馴染みのダンサー。相変わらず、ふんわりとしたジャンプが実に優雅です。貴族的雰囲気のノーブルな方なので、厚木嬢との並びはイマイチかなぁ。マトヴィエンコには宮内真理子のようなフェアリータイプのダンサーの方がマッチすると思うんですけど。さて、新国バレエ団の楽しみの一つ、コールドバレエ(群舞)ですが、今回もやってくれました。集団演技の上手さに関してはロイヤル・バレエも、アメリカン・バレエ・シアターも足元にも及びませぬ。フォーメーションがピシッと揃い、微妙にずらす箇所はきれいに時差が取れるので、実にゴージャスなシーンとなります。観劇しながらも、「今、最高のものを観ているんだよなぁ」という幸せに浸るひと時でした。複雑に変化し続けるこの場面はまさに新国バレエ団の実力を示すには最高の作品ですね。
 とはいえ、やはり本日のメインディッシュは「カルミナ・ブラーナ」。新国の日本一広いと言われているオケピも、オケと合唱団とソリストが勢ぞろいしていると「あの中に入ったら酸欠&難聴になりそう」というラッシュ状態。さぞかしド迫力の演奏が繰り広げられるであろうと期待していたのですが……いきなり大コケ。合唱がほとんど聞えてこないのです。元々、新国合唱団はレベルが低くて、普段から不満を持っていたのですが、今回はオケピの奥(舞台下にもぐる形)での演奏のためか、いつもにまして声が飛んでこないのです。音響抜群の新国なのに、モノラル録音のCDを聴いているかのような気分になってしまいました。曲が進むにつれppの部分になるとようやく聞えてくるのですが、特に女声が薄っぺらい声で、音圧もなければ音量の差もないんですよねぇ。普段いかに演技(これは上手いんですよねぇ)でごまかしていたかを認識してしまった次第。この曲に関しては「晋友会ぷりぃず」です。って、アマチュア合唱団にも全然かなわない状態ってプロとしていかがなものなんでしょう。そりゃ、コンサートホールでの公演とは条件が全然違うでしょうが、曲にかける情熱というか、歌っているうちにトランス状態になっちゃうような迫力が新国合唱団には皆無。おまけに東フィルも「バレエの時は良くない」というありがたくないジンクスをちゃんと守ってくれるので、新国の面目丸つぶれ。いくらダンサーが頑張ってもこればかりはいかんともしがたいですね。ありがたいことに、ソリストはさすがに素晴らしく、佐藤三枝子の高音の転がしようも、河野克典の広〜い安定した音域も(彼は最近若返った気がします)も素晴らしいものでした。ブライアンもさすがにカウンターテナーの第一人者の貫禄を示しましたが、声質と体系の変化にちょっとびっくり。
 さて、演奏はイマイチでしたが、ダンスは最高! 1995年にイギリスで初演された人気作の日本初上陸ですが、オープニングでは広い舞台の中心に目隠ししたフォルトゥーナがただ一人登場して、いきなり激しいソロを踊りだすのですが、たった一人にも関わらず、舞台に隙間風がふくどころか、急激に舞台に観客の集中を向けさせてしまう、物凄い吸引力。「ボレロ」におけるシルヴィ・ギエム以来の衝撃を受けました。ヒネメスのカリスマ性とビントレーの振付が実に官能的です。やがて、複数の十字架のセットが降りてくると、ノンストップで三人の神学生のストーリーがスタート。「春に」「居酒屋にて」「求愛」と三つの場面に分かれているのですが、今までちょっと女性陣に押され気味だった新国の男性ダンサーが面目躍起の大活躍。舞台狭しと暴れまくります。いやぁ、正直、彼らがここまで踊りこむとは予想していなかっただけに、嬉しさと興奮とで涙が出そうになりました。バリノフや吉本泰久はどちらかというとキャラクター系のダンサーだと思っていたのですが、激しく踊りまくって、格好良いの何のって!! こんなにハイテクニックを持ち合わせていたのか!と今までの公演の配役が実に贅沢だったことを認識。元々芝居がかったダンスは得意なバレエ団なので、コミカルな場面だとか、レビューのようなシーンも小粋に決まり、実に爽快。劇場開場からしばらくはロシアン・バレエで基礎を固め、その後フレンチ・バレエでも成果を出している新国バレエ団ですが、実はイングリッシュ・バレエとの相性が一番良いのではないでしょうか? アシュトンやマクミラン作品も素敵でしたし(単に僕の好み!?)。ただし、新国のダンサーも、官能的な面に関してはまだまだ改善の余地ありでしょうか。この作品は「快楽」だとか「肉体的誘惑」がテーマで、初演の際には「成人指定」を受けたほどエロティックで、ダンサーはどんどん衣装を脱ぎ捨てていき、最後には性器も含めた裸を描いたレオタード姿になるのですが、あくまで爽やかなんです。クライマックスのプリンシパルダンサーがヒメネスとマッケイが務めていたので、どうにか官能的な雰囲気を醸しだしていましたが、新国バレエ団のソリストだけで組まれた公演はどうなってしまうのでしょう……ということで、休憩時間に思わず11月の公演のチケットも購入しちゃいました。この作品は今後もレパートリーの一つとして、是非上演を重ねていっていただきたいです。切に!