観劇日記〜2005年12月〜
02日(金) 11:00 宝塚歌劇団雪組「DAYTIME HUSTLER」 日本青年館
02日(金) 19:00 新国立劇場「ジョルダーノ:アンドレア・シェニエ」 新国立劇場オペラ劇場
04日(日) 19:00 東宝「ジキル&ハイド」初日 日生劇場
06日(火) 18:30 新国立劇場「オッフェンバック:ホフマン物語」 新国立劇場オペラ劇場
16日(金) 19:00 古川展生「チェロ・リサイタル」 東京文化会館小ホール
19日(月) 18:00 映画「SAYURI」 TOHOシネマズ市川コルトンプラザ SCREEN3
20日(火) 18:30 新国立劇場バレエ団「くるみ割り人形」 新国立劇場オペラ劇場
21日(水) 18:30 十二月大歌舞伎夜の部
「恋女房染分手綱」「船辨慶」「松浦の太鼓」
歌舞伎座
24日(土) 18:00 「RED SHOES, BLACK STOCKINGS 〜彼と彼女が踊る理由〜」 ル テアトル銀座


2005年12月02日(金)11:00-13:40
宝塚歌劇団雪組「DAYTIME HUSTLER」@日本青年館

 B席 4000円 2階-G列-16番 (パンフレット:600円)
 演出:小池修一郎

 ローレンス・ブラウン(ゴールド・ビーチ・ハイスクールの教師。詩人):貴城けい
 シルヴィア(都市開発研究家。アドラー社長の令嬢):天勢いづる
 ヘイワード(市議会議員):壮一帆
 シスター・サラ(シスター。ゴールド・ビーチ・ハイスクール校長):光あけみ(専科)
 シスター・エマ(シスター。ゴールド・ビーチ・ハイスクール勤務):一原けい(専科)
 アドラー(アドラーホテルの社長):飛鳥裕
 パトリシア(ゴールド・ビーチ・レディース・クラブの会長):美穂圭子
 ブルース(マフィアの有力者):悠なお輝
 ジョニー(ゴールド・ビーチ・ハイスクールの生徒):柊巴
 キャロル(ラスベガスのダンサー):涼花リサ
 ロレンツォ(クラブ DATIME HUSTLER の経営者):緒月遠麻

 スタッフの某氏より「今回の作品は生涯の汚点になるかもしれない」と気弱な事を聞かされていたのですが、最近ではすっかり弱音を聞くのも慣れてしまい「あー書けない、もう死ぬ」と言われても「はいはい、そーでっか」と聞き流しております。今回も蓋をあけてみれば、評判が良いらしく、次回愚痴られた時はどうやっていじめようかとアレコレ考えているところです。
 実は、観劇直前まで、作品のタイトルを「ハスラー・ホワイト」だと勘違いしていました。「スミレコードに触れまくりのこんな作品を舞台化して良いのか!」と勝手に心配していましたが、まったく別の作品でした。ハスラーといっても、風俗ではなく、健全なホストなんですね。評判通り、今回はかしげちゃんが素敵でした。かなりのベッビンぶりが災いして、今までは何を演じても「女」にしか見えなかったのですが、今回はかなりの確率で「男」に見えました。いつも照明に反射してキラキラ光っているオデコは前髪を下ろして隠し、口紅もブラウン、髪も短めで、ちょっとアイドルがかったナカナカの男前でした。おまけに、ハスラーの役とあってか、衣装はとっかえひっかえなので、かしげファンにとってはかなりの満足度ではないでしょうか。夏目漱石の「坊ちゃん」の主人公をソフトにしたような役どころが、芝居は硬派なのに見た目は軟派なかしげちゃんにピッタリ。贔屓目抜きで、小池さんのバウ作品って良いですねー。それにしても、彼女の芸風、かつての高嶺ふぶきに似てきているような気がしませんか? 歌や台詞のタメ部分だとか、ダンスだとか。
 緒月遠麻は上級生に臆することなく、体当たりの熱演。まだまだ弾けられるだろうとは思いますが、なかなかの勢いで、台詞の通りも彼女が一番良かったです。男役としてのしっかりした声にもかかわらず、明瞭な発音で、青年館の二階にいても、しっかり台詞が伝わってきて楽しかった! 美穂さんは専科以上の働きで、歌に芝居に安定した実力を発揮。舞台の引締役でした。実力者がそれに見合った扱いを受けているのは安心感があります。涼花リサは一幕のみの出番でしたが、死体として登場するシーンのフォルムがとても美しくて、印象に残りました。
 残念だったのは壮一帆と天勢いづる。壮一帆は、もしかしたら主役よりも美味しいかもしれない、せっかくの美味しい役どころなのに、ちょいと停滞気味。小池さんお得意の、栄光から転げ落ちる哀れな男の「崩壊の美学」の名シーンがお笑いに転向。なりきりシーンは、中途半端に演じられると、思わず椅子からずり落ちてしまうような間抜けなシーンになりうるんだと、その紙一重の難しさを見せ付けられました。壮一帆ファンの人、ゴメンナサイ。。。でも、ファンの目から見ても、今回は良くなかったと思われます。単なる「嫌なヤツ」でした。そして、天勢いづるも、歌も芝居も省エネモードで、客席までエネルギーが届かず。歌も台詞ものっぺらぼうなので、観てて感情移入が全然できないんです。……この二人については、小池さんによる書き込みが素晴らしく良く出来ている役だったので、なんとか形にはなっていますが、別の役者だったら、もっと盛り上がったのになぁ、とフラストレーションがたまりまくりでした。たとえば、壮一帆の役を演じるのが久世星佳や湖月わたるだったら……ゾクゾクするでしょ。
 さて、その、小池さんの台本ですが、流れるような展開や、短時間で沢山のことを処理するミュージカルナンバーの使い方は相変わらず絶品で、天才的。でも、ゼネレーション・ギャップを感じる部分があちこちにありました。機械に弱いのがバレバレの台詞や設定が多いんです。高校の先生が自宅にDVDデッキがないのにDVD-Rを持っているというだけでビックリされたり(パソコンのデータ処理に使うでしょうに。。。)、DVDの操作をはじめとする専門用語が中途半端に使われるので、機械に詳しい人にはボロを、機械の苦手な人には混乱を提供している気がしてならないのです。今回のクライマックスでは、携帯通話を利用してヒーローが活躍するのですが、そもそも携帯が圏外になるはずの場所でのストーリー展開に思わず現実に戻されてしまいました。(GPS機能の方が現実的)。おまけに、アメリカの話なのに、登場する携帯の端末がどれもこれも日本のものだというのが一目でわかる機種ばかり(生徒の私物を利用?)。その他、中途半端に挿入される、ちょっと前の流行語(死後)など、思わず現実に戻されてしまう台詞(負け犬、マブダチetc…)や、なぜか登場するクロネコヤマト(正確には登録商標からクロネコヤマトだとわかる→宅急便。正確には宅配便となります)に引き潮ザッブーン。スケジュール的にギリギリのところで上演になったと知ってはいても、だからこそ宝塚公演と東京公演の合間に修正を入れて欲しかったなぁ、と思うことしきり。「夢を売る劇団」だからこそ、夢から醒めるような台詞は手を入れて欲しい。。。
 ちなみに、携帯の圏外の件を突っ込んでみたら「アメリカの携帯はあの程度では圏外になりません。知らないの?!?」なぁんて返事をしてきたのを信じ込んで「すぐに圏外になってしまう日本の携帯も見習って欲しい」と真面目に受け止めた返事をしたら「ジョーダンよ〜」って、ちょっと、このワタクシをカツグだなんて! 信じたアタシャ、馬鹿でした。。。
 ま、突っ込みはじめたらキリがないですね。とりあえず、クライマックスの携帯の扱いは納得いかないものの、オリジナル作品で、生徒みんなが輝いていて、山あり谷ありのドラマがテンポ良く進んで、久しぶりに「宝塚を観た〜」という満足感に浸っています。大劇場公演も、ちょっとやそっとの無理な設定を飲み込んでしまうような、オモロイ作品が続々と登場しますように! ここ最近の小池さんの大劇場作品は大作系が多いのですが、また小洒落た作品も発表していただきたいと思っております。


2005年12月02日(金)19:00-21:40
新国立劇場オペラ「ジョルダーニ:アンドレア・シェニエ」@新国立劇場オペラ劇場

 D席 6615円(会員割引) 3階-2列-49番 (パンフレット:800円)

 指揮:ミゲル・ゴメス=マルティネス
 演出・美術・照明:フィリップ・アルロー
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 アンドレア・シェニエ:カール・タナー
 マッダレーナ:ゲオルギーナ・ルカーチ
 ジェラール:セルゲイ・レイフェルクス(カルロス・アルヴァレスの代役)
 ルーシェ:青戸知
 密偵:大野光彦
 コワニー伯爵夫人:出来田三智子
 ベルシ:坂本朱
 マデロン:竹本節子
 マテュー:大久保眞
 フレヴィル:石崎秀和
 修道院長:加茂下稔
 フーキエ・タンヴィル:小林由樹
 デュマ:大森一英
 家令/シュミット:大澤建

   ノヴォラツスキー体制になってからは「アンサンブルを重視しすぎて、キャストも演奏も地味!」「演出家の自己満足的なプロダクションが多くて観客は置き去りに」という印象で、正直あまり僕好みではなかったのですが、今回は彼の持ち味を最大限に生かした、素敵なプロダクションが登場しました。目に耳に嬉しい公演。素敵な宵でした。
 日本では滅多に上演なれない「アンドレア・シェニエ」ですが、ストーリーはディッケンズの「二都物語」に結構似ていて、「レミゼ」+「ベルバラ」のような舞台展開です。恋愛と革命、身分違いの恋、などが絡んで、ドラマティックに盛り上がります。それでいて、上演時間は約2時間半と手ごろですし、何よりも音楽の美しさからして、もっと人気があって良いと思う作品の一つです。今回は一・二幕、三・四幕を続けて上演。一幕をブーシェやフラゴナール、二幕をドラクロワ、三幕をゴヤ、四幕をフリードリッヒと、時代と絵画を重ね合わせているのが特徴……と解説を聞いたときには「難しそう」と思ったものですが、実際は幕ごとに目の保養が出来て単純に楽しむことが出来ました。この手の演出にありがちなアイデア倒れにならないのが嬉しいです。僕はオーソドックスな演出が好きなので、今まで好きな演出家と聞かれると、ゼッフィレッリやポネル、シェンクなどを挙げていたのですが(古くてゴメンネ、フンッ!)、最近のお気に入りは今公演の演出家のフィリップ・アルロー。全体的な印象はオーソドックスなのですが、部分部分は結構前衛的な事をしていて、そのバランス感覚が僕にとっては非常に興味がわきます。彼もゼッフィレッリやポネルのように、演出だけでなく、美術まで手がけるタイプの演出家なのですが、演出家=芸術監督ともなりうるわけで、全体の統一感はさすがのものを感じます。アルローはより彼らよりも軽やかで、色彩感豊かな舞台作りが特徴で、ホテルでの濃厚なフレンチではなく、ややサッパリした味わいのビストロでのフレンチを彷彿とさせるものがあります。多分、写実的ではなく平衡感覚を失いそうなゆがんだ装置や、色の組み合わせが絶妙で、服飾史よりも現在の感覚優先の衣装が影響しているのでしょう。ギロチンを連想させるユニークな形の幕など、鋭いアート感覚が面白いです。
 そんな中「演出に負けるか」とばかりに歌手もかなり奮闘。タイトルロールのカール・タナーは、高音になればなるほど冴え渡るという、テノールとしては美味しいタイプ。「来るぞ、来るぞ」と待ち構えていると、パーンと客席に突き抜けてくる声……快感です。ドラマティックな歌手にありがちな、ffになると音程がなくなる、ということもなく、常にクリアな音質・音程なので、ますますジョルダーノのメロディに酔いしれるという嬉しい循環。マッダレーナのゲオルギーナ・ルカーチはちょっとクセのあるタイプですが、これまた馬力のある歌唱。主役二人によるオケの音を突き抜けるような歌唱はオペラの醍醐味タップリ。そして、代役ながらレイフェルクスが歌のみならず、芝居でも大健闘。単純で完全無欠な主役よりも、ちょっとコンプレックスや陰のある助演タイプの役ってホント魅力的ですよね。感情の起伏があって、観ていて聴いていてとっても面白いんです。そして、そんな美味しい役をタップリ歌い演じてくれるのがこれまた嬉しい。ここで、白けた演唱だとガックリきてしまいますもの。ものすごく良い仕事してました。その他、青戸さんの柔らかくて暖かい美声も堪能できました(彼の声が映える曲でしたし)。ちょっとパパイヤ鈴木に似てきたのが気になりますが「良い人」を演じるのに彼ほどぴったりの人もそうそういないことでしょう。そして、ベルシ役の坂本朱は、短い出番ながら、強烈な印象を与える熱演。彼女は澄ました人妻だとか、カルメンといった、わがまま系な役が似合うんだとばかり思っていたら、自分の身を売ってまでに主人に尽くす難しい役もサマになるんですね。華やかな雰囲気を備えているので、どんなに落ちぶれても救いのあるところが観客としてはありがたいです。登場人物の全員が重々しいと疲れてしまいますもの。「己のおかれている環境がどんなものであれ、堪能し楽しんで見せますっ」みたいな役をやらせる場合、オペラ歌手の中では彼女が日本一ではないでしょうか。
 東フィルも久しぶりに本気モードで、長大なチェロのソロなんて「のぼぉプリィズ」とならなかったどころか、のぼぉファンの僕でも「参りました」の絶品演奏。素敵でした。おまけに、普段僕がこき下ろしてばかりの新国合唱団も良い仕事してました。



2005年12月04日(日)19:00-22:05
東宝「ジキル&ハイド」初日@日生劇場

 B席 3000円 2階-I列-22番 (パンフレット:1500円)
 演出:山田和也

 ヘンリー・ジキル/エドワード・ハイド:鹿賀丈史
 ルーシー・ハリス:マルシア
 エマ・カルー:鈴木蘭々(知念里奈の代役)
 ガブリエル・ジョン・アターソン:石川禅
 ダンヴァース・カルー卿:浜畑賢吉

 苦手だったキャストにいつの間にか脱帽することがあります。今夜はそんな公演でした。主演の鹿賀さんは独特の歌いまわしと声の細さで、あまり好きなミュージカル俳優ではなかったのですが、今夜はその至芸に感服。そもそも、大劇場作品の主役で「黒い役」というのはそうそうないのですが、二重人格の話とあって、エドワード・ハイドには悪の魅力がいっぱい。ジキルの場面では軽く明るいトーンで、ハイドの場面では暗く重いトーンで歌い、語るのですが、ワンフレーズごとに役が入れ替わったりしちゃうとんでもないナンバーなので、一瞬にして役を入れ替えなければならないのですが、口元をニヤリと緩めるだけ、目つきを鋭くするだけで、ハイテクなんて使わずとも役者の「芸」によって人格が全然違うものになってしまうのに、改めて感動。アナログってすごいです。って、このプロダクションは再々演になるので、今回が初めての鹿賀さんのジキル&ハイドではないのですが、今回はジキルがより軽やかに、ハイドがより迫力を持って演じられてて、鹿賀さんもいつもにましての大熱演。最近の大劇場ではご無沙汰していた大芝居をタップリ堪能してきました。歌だって、作曲のワイルドホーンがいらしていたのもあるのか「初日からこんなに飛ばして大丈夫か!?」と心配になるほどの全力投球での歌唱。いやぁ、鹿賀さんがこんなに狂っちゃう舞台なんて何年ぶりでしょう? 名演の現場に居合わせることのできた幸せをかみ締めています。
 知念里奈の休演にともなって、代役が鈴木蘭々と発表された時は、テレビでの奇抜な格好とハイテンションなコメディエンヌぶりしか知らなかったので、大丈夫かいな?と危惧していたのですが、蓋をあけてみれば素敵なエマちゃん。テレビの印象とは違って、意外にお嬢でマダム。鹿賀さんとの並びもお似合いで、何よりも、ジキルを包み込むような懐の大きさは歴代エマで一番。歌は技術的には上手くないのですが(音によって発声法が違うので、時折とんでもない音になってビックリします)、顔だけ見ていると名歌手みたい。で、彼女でスゴイと思ったのは、観客受けする歌いまわしをしようと空回りするでなく、自分の歌の技術にばかり気がいってしまい萎縮するでなく「私が表現したい感情はコレよっ」とただそれだけに集中した歌唱。技術云々以前にドラマとしての力の強いのです。僕は彼女の歌を聞くの好きですね、結構。こんなに生き生きとしたナンバーを聞くのも久しぶり。エマってお嬢様ではあるけれど、周囲が結婚に反対しても決して屈しないし、ジキルの日記を盗み読みして彼の招待がわかっても動揺せず、挙句の果てに、自分の結婚披露宴で殺人事件がおきて、一同が動揺しまくっている中、ただ一人肝っ玉が据わっているという強い女性ですよね。お嬢様はちょっとやそっとじゃ取り乱さないんだよねぇ、と育ちの良さを認識。
 鹿賀さんは一人で人間の光と影を演じていましたが、エマが光だとしたらルーシーは影。Wヒロインを効果的に生かしあう設定です。前回まではパワーで押しまくりの印象の強いマルシアのエマですが、今回は「弱さ・もろさ」が丁寧に演じられていて、運命に流されざるを得ない、無力の下流市民を見事に演じ上げてました。ここ最近、ミュージカルへの出演の多いマルシアですが、出演したステージの数だけ進化を遂げているようです。強くて派手なナンバーの中に人間の弱みを表すあたり、エマとの対比がくっきり現れていて、非常に効果的でした。ハイドを恐れながらも、その魅力(魔力?)から逃れられない女心がいじらしくて、結末は知っているのに泣けます。
 主役の三人が非常にコッテリなので、全体のバランスが良かったのですが、時おり清涼剤の役を担っていたのが、今回から役替りによりガブリエル役で登場の石川禅。彼の芝居って好きなんですよー。ちょっとした一言がとても暖かい(そういえば「レミゼ」において、もっともエポニーヌに優しかったのは石川マリウスだと思いませんか?)。今回も、使用人に向ける一言、友人やその恋人・愛人に向ける一言が、胸にジーンと来るんです。決して派手な芝居をするわけでないのですが、声の色といいトーンといい、抜群に心地良い役者さんです。歌だって、派手なテクニックをひけらかす人じゃないので、決して目立ちはしないのですが、思わず聞き耳立ててしまうようなクセになる歌。あまりに良い人に見えすぎるので、役を選ぶタイプの役者さんだと思いますが、今回のような役はどんぴしゃり。
 今回僕がもっとも「職人だな」と思ったのが指揮の塩田明弘。基本的に華やかな音楽を作る方なので、観終わった際の満足度の高い方なのですが、ベテランだけあって、役者の歌唱力に合わせた盛り上げが凄いんです。実は鹿賀さんは長い音を伸ばすのは苦手なのですが(肺活量の問題と音程の問題)、聞かせどころになると微妙にアッチェルランドをかけてしまうんです。そして、最後の音を鹿賀さんが歌いきった瞬間にリタルダンドを効かせるので、実は歌い上げてないにもかかわらず、物凄く歌い上げられたかのような感覚になるんです。今回はダンサーというよりも歌手を揃えた公演ゆえ、ダンスシーンになると、ビートを利かせた音楽の勢いで場面を盛り上げてしまうという荒業も登場。それでいて、コーラスが活躍する場面になると、好きなだけ歌えとばかりにオケもパワー全開。盛り上げ場面で、オケのほんの1〜2秒の伴奏のみの部分でも微妙にリズムを揺らすのでドラマティック感倍増ですし、とても充実したサウンドの数々でした。カーテンコールで登場したワイルドホーンも今回のオケ&指揮者を絶賛してましたっけ。東京のミュージカル・オーケストラとしては抜群のお仕事でした。
 さて、カーテンコールでは初日とあって演出の山田和也も登場。マイクを握ってのご挨拶は何を話すのかと思いきや、ワイルドホーン氏を舞台上に呼び出した際の観客の反応の仕込み(笑) まずはスタンディングでお迎えし、スピーチが始まったら着席しましょうって、自己紹介もせずにアンタ何言ってんねん(笑) 僕はたまたま彼の顔を存じておりましたが、初めて見る人は何者かと思うでしょうに。あ、山田さんのスピーチの合間では、いきなり鹿賀さんが山田さんのマイクを奪って「この人が演出の山田さんです」と紹介したんだった! で、ワイルドホーン氏は、数日前に宝塚で記者会見(宙組の和央羊羹サヨナラ公演の音楽担当なのです)で顔を売りまくっていた割に、オノボリさんしていて、劇場入り口では記念写真とりまくり、客席ロビー内では劇場見物に大忙がし。単なる陽気なおっちゃんになってました。サイン欲しかったのですが、忙しそうだったからそっとしておきました。いや、近づきがたいハイテンションでしたさ。


2005年12月02日(金)18:30-22:15
新国立劇場オペラ「オッフェンバック:ホフマン物語」@新国立劇場オペラ劇場

 D席 6615円(会員割引) 3階-2列-3番 (パンフレット:800円)

 指揮:阪哲朗
 演出・美術・照明:フィリップ・アルロー
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 ホフマン:クラウス・フロリアン・フォークト
 ニクラウス/ミューズ:加納悦子
 オランピア:吉原圭子
 アントニア:砂川涼子
 ジュリエッタ:森田雅美
 リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット:ジェイムズ・モリス
 アンドレ/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ:青地英幸(高橋淳の代役)
 ルーテル/クレスペル:彭康亮
 ヘルマン:黒田論
 ナタナエル:渡辺文智
 スパランツァーニ:柴田昌宣
 シュレーミル:泉良平
 アントニアの母の声/ステッラ:林美智子

 もちろんタイトルロールのホフマンが主役の作品なのですが、今回に限っては「ジェイムズ・モリス」とタイトルを変更しても良いかもしれません。それ位、圧巻でした。さすが、世界中の一流オペラハウスを股にかけて活躍する名バリトンだけあります。よくぞ今回のプロダクションに参加してくださったと感謝! どんなにppの部分でも楽々声が客席に飛んでくるし、動きや表情が大きいし、彼が登場する場面は目も耳もモリスに注意が行ってしまいます。決してでしゃばりなタイプではなく、重唱の部分などでは、他歌手に合わせてボリュームダウンを行うなど調整してくださるのですが(あ、いきなり敬語・笑)、実力・スター性ともに群を抜いていました。それにしても、主役を引っ掻き回す黒い役……演じていて面白いでしょうね。
 もちろん、タイトルロールも奮闘していました。たまたま横にいるのがモリスなので時には霞んでしまいましたが、何の何の、なかなか立派なテノールです。長身でハンサムで音程の良いテノールっていそうでいなかったりするので、フォークトは貴重な存在。主役として収まるのが納得の方ですね。実は「ホフマン物語」ってストーリーが支離滅裂な部分があって、僕もいまだに「???」なことが多いのです。何しろ、幕がかわればいつの間にやら恋の対象がかわってしまっているのですから。かといって、プレイボーイなわけでもないので「アンタ一体何者?」なんですけど、フォークトはまるでラブラドール・レトリーバー(犬)のようで、違和感があまりなかったかな。メス犬(オランピア/アントニア/ジュリエッタ)を見ると、シッポをブルンブルン振り回しちゃって「好き好き大好き〜」になっちゃうんです。飼い主(ニクラウス)が押しとどめても、全然言うこときかなくて、挙句の果てには振られちゃったとなると、キュ〜ンとシッポを巻いていじけるところなんて、まさにワンちゃんでしょ!? よそのおじちゃん(今回はモリスね)にご馳走見せられれば飛んで行っちゃうところもどこかの河原で見かけそうな光景。そういえば、彼のお顔も頬から耳にかけてが広くて犬顔(笑) 個人的に「可愛いワン」と大喜びしちゃいました。彼は正統派の真っ直ぐな役が似合いそう。
 さて、メス犬トリオですが、演出によっては一人の歌手が演じることのある三つの役も、今回はそれぞれ別のソプラノが担当。「ラ・トラヴィアータ」じゃないけれど、幕ごとに全く違うタイプの声が必要とされるのと、女性の色々な面を象徴していること、さらには色々な歌手を一晩で堪能できることもあって、今回のような分担配役も好きです。オランピアは装飾音符がキラキラしているし、漫画のようなコミカルな演出(ブラックライトと蛍光色の使い方が絶妙)もあって、とっても楽しい場面です。会場(客入りはかなり悪かった・涙)からは頻繁に笑い声が起きていました。吉原圭子は、一見、本田美奈子のような雰囲気。歌は、高音が安定していましたし、コロラチューラのアリアも良く声が転がっていましたが、ものすごく金属的な声。黒板を爪を立てて引っかいたような音を出すので好き嫌いが別れそう。彼女は新国オペラ初登場ですが、大劇場でのオペラに慣れていないようで、芝居はとっても地味でした。アントニアはソロありデュエットあり、重唱ありと、聞かせどころ満載の素敵な役で、このオペラの中では一番好きなフレーズが登場するんです。砂川涼子はしっとりとした素敵な声。スターウォーズのレイア姫のような髪型とドレスで登場するのですが、こちらは似合ってなかったかも。(女性に対して言うのは失礼ですが、今回のソプラノトリオは全員ドレス負けしてました。。。) この場面では、ファントムばりに「歌え!」と迫るモリスに乾杯。ジュリエッタの場面は合唱団が居並ぶ中、ゴンドラにのって登場するという、宝塚も真っ青な美味しい演出がほどこされているのですが、森田雅美はひたすら地味で群集に埋もれてしまっていました。歌以前に、こんなに地味なプリマは僕の好みじゃないなぁ。歌の面であれこれ叩かれるけれど、初演の際に佐藤しのぶにこの役が振られたのに改めて納得。何と言われようとしのぶさんのスター性は圧巻だったなぁ。コンサートとは違って、技術だけではいかんともしがたい部分があるのがオペラやミュージカル、宝塚の面白いところで「トップになるために生まれてきた人」っているもんなんです。残念ながら、今回のソプラノトリオの中で「この人の主演のオペラを観たい!」という歌手は……いなかったです。
 宝塚ネタが出たところで、今回の男役=ニクラウスですが、前回の初演の歌手に続いて、今回も僕としてはブーイング。とにもかくにも声量がないんです。別に大声であれば良いとは言いませんが、音楽家は「聴こえてナンボ」ですから、何を歌っているのか聴こえてこない歌手はイライラするだけ(どこかの弦楽器奏者にもそんな人がいました。。。)。彼女の声にはこの役は合ってなかったのでしょうね。残念です。非常に小さい方なので、体格面からくるハンデもかなりあったのではないでしょうか。彼女に限らず、日本人のソリストにありがちなのが、声量がないのでついついフルパワーで歌ってしまうこと。そんな中、外来歌手が楽々と声を響かせてしまう場に居合わせると、努力でどうこうなるものではないだけに、ちょっと悲しい気分になってしまいます。頭の形といい、胸板の厚さといい、楽器(=体)の構造が全然違うので、努力じゃいかんともしがたいのではないかな。もちろん、小回りのきく繊細な声を駆使して成功する方もいらっしゃいますが、ドラマティックな作品に関してはかなり日本人って不利だよなぁ、と思います。フォークトやモリスの参加はとっても嬉しいし、実際彼らによって作品のクオリティがぐんとあがったけれど、惨めな気持ちになったのも事実。
 さて、先週の「アンドレア・シェニエ」に引き続き、このオペラもフィリップ・アルローによる演出・美術・照明です。回り舞台を多用すること、美術が歪んでいることはどちらにも共通しているのですが、「シェニエ」に比べ「ホフマン」はより濃厚な雰囲気が漂います。話の流れは前述のようにわからない部分も多い作品ですが、場面場面でのアイデアや色彩感覚、群集処理が抜群なので、レビューとして楽しんできました。次の場面のセットが回り舞台に乗ってちょっとずつ見えてくる場面なんて、常套的手段とはいえ「何かな、何かな」とワクワクしてしまいます。ゴージャス感は漂っているけれど、実はキッチュな美術というのも面白いですね。


2005年12月16日(金)19:00-21:00
古川展生「チェロ・リサイタル」@東京文化会館小ホール

 全席指定 4500円 F列-27番 (パンフレット:無料)
 ピアノ:坂野伊都子

 ベートーヴェン:チェロ・ソナタ 第4番 ハ長調 Op.102-1
 R.シュトラウス:チェロ・ソナタ ヘ長調 Op.6
(休憩)
 ブルック:コル・ニドライ
 サン=サーンス:白鳥
 サン=サーンス:アヴェ・マリア
 カッチーニ:アヴェ・マリア
 シューベルト:アヴェ・マリア
 ピアソラ:ブエノスアイレスの冬
 ピアソラ:オブリビオン
 ピアソラ:リベルタンゴ
(アンコール)
 アメイジング・グレイス
 バッハ=グノー:アヴェ・マリア

 のぼぉちゃんの音が変わった、と思ったコンサートでした。ゆったり大きな響きで丁寧に丁寧に音を扱った印象を受けました。今までだと、弱音になると頼りない音になることもあったのですが、どんなに小さな音でも芯の通った安定感のある音だったのが嬉しいです。演奏家が音が変わる時って何か転機があると良く言いますが、のぼぉちゃんの転機が気になるところです(笑) ただ、相変わらず中音域が弱くて、ピアノだけの伴奏なのにのぼぉちゃんの音は散ってしまって聞えなくなってしまうのですが、これは楽器が原因なのかのぼぉちゃんの弾き方が原因なのかどちらなのでしょうね?
 とはいえ、非常に満足度の高いコンサートでした。前半は久しぶりにソナタ全曲。古典派と近代の二曲という美味しいチョイス。ピアニストは自分の音楽のリハビリに古典派の曲を弾くと言いますが、チェリストも同じなのかな、とチラッと思いました。楽聖ベートーヴェン様ですから、そうそう気楽に弾けないフレーズの連続なのですが、一つ一つをとても丁寧に扱っていたのが印象的。それが影響したのか、シュトラウスも非常に集中度の高い演奏。シュトラウスならではの音のうねりと、のぼぉちゃん節がミックスされると気持ち良いこと気持ち良いこと。のぼぉちゃんも良かったけれど、伊都子さんのピアノもとっても良かった! 休憩時間になるやいなや、G教授が「今日のピアノはてるさん好みでしょ」と言い寄ってきましたが、まさにその通り! 彼女のピアノは盛り上げ方といい、引き際といい、とっても僕の気分にピッタリなのです。演奏に触れるとものすご〜くピアノに触りたくなるピアニストです。しなやかで華やかで、それでいて色彩豊かで大好きです!(ちなみに、歌の伴奏だと亮子さんが好き。あれ、苗字を忘れました・汗。藤原歌劇団の人です、はい)。
 休憩後はいつものトーク入り幕の内プログラムでしたが、今回はトークもさほど間延びせず、おまけにやっつけ仕事の演奏が皆無という、数年前ののぼぉちゃんのコンサートを彷彿とさせるものがありました。良い意味で前半を引きずっていて、色気のあるとても良い音! 音澪の最後の最後まで大切にするのぼぉちゃん、それにじっと聴き入る聴衆という素敵な空間でしたヨ。軽い曲であっても、伴奏者が伊都子さんだと不思議と格調高く、それでいて暖かな音楽になる気がします。クリスマスということもあって、幸せ感に溢れた曲が多かったのですが、かつて「救われないアヴェ・マリアだね」と同行者と話し合ったカッチーニのアヴェ・マリアと、アンコールのアメイジング・グレイスでは故本田美奈子さんを思い出し、ちょっと涙腺うるうる。透明感がある音楽に、心洗われました。それにしても、やさしい気持ちになるリサイタルでした。寒い夜ですが、世界中の誰もが幸せ気分でヌクヌクベッドに入れると良いな。のぼぉちゃんのファンになった時のことをアレコレ思い出したひと時でした。GOOD JOB!!


2005年12月19日(月)18:00-20:35
映画「SAYURI」@TOHOシネマズ市川コルトンプラザ SCREEN3

 全席指定 1300円(前売一般) F列-4番 (パンフレット:700円)

 監督:ロブ・マーシャル

 さゆり:チャン・ツィイー
 会長:渡辺謙
 豆葉:ミシェル・ヨー
 延:役所広司
 おかあさん:桃井かおり
 おカボ:工藤夕貴
 初桃:コン・リー
 少女時代のさゆり:大後寿々花
 蟹の院長:ランダル・ダク・キム
 男爵:ケイリー=ヒロユキ・タガワ

 普段、イタリア語による「蝶々夫人」なんぞを観慣れているので、日本を扱う映画なのにみなさん英語を話されるということはマッタク気になりませんでした。そして、和洋折衷の日本映画だということも、宝塚を観慣れている者にとっては取り立ててビックリはいたしませぬ。劇場シーンでは、摩訶不思議な日本物のショーが展開されるのですが「宝塚でもこれやって欲しい!」と思っちゃう濃厚さ。紙吹雪がこれでもかっとふりまくる中、海老反りまで披露しちゃうツィイーに脱帽です。「映画の完成度で評価しちゃう人、どんな映画もそれなりに楽しんでしまう人。どちらがより映画を楽しんでいるのでしょうか?(正確な記憶じゃないです)」というTOHOシネマの開映前のコマーシャルも、今日ばかりは非常に納得。アジアン・ビューティーが勢ぞろいで、まことに目の保養な映画でした。ちょっと派手気味でしたけど。スタッフがハリウッドのせいか、画像処理のスピードが速く、アングルも立体的で新鮮。そして、強くて綺麗なお姐さんが大集合という時点で、まさに僕好みの映画でした。女優陣は、誰もが主役をはれるトップスターが揃っているので、スターオーラがビシバシ。「私がスターよ!」と演技バトルを繰り広げるのと、劇中で「オンナの戦い」を繰り広げるのとリンクして面白いのなんの。計算と計算が絡み合い、誰が味方で誰が敵なのかが瞬時にして入れ替わっちゃうというスリリングな展開に、2時間半エネルギーを吸い取られまくりでした。あまりの面白さにまっさん(ヨーヨー・マ)やパールマンというクラシック界のスーパースターが参加の劇音楽もエンディングまでマッタク印象にナシ。
 「SAYURI」は宝塚、それも宙組な作品でした。もうね、見ていて勝手なキャスティングを行っては大喜び。登場するだけで格好良く、足長おじさんか王子様かといった会長には和央ようかがどんぴしゃりだし、長期にわたるトップの在位だとか有望な後輩イジメだとか、ボスをも黙らせちゃう女帝ぶりの初桃には花總まり以外には考えられない! ちょっと怖いけれど、知的で芸に秀でた素敵な姉さんには高柳みどりがいるし、くわせ者のおかあさんは出雲綾。けなげな見習い〜清楚な芸者〜アメリカ人相手の娼婦という変化は彩乃かなみが上手そうでしょ。顔に戦傷ありだけど延さんは水君あたり。美女喰いの男爵には専科から箙かほるにご出演いただくと、ほぉら、そのまんま大劇場公演にピッタリ。はて、さゆり役は誰が良いのかなぁ? とりあえず次期トップ娘役になる生徒を持ってこないと収まりが悪いか(笑) 一年前の宙組で花總まりサヨナラ公演として上演するのであればなんてピッタリだったんでしょう(爆) となると、花影アリスあたりがさゆり役!?
 さて、芸者=エッチというイメージを持っていたのですが、ちょっと武士道を感じるストイックさと厳しさに感銘。外人さんによる日本人……キリリとしていて格好良かった〜。チャン・ツィイー演じるさゆりはけったいな役です。姉を捜し求める間は脱走まで企てて、芸者の修行だってそっちのけなのに、会長にかき氷をおごって貰っただけで「ワタシ、芸者になるわっ」と目を輝かせちゃうんですもの。で、結局、彼女が会長と結ばれる(といっても正妻ではなくあくまで芸者としてですが)までの女一念記なんですね、この映画。さゆりって結構愛想も悪く、気も強いにも関わらず、なぜかモテモテのトップ芸者に登りつめるので、友達にはなりたくないけれど、ヒロインとしては気持ち良いかも。そんな彼女をいじめる初桃は、僕が女優ならば是非とも演じたい役。美貌と人気を誇り、我侭放題がまかり通ってしまう女帝ぶり。後輩イジメあり、オンナの争いあり、発狂寸前のヒステリックありと気持ち良いだけでなく、最後にはオンナの哀しみを表現したあたり、かなり難しく、でも美味しい役です。そして、もう一人美味しい役がおカボ。英語の台詞では「パンプキンッ!」と呼ばれていたのが「シンデレラッ!」みたいでmyツボ。さゆりの親友で、その時代に応じて芸者だったり娼婦だったり、時代の波に乗って、その時々を楽しそうに生きている……と思っていたら、最後にとんでもないどんでん返しがあって「オンナって怖いわぁ」と僕は震え上がってしまいました。怖いといえば、さゆりのお姐さん(オネエサンって英語だったのね)にして、師匠でもある豆葉も「何か一癖ありそう」と思っていたら、本当に一癖あって、面白かった〜。僕の好みです♪ おかあさん(これまたそのまんま英語でした)は、桃井かおりそのまんま。彼女は役に近づく役者ではなく、役を近づける役者ですね。とっても独特なリズムで日本語を話す彼女ですが、英語になっても独特。言葉に関係なく、自分の個性を発揮できるって凄いことです。
 足長おじさんのような役まわりの会長さんは、仕事に関しては「会長」ですが、恋に関してはとっても不器用。長身と彫りの深い顔、圧倒的な存在感を持つ渡辺謙でなければ間の抜けた役だったかもしれません。とにかく絵になる方です。装飾過剰とも思える美術の中、華やかな女優陣の中、全然引けを取らない位取りはさっすがハリウッド俳優!! そして、女性とのお付き合いは苦手そうでいて、不器用な昭和の男の延さんは、役所広司の演技力が光ります。お互い、自分の心を隠して相手と接するさゆりと会長を尻目に、己の感情を常に表現していて「オンナの戦い」なドラマにアクセントが付いてました。甘〜い謙さんと、お堅い役所さん、なかなかの組み合わせですね。これらの役については、このお二人以上の適役が思いつかない!!


2005年12月20日(火)18:30-20:40
新国立劇場バレエ団「くるみ割り人形」@新国立劇場オペラ劇場

 D席 6615円(会員割引) 4階-4列-49番 (パンフレット:800円)

 指揮:ボリス・グルージン
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 マーシャ:ディアナ・ヴィシニョーワ
 王子:アンドリアン・ファジェーエフ
 ドロッセルマイヤー:ゲンナーディ・イリイン

 隔年で上演のはずだったのに、なぜか昨年に続いての連続上演になる、新国の「くるみ割り人形」です。ロビーに飾られた大きなクリスマスツリーの前で、おめかしした小さな女の子がアイスクリームや飲み物をいただきながら、家族の方と楽しそうにお話している姿を見るだけで、ちょっと良い気分になります。新国はお子様用のバレエ学校を持っていないので「お義理で見に来ました」というお行儀の悪いチビッコはおらず、みなさん小さなレディとジェントルマンなので、観劇中もとても良い子ばかり。劇場に来ることを心から楽しんでいる家族連れを見ると、こっちまで心がポカポカしてきて、観劇前の気分が盛り上がるというものです。
 さて、舞台はというと、安心してメルヘンに浸れるプロダクション。年末のバタバタも忘れてファンタジーに浸っていると「来年が良い年になりますように」と素直な気持ちになってきます。チケットを購入する時は「また“くるみ割り人形”か」とぼやいていたクセに、いざ観劇すれば結局は「あ〜良かった」となるところ、どことなく「第九」に通じるものがあります。今日は職場から劇場へ直行だったのですが「くるみ割り人形を観にいくんだ」と同僚に言ったところ「健全すぎて似合わない!」とキッパリ。ええ、自分でもそう思います。スリッパを投げるだけで撃退できちゃうねずみの王様だとか、あっという間に退散してしまうコウモリたちは登場するものの、基本的に悪役が登場しませんし、全編甘くて物足りないんだもん(かといってマシュー・ボーンのようにいじりすぎてもイマイチなんですよねー)。マーシャはニコニコと可憐だし、王子は手足が長いのでちょっとしたポーズでもサマになりますし、ドロッセルマイヤーは芝居達者。その他の出演者は余裕シャクシャクです。美術は豪華で見栄えがするし、舞台一面がピンク・ピンク・ピンク。そりゃ、メルヘンが似合わないダンサーもチラホラいますけれど、まるで砂糖菓子のような舞台です。今日は気持ち良く見とれてきましたが、睡眠不足の時には危険なプロダクションかも。
 と、実は僕好みとは言いがたい「くるみ割り人形」というバレエなのですが、そんな欲求不満を忘れさせてしまうのがチャイコフスキー!! 全編ピンクの音楽です。ワクワク感を高める小序曲に始まり、おもちゃたちの活躍にふさわしいパッパラパーな楽器の扱い、ロマンティックこの上ないワルツ、民族舞踊のエッセンスを抽出した第3幕、そして、いきなりゴージャスなパ・ド・ドゥのアダージョ。名曲を使ったバレエってそれだけで3割は感激度がUPする気がします。今回はバレエ公演にもかかわらず、東フィルも好調、と思って酔いしれていたら、3幕の頭で(1幕と2幕が続けての上演だったので休憩後ですね)いきなりハスキーなフルートが! あ、水抜きしてない!とピンと来ましたが、いかんせん活躍場所の多い楽器ゆえ、しばらくは一人二重奏が続いたのでした。マッタク……でも、今度は何をしでかしてくれるかとちょっと楽しみだったりもします。トランペット・ソロは快調だし、弦も軽やかで華やかでクリスマス気分を盛り上げてくれました♪
 終演後、ロビーに出ればネズミたちがお出迎え。ディズニーランドのような可愛いネズミではなく、黒ずくめでダークなデザインなのですが、しぐさが可愛くて思わず手を振っちゃいました(知り合いに見られていませんように!)。新国のクリスマス公演はいつもちょっとしたサプライズがあるのを忘れてたー!


2005年12月21日(水)16:30-20:40
十二月大歌舞伎
「恋女房染分手綱」「船辨慶」「松浦の太鼓」@歌舞伎座

 3階B席 2520円 3階-11列-26番 (パンフレット:1200円)

 「恋女房染分手綱」
   乳人重の井:福助
   三吉:児太郎
   吉田文吾左:亀三郎
   吉田源吾左:亀寿
   腰元若菜:七之助
   本田弥三左衛門:弥十郎
 「船辨慶」
   静御前/平知盛の霊:玉三郎
   武蔵坊弁慶:弥十郎
   源義経:薪車
   船頭:勘三郎
 「松浦の太鼓」
   松浦鎮信:勘三郎
   宝井其角:弥十郎
   鵜飼左司馬:亀蔵
   江川文太夫:男女蔵
   渕部市右衛門:薪車
   里見幾之丞:桂三
   早瀬近吾:由次郎
   お縫:勘太郎
   大高源吾:橋之助

 


2005年12月24日(土)18:00-20:40
「RED SHOES, BLACK STOCKINGS 〜彼と彼女が踊る理由〜」@ル テアトル銀座

 全席指定 8500円 1列-8番 (パンフレット:2000円)

 演出:荻田浩一

 大浦みずき/畠中洋/風花舞/浦井健治
 伊藤明賢/小野妃香里/斉藤直樹/中川賢/紀本由有
 水野江莉花/桜木涼/Akane/中塚皓平
 中川晃教(GUEST)

 今年度最後の観劇となりました。チケットを見たら、びりぃさん用仕様でして、何と最前列通路横の席。ダンス公演を観るにはどうよ?と実は密かに思っていたのですが、足さばきの素敵な女たちでしたので、何の何の大満喫。ナツメさんからは登場のたびに目が合うし、かざっぱなちゃんからはウィンクいただくし、その他のキャストからの目線もビシバシ飛んでくるし、僕のためのショーでした(笑) みんなが「見て、見て〜」と迫ってくる中、好きな子を選ぶのってちょっと申し訳ないけれど、ご贔屓に目がいっちゃうのはいたし方ありませぬ。ただ、僕はナツメさんとかざっぱなちゃん両方のファンなので、二人が中心になって踊り狂うシーンなんて、どちらを見れば良いのかうれしい悲鳴をあげてました。格好良いお姉さん大好き♪
 ナツメさん出てくるだけでスター。出番は少ないけれど、歌もダンスもナツメワールドが展開。スターとしての位取りって技術だけじゃ解決できないので、難しいものですね。幕開きの露出の激しい衣装こそちょっと目のやり場に困りましたけれど、その後はゴージャスなドレスからパンツスーツ、ジーンズにTシャツといったカジュアルなものまで、何を着ていてもスターの存在感はびくりとも揺らぎません。彼女の芸風って男役時代そのままだったりするのですが、元々伝統的な男役タイプではなく、オリジナルな個性のショースターとして活躍していた方なので違和感なし。もしかしたら、将来はシャーリー・マクレーンのようになるのではないかと、密かに期待しています。今回のショーでは別格として君臨していましたが、ダンスのみならず、歌手としても別格スターなのはさすが。ダンスの得意なスターは年齢とともにスターオーラが弱まるものですが、ダンスの種類が徐々に移ろい、ダンス以外でも年々魅力が増すスターというのは嬉しいものですね。
 反対にかなり厳しかったのが元音楽座トップ(という呼称はないけれど)の畠坊さん。まだ若いはずなのに、貧相にやせ細ってしまいしわくちゃなので、実年齢よりもかなり老けて見えてしまいました。おまけに、歌もダンスも苦手な方なので、ほとんど振付は与えられず、歌も音域の狭さと歌いまわしの単調さで、アンサンブルにすら埋もれてしまうていたらく。同じフレーズでも、畠坊が苦しそうに歌った曲を、その直後にナツメさんが楽々と歌い上げちゃうのですから、分が悪すぎます。華やかな衣装も全然似合わず、思わず目をそらしてしまう惨めさ。音楽座退団後は鳴かず飛ばずなのも納得。。。なぜこの人が起用されたのか疑問。それにしても、こんなに下品な人でしたっけ? 
 さて、ナツメさん版「ベルサイユのばら〜踊るフェルゼン編〜」で初舞台のかざっぱなちゃんは、NY公演に引き続き二度目の共演(多分)。宝塚時代からトップダンサーとして活躍していましたが、それでも彼女がこんなに踊るのは初めてみました。たった二日間の公演のために、彼女はどれだけの時間をお稽古に費やしたんでしょう? 彼女が宝塚を退団してかなりになりますが、現役のタカラジェンヌでも、今の彼女ほど踊れる生徒はそうそういないでしょう。まず歩く姿だけで一般人とは別格の美しさ。歩く姿だけでダンスに見えちゃうほど。宝塚時代と違い、男役とのバランスだとか、ポジションに応じた踊りのセーヴなど全然必要なく、バリバリ踊れるので、実に気持ち良さそうでした。まさに彼女は絶好調。ミュージカル界の吉田都とでも呼んでしまいましょう。彼女は元月組娘役トップですが、お姫様よりも、ちょっとサバサバしたお姉さんを得意とした生徒。今回も、パンツルックになって男性ダンサーを率いてピラミッド状に構成されたフォーメーションのトップで踊りまくるが何と格好良いことだったでしょう。彼女はバレエの訓練をかなりつんでいるようで、バレエのステップが綺麗。ピルエットなんて、バレエ団所属のダンサーにもまけない見事さだと思います。彼女のダンスは技術のみならず、表情だとか、腕のちょっとした動きにも芝居心が感じられるので他ダンサーとは別の風格を感じさせられます。
 浦井健治は決して踊れない人というわけではないのですが、よりにもよって、かざっぱなちゃんの相手役なので、ちょいと見劣り。無理に踊らない方が良いんだけどな。ダンサーばかり集まったステージでは、まだダンサーとしての体になっていないのがバレバレで、ちょっと可哀想。とはいえ、カンパニーの中では若手だし、まだ新進スターという位置づけなのと、歌もダンスも真面目に取り組んでいるので「頑張れ」と応援してしまいます。僕が彼を初めて見たのは再演の「エリザベート」でしたが、ちょうど体質が変化する次期なのか、ここ数年でかなり顔つきが変わったように思います。表情がかなり柔らかくなりました。今後は舞台上でいかに自然に存在するかいかんによっては、かなり素敵なミュージカルスターになる可能性を感じました。
 本日のゲストの中川君は相変わらず素敵な歌声。なぜか彼のシーンになると音声さんが音量MAXのままで調整しなくなるので、結構やかましいのですが、ま、上手いからまだ良し。でもね、最前列だとショースターとしてはかなり厳しいんです。ちびで短足で表情も常に苦しそうで、視覚的にかなり自主規制がかかってしまいました。髪形とあいまって、金八先生が歌っているみたい(汗) タイミング良く、中川君の歌にあわせて、ダンサーが活躍してくれるので、目の前で歌ってくれたにもかかわらず、実はほとんど彼を見てなかったりします(汗) そうそう、なつめさんとは初共演とのことですが、トークでは息もあってましたし、ゴダイゴ・メドレーではかなり弾けてくれてました。良い子かも。
 アンサンブルはかなり高レベル。「この人はバレエがメインだな」だとか「この人はジャズばかり踊ってきたんだろうな」という想像はつくものの、一人一人のレベルがかなり高く、おのおのに見せ場まで用意されていて、バレエで言うとディヴェルティスマンのような感じで様々なダンスをみせていただき、とっても楽しかった〜♪ 長身でスタイルが良く、音痴もいないという、素敵な面々が揃って間ました。ちなみにパンフレットはまるで写真集のような作りで、出演者のプロフがおおざっぱなのが残念ですが、撮影された写真はみなさん色気があってかなりレベルが高いものです。2000円は高いけれどね。
 それにしても、2日間のショーにはもったいない内容。オギーのショーは和音使いが独特ですね。東宝劇場公演のような大掛かりな装置や豪華な衣装はないけれど、出演者の芸がそれを補って余りありました。彼のショーはこの大きさの小屋の方がコンセプトが徹底されてしっくりきます。