観劇日記〜2006年01月〜
05日(木) 13:30 宝塚歌劇団花組「落陽のパレルモ」「ASIAN WINDS!」 東京宝塚劇場
08日(日) 18:30 新国バレエ団「白鳥の湖」 新国立劇場オペラ劇場
12日(木) 19:00 新国立劇場「ヘンデル:セルセ」 新国立劇場小劇場
13日(金) 18:30 藤原歌劇団「ヴェルディ:ラ・トラヴィアータ」 オーチャードホール
16日(月) 19:00 フジテレビ「グランドホテル」 東京国際フォーラムホールC
17日(火) 16:00 国立劇場歌舞伎「曽我梅菊念力弦」 国立劇場大劇場
18日(水) 14:00 フジテレビ「グランドホテル」 東京国際フォーラムホールC
18日(水) 19:00 音楽座「とってもゴースト」千秋楽 東京芸術劇場中ホール
19日(木) 18:30 「BATBOY THE MUSICAL」 東京厚生年金会館
21日(土) 18:30 宝塚歌劇団OG「エリザベート10周年ガラコンサート」初日 東京芸術劇場中ホール
24日(火) 11:00 宝塚歌劇団花組「落陽のパレルモ」「ASIAN WINDS!」 東京宝塚劇場
24日(火) 18:30 新国立劇場「モーツァルト:魔笛」 新国立劇場オペラ劇場
26日(木) 21:30 東京ディズニーシー「ディズニー・リズム・オブ・ワールド」 ウォーターフロントパーク特設ステージ
27日(金) 14:00 宝塚歌劇団OG「エリザベート10周年ガラコンサート」 東京芸術劇場中劇場
27日(金) 18:00 東宝「ベガーズ・オペラ」 日生劇場


2006年01月05日(木)13:30-16:35
宝塚歌劇団花組「落陽のパレルモ」「ASIAN WINDS!」@東京宝塚劇場

 2階16列席 2500円 2階-16列-15番 (パンフレット:1000円)
 演出:植田景子(落陽のパレルモ)/岡田敬二(ASIAN WINDS!)

 ヴィットリオ・ロッシ(イタリア解放軍の闘士、イタリア統一後、政府軍将校となる。シチリア貴族の父と貧しい母との間に生まれる):春野寿美礼
 アンリエッタ・クラウディア・カヴァーレ(シチリアの名門貴族・カヴァーレ侯爵家の長女):ふづき美世
 マリア・コンツェッタ・カヴァーレ侯爵夫人(アレッサンドロの妻、アンリエッタの母):高ひづる
 マリオ・フランチェスコ・ディ・ドンブイユ侯爵(シチリア一の有力貴族):萬あきら
 アレッサンドロ・ファブリッツィオ・ディ・カヴァーレ侯爵(カヴァーレ侯爵家の当主、アンリエッタの父):夏美よう
 エルヴィラ・フェリーチタ・マリア・ディ・カヴァーレ(ヴィットリオとアンリエッタの間に生まれた長女):梨花ますみ
 ヴィットリオ・ファブリッツィオ・ロッシ・ディ・カヴァーレ(エルヴィラの孫、オペラ演出で認められた新進の芸術家):彩吹真央
 ロドリーゴ・サルヴァトーレ:フォンティーニ伯爵(シチリア名門貴族の御曹司、アンリエッタの求婚者):真飛聖
 ニコラ・ジロッティ(ヴィットリオの幼馴染で親友):蘭寿とむ
 ジュディッタ・フェリ(ヴィットリオ・ファブリッツィオの恋人):遠野あすか

 劇場前を通りかかったら、当日券を販売していたので、予定外の観劇となりました。お正月の公演としては「花組」で、ご挨拶するのは「春野寿美礼」だし、何だかおめでたい響きがぴったりだなぁ、なんて思いながらの開演。NTTが冠についているせいか、いつになく豪華な印象を受けました。新春公演としてはナカナカの出だしですね。あ、劇場に入ると、NTTのキャンペーン担当の瀬奈じゅんの写真があちこちにありました。ついこの前まで花組だったので、違和感全然なし。逆に「今日、出てこないの?」とすら錯覚してしまう程でした。でも、あらためて瀬奈じゅんの大きさを実感。今回は二番手不在の地方公演を観ているようでした。
 「落陽のパレルモ」は貴族の物語で、革命や身分違いの恋、男同士の友情といった、宝塚の人気作品の美味しいところ取りのような作品。豪華なコスプレあり、各種軍服あり、そして、凝った照明や転換に便利な折りたたみ式ゆえにまたたくまに転換される装置などなど、見た目にも大変美しい舞台でした。ちょっと欲張りすぎちゃって、1時間半の上演時間では消化不良を感じたほど。二つの時代を行き来するストーリーなので、映画と違って何かと制約がある舞台ではどうなることかと危惧していましたが、意外とすんなり。植田氏の演出力はなかなかのものとお見受けしました。5組化以降の宝塚では、一公演に出演する生徒の数が減り(分割前の星組なんて90人以上が当たり前でした)、スタッフによっては、舞台後方が空っぽのスカスカ、という二階席を無視した演出がなされることもあったのですが、今回は横一直線などという単純な配置は行わず、常に上下左右に人員配置。ちょっとバレエのフォーメーションを思わせるもので、少ない人数をより多く見せることができるナカナカのアイディア。でも、幕開きと幕切れはそれが災いして、舞台後方で主役を段の上に乗せてしまうものだから、僕の席からだと、首なしの春野寿美礼しか見えませんでした。たはは。真面目な春野、お坊ちゃんの彩吹、線の太い真飛、勢いのある蘭寿と、男役に関してはスターの個性に合わせた当て書きなので、何はともあれ安心して観られる舞台というのは嬉しいものです。今回でサヨナラとなるふづき美世も豪華な衣装をとっかえひっかえ着せられているし、現在の娘役二番手の遠野あすかや、次期娘役トップの桜乃彩音など、若手娘役には勢いがありました。男役はちと押され気味。
 「ASIAN WINDS!」は個人的に「春野寿美礼リサイタル」とでも呼びたくなるような、寿美礼・寿美礼・寿美礼のオンパレード。トップに就任して以来、日に日にクセが強くなる彼女の歌唱ですが、テレビならばいざしらず、劇場でのライヴに適した歌い方とは思えないんですよねぇ。pp=省エネモードと勘違いしているのか、支えの聞かない弱弱しい音になってしまうし、かといってffになると声がひっくり返って音痴になっちゃうし、さらに言えば発音不明瞭で歌詞が全然聞き取れないんです。芝居でも「困ったなぁ」という歌でしたが、ショーにおいては、まずは声量と乗りの良さが必要だと個人的には思っているので、寿美礼さんの妙な歌いまわしだと、盛り上がる場面も盛り上がらないのがツライ。。。かといって、彩吹、真飛、蘭寿の二番手(三番手?)トリオがその穴を埋められる程には育ってないので、全員で「エイヤーサエイサー」と歌い踊るプロローグや、中国の場面で幻想的に寿美礼さんが歌う場面はなかなか魅せたと思うのですが、中詰めで各スターがソロを歌い継ぐとなると急にトーンダウン。もっとも、今回の中詰めは「明るいメロディ」と解説しながらも、根暗なメロディラインが奏でられる服部良一メドレーで、作曲された時代を意識してか、衣装も振付も舞台美術もとたんにダサダサ。夢を売る劇団のはずが……悪夢を見せてくれました。何で、宝塚で服部メロディなんでしょう? コマ劇場だとか、竜小太郎一座の舞台ならばしっくり来ますが、あまりの盛り上がらなさ&相性の悪さに、生徒が気の毒でした。そして、残念ながら再び盛り上がることもなく、フィナーレに向けてフェードアウト。スターがいないので、挽回のしようがないのです。寿美礼嬢も盛り上げタイプのスターではないので、気が付けばそのまま幕。そういえば、トップコンビのデュエットダンスがなかった! 春野&ふづきコンビって「二人で魅せる」という場面が意外にないんですよね。不思議なコンビでした。ま、春野ファンにとっては素敵なショーだったかと思いますけど、どんなに修ちゃんに「来ないの?」と責められようと、頑としてリサイタルをパスした僕としては、ちょっとツライ公演。。。そして、ふづきファンにとっては後味の悪い公演!? でも、下級生が育てばまた別の印象を受けるかもしれないので、今月下旬の公演も、さばかずに足を運んでみようかと思ってます。


2006年01月08日(土)18:30-21:30
新国立劇場バレエ団「白鳥の湖」@新国立劇場オペラ劇場

 F席 2835円(会員割引) 4階-4列-29番 (パンフレット:800円)

 指揮:渡邊一正
 管弦楽:東京交響楽団

 オデット/オディール:酒井はな
 ジークフリード王子:山本隆之
 ロートバルト:市川透
 王妃:鳥海清子
 道化:八幡顕光

 「酒井はなは新国の女王なのですから〜」(←アントワネット風に発音してください)な公演でした。元々僕は彼女のファンですが、ファンモードを差し引いたとしても素晴らしい出来でした。オデットでは王子に出会って思わずブルブル震えちゃうのですが、徐々に心を許して最後には愛情までも抱いてしまう過程が非常に丁寧に表現されていて、可憐そのもの。それが、オディールで登場すると、ロートバルトとの目のみでのやり取りと、王子や王妃を欺く時とで、目つきが全然違うんです。流し目を効果的に利用し、誘惑一筋の女になっていて、まさしく僕好み。例の32回フェッテでは、中心からずれていってしまうプリマも多い中、ほとんどぶれずに鮮やかに決めちゃうので、今回の公演では唯一のショーストップとなりました。拍手がとまらないので、舞台袖から再び登場ですもの。客席全部を虜にしてしまったあとは、王子一人を誘惑するなんてお茶の子さいさい。「アンタ、私の事好きなんでしょ?」とばかりに王子に向けるまなざしが最高! もちろん、王子はいとも簡単に応じは陥落してしまったのでした。演技力抜群で、ダンスもビシバシ決めてしまい、何よりも華やかな雰囲気のおはなさま。終演後のカーテンコールでも歓声が凄かったです。オケがどんなに暴走しようと、びくともしないその貫禄、圧巻でした。彼女がクワッと笑うとちょっと天海祐希に似てません? 非常に華やかになります。
 オケはねぇ。。。実は新国の「白鳥の湖」は毎回ボロボロというイメージがあるのですが、幕開きのクラリネットのソロがとっても素敵だったので「今回は良いかも」と期待したんです。が、弦はピッチもアインザッツも揃わないし、トランペットなんて音を外してばかりだし、打楽器は賑やかに打ち鳴らすばかりだし、とにもかくにも「雑」な演奏でした。チャイコフスキー様の名曲なのに台無し。おまけに、渡邊氏がやたらと早く演奏させようとするものだから、ダンサーとの波長が合わず、ビシッと揃うダンスが売りの新国バレエ団のダンサーといえども、ボロが出てしまいました。ところどころバラバラ。バレエの指揮者としてはベテランの方だと思っていたのですが、何があったんでしょう? せっかくのロマンティックな舞台に水を差す形になってしまいました。でも、黒鳥の場面でのヴァイオリン・ソロはとっても素敵でした。弦の名手と踊りの名手による美の競演。
 あまりのテンポの速さに戸惑う場面もありましたが、全般的に新国バレエ団は好調でした。コールドも一人一人がやる気に充ちていて迫力があります(外国のバレエ団だとコールドにやる気がないところが結構あるんですよねぇ。一流と呼ばれるところでも)。最近、ちょっとずつ世代交代を行っているようで、新しいダンサーが見受けられるのですが、今後に期待を抱かせる方が多いのが嬉しいです。前回公演の「カルミナ・ブラーナ」で初注目した八幡君ですが、ハイテクニックを駆使する道化で元気良く舞台を飛び回っていました。まだ新人さんなので仕方ないのですが、表情いつも苦しそうなままののっぺらぼうなので、今後はダンスのテクニックだけでなく、芝居の勉強をすることによって、もっと良いダンサーになるのではないかな、と思いました。まだ舞台に余裕がないのですが、客席の応援に感化されてか、後半になればなるほど生き生きとしてきたのが印象的でした。いかにも新人ダンサーという初々しさがあります。ベテランでは、スペインの踊りを披露した湯川麻美子が圧巻。彼女もおはなさま系列と言いますか「格好良い」ダンサーなのですが、海老反りの際の切れの良さ、バネの強さ、目線の鋭さ等に圧倒されてしまいました。僕が王子だったら、黒鳥の登場前にもしかしたらプロポーズしちゃうかも!! そうそう、王子様は新国バレエ団の山本隆之。ん〜〜〜、実は彼の舞台って印象に残らないんですよねぇ。これはあくまで僕の好みの問題なのですが、ダンスは安定しているし、サポートも安定しているし、どの舞台を見ても不満に思うことはないのですが、あくまでプリマの引き立て役で終わってしまうような気がするのです。ま、一緒に組む相手がおはなさまという別格というのもあるのでしょうが、も少しスターオーラを発揮してほしいなぁ、なんて思ってしまいます。山本氏のお母様役の鳥海清子ですが、バレエ公演としては破格のゴージャスなドレス(ま、王妃様ですからね)を見事に着こなし、ダンサーならではの優雅で美しい動きと、愛らしく華やかなお顔とで、スミマセン、場面によっては舞台中央で繰り広げられているダンスをそっちのけで王妃様を見つめてしまいました。美しさという意味では、今回のステージで最高!! ため息ものでした。
 ちょっとしたところにあれこれ意見はありますが、舞台は豪華だし、安定したプロダクションだし、音楽も踊りも絶品だし、総合的な満足度は高い公演でした。今回の席は四階の一番後ろの列だったのですが、ど真ん中の席を確保できていたので、何よりもフォーメーションを堪能するには最高の位置でしたし、乗り出しても誰の迷惑にもならないし、何よりもチケット代が安いし(!)ナカナカ気に入りました。下の階で端っこの席よりもバレエ鑑賞には良いかも。おまけに、僕の回りは公演を心から楽しんでいる人が多かったようで、拍手のタイミングだとか熱の入れように共通のものを感じられ、よりいっそう幸せ気分になりました。幕が降りるたびに「良かったね〜」と言い合う声を聞くのって大好き。


2006年01月12日(木)19:00-21:50
新国立劇場小劇場オペラ「ヘンデル:セルセ」@新国立劇場小劇場

 全席指定 4725円(会員割引) バルコニー-CB列-1番 (パンフレット:無料)

 指揮:平井秀明
 演出:三浦安浩
 管弦楽:新国立小劇場オペラ・アンサンブル

 セルセ:高野二郎
 アルサメーネ:羽山晃生
 アマストレ:山下牧子
 ロミルダ:山本真由美
 アタランタ:木下周子(文屋小百合の代役)
 アリオダーテ:片山将司
 エルヴィーロ:小野和彦

 かつてサントリーのCMで、森の中でキャスリーン・バトルが「オンブラ・マイ・フ」を爽やかに歌い上げるのがセンセーションを巻き起こしました。また、映画「カストラート」ではバロックの美しい衣装に身を包んだカストラート歌手が超絶技巧の曲を鮮やかに歌い上げたのが話題で、その後のバロック・ブームの火付け役となりました。……という程度でしか縁のなかったヘンデルのオペラですが、このたび、新国の小劇場オペラで取り上げられるときいて、ベルサイユの華やかな美術がよみがえるのやろか、と楽しみにしておりました。紀元前5世紀のペルシャを舞台にした物語を現代の視点で再構築された今回の舞台ですが「余計な事しないでください」が本音。今まで観たオペラの演出の中でも最悪パターンでした。乞食オペラをそのまんま見せられることになろうとは(絶句)
 何が最悪って、音楽を全く無視しているところなんです。せっかくの大ナンバーの聞かせどころで、その場面に全く関係ない芝居を集団でやらせて観客の集中をそぐばかりでなく、騒音を発生させることによって、音楽進行を妨げてしまうんです。おまけに、それらのきっかけが音楽の流れとは全く関係ないので効果音にすらならない状態。設定をいじるのは結構、芝居重視で演出するのも結構。でも、せめて音楽的センスのある方に演出していただかない限り、オペラとしては崩壊です。滅多に上演されない作品で、ストーリーだってほとんど知られてない(&非常にわかりにくい)作品の場合、お遊びがすぎると本筋が見えなくなってしまうんですよね。やたらと走り回り、騒ぎまくり、舞台を引っ掻き回し「何だこりゃあ」というのはどこかで見覚えあるなぁ、とというのは、下北沢あたりの小さなスペースで上演されるお芝居に似た空気があるのかもしれません。個人的に、お金を出して綺麗なもの、凄いものを観るのは大好きですが、公園の酔っ払いなんて東京文化会館に行く際に上野公園で目にすることができるので、わざわざ新国の舞台に再現してくださらなくても結構なんですけど。舞台の上で物を壊したり、蹴りを入れたり、飲んだくれて寝ちゃったり、物を散らかしたり、悪ふざけをしたり、あげくの果てには短髪ヒゲのオカマちゃんまで登場とTVの深夜番組並にドタバタしてくると、あぁイライラ! パンフによると「現代の人びとが"セルセ"の映画を撮影するという設定」ということでしたが、その設定も必然性を感じない、舞台の中での説得力がない、おまけにクライマックスではその設定が尻切れトンボになっているというのでは「嫌いな演出だけど納得した、何だか凄かった〜」とはなりませぬ。歌っている歌手の映像をドアップにしてスクリーンに映し出すというのもあんまりってものです。音楽が良くなかったら、一幕の半ばで席を蹴っていたことでしょう。主役の面々よりも、酔っ払いのアンサンブルたちを重視しすぎるこの演出家、悪いけれど僕の中ではブラックリスト入り確定です。
 さて、ストーリーですが「あかねさす紫の花」にかなり良く似ていて、兄が弟の女を奪うことによる兄弟喧嘩にすぎません。セルセ=中大兄皇子、アルサメーネ=大海人皇子、ロミンダ=額田女王で、アマストレ=「ドン・ジョヴァンニ」に登場するドンア・エルヴィーラ、といった役どころ。……というのを理解した時点で第一幕終了。なまじストーリーがわからない上に、劇中劇などという複雑なことをしているので、慣れるまではストーリーを追いかけるのに必死。第一幕の音楽返して〜〜〜。ま、誰が誰のことを好きという設定がわかってしまえば結構すんなり理解できる展開なんです。洋の東西を問わず、頭の弱い権力者が統治を行うのがいかに迷惑かってことですね。名前が複雑なのと、登場人物の紹介文がこれまた長かったりするので、あらすじを読むと余計に頭がこんがらがります。
 アマストレ役の山下牧子はちょっと影のあるクールな美貌と、ふんわりタップリパーマをかけた髪形が見事にマッチ。安定した低音とメゾならではの暗い音色が役どころにピッタリで、技巧的なアリアも派手ではないものの、いぶし銀の輝き。ロミルダ役の山本真由美はのぼぉファンにはすっかりお馴染みの「ブラジル風バッハ」の歌手の方です。オペラの舞台でお目にかかるのは久しぶり。ロミンダ役は高音が非常に多く、装飾音も沢山の、おそらくこの作品中でもっともテクニックが必要かと思われる役なのですが、どんなに高音になっても、決して絶唱することなく、柔らかなppを響かせていて個人的に今宵の最優秀歌唱賞を差し上げたい気持ちです。アランタ役の木下周子は文屋小百合の代役とはいえ、Wキャストで入っているので歌も芝居も安定(四日間連続で出演しちゃうのでしょうか!?)。彼女は公演終盤にかけて調子がグングンよくなっていくタイプのようですね。今日はどうやら女性優位の出来だったようです。
 男性陣も頑張ってましたが、音楽が空中分解。タイトルロールの高野二郎もアルサメーネ役の羽山晃生も音域が合わず、高音部は綺麗に響くのですが、低音部は二人そろって音が当たらない、鳴らない、聞えない、など駄目駄目づくし。そもそも、この二役ってテノールに振る役なんだろうか?という疑問を抱きました。低音は沢山登場する割に、これといった高音はないのです。聞かせどころのアリアで音がかすれて消えていくのは、聴いていて辛いものがあります。はっ、アンサンブルの芝居がやかましかったのは、男性ソリストの出ない音を目立たせなくするため!? 天国のヘンデル先生にはゴメンナサイして移調するだとか、いっそのことバリトン歌手に歌わせるわけにはいかなかったのでしょうかねぇ? あ、高野二郎というと東宝ミュージカルではお馴染みの方で、最近だとレミゼで銀の食器等をバルジャンに与える司祭様なども演じていますが、、、やっぱり脇の人です。タイトルロールとして舞台中心に立つのが全然似合わないんです。華がない方は、どんなに歌唱力があっても「オペラ歌手」としては苦しいものがあります。声も今回のキャストの中では良く通っているし、なかなかの歌手だとは思いますが、スターではないですね。そんな彼が「座長でございます」と大芝居を打つと……とっても違和感があります。同じく地味な歌手でも、脇役に徹している羽山晃生(二期会の実相寺演出「魔笛」の僧侶は絶品でした)の方がしっくり感があります。ま、今回はプリマ二人も地味なタイプなので、四人並んだ時のバランスは良かったです。でも、タイトルロールが、主役が他キャストの存在感に埋もれてしまうってどうよ!?!? あと気になったのがアリオダーテの片山将司。発声がとっても変なプロの方で、発音は不明瞭で声が全然響かないし、声量もないんです。「僕の方がマシじゃん?」と素人の僕に思われちゃうようじゃ、プロの歌手としての将来も厳しいかなぁ。小劇場でこんなに力不足を感じてしまうのですから、オペラ劇場への道はまだまだ遠そうです。
 能舞台に想を得たという、センターステージはどの席からも舞台が近く(8列ずつサンドイッチ状態でした)、デッドな音空間ながら、舞台脇に位置する小編成のオケもまとまったアンサンブルを聞かせてくれました。オケは頑張ってましたよ〜。よく、こんなドタバタ演出の中で冷静に演奏ができるもんだと、そのプロ意識に脱帽です。何はともあれ、休憩時間には「こりゃ演出家へのブーイングすごいだろうな」と思われた舞台ですが、観客一同、終演時には疲労が激しかったようでして、演出家が登場しても、力のない拍手をそのまま送り、かといって盛り上がることもなく公演終了となったのでした。あ、そういえば、公演中も盛り上がるって場面なかったなぁ。ヤマもタニもなく、むやみやたらと騒がれて疲れたという印象ばかり。客席が騒がしくて、という公演はたまにありますが、舞台が騒がしいという公演は、滅多にない貴重な体験が出来たということでしょうか!?


2006年01月13日(金)18:30-21:30
藤原歌劇団「ヴェルディ:ラ・トラヴィアータ」@オーチャードホール

 C席 9000円 3F-1列-6番 (パンフレット:1000円)

 指揮:ダニエレ・ヴェラルディネッリ
 演出:ペッペ・デ・トマージ
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 ヴィオレッタ:野田ヒロ子
 アルフレード:中鉢聡
 ジェルモン:谷友博
 フローラ:佐藤亜希子
 ガストン:馬場崇
 ドゥフォール:東原貞彦
 ドビニー:小迫良成
 グランヴィル:田島達也
 アンニーナ:松浦麗
 ジュゼッペ:所谷直生
 使者:羽渕浩樹
 召使:秋本健

 毎年恒例の藤原歌劇団の「ラ・トラヴィアータ」ですが、16年目の今回でシリーズ最終公演となるそうです。さすがに毎年観ているわけではないのですが、来日時には無名だったものの、今は大スターの歌手がいたり、折々の話題の歌手が登場していたりと、上演記録を眺めるだけであっという間に時間がたってしまいます。慣れ親しんだ作品とのお別れは寂しくもありますが、次の作品を楽しみに待つことにいたしましょう。ということで、ここしばらくご無沙汰していた藤原歌劇団の「ラ・トラヴィアータ」ですが、来日キャストではなく、劇団員のみで組まれた裏キャストでお別れしてきました。劇団メンバーのみの公演が相応しいかな、と思いまして。
 ということで、劇団としては手馴れた演目、観客も見慣れた作品ということで(今回はプロダクションも再演ですし、主要キャストも過去の出演者ばかり)、気楽な鑑賞になるかと思いきや、意外と手に汗握る展開となったのでした。生はその場にならないと何が起こるかわかりませんね。して、手に汗握る原因というのが、僕のご贔屓さんでアルフレード役の中鉢聡。登場場面では一人だけハイテンション。最初の一声がちょっと上ずっていて、大丈夫かな、とハラハラしていたら、あちこちで声がひっくり返ってました。どうも喉の調子が宜しくないようでして、歌いにくそう。かといって、主役なので出番は多いので逃げるわけにもいかず、「あ、力で押し切った!」「弱音で支えきった」などなど、関係者でもないのに聞かせどころになるたびにコブシに力が入ってしまいました。でも、アルフレードという役が若さゆえの勢いで突っ走ってしまうので、勢いある真っ直ぐな歌唱というのはこの役に合っている気がします。第2幕第2場でのヴィオレッタに対してヒステリーを起こす場面なんて、鋭い目線と、叩きつけるような歌唱で、なかなか聞き応えがありました。中鉢さんは一途に思いを寄せるような役で輝くタイプですね。失礼ながら、モテモテで困っちゃう、という役を演じるには謙虚な素の姿が邪魔してしまうような気がします。。。それにしても、今回のアルフレードはラテン気質バリバリの演出でして、第1幕なんて、パーティでヴィオレッタを紹介されたばかりだというのに、お客さんみんなが見つめる中、ブッチューと激しい&長いキスシーンは繰り広げちゃうし、さようなら〜とお別れしたはずなのに、いつの間にやらヴィオレッタの部屋にかけ戻ってきてまたもやブッチュー。いやぁ、一幕の時点でかなり見せ付けられました。盛りの付いた青年みたいで僕は大喜び。登場するたびに「今かな、今かな」とブッチューを期待しちゃいました。二幕はねぇ、、、使用人を采配する前に自分で動いちゃいそうなので、歌詞とイマイチ合わないかな。カーテンコールの時も思ったのですが、中鉢さんって結構かしこまったポーズを取ってしまうのと、気遣いさんのポーズや目線をすることが多いので、情熱的にヴィオレッタを口説く時以外は、やもすると小粒になってしまうんですよねぇ。せっかく主役なんだから「俺様が主役だ〜」とデンッと構えても良いのに。でも、そんな気遣いさんの部分が大好きなんですけどね。
 さて、順番が逆になってしまいましたが、ヴィオレッタの野田ヒロ子は若い頃のキリ・テ・カナワを思わせる柔らかくて綺麗な声。たおやかに音から音から駆け巡るのが心地よかったです。細かいパッセージよりも、深い声でたっぷり歌う方が得意なのかな。「パリを離れて」では盛大な掛け声がかかっていました。でも、彼女は歌いながら体をやたらとくねらせるのがまるで演歌歌手みたいで、せっかくの美貌も帳消しになるほどの下品さを振りまいていました。ん〜〜〜、高級娼婦なのだから、もう少し品良くエレガントでいて欲しかったなぁ。舞台化粧もケバケバしいばかりだったし。ジェルモンの谷友博は、日本人にしては低音が良く響く歌手でしたが、歌唱は一本調子なので僕の好みじゃないです。僕に限らず評価の分かれる方のようで、カーテンコールではブーイングとブラボーが入り乱れていました。……と書いてくると何だか「新人公演」のようなおももちですね。でも、作品の力と合わさると、勢いのある素敵なプロダクションだったんですよ。歌手同士でのちょっとした芝居のやり取りも自然で、いかにこのプロダクションが劇団の「モノ」になっているのかが伺えて嬉しいもんです。
 もちろん、演出についてはあれこれ突っ込みどころ満載。でも、少なくとも、公演の浮浪者の酔っ払い集団だった昨日のオペラとは違って、貴族たちがパーティでの酔っ払うので、見た目がゴージャスです。やっぱりオペラって何千円、何万円と支払うものなのですから、豪華でなくてはいけません。劇場は社交場です!!(あくまで僕の好みですけどね)。おかげさまで本日は、ドレープタップリの幕だとか、紗を上手く利用して奥行きを感じさせる照明、衣装の豪華さと色合いの美しさ。オペラならではの豪華な気分を味わうことが出来ました。お金を払うからには非・日常で素敵なものを見せていただかなくては!! とりたてて豪華なプロダクションではないのですが、それでもやっぱり華やかな世界でした。そして、藤原歌劇団のコーラスは新国に比べて年配の方が多いので、パーティの場面での重みがでますし(余談ですが、見た目に重そうな方も多いです)、何よりも声に厚みがあるのが頼もしく、久しぶりにオペラの合唱を堪能した気がします。客席にコーラスの音が固まりになって飛んでくるのって快感! あ、東フィルも今日はまずまず。弦のすすり泣きが色っぽかったです。それと、第3幕で診察に来たグランヴィルがこっそり自分の財布からお札を抜き出して、ヴィオレッタの金庫にこっそりカンパする姿が印象的。


2006年01月16日(月)19:00-20:55
フジテレビ「グランドホテル」@東京国際フォーラム ホールC

 プレミア席 12500円 1階-12列-22番 (パンフレット:2500円)
 演出:グレン・ウォルフォード

 ( )内は宝塚月組公演時の配役
 エリザベータ・グルーシンスカヤ(ロシアのバレリーナ):前田美波里(羽根知里)
 フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵(青年貴族):岡幸二郎(久世星佳)
 フレムシェン(タイピスト):紫吹淳(麻乃佳世)
 ラファエラ(グルーシンスカヤの親友):諏訪マリー(天海祐希)
 エリック(フロント・デスク):パク・トンハ(汐風幸)
 ドクター・オッテルンシュラーグ(医師会会長):藤木孝(汝鳥伶)
 ヘルマン・プライジング(実業家):田中健(箙かおる)
 オットー・クリンゲライン(プライジングの会社の簿記係):小堺一機(涼風真世)
 サンダー(興行主):児玉謙次(大峯麻友)
 ウィット(カンパニー・マネージャー):田中正彦(真山葉瑠)
 ショーファー(運転手):岩崎ひろし(嘉月絵理)
 ズィノヴィッツ:清水明彦
 ジゴロ:西島鉱治(萬あきら)
 伯爵夫人:向高明日美(若央りさ)

 ブロードウェイ・オリジナルキャストを含んだカンパニーによる新橋演舞場での一ヶ月公演、宝塚歌劇団月組にてトップスター涼風真世のサヨナラ公演として(「クリンゲライン編」でした)、そしてアマチュア劇団による上演(宝塚のパクリ!?)と、渋いけれど実はお馴染みの作品の新プロダクションです。今までの公演はトミー・チューンによる芸術作品とでも言いましょうか、主役=演出家で、舞台上には柱と小さな開店ドアのセットのみ。小道具として数々の椅子とちょっとしたバーが登場するだけなのですが、ダンサー・トミー・チューンの面目躍起とでも言いましょうか、溢れるアイデアと舞台使いがまるで美術品を観るような印象を受けました。道具の動きまでがダンスのようだった記憶があります。今回は「普通のミュージカル」としての上演でした。博多座のロビーに装飾を施しました、という大掛かりな装置がまずはとっても綺麗。ブロードウェイ版よろしく、オーケストラはボールルームのバンドも兼ねているので舞台装置の上に鎮座。登場人物の一員としてなので、ちゃんとドレスだとかヘアメイクまでされているのが面白い演出。でも、転換不可の大きなセットが舞台に鎮座しているので、アクティングスペースがかなり限られてしまい、場面によってはチマチマした印象を受けてしまいました。元々、舞台というのは限られた空間ですが、空間の利用によっては、想像力で無限の広がりを感じることができます。しかし、今回はちと狭すぎました。そんなこんなで全体的に粗い印象。
 グランドホテルのとある一日、というこの作品、あらすじはあってないようなもんです。登場人物それぞれにドラマがありますが、どれが主話ということもなく、淡々と時間が流れていきます。「人生は人それぞれ、色々あらーな」といったところでしょうか。かくもすると、小さなエピソードの羅列で盛り上がらないまま終わりかねないところですが、さすがスターを揃えただけあって、楽しく時間が過ぎていきました。MVPは前田美波里。彼女の役は「引退したいと言い続けているバレリーナ」なので、クラシカルなチュチュやトゥ・シューズを身に着けてはいるのですが、踊りかけるそぶりを見せつつ踊らない、というもの。美波さんの歌は音域の狭さや歌いまわしの古臭さがあるのですが、これらがそのままグルーシンスカヤにぴったりはまる上に、何よりも舞台に華があるので、彼女が登場するだけで舞台が締まるのです。スターという役回りがこれほどピッタリはまる方も珍しいです。まさに適役。素晴らしいグルーシンスカヤでした。そして、男性のVIPは岡幸二郎。大澄賢也と公演期間の前半、後半に分かれてのWキャスト。そして、彼にとっては本日が初日。さすがに仕上がりの点では他キャストと安定感が違いました。岡さんといえども、探りながら歌い演じているのが客席からも丸わかり。歌もソロソロ、芝居も共演者にかなり助けられていた印象を受けました。とはいえ、テノールの明るい声が響き渡るこの役は岡さんにピッタリ。久しぶりに軽やかにスコーンと抜ける高音を堪能しました(彼は声質が軽くて明るいから、ジャベールよりもガイゲルン役の方が歌については合っています)。残念ながら見そびれてしまいましたが、ダンサー・大澄賢也がどこまで男爵のナンバーを歌いこなしていたのかが気になるところです。歌が売りの岡さんですら、まだ仕上がりが甘い部分がチラホラありましたもの。でも、長身でスタイルが良いので、元男役トップの紫吹淳が隣に来ても並びが綺麗なこと綺麗なこと。その紫吹淳は実年齢の半分位の役なので「大丈夫か?」と危惧していたのですが、意外とすんなりはまっていてホッ。元気に歌い踊っていました。宝塚時代の彼女は省エネの歌や踊りでかなりイライラしたこともありましたが、退団後はどの舞台を見ても力いっぱい参加していますね。彼女の場合、あまりにスタイルが良すぎる(&宝塚時代にセクシーモード全開のお色気ダンスやダルマの披露があった!)ので、プライジングから受けるセクハラの場面はあまり盛り上がりませんでした。脱いでも嫌らしくないし、性に対する戸惑いがさすがにねぇ、、、そこまでおぼこ娘には見えませんがな。……この三人に関しては、舞台上の存在感が別格でした。そして、カーテンコール時の拍手も大きかったです。
 ラファエラは宝塚版と違ってスミレコードなんてないので、レズビアン色が濃厚。グルーシンスカヤを愛しつつも、彼女がお金に困る日を22年間も黙って待ち続けるなんて、怖すぎます。諏訪マリーは恋に身もだえする姿が情念的で怖かった〜。エリックは妻がいて間もなく子供が生まれる設定ですが、上司の男性からのホモセクシュアルな関係要求の部分、これまたスミレ・コードに引っかかるので宝塚版ではあっさり流されていたけれど、今回の版では結構濃厚に迫られてました。パク・トンハは皇太子様よりも、ちょっと庶民がかった、今回のような役の方がシックリくるのでは? 藤木孝のドクターはブーイング。幕開きに音痴&声量なしの人がいきなりナンバーを歌いだすのはかなり苦しいものがあります。かつての小池修一郎作品「失われた楽園」における匠ひびきに続いて久しぶりにシートベルト・プリィズでした。結構重要な役かと思うので、もう少し歌唱力のある人が欲しかった〜。そうそう、ドクターがモルヒネを打つのは宝塚版でもありましたが、今回はブロードウェイ版と比べても、さらにアブノーマル感が漂ってました。ま、藤木さんのお芝居はいつもアブノーマルですけど。田中健のプライジングは嫌な奴でした。この手の役は難しいですね。どうしても日本人のエロオヤジにしか見えなくなってしまうので。今回は病気により全休演となってしまった岡田眞澄は田中健とは個性の違う方なので、お二人を見比べてみたかったです。さて、ブロードウェイ版ではトニー賞の助演男優賞対象(&受賞してます)、宝塚版では主役だったクリンゲライン役。今回は脇役です。小堺一機は声量がないので、彼の歌やセリフになると音声さんがマイクのボリュームをMAXに変えるのがモロわかりで、そうなると彼の声だけでなく、空中のちょっとした音まで拾ってしまうので違和感がありました。小堺さんは今後も舞台、そしてミュージカルにチャレンジなさるのであれば、しっかりヴォイス・トレーニングを積んでいただきたいものです。でも、彼の舞台は決して陰々滅々とならずに、希望があるのが素敵ですね。深刻にならない(なれない?)のです。個人的には最後のフラムシェンをパリに誘うくだりはも少し透明感があれば、とも思いましたが、彼のちょっと駄々っ子みたいなプロポーズもアリかな。
 と、駆け足で感じたことを書き連ねてしまいましたが、技量の差こそあれ、スターたる方々は自分の魅力を見せる事に関してプロフェッショナルで、それぞれのシーンを堪能させていただきました。決してクオリティが高いということはないのですが、満足度が高いです。人間色々あるならば、スターもいろいろやな、とちょっと劇と現実がリンクしている気分。楽しい時間を過ごすことができました。


2006年01月17日(火)16:00-20:15
国立劇場歌舞伎「曽我梅菊念力弦」@国立劇場大劇場

 2等席 2500円 1階-7列-54番 (パンフレット:800円)

 大工六三郎/新藤徳次郎:尾上菊五郎
 稲野谷後家おかや:澤村田之助
 大磯の虎/六三郎女房おきぬ:中村芝雀
 山姥の権繰九郎:中村信二郎
 曽我五郎時致/町抱え七郎助:尾上松緑
 稲野谷娘おその/稲野谷娘おはん:尾上菊之助
 工藤犬坊丸祐友:坂東亀三郎
 八幡三郎行氏:坂東亀寿
 石部屋倅才次郎/化粧坂の少将:尾上松也
 源実朝:尾上右近
 船越十右衛門:大谷桂三
 家主与九兵衛:澤村由次郎
 梶原平三景時/堤幸左衛門:片岡亀蔵
 近江小藤太成家/片岡幸之進:河原崎権十郎
 梶野長兵衛:市川團蔵
 小林妹舞鶴:市村萬次郎
 福島屋清兵衛:坂東彦三郎
 工藤左衛門祐経/千葉之介常胤:中村富十郎

 国立劇場の本公演デビューでした。歌舞伎は歌舞伎座で観るものと勝手に決め付けていたんです。だって、国立劇場って外観はともかくとして、市民会館みたいな色気も何もないオーディトリアムなんですもの。でも、あらためてこちらで観劇してみると……音響が良い!! 音圧が高いといいますか、一人一人の台詞がクッキリ&ハッキリ聞えてきて、非常に心地良いんです。歌舞伎の台詞ってリズム感が良いものが多いので、耳に至福のひと時でした。おまけに、舞台ってこんなに近かったかしらん? プロセニアムの幅が歌舞伎座よりもかなり狭いので、舞台全体が目に入るのはありがたいことです。とはいえ、通常の劇場に比べればやたらと横長なのには違いなく、舞台下手や花道での芝居には7列目といえどもオペラグラス必携です。持ってて良かった〜。
 さて、本日の作品ですが、国立劇場らしく、通し狂言です。実は日舞だとか唄の場面はほとんど意識を失う僕としては、全編お芝居というのは嬉しい限り。して「曽我梅菊念力弦」(そがきょうだい おもいのはりゆみ) は江戸時代には毎年お正月恒例の演目だったそうですが、何と168年ぶりに上演されるそうな。ハッピーエンドだし、歌舞伎ならではの見せ場がたくさんあるので、確かに向いてるかも。実際、上演時間がとても短く感じられる程で、とっても楽しかった〜。でも、その内容はというと「レ・ミゼラブル」なんですよ。不幸・不幸・不幸のオンパレード。壮絶な女の一生、それも姉妹によるW! 叶姉妹の逆ヴァージョンとでもいいましょうか。これでもか〜っていうほど次から次へと不幸が襲い掛かるんです。でも、ひぇぇ〜と言いながらも決して人生をあきらめない姉妹のパワーに元気をいただきました。他人の不幸は蜜の味、と言いますが「次は何が起こるのか?」と姉妹の次の不幸をついつい期待しちゃいました(実際、不幸が降り注ぐんですけど)。一つの不幸をいつまでもグダグダ引きずらずに、はい次の不幸!というテンポの良さが僕好みでした。ただ、僕はこの作品を観るのが初めてで、あらすじの予習もしていなかったのと、一人で複数の役を演じる役者が多かったので、正直、ストーリーは混乱しております(汗) ほら、歌舞伎の人って誰もが同じ顔に見えるので、余計にね。。。(良く、宝塚の人はみんな同じ顔に見えると言われますが、お互い様ですね。どちらも独特のメイク)。菊五郎に関しては「宝塚に演出に来る人だ〜」ということで顔がわかりましたけど(笑) おまけに、ただでさえ突拍子もないストーリーなのに、カットがかなり入っているとかで、幕が変わるたびに、別の作品を観ている気分。でもって、僕が理解した範囲でいうと、ロード・オブ・ザ・リングではありませんが、ある宝剣をめぐっての冒険活劇でしょうか。若手役者たちが軽業師のように体を張った芝居をしていて、僕のような歌舞伎に詳しくない人にも楽しめる作りだったのは嬉しい限り。
 いつものごとく、休憩時間には劇場内散策ですが、二階席のてっぺんの1500円の席に関しては、歌舞伎座よりも舞台が近いみたい。でも、椅子の感覚は狭いんです。歌舞伎をゆったり鑑賞してみたいよぉ〜。ということで、いかにも歌舞伎素人の感想でござんした。


2006年01月18日(水)14:00-15:55
フジテレビ「グランドホテル」@東京国際フォーラム ホールC

 S席 11000円 2階-2列-3番 (パンフレット:2500円)
 演出:グレン・ウォルフォード

 ( )内は宝塚月組公演時の配役
 エリザベータ・グルーシンスカヤ(ロシアのバレリーナ):前田美波里(羽根知里)
 フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵(青年貴族):岡幸二郎(久世星佳)
 フレムシェン(タイピスト):紫吹淳(麻乃佳世)
 ラファエラ(グルーシンスカヤの親友):諏訪マリー(天海祐希)
 エリック(フロント・デスク):パク・トンハ(汐風幸)
 ドクター・オッテルンシュラーグ(医師会会長):藤木孝(汝鳥伶)
 ヘルマン・プライジング(実業家):田中健(箙かおる)
 オットー・クリンゲライン(プライジングの会社の簿記係):小堺一機(涼風真世)
 サンダー(興行主):児玉謙次(大峯麻友)
 ウィット(カンパニー・マネージャー):田中正彦(真山葉瑠)
 ショーファー(運転手):岩崎ひろし(嘉月絵理)
 ズィノヴィッツ(弁護士):清水明彦
 ジゴロ:西島鉱治(萬あきら)
 伯爵夫人:向高明日美(若央りさ)

 昨日が休演日だったので、岡ガイゲルン男爵はこれで二回目のはずなのですが「もう半年は演じてまっせ」という顔で歌い演じてました。ナニモノなんでしょ、この人!?
 今回は二階席とはいえ、国際フォーラムホールCは客席の両サイドがコの字型に大きく張り出しているのでほとんど一階席。歌舞伎座の桟敷席で観るような感覚でしょうか。とても観やすい席でした(りすさんありがと〜)。ほとんど連続しての観劇なので、前回見落とした部分で新たな発見があったりして楽しいものです。例えば、トミー・チューン版だと「愛と死のボレロ」は盲目の伯爵夫人と金ナシのジゴロがお互いにないものを求め合っているのをあらわしているのですが、今回は盲目の伯爵夫人ではないようで、単なるダンサーカップルとして登場していたように思います。これは、ダンサーの資質もあるのでしょうね。ジゴロだとか伯爵夫人として踊っているのではなく、ダンサーとして踊っていたような気がします。でも、ダンスはホォ〜っと見ほれる素晴らしさでした。ちなみに、ジゴロ役の西島鉱治は
スターダンサーズ・バレエ団のプリンス、西島千博の弟さんです。そして、片目を失ったか失明したかで眼帯をはめていたドクター・オッテルンシュラーグですが、今回の版ではファントムのような不気味がメイク! 僕がホテルマンだったら、ちょっとみすぼらしいクリンゲラインを門前払いするならば、ドクターの方を追い出したいものです。そして、一番の違いはというと、アンサンブルがやたらと舞台に登場すること! ジミーAとジミーBが活躍する「Maybe My Baby Loves Me」では男性アンサンブル総出演でみんなで「ジミーです」と名乗っちゃうし、電話交換手がやたらとロビーに登場して歌や踊りに絡むし、何よりも労働者たちが仕事道具を持ってお客様の前に姿を現すんです。なまじ、写実的なロビーを用意されているので、ちょっと違和感を感じてしまいました。
 でも、なんだかんだ言っても、この作品好きなんです。ホテルだし、貴族の黄昏が描かれているし、バックステージ物でもあるし、何よりも品と色気があるのが良いですね。1920〜30年代というのは、未来に向けての夢と(含む悪夢)、過去の栄光とが見事に調和した、刺激的な時間で、ドレスにダンスに音楽に、エネルギーを感じます。


2006年01月18日(水)19:00-21:45
音楽座「とってもゴースト」@東京芸術劇場中ホール

 B席 5670円 2階-E列-38番 (パンフレット:無料)

 入江ユキ:鈴木ほのか
 服部光次:安中淳也
 かたまり様:鳥居かほり
 ガイド:広田勇二

 前回の「マドモアゼル・モーツァルト」はナンバーが全曲入れ替わっていたのと、演出にも大幅な変更が加えられていて、ほとんど別作品としての再演(という言葉がふさわしいかも疑問)でしたが、今回の「とってもゴースト」は耳に馴染んだ八幡茂のナンバーがそのまま、台本や演出もほぼ今までのものを踏襲しているとあって、安心して観劇できました。音楽座は音楽スタッフに恵まれていて、耳に残るメロディが多いですよね(前回の「マドモアゼル・モーツァルト」を除く)。大好きな曲が再現されるだけで嬉しくなっちゃいます。
 音楽座というと「野暮ったい」という声を良く聞きますが、今回も野暮野暮です(あ、書いちゃった)。おまけに出演者は素人臭くて、大学のミュージカル研究会だとか、どこかの市民ミュージカルを観ているような気分。出演者もおしなべて地味な役者揃い。でも、それが作品に合っているんです。「生きているって素晴らしい」というような直球のメッセージを投げてくる団体なので、出演者も熱くなってくれてこそはじめてこちらもそのメッセージを受け取れるような気がします。出演者が醒めていたら、きっと客席でこそばゆくてモゾモゾしてしまうことでしょう。
 さて、今回主演の鈴木ほのかというと、お嬢さん役専科というイメージがあり、バリバリのデザイナーにて女社長という役をどうこなすのか楽しみにしていたのですが、完全にミスキャスト。「この世界で生き残りたいなら、私に付いて来るのよっ♪」と格好良く登場するプロローグの時点でアンサンブルに埋もれてしまいました。キリリとした良い女、というのが彼女の演技の引き出しに入ってなかったことと、衣装のあまりの似合わなさに唖然。成功者としての貫禄がなく、細かな部分にも細かいデザイナーという触れ込みなのに自分の衣装の着こなしが汚いのにはビックリものです。そして、今まで結構お馴染みの女優さんの割りに、鈴木ほのかが踊っているシーンというのが思い浮かばないのですが、ダンスはとっても下手でした。カンパニーの中で悪目立ち。おまけに、髪型も野暮ったくてどこかの大学教授みたいだし、衣装はシワシワ、おまけにハイヒールでの歩く姿はお猿さん(ハイヒールでの歩き方が似合わないことに関しては劇団四季の保坂○寿と並びます)。単なるヒステリックなオバチャンにしか見えませんでした。これは、彼女のみならず、スタッフの責任もあると思うんですよね。主役が素敵に見えなくてどうするんでしょう。彼女としては、歌はさすがだし、高慢ちきな雰囲気は良く出ていたけれど、位取りが今後の課題ではないでしょうか。舞台の真ん中に立つ人としては貫禄だとか、自分の見せ方が頼りない気がします。最初から最後まで嫌なオバチャンのままで、芝居の上でもカタルシスが得られませんでした。マッタク、音楽座のミュージカルで泣けないなんてどういうことよ!? 今回は観そびれてしまいましたがWでキャスティングされている浜崎真美の方が、この役には合っていたかと思います。衣装も音響も演出も鈴木ほのかに合わせてのてこ入れが必要だったのでは? 鈴木ほのかならば、入江ユキではなく、もっと別の役だったら良かったのにと残念な気持ちです。そして、入江ユキのような役は花總まりが演じたらきっと絶品だろうな、なんて思っております。
 安中淳也はいかにも音楽座という雰囲気を持った、素朴な俳優さんでした。社長のシーンでは若さが出てしまいましたが、自分の思いを上手に伝えることができない大学生を見事に演じていました。芝居のつたなさが、役の上での不器用さとリンクして、おそらく今の彼ならではの素敵な出来。役者と役とが出会うタイミングの良さを感じました。鳥居かほりは台詞の通りの良さがベテランの技。かたまり様昇天の場面ではダンス・テクニックだけではなく、芝居心のあるダンスが見物でした(彼女の外反母趾がどうしても目についてしまいましたが、ダンスには影響しないのやろか?) ガイドの広田勇二は今までのほわっとした雰囲気のガイドさんではなく、硬質な印象。しっかりしてそうなのに、入江ユキに振り回されて、ボロボロになっていく過程が面白かったです。そして、アンサンブルでの参加ですが、五十嵐進や佐藤伸行といった、古参メンバーの顔を見るとホッとします。今後は音楽座内から新しいスターが誕生しますように!! あ、オケはシンセ多用のいつもの音楽座サウンド。音響さんがオケの音量をやたらと大きくしていたので、出演者はみなさんどなり歌。せっかくのナンバーも歌詞が聞き取れないのが残念でした。ユキも光次もアンサンブルもどなり歌。あらら。
 千秋楽とあって、カーテンコール時には盛大な「ブラボー」が飛んでいました。愛されている劇団というのは、客席にいても気持ち良いですね。通常、ミュージカルというと女性ファンが多いものですが、音楽座に関してはおじさんのファンが多い気がします。今日も会社帰りの方を結構見かけました。ファンタジーに走りすぎず、高度なテクニックにも走らず(実際は難しいのでしょうが「僕にも出来そう」と思わせるのがポイント!?)


2006年01月19日(木)18:30-21:30
「BATBOY THE MUSICAL」@東京厚生年金会館

 S席 7800円 2階-3列-49番 (パンフレット:1500円)
 演出:吉川徹

 バットボーイ:森山未來
 シェリー:シュー
 パーカー:福井貴一
 メレディス:杜けあき
 アンサンブル:藤本隆宏/林アキラ/石原慎一/伽代子/西村直人/結樺健/中川菜緒子/富田麻帆/染谷妃波

 実は密かに「来日公演でもあるまいし、なして厚生年金で三日間だけの東京公演なの?」と期待していなかったのです。が、出演者は豪華だし、何よりも3000円という大幅値下げのチケットだったので足を運んでみたところ……当たりでした。行って良かった、観てよかった。生の舞台というのは、チラシからだけではその良し悪しってわからないものですね。もちろん、作品に対して会場が大きすぎ、また残響がありすぎて歌詞も台詞もクリアではないという不満はありましたが、客席のノリも良く、そんな不備をも飲み込んでしまう勢いがありました。これは嬉しい。
 アメリカのB級コミックのような味わいの「BATBOY」ですが、今回の成功は何といってもアンサンブルのレベルの高さによるところが大きいです。一人で複数の役を受け持つのですが、まぁみなさん芸達者なこと。真面目な役、女装、動物役、何でもありなんです。いかにもコミックなオーバーなキャラクター付けを楽しんでいるのが客席にも伝わり、もしかしたら、プリンシパルキャストよりも人気者たちだったかもしれません。客席いじりも媚びることなく、独特のノリでサラリとこなすのでテンポはあるのに下品にならず、その擦れ擦れの線引きがお見事でした。そして、みなさん歌いだすと滅茶苦茶上手いんです。そりゃ、声楽専科みたいな方のお名前もチラホラお見受けできますが、音圧といい歌いまわしといい、アンサンブル感覚が抜群の集団で、ソロにハーモニーに存分に楽しませていただきました。ロック・ミュージカルでアンサンブルが楽しめるって結構珍しいことなので、これだけでも拍手モノ。もちろん、終演後は大歓声があがりました。
 とはいえ、プリンシパルも負けていません。福井貴一は「この人、ちょっと怪しい」という雰囲気作りが面白く、いかにも科学者然とした風貌と、音域バッチリで響き渡る歌声が冴え渡っていました。福井貴一の舞台はいくつか観ていますが、今回がベストかも。そして、杜けあきは出てくるだけで安心印。クライマックスの芝居が盛り上がったのはカリンチョさんの熱演があってこそ。宝塚時代からですが、この人は大芝居を決めるのが上手いですね〜。派手な台詞や感情表現がピタリとはまるのですから、並々ならぬ演技力を感じます。それにしても、何て頼りがいのあるお母さん役だったことでしょう! そして、福井貴一&杜けあきの娘として登場のシュー。ワガママであれこれウルサイ娘から、愛情で一人の男を包み込むようになる女への変貌過程が見事でした。そして、今回のベスト・キャスティングはというと森山未來。森山未來のバットボーイか、バットボーイの森山未來かと言っても良い位ピッタリの役どころでした。ダンサーならではのしなやかな肉体と、牙やカラーコンタクト、独特の髪や付け耳までもがピタリとはまるその個性。冷静になると歌なんて音痴スレスレの下手っぴなのですが、そんなことはどうでも良いと言い切っちゃても良い位、輝きまくっていました。登場時の野獣そのものの動物っぽさ、マイ・フェア・レディばりに紳士教育を受ける際のおかしさ、野獣と人間との狭間で苦しむ悩ましさ、そして生き生きとした躍動感。これほどまでにピッタリの役にめぐりあい、共演者にも恵まれての主演。僕が俳優だったら絶対嫉妬しちゃいます。ややアイドルがかった現在ですが、今後、どのような役者になるのか楽しみです。今回以上の役に恵まれますように!


2006年01月21日(土)18:30-21:05
宝塚歌劇団OG「エリザベート10周年ガラコンサート」初日@東京芸術劇場中ホール

 S席 10000円 1階-F列-15番 (パンフレット:1000円)

 トート(死、黄泉の帝王):麻路さき
 フランツ・ヨーゼフ(オーストリア=ハンガリー帝国皇帝):稔幸
 エリザベート(オーストリア=ハンガリー帝国皇后):白城あやか
 ルドルフ(オーストリア=ハンガリー帝国皇太子):絵麻緒ゆう
 ルイジ・ルキーニ(エリザベート暗殺者):樹里咲帆
 エルマー・バチャニー(ハンガリーの革命家):成瀬こうき

 マックス侯爵:大峯麻友
 皇太后ゾフィー:美々杏里
 ヴィンディッシュ嬢:真樹めぐみ
 リヒテンシュタイン伯爵夫人:秋園美緒
 ルドヴィカ公爵夫人:久路あかり
 ルドルフ(少年時代):朝澄けい
 ヘレネ:愛田芽久

 大作の星組、コスプレの星組、健在です。ガラコンサートと銘打っているものの、出演者は全員現役時代の全衣装を着倒します。メイクだって、会場にあわせてかちょっと薄めの方もいましたが、白塗りトート閣下をはじめ、このまま東宝劇場の舞台に立っても違和感ありません。舞台上にはバンドが鎮座し、上手・中央・下手に川の字の通路が設置されていました。そして、舞台後方と両脇には柱が数本。本公演に比べればとってもシンプルではありますが、観客の想像力をかきたてる名演出で(修ちゃん偉いッ!)、個人的にはとっても満足なものでした。あれ、バンドの面々は舞台に出ずっぱりなのに……全然記憶にない(汗) 黒子としては完璧だったのか、単に僕がファンモードでお目当てさん以外は目に入ってなかったのか(多分後者)。ダンスナンバーにカットはあったものの、ほとんどそのままの上演で、星組版の東宝劇場公演と上演時間はほぼ同じ(当時の日記を見たら、2時間40分でした)。フィナーレはないはずなんだけど、はて、どこがどう伸びたんでしょう?
 さて、今回のお目当ては9年ぶりに舞台復帰のあやかベート。宝塚史上最強の娘役だと僕は勝手に思っているのですが、9年というブランクが信じられない女王様ぶりでした。決して自己中心的なスターではないのに、存在感が大きいのです。出てきた瞬間に「綺麗〜」と歓声があがりました。おまけに(帝劇で一路ベートを見慣れているせいか)子役時代も全然違和感なく、可愛らしい元気なシシィを演じてました。この部分、父親やルキーニとのちょこまかした芝居が面白くてさっそく釘付け。そして、皇后としての自覚とともに、高貴なオーラを放ち出す様は相変わらず圧巻。ハンドマイクを持ってなので、芝居もしにくいでしょうが、心境の変化、立場の変化というのを細かく細かく芝居していて、非常に見ごたえがありました。あやかちゃんは決して「歌手」というタイプではなく、技術点は高くないのですが(今回も低音は音程が怪しくなり、高音は苦しそうでした)、芸術点とでも言いましょうか、感情表現にかけては絶品なのです。台詞も歌も音色をあれこれ切り替えているのと、スケールの大きな歌唱なので、いつの間にやら技術が気にならなくなるのが不思議。高貴なのに色気があるので、もうそれだけでトート閣下が惚れちゃうのも、フランツが皇帝の義務を破っても、皇太后が息子を奪われまいと反発しちゃうのも納得。あやかちゃんの特徴として、直接的な感情表現ではなく、押さえているはずの感情が思わずほとばしり出てしまう表現ゆえに、妖しい感じになってしまうのでしょうか。キリリとした射るような眼差し、男を惑わすような流し目も健在。「いい?トップ娘役とはこうあるべきなのよ!」という貫禄と自信を見せ付けられた気分です。今すぐにでも現役復帰していただいても結構です。ヨダレ垂れ流しで堪能してきました。
 そして、もう一人のご贔屓のトート閣下=麻里子さん。鳳蘭率いる狸組への出演はあるものの、これだけ大きな役は久しぶり。ルックスこそ現役時代そのままの美しさを保っていましたが、低音がほとんど出ない状態。ファンの贔屓目、贔屓耳をもってしても大汗状態なのですが、そんなことを考えるのもほんの一瞬。何といっても、麻里子さんは「迫り上がるだけで拍手喝采」という別格スターオーラを誇った方ゆえ、今回のように「元トップがズラリ」の座組みであろうと、実力面では逆立ちをしてもかなわないメンバーにかこまれていようと、主役に君臨していることについては何の疑問もないのです。舞台の中心に立つのがこんなにも似合う人というのも珍しいです(鳳蘭、大地真央、麻路さき、というのが舞台中心スターの御三家!?) 客席から登場という演出で、麻里子さんが気づけばすぐ横に立っているのに気づいた時にはベルばらにおけるシッシーナ夫人かモンゼット夫人になりそうでした。あまりの眩しさにクラクラです。私生活を感じさせない、いかにもスターという風情にメロメロ。下品にならない程度に大きく感情にあわせて変わる表情、相変わらずいやらしい指使い、長い手足と骨太の体を生かした衣装の着こなし、ポーズの一つ一つにも手を抜くことなく、非常にゴージャス役作り。相手役が元コンビのあやかちゃんともあって、二人の呼吸は息ピッタリ。……ということで、非常に重厚かつ濃厚なロマンとして仕上がっていました。ま、星組は元々コッテリ・タップリというカラーがあったのですが、その中で最も妖艶なお二人でした。歌舞伎の見得に似た部分があって、場面場面で絵になるようなポーズをピシッと決めるあたり、いかにも大劇場スターっぽくて僕は大好きです。あ、後半になるに従い、客席に乗せられてか、歌の調子も良くなり、高音はかなり気持ち良く響いていました。嬉しい。
 主役コンビが濃厚な中、爽やかな貴公子として登場するのが稔フランツ。音域の広いナンバーを見事にこなしていました。それでいて、声質が細いのと、絵から抜け出したような端正な二枚目なので、美しき皇帝でした。そんな彼が、エリザベートに拒絶されて落ち込む場面、息子にも裏切られて愕然とする場面、トートとの最終討論場面、どれもこれも「ガラガラ」と彼のバックで何かが崩れ落ちるような音が聞えてきそうでした。繊細なんだけれど、決してそれに屈服することなく、淡々と皇帝の義務を果たしていく姿に涙を覚えました。
 性格的にはエリザベートと通じるものがあるものの、フランツの心臓を受け継いでしまったかのような絵麻緒ルドルフ。実は「現役時代の衣装が入るのか?」と心配した時期もあったのですが、幕があがってみれば、スッキリとしていてキリリとした軍服姿で登場。現役時代にタイムスリップしたみたいでした。歌に関しては最も現役時代に近かったかな。彼女は雪組に移動してからは結構姉御肌だったかと記憶しておりますが、麻里子さん、ノルさんと並ぶと途端に弟分になるのが面白かったです。安心しちゃうのかな? 末っ子気質爆発ですね。今回のコンサートで唯一振り付きで繰り広げられた「闇が広がる」は圧巻でしたし、エリザベートに泣きつくものの助けを拒否されて動揺するあたり、「星組メンバーが揃って良かったね」とこちらも幸せ気分。二人に絡むこと絡むこと。他キャストとの共演だとどうなるんでしょうね。ということで、まるで9年前のプロダクションがそのまま再演されたかのような錯覚を覚える状態でした。
 さて、宙組公演ではルドルフを、花組公演ではフランツを演じた樹里さんですが、今回は座組の関係でルキーニ担当。これが、初役とは思えない大ヒット。チンピラを演じさせたら彼女の右に並ぶ人はいないかも。ファンでありながら、高貴な役は似合わないなぁ、と密かに思っていたので、今回のコンサートでのルキーニ担当はとっても嬉しいです。(本公演もルキーニが観たかった!!) 樹里ちゃんは台詞が明瞭だし、歌だって歯切れ良く、さらには芝居までチャラチャラしているので、イタリア人テロリストとしては実に素敵でした。でも、星組メンバーに囲まれるとカラーの違いがクッキリ。現役時代は出演中の公演にアクセントを与える、良い意味での起爆剤的存在だったのですが、麻里子さん率いる元・星組メンバーの前では格の違いがクッキリ。彼女がどんなに暴れようと真ん中のトリオがびくともしないんですもの。おかげで、下級生にもかかわらず、遠慮なくパワー前回の樹里ちゃんを観ることができましたが「トップになれなかった原因はこれ?」という悲しい現実も見せ付けられた気分です。フィナーレのラインナップでも、ゴージャスな中に一人だけ一般人が混ざってしまったかのよう。ノルさんサヨナラ公演のベルばらに出演した時にはそんなこと感じなかったのですが、やはりそれだけ現代のスターさんなんでしょうね。成瀬エルマー、真樹ヴィンディッシュ、愛田ヘレネに至っては、メイクも薄かったけれど、押し出しの悪さゆえにちょっともったいない気がしました。決して、醒めているというわけではないのですが、あまりに星組出身者が揃ってしまったがために、他組カラーの方は割りを食ってしまった感じ。だって、ビビアン・ゾフィー、秋園リヒテンシュタイン、久路リヒテンシュタインの三名は元々娘役というよりも女役の落ち着きがある方々で、決して派手な芸風ではないのに、コッテリメンバーに負けない存在感はありましたもの。みなさん退団して外で仕事をしていたり、家庭に落ち着いてて、久しぶりの舞台復帰だったりと色々なのですが、それでも、瞬時にして元所属組のカラーを醸し出すのは面白いものですね。
 ……ということで、すっかりファンモードで「星組公演」を堪能してまいりました。堪能という言葉はピッタリじゃないですね。だって、帰宅すると同時にヘナヘナとベッドに倒れこんでしまいましたもの。おまけに、大雪だというのに汗びっしょり。脳内はすっかり犯されてしまい、思考回路は完全ストップ。いやぁ、こんなに興奮した公演は久しぶりです。一昔前の芸風と言われてしまえばそれまでなのですが、歌舞伎調とでも呼びたくなるような、タップリとしたスター芝居こそ、僕が宝塚に求めているものなので、数日間限定とはいえ、このメンバーが一同に会してくれたのは感涙ものです。さて、来週は全く個性・芸風の異なる別キャストでの公演です。ズンコトート、みどりベート、タータンルドルフ……歌合戦が楽しみです。


2006年01月24日(火)11:00-14:05
宝塚歌劇団花組「落陽のパレルモ」「ASIAN WINDS!」@東京宝塚劇場

 B席 3500円 2階-14列-51番 (パンフレット:1000円)
 演出:植田景子(落陽のパレルモ)/岡田敬二(ASIAN WINDS!)

 ヴィットリオ・ロッシ(イタリア解放軍の闘士、イタリア統一後、政府軍将校となる。シチリア貴族の父と貧しい母との間に生まれる):春野寿美礼
 アンリエッタ・クラウディア・カヴァーレ(シチリアの名門貴族・カヴァーレ侯爵家の長女):ふづき美世
 マリア・コンツェッタ・カヴァーレ侯爵夫人(アレッサンドロの妻、アンリエッタの母):高ひづる
 マリオ・フランチェスコ・ディ・ドンブイユ侯爵(シチリア一の有力貴族):萬あきら
 アレッサンドロ・ファブリッツィオ・ディ・カヴァーレ侯爵(カヴァーレ侯爵家の当主、アンリエッタの父):夏美よう
 エルヴィラ・フェリーチタ・マリア・ディ・カヴァーレ(ヴィットリオとアンリエッタの間に生まれた長女):梨花ますみ
 ヴィットリオ・ファブリッツィオ・ロッシ・ディ・カヴァーレ(エルヴィラの孫、オペラ演出で認められた新進の芸術家):彩吹真央
 ロドリーゴ・サルヴァトーレ:フォンティーニ伯爵(シチリア名門貴族の御曹司、アンリエッタの求婚者):真飛聖
 ニコラ・ジロッティ(ヴィットリオの幼馴染で親友):蘭寿とむ
 ジュディッタ・フェリ(ヴィットリオ・ファブリッツィオの恋人):遠野あすか

 春野寿美礼というと「スーツ専科」というイメージがあるのですが、今回はとっかえひっかえの軍服物。新鮮な印象を受けます。でも、彼女っていっつも同じメイク・同じ髪型ではありませんか? 手抜きを感じてしまいます。。。と、いきなり苦言ですが、本日の観劇日記は春野寿美礼ファンはお読みにならないことをオススメします。。。
 まずは、前回指摘した歌ですが、ますますおかしいことになっています。具体的に言うと、最後の音だけ裏声にひっくり返す、フレーズの中でまるでボリュームつまみをいたずらで上下した時のようにウニョーンと音圧を変える、鼻の下を伸ばした時のような発声なので歌詞がこもってしまう。おまけに台詞にいたっても、押しつぶした低音で話すので声量はないし、一息の中でやたらと発声方法を変えるので聞き手の受け入れ体制が整わず、結局何を話しているのが全然わからない。小さな劇場ならばいざしらず、東宝劇場でこんなチマチマしたことしててどうするんでしょう? 個人的には愛華みれサヨナラ公演の「ミケランジェロ」の頃の伸びやかな歌唱、実質的なお披露目公演だった「琥珀色の雨にぬれて」や「あかねさす紫の花」「エリザベート」の勢いで押し切っていた頃までは応援していたのですが、その後はどんどん観客を無視した方向になってきていて、今やすっかり苦手なスターさん。思うに、手抜きを感じる芸って僕は駄目なんですよ。彼女なりに台詞に感情を入れているのでしょうが、それが客席に到着する前にスコーンと落ちてしまうので、主役なのに台詞が立たず、相対的に脇の芝居がクローズアップされてしまい、作品として盛り上がらないで終わってしまうんですよねぇ。そもそも、ラブロマンスなのに、主役コンビが全然ラブラブに見えないし、主題歌のシーンやダンスシーンでは手抜き発声、ひょろひょろダンスなので盛り上がらないのです。ダンスといえば、ショーのフィナーレで大階段前で一人でソロを踊るシーン、膝が故障していたことを差し引いても格好悪かったなぁ。力を抜くのと手を抜くのって違うと思うんですけど(怒) ダンスといえば、相手役のふづき美世もヘナヘナと踊っていました。専科入りが決まった遠野あすかが真横ではつらつと踊っているだけに、トップの面目丸つぶれ。サヨナラ公演なのに。。。
 逆に、今まで苦手だったのに「今回良いじゃないの!」と思ったのが梨花ますみ副組長。頑固でちょっととっつきにくそうなおばあちゃんなんだけれど、憎まれ口に隠れた孫への愛情が溢れていて、今まで僕が観てきた中ではベストパフォーマンス。嫌い→好きが一瞬にしてひっくり返ったのには自分でもぶったまげ。そして、成長したな、と思ったのが真飛聖。骨太の歌唱とハッキリした口跡により、歌詞だとか感情が客席にまでちゃんと飛んできていました。「ちゃんと伝えよう」という思いがあるのでしょうね。芝居歌、ショーの歌としては「聞えてナンボ」ですから、今後一化けあるかもしれません。ちょっと楽しみ。そして、さすがの星組出身者と言いますか、軍服の扱いが非常に綺麗でした。


2006年01月24日(火)18:30-21:45
新国立劇場「モーツァルト:魔笛」@新国立劇場オペラ劇場

 D席 5670円(会員割引) 3階-1列-1番 (パンフレット:800円)

 指揮:服部譲二
 演出:ミヒャエル・ハンペ
 管弦楽:東京交響楽団

 ザラストロ:アルフレッド・ライター
 タミーノ:ライナー・トロースト
 弁者:長谷川顯
 僧侶:加茂下稔
 夜の女王:佐藤美枝子
 パミーナ:砂川涼子
 侍女T:田中三佐代
 侍女U:加納悦子
 侍女V:渡辺敦子
 パパゲーナ:諸井サチヨ
 パパゲーノ:アントン・シャリンガー
 モノスタトス:高橋淳
 武士T:成田勝美
 武士U:大澤建

 劇場に足を踏み入れた途端、劇場スタッフが総出だし、オペラファンにしてはちょっと雰囲気があやしいSPっぽい方が何人も見受けられたので、もしやと思っていたら、案の定、ロイヤルパフォーマンスでした。二幕だけですが、美智子皇后がご臨席(いつも全幕はご覧にならないんですよね。可哀想。。。)。新国に限らず、何度か皇族の方がいらっしゃる公演というのは体験しているのですが、華やかさだとか自然体でいて貫禄があるということにかけては美智子さまがピカイチの気がします。上品に静かに着席し、ちょこっとお辞儀するだけですが、すっかり本日のスターの座をさらわれてしまいました。お辞儀をされたり、手を振られたりした観客からは舞台に対する「ぶらぁぼ」に負けず、大きな歓声があがっていました。客席の空気は和むし、ちょっと得した気分になるし、ロイヤルパフォーマンスって個人的に大好き♪ 
 新国として三演となる「魔笛」ですが、個人的にはもうちょっと華やかな演出が好きなんです。でも、あれこれ遊びのアイデアがふんだんに盛り込まれているし、のぼぉイエローの衣装は綺麗だし、これはこれで観て満足のプロダクション。歌手も全体的に安定していて「この人駄目やわ〜」ということもなく、ほとんどの役に聞かせどころがあるという「歌合戦オペラ」でした。個人的にも大好きなナンバーが次から次へと登場します。教団だとか、修行だとか、僕にとっては「胡散臭い」という設定もあるのですが、おもちゃ箱をひっくり返したかのような作品なので、その時の気分に応じて勝手に楽しめるのが「魔笛」のありがたいところです。
 爽やかな容姿と長身でスマートなのに貫禄のあるライター(久しぶりに低音がちゃんと出るザラストロ!)、宝塚のフェアリータイプの男役を思わせるトロースト、コロコロ・キラキラとした超絶技巧を披露した佐藤美枝子、柔らかくて伸びの良い声をまろやかに響かせた砂川涼子、クルクル変わる表情とアドリヴが楽しかったシャリンガー(同じことを日本人がやると嫌味になるんですよね、何故だ?)、それぞれお気に入り部分があって嬉しかったです。音楽って、聴きながら自分の魂が溶けていくような気持ちになって陶酔するのも好きなのですが、「パ・パ・パの二重唱」のように「明日はきっと良い事がありそう」と元気になるようなものも幸せ感いっぱいで後味が大変よろしゅうございます。飲んでもないのに酔っ払い状態になって帰宅するのではなく、元気にノシノシ新宿駅まで競歩しながら帰宅するという違いなのですが……読んでてわかりますかしらん? 服部譲二の指揮も流れが良くって好きでした。でも、彼って貫禄ないんですよねぇ。カーテンコールで一人だけちょこまかしてて、マエストロというよりも、ベルボーイみたいでした。指揮者・演出家(ハンペじゃないですよ。誰とは言えませんが・笑)は堂々と登場した方が格好良いなぁ、と思いました。


2006年01月24日(火)21:30-22:15
東京ディズニーシー「ディズニー・リズム・オブ・ワールド」@ウォーターフロントパーク特設ステージ

 大人・中人・小人共通料金:3800円

 ニューヨーク:
   世界のリズムが集うニューヨーク。シルバーに輝くアールデコ調のステージでミッキーがライブのはじまりを告げます。
 ヨーロッパ:
   ドナルド・ダックの率いるヨーロッパ。パープルを基調としたダンサーたちが、陽気で、華麗なダンスを披露します。
 アジア:
   アジアンムードいっぱいのチップ&デール。様々な神々や精霊、花をモチーフにした衣装のダンサーがあでやかに舞い、ステージを彩ります。
 中央アメリカ:
   太陽をイメージした衣装のプルートを筆頭に、カリブの太陽と海を象徴したリズムとダンスで盛り上がります。
 アフリカ:
   サバンナや動物たちをモチーフとしたイエローの衣装のグーフィーやダンサーたちが勇ましく登場します。
 フィナーレ

 ショーの本編は30分ほどなのですが、前座としてドラマーたちによるパフォーマンスがあります。これがblast!並みの楽しいパフォーマンスで、ちょっと怪しい日本語で大盛り上がり。今日は寒さでみんなが手袋をはめているので、拍手の音が「パフパフ」という音だったのですが、「手袋外してください」と言いいたいところ「手袋貸してください」なんて言い出すので、観客一同「???」となってしまいました。もちろん、ディズニーファンは親切ですから、あちこちから差し出される手袋たち。……ネタだったんやろか?
 ショーは非常にスピーディです。各パートごとに全然違うリズムが登場するのですが、民族服に身を包んだダンサーたちがド迫力で踊りまくるので、あっという間に会場は興奮の坩堝。パートごとに音楽が終了するのではなく、花道に待機している次パートのダンサーがセンターを奪い取るような演出(音楽はノンストップ)なので、来たぞ、来たぞというワクワク感に充ちています。おまけに、パートごとの個性が全く異なるので、短時間にも関わらず、非常に充実感があります。そして、何よりも、ブラスバンドのレベルがかなり高く、金管もパーカッションも小気味良く超絶技巧を披露。凄いことしているのに涼しい顔してサラリと披露するのが何とも粋な面々です。毎年初春に上演されてきたこのショーも、今年がファイナルだとか。あまりの人気に良席を確保するには一時間前からの席取りが必要なのですが、それだけの価値はあるショーです。僕はTDSにアフター6でインパークした際は、「アンコール!」→「リズム・オブ・ワールド」というコースが好きなのですが、新しいショーに期待しつつも、寂しくもなります。


2006年01月27日(金)14:00-16:30
宝塚歌劇団OG「エリザベート10周年ガラコンサート」@東京芸術劇場中ホール

 A席 8000円 2階-D列-42番 (パンフレット:1000円)

 トート(死、黄泉の帝王):姿月あさと
 フランツ・ヨーゼフ(オーストリア=ハンガリー帝国皇帝):稔幸
 エリザベート(オーストリア=ハンガリー帝国皇后):大鳥れい
 ルドルフ(オーストリア=ハンガリー帝国皇太子):香寿たつき
 ルイジ・ルキーニ(エリザベート暗殺者):樹里咲帆
 エルマー・バチャニー(ハンガリーの革命家):成瀬こうき

 マックス侯爵:ちあきしん
 皇太后ゾフィー:美々杏里
 ヴィンディッシュ嬢:真樹めぐみ
 リヒテンシュタイン伯爵夫人:秋園美緒
 ルドヴィカ公爵夫人:久路あかり
 ルドルフ(少年時代):朝澄けい
 ヘレネ:愛田芽久

 先日の初日が「星組ヴァージョン」だとしたら、今回は「TCAスペシャルヴァージョン」とでも呼びましょうか。最近でこそなくなりつつありますが、組カラーが濃厚な時代の生徒さんが多いので、組み合わせの妙を楽しむことができました。
 して、本日のトート閣下は元宙組の姿月あさと。星組版の麻里子さんは大芝居と濃厚なエロスが売りでした。それに対してズンコさんは、圧倒的な音域と声量が売り。個性としてはサッパリ爽やか。よって、Wキャストというと「○○さんの方が良いよねぇ」とつい比べてしまいがちですが、このお二人はあまりに得意分野・苦手分野が異なるので、比較の対象にはならないのです。どちらが好きか、という次元の話になります。さて、宝塚関係のイベントには久しぶりに登場のズンコさんですが、普段着としてトートの衣装を着ていそうな麻里子さんに対し、ズンコさんは久しぶりのコスプレに照れていたらしいけれど、相変わらずのスタイルの良さで、格好良かったですよ。歌ではシャウトが素晴らしく、ロックコンサートの会場みたいな熱気。「最後のダンス」なんて、今にも踊りだしそうな迫力。やはり元宙組で、本公演ではルドルフを演じていた樹里咲帆(花組版ではフランツ、今回はルキーニですが)も、張り上げ系が得意なので、ズンコ〜ジュリの掛け合いは非常に聴き応えがありました。
 ズンコさんがコンサートタイプならば、花組出身の大鳥れいはミュージカルタイプ。星組の面々は歌舞伎型とでも言いましょうか、様式美で見せるのに対し、リアルな芝居で見せるのがみどりちゃんならでは。面白いのは、現役時代とは違って、OGになった途端、みなさん自己主張が強くなっていること。みどりちゃんも、トートに迫りまくり、対抗しまくりで、場面によってはズンコさんもタジタジとなっていたような印象を受けました。そういえば、ズンコさんはコッテリ・タップリの芝居には縁がない人だったので、今回の座組みはかなりハードだったかと思われます。あやかちゃんもみどりちゃんも並の男役では支えきれない迫力がありますから。ま、みどりちゃんの感情表現豊かな歌唱(「私だけに」のドラマ構成はみどりちゃんが圧巻)に対して、つかみ所のない歌唱のズンコさんという組み合わせは「生と死」という趣があって、なかなか面白い組み合わせでした。個人的には、ズンコさん〜お花さまというアッサリ・サッパリコンビの方がシックリきましたけれどね。よって、一幕最後のトート・エリザ・フランツの三重唱は、一人一人は魅力的なのに、アンサンブルとしては個々のカラーが強すぎて空中分解寸前。もちろん、みなさん「合わせよう」としているのですが、押さえ切れない個性というのが面白かったです。
 それにしても今回の公演は「ガラコンサート」とは銘打っているものの、衣装を身に着け、芝居あり、ダンスありで、ハンドマイクでなかったらそのまま本公演として成り立ちそうなもの。非常に見ごたえがありました。退団後すっかり男役→女優への性転換が完了したはずの大峯麻友やちあきしんといったお姉さまたちが、衣装を身に着けた途端、おっさんに戻ってしまうのにはビックリしました。あんなに女っぽいにも関わらず、舞台上ではすっかりオッサン。そういえば、天地ひかりさんが劇場入り口でスタッフとして活躍されていたのですが、こちらもまたオッサン→ベッピンさんへの変化がありすぎて、宝塚ファンなのに気づかない方も多いみたい。そして、ちあきさんのどっしりとした芝居や、低音の効いた歌唱に触れると「このまま専科or組長として宝塚に残っていて欲しかった」と思わずにはいられません。


2006年01月27日(金)18:00-21:35
東宝「ベガーズオペラ」@日生劇場

 B席 3000円 2階-G列-42番 (パンフレット:1800円)

 マクヒース:内野聖陽
 ピーチャム:高嶋政宏
 ロキット:村井国夫
 トム(フィルチ):橋本さとし
 老役者:金田龍之介
 ルーシー・キャロット:島田歌穂
 ポリー・ピーチャム:笹本玲奈
 ミセス・ピーチャム:森公美子

 世界で最初のミュージカル=「ベガーズ・オペラ」なんだそうです。初演から278年(そんな昔にミュージカルという観念があったかどうかは疑問ですが)を経て、ようやく日本初演となりました。劇場内に劇場をこしらえたような舞台美術を目にして「シェイクスピアを上演している劇場みたいな作りだなぁ」と思ってたところ、パンフによるとストラトフォード・アポン・エイボンのスワン座で上演されたプロダクションなんだとか。納得。お芝居の規模としては、日生劇場でもまだ大きく、出来ればグローブ座のような小劇場で観てみたいと思いました。もちろん、日生劇場に合わせて、豪華キャストを組むなどてこ入れされていました。よって、アンサンブルの面々にいたるまで、ミュージカルファンならば「この人知ってる!」というキャストがズラリ。よくぞここまでのメンバーを確保したもんです。おかげで、コーラスのレベルも高く、非常に聴き応えがありました。ま、このまま「レミゼ」でも「サイゴン」でも上演してください、というキャストたちですから、当然といえば当然ですけど。それにしても、一人一人が実に魅力的な役者集団で、群集芝居の場面など、誰に焦点を合わせるか悩んでしまったほど。でも、作品としてはかなり渋いです。こ
 中でも嬉しかったのは内野聖陽の成長ぶり。「エリザベート」でミュージカル初出演の頃は音痴&声量がなくてどうしようもなかったのですが、いつの間にか音程がきちんと取れるようになり、声も鳴るようになり、堂々たるミュージカルスターに。おまけに、短足を上手にカヴァーする衣装にも恵まれ、いまやコンプレックスを感じる必要がなくなったせいか、実に伸びやかに主役を演じていました。やはり、主役は萎縮しちゃ駄目ですわ。そして、細かな芝居に関してはさすが文学座の面目躍起で、色気といい声色の変化といい、素晴らしいマクヒースでした。今まで苦手だった役者が素晴らしく見えるようになるのも嬉しいものですね。
 えっと、タイトルと役名から想像できる通り、ストーリーとしてはほとんど「三文オペラ」とかぶります。というよりも、乞食一座が「三文オペラ」を上演するという作り。ただし、ナンバーはまったく別の曲。初演当時のバンド編成や劇場音響もあってか、素朴なナンバーが多かった気がします。これといって印象に残る曲はなかったです。もしかしたら、シンセサイザーではなくて、本物のチェンバロなどを利用するともっと印象に残る音楽空間になったかも(古楽器を用意するのが大変か。。。)。
 そういえば「ベガーズ・オペラ」って、牢獄に入れられた囚人たちが「ドン・キホーテ」を上演する「ラ・マンチャの男」と作品の作りとしてはかなり似てます(作品の成立順番としては「ラ・マンチャの男」が「ベガーズ・オペラ」に似ているってことになりますね)。嘘とまことが入れ替わり立ち代りという意味で、 面白い作品なのですが……乞食たちも囚人たちも、ゴメンナサイ、美しくなんてありゃしません。ご想像の通り、僕好みじゃないんですよねぇ。でも、好きな人にはたまらない舞台でしょう。これが、ロココ王朝での貴族たちによるお遊びだったりして「トリアノン・オペラ」なぁんてタイトルだったりしたらきっとはまってます(笑)