観劇日記〜2006年06月〜
03日(土) 17:00 東宝「ミー&マイガール」 帝国劇場
04日(日) 11:00 宝塚歌劇団宙組「Never Say Goodbye」 東京宝塚劇場
10日(土) 12:00 宝塚歌劇団星組「コパカバーナ」 梅田芸術劇場メインホール
11日(日) 12:00 宝塚歌劇団星組「コパカバーナ」 梅田芸術劇場メインホール
14日(水) 18:30 新国オペラ「J.シュトラウス:こうもり」プレミエ 新国立劇場オペラ劇場
17日(土) 14:00 劇団サードクォーター「ひとつ手前の大森行進曲」 東京芸術劇場小ホール1
17日(土) 17:30 アトリエ・ダンカン「OUR HOUSE」 新国立劇場中劇場
18日(日) 12:00 劇団スイセイ・ミュージカル「広い宇宙の中で」 シアターアプル
25日(日) 14:00 新国立劇場バレエ団「ジゼル」 新国立劇場オペラ劇場


2006年06月03日(土)17:00-20:00
東宝「ミー&マイガール」@帝国劇場

 A席 8000円 1階-V列-35番 (パンフレット:1500円)
 演出:山田和也

 ビル・スニブソン:井上芳雄(唐沢寿明)
 サリー・スミス:笹本玲奈(木村佳乃)
 ジャッキー:純名りさ(涼風真世)
 マリア公爵夫人:涼風真世(初風諄)
 ジョン・トレメイン卿:村井国夫(村井国夫)
 ジェラルド:本間憲一(本間憲一)
 パーチェスター:武岡淳一(武岡淳一)
  ( )内は2003年版の配役

 サリーに食われました。「ミー&マイボーイ」というタイトルが相応しい舞台です。とにもかくにも笹本玲奈が実に魅力的で、登場しただけで「下町のお嬢ちゃん」としてピチピチはねているんですもの。好きになっちゃった男の子が実はお坊ちゃまだったとしても、常に相手を気遣い身を引こうとするものの、ジョン卿の助言もあってか「私もやったるわ」と自我に目覚めて自らもレディになってしまうという、素敵な素敵な女の子でした。今まで笹本玲奈というと「真面目な役の人」というイメージがありましたが、良い意味で予想を裏切ってくれました。ダンスシーンも元気にタップ踏んでて勢いに乗っていました。この分だと、結婚後もビルを尻に敷いた肝っ玉母さんになりそう(笑) 前回は庶民のビルにお嬢様のサリーの組み合わせ、今回は庶民のサリーにお坊ちゃんのビルの組み合わせ。シャッフルした方がバランスは良かった? あえてタイプの違う二人をぶつけているのかどうかは不明です。どなたかご存知ないですか?
 そして、面目ないのが井上芳雄のビル。まだまだ若手なので、演技力のなさが露呈。ジョン卿やジェラルドとの友情だとか、マリアおばちゃんとの愛情の交流など、結構見せ場があるのですが、台詞の粒が立たないのと、張り上げっぱなしの台詞回しも相まって「単なるワガママな奴」に成り下がっていました。彼の今までの舞台でワーストだと僕は思っています。そもそも、お坊ちゃま印の井上芳雄に下町言葉なんて似合いはしませぬ。無理してテンション上げているのがモロわかりで、痛々しいことこの上なく、笑うべき場面でヒヤヒヤしてしまいました。唐沢版とほとんど台本は変わっていないと思われますが、役者に合わせて手を入れた方が良かったかも。ダンスはドタバタだし、売りのはずの歌も一本調子で、真ん中で彼がもがけばもがく程、舞台が白けていくんです。今回の舞台が数年後に「当時はヘタだったよね〜。でも初々しかったね」と話題に上るのか、それとも「その話を振っちゃダメ」と封印されるのか、今後の彼の活躍次第でしょうが、興味はありますね。彼のノーブルな雰囲気と、あまり凝らない役作りは、東宝よりも劇団四季の方がピッタリに思えてならないのですが、四季に入団するなんてことは……ないのかなぁ。
 今回、総入れ替えになったのが女優陣。こちらは大健闘。涼風真世はジャッキー→マリアおばちゃんに出世。元々声の通りが素晴らしく良い方なので、ビルがもごもご何か言っても、ビシッと響き渡る声でさえぎっちゃうのが面白かったです。天海版以外のミーマイはフル出演とあってか、役は変われども役作りは万全で、ビルとの対立から和解にかけてのプロセスが丁寧に表現されていて、これまた見ごたえがありました(それにマッタク反応しないビルには困りましたけど)。個人的には、ビルのお披露目パーティ直前に、ビルにご挨拶の特訓を行う場面で、七色の声を使い分けての一人芝居が圧巻でした。元々好きな場面なのですが、さすが声優、声の使い方が抜群です。そして、ランベス・ウォークでは「ランベスッ」の掛け声が絶品。彼女の一声で出演者も客席も一気に盛り上がります。ランベス・ウォークの最後では、ビルとマリアが帽子とティアラを交換して、男女が入れ替わるのですが、中性的だったとはいえ、さすが元男役トップスターだけあって、キリリとしたたたずまいとエスコートぶりがお見事なのには大笑い。頼りないビルをしっかり支えて屋敷の中に連れ込んでの幕。この場面は、客席通路を銀橋のように利用して、出演者一同が客席で歌い踊るのを知っていたので、今回はあえて後方S席でも二階B席でもなく、一階A席を確保。それも通路に面した席。思い通り、目の前でお目当ての面々が歌い踊ってくれて大満足!
 そうそう、今回から参加の純名ジャッキー。キャラクターはピッタリです。ちょっと意地悪がかったお嬢さんの役、この人はまりますね〜。頼りないジェラルド(なぜ再演にもキャスティングされたのか疑問の品のなさ)をさっさと振って、有望株のビルに乗り換える鮮やかさについついプププ。「自分のことだけ考えて」のナンバーでは、男性ダンサーを従えて、実に華やかなショースターぶりを発揮。宝塚時代もこんなに美味しいシーンはなかったぞぉ! 歌は相変わらず伸びやかで、実際ここまで歌えるスターもいないので、とっても嬉しいのですが、なぜか一人だけピッチが低く、オケともコーラスとも音程がずれているのが気持ち悪かったです。他の日はどうだったんでしょう?
 村井国夫のジョン卿は若くて綺麗な(ってもう50歳近くですけど)のマリアにぞっこんなのがアリアリで、彼女のわがままに反発しながらも結局は折れてしまうのが失礼な表現かもしれませんが、実に可愛かったです。いつもながらに、ヒロインを暖かく見守る姿に(すっかりサリーが主役になってます・笑)安心感でいっぱいになるのは僕だけではないはず。今後の活躍に期待大です。そして、ちょこっと前述してます本間憲一ですが、純名りさとの並びも歌の相性も悪く、今回「も」足をひっぱりまくりでした。彼には彼に似合う舞台があれこれあるのに、何であえて柄違いの東宝ミュージカルに出ちゃうのが僕には不思議。貴族の話よりも、もっと庶民的でハートフルな作品だったらピッタリなのに。何だか勿体無い気がしてなりませんでした。でも、結局は楽しい楽しいミュージカルコメディという世界の中ではちょっとした不満なんて消し飛んでしまいます。幸せ気分に浸れる作品として大好きです。


2006年06月04日(日)11:00-14:05
宝塚歌劇団宙組「Never Say Goodbye」@東京宝塚劇場

 SS席 10000円 1階-4列-31番 (パンフレット:1000円)
 演出:小池修一郎

 ジョルジュ・マルロー(パリの風俗を撮影した写真集で一世を風靡したカメラマン):和央ようか
 キャサリン・マクレガー(社会派の新進劇作家)/ペギー・マクレガー(キャサリンの孫):花總まり
 ヴィセント・ロメロ(闘牛士):大和悠河
 マーク・スタイン(映画プロデューサー):立ともみ(専科)
 コマロフ(ソビエト文化省の諜報員):磯野千尋(専科)
 パオロ・カレラス(ラジオバルセロナのプロデューサー):美郷真也
 マックス・ヴァン・ディック(オリンピックのレスリング選手):寿つかさ
 フランシスコ・アギラール(オリンピアーダ組織委員会の宣伝部長、PSUCの幹部):遼河はるひ
 エレン・パーカー(ハリウッドの女優):紫城るい
 ビル・グラント(イギリスの高跳びの選手):悠未ひろ

 
大劇場公演を観た時は、まだまだ骨折の後遺症がかなり辛そうな和央ようかの印象が残っているのですが、今回はまるで別人のように元気な舞台姿。「足上げてる」「ジャンプしている」それだけで嬉しくなってしまいます。舞台に限ったことではありませんが、元気であってこそのお仕事ってもんです。何はともあれめでたい、めでたい。
 でも、作品自体はめでたくなく、僕の苦手とする、歴史と政治と暗い空気に満ちているんです。実は初観劇時は「教科書では習ってない歴史」の話、それもスペインの内戦の話とを歌いあげられても「わっかりませ〜ん」の世界だったのですが、東京公演に向けて、ちょっとは勉強したおかげか、前回とは打って変わってストーリーがすんなり頭に。ここ数年の小池作品は情報量が多いので、より楽しみたい場合はお勉強が必要なんですよねぇ。もちろん宝塚なので各所に華やかな演出がなされていることと、ワイルドボーンの色彩感溢れる音楽が耳心地良く、予習なしでもそれなりの心地よさを味わえますけど。結構、男性受けが良さそう(と勝手に決めてしまうけれど)な舞台です。
 そんな中、宙組初見の同行者と一緒に「いいね、いいね」と喜んだのが和音美桜。彼女が登場すると舞台が締まります。舞台がグルグル回る中、単に盆の上を歩き回るだけのちょい役なのになぜか目が行きます。おまけに歌が素晴らしいでしょ。今回、オペラグラスがなくてもお顔がよ〜く見える席だったのですが、なかなかカワイイし。トップ路線として扱われるのか、出雲たきちゃん路線に回されるのかはわかりませんが、かなり頼もしい存在です。いつか彼女がもっと位取りできるようになったらエビータを観たいな。あ、ベルだとか、李香蘭、アイーダもあるし、劇団四季に異動してくれないでしょうか。とっとと娘役トップの称号を得て(ココ大事)退団してくれないかしらん。彼女に関しては宝塚的なお姫様役ではなく、等身大の強い女性役が観たい!!
 3月から演じ続けているだけあって、大和悠河の歌はフィナーレでもシートベルト不要になっていましたし、若手男役もそれぞれ見せ場を意識しているようで、アピールが楽しかった〜。紫城るいも自信がついてきたのか、押し出しが強くなった気がします。女帝・花總まりは意外にもこの時期になって役にもがいている印象を受けました。マイク音量MAXの中、精一杯声を張り上げて歌っているのですが、役の大きさと彼女の芸の大きさの違和感を拭い去ることはできませんでした。そして、芝居の最後でのジョルジュとキャサリンが分かれるシーン、結構アッサリしているので、いかにこの場で「ふぅ〜」と観客を酔わすのか、つくづく難しい役だなぁ、と感じ入ってる次第です。


2006年06月10日(土)12:00-14:45
宝塚歌劇団星組「コパカバーナ」@梅田芸術劇場

 S席 8000円 1階-19列-14番 (パンフレット:1000円)
 演出:三木章雄

 スティーヴン/トニー・フォルテ:湖月わたる
 サマンサ/ローラ・ラ・マール:白羽ゆり
 リコ・カステッリ:安蘭けい
 コンチータ・アルヴァレス:遠野あすか(専科)
 サム・シルヴァー:未沙のえる(専科)
 グラディス・マーフィ:英真なおき
 ボーイ長/マクマナス/カルロス:高央りお
 スキップ:大真みらん
 ウィリー:綺華れい

 ミュージカルという名前ではありますが、レビューシーンの連続で、ショー色の強い作品です。ロンドン初演を観た時には「宝塚にぴったり」と思った程。いろんなミュージカル俳優が「やりたい作品」という時に名前を出していたので「どのプロダクションが上演するのかな」と思っていました。今までに宝塚では一路真輝(バロック千一夜)や天海祐希(ハードボイルド・エッグ)らによって、その一部が上演されていましたが、今回の宝塚星組公演@梅芸が日本初演となりました。いきなり苦言ですが、梅田芸術劇場(元・梅田コマ劇場、元々・劇場飛天)での上演なので、かなりゴージャスになるかと楽しみにしていたのに、まるでバウ・ミュージカルのようなしょぼさにガッカリ。出演者の熱気によってのみ盛り上がっていました。でもねぇ、お金をかけないレビューはかなり悲しいです。衣装を使いまわすのは良いけれど、色彩やデザインは滅茶苦茶だし、装置はほとんど変化がないし。舞台上にテレビの歌番組のようなセットを組んでオケを配置した美術にも疑問。ま、予算をかけずに舞台上の空間を埋めるにはオケを上にあげるしかなかったのかもしれませんが、宝塚の舞台上に本物の男性がウロウロするのはどうよ!? いずれにせよ、梅芸という大きな小屋用ではなく、バウホールもしくはドラマシティ向けのプロダクションだったことは確かです。何だか、地方公演を観ているような貧乏たらしい気分。とにもかくにも、場面展開のわかりにくさと、終始メリハリのない演出には大ブーイング。梅芸=帝劇レベルの劇場というのは偏見だったのかな。もっと大掛かりな上演を期待してたのになぁ。。。使えば良いってものじゃないけれど、セリや回り舞台、各種吊り物を活用し、ショー場面をもっと盛り上げてくれないと、おとぎ話→現実に戻されてしまうんですよねぇ。
 新しい魅力を発揮したスターはいなかったけれど、出演者は概ね好演です。適材適所のキャストがそれぞれの役を実に気持ち良さそうに演じていたのが印象的でした。トップの湖月わたるなんて、まもなくサヨナラ公演がはじまる人とは思えない若々しさ。こんなにも若者役が似合うトップさんも珍しいもんです。歌は覚悟していた通りだけれどあれだけ動きながら歌い続けるというのはスゴイことでしたし、力いっぱい大きく動くダンスは魅力的。彼女のファンにとっては元気で明るいわたるちゃんに出会えて、楽しい公演だったのではないでしょうか。相手役の白羽ゆりは、歌はさすがに作品のスタイルではなく、かなり苦しかったけれど(アントワネットは良かったのに)、オーディション場面ではブレンダちゃん芝居を再現、客席を爆笑の渦に! 安蘭けいは登場しただけで胡散臭さプンプン。ヤクザな雰囲気を醸し出すのは何百人もいるタカラジェンヌの中でも彼女の独断場です。出番が少ないものの強烈なインパクトを与えてました(彼女も元役がバリトンなので、さすがに歌は苦しかった〜)。とまぁ、完璧っではないけれど、何とか役を自分なりに消化して、魅力を振りまいてしまうあたり、スターさんの底力を感じました。オリジナル作品と違って、まず役がありきなので、宝塚という特殊な集団においてはここまでの作品に仕上げてしまったことに脱帽。かえすがえすも演出がも少しまともならば、と残念でなりません。
 専科のお二人は魅力全開。組子ではないからか、誰かを立てるというよりも「特別に呼ばれちゃったワ、ワタクシ♪」という手加減のなさが心地良かった〜。遠野あすかなんて、ヒロインと同期にもかかわらず、おばさん扱いされてしまうというかわいそうな立場なのに(本来であれば出雲綾あたりが登場の役)、かなり作りこんでベテラン風を吹かせていました。単調な流れの中、遠野あすかの登場によって、舞台が急に活気付いたのには舌を巻きました。決して美人でもテクニシャンでもないのに、やたらと華があります。役柄が限定されてしまう、トップ娘役よりも、組子に気兼ねなく自分の実力を発揮できる専科として活躍する方が彼女には似合っているのかもしれませんね。実際、彼女の押し出しの良さを支えなければならない男役は大変だぁ(安蘭けいはキャリアと渋い芸で支えてました、ぶらぁぼ)。未沙のえるもコメディエンヌの本領を発揮。大きな笑いを取る人ではないけれど、クスッという笑いを随所にばらまき、幸せ気分で一杯にしてくれました。ストーリーも先が読めまくりですが、気軽に楽しめる舞台でした。Thanks!!


2006年06月11日(日)12:00-14:45
宝塚歌劇団星組「コパカバーナ」@梅田芸術劇場

 S席 8000円 1階-25列-56番 (パンフレット:1000円)
 演出:三木章雄

 スティーヴン/トニー・フォルテ:湖月わたる
 サマンサ/ローラ・ラ・マール:白羽ゆり
 リコ・カステッリ:安蘭けい
 コンチータ・アルヴァレス:遠野あすか(専科)
 サム・シルヴァー:未沙のえる(専科)
 グラディス・マーフィ:英真なおき
 ボーイ長/マクマナス/カルロス:高央りお
 スキップ:大真みらん
 ウィリー:綺華れい

 大劇場は東宝劇場よりも開演時間が早いのを忘れておりまして、梅芸→大劇場のハシゴは出来ないことを現地入りしてから気付いてしまいました。でもって、せっかく大阪まで足を運んだのに、星組の「コパカバーナ」のみの観劇となりました。二回目は一階席の一番後ろ、それもほとんど端でしたが、梅芸の一階席は角度があって、とても観やすい席でした。
 昨日はほとんどオペラグラスを利用しなかったので、今日は細かなところをチェックしながらの観劇。しょっぱなからタバコ売りで登場する組長さんの足の美しさに思わず釘付け。元来女性なので当たり前といえば当たり前なのですが、素敵なオンナっぷりにクラクラしてしまいそう。ちなみに大真みらんが演じたスキップは「女性振付師」の役だと思っていたのですが、同行者曰く「おかまの設定」だとのこと。ん〜〜〜、宝塚はコメディというとやたらとオカマを登場させたがりますが、まだ男役として完成していない若手がオカマを演じようとすると、普通の女性になってしまうのが難しいところです。でも、いつの間にか「どうみてもオカマにしか見えない素顔」になってしまうのが不思議。ほら、OGの○○さんも、△△さんも、退団して何年たとうが「オカマ」にしか見えないでしょ。嘘だと思う方は、ぜひ狸御殿シリーズを観劇なさってみてください!!


2006年06月14日(水)18:30-21:30
新国オペラ「J.シュトラウス:こうもり」プレミエ@新国立劇場オペラ劇場

 D席 6615円(ATRE会員割引) 3階-1列-3番 (パンフレット:800円)
 演出:ハインツ・ツェドニク
 指揮:ヨハネス・ヴィルトナー
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン:ヴォルフガング・ブレンデル
 ロザリンデ:ナンシー・グスタフソン
 フランク:セルゲイ・レイフェルクス
 オルロフスキー侯爵:エレナ・ツィトコーワ
 アルフレード:水口聡
 ファルケ伯爵:ポール・アルミン・エーデルマン
 アデーレ:中嶋彰子
 ブリント博士:高橋淳
 フロッシュ:ハンス・クレマー
 イーダ:中村恵理

 梅雨時にこうもり……ナンテぴったりな作品なんでしょ(笑) 来日公演は別として、日本で上演された「こうもり」の中では屈指の完成度だったかと思います。決して豪華絢爛な舞台ではないのですが、垢抜けた色彩感覚と、無国籍でカラリとした味付けが「東京版」として実に相応しく、それでいて、作品の豊かな香りは損なわれていないという、絶妙なバランス感覚での上演でした。第一幕がいきなり屋外で始まるのもとっても新鮮。スケジュールがあえば、も一度観にいきたい!
 中でも、お目当てのオルロフスキー侯爵が素晴らしく、ニ幕以降は顔が緩みっぱなし。マントを翻して登場した姿はまるで朝海ひかるのオスカル。ブロンドの長い髪を後ろで結わえて、物憂げな表情で登場するのですが、あまりの貴公子ぶりにおじちゃんクラクラ。お坊ちゃま度が最高です。おまけに歌い出せば「これぞメゾ!」というタップリとした美声を披露。実に華やかに歌い上げてくれました。ファスベンダーの凛々しさと、バルツァの声の威力を併せ持った、史上最強のオルロフスキーです、なんて書いたら褒めすぎかしらん? でも、カーテンコールでは劇場が爆発するかのような歓声を浴びてました。
 迎え撃つ男性陣もなかなか検討。なぜか新国では真面目くさった役ばかりだったブレンデルですが、ミュンヘンオペラでのパパゲーノを思い起こさせる、ちょっとおマヌケなおじちゃんぶりを発揮。彼のクルクル回る表情、いたずらっ子のような目つきにこれまた大笑い。レイフェルクスやエーデルマンも普段の澄ました顔はどこへやら、おおいにハジケ、暴れまくったのでした。彼らの芝居に合わせて、オケもスピードから音作りまで実に丁寧に寄り添う状態。シングル・キャストならではの、お稽古の充実度を感じさせるものでした。まさに「劇場が生きている!」という醍醐味を体感することができましたもの。「オペレッタはこうでなくっちゃ!」と幸せ気分でいっぱい。実にテンポの良い演出・お芝居でした。
 女性陣は声楽的に男性とは比べ物にならない聞かせ曲が揃っているんです。ロザリンドもアデーレも大ナンバーが控えています。中嶋彰子は高音に不安があるのと、キンキンした声質が不安でしたが、ナンバーにおける女優っぷりが実に見事。テクニックや声量で押すのではなく、微妙な表現や弱音を駆使しての大活躍。元々の素質だけでなく、芸の力で観客をねじ伏せてしまうあたり、なかなかの切れ者です。蛇足ながら、中嶋彰子が華奢で小柄なので、ツィトコーワとの並びが美しかったです。オペラハウスでこんなに美しいカップルを見られるとは! ロザリンデはブーを出す程ではないのですが、芝居も歌もいま一つ、いま二つ。単調でのっぺらぼうで、かといって声に魅力があるわけでもないので、つまらなかった〜。今回のプロダクションは芸達者が揃ってしまったので、割りをくってますね。実に大味でした。東フィルは良い仕事してました♪


2006年06月17日(土)14:00-15:30
劇団サードクォーター「ひとつ手前の大森行進曲」@東京芸術劇場小ホール1

 全席自由 3000円 (パンフレット:無料)
 演出:大神田潔

 安:大道寺銀蔵
 ぎん:宮澤瞬
 かもくん:沼倉遼平
 したたか:山岸一之
 じげん:ほりさとし
 米良:コウミツグ
 食堂のおばさん:聡美杏
 ケン★アミーゴ:加藤貴広
 アミーゴのマネージャー:かわなごまき
 安斎監督:榎本淳
 境原(助監督):松井直樹
 スクリプター:笹原恵美
 メイク:佐藤優依
 女殺陣師:松堂雅
 大島麗子:日和小春(うさどん)

 入場するといきなりスタンプカードを頂戴します。スタンプを三個集めると1000円の割引券になるそうです。おまけに、劇場を出る際には再見CARDをいただきます。これを持っていれば、観劇料金が1000円になるそうです最近はリピート割引を良くみかけますが、割引率が66.7%……スゴイっす。
 舞台はL字型に組まれていて、客席は三方に設置されているのですが、芸劇は小ホールといえども設備がしっかりしているので、舞台に関してはちょっとした劇場並みのスペース。おまけに、座る位置によって、見える場面見えない場面があり、おまけに役者もそれを承知でいろんな小芝居を行っているらしいので(何しろ一箇所からしか見てないので未確認です)、あれこれチェックするのはかなり大変。事情を知らずに僕が陣取った席からはお目当てのうさどんが遠かった〜(涙) うさどん以外の役者さんで気になったのが松堂雅。安寿ミラを彷彿とさせる、クールなたたずまいと、殺陣の美しさに惚れました。格好えぇ〜。キリリとしたお姉さん大好き♪
 さて、そのうさどんですが、出番はおそらく一番少ない役だったかと思います。おまけにどちらも同じような台詞を言い残して立ち去るのみ。実はパンフを見た時点では「大鳥麗子」と読んでしまい「さすがうさどんの役」と感心していたのですが、性格な役名は「大島麗子」でした。思い込みって恐ろしいですね。ちなみに、この役は大女優という設定なのですが、うさどんの登場時のイメージは大鳥れいよりも彩乃かなみって感じでした。ちょっと行っちゃっている芝居に同じ匂いを感じましたさ。して、出番こそ少ないものの、この物語を終焉させるという重大な役どころ。まだまだ威張って大丈夫。境原役の方には申し訳ないけれど、どうせ実際にひっぱたくならば、も少し派手なビンタが見たかった〜(笑) でもね、せっかく話が終わったというのに、演出が盛り上がらず、おまけにカーテンコールもないので、気付けば拍手をしないまま劇場を去ることに。ん〜〜〜、役者に対する意思表示という意味で、やはりカーテンコールはあるべきだったんじゃないかなぁ。「拍手して…良いの!?」と悩んだあげく、拍手せずに劇場を後にするのはかなり気持ち悪いです、ええ。


2006年06月04日(日)17:30-20:15
アトリエ・ダンカン「OUR HOUSE」@新国立劇場中劇場

 A席 8000円 2階-1列-70番 (パンフレット:1500円)
 演出:G2

 ジョー:中川晃教
 サラ:池田有希子
 リーシー:池田成志
 エモ:坂元健児
 ルイス:新納慎也
 ビリー:入絵加奈子
 アンジー:瀬戸カトリーヌ
 ミスター・プレスマン:後藤ひろひと
 ジョーの母(キャス):香寿たつき
 ジョーの父:今井清隆

 人生に「たら」「れば」というのは考えてみても無意味だ、という話をする人っていますよね。この作品はそれをあえて考えてみる作品で、人生のある時点での選択がその後どんな影響を及ぼすかを、同時進行で見せてしまう凝った内容のミュージカル。一応、役の上では「良いジョー」「悪いジョー」と分かれていますが、ジキル&ハイドじゃないけれど、ほんの一瞬でこの二人の話が入れ替わってしまうのが見ものです。ミュージカルならではの作りとも言えるのですが、二つの話を同じ比重で進めるのではなく、省略できる部分はとことん省略してしまうので、実にスピーディ。今回はジョーの「たら」「れば」の話ではあるのですが、彼の選択によって、彼をめぐる人の人生までにも大きく影響が及ぶことに恐ろしさを感じました。面白かったんだけど……保護者同伴厳禁作品です。18禁じゃなくて保護者禁。絶対に帰り道はお説教タイムとなります。デートにもオススメしません。あれこれ考えちゃって「私たち、別れましょう」となっても困りますし。一人であれこれ考えながら観るのがよろしいのではないかと。。。あ、もちろん、ご自身の人生に自信がおありの方は別ですよ。どうぞ、好きな方と一緒にご覧になってくださいませ。
 一部の役を除き、ティーンエイジャーの話なので、配役を聞いた時には(正確には役の設定を聞いた時には)「!」となったもんです。だって、結構ベテラン揃いじゃないですか、プリンシパルもアンサンブルも。でも、イギリスの高校生ってとっても大人びているし、いざ生の舞台を観たらとっても自然でした。ホッ(笑) ブレザーの制服がみなさん実に良くお似合いです。そんな仲、ちょっと不良じみた着こなしの中川晃教が実に魅力的に登場。坂元・新納とのトリオもバランス良く、なかなか快調。池田・入絵・瀬戸の女優トリオもデコボコぶりが絶妙。ロンドン・ミュージカルなので、ちょっとブラックなジョーク満載なのですが、そこは大人の皆さん、実に気持ち悪く決めてくださいました(あ、褒めてるんですよ!) 若者の役だから若者が演じれば良いというわけではない、というお手本のような舞台でした。結局、同じ役名とはいえ、一人二役みたいな設定だし、歌はやたらと難しいし、舞台経験の浅い若手が演じたら、役を掘り下げる余裕なんてなかったことでしょう。幸い、今回は実力者が揃っていて、歌唱もダンスもストレスを感じることなく、ただただそのウネリの中に身をゆだねれば良いのが快感でした。まるで当て書きかと錯覚してしまう程に役と役者が一体化していて、素晴らしかったです。G2という演出家がどのような方なのか存じておりませんでしたし、振り付けの方も未知ゆえ、どんな仕上がりか心配をしていたのですが、結構正統派なミュージカル作りで、とても面白く、わかりやすく観ることができました。かなり面白いです。
 でもね、ハッピーエンドでもなければ、簡単に説明できるストーリーでもないので、一般受けはしにくいかも。観光客の多いブロードウェイよりも、ウェストエンドでこそ受けるような作品だと思います。個人的には「CDも別に……」なのですが、何回か観ればはまってしまうかも。とりあえず、テーマ曲が頭から離れない〜。


2006年06月18日(日)12:00-14:45
劇団スイセイ・ミュージカル「広い宇宙の中で」@シアターアプル

 全席指定 7000円 11列-13番 (パンフレット:1500円)
 演出:西田直木

 富士和子(正太の妻・幽霊):中村香織(安田貴和子)
 林田樹実生(正太の甥っ子):吉田要士
 富士正太(貿易会社社長):村國守平(越智則英)
 生駒源次郎(正太の親友):田代久雄
 生駒ハナ(源次郎の母):佐藤志穂
 浅間靖(陽子の恋人):富塚清衛
 富士陽子(長女):茂野陽子(八木みのり)
 富士彩恵子(次女):相原奈保子
 富士朋美(三女):金子昌代
 富士昌也(長男):戸田健二(鷹野浩之)
 富士ひかる(四女):吉村美喜子(中村香織)
 三原みつ子(家政婦):藤井珠美(吉村美喜子)
 赤城照代(正太の再婚相手):旺なつき

 ( )内は2005年6月初演時のキャストです。かなり入れ替わっていたのですが、作品のイメージを損なうことなく、ごく自然にチェンジが行われていたんですね。まさか、半分もメンバーが変わっているなんて思いませんでした。上演会場も博品館劇場→シアターアプルとかなり大きくなったけれど、違和感はほとんどなし。もちろん、冒頭のお葬式のシーンがバッサリなくなっているなどのマイナーチェンジはあちこちでなされていましたけれど、ウェルメイドの暖かい印象の作品です。
 前妻の幽霊vs後妻の詐欺師という対立、幽霊や動物と会話のできる不思議少年(今回は彼についての説明がなかったので、ちょっと唐突な役どころ)、五人の子供たちの成長と親離れ、などなど、かなり見せ場が多いのですが、テレビドラマのようにテンポ良く展開するので、飽きることなく最後まで楽しめます。個人的に女同士の争いや、愛情ドラマ、パロディ作品って大好きなので、結構ツボにはまりました。もう少し小さい劇場で、客席と舞台が一体化できるような雰囲気だったらさらに良かったかも。でもね、初・ミュージカルの人を誘うにはちと高いな、というのも正直なところ。7000円という金額はよっぽど劇場好きの人じゃないとポンッと出さないものです。そんな人たちを説得できる何か+αが欲しいなぁ。もしくは少しでも良いので安い席の設定とかね。
 キャストの中では客演扱いの田代久雄が別格の上手さを見せました。劇中にオカマ・ショーあり、シャンシャンを持ってのパレードまで見せるのですが、初演時は文字通り「不気味」だったのに、今回はパッチリした目鼻立ちも相まってか、堂々たるトップスター様(笑) 同じく女装組の戸田健二はまだまだ照れいるのがバッチリ。客席からの「いやぁ」だとか「気持ち悪い〜」の声に反応してさらにドギマギしているのが微笑ましかったです。いかにも新人のショーダンサーといった役どころがピッタリ。彼を取り囲むダンサー(もちろん男)たちは、恥じらいが既にないようで、逞しくて不細工なのに、やたら自信ありげにおっかない笑顔を振りまいていたのが印象的でした。
 でも、実際に舞台を牽引していたのは旺なつき。見せ場、盛り上げ場のほとんどは彼女が担当だったのではないでしょうか。表の顔と裏の顔との切り替えは見事だし、表の顔と裏の顔が融合する過程なんて涙を何度も絞られてしまいました。何よりも、舞台姿が大きくて、子供たちや正太から頼られるどころか、前妻からも「この人になら」と認められるのが納得の力感でした。それにしても、元・宝塚の男役の人って、背筋がシャキッと伸びているせいか、子供を抱きしめるシーンなんて、ザ・男役になってしまうんですね。惚れ惚れとする美しさ(単に僕の好みかも)。それでいて、啖呵を切る時の格好良さは圧巻でした。未婚の母として子供を産むのを怖がる長女をぶんなぐり「あたしがもらったげるよっ」と怒鳴りつけ、最後には「それでも産むのっ」と絶叫する姿に、おじちゃん号泣。若手による全力投球の舞台は気持ち良いけれど、やはりベテランになると、力の抜き入れのさじ加減が見せ場ですね。絶妙の芝居が観られて嬉しいひと時でした。欲を言えば、前妻役の人との実力差がありすぎて、前妻vs後妻の争いは戦う前から結果が見えてましたけど。


2006年06月25日(日)14:00-16:05
新国立劇場バレエ団「ジゼル」@新国立劇場オペラ劇場

 Z席 1500円 4階-L5列-3番 (パンフレット:800円)
 振付:ジャン・コラリ、ジュール・ペロー、マリウス・プティパ
 指揮:エルマノ・フローリオ
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 ジゼル:さいとう美帆
 アルベルト(またはロイス):山本隆之
 ミルタ(ウィリの女王):川村真樹
 ハンス(森番):冨川祐樹
 クールランド侯爵:ゲンナーディ・イリイン
 バチルド(アルベルトの婚約者):湯川麻美子
 ウィルフリード(アルベルドの従者):澤田展生
 ベルタ(ジゼルの母親):神部ゆみ子
 村人のパ・ド・ドゥ:大和雅美、江本拓

 本日は新国バレエ団のメンバーのみによる上演です。前回の公演よりも上演時間が20分ほど短くなっているのですが、原因はわかりませぬ。何だろう!?
 さて名作バレエというと必ず名前の挙がる「ジゼル」ですが、二股男の変装と浮気がばれて……という面白そうな話です。しか〜し、ジゼルちゃんはさっさと敗北を認めてしまい、女の争いなんて無縁ゆえ、第一幕はさして盛り上がりません(と独断で断言!)。そりゃ、身分の差はあるでしょうが「本命は私でしょ」とアルベルトに二人が詰め寄るとか、この浮気男っとアルベルトをひっぱたくとか、何かしらリアクションがあるべきだと思うんです。女として良いの?と僕が心配する中、ジゼルは勝手に嘆いて死んでしまうし、バチルドは「文句があるならベルサイユへいらっしゃい、ベルサイユへ」ってな感じでさっさと舞台を後にしてしまうし、何だかなぁ、なお話なんです。ま、ヒロインが「私を見て〜」というタイプでないのが気に入らない原因かも。個人的に「おしん」的なヒロインってダメなんですよ。そんな中、今日のバチルドはやたらと格好良かったんですよね。主役オーラびしばし。幕間に「誰だ、この素敵な人!?」とパンフをめくったら、湯川麻美子。今、僕がイチオシの新国バレエ団の女王様候補。良い女をやらせたら、彼女は絶品です。登場時のあたりを払うような貫禄、まだジゼルが恋敵だとわかる前の「ドレスが気になるの?ふふふ」ってな表情なんて、見られそうで見られない絶妙なものです。もう、主役そっちのけで、彼女ばっかり観てしまいました。ま、湯川バチルドが相手じゃ、さいとうジゼルは不戦敗も仕方ないか、、、って純粋なバレエファンが聴いたら激怒しそうな感想ですねぇ(汗) でも、トップお披露目公演なのに花總まりが登場、みたいな配役だからしかたないか。
 とはいうものの、さいとう美帆の(確かまだ23歳前後だったかと記憶しています)ういういしさと軽やかさはなかなのもの。まだ押し出しが強くないけれど、可愛いお嬢さんという雰囲気がヒロインにピッタリ。ただし、しつこいようですが、自己主張の強いタイプではないので(寄り添い型?)僕にとってはあまりピンとこないダンサー。でも、失恋に打ちのめされたり、アルベルトをかばって必死に踊り続けるところは、役にピッタリ。涼やかなプリマです。そして、アルベルトの山本隆之は相変わらず名サポーターぶり。この役も実はパッとしなくて、浮気がばれてもオタオタするだけ、自分が原因でジゼルがなくなると、いきなりハンスに責任を押し付けちゃうし。まったくもって嫌な奴です。でも、山本隆之のアルベルトはジゼルへの思いを前面に出し(よって、バチルドとの関係は薄くなっちゃったけれど)、純愛男として観客を納得させることには成功。ま、それがないと第ニ幕が成り立たなくなっちゃいますけどね。
 村人のパ・ド・ドゥは通常主役級のソリストが登場するのですが、今日の二人はほとんど記憶にないダンサーでした。まだ若いのかな。しっかり踊っているんだけれど、観客を魅了する華がまだないお二人で、正直、この場面はだれました。今後に期待。でも、華って生まれつきのものですから、配役に一工夫欲しいところです。