観劇日記〜2006年08月〜
04日(金) 21:20 映画「ピンクナルシス」 シアターN渋谷
12日(土) 14:00 小森輝彦・服部容子「デュオリサイタル Vol.2」 ヤマハホール
13日(日) 13:00 広東雑技団「アクロバティック 白鳥の湖」千秋楽 オーチャードホール
13日(日) 18:00 来日カンパニー「ブラスト2:MIX」 国際フォーラム ホールC
20日(日) 14:00 合唱団ZERO「第1回 定期演奏会」 なかのZERO
22日(火) 18:30 劇団四季「オペラ座の怪人」 電通四季劇場[海]
27日(日) 13:00 来日カンパニー「ウェスト・サイド・ストーリー」 オーチャードホール


2006年08月04日(金)21:20-22:40
映画「ピンクナルシス」@シアターN渋谷

 全席自由 一般当日 1500円 (パンフレット:なし)
 監督:ジェームズ・ビドグッド

 35年前の18禁映画です。とっても幻想的だというのと、35年間も封印されていたというので「どんなに衝撃的なんだろう」とドキドキしながら劇場入り。僕位の年代のお客さんが多かった印象で、女性客も結構入っていました。
 して、いきなり流れ出した音楽を聴いた瞬間に拒絶反応。モノラルだし、ただでさえ音質も悪いにもかかわらず、シェーンベルクだとかラヴェルの音楽を使用しているんですもの。音の重なりが魅力の音楽の無残な状態、それも変に切り刻まれての利用に、クラシックファンとしては映画の内容そっちのけで怒りを覚えてしまいました。どうせ台詞なんてない作品なんだから、音楽も新録音にすれば良かったのに。おまけに、話の展開も意味不明な部分が多く、酔っ払いが管巻いているようなものを延々と見せられてはたまったもんじゃありません。スミマセン、この作品はマッタク僕には合いませんでした。が、回りのお客さんは集中して見入っているし、上映中に人をかきわけかきわけ退場するのも申し訳なかったので、途中から睡眠時間に変更。幻想シーンの映像も色合いは独創的に思えた部分もありましたが、僕としては「ウルトラマンみたい」にしか見えず、豚に真珠、猫に小判。


2006年08月12日(土)14:00-16:05
小森輝彦・服部容子「デュオリサイタル Vol.2」追加公演@ヤマハホール

 全席指定 5000円 1階-O列-2番 (パンフレット:無料)
 バリトン:小森輝彦
 ピアノ:服部容子
 朗読:山本耕史

 ブラームス:歌曲集「ティークの"美しいマゲローネ"によるロマンス」全曲
(アンコール)
 シェーンベルク:スターズ(from「レ・ミゼラブル」)

 ら「照ちゃんが応援している歌手の人と似ている人がいるの〜」
 て「そりゃそうでしょ、弟さんだもん」
……というやり取りがきっかけで、らっしいと一緒に小森輝彦リサイタルに行ってきました。昨日のカザルスホール公演が完売につき、のぼぉちゃんがチャック全開で大またおっぴろげて骸骨チェロを弾いた、かのホールでの追加公演に滑り込み。実は、改装後、のぼぉちゃん以外の公演をこのホールで聴くのは初めてなんです。「東洋のカーネギーホール」というキャッチフレーズのホールですが(どこが?)、元々デッドな響きなので、どうなることかとドキドキ。が、今回のようにかなり後ろの席にもかかわらず、息遣いやささやき声までハッキリ聴こえてきて、意外に歌モノに合っている小屋かもしれません。歌とピアノはもちろん生声でしたが、朗読の山本耕史はMC利用。500席クラスの小さい空間なので、彼も生声の方が良かったなぁ。演奏と朗読で音圧がかなり違うので、数分おきに耳を合わせなくてはならないのには正直疲れてしまい、実は途中のかなりの部分、朗読パートはゴメンナサイしてしまいました。うぅぅ、耕ちゃんも応援してるのに〜。
 さて、ブラームスとバリトンの組み合わせでは真面目なリートを思い浮かべるものですが、今回のこの作品、かなりケッタイなお話です。アラビアンナイト、グリム、イソップなどなど、ちょっと聞き覚えのあるような話がどんどん登場。最初は真面目に「芸術」のつもりで話を追っていましたが、途中からは「お笑い」なのに気付くことに。主人公、結構エロイです、そして、都合良く事件に巻き込まれます。それでいて、歌となるといかにもブラームスな、メロディの宝庫。僕は「約束」がお気に入りなのですが、バリトンならではの重過ぎない低音がとっても心地よかった〜。歌詞からすると、女性の部分もかなり歌ってましたが、元々「全曲バリトンで歌う」という曲なのやろか? スミマセン、勉強不足です(汗)
 まさかこのプログラムでアンコールはあるまいと思っていたら、いきなりお馴染みの前奏が! ジャベールのナンバー「スターズ」の登場です。もう、最初の一声から憎々しくって、一瞬にしてヤマハホールがパレスシアターに変身。元々クラシカルなナンバーなだけに、タップリしたバリトンの声での歌い上げを堪能しました。もちろん、クラシック歌手が歌うミュージカルなので、このまま帝劇に登場されたら違和感があるでしょうが「日本人でもこの音圧で歌えるんだ〜」と妙に嬉しくなってしまいました。
 終演後の会話です。
 ら「若々しい声なのね!」
 て「…だから、若いんだってば〜。」


2006年08月13日(日)13:00-15:25
広東雑技団「アクロバティック 白鳥の湖」千秋楽@オーチャードホール

 S席 10500円 1階-18列-15番 (パンフレット:1500円)
 演出:ジャオ・ミン

 白鳥:ウ・ジェンダン
 王子:ウェイ・バォホァ
 黒鳥:シュ・ウェイイ
 黒鷹:ジン・ウェイイ
 黒鷹王:ルォ・ホン

 オーチャードホールの夏休み公演は誰が作品を選ぶのか知りませんが、毎年大当たりですね。今年も追加公演も早々に完売。まだ公演途中だというのに、来年の再来日が発表されました。このあたり、観客の心理を読むのがうまいですね〜。
 さて、オーチャードで「白鳥の湖」というと、マシュー・ボーン振り付けの「スワンレイク」が記憶に新しいところですが、今回はさらにキワモノ。バレエではなく、雑技によって「白鳥の湖」を上演してしまおうというもの。プロローグでオデットが連れ去られる場面のフライングでまずはビックリ。だって、バレエでこんな演出みたことないもの。そういえば、この公演、どこにもバレエとはうたわれてないんですよね。して、フライングごときでビックリしてちゃいけないことにすぐに気づかされます。夢で王女を見た王子が、その王女を探しに世界各地をまわる、というストーリーで、エジプトだろうが、ヨーロッパであろうが、どことなくゴマ油の香りが漂ってきそうな演出でした。ハッキリ言ってしまうと、チャイコフスキーをBGMとした雑技ショーです。でも、雑技のひとつひとつが素晴らしいので、場面場面を気楽に楽しむ分には最高です。フィナーレはいきなり宝塚状態になっちゃうし。関西風のどぎつい色彩感覚が面白かったです。
 とりあえず、白鳥と王子の二人はバレエ担当なのですが、肩の上でポワントを決めちゃうわ、頭の上でビールマンスピンを行っちゃうわで、ヤンヤヤンヤの喝采。安定した地上ですらポーズを決めるのが不可能と思える、驚異的な柔軟性とバランス感覚に圧倒されました。この二人、凄いです。
 でも、個人的にお気に入りなのが、その他の面々。御伽噺の主人公ってまじめすぎて面白くないけれど、キャラクターピースはやりたい放題なので、見ていて楽しい! トロカデロかグランディーバかというオカマダンサーズが登場するわ、結構ドキドキハラハラさせてくれる子役が登場するわ、シルク・ド・ソレイユばりのサーカス芸を見せてくれる人が登場するわで、その都度「ぴぇ〜」と歓声を上げてしまいますが、いつの間にかギューっと手を握り締めている自分がいたりして、休憩時間の時点でグッタリ。別に僕が演技しているわけじゃないけれど、手に汗握ります。人間ってどこまでのことができちゃうのかなぁ、という思いをはせながら劇場を後にしました。爽快感があってとっても楽しい。
 蛇足ながら、この公演は録音によるもので、生オケではありません。そして、録音されている音質も演奏のクオリティもあまり高くありません。。。せっかくのオーチャード公演なのだから、日本のオケでも入ってくれれば良かったなぁ。


2006年08月13日(日)18:00-20:05
来日カンパニー「ブラスト2:MIX」@国際フォーラム ホールC

 A席 9000円 3階-3列-26番 (パンフレット:1500円)
 演出:ジェイムス・メイスン

 トランペット:アダム・ラッパ
 バトントワリング:稲垣正司

 実はこちらも4年連続で来日となる人気公演。来年もやってきます(ブロードウェイヴァージョンとのことですが、写真からして、今までのものを踏襲!?)「ブラスト」はメンバーの入れ替わりに応じて新しい見せ場が用意されるという宝塚式のショーです。前回までは金管&パーカスのみの編成でしたが、今回より、木管楽器が加わり、響きがかなり変わりました。金管楽器が力で押しまくるのではなく、ちゃんとバランスを考えたマイルドな音を発していて、耳に心地よくなったのです。どちらかというとパフォーマンス優先だった前回公演に対し、今回は音楽優先という印象を持ちました。楽器を放り投げることもなく、カラーガードもなくなっているので、派手好きな僕としてはちょっと寂しかったです。とはいうものの、旗の代わりに稲妻型の不思議なツールを振り回していたり、バトンを多用していたり、今回は今回でとても楽しいひと時を過ごすことができました。マチネの「アクロバティック 白鳥の湖」は人間の肉体能力の限界を見せてもらった素晴らしいショーでしたが、「ブラスト」はアイデアと若さにあふれた気持ちの良いショーでした。まったく違うタイプだけれど、それぞれ魅力的で、かつ高レベルなので充実した一日です。でも、正直に言いまして、超絶技巧の連続だったので、観終わる(聴き終わる)頃には僕もグッタリwww バトントワリングの芯を務めたのが稲垣正司。日本人だから、という贔屓目を差し引いても素晴らしい技術。動きの滑らかさ、技の大胆さ、そしてそれらが非常に高クオリティなので、カーテンコール時には思わずスタンディングしてしまいました。パンフによると11年連続でバトントワリング世界一という実力の持ち主なんだとか。あれ、まだ大学生なんですけど、いつから世界一をキープしているんでしょう? 日本にこんなに凄いひとがいるなんて知りませんでした。


2006年08月20日(日)14:00-途中退席
合唱団ZERO「第1回 定期演奏会」@なかのZERO

 全席自由 2500円 2階-7列-31番 (パンフレット:無料)
 指揮:松岡究
 ソプラノ:松尾香世子
 バリトン:浦野智行
 管弦楽:Collegium musicum
 合唱:合唱団ZERO

 ラター:レクイエム
(休憩)
 フォーレ:レクイエム

 実は合唱団の名前も指揮者が誰なのかも知らずにホール入り。おまけに終演後にソプラノソリストを囲む会があり、その幹事をおおせつかった関係で、ラターのレクイエムを聴いただけで退席という、非常に失礼な客でした〜(汗) ラターは名前すら知らず「まだ生きている作曲家」と聞かされたとたんに「やばい、現代曲は苦手なんだよねぇ」とドキドキ。が、いざ演奏が始まってみたら、まるでミュージカルナンバーのような、耳に馴染みの良い旋律が登場。「レクイエム・エテルナム」というほんの数小説でノックアウトされました。この曲好きです! この合唱団は柔らかな響きが特性のようで、ホールの音響(素晴らしかった!)も相まって、音の重なりが非常に幻想的な演奏なんです。ffになっても声を荒げずに、フワッと響かせるのが気持ちよかった〜。そんな中、登場のソプラノソロですが、決して大きな声ではないのに、合唱団とは逆に硬質に声が伸びてくるので、通ること通ること。ppなんかの部分も、ちゃんと2階最後列までくっきり届くのですから、これまた人間の体の神秘ってもんです。
 実はこの曲はソプラノだけでなく、主席チェロ奏者も大活躍なんです。ソロは多いし、チェロ一本で合唱とソプラノを支えてしまう場面すらあるんです。ということで……都響でもやってほしい! 響きとしては、田中さんがソロ担当になっちゃいそうですが。。。でも、あえて、のぼぉぷりぃず。


2006年08月22日(火)18:30-21:10
劇団四季「オペラ座の怪人」@電通四季劇場[海]

 C席 3150円 2階-12列-19番 (パンフレット:1500円)
 演出:ハロルド・プリンス

 オペラ座の怪人:佐野正幸
 クリスティーヌ・ダーエ:沼尾みゆき
 ラウル・シャニュイ子爵:北澤裕輔
 カルロッタ・ジュディチェルリ:種子島美樹
 メグ・ジリー:宮内麻衣
 マダム・ジリー:秋山知子
 ムッシュー・アンドレ:林和男
 ムッシュー・フィルマン:青木朗
 ウバルド・ピアンジ:半場俊一郎
 ジョセフ・ブケー:岡智

 新しいファントムが登場と聞いて、さっそく劇場にお邪魔してきました。キャスティングされたのは今までラウルが持ち役だった佐野正幸。劇団四季には芸大出身の役者が大勢いますが、歌のうまさでは劇団の中でも三本の指に入るのではないでしょうか。発生の美しさ、歌いまわしの巧みさ、いずれも絶品です。ファルセット部分なんて、過去最高のものだったかと思います。そして、役こそ違えども、ファントムにずっとかかわってきていたせいか、クリスティーヌに翻弄され、ズタズタになっていくファントムという役作りがはっきりしていて、非常に説得力がありました。初演の市村ファントムを彷彿とさせるものがあります。残念なのは華がないこと。どんなにうまくても地味です。主役としての求心力はまだまだ。そういえば、メインで真ん中に彼が立つのって初めて!? おまけに声質がまだ重くないので、場面によっては無理して声を出している&フレーズに声が追いつかないという現象がおきてしまっていました。ミュージカルの場合は、声質を無視して無理やり歌わせてしまうということがよくありますが、この人、無理してファントム歌って大丈夫やろか?とちょっと心配。
 クリスティーヌは強力でした。四季の女優さんにしては珍しく、感情表現豊かな歌唱で、少女から女への変化の過程が声だけでもクッキリ。低音から高音までムラなく安定した歌唱で僕はかなり好きです。ダンスがドタバタでも、ドレスの着こなしが汚くてもこの役に関してはOK。声量もテクニックもカルロッタよりもはるかに上で、役の上で問題ないのかと心配になってしまった程。今日の舞台を仕切っていたのはクリスティーヌです。ぴよぴよファントムを完全に食ってました。
 ラウルは可もなく不可もなく、いかにも四季といった優等生的演技と歌唱。貴族としての気品が全然ないのと、感情表現がまだまだのっぺらぼうなので、傷はないけれど、印象にも残らないタイプです。押し出しが良いわけでもないし、今後どのように使われる役者さんなんでしょうね。
 カルロッタはどうしちゃったの!?状態。登場の時点から叫びまくりの歌で、音程もあやふやだし、とにかく不安定。思うに映画版のカルロッタを取り入れたのではないでしょうか。というのも、威張っているだけで歌の実力はイマイチだったり、まだまだ下手だけれど、芝居にお笑い的要素を加えていたから。彼女の舞台はファントムでしか接したことがないけれど、すでにかなりの回数を出演しているハズ。ずーっと棒読みで押し通すのかと思っていたら、芝居心はあるようで、この意識に関しては結構好感。やはり、回数こなしている人は違いが出てきますね。どうせならもっと下手っぴに歌い、コメディリリーフとして徹底すれば、出雲綾になれたかもしれません。今回はまじめなのかお笑いなのか、どちらも中途半端。でも、四季の歴代カルロッタの中では、歌唱以外では好きです。
 そういえば、今日の指揮者(井上博文)は舞台上の歌唱にあわせて、細かく細かくオケのテンポを動かしていました。まさか四季のオケでテンポ・ルバートが行われるとは! 舞台の上も、オケも、人間味ある演奏で(ラウル除く)、暖かな良い公演でした。あ、マダム・ジリーのアルト声にも惚れ惚れ。通常、こんなに声が低いと台詞がオカマチックに聞こえるのですが、秋山知子は素敵なマダムといった言い回しで実に綺麗な響きでした。


2006年08月27日(日)13:00-15:25
来日カンパニー「ウェスト・サイド・ストーリー」@オーチャードホール

 S席 13000円 1階-32列-23番 (パンフレット:2000円)
 演出:ジョーイ・マクニーリー

 トニー:ブライアン・ヒッソン
 マリア:ダイアン・フェラン
 アニタ:ヴィクトリア・ハミルトン・バリット
 ベルナルド:ガブリエル・カネット
 リフ:スペンサー:ハワード

 宝塚歌劇団、劇団四季、ジャニーズ事務所、オペラコンチェルタンテ、など日本でも色々なプロダクションが、そして色々なカンパニーによる来日公演が頻繁に行われている「ウェスト・サイド・ストーリー(WSS)」がまたやってきました。今回はミラノ・スカラ座ヴァージョンに基づく、マクニーリー演出版。
前回の来日公演は2003年8月。同じような作りにもかかわらず、印象が大きく異なるのですから、舞台ってナマモノですよね。偶然ですが、当時の東京では「ウェスト・サイド・ストーリー」と「里見八犬伝」が上演されていたのですが、奇しくも、今月の東京も「ウェスト・サイド・ストーリー」と「里見八犬伝」が上演されていました〜。
 2003年版は舞台をコの字に囲むように、正面と左右にバルコニーが設置されていましたが、今回は左右にのみ設置。正面にはスクリーンでNYの映像を映し出す形に変更されていました。これによって、舞台上のせせこましさが和らぎ、映像の力も相まって、奥行きのある空間が生まれていた気がします。映像を利用した演出は最近の流行のようですが、違和感なくしっくり来るのって意外と少ない気がします。左右のバルコニーが動く場面は、装置のタッパがあるので、レミゼでバリケードが登場する時のような迫力を感じました。振り付けや編曲は契約の関係で一切いじれないそうですが、美術と演出によって、まったく新しい香りの作品に生まれ変わっていました。
 それにしても、WSSは難しい作品ですね。登場人物はティーンエイジャーなのにもかかわらず、ミュージカルナンバーはドラマティックだし、ダンスナンバーは激しいし。オペラ歌手でバレエダンサーでもある子供……なんて厳しい要求なんでしょう。今回はどちらかというとダンス中心のキャスティングだったようです。特に男性アンサンブルは全然歌えてないのですが「マイ・フェア・レディ」におけるレックス・ハリソンのように、音程を一切無視してしゃべるだけ、という裏技で乗り切ったのにはぶらぁぼ。「クラプキ警部」のナンバーなんて全員が音程皆無状態なので、その潔さに脱帽しました。そして、若者ならではの勢いある芝居を見せてくれたということに関しては、今まで観て来たWSSが白眉。技術よりも勢いが前面に出ていて、それが若者の蒼さにつながって、非常に説得力がありました。終演後にパンフを読んだところ「25歳以上は雇わないようにしている」んだとか。某劇団の皆さん、ここ重要かもしれないですよっ。でも、25歳どころか、日本人からすると35歳には見える若者役もいたけれど。。。そして、今回の来日カンパニーに限らないけれど、男も女も腹部は中年(笑)
 トニーのブライアン・ヒッソンは柔らかな高音が魅力のシンガー。正直、低音はかするだけだし、高音は軽すぎてオケやコーラスにかき消されてしまうし、全然僕好みじゃないんだけれど「マリア」ではカレーラス版(高音部をやたらと伸ばすやつ)で歌いきり、ヤンヤヤンヤの喝采を浴びてました。そして、今まではともかくとして、マリアと出会うことによってダメ男として堕ちていく過程がクッキリでていて、なかなか興味深い役作りでした(日本版はどのプロダクションももう少し格好良く描かれている気がします)。
 マリアは中音域〜低音はまるで空気が抜けているかのように全然響かず、高音はヴィブラートがきつくて、清楚な娘というよりも艶っぽいネエチャンみたいな歌唱。これまたダメだぁ。名曲が多い役なので、リリカルにタップリ歌ってほしいなぁ。インタビュー番組で一フレーズを披露したのを聞いたことがあるだけですが、純名りさあたりが主演で上演してくれないかなぁ>四季さま。
 アニタ・ベルナルドは表現の濃さがいかにもプエルトリカン。人種問題がテーマのミュージカルに関しては、それらしき人種を起用すればそれだけでメッセージを発信できるというのが来日版の強みですね。日本版だと、見た目で違いが表せない&観客もそのクラス分けが理解できないので、別の部分にハイライトを持ってくるでしょ。アニタの人間の大きさとその理性が崩壊する瞬間だとか、マリアがたった一日で少女から大人の女に変貌する過程だとか、「ココ、見せ場でしょ」という場面は結構あっさり。情感では押さないのがいかにもアメリカンな感覚。一つの作品を色々な角度から観ることができるのって、東京ならではの気がします。