観劇日記〜2006年09月〜
03日(日) 13:00 ニューアドベンチャーズ「シザーハンズ」千秋楽 ゆうぽうと簡易保険ホール
07日(木) 11:00 東京藝術大学「2006年度 第9回 奏楽堂 モーニングコンサート」 東京藝術大学奏楽堂
07日(木) 14:00 フジテレビジョン「スウィート・チャリティ」 ル テアトル銀座
07日(木) 18:30 新国オペラ「ヴェルディ:ドン・カルロ」プレミエ 新国立劇場オペラ劇場
10日(日) 11:00 宝塚歌劇団花組「ファントム」サンケイリビング新聞貸切公演 東京宝塚劇場
15日(金) 20:00 古川展生「チェロリサイタル」 浜離宮朝日ホール
18日(月・祝) 11:00 宝塚歌劇団宙組「貴城けいコンサート I have a dream」 サンシャイン劇場
19日(火) 14:00 二期会「モーツァルト:フィガロの結婚」 オーチャードホール
19日(火) 19:00 東京藝大チェンバーオーケストラ「ヨーロッパ公演特別演奏会」 東京藝術大学奏楽堂
24日(日) 17:00 バーデン市立劇場「モーツァルト:フィガロの結婚」 ミューザ川崎シンフォニーホール
29日(金) 19:00 ピアノ・トリオ Bee 紀尾井ホール


2006年09月03日(日)13:00-15:05
ニューアドベンチャーズ「シザーハンズ」千秋楽@ゆうぽうと簡易保険ホール

 B席 5500円 2階-7列-9番 (パンフレット:1500円)
 演出:マシュー・ボーン

 エドワード・シザーハンズ:サム・アーチャー
 ペグ・ボッグズ:エタ・マーフィット
 ビル・ボッグズ:スコット・アンブラー
 キム・ボッグズ:ケリー・ビギン
 ジェームズ・アプトン:ジェームズ・リース

 久しぶりにマシュー・ボーンのmyヒットです。実は彼の演出家としての才能と、着眼点の非凡性は認めてはいても、その振り付けはスケールが小さいというか、劇場空間を埋める何かが足りない気がして、苦手だったんです(これは来日公演の際に選ばれる会場の問題もあるかも。あ、でも「ナッツクラッカー」は芸劇だったなぁ。。。)。今回も、ゆうぽうとの大きなステージを広々使っている割には、見せ場のデュエットがやたらとちんまりとして見えてしまいました。もっと手足を伸びやかに使ってほしい、テクニックを駆使してほしい、と僕は思うのですが、彼がダイナミックな舞台を目指してないので、こればかりは趣味の問題、いたし方ありませぬ。
 じゃあ、今回の作品はつまらなくて意識を失ったかというと、どうしてどうして、終始舞台に集中し、挙句のはてには涙ボロボロになってしまうのですから、不思議なものです。いやぁ、気持ち良く鼻をスッキリさせて(泣いた後って鼻の通りが良くなりません?)、満足〜〜〜とホールを後にしました。ダンス公演とはいえ、今回は芝居部分を重視した作りっていうのが影響しているのでしょう。主演のサム・アーチャーはハッキリ言って、ダンサーとしての魅力はさほど感じられないのですが、感情表現が圧巻。良くミュージカルの感想で「役者歌として良かった」なぁんて言いますが、「役者踊りが良かった」のが今回の特徴。舞台にぽつねんと立つたたずまいだけで、切なそうにゆがめる表情だけで、僕の心をギュッとつかんでしまうのですから大したものです。ちなみに、エドワード役にはリチャード・ウィンザーがWでキャスティングされているのですが、どちらが主演かで振り付けが違うそうな。そのフレシキブルさは演出家の愛情でしょうね。
 そいういえば、唯一の日本人キャストにして、すっかりニューアドベンチャーズのレギュラーメンバーの友谷真実さんが「マシュー・ボーンには、自分たちが役をクリエイトする自由を与えられるんです」というようなコメントを来日のたびに発表していますが、フランチャインズ&個性を認められない劇団四季を飛び出した人らしい発言だな、と思わずプププ。おかげで、プリンシパルだけでなく、舞台の端に至るまで、個性豊かなダンスが披露されて、これはこれで面白いのですが、二階席から眺めていると、交通整理がされていないのが丸わかり。最近の宮本亜門さんの演出に良くあるパターンなのですが、演出家が出演者の一人一人に愛情をそそぎすぎるがゆえに、舞台の芯が揺らぎ、全体像がぼやけてしまうという現象が、マシュー・ボーンにも見受けられました。2時間弱の舞台なので、ある程度バッサリ切り捨てなければならない部分があるのですが、イチゲンの客からすると、枝葉を描きすぎの印象を受ける部分があります。「スワンレイク」が大ヒットしたのは、役の数が少なく、群舞が売りだったというのもあるのではないでしょうか。その後の作品はちと刈り込みが必要なものばかりの気がします。
 とはいえ、今回の作品は、プリンシパルのダンス部分が素晴らしく作りこまれていたので、アンサンブルの各自やりたい放題の中でも、ちゃんと主役が際立ったので、満足度はかなり高いです。そして、両手がハサミゆえに、肩を代用してリフトする、幸せで美しい場面なのに涙を誘うエドワード&キムのデュエットダンス、エドワードからキムへの告白場面とも言える、巨大な氷像を完成させるシーン、愛する人々を心ならずとも傷つけてしまう雪が降りしきる中の涙・涙のクライマックス、どの場面もまずはビジュアル的に美しく、もうその時点でノックアウト。映画とは違うラストも含めて堪能しました。映画の世界をそのままに、それでいながら、舞台ならではの魅力をプラスした、圧巻の舞台化。そりゃ「ここでもっと動きに滑らかさとキレの良さがあれば」だとか「ジャンプがもっと高ければねぇ」なんて思ってしまう冷静さもあるんですけれど、まずはここまでの作品に仕上げたクリエイティブチームに脱帽です。せっかくですから、マスターピースとして、世界中のバレエ団でレパートリーに加えてほしい程。ロイヤル・バレエ、パリ・オペラ座、アメリカン・バレエ・シアター、どこで上演してもきっとカンパニーの個性豊かな出来栄えになって、その見比べも面白いと思うのですが、いかがでしょう? 現代バレエとして、自分のカンパニーで作品を独り占めなんてせずに、世界に放出してほしいと思います>ボーン氏。日本だったら……牧阿佐美バレヱ団だとぴったりかな?
 ぴったりついでですが、サム・アーチャーは素顔はともかくとして、舞台での表情(&髪の毛のボリューム感)がテノールの中鉢聡氏にソックリ。そういえば、中鉢氏も影のある役が似合うんですよねぇ。あ、オペラとしても面白い題材かと思いますよ>シザーハンズ 音楽も割とロマンティックで表情豊かですので、オペラ化も面白いかも。もちろん、日本初演は中鉢氏が良いな、ええ。


2006年09月07日(木)11:00-12:10
東京藝術大学「2006年度 第9回 奏楽堂 モーニングコンサート」@東京藝術大学奏楽堂

 全席自由 無料 23列-10番 (パンフレット:無料)
 指揮:三河正典
 管弦楽:藝大フィルハーモニア

 作曲:松下倫士(4年)
 声楽:大学院特別研究(宗教音楽)履修者

 松下倫士:オーケストラのための〈カレード・スコープ〉
 J.S.バッハ:カンタータ78番より二重唱
 J.S.バッハ:カンタータ167番より二重唱
 モーツァルト:〈ハ短調ミサ〉より三重唱
 メンデルスゾーン:オラトリオ〈エリア〉より四重唱
 J.S.バッハ:詩篇第51篇

 オペラシティにはB→C(バッハからコンテンポラリーまで)という人気シリーズがあるのですが、今回のモーニングコンサートはC→Bという並び。「芸大の生徒は席を立ちなさい!」という放送が流れることもあるモーニングコンサートですが、今回は開演ギリギリに入場した僕の整理番号は250番台。……入場率3割未満なのは、マニアックなプログラムゆえ仕方ないのかなぁ。
 最初の一曲は作曲科の学生さんによる演奏時間12分程の小品。吹奏楽コンクールの課題曲や、NHKの大河ドラマのテーマ曲を彷彿とさせる、複雑な響きの曲で、演奏する側にとっては面白そう。でも、年齢層の高い客席の受けは悪く、演奏終了後の拍手もさっさとやんでしまいそうになり、慌ててコンマスさん自らが拍手をして、もう一度作曲家を舞台に呼び出した次第。単なる好みの問題ではありますが、メロディアスなクラシック音楽って、絶滅したのでしょうか? 新作と呼ばれるオペラも管弦楽曲も、心惹かれる作品ってとんとお目にかかってないんです。寂しい。
 超コンテンポラリーの演奏が終わると、舞台上に残るのはチェロとコンバス、そしてオルガンの三人だけ。時代をと〜ってもさかのぼってバッハおじさんのナンバーが登場。まだ学生さんとはいえ、大学院生ともなると、一段と大人びた印象を受けます。朝から賛美歌の数々を耳にすると「今は日曜日、ここは教会」という気分になります。総勢20人以上もの歌手が次から次へと演奏する神のお言葉の数々。曲が進むごとにオケの人数も増えていき、最後に全員集合で「アーメン」を合唱するころには、舞台がとっても華やかに。
 いつもは「今日はこの曲が聴きたい!」というお目当てをもってのモーニングコンサートですが、たまたまの休みを利用して、フラリとお邪魔して、知らない曲だけれど気楽にボヘェ〜と楽しむのもオツなもんです。


2006年09月07日(木)14:00-17:10
フジテレビジョン「スウィート・チャリティ」@ル テアトル銀座

 S席 10000円 8列-17番 (パンフレット:1800円)
 演出・振付:川崎悦子

 チャリティ・ホープ・ヴァレンタイン:玉置成実
 オスカー・リンクゥスト:岡田浩暉
 ニッキー:樹里咲穂
 ヘレン:初風緑
 ハーマン/ポンペイクラブの支配人:赤坂泰彦
 ウースラ・マーチ/ビッグ・ダディのアシスタント:岡千絵
 ヴィットリオ・ヴィダル/ビッグ・ダディ:石井一孝

 ベテランの女優さんの役というイメージの強いチャリティ。今回は18歳の高校生が主演と聞いて、恐る恐る劇場へ。だって、宝塚だと研1の、それも中卒の生徒と同じ学年ですよ。初舞台生にしていきなり主役、それも思い切りオトナの役だなんて、天海祐希のビル(ミー&マイガール)以来の衝撃。ちなみに、天海祐希は高卒だから、当時すでに21歳にはなってたはず。実は玉置成実という名は今回はじめて聞いたのですが、14歳で歌手デビューとはいえ、舞台成果には全然期待してなかったんです。ほら、今までだって、ミュージカル初出演にして初主役なんだけれど、見るも無残な舞台ってことが良くありましたから。
 が、今回は脱帽です。玉置成実の舞台度胸は素晴らしい! 今日はまだ三回目の公演のハズですが、舞台上ではじけることはじけること、その眩しさが圧巻でした。歌もダンスも芝居も、萎縮なんて無縁で、実に伸びやかに演じていて、まだ荒削りながら、拙さとは無縁で、プロとしての技術を持っていることを証明。演出家のテコ入れもあったでしょうが、チャリティをちゃんと若いネエチャンの役に作り変え、消化しているのには舌を巻きました。今後、どんな女優さんに成長するのか楽しみ! キラキラ輝いている舞台人「私を見て!」とアピールしてくる舞台人、大好きです。「今の私を見せたいわ」なんて、役と役者がリンクして、と〜っても素敵でした。今後は是非ミュージカルの世界でも活躍していただきたいものです。
 実は今回のお目当ては樹里咲穂と初風緑の二人でした(って書かなくてもバレバレ)。宝塚新専科コンビの二人ですが、樹里咲穂は「女に生まれてきたからにはミニスカートはいて足どんどん見せちゃいます」「本物の男優が一緒だから、何やっても女に見えるのでやりやすい」とこれまた「私を見なさい!」という迫力が魅力的でした。彼女の場合は宝塚時代から女役を観ているので、ルックスも歌も違和感全然ナシ。気持ち良さそうに舞台に立ってました。対照的だったのは初風緑。本人が照れているのがバレバレ。ちょっとした動きなのですが「私を見なさい!」と「恥ずかしいわぁ」とは段違いなんです。それにしても、チラシ以上にいっちゃってる衣装とメイク、カツラには登場した瞬間にこちらがぶっ飛びました。幕開きに男優が演じるオカマちゃんが登場するのですが、初風緑はオカマちゃん役以上にオカマちゃんでしたwww
 男優陣はえてして好演。ひたすら女優陣のサポート役に徹していた気がします。岡田浩暉は誠実そうに見せていて、パニックになると滅茶苦茶になるという儲け役を実に美味しくこなしてました。エレベーターでのパニック場面は「この人にこんなコメディセンスがあるとは!」とお腹を抱えて笑ってしまいました。今まで真面目な役が多かったけれど、今後は是非ともコメディにも挑戦していただきたいものです。「プロデューサーズ」のレオ・ブルームなんて似合いそう。ヴィットリオ・ヴィダルの石井一孝も、その濃いルックスと押し出しの良さが生きて、実にはまり役。若手俳優と思っていたけれど、いつの間にやら中年のギラギラ感をかもし出すようになり、今後どのような役が回ってくるのか非常に楽しみ。バルジャンやヒギンズ教授よりも、この手の役の方が似合うと思います。
 と、適材適所の配役で、実に楽しいひと時を過ごしたのですが、なんと今日だけ終演後に樹里咲穂&初風緑のトークショーがおまけでつきました。この二人のトーク、絶品です。弾丸トークで突っ込みまくり、客をいじりつつも時間内ぴったりに話をまとめて爽やかに舞台を去っていくあたり、並々ならぬ才能を感じました。でもって、コメディのはずのミュージカル本編よりも、トークショーの方が客席が沸きまくるのもどうよ?www。


2006年09月07日(木)18:30-22:05
新国オペラ「ヴェルディ:ドン・カルロ」プレミエ@新国立劇場オペラ劇場

 D席 2835円(ATRE会員割引) 4階-4列-43番 (パンフレット:800円)

 指揮:ミゲル・ゴメス=マルティネス
 演出・美術:マルコ・アルトゥーロ・マレッリ
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 フィリッポ二世:ヴィタリ・コワリョフ
 ドン・カルロ:ミロスラフ・ドヴォルスキー
 ロドリーゴ:マーティン・ガントナー(ルドルフ・ローゼンの代役)
 エリザベッタ:大村博美
 エボリ公女:マルゴルツァータ・ヴァレヴスカ
 宗教裁判長:妻屋 秀和
 修道士:長谷川顯
 テバルド:背戸裕子
 レルマ伯爵/王室の布告者:樋口達哉
 天よりの声:幸田浩子

 2006/2007シーズンのオープニングナイトです。劇場の玄関には赤いカーペットが敷き詰められ、お出迎えは正装したスタッフたち(帽子は似合ってなかったけど)、劇場ホワイエでは、オペラ研修生たちによるミニ・コンサート(君こそわが心の全て〜古い外套よ〜私は夢に生きたい)が行われ、嫌が上にも気分が盛り上がる素敵な演出。いつもよりもお洒落な格好の観客も多く、実に華やいだ印象を受けました。新国のドン・カルロは2001年12月にヴィスコンティ演出による素晴らしいプロダクションの上演に感銘を受けていたので、とっても楽しみにしていたのですが……個人的に今回はブーイング。舞台装置はL字型のついたてが何枚かあって移動するだけなんだもの。ゴージャス至上主義の僕としては納得いかない内容。歌舞伎がまっさらな舞台で、宝塚のパレードが大階段ナシで上演されているようなものじゃないですか! もちろん、演出として、素晴らしい効果をあげているのであれば文句は言いませんが、出演者はみんな、芝居のしようがなくって、突っ立って歌っているだけ。こんなんだったら、コンサート形式の上演の方がマシってもんです。ついたてもやたらと動き回るだけで、芝居として盛り上がるわけでもなく、舞台の見た目が美しいわけでもなく、いったいこの演出家は何を表現したかったのか不明。そもそも、ヴェルディのオペラって、メロディは良いのに、台本に無理があるものが多く、音楽も芝居もやたらとゴツゴツしていて、オーケストレーションも含めて、実はあまり好きじゃないという事情もあるのですが(美味しいけれど、インテリアやサービスはイマイチなレストランみたい)、あまりに「楽しませるで〜」気質のナイ舞台で、途中で飽きちゃった。クライマックスのあっけなさなんて力が抜けましたさ。芝居としてこんなにつまらないオペラもないってもんです(宗教や政治に関する知識の乏しさも原因?)。これが、新国ではなく、もっと小さな劇場でのプロダクションだったらともかく、大劇場向けの演出とは思えません。
 良かったのは、ついたての装置が音響反射板の役割も果たしていて、ソリストの声もコーラスもビンビンだったこと。新国のコーラスが良かったと思えるのは実は今回が初めて。今まで新国のコーラスはffや高音になると声が散っていたのは、もしかしたら舞台装置も影響していた!? 実に素晴らしい響きでした。そして、三幕の最後に、いきなり舞台装置がはけて、後方舞台からコーラス=民衆がなだれ込んで来るシーンでは、40mの奥行きも相まって、実に勢いと迫力がありました。
 面白いことに、僕と僕の隣の席の人とで、歌手の好みが正反対らしく、僕が拍手を控えるような歌手に対して隣は「ブラボー」と叫んでるし、隣がおとなしくなる歌手だと僕が大拍手を送ってますし。好みがこんなに真っ二つに分かれるなんて、途中から面白くなっちゃった程。一方的に応援合戦の気分。僕としては、最後までスタミナを保ってゴージャスに歌いきった大村博美と、代役ながらスタイリッシュにロドリーゴを演じたガントナーが気に入りました。エボリ公女は派手に歌い上げていましたが、主役を生かすという観念がない歌唱だったので僕は拒絶反応。大村博美とヴァレヴスカの声質がかぶるというのも原因でしょうが、脇役が主役を立てないのは見苦しいです。好演で主役のお株を奪うのではなく、金切声をキンキンと張り上げるのは下品です。彼女がもっと自分の立場を認識し、それに見合った演技と歌唱をしてくれれば、もう少し盛り上がったかと思うのですが。。。


2006年09月10日(日)11:00-14:15
宝塚歌劇団花組「ファントム」サンケイリビング新聞貸切公演@東京宝塚劇場

 S席 8000円 1階-16列-66番 (パンフレット:1000円)
 演出:中村一徳

 ファントム(オペラ座に潜む怪人):春野寿美礼(和央ようか)
 クリスティーヌ・ダーエ(オペラ歌手を目指す少女):桜乃彩音(花總まり)
 ジェラルド・キャリエール(オペラ座の前支配人):彩吹真央(樹里咲穂)
 フィリップ・ド・シャンドン伯爵(オペラ座のパトロンの一人):真飛聖(安蘭けい)
 アラン・ショレ(オペラ座の新支配人):夏美よう(鈴鹿照)
 ガブリエル(音楽教師):梨花ますみ(鈴奈沙也)
 カルロッタ(新しいプリマドンナ、ショレの妻):出雲綾(専科)(出雲綾)
 マダム・ドリーヌ(オペラ座最古参のバレエ教師):鈴懸三由岐(高柳みどり)
 ジャン・クロード(楽屋番):高翔みず希(美郷真也)
 ルドゥ警部(パリ警察署長):大伴れいか(寿つかさ)
 セルジョ(オペラ座の団員):愛音羽麗(初嶺磨代)
 リシャール(オペラ座の団員):未涼亜希(遼河はるひ)
 モーク・レール(舞台監督):眉月凰(速水リキ)
 ソレリ(オペラ座の団員):華城季帆(彩乃かなみ)
 ラシュナル(オペラ座の団員):悠未ひろ(桐生園加)
 ※( )内は2004年8月宙組公演時の配役

 リビング新聞創刊35周年記念貸切公演なんだそうです。開演前は記念式典が、幕間にはプレゼント抽選会が、終演後には舞台上でトップさんのインタビュー&ご挨拶が、それぞれヤクルトの古田監督夫人が登場して執り行われました。実は古田夫人大好きなので、サプライズの登場に大喜び。タカラジェンヌはいつでも観られるし、と思わず古田夫人ばかりオペラグラスで追ってしまいました(笑) アナウンサーだから口調は滑らかだし、彼女自身が宝塚ファンだし、適切な解説をはさみつつ、テキパキとした進行に好感を持ちました。
 宝塚の場合、再演を担当する組が一番割を食う気がします。三演目以降になると「それぞれ違うんだよね」とファンも分散するのですが、再演の段階だとついつい初演と比べられまくりなのがツライところ。そして、演じる側も初演を意識して、必要以上に「違いを見せよう」となってしまう印象を受けます。ことに、今回は初演メンバーのほとんどが退団したてということもあり、かなりやりにくかったことでしょう。
 と書きつつ、僕もつい比較してしまうのですが(汗) トップコンビありきだった宙組は、外来ミュージカルを演じるにはぴったりの陣営で、アンサンブルのレベルの高さと主役二人の世界で空間を埋めてしまうのが特徴だったのに対し、花組は新トップコンビのお披露目(三人目のお嫁さんですが…)ということと、アンサンブルよりも個人技を得意とするのが特徴なので、かなり肌触りの違う作品に仕上がっていました。また、ファントム役も、宙組版の和央ようかでは一泊目のアクセントを強調した歌唱に対し、花組版の春野寿美礼は一泊目にアクセントをおかずソロリソロリと歌い始める歌唱なので、曲の印象がガラリとかわってしまいました。たどたどしく歌いつつハイライトで爆発するか、レガート歌いつつちょっとずつアクセルを踏み込んでいくか、オペラで言うとドイツ物とイタリア物位違っていて、その差が面白かったです。スケールの宙組、甘さの花組といったところでしょうか。ただし、組全体でのスタイルが統一されていた宙組に比べ、花組は個々の発声や歌い上げのスタイルがあまりに異なるので、ショーならばともかくとして、ミュージカルとしてはエネルギーが分散されてしまったようです。出演者同士どのようにバランスを取るか、とはいえスター芝居でもあるのでその中でいかに個性を見せていくかの難しさを感じました。よって、本編では場面ごとに感情がぶった切りにされてしまい、クライマックスの盛り上がりが物足りなかったのが残念。でも、作品としてよりも、個々のスターを見たい、という人には今回の方が面白いのかな?
 演出は全体的にイマイチ。衣装は某知人に「ベルばらですか!?」と言わしめたほど、時代考証といい設定といい、いくら宝塚とはいえヲイヲイと言いたくなるようなチグハグさ。トップだからフリフリにすりゃ良いってもんじゃないでしょ。これが似合っているならばまだ良いのですが、上半身のボリュームアップによって、短足に見えてしまうのですから、衣装部によるトップさんいじめかと勘ぐっちゃいました。フィナーレナンバーは選曲のセンスといい、編曲の趣味の悪さといい、シートベルトぷりぃずの連続。バタフライの「Un bel di vedremo」を歌い上げる桜乃彩音のアチャラカパーな歌と、摩訶不思議なコード進行とリズムの変化は、面白いを通り越して唖然呆然。途中で逃げ出したくなりました〜。「Nessun dorma!」は今年の流行曲なので取り上げたのでしょうが、春野寿美礼の声質と合わないので演奏効果はイマイチ。色んなアーティストによる演奏に一般人も慣れた頃に、技術の拙い生徒に同じことをさせるなんて気の毒としか言いようがありません。宝塚って流行が去る頃ようやく舞台でそれを取り入れるという悪癖があるけれど、コレってなんとかならないものでしょうかね? 「歌が売り」とされているトップさんなのにボロださせてどうするんでしょう? 自分の商品を貶めてどうする!! 今回も「トゥーランドット」は都内各地で上演中だっていうのに。(これに関してはねぇ、今までも散々文句言ってますけど、演出家の勉強不足と怠慢の結果かと思われます。あ、書いちゃった!)


2006年09月15日(金)20:00-21:15
古川展生「チェロリサイタル」@浜離宮朝日ホール

 全席指定 2500円 1階-5列-7番 (パンフレット:無料)
 ピアノ:坂野伊都子

 バルトーク:ルーマニア民族舞曲
 ポッパー:ハンガリー狂詩曲
 コダーイ:アダージョ
 コダーイ:ハンガリアンロンド
 マルティヌー:ロッシーニの主題による変奏曲
 ドヴォルザーク:4つのロマンティックな小品より第1曲
 ドヴォルザーク:わが母の教えたまいし歌
 ピアソラ:アディオス・ノニーノ
 ピアソラ:タンティ・アンニ・プリマ
 ピアソラ:リベルタンゴ
(アンコール)
 ヘンデル:「リナルド」より「私を泣かせてください」
 モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス

 今日のコンサートを一番楽しみにしていて、一番楽しみにしてたのはボクです。異議は却下!! 何ってったって、のぼぉちゃんの新シーズンオープニングコンサートです。仕事は朝から「定時であがるよ」と宣言していたのにあがれなかったし、新宿駅で大江戸線に乗り込んだとたん「事故のため運転を休止します」のアナウンスが流れて大慌てだったけれど、どうにか開演時間ジャストに着席。とりあえず、のぼぉコンサートdayにもかかわらず雨は降らなかったし。
 ピアノの伊都子さんは真っ赤なドレスで華やかに登場。のぼぉちゃんは黒パンツに黒シャツ。珍しく引き立て役に徹した!? いえいえ、なかなかアダルトな雰囲気が20時開演のコンサートにマッチ。伊都子さんのピアノはのぼぉちゃんと相性が良いので、弾き始めるまでの数秒の間に期待で胸が苦しくなってきますわ。のぼぉちゃんと伊都子さんのカップリング、互いの美点を引き出しあっているみたいで、実にバランスがよろしゅうございます。プログラムは派手な曲で始まり、仕事帰りでまだコンサートモードになってない僕が聴くには嬉しい配列。途中でのぼぉちゃんのトーク(「好きなんです」一辺倒だったのを改め、きちんと一曲ずつ解説ができたのには花丸)をはさみつつ、最後はしっとりと終わる曲順、平日のコンサートとしてはナカナカの並びだったのではないでしょうか。明日も元気に働くぞ!という元気が出てきます。ホールの規模も音響もコンサートの長さも、東京の夜に実にピッタリなものでしたョ
 一曲目は、いきなり伊都子さんのピアノが……蹴りとともに始まりました。元々足癖の楽しい方ではありますが、あんよの落ち着きのなさでは負け知らずなのぼぉちゃんだって白旗をあげるであろう蹴りっぷりでした。まるで「今日の主役は私よっ」とでも言っているようなコンサート開始宣言にヨダレがジュルッ。いやぁ、スゴイ迫力でした。となると、のぼぉちゃんも大人しい演奏に凝り固まるはずもなく、伊都子さんの音楽に乗っちゃって、スケールの大きな演奏をぶつけてきて、おぉぉ状態。終演後にのぶ倶楽の仲間との話にも出てきましたが、昔はコンサートのトリに持ってきていた曲が、単なる小品としてプログラムの前半に持ってこられているあたり、のぼぉちゃんの成長が感じられ頼もしい限り。細やかなパッセージの処理が勢いはあるけれど丁寧に正確になってきてるんです。こうなると「またぁ?」という感想も「弾き続けるってスゴイ」と変わってしまうのだから我ながらあきれたもんです。いつもの課題もほとんど気にならず「上手になったよね〜」とサイン会が行われているすぐ横で語り合う僕たちって……プロに対してなんて失礼なファンなんでしょ(汗) でも、大好きなんですョ、のぼぉちゃんのチェロ。実は新味のないプログラムなので、あまり構えていなかったのですが、何の何の、ここ最近ではベストの仕上がり。来て良かった〜。のぼぉ節全開で、ご本人も気持ち良さそうに音と戯れていました。ホールの響きに、ピアノとのブレンドに、足癖の悪さに(これは演奏が乗っている時のサインなので良い兆候です)、お約束の楽譜落としに、、、嬉しい要素がテンコ盛りで、聴きながらついちニコニコ。
 と、舞台前面ではのぼぉちゃんが幸せそうな姿をみせているのですが、その背後では恐ろしいことが起きていました。予想外の伏兵・譜メクリストのおじさんが挙動不審で、黒子のはずなのに大注目を集めてしまったんです。とにかく譜面をめくるタイミングのわかってない人で、伊都子さんが「めくって!」と合図を送ってもめくりやしない。おまけに「めくるべきかめくらざるべきか、それが問題だ」と悩んでしまうタイプのようで、楽譜をサッと一瞬でめくるのではなく、ふんわりとゆっくりおめくりに。楽器を演奏される方ならお分かりかと思いますが、これやられると困るんです。前後の音は一瞬で読めますから、いつまでも譜面が見づらい状態ではなく、さっさとめくってほしいんです。今日のおじさんは、伊都子さんの複数にわたる「めくって」の合図にようやくめること数回。途中からはついにめくり忘れが続出。演奏しながら伊都子さんの顔が引きつってくるのがわかって、客席でドキドキしてしまいました。ゆっくり&シンプルな曲でこんな状態なのですもの、ピアソラともなると悲惨としか言いようがありません。めくろうかどうか舞台をウロウロしながら考えているくせに、必要な時は譜面を見てない(目が演奏にあわせて譜面を眺めてない)ので、、結局、ほとんどの箇所で伊都子さんが自らスゴイ勢いで楽譜をめくっていました。もうおじさんの面目丸つぶれ。最後の曲だって、本番の舞台だというのに、伊都子さんが「こことここでめくるのよ」と二度も説明していたにもかかわらず予想通り間違えるし。舞台上でのことなので、伊都子さんは客席には愛想良くご挨拶するのですが、おじさんのことは完全に無視。おじさん、たださらし者になるためだけに舞台に出てきてました。それにしても、なんでこんな楽譜も読めない、譜めくりの経験のなさそうな人が(見りゃわかります!)、よりにもよって伊都子さんの譜メクリストとして選ばれたのか謎です。朝日新聞社内の伊都子さんファンのお偉いおじさんが「お近づきになれるなら」と「簡単そうな仕事だし」って応募してきたとしか思えない状況。どこの誰だかと〜〜〜っても気になって仕方ないですわ。前代未聞の下っ手くそな譜めくりで、僕が今まで居合わせた中で最低。あ、めくっちゃいけない箇所をめくろうとして「これはダメっ」としかられてたんだった>おじさん! 途中で僕が舞台に駆け上って譜メクリストの座を奪おうかと真剣に考えてしまったほどです。
 そんな状況ですから、演奏中に伊都子さんの顔つきがどんどん恐ろしくなっていくのですが(舞台前面で微笑んでるのぼぉちゃんと対照的!)その演奏は表情とは裏腹に実に雄弁。いつものネットリとした、ピアノの力を最大限に引き出す、という演奏だけでなく、細かなパッセージを効果音的に挿入する部分での音色の多彩さ、タッチのバリエーションの多さ、音圧のレンジの広さに、あらためて「この人スゴイ」と感動しまくりました。のぼぉちゃんの演奏も良い意味で彼女の影響を受けているし、「伊都子さん、ありがとう」の気持ちでイッパイ。pppでの高音のパッセージ、粒は揃っているし、クリスタルグラスをはじいたかのような透明感のある音色で感動。スゴイです。
 ということで、絶好調ののぼぉちゃん、実力をたっぷり出し切った伊都子さん、あまりの怪しさに場面をさらってしまった譜メクリストに乾杯です。幸せな夜でした。


2006年09月18日(月・祝)11:00-13:20
宝塚歌劇団宙組「貴城けいコンサート I have a dream」@サンシャイン劇場

 全席指定 7000円 1階-5列-20番 (パンフレット:800円)
 演出:中村暁

 貴城けい
 彩苑ゆき/紫城るい/北翔海莉/美羽あさひ
 音乃いづみ/七帆ひかる/八雲美佳/咲花杏
 早霧せいな/花影アリス/春風弥里/凪七瑠海/愛花ちさき

 雪組→宙組に組替えによりトップ就任、これから活躍を…という矢先に退団発表が行われた貴城けい。トップお披露目コンサートのはずが、一転してサヨナラコンサートとなってしまいました。
 タイトルこそ「コンサート」と名乗っていますが、実際は普段の公演のミニチュア版で、前半がお芝居、後半がショーという構成でした。そして、そのお芝居は、ツタンカーメン→ラファエロ→明智光秀→オスカー・ワイルド→チェ・ゲバラといった、夢半ばにして命を落とした人たちの物語。ツタンカーメンからチェ・ゲバラに向かって、同じ魂が生まれ変わる、という流れかな。でもって、50分の間に彼らの人生が語られるのですから、話が飛ぶこと飛ぶこと。オープニングで、ツタンカーメンの王位就任を称えるコーラスの中、貴城けいが扮するツタンカーメンが登場するのはいかにも宝塚的な華やかさですが、登場したと思ったら、あっけなく殺されておしまい。その後の登場人物も、似たり寄ったり。なんだか、次から次へと命を落としていくばかりで、話が盛り上がらないことといったら! とりあえず、貴城けいの各役の姿の美しさ(ラファエロやオスカー・ワイルドでは、男ではなく、男役としての色気したたる美しさといったら!!)と、娘役たちのドレスさばきの見事さ(入団間もない学年の生徒も、なぜかドレス扱いにかけては他劇団の追随を許さないのはさすが!)はあったものの、作品としては恐ろしくつまらなかったです。でも、現在の宝塚でトップクラスのコスプレの似合いっぷりがあったので、とりあえず暴動は起こしておりません。(ライヴではなく、写真集などのアイデアで良かった気が。。。)。
 が、休憩を挟んでのショーではいきなりジャニーズ・ナンバーの連続に会場大熱狂でした。たまたま今回はかしげ会の団体に紛れ込んだような状況だったのですが、場面によっては舞台よりも観客を眺めている方が楽しかった! 特定の誰かを愛し、応援して盛り上がる人たち、うらやましいです。とっても幸せそうでした。前半は作品としてはつまらなかったけれど、貴城けいにとってはピッタリの構成。逆に、後半は大いに盛り上がって楽しかったけれど、中心の貴城けいが足は捻挫しているし、声は疲れからか伸びがなく、かなり辛そうな状態でした。このところ、万全の体調でないまま退団するスターが多くなった気がしますが、本公演では元気な姿を見せてほしいものです。
 そんな中、元気に舞台を盛り上げ、貴城けいをフォローしていたのが紫城るい。今回の彼女は大活躍です。紫城るいは、元男役なだけに、娘役の中ではタッパがあるし、位取りもナカナカ。数々のドレスがどれもお似合い。そして、後半の幕開きでは、ジーンズにシャツというシンプルなスタイルながら、ダンスの大きさ・切れの良さで、並み居るスターを押しのけて、見事トップ状態に。今まで彼女がこんなに大きく演じるスターだとは知りませんでした(いかに今までのトップさんたちが下を押さえつけていたかを感じます)。芝居は情感が溢れているし、歌もそこそこ上手だし、ダンスもバリバリ。これほど手のかからない娘役も珍しい位です。デュエットダンスも、リフト場面以外は、るいるいだけで踊っているような印象(リフトは持ち上げる方も持ち上げられる方も良くなかった!)。好き嫌いが分かれるでしょうが、僕は男役に寄り添うタイプの娘役は嫌いで、男役と対等に渡り合うタイプの娘役が好きなので、今回の紫城るいはかなり高ポイント。(僕に関しては)貴城けいが完全に食われてしまいました、スミマセン。後半は紫城るいばかり見ちゃいましたもの。ちなみに、客席降りが二度ほどあったのですが、一度目は紫城るいが僕の目の前20cm、二度目は花影アリスがこれまた僕の目の前20cm。二人とも僕の合いの手にちゃんと応えてくれるし……一本釣り成功されちゃいました。可愛いですねぇ。
 男役の面々はまだ自分のアピールになれてない印象の方もいましたが、今までアンサンブルとしてしか知らなかっただけに「ここまで出来るんかいっ!」とビックリする場面もそこかしこに。貴城けいのトップお披露目ですが、組子たちもちゃんと見せ場が設けられていて、それぞれが自分の持ち場面を競って演じていたので、とても勢いがありました。舞台はこうでなくっちゃ!! タッパと歌唱力がある面々なので、今後が楽しみ。中でも、月組から移ってきたばかりの北翔海莉の張り切り方は特筆モノで、月組だと浮いてしまった芸質も、宙組だと丁度良い按配で、濃厚な男役芸を楽しませていただきました。そして、ショー場面では、声の立ち上がりの早さと、歌いまわしのパンチの良さで、かなり聴かせてくれました。楽しかった〜。


2006年09月19日(火)14:00-17:25
二期会「モーツァルト:フィガロの結婚」@オーチャードホール

 B席 5500円 2階-7列-9番 (パンフレット:800円)

 指揮:マンフレッド・ホーネック
 演出:宮本亜門
 管弦楽:読売日本交響楽団←管楽器がぁぁ(涙)

 アルマヴィーヴァ伯爵:萩原潤
 伯爵夫人:腰越満美
 フィガロ:久保和範
 スザンナ:半田美和子
 ケルビーノ:泉千賀
 バルトロ:峰茂樹
 マルチェリーナ:渡辺敦子
 ドン・バジリオ:上原正敏
 ドン・クルツィオ:加茂下稔
 アントニオ:村林徹也
 バルバリーナ:里中トヨコ
 花娘1:北條聖子
 花娘2:前田真木子

 失礼ながら、伯爵はミス・キャストだと思っていたんです。パパゲーノのようなコメディ・リリーフは最高に似合っていたけれど、貴族としての品格や衣装の着こなしにかんしては萩原潤の伯爵というのは全然想像できませんでしたから。。。そして、案の定、衣装やカツラの似合わなさではワースト・ドレッサーでした。しょっぱなは「観てはいけないものを観てしまった」という気持ちで思わず、オペラグラスを目から離してしまった程。舞台人はせめて体を鍛えておかないといけないな、と思った次第です(太さ細さとは別に、引き締まった体なのか、緩んだ体なのかで衣装の着こなしって全然違うでしょ)。上背がないのにガウンのようなコートのような衣装だったり、5頭身になってしまうカツラに関してはスタッフの愛のなさを感じた位。
 でも、演技力で場をさらってしまったのは圧巻。「フィガロの結婚」って、今まではスザンナが中心になっての「結婚するぞ〜!」の話だという印象で、アルマヴィーヴァ伯爵は単なる悪役のようなイメージがあったのですが、今回は「だめんず」としての伯爵の存在が中心となった、楽しいコメディに仕立てられていたように思います。となると、邪気のなさや、気のいい天然キャラが、なんとなくお坊ちゃんっぽく見えてくるのですから不思議なものです。感情の起伏が激しくて、鼻の下を伸ばしたかと思ったら、急に怒り出したりして、一緒には住めないなぁって人なのですが、威圧感がないせいか、感情に忠実で瞬間湯沸かし器になった直後、コロリと機嫌が良くなっていたりして、今回の伯爵はかなり愛らしかったです。。Wキャストにして、萩原潤とはタイプの異なる黒田博がどんな伯爵を作り上げたのか興味があります。
 と、意外にも萩原潤が傑出した存在感を出したのに対し、その他の面々はちと分が悪いです。腰越満美は豪華な衣装が見合って美しかったけれど、押し出しがよろしくなく存在感が希薄。その他の面々もとにかく地味。これは二期会オペラの特徴ともいえるのですが、スター不在状態なので、役の個性が浮き上がってこないので、せっかくの亜門演出も必死にこなしているのは伝わってきますが、余裕がないので粋だとか洒落っ気がないんです。オペラセリアならばともかく、芝居色の強い「フィガロの結婚」なので、客席にパワーが届かないのには困ってしまいます。客席と舞台が一体化するのではなく、客席を拒絶しているような舞台に寂しさを感じてしまいました。多分、伸びやかさだとか動きの大きさにまで意識がいってないのが原因かと思われます。ここ最近、演出に力を入れだした二期会オペラですが、今後はそれに見合ったスター性のある歌手、華のある歌手の発掘が急用ではないでしょうか。コレに関しては努力や訓練とは別のものなんですよねぇ。努力だけではどうにもならないものがあるのがプロの舞台。今回はコレを痛切に感じさせられました。どうしても、二期会=脇役の集団というイメージが払拭できないんです。主役陣はもっとアンサンブルとは「別格よっ」の空気が欲しい。。。仲良しグループなのはカーテンコールの時などでわかるんですけど。スターとしてはどうよ!?
 「フィガロの結婚」は芝居としても良く出来た作品だと思うのですが、第三幕のようにまるでマンガのように登場人物の感情がコロコロかわる場面なんて、モーツァルトの遊び心に何度観ていても心浮き立ってきます。何かのきっかけでコロリと表現が変わってしまうのには大笑い。アンサンブルの面々もそれらを楽しげに演じていて、観ていて心地よかった〜。亜門演出もこの部分は実に丁寧に扱っていて、コロリと人格が変わる瞬間が音楽と実にマッチしていて心地よかったです。半田美和子はコメディセンスないのかな。ジャンル違いは重々承知ですが、「スア・マードレ」「スオ・パードレ」の場面で大地真央ばりの間と芝居が出来れば萩原伯爵と張り合えたのに。。。とにかく「フィガロの結婚」に関しては、歌唱力だけでは勝負できないオペラだなぁ、というのを再認識。……でもね、今回の公演、とっても楽しかったんですよー。今後の二期会発展に向けての新人公演と思えば、ナカナカの出来。亜門演出もほとんど2002年の東京文化会館公演を踏襲していて、シンプルながらポイント・ポイントを押さえた流れの良い演出。ミュージカルもですが、彼はあれこれ設定をいじくるよりも、オーソドックスな演出で、間や小芝居で場を盛り上げる方式の公演の方が僕は好きですし、公演評などの評価も高くありませんか? ま、このあたりは「求められること」と「やりたいこと」のギャップがあるのかもしれませんね。


2006年09月19日(火)19:00-20:35
東京藝大チェンバーオーケストラ「ヨーロッパ公演特別演奏会」@東京藝術大学奏楽堂

 全席自由 無料 11列-9番 (パンフレット:無料)
 指揮:ゲルハルト・ボッセ
 管弦楽:東京藝大チェンバーオーケストラ

 モーツァルト:アダージョとフーガ ハ短調 K.546
 ブリテン:フランク・ブリッジの主題による変奏曲 op.10
(休憩)
 メンデルスゾーン:交響曲 第4番「イタリア」 op.90

 ヨーロッパ公演に向けての試演会のようなコンサート。芸大生の中でも成績優秀者をピックアップしてのオーケストラで、指揮者がゲルハルト・ボッセとなると、思わず「のだめカンタービレ」のミルヒーオケ(Aオケの方ね)を想像してしまいます。が、いかんせん、先週は芸祭で仮装オーケストラなんぞを見てしまったので「女装の人だ〜」みたいに、扮装時のキャラクターで演奏家をチェック。だって、名前知らないんだもん(笑) 仮装オケで楽しそうに遊んでいた人が、選抜オケではトップなのかぁ、でも、プロになってもきっと「女装の人」と我が家では呼ばれ続けるんだろうなぁ、と思わずクスクス。演奏はお遊びの公演と違って「本気の芸大はスゴイ」と感動モノでした。だって、ヴァイオリンなんて「あの人は○○のコンチェルト弾いた人で、あっちの人で○○のコンチェルト聴いたことあるでしょ」という状況。昔、東京文化会館でサイトウ・キネン・オーケストラの旗揚げ公演があった時のことを思い出してしまいました(ここ最近のサイトウ・キネンはソリスト率が落ちてる!?)。
 何がスゴイって、英才教育を受けてきて、さらに芸大ヴァイオリン科の中でも選ばれたんだ、という1stヴァイオリンの面々の自信のあらわれ。恐らく、今の段階では挫折知らずであろう、若者たちの曇りのない勢いに押されっぱなしでした。通常、プロのオケでも、プルトが後ろになると「やる気あるのあしらん?」って人が見受けられるのですが、今回に関しては「全員がコンマス」状態。弓の跳ね返り具合、上半身ののけぞり具合、きっとマルレ・オケだったら、コンマスさんに「君、この程度でいい気になってるんじゃないよ」と千秋真一と同じ注意をされてしまうことでしょう(笑) でも「これぞ芸大」という勢いがなんとも心地良かった〜。前半では確かなテクニックを見せ付けていましたが「イタリア」になると余裕シャクシャクで、千秋真一&ライジング・スターってな雰囲気。「私のヴァイオリンを聴け〜〜〜っ」という良い意味での押し出しの良さに興奮してしまいました(単に僕の好みってのもありますけど)。きっと、ヨーロッパのみなさんにも喜んでいただけることでしょう。


2006年09月24日(日)17:00-20:30
バーデン市立劇場「モーツァルト:フィガロの結婚」@ミューザ川崎シンフォニーホール

 C席 4000円 4階-C5列-12番 (パンフレット:無料)

 指揮:クリスティアン・ポーラック
 演出:ルチア・メシュヴィッツ
 管弦楽:モーツァルティアーデ管弦楽団

 アルマヴィーヴァ伯爵:パウル・アルミン・エーデルマン
 伯爵夫人:エリザベト・フレェッヒェル
 スザンナ:シフィウィ・マッケンヅィー
 フィガロ:マルティン・サァンデァルス
 ケルビーノ:ジョリーン・マックリーランド

 来日公演ではありますが、一枚何万円もする公演ではなく、もしかしたら日本のオペラ団よりも安かったりする、オーストリアの地方オペラがなぜか毎年来日しています。東京のメジャーな会場での公演はなく、あえてオペラに縁のなさそうな地を選ぶので、興味を持っていました。今まであった市川公演には足を運ばず、わざわざ遠くの川崎公演を選んだのは、ミューザ川崎というコンサートホールでの上演がどんなものか気になったということもあります。結果から言いますと、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでの公演のように、オルガンは巨大な幕で隠してしまい、普段オケが乗っている舞台に無理やり大道具を飾りこんでの上演。幕を釣るわけにはいかず、袖もないので、舞台の作りが丸見え。席によっては、舞台裏も丸見えという、ある意味とっても面白い公演でした。舞台装置は宝塚の地方公演用のものに近く、書割の板をひっくり返すと次の場面の装置に早替わりといったもの。アイデアは面白いけれど、ショボイです。普段は見ることのできない裏舞台や場面転換がじっくり見られて、劇場マニアな僕としては大喜び。ちなみに、オーケストラは客席の椅子を3列ほどとっぱらって陣取っていました。なお、このホールは舞台が極端に低く、一階席はほとんど平らなので、おそらく、平土間席の方はかなり舞台が観にくかったかと察せられます。でも、オケピから舞台を見ているような雰囲気もあって、楽しかったんじゃないでしょうか。
 実は僕はこのホールは初めてなんです。シューボックスタイプでもワインヤードタイプでもなく、渦巻きタイプとでも言いましょうか。一階席から四階席までが螺旋階段のように渦を巻いているんです。アイデアとしてはとっても奇抜! 平土間が非常に狭く、まるで台風の目を覗き込んでいるかのような縦長空間。よって、目の前の手すりや、視界に入る客席は左右並行でなく、船酔いしそうな気分になってしまいました。こんな面白いホールは初めてです。舞台はほとんど半円で、幅はかなり広いです。今回の屏風のようにサイズを調整しやすそうな舞台装置も、ほとんど伸ばしきってまっすぐ状態。本拠地のバーデン市立劇場は行ったことがありませんが、今回はおそらく通常の舞台の倍の幅はあったかと思われます。元々「フィガロの結婚」はスケールの大きな作品ではないので、出演者は本気で!舞台を走り回っていました。でないと、きっかけの音楽の間に入退場できない!! つい数日前に(今思うと)格調高い亜門版「フィガロの結婚」を観ていただけに、そのギャップにビックリ。
 でも、この公演とっても満喫したんです。後味が大変よろしゅうございます。美術はお金なさそうだし、歌手のレベルも特出した人はおらず、じゃ、ウィーン風かというと、キャストは世界各地から集合した多国籍チーム。レチタティーボは極端にノロイし、誰一人として「新国が呼びそう」という人はいませんでしたが、アンサンブルの良さと、のんびりした雰囲気が東京で馴染みのオペラ公演の数々とは違って、のんびりムードが楽しいんです。あえて言えば宝塚歌劇の世界。リアルでもなければ技術が高いわけじゃなく、どちらかというと田舎臭くおっとりしているのですが、「温泉ついでに観てってよ」な雰囲気が濃厚。誰もが伸びやかで芝居も歌も楽しんでいるのは観ていて気持ちが良いですね。都内のメジャーホールには似合いません、この雰囲気。川崎でもおそらく都会すぎます。もっとひなびた温泉地の小さなホールでの上演がふさわしいんじゃないかな。そういう意味で、あえてメジャーホールを外し、地方公演に専念する呼び屋さんはエライ! その土地にあった上演方法で、気楽に楽しいオペラ入門。これが、日本のオペラ団ではなく、外来カンパニーが毎年行っているというのが悔しいけれど、この着眼点が実に素晴らしいです。たまにはこんなオペラもオツなものです。気に入りました。
 気になったのはパンフと字幕。何だか昭和の「NHKイタリアオペラ公演」を彷彿とさせる古めかしい表現だらけなんです。直訳がこなれてないので、字幕を読もうとするとさらに混乱しそうに。コンテッサなんて「おきさきさま」ですよ。いつからそんなに偉くなったんでしょう!? さらには、字幕なのに「以下、同じような事が歌い継がれる」だの、詠唱(アリアちゃうで〜)の調やテンポ、解説まで挟み込む摩訶不思議なものだったんです。今どきこんな時代錯誤なのも珍しいとパンフをパラパラめくってみたら、この公演の招聘の中心人物がかなりのおじいちゃん。キャリア的には素晴らしい方なのですが、時代の変化に取り残されちゃったのでしょうか。昭和30年位の香りの漂うものでした。初めてオペラを観るという人にこのカンパニーはいかがなものかと思いますが、良く言えばオペラ史の博物館、悪く言えば時代錯誤の貴重な公演とも言えましょう。違和感を笑い飛ばせる人にはオススメします。きっと、避暑地でのんびりオペラ「見物」する人たちにはピッタリなカンパニーでしょう。温泉地、もしくは高原の小さくてでも豪華でお洒落な劇場、もしくは屋外劇場でリゾートカジュアル姿で音楽祭なんてやってみたら人気出るかも! ウィーンからたったの20km(それこそ、東京〜川崎位?)にもかかわらず、ここまでローカルなカンパニーが存在しちゃうのには脱帽です。日本も清里だとか北海道あたりにこんなカンパニーができないかしらん。