観劇日記〜2006年10月〜
05日(木) 11:00 竜小太郎特別公演「緋牡丹慕情」「艶くらべ」初日 三越劇場
05日(木) 15:00 宝塚歌劇団月組「オクラホマ」初日 日生劇場
05日(木) 18:30 新国立劇場バレエ団「ライモンダ」初日 新国立劇場オペラ劇場
06日(金) 19:00 中鉢聡「テノールリサイタル」 カワイ表参道 パウゼ
08日(日) 14:00 錦織健プロデュース・オペラ「モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ」 東京文化会館
08日(日) 18:00 宝塚歌劇団月組「あかねさす紫の花」「レ・ビジュー・ブリアン」 市川市文化会館
09日(月・祝) 13:00 来日カンパニー「冬のソナタ」 新宿コマ劇場
15日(日) 13:00 ひろしまオペラルネッサンス「モーツァルト:フィガロの結婚」 新国立劇場中劇場
20日(金) 12:00 東宝「ご存知!夢芝居一座 ―大笑い!さくら&まこと劇団 奮闘記―」 帝国劇場
20日(金) 18:30 藤原歌劇団「ロッシーニ:ランスへの旅」 東京文化会館
22日(日) 14:00 新国オペラ「モーツァルト:イドメネオ」 新国立劇場オペラ劇場
25日(水) 13:30 ホリプロ「ペテン師と詐欺師」 銀河劇場
29日(日) 14:00 「ゴルフ・ザ・ミュージカル 〜ゴルフなんて大嫌い!」千秋楽 PARCO劇場


2006年10月05日(木)11:00-14:25
竜小太郎特別公演「緋牡丹慕情」「艶くらべ」初日@三越劇場

 全席指定 6000円 1階-9列-7番 (パンフレット:800円)
 演出:中村一徳

 矢野竜子:竜小太郎
 舎弟 石丸:高橋光宏
 乾分 河豚勘:山下禎啓(花組芝居)
 温泉宿の女中:佐藤美佐子
 猪熊虎吉:長門勇
 妹 花:吉野悦世
 金津新蔵:高野晃大
 鏑木剛蔵:石橋雅史
 客分 蛇常:西田良
 芸者 梅香:藤川恵梨
 藤原りき:三浦布美子

 竜小太郎一座、二度目の三越劇場公演。そして、女形でのお芝居としては初の座長公演なんだとか。そういえば、今までのお芝居はすべて男役で、女役はショー限定だった! 個人的にはお涙頂戴のメソメソした男よりも、気風の良いお姉さんの方が好きなのですが、啖呵を切りまくる竜子さん、素敵でした。この役は、高嶺ふぶきでも、観てみたいなぁ(ってことで、ミュージカルファンの人にも傾向がわかるでしょ!?) 浅草大勝館での座長公演の際は「小太郎さんの役抜粋」的な演出なので、話がやたらと飛びまくることがあるのですが、今回は長門勇や三浦布美子といったベテランやゲストにも大きな見せ場があり、竜小太郎の出番こそ減ったものの、作品の流れが抜群に良くなり、逆に登場場面での印象が強くなった気がします。労少なくして功大きい。旨い作りです。ベテランの二人は、座長をジャマすることなく、でも自分の出番はきっちりと空間を埋めていて、さすがの存在感です。座長もタジタジ。でも、座長だけの一人芝居ではなく、緊張感あるやりとりが舞台でなされるので、とっても見ごたえがありました。専科格のこのお二人、好きですわ〜。
 そんな中「チョイ役賞」を送りたいのは佐藤美佐子ちゃん。元々お嬢さん女優の美佐子ちゃんですが(裕福な商家のお嬢さんがドンピシャリ)、今回はあえて「ブスな女優が演じると効果的」なコメディキャラな女中さん。場面のつなぎ程度のほんのちょこっとの出番なのですが、クルクル回る表情といい、立て板に水のごとき台詞といい、今までになり新鮮な美佐子ちゃんが登場です。元が別嬪さんだから、この手の役はかなり難しいと思うけれど、ちゃんと笑いを取っていましたし、何よりも、彼女が役を楽しんでいるのが伝わってきて素晴らしい出来でした。今後、コメディにも挑戦してもらいたいです!
 ショーは定番あり、新場面あり。プログラムに構成が書かれてなかったので、実はちょっと中だるみを感じる部分もありましたけれど、それでもお馴染みのシーンになるとクスリと笑ってしまいます。毎回同じネタなのに、間などできっちりと笑いを取るあたり、落語に通じるものがありますね。「ハンカチ降り」に「ブンブン」とお尻を振るナンバー、ご祝儀集めなど、毎公演あるにもかかわらず、それでもハイライトシーンになってしまうのだから恐れ入ります。小太郎さんの座長としての貫禄を見せ付ける場面の数々です。
 ショーでの美佐子ちゃんはダンス場面で活躍。中でも、ハイテンポなダンスナンバーでは、リズム感の良さが光っていて、同じ振り付けなのに、群舞の中で彼女だけ光ってました。ジャンプのキレの良さはピカイチ。今回のカンパニーでのベスト・ジャンパーは美佐子ちゃんです。横で一緒にジャンプしている男優さんたちは「普段ダンスなんてやらないんだろうなぁ」という感じで、本人の照れと、動きの重さが見ていて気の毒でした。ま「一生懸命やってます」という姿が可愛いと言ってるお客さんもいたので、このあたりは好みですね。僕はプロの技が好き♪


2006年10月05日(木)15:00-18:05
宝塚歌劇団月組「オクラホマ!」初日@日生劇場

 A席 5000円 2階-H列-47番 (パンフレット:1000円)
 演出:中村一徳

 カーリー:轟悠(専科)
 ジャッド・フライ:霧矢大夢
 ローリー:城咲あい
 アリ・ハキム:研ルイス
 アンドリュー・カーネス:一色瑠加
 エラー叔母:越乃リュウ
 アド・アニー・カーネス:夢咲ねね
 ウィル・パーカー:青樹泉
 ガーティ・カミンズ:美鳳あや

 アメリカというとフレンドリーだし、仲良し意識が強いというイメージがありますが、時にはマイノリティ排除に行き過ぎてしまうことがあるように思えます。自分に自身を持つのは大切なことですが、自信過剰は危険だな、と。ロジャース&ハマースタインによるブロードウェイ・ミュージカルの古典「オクラホマ!」も外国人の僕からすると居心地の悪さを感じる部分があります。陽気で元気なカーリーが陰気なジャッドをいじめているように見えてしまうんです。これが日本の作家による作品だったら、ジャッドの心情をより掘り下げ、交わることのなかった互いの感情から友情が生まれるまでを描いたに違いありません。が、言葉の裏だとか、言葉にならない感情には無関係な教育のアメリカ(移民国家としてはあるべき姿かもしれませんけど)人にかかると、とってもドライな人間関係。そして、何があっても、自分が正しい、オクラホマOK!となってしまうあたり、異文化の作品を上演することの難しさを感じました。美しいナンバーに彩られてはいますが、かなり残酷なストーリーかと思うんですよ、ええ。
 今回は専科の轟悠の主演ありきの公演ですが、この座組だったら他の作品があったのでは?とうのが正直なところ。出演者はみなさん健闘されてるんです。張り切って舞台を務めれば務めるほど、ひずみが浮き彫りになるのは皮肉なところ。まずは年齢不詳。宝塚の場合は役にあった俳優を配するのではなく、上級生から順番に役を振り分ける部分があるので、どっちが年上なのかわからない配役が多くて、多分「オクラホマ!」を初めて観る人にとっては「人物関係がわからん」となったのではないでしょうか。年齢設定に無理があると、どうしてもステレオタイプに演じてしまうので、作品が薄っぺらくなってしまうのはいたし方ないのかな。生徒たちが頑張っているのが感じられるだけに勿体無いなぁ、と感じてしまいます。どうせ轟悠が参加するのであれば、通常の本公演では上演が難しい「マイ・フェア・レディ」なんぞを上演してくれれば、キャスティングもはまるのに!!
 さて、その轟悠ですが、初日ということもあってか、ベテランの彼女もガッチガチ。しょっぱなの「美しき朝」からしてところどころ声がひっくり返ってヒヤヒヤ(元々、ハスキーヴォイスなので、ひっくり返るのが売り、みたいな部分がありますけどね)。彼女の場合は歌もダンスも全力投球というタイプではなく、常に押さえた歌と動きなので、西部のカウボーイとしては???ですが、衣装の着こなしはドンピシャリ。タカラジェンヌの中ではガッチリタイプなので、シンプルなシャツ&ジーンズがとってもお似合いです。彼女と居並ぶ霧矢大夢も、胸板の厚いハンサムボーイなので、この二人の並びは納まりが良いですね。轟悠と霧矢大夢はかなり学年差がありますが、ちゃんと対抗しあってて良い芝居してました。ここは霧矢大夢の芝居がしっかりしていたせいか、轟悠のカーリーが実に嫌なヤツになっちゃったんだけど、これで良いのやろか!?
 若手は「頑張っていた」につきます。ローリーの城咲あいは良い娘役だと思うけれど、古典作品のヒロインはまだ荷が重いみたい。大きな見せ場があるのではないけれど、キッチリ見せるのは難しい役です。アマノジャクな台詞の中からローリーのピュアな心とやさしさを見せなくてはならないし、ミュージカルナンバーは息の長いフレーズ続きだし、しんどいですわ。反面、色物で見せきったのがエラー叔母の越乃リュウとガーティの美鳳あや。とりあえず声の通りは良いし、場面が求めるアクの強さもあって、前者は歌いまわしが、後者はヒステリックな笑い声が気に入りました。宝塚公演なので、下ネタ部分はかなりオヴラートに包まれていたけれど、越乃リュウの勢いならば、そのまま突っ走っても下品にはならなかったかも。


2006年10月05日(木)18:30-21:35
新国立劇場バレエ団「ライモンダ」初日@新国立劇場オペラ劇場

 B席 4400円(ATRE会員割引) 3階-1列-28番 (パンフレット:800円)
 振付:マリウス・プティパ、牧阿佐美
 指揮:オームズビー・ウィルキンス
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 ライモンダ:寺島ひろみ
 ジャン・ド・ブリエンヌ:山本隆之
 アブデラクマン:冨川祐樹
 ドリ伯爵夫人:湯川麻美子
 アンドリュー2世王:ゲンナーディ・イリイン
 クレメンス:真忠久美子
 ヘンリエット:川村真樹
 ベランジェ:マイレン・トレウバエフ
 ベルナール:中村誠

 とりあえず、第一幕に見せ場満載の作品です。パ・ド・ドゥあり、コールドの大ナンバーありですから。通常だったら最後の幕に持ってくるようなものを第一幕に持ってくるあたり、制作スタッフ(グラズノフやプティパ)の自信のほどが伺えます。何はともあれ、遅刻厳禁の作品です。
 ライモンダをめぐって、ノーブルなジャン・ド・ブリエンヌと、ワイルドなアブデラクマンが対立するという作品なのですが、男性ダンサーが対抗しあうというバレエって意外と少ないので、非常に面白かったです。迫力があります。ライモンダは相手役が二人いて、実に美味しい役ですね。山本隆之は王子役はお手の物なので、今回の役はドンピシャリ。白くて上品なんだけれども、ちゃんと存在感のある素敵なヒーローぶり。冨川祐樹はまだ難しいナンバーを踊るのに精一杯みたいで、黒の魅力を発揮するには至らなかったです。今後、技と存在感を磨くことによって、より素晴らしい公演になる予感がします。舞台装置はスケールが大きいし、衣装は色とりどりだし、祝典的な気分になります。
 日ごろ僕が絶賛している新国バレエ団ですが、ここ最近は世代交代が進んでいるようで、だいぶメンバーに入れ替わりが見えてきました。それに伴い、完全無欠だったコールドバレエがややバラバラになっていたのは残念。ピシッと一寸乱れぬ群舞は一朝一夕では築けないものですし、今後の成長に期待!
 それはそうと、グラズノフの音楽は何ですか! 一曲一曲はキレイですが、通しで聴いてみると変化に乏しく、お話もバレエの動きもクライマックスに向けて盛り上げようとしているのに、チンタラしたヌルイ音楽のまま。パンフレットによると「バレエ音楽=二流」を払拭した画期的な音楽とのことですが、お客を楽しませましょうというサービス精神のない音楽は僕としてはペケ。チャイコやプロコ級とまでいかなくても、スケールの大きさと変化にとんだ展開は「ライモンダ」という作品には必要だったのではないでしょうか。よって「ライモンダって好き?」と聞かれても、ちょいと困ってしまいます。ま、今回が初観劇なので、次回観た時には違う感想を抱くかもしれませんが。


2006年10月06日(金)19:00-20:00
中鉢聡「テノールリサイタル」@カワイ表参道 パウゼ

 全席自由 2500円(前売券)  (パンフレット:無料)
 ピアノ:瀧田亮子

 ヴェルディ:歌劇「リゴレット」より 女心の唄
 プッチーニ:歌劇「トスカ」より 星は光りぬ
 ガルデル:想いの届く日
 マラゲーニャ(ピアノ・ソロ)
 ララ:グラナダ
 マルティーニ:愛のよろこびは
 吉幾三:雪国
 カルディルロ:つれない心(カタリ カタリ)
(アンコール)
 プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」より ネッスンドルマ

 9/23に「カワイミュージックショップ青山」がリニューアルオープン。「カワイ表参道」となりました。元々コンサートサロンはありましたが、すっかりシックな空間になっていて大人の雰囲気。もちろん、建て替えではないので、相変わらず天井は低いし、段差がないので舞台は見づらいけれど、120席の規模と、表参道に面した大きな窓とで、何だか贅沢気分。
 実は今回はホールだけではなく、出演者もリニューアルだったんです。「頸動脈洞腫瘍」という、コピー&ペーストは出来ても、読み方のわからない難しい病気で、クビの手術を行ったとかで、復帰後今日で二回目の公演。元気な時を知っているだけに、本調子でないのがアリアリとわかって「本人はきっとツライんだろうな」と思うとちと涙。もちろん、中鉢氏のコンサートですから、コンディションの中でのベストを尽くすステージで「楽しんでってもらいますよ!」というサービス精神に溢れたコンサート。トークあり、替え歌あり、客席降りありで、あっという間の一時間でした。「夢空間を演出した」という意味で、今回のコンサートは大成功。終演後のお客さんたちの満足そうな表情はなかなか他のアーティストのコンサートでは見られないものです。人間なので波があるのは当たり前だと思う中、「やっつけ仕事をしない」という姿勢は尊敬に値します。
 プログラムは体調を考えて、しょっぱなにオペラ・アリアを持ってきたということ。それなのに、アンコールで「何が良いですか?」とトークがあった途端「ネッスンドルマ」のリクエストが! あのぉ、オペラアリアの中でもとっても重量級なんですけど。得に中鉢さんのレパートリーや現在のノドの調子を考えるとどうよ!? さすがにお断りが入るかと思いましたが、中鉢さん、ちゃんと歌いました! いやぁ、プロ根性スゴイです。そして、そんな中鉢さんを表になり影になり支え切った亮子さんのピアノの相変わらず絶品。彼の歌に合わせるだけでなく、時にはリードし、時にはテンポをガラリと変え、今まで沢山共演してきた仲ならではの伴奏でした。
 本調子に戻るまではまだ時間がかかりそうですが「大丈夫やん!」と安心を得ることが出来、また、音楽って技術だけではなくことを改めて思い知ったという意味で、とても素晴らしい夜を過ごすことができました。


2006年10月08日(日)14:00-17:30
錦織健プロデュース・オペラ「モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ」@東京文化会館

 E席 4000円 5階-L1列-24番 (パンフレット:1000円)

 指揮:現田茂夫
 演出:伊藤隆浩
 管弦楽:ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団

 ドン・ジョヴァンニ:大島幾雄
 騎士長:志村文彦(三浦克次と役交換)
 ドンナ・アンナ:佐藤しのぶ
 ドン・オッターヴィオ:錦織健
 ドンナ・エルヴィラ:澤畑恵美
 レポレロ:池田直樹
 ツェルリーナ:足立さつき
 マゼット:三浦克次(志村文彦と役交換)

 ここ一ヶ月は「フィガロの結婚」三昧なのですが、それだけではなく、実は「モーツァルトの主要なオペラ三昧」でもあるのです。今日は「ドン・ジョヴァンニ」が登場。配役を聞いただけで「おぉ〜」と唸ってしまいそうなスター揃いの公演です。女声陣は全員ヴィオレッタ歌いだし、男性陣も主演経験者がズラリ。客入りも上々。地方回りをにらんだプロダクションなので、舞台装置はほとんど何もないに等しく、屋外なのか屋内なのか、そもそも何の場面なのかなどは視覚から捉えるのは至難の業。シェイクスピア芝居に近い状況と説明すれば状況をご理解いただけるでしょうか。シンプル(=何もない)&ほとんど変化のない舞台に登場した人物の解説(今回だとオペラアリア)にて状況を確認するといった状況。若手でこの演出だとかなりキツイけれど、さすがベテラン勢。正直言って、旬を過ぎた方が多いので、歌唱の面では色々とありますけれど、舞台に登場した際の存在感はさすがとしか言いようがありません。錦織健がプロデュースということもあるでしょうが、歌手によるオペラ、というカラーがはっきりしています。
 この感覚、何かに似ていると思いつつ、観劇中はなかなか思い出せずに悶々としていたのですが、このたび見事に判明。「狸御殿を観ているみたい!」だったのです。はい、宝塚OG公演です。過去の名声はあるものの、スタイルや技術は失ったかつての大スターに、退団したばかりのまだまだ現役OKの若手の合流公演。大劇場公演ではないので、豪華な装置はなくシンプルな舞台……ね、同じでしょ。「かつてはこんな風に演じてたんですよ」というところも一緒。
 ちょうど僕がオペラに通いだした頃のスターさんたちなので、僕はとっても楽しく観ましたし、きっと客席のみなさんも満足されていたと思いますが、オペラデビューの知人を連れて行くならば、申し訳ないけれど、僕は別プロダクションを選びますわ。作品とは全然関係ないんだけれど「この人のオペラは今回が最後になるかも」なんて思いをはせながらの観劇となりました。全盛期を知っている歌手が音が取れなくなった姿って、正直悲しかったけれど、でもやっぱりスターはスター。それなりに魅せ方を心得ているので安心。


2006年10月08日(日)18:00-21:05
宝塚歌劇団月組「あかねさす紫の花」「レ・ビジュー・ブリアン」@市川市文化会館

 A席 5000円 2階-11列-12番 (パンフレット:1000円)
 演出:柴田侑宏、尾上菊之丞(あかねさす紫の花)/酒井澄夫(レ・ビジュー・ブリアン)

 大海人皇子:瀬奈じゅん
 額田女王:彩乃かなみ
 中大兄皇子:大空祐飛
 斉明天皇:京三紗(専科)
 中臣鎌足:嘉月絵理
 舟坂郎女:瀧川末子
 鏡女王:花瀬みずか
 勝麻呂:遼河はるひ
 天比古:龍真咲
 小月:白華れみ

 何度も再演を重ねている「あかねさす紫の花」ですが、瀬奈じゅんの大海人皇子は2002年にも博多座で観ているのです。花組の二番手時代でした。そのときは中大兄皇子ヴァージョンでしたが、月組トップスターとなった今は、もちろん大海人皇子ヴァージョン。個人的には弟の嫁を無理やり奪い取る中大兄皇子よりも、自らの不運に悩み苦しみ、愛のために兄に立ち向かう大海人皇子が主役の方が感情移入しやすくて好きですね。トップお披露目以来、軽い役ばかりで、その人気にすら影響が出ている瀬奈じゅんですが「彼女は舞台が観たかった〜」という出来。本公演ではなく、地方公演限定なのが勿体ない! 同じ役なのに、さすがに二番手時代とトップ時代では存在感が違います。子役〜父親役に至るまで結構演じるべき年代が広いのですが、鮮やかに演じ分けていて、実に頼もしいトップさんでした。博多座時代には苦手だった歌もだいぶ上手になり、主題歌もそれなりに聴かせてくれました。
 実はこの作品はWトップ用に作られたものなので、中大兄皇子の比重もかなり大きいのですが、今回この役に挑戦するのは本公演では三番手とはいえ、瀬奈じゅんと同期生の大空祐飛。同期ならではの手加減なしの芝居合戦が見ごたえありました。どちらかが気兼ねしたら迫力がなくなってしまいますもの。仲の良い兄弟が歴史に残る戦を起こすまでの心情の変化が実に良く表現されていて、とってもスリリングでした。若手筆頭と思っていた大空祐飛も、ここ最近の抜擢効果か、かなり存在感を増してきたのが頼もしい限り。技術的に何かに秀でている人ではないけれど、位取りが出来るようになったのは大きいです。
 額田女王の彩乃かなみは、子役は幼く作りすぎてて「アンタ、15歳じゃなくて5歳にしか見えんわ!」でしたが、その分、大人になってからの色香のある台詞回しとの対比が出て、年月の流れを感じさせる役作りでした。台詞にも色があるのが頼もしいです。
 ショーは轟悠と霧矢大夢が抜けたので、かなり手を加えられていました。瀬奈じゅんワンマンショーの勢いで、本公演とはだいぶ色が変わりましたが、これはこれで最初から今回の陣営用のショーみたいで、そのリニューアル加減にスタッフのプロの技を感じました(星組の「ソウル・オブ・シバ」も見事なリニューアルでしたよねー)。芝居では見せ場の乏しかった遼河はるひが三番手ポジションに入り、元気に歌い踊っていました。宙組時代は悠未ひろとのコンビ扱いが多く、その上トップコンビの美味しいところ独占状態だったので、独立してこんなに見せ場を与えられたのは初めてではないでしょうか?
 地方公演ならではの若手の活躍も目覚しく、爽やかで素敵なショーになっていました。今回はオークション利用でかなり安くチケットを入手できましたが、東宝劇場とほぼ同規模の市川文化のてっぺん席が、5000円というのは、もう少し何とかならないものでしょうかねぇ。。。市川文化はNHKの技術を導入して音響面の充実が……というのが売りなのですが、クラシックでも演劇でも音響は良いと思ったことないんですよ。そもそも、NHKホール自身が音響悪いのにねぇ(ぎゃぼっ)。でも、東宝劇場のB席よりは舞台が観やすい&座席がゆったりなのは嬉しいです。


2006年10月09日(月・祝)13:00-15:30
来日カンパニー「冬のソナタ」@新宿コマ劇場

 S席 11000円 12列-32番 (パンフレット:1500円)
 演出:ユン・ソクホ

 チュンサン/ミニョン:イ・サンヒョン
 ユジン:イム・ガンヒ
 サンヒョク:イ・ピルスン
 チェリン:ジニー
 カン・ミヒ:チン・ボクチャ
 精霊のリーダー:ヤン・ジュンモ
 オ博士:ナム・ムンチョル
 ヨングク:イ・ジンギュ
 チンスク:キム・ギョンファ

 テレビ版の「冬のソナタ」なんて一度も見た事ありませんし、韓流ファンとも言えず、正直言って「衝動買い」のチケットでした。定価こそ11000円ですが、招待券出まくり、オークションでは定価割れのものが出まくり。ハッキリ言って「冬ソナ目当てのおばちゃん目当ての公演でしょ」とタカをくくっており、さらには全然期待なんてしていませんでした。終演後も「もしかして、一幕でさよなら〜だったりして。。。」というメールをいただいたりしています。えぇ、僕も知人が観劇していたらまずは「なぜ?」だとか「最後まで観た?」などと失礼な質問をしていたことでしょう。
 して、フタをあけてみれば、面白かったです、とっても。そりゃねぇ、美術や衣装のセンスは悪い&貧乏たらしいし、アンサンブルはバラバラだし、振り付けもとってもチンチクリン。そして何よりも今どきカラオケ公演!! お世辞にも「傑作」とは呼べないけれど、素材がとっても良くて、満足〜な観劇となりました。ブームがとっくに去った今さらながらにして「冬ソナ」パワーに脱帽です。
 チュンサン/ミニョンとユジンの悲恋を中心に、ユジンに恋してチュンサン/ミニョンと対立するサンヒョク、ミニョンに恋してユジンと対抗するチェリン、悲恋の鍵を握るチュンサンの母=カン・ミヒとチェリンの父=オ博士、重苦しくなる直前に息抜きとして登場するヨングクとチンスクのカップルと、人間関係が多彩でありながらわかりやすいこと。精霊のリーダーはトート閣下みたいですし、精霊たちはそのまんまトートダンサーズみたい。……はい、80年代の宝塚の香りのする作品なんですよ。今回は休憩あり、2時間半の作品でしたが、1時間40分に刈り込めば、そのまんま東宝劇場にかけられます。トップコンビと二番手が三角関係のトリオを組み、別格娘役や新人たちによるコンビ、組長や専科、職人ダンサーたちが活躍できる役の数々。来日公演の前に宝塚で上演していたら、もしかしたら今回の来日公演もクリーンヒットとなったかもしれません。
 というのも、今回の客席がと〜っても寒かったんです。客入りも悪ければ、拍手もパラパラなので、出演者が気の毒になってしまいました。S席11000円とA席7000円という値段設定も高かった! 空席を作ったり、招待券をばら撒いたりする位だったら、最初からもっと安い席を作ったり、設定料金を下げるべきでした。今日も無理やり客席を埋めようとしているのがアリアリで、観客のマナーや反応もそれなりにひどいものでした。「冬ソナ」ファンにとっては「何をいまさら」な公演でしょうし、ミュージカルファンにとっては「冬ソナ人気にあやかったしょうもない公演でしょ」と思われてしまったのではないでしょうか。これは勿体無いことです。上演権を買い取って、別スタッフによる公演を切に希望します。この手の作品だと、植田紳爾あたりが演出したら、かなり見ごたえがありそう!!
 出演者はことにソリストが素晴らしかったです。チュンサン/ミニョンと精霊のリーダーはオペラティックな歌唱でまずはその声に惚れ惚れ。声量もあれば、表現力もタップリで、非常に説得力のある歌唱でした。悔しいけれど、日本のミュージカル界にはここまで歌える人はおりませぬ。見た目は劇団四季系のお二人ですが、是非またどこかの舞台でお目にかかりたいものです。そして、サンヒョクとカン・ミヒはポップス系の歌唱でしたが、こちらもまたノドの強さを生かした力強いもので、クラシック組とのアンサンブルでも決して引けを取らず、歌唱法の違いと役の対立がうまくリンクして素晴らしい効果をあげていました。色々なジャンルの人間が集まって作られる、ミュージカルならではの醍醐味に接して幸せ気分になります。ユジンもポップス歌唱だけれど、リリカルな雰囲気をたたえていて美しい歌声でした。
 ちょっと前の「ジキル&ハイド」の来日公演の時も、そして韓国国立バレエ団の公演でも思ったことなのですが、韓国のカンパニーってアンサンブルに関しては人材不足なのか、そもそも関心が薄いのか、あまり良くないです。今回もダンスといい、コーラスといい今ひとつ。揃えようという気が全然ないみたいで、せっかくのソリストの好演を盛り上げるのではなく、足の引っ張りになっていたのが、もったいないなぁと思えました。ま、こちらに関しては日本が得意分野ですから余計に目立ったのかも。似たような顔をした、近くの国のカンパニーなのに、その個性が全く異なるのには新鮮な喜びを感じました。


2006年10月15日(日)13:00-16:35
ひろしまオペラルネッサンス「モーツァルト:フィガロの結婚」@新国立劇場中劇場

 A席 7350円 2階-2列-19番 (パンフレット:無料)

 指揮:デリック・イノウエ
 演出:岩田達宗
 管弦楽:広島交響楽団

 伯爵:石原祐介
 伯爵夫人:乗松恵美
 スザンナ:楠永陽子
 フィガロ:迎肇聡
 ケルビーノ:長谷川美恵子
 マルチェッリーナ:藤井美雪
 バジリオ:枝川一也
 クルツィオ:松本敏雄
 バルトロ:安東省二
 アントーニオ:国元隆生
 バルバリーナ:河部真里
 二人の娘:田染美佳
 二人の娘:藤原香織

 アマチュアの公演では「市川オペラ」や「藤沢市民オペラ」を観たことがありますが、プロの舞台としての地方オペラは今回が初めて。そういえば、地方オーケストラの東京公演って良くありますが、地方オペラの東京公演って珍しいですよね。コーラスやオーケストラも一緒の引越し公演なのでとても期待しておりました。実は昨年は大阪のオペラカンパニーの東京公演があったのですが、演目に興味がなかったので、お見送り。今回は大好きな「フィガロの結婚」だし、ちょうどここ最近この作品を観ることが多かったので、見比べるには最適なタイミングかな、と。
 出演者は1人として知っている人はいません。新国や二期会、藤原歌劇団を始めとするオペラ公演のプロフィールというと、東京芸大、国立音大で8割は占めていることがほとんどですが、今回は広島のオペラ団ということもあってか、大阪音大の占める割合が高いのが印象的でした。オペラハウスのある音大ですし、関西だとここがメジャーになるのかな?
 して、舞台の出来ですが……アマチュアオペラかと思いました。いえね、地方オペラの抱える問題というのはある程度耳にしているし、理解はしていますが、それはそれ、これはこれ。プロたるもの、裏事情は隠し通しておくんなさい。劇場という夢の世界ではひたすら夢を見せてください。結構な金額を取るからには、それなりのレベルで見せてください。歌手の音程は悪いわ、レチタティーヴォになると急にテンポが半減するわ、アンサンブルでは歌手同士の音圧の差が大きすぎるわ、芝居はぎこちないわ、おまけに演出は蛇足な手を加えすぎ(ケルビーノに「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」を歌わせたり、芝居がやたらと説明過多だったり)で、さぞやブーイングの嵐になるかと思いきや、あまりのひどさに同情してか、ブーが飛びませんでした(これはこれで不思議。良くないものは良くない!)。個々の歌手についてはノーコメント!
 観客の多くはこのカンパニーのファンのようでして、かなり入れ込んでの応援をされていたので、こんな中でボクがブーを飛ばすのも無粋なので、大人しく拍手してきましたさぁ(小心者です)。でも、ひろしまオペラに関しては今回限りで良いですわ。この料金を出すならば、別のカンパニーを観ます。
 良かったのは、それなりに年齢相応のキャスティングがなされていたこと(実年齢は存じませんが、少なくとも見た目はね!)。フィガロとスザンナは若々しかったし、伯爵夫妻はベテランたち、貴族連中は年配者たち、若者は若手歌手が演じてました。そして、コーラス隊も含めて「この公演を楽しんでますっ!」という空気が濃厚。今回、途中で帰らなかったのは、出演者の「舞台にかける熱意」を感じたからかもしれません。とっても丁寧な舞台作りだったと思います。もっとも「自分たちだけで楽しんじゃおう」となってて、二階席になんて目線すら飛んできません。アマチュア公演は「出演者のための公演」でも良いけれど、プロなのですから「観客のための公演」を心がけていただきたいなぁ。
 岩田演出はかなり演劇的で細かな部分まで稽古をつけていたようです。おかげで、段取りを追うので精一杯の歌手もチラホラ。。。非常にオーソドックスな舞台です。舞台中央に円形舞台を据え置き、そこがメインの部屋。円形舞台の両脇はスザンナたちの部屋になったり、廊下になったり、上手な使いまわし。シンプルだけれど、気が利いた美術です。歌手たちは舞台を駆け回ったり、踊ったり、客席降りまでしたり、なかなか見せ場を与えられていました。個々の歌手のファンは嬉しかろうと思います。


2006年10月20日(金)12:00-14:55
東宝「ご存知!夢芝居一座 ―大笑い!さくら&まこと劇団 奮闘記―」@帝国劇場

 A席 7500円(招待席) 2階-G列-21番 (パンフレット:1000円)

 演出:伏見悦男

 花房さくら:浜木綿子
 桂木まこと:コロッケ
 辰巳紘平:篠田三郎
 畑中いづみ:小野真弓
 千代丸:曾我廼家文童
 畑中里子:丹阿弥谷津子
 歌川凛子:臼間香世
 高倉正之助:荒木将久

 ロビーに足を踏み入れた瞬間、いつもの帝劇とは全然違う雰囲気にドキドキ。いつもの帝劇は、お洒落したキレイなお姉さんがいっぱい、というイメージなのですが、今日は普段着の老人がいっぱいなんですもの。ちょっとコマ劇場的な匂いを感じました。劇場慣れされてない方が多いようで、通路側に座った方に「スミマセン」と声をかけても、席を立つでもなく、せめて足を縮めてくれるでもなく、無言のままなのには参りました(汗) 仕方がないから無理やり通りましたさ(涙) でも、その分、観劇中の反応が新鮮なんです。盆が回れば「おぉぉ」と声があがり、スライディングステージで装置がはければ「機械よ、機械!」と騒ぎ、別の装置が迫りあがろうもんなら「すごいね〜」とおしゃべりが始まるんです。あぁ、この人たちに宝塚やミュージカルを観ていただき、もっともっとビックリしていただきたいものです!! 客層にあわせてか、劇場の受け入れ態勢もスペシャル。専属のお姉さんが付きっ切りでトイレの並び方の指導を行っていますし、そもそも上演中も客電が暗くならないんです。上演中も常に薄明かりがともっているので、暗転が暗転にならずに、舞台転換や役者がはけるのが丸見え(ボクとしてはたまには裏が見えるのも好きです)。帝劇がジャニーズに占拠された時のショックも凄かったけれど、今回のカルチャーショックも凄かった!! 芝居そのものよりも、芝居には全然関係ない部分(「ハンカチ王子みたい」という台詞が入ったり、コロッケの物真似ショーが受けたり)が一番受けていましたが、出演者ってこういう時どんな気分になるんでしょうね。
 そういえば、帝劇=ミュージカルというイメージがあり、ストレートプレイはほんの数本しか観たことがないのですが、浜木綿子の座長芝居も、もしかしたら初めてかも。森光子を彷彿とさせる座長ぶり。台詞の緩急が自在だし、舞台栄えするし、とっても素敵な方でした。芝居がちゃんと大劇場仕様になっていて、たった一人で大舞台の空間を埋められるんです。そして、出番はさほど多い役ではないのに、彼女が登場するだけで舞台がビシッと引き締まるのには舌を巻きました。決して威張った雰囲気の方ではないのですが、貫禄があります。大きな声でもなければ、大仰な芝居を行うわけではないけれど、笑いも涙も、ポイントをしっかり確実に押さえているのに、無理なく客席の雰囲気をコントロール。これぞ座長芝居!と膝を打ちました。
 団体客の減少や、看板スターの高齢化により、東宝も毎年座長公演を打っているのって森光子と浜木綿子位になっていますが、芸風といい客層といい、もしかしたらこの手の興行は今後数年のうちに消滅してしまうかもという危機を感じました。舞台は元気があるんです。でも、客席の温度が低いんです。そんな中、劇中劇でクレオパトラのような衣装で登場した浜木綿子(ドレスの裾サバキが絶品でした。さすが、元タカラジェンヌ)を観て思ったのですが「大地真央ならば後を継げる!」ってこと。大衆性と娯楽性に満ちた芸風、大劇場を埋められる華やかさと知名度。ツンとお澄まししたミュージカルも良いけれど、年に一本位は賑やかなコメディをやってくれないかしらん?


2006年10月20日(金)18:30-21:25
藤原歌劇団「ロッシーニ:ランスへの旅」@東京文化会館

 E席 3000円 5階-R2列-5番 (パンフレット:1200円)

 指揮:アルベルト・ゼッダ(クラウディオ・アバド)
 演出:エミリオ・サージ(ルカ・ロンコーニ)
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団(ウィーン国立歌劇場管弦楽団)

 コリンナ:高橋薫子(チェチリア・ガスディア)
 メリベーア伯爵夫人:森山京子(ヴァレンティーニ・テッラーニ)
 フォルヴィル伯爵夫人:佐藤美枝子(レッラ・クーベッリ)
 コルテーゼ夫人:小濱妙美(モンセラート・カバリエ)
 騎士ベルフィオール:小山陽二郎(フランク・ロパード)
 リーベンスコフ伯爵:マキシム・ミロノフ(ウイリアム・マッテウッツィ)
 シドニー卿:彭康亮(フェルッチョ・フルラネット)
 ドン・プロフォンド:久保田真澄(ルッジェーロ・ライモンディ)
 トロンゴノク男爵:折江忠道(エンツォ・ダーラ)
 ドン・アルバロ:牧野正人(カルロ・ショーソン)
 ドン・プルデンツィオ:柿沼伸美(ジョルジョ・スーリヤン)
 ドン・ルイジーノ:川久保博史(ペトロス・エバンゲリデス)
 デリア:小林厚子(佐々木典子)
 マッダレーナ:河野めぐみ(ラクエル・ピエロッティ)
 モデスティーナ:向野由美子(ガブリエル・シーマ)
 ゼフィリーノ:石川誠二(ボージダール・ニコロフ)
 アントーニオ:立花敏弘(クラウディオ・オテッリ)
 ジェルソミーノ:納谷善郎(オクタヴィオ・アレヴァーロ)

 今回の公演にはマッタク関係ありませんが( )内は日本初演時のメンツです。あまりにスゴイメンバーなので書き出してしまいました。が、今回も最高レベルのキャストが揃いました。藤原歌劇団プリンシパル勢ぞろいみたいな趣があるでしょ。でも、実際は出口さんも下原さんも中鉢さんも出ていませんし、Wキャストだって組んでいるし、スターが順調に育っているんだなぁ、と劇団の充実ぶりに嬉しくなってしまいます。今年観ているオペラの中ではピカ一のものの一つとなりました。
 元々イベント用に作られたオペラなので、ストーリーはどうでも良い作品です。並み居るスターをひたすら楽しむだけでもOK。そんなわけで「私を見て〜」とスターたちがアピールしあうのですから、とってもボク好みの作品でした。豪華でお洒落でちょっと毒があって、幸せな時間を過ごしてきましたよ〜。
 ウィーン版も映像を多用したシンプルな装置でしたが、今回も、サントリーホールでも上演できそうな簡素なもの。舞台前方スペースにオケで使うひな壇二列分位の幅のバルコニーがあるだけ。演技スペース的には幕前芝居と同じ。衣装も一幕は全員が白一色、二幕は黒一色といったシンプルなもの。でも、色のバランスや配色が垢抜けていて、お洒落でとっても素敵でした。元々、藤原オペラ用のプロダクションではないので、ヨーロッパの上流階級的な衣装が多用されているのですが、それらをちゃんとオペラ歌手のみなさんが着こなしていたのはとっても嬉しい。得に、女性キャストは(帽子は似合わないけれど)なかなか素敵なマダムに変身していたと思います。
 さて、このオペラは、それぞれの登場人物に見せ場を作っている「グランドホテル形式」です。楽しみ方としては「cats」と同じ。色々なキャラクターが自己アピールするだけで、大したストーリーが動くわけでなく、最後にはジェリクルキャッツならぬ、最高の歌を披露してお開き。ちょっとマニアックな作りではあるけれど、芸達者は揃っているし、ロッシーニ・クレッシェンドの盛り上げは最高だし、ボクとしては大満足のプロダクションでした。超絶技巧だらけの作品なので、次にいつ上演できる日が来るのかわかりませんが、少なくとも、今の藤原オペラの(そして日本のオペラ界の)最高水準でしたし。そんな中でキャストのみなさんが演奏に必死になっているのではなく「舞台を楽しんでいる」のが伝わってきて観ているこちらも幸せ気分。オケも快調で、上演中は幸せのあまり、自分で頬の筋肉が緩んでいるのがわかるんです。楽しくて楽しくて、ヨダレ垂れ流しでした。アレコレ言われることの多い、日本のオペラ界ですが、この秋は二期会といい藤原歌劇団といい、良い仕事をしています。
 台本は、話のほとんどが一幕に費やされていて、二幕なんてほとんどガラ・コンサート。上演時間も一幕:二幕が3:1位。バランスが悪いといえば悪いんだけれど、その間全然だれることがないのはさすがの演出。あれ、先日ボクがとっても気に入らなかった「ドン・カルロ」の演出家だ〜!! 今回はずっと良いです。センスも良いし、芝居の流れも良かった。向き不向きってあるんでしょうね、キット。シンプルな装置ではあるけれど、その狭い空間を船のデッキ風に扱ってみたり、はたまたレストランやホテルのロビーのように扱ってみたり、同じ装置のはずが表情に富んでいて、ボクは今回のプロダクション大好きです。カーテンコールも出演者全員でラインダンスのような隊列を組んでのご挨拶。両腕をクロスして隣の人とつながるのが、和気藹々として雰囲気でこれまた気に入りました。また再演してほしいです!


2006年10月22日(日)14:00-17:50
新国オペラ「モーツァルト:イドメネオ」@新国立劇場オペラ劇場

 D席 2835円(ATRE会員割引) 4階-4列-42番 (パンフレット:800円)

 指揮:ダン・エッティンガー
 演出:グリシャ・アサガロフ
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 イドメネオ:ジョン・トレレーヴェン
 イダマンテ:藤村実穂子
 イーリア:中村恵理
 エレットラ:エミリー・マギー
 アルバーチェ:経種廉彦
 大司祭:水口聡
 声:峰茂樹

 今日は東京文化会館では藤原歌劇団が、新国立劇場でも新国オペラが上演されているのですが、どちらもオーケストラが東京フィルハーモニー交響楽団。さっすが、マンモスオケですね。それぞれ小編成とはいえ、二班に分かれてのオペラへの参加。スゴイもんです。
 さて、今日の演目「イドメネオ」ですが、捕虜になった王女と戦勝国の王子が恋に落ちるが、王子には権力ある婚約者がいて……って、なんだか「アイーダ」を彷彿とさせるお話なんですね。モーツァルトとは思えない真面目な作品でした。遊びの場面なんて全然なく、全編真面目に演奏されます。4時間近くの上演にもかかわらず、話の内容は単純明快。一つ一つの場面がやたらと長く、一度誰かが歌いだすと時間が止まってしまう感覚はワーグナーに通じるものを感じます。これといって細かな芝居が絡むこともないので、何だかオラトリオかレクイエムに接している気分。幕開きも幕切れも「いつの間に!?」というさりげなさ。拍手のしようがなくてちと寂しいですヨ。もちっと何とかならなかったんですか?>ヴォルフガング モーツァルト節の幸せなメロディは堪能できましたが、オケは意外にドラマティック。さらには、年末の第九も真っ青になるコーラスの充実ぶり。今まで、新国のコーラスはケチョンケチョンだったボクですが、今回はシャッポを脱ぎます。実に力強いコーラスでした。主役に拮抗する素晴らしい演奏が嬉しい限り。
 歌手は全員地味でしたが、実力者が揃っていて満足の仕上がり。トレレーヴェンはパヴァロッティの再来!?と思ってしまう輝かしい高音(あ、石投げないで〜>パヴァロッティ・ファンの方)だったし、藤村実穂子は相変わらずの美声と歌いまわし。カーテンコールでは盛大な拍手を浴びていました。結構音域の広い方なのですね。いつ聴いても安心の方です(でも…男装は似合ってないので今回限りにしていただきたい。。。) ついこの前までオペラ研修所にいたはずの中村恵理はベテランに負けないしっかりした歌唱。幕開きの長大なソロもゆったりこなし、その後もソロに重唱にと大活躍。リリカルな美しい声の方なので、今後はスザンナやパミーナを聞いてみたいです。高音の伸びやかさが実に気持ち良かったです。でも、今日のソリストで一番のお気に入り(そして一番大きな拍手を貰っていた)はエミリー・マギー。1人だけドラマティックで、かつ自分の思いに忠実なので、感情移入しやすい役でした。自分の立場を考えて我慢するのではなく「私はアナタが好き〜」「あんな娘に彼を取られちゃうなんて悔しい!」「あんたたちが結婚したら、私はどうなっちゃうのよ!?」と実にわかりやすい感情の数々。でも、腹の底の探りあいみたいな登場人物の中に、彼女のようなキャラは大変貴重です。ボクがもしも好きな役でこの作品に参加できるとなったら、エレットラに即決ですとも、ええ。


2006年10月25日(水)13:30-16:20
ホリプロ「ペテン師と詐欺師」@銀河劇場

 A席 9450円 3階-B列-23番 (パンフレット:1500円)

 演出:宮田慶子

 ローレンス・ジェイムソン:鹿賀丈史
 フレディ・ベンソン:市村正親
 クリスティーン・コルゲート:奥菜恵
 ミュリエル・ユーバンクス:愛華みれ
 ジョリーン・オークス:高田聖子
 アンドレ・チボー:鶴見辰吾

 鹿賀丈史vs市村正親という、トニー&ベルナルド(WSSですね)もしくは、ジーザス&ヘロデ王(JCSですね)で、劇団四季の看板コンビだったお二人が再タッグ。退団後もしかしたら初めてではないでしょうか? もうそれだけで嬉しくなっちゃいます。今でこそ、フランチャインズ・ミュージカルと言われてしまう劇団四季ですが、○十年前はまだまだ劇団独自の演出が許されていたし、役者も個性が認められていた気がします。おまけに退団後もそれぞれ座長として大活躍のお二人なので、非常に観応えのあるタッグとなりました。スターだからこそ許される「役を自分に近づけてしまう」タイプのお二人なので、好き嫌いが結構別れてしまうでしょうが、ボクは結構好きです。名前で売るからには、その個性で納得させていただかなあきまへん。芝居の中では詐欺師とペテン師の化かし合いが見せ場でしたが、それと同時に鹿賀芝居と市村芝居の芸の見せ合いが二重構造となってて、実に面白かったです。
 小劇場でのミュージカルではありますが、演出はかなり大劇場志向。地方公演では大劇場を利用というのも見越しているのでしょうか。二重回しあり、大道具がパックリ二つに割れたり合体したり、なかなか見応えのある趣向をこらしていました。作品のテンポと舞台転換の流れるような動きがかみあって、ミュージカルならではの勢いがあったのが嬉しい。  とはいえ、ホリプロ主催の公演なので、ハッキリ言って脇が弱すぎ。元々ミュージカルのための会社ではなく、お抱えタレントでミュージカルを打っちゃいましょうという企画なのでしょう。主役の二人とのレベルの差がありすぎてお話になりません。誰一人歌えず、誰一人踊れないんですもの。おまけに、元・アートスフィア時代からの音響の悪さは、銀河劇場と名前こそ変わっても改善されず、オープニングナンバーなんて、歌詞が全然聞き取れず。でも、これは音響担当の耳の悪さも最大の原因かも。オケ(金管が……涙)の音がうるさすぎ。ミュージカルってお芝居なんだから、武道館のコンサートのように、音圧でごまかされても困ります。鹿賀丈史も歌のフォームがかなり崩れていて「ホリプロにはミュージカルを支えられるスタッフがいないんだ」ということを露呈してしまった状況。あらら。アンサンブルの中では秋園美緒がとりたてて目立つ役ではないのに、ポイントを押さえた芝居やポーズで光っていました。やはり、ミュージカルに慣れている人は強いですね。主役二人以外のプリンシパルの面々は、技術面でいっぱいいっぱいなのがアリアリとしていて、余裕のない舞台。これではどんなに真ん中の二人が頑張ろうが盛り上がりようがありません。オペラやコンサートに出るには音大で修行しますし、バレエやダンスは幼少から厳しい訓練が必要、お芝居だって養成所がある中、なぜミュージカルだけは素人芸が許されるのかがいまだに疑問。それでいて、料金だけは馬鹿高いのには「何だかなぁ」といっつも思ってしまいます。それでも劇場が好きだから通っちゃうんですけどね。このジレンマ、誰か共感してくださらないかしらん?
 さて、とりあえず褒めてしまった主役二人なのですが、実は役年齢と役者年齢がかなり離れているんです。もちろん、舞台の上ではウソは付き物ですけれど、さすがに市村正親が青年役というのは苦しい。若者を表現できるというテクニックを持っているし、確かに素晴らしいけれど、やはり若々しさがないので、場面場面では笑わせてもらいましたが、作品としては無理がありすぎ。どうして、この座組みでこの作品を選んでしまったかが謎です。実は観劇しながら密かに思っていたのですが、今月は日生劇場と銀河劇場で作品を逆にしたら丁度良かったのかと。。。ローレンス:轟悠、フレディ:霧矢大夢で「ペテン師と詐欺師」を上演したら、個性的にも年齢的にもピッタリだと思いません? その他、今、日生劇場公演に参加しているメンバーなら……ほぉら、配役もピッタリでしょ。そして、カーリー:鹿賀丈史、ジャッド:市村正親での「オクラホマ」ってのはいかがでしょう? ひねくれ者芝居は市村正親の十八番ですし。あ、でも、鹿賀カーリーがこんどは年齢的にきついか(汗)


2006年10月29日(日)14:00-16:55
「ゴルフ・ザ・ミュージカル 〜ゴルフなんて大嫌い!」千秋楽@PARCO劇場

 全席指定 8500円 H列-29番 (パンフレット:1500円)

 演出:福島三郎

 ワッキー(脇田優):川平慈英
 キャディーさん(糸満ルリ):高橋由美子
 カラクサギさん(唐草木剛):池田成志
 サカシタちゃん(坂下美紀):堀内敬子
 クロちゃん(黒住和彦):相島一之

 ゴルフには興味がなかったし、失礼ながら、ほとんど期待していないプロダクションだったんです。出演者もちょっとマイナーでしょ。が、意外な拾い物(関係者の方ごめんなさい)。もちろん、池田成志は千秋楽だというのに、ミュージカル的なシーンになると照れてしまうし、相島一之は「早くこの曲終わってあげて〜」と同情したくなるほど歌えない。でも、先日の銀河劇場よりもさらにさらにミニチュアなPARCO劇場が会場だったせいか、技術点がさほど気にならなかったんです。恐らく、大劇場だと広い空間を埋めるスターの格だとか存在感が求められるところが、狭い空間だとそこまでのエネルギーが要求されないからでしょう。今回は作品&出演者に合わせた会場です。無理せずに会場と一体化していました。
 テレビだと暑苦しい川平慈英はミュージカルの舞台というエネルギーの要る空間では丁度良い按配だし、高橋由美子と堀内敬子は舞台馴れした自信が伺えるし(この二人はどんなにセクシーな台詞を言わされようが、どんなにキワドイ芝居をさせられようが、不思議とエロにはならないんですよね。色気不足とも言えますか。でも、おかげで安心して舞台に集中できます)。池田成志と相島一之はブロードウェイ・ミュージカルの芝居としてはどうよ???ですが、実は台本もかなり手が入れられていて、翻訳ミュージカルというよりも、同じ設定・同じ曲を利用したオリジナル・ミュージカルといった作りの今回、違和感はなかったです。逆にリアリティUPに貢献! 出演者には飛びぬけて何かに優れている人というのはいませんでしたが、全員が「お客を楽しませましょう」というサービス精神に満ちていたのが嬉しい公演です。役になりきってみたり、素の顔に戻ってみたり、客席に拍手を求めたりするのが、ごくごく自然に行われていたんです。客としておもてなしを受けて、悪い気はしないじゃないですか。「色々あったけれど、楽しい1日だったね。この調子で今週も頑張って、次の週末は一緒にまた楽しみましょう」というストーリーなので、後味が大変よろしゅうございます。仲間と一緒に一つのことに熱中できたらさぞ爽快なんだろうな、と急に団体スポーツなんぞをやってみたい気分になりました。ゴルフの魅力と嫌な面を満遍なくさらけだしながら「でも、楽しいでしょ!」とアピールしているのが小粋でお洒落なミュージカルです。それにしても、チラシ以上にダサダサな風貌で登場した出演者の面々の化けっぷりが見事!!
 そもそも、今回のプロダクションは、役名といい、役の設定といい、ストーリーといい、原作とはマッタク別の作品になってるんです。「オリジナルはどんな舞台だったんだろう?」と気になる場面も多々。だって、今の日本のサラリーマンたちのストーリーとして台本がほとんど書き直されているから(登場人物も増えています!)、歌詞や台詞には今の日本の時事情報がわんさか盛り込まれているし。でも、そのおかげでか、客席(男性率高し!)のノリはとても良かったです。もちろん、原作に基づくシチュエーションの面白さでの笑いが沢山なのですが、どこまでが台本通りでどこからがアドリブなのかわからないほどのキャストの暴走に笑いころげてしまいました。恐らく、このメンバー限定での作りなんでしょうね。他キャストに入れ替わる時には台本も大幅に書き直さなくては!! それにしても、この書き換えがかなりうまくできていて、上質かつ洗練された笑いだったかと思います。ところどころに他ミュージカルのパロディが登場するのもmyツボでした。