観劇日記〜2006年11月〜
03日(金・祝) 13:00 東宝「マリー・アントワネット」 帝国劇場
03日(金・祝) 17:00 二期会「モーツァルト:コジ・ファン・トゥッテ」 日生劇場
04日(土) 11:00 宝塚歌劇団星組「愛するには短すぎる」「ネオ・ダンディズム!」 東京宝塚劇場
12日(日) 14:00 新国立劇場バレエ団「白鳥の湖」プルミエ 新国立劇場オペラ劇場
12日(日) 18:00 宝塚歌劇団花組「うたかたの恋」「エンター・ザ・レビュー」 市川市文化会館
18日(土) 17:00 K-BALLET COMPANY「二羽の鳩」「三人姉妹」 オーチャードホール
19日(日) 13:20 映画「プラダを着た悪魔」 TOHOシネマズ 市川コルトンプラザ
スクリーン8
19日(日) 17:00 井上頼豊没後10年追悼 トリビュートコンサートシリーズ
「門下生による12人のチェロアンサンブル」
津田ホール
23日(木・祝) 18:00 来日カンパニー「RENT」 東京厚生年金会館
24日(金) 19:00 ミュージカルアカデミー「FAME」 東京芸術劇場中ホール
30日(木) 11:00 東京藝術大学「2006年度 第11回 奏楽堂 モーニングコンサート」 東京藝術大学奏楽堂


2006年11月03日(金・祝)13:00-16:15
東宝「マリー・アントワネット」@帝国劇場

 A席 8000円 1階-X列-42番 (パンフレット:1500円)

 演出:栗山民也

 マリー・アントワネット:涼風真世
 マルグリット・アルノー:新妻聖子
 アニエス・デュシャン:土居裕子
 アクセル・フェルセン:井上芳雄
 ルイ16世:石川禅
 ボーマルシェ:山路和弘
 オルレアン公:高嶋政宏
 カリオストロ:山口祐一郎
 ロベスピエール:福井貴一
 ローズ・ベルタン:春風ひとみ
 ラパン夫人:北村岳子
 ベメール/エベール:広田勇二
 ラ・フェルテ:tekkan
 ギヨタン博士:佐山陽規
 ロアン大司教/レオナール:林アキラ

 「エリザベート」や「モーツァルト!」でお馴染み、クンツェ&リーバイ作品だけれど、今回は遠藤周作の原作を元にした日本主体の新作上演。もちろん、世界初演になります。今年はマリー・アントワネット生誕250周年ということもあって、松竹では大地真央主演のストレート・プレイが、宝塚では「ベルサイユのばら」が上演。題材といい、登場人物といい、何かと予備知識が頭の中にインプットされている反面、期待値も大きかったりします。個人的には「オスカルとアンドレが登場しないベルばらか!?」というのを期待していたのですが、意外に骨太でレミゼみたいな雰囲気の作品に仕上がってました。ま、演出に栗山民也という時点で「あ〜あ」でしたけど(個人的に、好みが違いすぎて苦手とする演出家なんです。新国の演劇部門だけに収まっててくれれば良いのに、オペラやミュージカルに進出するのはやめてほしい。。。)。
 今回はマリー・アントワネットがタイトルになっていますが、幕開きでいきなり目立ち、おまけにカーテンコールで最後に登場するのはカリオストロの山口祐一郎。何でも、カリオストロの操るがままに物語が進むといった作りで、この役は他の登場人物と絡むことはほとんどなく、ストーリーテラーとして要所要所に登場しては歌い上げて去っていくという、山口祐一郎にピッタリの設定。ところどころ、謎のダンスや百面相を披露しているのは、今回の観劇からはその意図が掴めませんでしたが、逆光の中でのマント裁きは「鮮やか!」につきます。裾のちょっとした処理やひるがえし方だけで「あ、祐さん」となるのですから大したもんです。
 そして、実質的にストーリーを動かしているのは新妻聖子が演じるマルグリット・アルノー。感情の起伏が激しく、地を踏み鳴らして怒りを表現する力強さといったら圧巻。芝居だけでなく、歌声も高音から低音まで満遍なく歌い上げていて、この歌唱に関してはボクが今まで観てきた東宝ミュージカルの中では白眉。彼女の歌を聴くだけでも劇場に足を運ぶ甲斐があります。いつの間にこんなに表現の大きな歌を歌うようになったんでしょう。東宝の歌姫の称号は文句なしに新妻聖子に捧げられるべきでしょう。山口祐一郎のffにも屈しません、主役を完全に食ってます。とてつもない歌声に興奮。今後、東宝で「エリザベート」を上演する機会があったら、ぜひ、彼女のタイトルロールで観たい、聴きたい、そんなオーラを感じました。
 でもって、涼風真世ですが、豪華な衣装での登場も意外にインパクトがなく、輪ッカのドレスも動きが雑でドタバタ、歌声は精彩を欠き、芝居も相変わらずの台詞棒読み。…と、一幕は全然良くなかったのですが、2幕での牢獄シーンでは人が変わったかのように素晴らしい歌と芝居を見せてくれました。そういえば、宝塚時代から感情表現がない(ゆえに人間でない役の方が評価が高かった!)彼女ですが、母親としての愛情表現、王妃としてのキリリとした威厳をもって、断頭台に消えていくあたりは、あたりを振り払う貫禄が舞台に充満。中でも最終場面では、新妻聖子の絶唱にもびくともしない気品と威厳がとてつもなかったです。スポットライトの中にたたずむだけで、歌も台詞もないのに、一瞬にして舞台が涼風ワールドに染まりました。この場面があってこそのタイトルロール。そして、元トップスター! これから半年かけての全国行脚が始まりますが、東京に戻ってくる頃にはどう変化しているのか楽しみになってきました。
 その他のキャストでは、久しぶりに帝劇に美声を響き渡らせた土居裕子、アントワネットと同い年の中年男には見えなかったけれど、いつの間にやら低音もきちんと出せるようになった井上芳雄、フランス国王というよりは昭和天皇みたいだったけれどルイ16世の暖かな人柄を感じさせた石川禅、松本幸四郎のパクリのような芝居が影をひそめ、独特のメイクとストレートな歌いまわしが効果的だった高嶋政宏、姐御肌で女っぷりをあげた北村岳子など、どの役者も素晴らしい出来。役者に関しては一部歌唱力で問題だった人を除き、好演ぞろい。芝居としての流れを無視すれば、実に素晴らしい芸の連発。それぞれに見せ場があって実にバラエティに富んでます。
 が、役者一人一人に花を持たせすぎたため、作品を支えるべき大筋がぼやけてしまったのが残念。ポイントが定まらないため、どの場面も歌い上げて終了&暗転の繰り返し。台本もナンバーも「どこが見せ場でどこが聞かせどころ?」というのがなくなってしまい、とっても冗長な印象を受けました。正直言ってつまんないです、この作品。フランス革命のあらすじの羅列だけで、コレといった見せ場も印象に残る曲もないんですもの。そもそも、貧乏や惨めさを描くのが得意な栗山民也にフランス宮廷物を任せるのは無理がありすぎます。豪華さも気品もなく、ただケバケバしいだけのベルサイユの描写には他の適任者がいるでしょうに。。。
 マルグリット・アルノーはWキャストで笹本玲奈が入っているし、僕が苦手とする俳優が二人ともチェンジになるし、春にもう一度観るつもりですが、この冬のリピートはパスします、ええ。それまでに台本にも大きくメスが入っていますように!


2006年11月03日(金・祝)17:00-20:35
二期会「モーツァルト:コジ・ファン・トゥッテ」@日生劇場

 D席 5000円 2階-K列-46番 (パンフレット:1000円)

 指揮:パスカル・ヴェロ
 演出:宮本亜門
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 フィオルディリージ:林正子
 ドラベッラ:山下牧子
 グリエルモ:宮本益光
 フェランド:鈴木准
 デスピーナ:鵜木絵里
 ドン・アルフォンソ:加賀清孝

 モーツァルトの作品の中でボクが苦手とするオペラです。恋人たちの貞節を確認しようと、男二人が外国人に変装し、それぞれ相手の男の恋人を口説く→老人と小間使いは浮気をそそのかして新カップルが登場→「ビックリカメラでした!」のように真実をばらしたところ、女二人はひたすら謝り、全員で「女はみんなこうしたもの」と歌い上げて幕。ね、失礼千万なオペラでしょ。そもそも女性二人が大人しすぎ。「馬鹿にするんじゃないわよっ、こっちから願い下げよっ」と男たちに逆切れして逆襲するとか、真相はどうであれ「とっくに見抜いてたわよ、馬鹿なことしでかして!」と笑い飛ばすとか、もっと頑張ってくれないことには女性(というより人間として)の尊厳をどうしてくれよう?じゃないですか! 宮本亜門演出はかつての紀伊国屋版のように現代に置き換えたものではなく、劇中劇のように扱っているのが特徴。舞台上には「レオンカヴァッロ:道化師」に登場しそうな小さな舞台が設置され、ドン・アルフォンソは舞台下手のデスクで常に様子を伺っているというもの。コンセプトは一度観ただけでは今一つわからないけれど、登場人物をやたらと走らせ、芝居させ、とても若々しさに溢れたものでした。若さゆえの愚かさ、というオブラートがかかった分、作品のアホらしさが薄まったのかなぁ。無声映画のように、これから始まる場面を一文で表現して映写する演出は結構気に入りました。音楽的にメリハリのないオペラですが(って、あくまでボクの基準では、の話ですヨ。一応、モーツァルトの代表作と言われているオペラです!)観る側がコンディションを整えられる素敵なアイデア!
 二組の恋人たちは揃って若手が起用。二期会オペラを毎公演観ている人でなければ「誰?この人たち??」となるであろう、新人公演でした。突出したスター性を感じる人は居ませんでしたが(全員とっても地味…)、芝居も歌もアンサンブルがキッチリ磨かれていて、品のある公演となりました。ハーモニーが実にキレイ。おまけに前述のように細かな&大胆な芝居にチャレンジしているので、ジェットコースターのように話が進んでいきます。歌だけでなく、芝居のテンポ感やスタイルが統一されているので、実に爽やかな印象を受けました。フィオルディリージは太い声のソプラノ、ドラベッラが高音を得意とする明るい声のメゾなので、通常の二重唱とは違った音楽効果があがっていて、面白いなぁ、と思いつつ聞きほれました。


2006年11月04日(土)11:00-14:10
宝塚歌劇団星組「愛するには短すぎる」「ネオ・ダンディズム!」OMC貸切公演@東京宝塚劇場

 S席 8000円 1階-13列-35番 (パンフレット:1000円)

 演出:正塚晴彦(愛するには短すぎる)/岡田敬二(ネオ・ダンディズム!)

 フレッド・ウォーバスク(マイケル・ウェイン):湖月わたる(和涼華)
 バーバラ・オブライエン(クラウディア・ヘニング):白羽ゆり(陽月華)
 アンソニー・ランドルフ:安蘭けい(彩海早矢)
 ブランドン・オサリバン/ジェラルド・ウォーバスク:未沙のえる(鶴美舞夕)
 エドワード・スノードン:英真なおき(一輝慎)
 ヴィクトリア・スノードン:万里柚美(花愛瑞穂)
 キャサリン・リパートン:しのぶ紫(華美ゆうか)
 ロバート・ストックトン/デイビッド:高央りお(七風宇海)
 マーシャル・ウェンズワース:立樹遥(水輝涼)
 マクニール・オコーナー:涼紫央(夢乃聖夏)
 フランク・ペンドルトン:柚希礼音(麻尋しゅん)
 ナンシー・ブラウン/ドリー・マコーミック:陽月華(音花ゆり)
 ( )内は新人公演メンバー

 中堅時代に専科として各組への特別出演はあったものの、馴染みの星組でのトップ就任。二番手にはマッタク異なる個性の、それも実力派が控えていて、お互いに力を発揮すればするほど相手の長所が浮き出てくるコンビネーション。和モノ・洋モノ・中華とバラエティに富んだ芝居に、ラテン・ヨーロピアン・アメリカンなどなど毛色の違ったショー作品、本公演の他にも小劇場公演、地方公演、海外公演、他組への特別出演。二人組んだ相手役とはどちらも素敵なコンビぶりを発揮、下級生もトップ就任からサヨナラ公演までほとんど変化なし。……在位期間こそ平均値ですが、その充実度たるや、ここ近年のトップさんの中で最も充実していた人ではないでしょうか>湖月わたる。トップさんのサヨナラ公演というと「男役としての集大成」と言われますが、今回の公演は「星組としての集大成」でもあるわけで、適材適所が存分に活躍という素晴らしい公演でした。今後の人事も納得の内容が発表されているし、組子とファンが一丸になって公演を盛り上げているのですから、トップ冥利に尽きることでしょうね。
 湖月わたるは実力派トップというよりもカリスマトップのスターで、長身ということを差し引いても思わず目が行ってしまうスター性が魅力。退団時まで若い頃の勢いを保ち、常に舞台で暴れているイメージがあります。良い意味で組子をグイグイ引っ張っていく姿に「星組だ〜」と組カラー最後の保持者ならではの華やぎを感じました。何をやらかしてもセンターがドンッと控えているので、下級生も伸び伸び実力を発揮し放題。トップさんのあるべき姿ですね(って単にボクの求めるトップ像なだけですけど・笑)。舞台での大きさ、包容力、力強さ、どれを取っても良い男役に成長しました〜。あまりに立派になりすぎて、安蘭けいを投げ飛ばそうと、白羽ゆりを片手でリフトしようと、陽月華をブンブン振り回そうと「何で客席は拍手してるの?」状態。あまりに自然に軽々と「男っぷり」を発揮しているので、時に「女性だった」ということを忘れてしまうんですよねぇ(汗) 「野郎」の称号を与えられているだけのことはあります。芝居では養子ではあるものの、大富豪のお坊ちゃまにもかかわらず、ソフト帽を被った瞬間に「野郎」に変貌。ちょっと斜めに構えた被り方、ツバをスーッと撫で付けるその手つき、、、堅気でない空気が漂います。そして、ショーのオープニングでもソフト帽&チャイナ服でマフィアチックなダンスを披露。大富豪というのも偽りで、実はマフィアのドンでした、と言われても納得しちゃいそうwww
 相手役の白羽ゆりって、湖月わたるとは本公演では二作目のコンビ。にもかかわらず、5年位寄り添ってます、といわんばかりのフィット感。ほんの一年間だけの星組転勤で、また次作品からは雪組に戻ってしまうのだけれど、何だか10年位星組にいました、といわんばかりの馴染みよう。おまけに、久しぶりの女王様タイプのトップ(雪組・宙組の花總まりは「女帝」と呼ばれたけれど、芸風は大人しかった!)で、組子を従えて歌い踊る貫禄に惚れ惚れ。実は彼女は男役トップを立てましょうと三歩後ろに下がるタイプではなく「男役トップだったら、私を受け止めてごらんなさいっ」と言わんばかりの押し出しの良さが魅力。包容力抜群の湖月わたると、実力タップリにこれまた頑張っちゃう安蘭けいと、遠慮なしのトライアングルが面白いトリオを形成。中でもショーでは安蘭けいと白羽ゆりがほとんど同等扱い!なのが新鮮で、かつ効果的でした。二人でセンターで歌っていたはずが、いつの間にかサイドで歌っていて、気が付けばまたセンターで踊ってるんです。ちょっと昔のショーみたいで、ボクはこの演出好きです。ポスターのメイクと表情は失敗しちゃったけれど、舞台では実に美しく、押し出しと位取りが抜群で、声質も太くて低くて聴きやすいのですから、もしかしたら、浜木綿子の後を継ぐ、娘役出身の座長芝居の大スターになれるかも。彼女を支える男役は大変ですね。でも、久しぶりに登場した、大娘役だと思います。
 安蘭けいは下克上も組替えも、下級生の放出もなくポジションが安定した安泰の二番手さん。扱いも1.5番手位の扱いで、毎公演大きな役続き。美味しい時代を美味しく過ごせたという意味では、近年では珍しいです。トップさんとの信頼関係が確立しているのが、芝居中の遊びでも、ショーでのちょっとしたやり取りでも伺え、サヨナラ公演ならではの寂しい気持ちになりますが、それと同時にトップさんからも「ライバル」「追い上げ屋」としてではなく「同士」として扱われていたのではないかな。「王家に捧ぐ歌」以降、声がわりしたままで、今回も娘役の白羽ゆりとほとんど同じキーなのは気になりましたが、大階段ではラフマニノフのピアノコンチェルトを朗々と歌い上げ、素晴らしい効果。そういえば、トップトリオが大階段で歌い踊るフィナーレってこれまた久しぶりじゃないですか? 濃い色の衣装も、ロングのカツラも実にお似合いで、妖しい雰囲気をかもし出していたのがこれまたボク好み。どんなトップさんになるのか今から楽しみです。
 その他、前述のように組子みんなに見せ場が与えられ(それも現在公演中の帝劇のように、中心がぼけるなんてこともない!)、それぞれが力いっぱい大活躍。実力に見合った場面を与えられ、それを伸び伸びと演じている舞台って気持ち良いですよ〜。それにしても、今後の人事を睨んだ上での構成と配役を行う岡田敬二の作・演出ぶりにはあらためて感銘を受けました。ホープさんには若手であろうが大きなポジションを与え、ごぼう抜きされた上級生も満足するような役を配分。それでいて「あ、今、この人がプッシュされてるんだ」というのが観客にもストレスを与えずに発表しちゃうのだから、座付作者の面目躍起ってもんです。


2006年11月12日(日)14:00-16:50
新国立劇場バレエ団「白鳥の湖」プルミエ@新国立劇場オペラ劇場

 B席 5400円(ATRE会員割引) 3階-1列-18番 (パンフレット:800円)
 振付:マリウス・プティパ/レフ・イワーノフ
 監修・演出:牧阿佐美
 指揮:渡邊一正
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 オデット/オディール:スヴェトラーナ・ザハロワ(シーズンスペシャルゲスト、ボリショイ劇場バレエ)
 ジークフリード王子:デニス・マトヴィエンコ(アンドレイ・ウヴァーロフの代役)(シーズンスペシャルゲスト、ボリショイ劇場ゲスト)
 ロートバルト:市川透
 王子の友人(パ・ド・トロワ):遠藤睦子、西山裕子、中村誠
 小さい4羽の白鳥:遠藤睦子、西山裕子、本島美和、大和雅美
 大きい4羽の白鳥:真忠久美子、厚木三杏、川村真樹、寺島まゆみ
 スペインの踊り:西川貴子、厚木三杏、マイレン・トレウバエフ、富川祐樹
 ナポリの踊り:高橋有里、さいとう美帆、江本拓
 ルースカヤ:湯川麻美子
 ハンガリーの踊り:遠藤睦子、奥田慎也
 2羽の白鳥:厚木三杏、川村真樹

 新演出の「白鳥の湖」が登場です。装置と衣装がホット&ゴージャス→クール&エレガンスになりました。色合いが今までに比べて淡くセピア色がかった感じで、幻想的な雰囲気を盛り上げます(個人的にはターキーブルーやエメラルドグリーン、オレンジなどが鮮やかだった今までのものもかなり好きです)。そして、オデットがロートバルトにさらわれて白鳥に変えられるプロローグも加わり、より演劇色が強くなったように思えます。その他、振り付けにもあちこち手が入れられていて、あちこち眺めるのに忙しい公演となりました。一幕+二幕、三幕+四幕での上演なので、公演時間もかなり短縮。ダンサーたちシンドクないのかしらん?
 で、新演出ですが、プロローグは別になくても…というのが僕の意見。今回は地味〜に幕が開くので、ワクワク感半減。パーティで華やかに幕が開く方がゴージャスで好きです。おまけに、白鳥に変えられるしかけがあまりにショボク、失笑が漏れてしまったのは大原点。「現在の観客にも驚いてもらえるような」と牧芸術監督が宣言していたロートバルトの最後のシーンも普通にせり下がるだけ。ん〜、ミュージカルや歌舞伎を観に行って、よその劇場での演出を研究してほしいです>牧さん。
 ダンサーではザハロワが別格の名演を見せてくれました。長身でテクニックが売りのダンサーだと、オデットの場面で長い手足をもて余してしまうことがあるのですが、ザハロワは全身を使って非常に柔らかく細やかな動きを表現。変なたとえですが、とっても日本人らしい芝居なんです。大味な部分は皆無で細やかな感情表現に釘付け。腕の動き一つとってもエレガントです。それが、オディールになった瞬間、いきなり欧米人に変貌。長い手足を迫力タップリに振り回し、自信たっぷりに王子に迫りまくります。「私の誘惑で落ちない男なんていないわっ」という高笑いが聞こえてきそう。トドメを刺す前の表情といい、笑顔といい、恐〜いんです。もうホレボレ。それでいて、再びオデットになると、マッタク別人ダンサーのように貞淑な表現。目の強さも表情の動かし方も変わってしまうのですから大したもんです。この役に関しては僕の中でベストダンサー。二役の切り替えが鮮やかで、かつそれぞれがお見事でした。そして、舞台の上での華も申し分なく、彼女が登場するだけで舞台の空気が変わるのはアッパレ。謙虚な態度を取っているのに、主役オーラがビシバシ。惚れました〜。
 ジークフリード王子のマトヴィエンコは髪型を変えたは良いけれど、王子というよりも田舎の農夫みたい。今までのクシャっとした頭の青年ぶりが懐かしい。。。でも、ひたすら主役を踊ってきている人なので、王子らしさはにじみ出るものですね。ちょっとしたしぐさがとっても上品。どんなに難しい踊りでも、軽やかに品良くこなしてしまうのがマトヴィエンコの持ち味。王族やるなら余裕って大事ですね、と再認識しました。ちょいと頼りなさげだけれど、王子として愛されるキャラのジークフリードでした。手足が細く長いのもバレエダンサーとしては得ですね。
 そして、今回の公演より登場のルースカヤですが、僕の大好きな湯川麻美子が鮮やかに決めてくれました。そんなに派手な振り付けじゃないんだけれど、湯川麻美子はちょっとした振りを格好良く決めるのが抜群に上手いので、非常に見栄えが良いんですよ。恐らく、顔と決めのポーズのタイミングがバッチリ合っているからかと。クールなお顔なのに、笑うと途端にゴージャス。今や新国の「私を見て〜」ダンサーの第一人者となりました。と、18日は「私を見て〜」の大御所、お花さまとのダンス合戦じゃないですか。観たいけれど、夕方からの予定と重なるから無理だ〜。あぁ、勿体無いなぁ。
 通常、バレエでのオケは「二軍?」ということが多いのですが、今回は渡邊一正が千秋真一に見えました。東フィル、とってもカラフルでゴージャスです。ヴァイオリンソロもウットリもの。「白鳥の湖」は恐らく一番人気のバレエだと思うけれど、音楽に関しても最高級ですよね。そんな素材が美味しく調理されてて幸せいっぱい。新国の三階席は観やすいだけでなく、音響も抜群なのが嬉しい。


2006年11月12日(日)18:00-21:05
宝塚歌劇団花組「うたかたの恋」「エンター・ザ・レビュー」@市川市文化会館

 A席 5000円 2階-7列-34番 (パンフレット:1000円)
 演出:柴田侑宏、植田景子(うたかたの恋)/酒井澄夫(エンター・ザ・レビュー)

 ルドルフ:春野寿美礼
 マリー・ヴェッツェラ:桜乃彩音
 ジャン・サルヴァドル大公:彩吹真央
 ジェシカ:鈴鹿照(専科)
 ヨゼフ皇帝:夏美よう
 エリザベート皇后:梨花ますみ
 フリードリヒ官房長官:眉凰
 マリンカ/シュターレイ夫人:絵莉千晶
 ロシェック:悠真倫
 ヴェッツェラ男爵夫人:花純風香
 ゼップス:愛音羽麗
 ステファニー:舞城のどか
 フェルディナンド大公:貴怜良
 ミリー・ステュベル:桜一花
 ブラッドフィッシュ:華形ひかる

 先月の月組全国ツアーとスタッフがほとんど一緒ですね。たまたまでしょうが、ビックリ。通常、市川公演は土曜日&日曜日の二日間行われるのですが、今回は日曜日だけ。そして、春野寿美礼の初役とあって、文化会館前はサバキ待ちの人でいっぱい。最終的に彼女たちは入場できたんやろか???
 さて「うたかたの恋」ですが、今回の公演をもって、全組制覇となります。最近はすっかりツアー公演用、定番演目となりましたね。東宝劇場公演と同じ効果は求めるべくもありませんが、すっかり演出もこなれているように思えました。もちろん、公演ごとに手直しはされてますけれど。
 春野ルドルフは歴代ルドルフの中でも庶民派のイメージ。思えば、彼女はあまり高貴な役って演じてないんですよね。台詞にクセがあるのが原因でっしゃろか? 舞台における位取りについてあれこれ考えさせられました。自由を求めてもがくさまは「エリザベート」を彷彿とさせます。あ、親子かっ!! ショーの女装シーンは、本公演よりもかなりこなれて良い女ッぷりです。さすがに本公演〜博多座公演を経ての全国ツアーだけのことはあります。酒井澄夫ならではの安定した作りのショーということもあり、気楽に楽しめました。
 桜乃彩音は「ファントム」を経て、歌もややうまくなり、芝居でもショーでもすんなりと聞けるようになりました。それにしても、社交界にデビューしたての娘という設定なのに、役作りが幼稚すぎて驚き。小学生みたいな台詞回しなんですもの。オーストリアのハイティーンはもっともっと大人っぽいのですから、日本人の感覚だと20代後半とか30代位のイメージで演じてちょうど良いのではないかと思われます。ま、宝塚の場合、どの作品でも設定年齢よりもかなり幼く演じる傾向があるので、彼女だけの問題ではないのですが。。。個人的に馬鹿娘に見えた段階でヒロインとしては拒絶反応起こしてしまうんですよ。好みの問題ですが、砂糖菓子みたいな娘役は苦手。。。
 「うたかたの恋」に関しては、中心二人の芝居が噛み合っていないのと(それぞれ自分勝手に演じている)、コスプレ芝居特有の台詞回しや大芝居に生徒が慣れてないのがアリアリとしているのとで、盛り上がりに欠けました。台詞がスコン、スコンと落ちていく感じ。その代わり、「エンター・ザ・レビュー」はツアー公演とあって、かなり下級生まで見せ場が与えられていて、その張り切りぶりが微笑ましい印象を受けました。


2006年11月18日(土)17:00-20:00
K-BALLET COMPANY「二羽の鳩」「三人姉妹」@オーチャードホール

 B席 10000円 3階-3列-37番 (パンフレット:3000円)
 振付:サー・フレデリック・アシュトン(二羽の鳩)/サー・ケネス・マクミラン(三人姉妹)
 指揮:磯部省吾
 管弦楽:Kバレエ シアターオーケストラ

 少女:奥村和恵
 青年:芳賀望
 ジプシーの少女:荒井祐子
 愛人:ドゥ・ハイ
 ジプシーの少年:アレクサンドル・ブーベル

 オリガ:松岡梨絵
 マーシャ:ヴィヴィアナ・デュランテ
 イリーナ:荒井祐子
 ヴェルシーニン中佐:熊川哲也
 クールギン(マーシャの夫):スチュアート・キャシディ
 トゥーゼンバッハ:輪島拓也
 ソリョーヌイ:芳賀望
 アンドレイ・プローゾフ(兄弟):ドゥ・ハイ
 ナターシャ(アンドレイの妻):長田佳世
 軍医チェブトゥイキン:イアン・ウェッブ
 アンフィーサ(乳母):高橋佳子
 メイド:中島郁美

 今回に限ったことではないのですが、三階席だというのに10000円、パンフレットが3000円。「ありえないっ」とプリプリしてました。安い席……作ってください>関係者様。ということで、K-BALLETは設立時の公演以来しばらくご無沙汰していまして、数年ぶりの鑑賞となりました。だって、アシュトン&マクミランという僕のお気に入りの二大振付家の登場ですもの。この二人の作品でハズレはありませぬ。おまけにロイヤルのソリストが揃っているし(と思っていたら、今日の公演は吉田都は登場しないんだとか、あぁ!)エイヤッと購入。料金のせいか、作品の知名度のせいか知りませんが、僕の前はズラリと空席。そりゃ、席のランクが違うので仕方ないけれど、日本のお客さんって開演後も席移動しないんですよね。これがよその国の劇場だと、開演ベルと同時に「それ〜」っと集団大移動ですよ、きっと。やっぱり、目の前に空席ズラリの劇場で観るのって舞台との距離を余計に感じてしまい、今ひとつ乗り切れないものがあります。寂しかったなぁ。
 久しぶりに観るK-BALLETですが、いつの間にやらバレエ団としての個性を伴っていて、楽しく観ることができました。新国バレエが優雅でゴージャスなのに対して、K-BALLETは体育会系でストイックな雰囲気を受けました。よって、ジプシー場面の荒々しさは僕にとって実に新鮮。荒井祐子なんて「アナタは宝塚の男役さんですか!?」ってな切れの良さと勢いでアッパレなアバズレ女っぷりでした。素敵なスパイスダンサー♪ 群舞はあまり揃えようとしていないのは作品ゆえか、カンパニーの特性ゆえかはちと不明。一人一人がアピールしているのは楽しいけれど「アンタがスターや」という輝きを感じる人はちと見当たらなかったかな。
 と、そこへ後半から参加の熊川&デュランテが登場するやいなや、さすが世界のプリンシパルの実力を発揮。常に全力投球ではなく、力の抜き入れが自然なのと、三階席まで飛んでくるスターオーラが若手とは違います。熊川哲也というと、今までは役よりも「俺」が前面に出ているのが気になって、その超絶技巧には感服しつつも今ひとつ好きなダンサーではなかったのですが、今回は押さえた芝居もきっちりこなし、表情も実にやわらか。技術重視のダンサーから情感あるダンサーへの変貌ぶりに嬉しい驚きを感じました。日本を中心に活躍するようになり、王子役なんぞも沢山踊っているのも影響しているんでしょうね(ロイヤル時代はかなりレパートリーに偏りあり)。もちろん、要所要所での超絶技巧は若手が束になってかかっても太刀打ちできない鮮やかさがあります。技術だけでなく、自信もあるんでしょうね。今さら「観て〜」というのではなく「コレ位出来て当然」という余裕がさすがのトップ様ですわ。
 して、デュランテとのパ・ド・ドゥなんてあまりの濃厚さに鼻血ブー。元々恋人同士というのもあるのでしょうが、相手へのタッチに遠慮がなく、KISSだってブッチュ〜〜〜ッと濃厚なんです。いやはや、ラテンチックで非常によろしゅうおま。このゴージャス感、ぜひ若手も引き継いでいただきたいです。でもって、実は「三人姉妹」ってロシアのお話なんですよねwww
 でもね、昔から「役者は子役に食われ、子役は動物に食われる」って言うでしょ。今回も「二羽の鳩」では重要なシーンになると、鳩がタイミング良く登場するのですが、オペラグラスで確認したところ、本物なんですよ。決められた位置にピューっと飛んでくるし、鳩が止まった椅子を使ってダンサーが激しい踊りを行っても恐がって逃げたりしないし、せっかくの見せ場なのにダンサーよりも鳩を見ちゃうこともシバシバ(汗) どうやって調教するんでしょうね?


2006年11月19日(日)13:20-15:20
映画「プラダを着た悪魔」@TOHOシネマズ 市川コルトンプラザ スクリーン8

 全席指定 1300円(前売一般) J列-14番 (パンフレット:600円)
 監督:デヴィッド・フランケル

 ミランダ・プリーストリー:メリル・ストリープ
 アンドレア・サックス:アン・ハサウェイ
 エミリー:エミリー・ブラント
 ナイジェル:スタンリー・トゥッチ
 ネイト:エイドリアン・グレニアー
 クリスチャン・トンプソン:サイモン・ベイカー

 都会派のコメディ映画は僕の大好きなジャンル。「僕も明日から頑張ろう」と根拠のない自信とやる気に満ちてくるんですもの。とりあえずのところ「スタバのコーヒー飲んでみよう」だとか「颯爽と歩いてみよう」とかそんなレベルですけどね。でも、小さな努力の積み重ねがイケメンへの第一歩だと思いませんか?(「いつもそうやってキザな台詞を控えておくの?」と劇中でクリスチャンに突っ込みを入れているあたり、僕みたいな観客を意識してる!なぁんて勝手に喜んでます)。
 さて今回は仕事に対して斜めに構えていた女の子が、プロとして自立するまでの軌跡を描いた映画です。表面的には「新人vs鬼上司」なのですが、どちらか一方の肩を持つのではなく、それぞれの立場を言い分を存分に描いているのが実に面白かったです。上司の理不尽な要求に「頑張れ〜」と応援しつつも「仕事、辞めちゃおうかなぁ」と逃げの姿勢になったヒロインには「何甘えたこと言ってるの!」と渇をいれる同僚の意見に同意したり、ヒロインだけに肩入れでないので、一見気楽なコメディでありながらして、実は社会人としてのあるべき姿を描いているような気がしました。理不尽を感じつつも努力する姿は美しいし、その努力が実った時の晴れ晴れしさは、観ているこちらが思わずニンマリ。個性云々は基礎を身につけてから言いなさいっというメッセージがあるのですが「あ、音楽と一緒だ!」と膝をポン。自由とデタラメは違うっちゅうもんです。
 そんな鬼上司をメリル・ストリープが前半でこれでもかっていうほどビッチなオンナを演じきり(あ、かつてこんな上司がいた、なんて思い出してみたりして・笑)、アンドレアだけでなく観客の反感を買い捲りなのですが、あまりにアッパレなビッチぶりに、実は僕は大喜び。中途半端なところがなく、上品でやさしい口調なのに恐いなんて最高! 彼女のように生きてみたいです。でも、もちろん、それが許されるだけの仕事をしているのがさらに格好良いじゃないですか。「中途半端では一流の仕事ができない」というのを彼女自身が体現しているから、他人にも容赦なく厳しくできるんでしょう。怠け者の僕としては反省しきり。ゴージャスなドレスもバッチリ決めていて、さすがのハリウッドスター。実は彼女目当てじゃなかったのですが、惚れました〜。でも、一見悪役のようなミランダも、人間としての暖かさや弱さを垣間見せる場面がチラリとあり、それを大げさでなく、ほんのちょっとした表情の動きなどで表してしまうメリル・ストリープが絶品。あえて厳しいキャラクターで生きてきたのだろうという貫禄。「なりたい自分じゃなくてなるべき自分になる」というのはなんてストイックな生き方なのでしょうか。表面的にミランダと付き合う人にとっては単なる「うるさいオバハン」でしょうが、アンドレアのように頭が切れる人は、ちゃんと厳しさの真意を汲み取り、さらにそれを自分のものとして消化するもんですね。敵ながらアッパレなミランダでした。仕事に対して、人生に対して、日常生活に対しての完璧な自己コントロールはスゴイですね。「尊敬する人は?」と聞かれたら、今後は「ミランダ・プリーストリー」と答えちゃいそうです!!
 新人社員のアンドレアに扮したのはアン・ハサウェイ。「プリティ・プリンセス」でジュリー・アンドリュースの孫娘を演じたので、勝手に「ジュリーの孫」と呼んでいるのですが「デブで醜い」と評されるには元から別嬪さん。数々のブランド服の着こなしはアッパレ。「ファッションには興味がない」と言っておきながら、いざドレスを身につけると、その立ち居振る舞いが堂々としていて、とっても魅力的。ニューヨーカーは美しいだけではなく、自信に満ちていてこそ格好良いってもんです。そういえば、ジュリーもコヴェントガーデンの花売り娘からレディに変身してたでしょ(ジュリーは「マイ・フェア・レディ」のオリジナルキャストです、念のため)。さっすがジュリーの孫(ウソ!)だけあって、アン・ハサウェイのダサダサ→華麗でゴージャスへの変身ぶりは相変わらず健在。でも、ジュリーもアンも偉かったのは、キレイになった=ゴールとは考えなかったこと。自分がいかに生きていくべきかを考慮し、惰性の現状から抜け出し、自らの手で自分の道を選ぶなんて、血筋かしらん?(ってまだ言うか!?>自分)。
 数々のドレスを見事に着倒す女性たちや、豪華絢爛(それでいてモダンでシャープ)な美術に負けない男たち、ニューヨークの魅力がタップリ詰っているのに、さらにさらに、後半では美しいパリの街並みもしっかり登場。異国の地でのロマンスあり、スリリングな展開とどんでん返しありで、あっという間の二時間でした。環境ビデオとして、常に家の中で流しておきたい、そんな一本です。美しき美術、美しき衣装、美しき人々……目の保養です♪


2006年11月19日(日)19:00-21:10
井上頼豊没後10年追悼 トリビュートコンサートシリーズ
「門下生による12人のチェロアンサンブル」@津田ホール

 全席自由 4500円 G列-7番 (パンフレット:無料)

 苅田雅治/秋津智承/銅銀久弥/渡辺文月/鈴木秀美/小川剛一郎/中田有
 古川展生/高橋麻理子/竹花加奈子/久武麻子/山本裕康/久良木夏海/迫本章子

 バッハ:無伴奏組曲
 ガブリエリ:リチェルカーレ
 カサド:無伴奏チェロソナタ
 井上鑑:In The Cloud
 フィッツエンハーゲン:ワルツ
(休憩)
 バッハ:シャコンヌ
 クレンゲル:讃歌
 カタルニア民謡:サルダーナ
 レノン:Imagine
(アンコール)
 カザルス:鳥の歌

 元はといえば、のぼぉちゃん目当てのコンサートではあったのですが、井上頼豊没後10年追悼ということもあって、門下生が集結。「僕たち、こんなに頑張ってるよー」という雰囲気の素敵なコンサートでした。前半はソロと少人数でのアンサンブルで、雰囲気は「大人の発表会」です。全曲ではなく、その一部を弾いて、一礼して舞台を去っていくんですもの。門下生一同なので、似たタイプのチェリストが集まるのかと思っていたら、一人一人のアピールする部分が異なっていて「どんな先生だったのかな」と興味を持ちました。通常のコンサートだと、ついつい「誰が一番上手かな?」と観客は構えてしまいますし、出演者も「負けられない!」というピリピリ感が伝わってくる時もあるのですが、やはり「発表会」なので、暗黙の了解のうちに序列がある雰囲気。威張ってるとか卑屈になっているとかじゃなくって、それぞれが自分の立場を理解していて、その中でベストを尽くすとでも言いましょうか。リーダーに付いていきますっという空気があって、実に心地良いです。没後10年なので、一番若いお弟子さんですら音大生。中心は30-50代の演奏家でしょうか。ちょうど脂の乗っている年代ですから、音に色気があって気持ちよかった〜。一応タイトルでは12人の〜となっていますが、実は13人のアンサンブルがほとんど。都響のチェロアンサンブルの倍近くの人数なのと、津田ホールという小さな会場ゆえ、濃厚な音空間が出現。音のうねりに気持ち良く実を委ねてきました。
 そんなわけで、のぼぉちゃんの音が、仲間たちとブレンドしていく様が今回のポイント。そういえば、男性出演者の中ではのぼぉちゃんが最年少でしょうか? 普段、都響の主席として仲間を引っ張っていく立場にあるのぼぉちゃんですが、先輩諸氏に囲まれての演奏。二番手格として伸び伸びと演奏しているのぼぉちゃんの姿って何だか好きなんですよぉ。雑念がなくって、音に溶けていく印象を受けるのって、深読みしすぎ!?


2006年11月23日(木・祝)18:00-20:40
来日カンパニー「RENT」@東京厚生年金会館

 A席 9500円 2階-13列-51番 (パンフレット:2000円)

 演出:Amy Hensberry

 Mimi:Arianda Fernandez
 Angel:Joel Bermudez
 Mark:Jed Resnick
 Roger:Gavin Reign
 Maureen:Shea Hess
 Jonne:Andrea Dora Smith
 Collins:Scottie McLaughlin
 Benny:Terrence Clowe

 観れば観るほど好きになる作品です。決して豪華でも華やかでもない作品ですが、どの曲にも「この部分が好き!」というメロディライン(+コード進行)が登場するので、ストーリーにあわせて、心地良く酔いしれることができるのが魅力。ソロに重唱にコーラス。初見の時に拒絶反応を起こしていたのがウソみたい。エイズだ同性愛だと刺激の強いものが登場しますが、結局は「友情と愛情、人生讃歌」といった普遍的なものを扱っているので、きっとこれからも上演され続けるのではないでしょうか。
 さて、今回のプロダクションではエンジェルとコリンズのカップルが主役に見えました、僕には。はて、オペラだとマルチェロとショナールになるのかな。音楽家と哲学者の組み合わせです。地味なの(笑) オペラだと劇中でチャンバラごっこをする程度ですが、ミュージカル版だとさらに親密な関係。とはいえ、その幸せぶりは「クリスマスだからプレゼントしてあげる」「将来はサンタフェでカフェやろうね」といった微笑ましいもの。そんなに派手じゃないんです。でも、実は今回の来日カンパニーの「RENT」はアッサリ味。ちょうど良い盛り上がり具合でしょう。そういえば、バンドはリズムも低音もソフトで「ジャジャーンッ!」と迫力で終わるのではなく、音が劇場空間に溶け込んでいくのが印象的でした。多くのヴォーカルも含めて「どうだっ」と押し付けるのではなく「心に染みるわぁ」という感じの上演。こんな「RENT」もありかもしれませんね。
 とはいえ、僕は派手なパフォーマンスが好きなので、今までの「RENT」に比べて戸惑う場面もいくつか。まずは衣装が一新されています。とはいっても、貧乏人たちの話なので豪華になったというのではなく、単にデザインや色合いが変わっただけなので、とりたててどうこう言うものじゃありません。そして、フィナーレではマークが映写機を使って、舞台セットや客席の壁に今まで撮りためたものを映し出す部分は、ホリゾントに勝手に映像が流れるものに変更されてました。これはツアーカンパニーとして、会場の条件に影響されないようにするため? で、気になったのがテーマ曲ともいえる「Seasons of Love」。ソロパートがほとんどカットされてて声の饗宴がなかったんです。これは出演者の問題!?!? 残念至極です。あ、モーリーンのSheaはネットリしていて強い声なので、ちょっとした台詞やフレーズが実に快感。今回の来日メンバーの中では一番のお気に入りです。
 さて、オペラ「ラ・ボエーム」における主役トリオ、ロジャー(ロドルフォ)+ミミ(ミミ)+ジョアンヌ(ムゼッタ)ですが、ロジャーとミミはやたらと声が太く低音が得意な二人。楽譜通りではなく、結構音を動かして歌っていました。が、それ以上に、輝かしい高音が魅力のナンバーに彼らの声は合わないような気がしました。ソロナンバーではちゃんと必要とされる高音は出しているんですけどね。音質というのもとっても重要かも。ミミなんて台詞まで男役になってるし、ぶっきら棒だし、僕にとっては魅力を感じられないオナゴでした。でも、相手を見ているようで観ていないロジャーとミミのカップルというのも、この作品としては丁度良いのかもしれません。人間愛を歌っている割に、ロジャーとミミのつながりの強さってあまり感じないでしょ!? ジョアンヌのライブも非常にアッサリ。パフォーマンスのシーンでは客席を巻き込んで「ム〜」と鳴くのですが、「RENT」慣れしている観客が多いので、東京は反応が良いんです。にもかかわらず、客席をあおるのも投げやりだし、会場が盛り上がる前に「Thank You!」でおしまい。森川ゆかりがあそこまで仕込み、初来日公演の際にはその反応の良さにキャストが思わず涙を見せた場面なのにぃ。。。ということで宙組化とでもいいましょうか、あっさりサラサラな印象の公演でした。もちろん、作品の良さは伝わってきましたし、壊滅的なキャストもいなかったので、楽しい時間を過ごすことが出来ましたし、そこそこ感動を得られましたし。でも、アクや棘のない「RENT」、そんな印象でした。


2006年11月24日(金)18:00-途中退席
ミュージカルアカデミー「FAME」@東京芸術劇場中ホール

 S席 9500円 1階-V列-11番 (パンフレット:2000円)

 演出:川崎悦子

 タイロン・ジャクソン:屋良朝幸(岩渕憲昭)
 ジョー(ホセ)・ヴェガス:米花剛史(嶋本秀朗)
 シュロモ・メッツェンバウム:町田慎吾(縄田晋)
 ニック・ピアザ:秋山純(山下徹大)
 セリーナ・カッツ:本田有花(森奈みはる)
 ミスター・メイヤーズ:赤坂泰彦(野垣真実生)
 エスター・シャーマン:杜けあき(上月晃)
 グレタ・ベル:岡千絵(山本リンダ/逸見マリ)
 ミスター・シャインコフ:青山明(山下堂司)
 カルメン・ディアス:藤林美沙(岡田静)
 グッディ:原田優一(荒巻正)
 メイベル・ワシントン:林希(福島桂子)
 アイリス・ケリー:岩崎亜希子(友谷真実)
 グレース・ラム(ラムチョップス):生尾佳子(工藤さちゑ)
 ( )内は1997年・日本初演キャスト

 日本ではスイセイ・ミュージカルのレパートリーとしてお馴染みの「FAME」がミュージカルアカデミーによって上演! というから「知らないカンパニーだなぁ」と思いつつチケットを購入したのですが、どうやらカンパニーの名前ではなく、アイドルグループの名前だったようです。たはは。ということで、かなり作品に手が入れられています。オープニングナンバーは丸々カット。いきなり入校式になります。ナンバーの省略や芝居部分の刈り込みがかなり行われていて、いかにスイセイ版がウェストエンド版(後にブロードウェイでも上演)に忠実な舞台だったかがしのばれます。恐らく、出演者の演技力や歌唱力を考慮してあれこれ手を入れたのでしょう。芸術高校が舞台で、先生方一同が基本を身につけるようにと叫んでいる割に……歌えない、踊れない、芝居できない人がゴロゴロ。ん〜、これで9500円は取り過ぎでしょう。
 ということで、今回のキャストで僕がわかる人は先生方のみ。あれ、青山明っていつの間に劇団四季を退団してたんでしょう? 歌手なのにソロナンバーがなくて残念でした。最近の劇団四季はベテラン役者の退団が相次いでますね。ただでさえ人手不足なのに。。。彼は四季の中でも脇役に近い人でしたが、退団して一般の舞台に立つと、オーラのなさと、四季特有のクセのある無感情台詞術がちとワル目立ち。今さら四季を退団しちゃって大丈夫かいな? 赤坂泰彦は声の良さが際立ち、杜けあきはさすがの歌唱力と演技力(おっかない先生という印象はなかったです。ゴンちゃんやオトミさんだと神経質そうで恐かった〜)で舞台を締めます。
 ミュージカルアカデミーのメンバーですが、シュロモ:町田慎吾のヴァイオリン演奏の芝居が自然でボーイングや左手が演奏とぴったり合ってたのがスゴイ。ヴァイオリン習ってたのやろか? 目が大きいのと体つきがまだ中性的なので、ちょっと女の子っぽかったです。タイロン:屋良朝幸は良く踊ってました。でも、164cmのカリンチョさんと並んでもかなり小さいってことは、身長150cm位? ホセ:米花剛史はコメディリリーフだったものの、ナンバーや台詞のカットが多くて損した役どころ。ニック:秋山純は意外に歌えず踊れずで悪目立ち。役としてもボリュームも主役から三番手あたりに格下げ。フィナーレでこの四人のコンサートが始まってしまったのにはビックリ。二曲付き合いましたが、それ以上は……パス。このグループは僕好みじゃないなぁ。。。
 その他の出演者では、カルメン:藤林美沙が儲け役を美味しく演じてました。中でもダンスのキレの良さ、アピールの上手さは今回のカンパニーでピカ一。思わず見ほれてしまいました。キレイなお姉さんです。グッディ:原田優一はすっかり声変わりしていて、大人声なのにビックリ。おまけにとっても美声。ポッチャリした子役とばっかり思っていたのですが、いつの間にやらスリムになってるし「芸大にこんな感じの歌科の人、いるいる〜」と思わずニンマリ。来年のレミゼが俄然楽しみになってきました。メイベルは歌える、踊れるで、女性アンサンブルの芯として大活躍。kのカンパニーは出演者同士のアンサンブルよりも「目だった者勝ち」のタイプなので、せっかくの彼女の芝居を受け止めてくれる人がほとんどいなかったのは勿体ない。MAの四人以外の出番はことごとくカットされてて、公演の趣旨としてはともかく、結局はクオリティをかなり下げてしまったようです。カットの仕方もあまり上手くなく、全編押し捲りの歌とダンスと芝居なので、結局、引き立つ部分がみつからないまま幕になってしまいました。名前もあがらなかった人たちと演出家については黙殺っ! 用はありませぬ。


2006年11月30日(木)11:00-12:10
東京藝術大学「2006年度 第11回 奏楽堂 モーニングコンサート」@東京藝術大学奏楽堂

 全席自由 無料 17列-04番 (パンフレット:無料)
 指揮:三河正典
 管弦楽:藝大フィルハーモニア

 作曲:桑原ゆう(4年)
 ピアノ:武内みさき(3年)

 桑原ゆう:Tho Whales
 ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 作品11

 どうも作曲科の作品って苦手なんです。僕にとっては「音楽」ではなく「音が苦」でしかありませぬ。本日の一曲目もご多分に漏れず。履歴を読むと、数々の賞を受けているらしいのですが、猫に小判です。だって、メロディーが全然残らないどころか音程不明の箇所も多いし、リズムも体に心地よいものでもなく、オケ全員が懸命に演奏しているにもかかわらず、ハーモニーによって包み込まれる感覚もなし。そもそも、メリハリがマッタクない曲で、12分間ひたすら雑音の中にいるような感覚。ん〜、この音程不明の部分は鯨の鳴き声なのやろか? それにしても、作曲家自身による曲目解説からイメージするものとは全然違う音の塊にかなり戸惑ってしまいました。あらためて、現代音楽は嫌い!ということを再認識。どうも芸大の作曲科の作品というと摩訶不思議なものばかり登場する気がするのですが、心地よい音楽を作る人はいないんやろか?
 ま、客寄せもあるのでしょうが、なぜか作曲科の作品とカップリングされるのは超ポピュラーな作品の気がします。今回はショパンのコンチェルト。はい、こちらが本日のメインでした。この曲はオケの前奏はやたらと長いけれど、いざピアノが弾き始めたらノンストップの体力勝負作品。おまけに、ピアニストであれば一人一人が思い入れがあるであろう曲で、発売されているCDだって星の数ほど! そんな中、この曲を選んだのだから、さぞ聴き物なんだろうと勝手に期待していました。が……ここ最近のモーニング・コンサートのピアノの中では一番の不完全燃焼。いえね、これは僕のこの曲への思い入れが強いせいかもしれないのですが、あまりに自己主張のない演奏に途中で帰りたくなっちゃった。指は良く回ります。さすが芸大ピアノ科です。でも、ただそれだけでメリハリがないので、ひたすら退屈。おまけに、唯一の売りと思える指回りも、三楽章では疲れてきちゃってもたれ気味。ん〜、よくぞ最後まで弾き切った、頑張ったね〜、という印象です。でもって、演奏家として「頑張ったね〜」はないでしょ。おかげで、演奏後もさして盛り上がらず。