観劇日記〜2006年12月〜
01日(金) 14:00 宝塚歌劇団花組「MIND TRAVELLER」 日本青年館
03日(日) 14:00 新国オペラ「ベートーヴェン:フィデリオ」 新国立劇場オペラ劇場
08日(金) 16:30 十二月大歌舞伎「神霊矢口渡」 歌舞伎座
08日(金) 19:15 映画「007/カジノ・ロワイヤル」 サロンパスルーブル丸の内
09日(土) 13:00 松竹「紫式部ものがたり」 日生劇場
09日(土) 18:30 TPT「黒蜥蜴」 ベニサンピット
10日(日) 14:00 新国オペラ「ロッシーニ:セビリアの理髪師」 新国立劇場オペラ劇場
15日(金) 13:30 宝塚歌劇団雪組み「堕天使の涙」「タランテラ」 東京宝塚劇場
15日(金) 18:30 新国立劇場バレエ団「シンデレラ」 新国立劇場オペラ劇場
16日(土) 11:00 クァトロ・ピアチェーリ「千住キャンパス 弦楽四重奏コンサート」 東京藝術大学 千住キャンパス3F スタジオA
21日(木) 19:00 「ヤマハホールさよならコンサート 第1夜〜2009年リフレッシュ・オープンに向けて〜 第1夜」 ヤマハホール
22日(金) 18:30 新国立劇場バレエ団「シンデレラ」 新国立劇場オペラ劇場
26日(火) 14:00 映画「シャーロットのおくりもの」 TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン3
30日(土) 17:35 映画「ヘンダーソン夫人の贈り物」 ル シネマ


2006年12月01日(金)14:00-16:45
宝塚歌劇団花組「MIND TRAVELLER」@日本青年館

 A席 7000円 2階-C列-42番 (パンフレット:600円)
 演出:小池修一郎

 マックス・プラマー(過去の記憶を失った男):真飛聖
 パメラ・オースティン(記憶障害専門の医師):華城季帆
 マノス・カザン(麻薬患者救済のNPO代表):星原美沙緒(専科)
 テオ・カサベテス(港湾業界の大手・マルス社の社長):高翔みず希
 アンジェラ(ナイトクラブ・セイレーンの経営者):鈴懸三由岐
 ヘレン・スタイン(スタイン財閥の未亡人):涼葉らんの
 リチャード・モリス(脳神経を研究する医学博士):未涼亜希
 ボブ(マックスの元同僚):嶺輝あやと
 フィリップ・ムーア(カザンの秘書):真野すがた
 ザック・ドナヒュー(刑事):紫峰七海
 リーク・ベネット(ダンスチーム・UNDERPASSのメンバー):朝夏まなと

 青年館公演なのに7000円は高いなぁ、というのが正直なところ。だからといってそんなに豪華な公演でもないし、コストパフォーマンスとしては今一つという印象は拭えませぬ。関西公演はバウホールではなくドラマシティが会場なので料金に差があるのは仕方ないと思いますが、東京公演まで料金UPというのは解せないなぁ。これが日生劇場だったらまだしも(キャパだけだと日本青年館>日生劇場です)。
 真飛聖は花組に移籍してから初の主演作品。次回公演より単独二番手になるということもあって、かなりの完成度が期待されるのですが、座長としての位取りがまだまだな印象を受けました。今の段階ではまだ固いつぼみ。太くて安定した良い声を持っているし、スターとして大事に育てられてきているはずなのですが、彼女のゴツゴツした芸風も相まってか、今一つ殻を破りきれないもどかしさがあります。彼女の演じた役でmyベストは「雨に唄えば」のリナちゃんなのですが、あそこまでぶっ飛んだ役の方が殻を破りやすいのかな? 素顔はともかく、舞台での華のない人なので、悩める役はお似合いな反面、地味な印象に。相手役の華城季帆が華やかなだけに割を食ってしまいました(歌は完全にリード権を奪われてた!)。悪くはないんだけれど、今のポジションを考えると、もっと「私を見なさいっ」というオーラが必要ですよねぇ、宝塚ですもんねぇ。トップまでの時間はあまり残されていないけれど、今後のアピール力UPに期待!
 華城季帆は良かった〜。僕は好きです。変にネチャネチャとガキっぽい役作りをする娘役が多い中、スッと自然に台詞を言うのがまず嬉しかったです。大人のイイオンナを演じる生徒の少ない中、今後の活躍が楽しみになってきました。そして、歌は声区のチェンジがお見事で、大抵の娘役が苦労する中音域も心地よい響きで、かつ、表情豊かなのが嬉しいです。真飛聖と二人っきりにもかかわらず、通常の宝塚歌劇とは逆に、主役の男役が舞台上でじーっと固まったまま娘役が丸々ソロを歌う場面には「この二人だと仕方ないよね」と納得。まだ新進スターのはずですが、主役を見事に食ってました。よって、今回の作品はサスペンスの部分が拡大されていて、ラブ・ロマンス部分はかなり淡白。二人が惹かれあう過程や愛し合う部分で盛り上がらないので、最後もカタルシスが…ね。映画だったらベッドシーンの一つも入れて、ロマンティックな一夜でも挿入するところですが、さすがに宝塚でベッドシーンはねぇ(たまにありますけどね)。でも、これは真飛聖のスケールが小さすぎというのもあるんです。花組は今後大丈夫やろか!?
 脳神経を研究する医学博士という設定の未涼亜希はちょっと影のある生徒なので、今回のような役はドンピシャリ。影が凄みにもなってて、見応えがありました。それにしても、人間の記憶を書き換えてしまう医学って、とてつもない発想ですよね。サイボーグの領域じゃないですか! 着想は面白いけれど、その後の書き込みが甘い(というか、恐らく専門知識の関係?)のが小池作品の弱点ではありますが、今回も突っ込みどころ満載なので、サスペンスとしてはあまり面白くなかったかも。今回の作品はハリウッド映画として制作したらかなり面白いものが出来るのではないかな。若手中心の生徒で、限られた条件の中で効果を発揮するのは難しいことかと思われます。
 小池作品の魅力というと、主題歌の格好良さというのがあったのですが、今回は全然耳に残ってないんです。それどころか、印象に残る曲すらなかった! ん〜、やはり、帰宅時に口ずさめる曲がないのは寂しいものです。導入部〜主旋律〜盛り上げどころといった作りの曲がなかったのが原因!? そして、ダンスも振り付けがこれでもかって程つまらないもので「衣装を汚したくないのね」というのがアリアリとしているんです。宝塚の場合、衣装の中に詰め物が多かったりして、特に男役の場合は動きに制約が多いのですが、それでも、若者たち(女の子も含む)の思わず足を止めて「おぉ〜」と唸ってしまうダンスが普段から駅前なんぞで見られる今日このごろ、宝塚における「現代の若者」の表現の難しさを感じました。古い形式にとらわれるのは危険だけれど、新しい形式を開拓していくのもこれまたイバラの道ですね。でも、ミュージカルとしての流れの良さに関してはさすがの小池演出。楽しめちゃうのは確かです。


2006年12月03日(日)14:00-16:30
新国オペラ「ベートーヴェン:フィデリオ」@新国立劇場オペラ劇場

 D席 2835円(ATRE会員割引) 4階-4列-17番 (パンフレット:800円)
 指揮:コルネリウス・マイスター(ミヒャエル・ボーダー)
 演出:マルコ・アルトゥーロ・マレッリ
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 ドン・フェルナンド:大島幾雄(河野克典)
 ドン・ピツァロ:ハルトムート・ヴェルガー(ペテリス・エグリーティス)
 フロレスタン:ステファン・グールド(トーマス・モーザー)
 レオノーレ(=フィデリオ):エヴァ・ヨハンソン(ガブリエーレ・フォンタナ)
 ロッコ:長谷川顯(ハンス・チャマー)
 マルツェリーネ:中村恵理(水島育)
 ヤキーノ:樋口達哉(吉田浩之)
 囚人1:水口聡(水口聡)
 囚人2:大澤建(青戸知)
 ( )内は2005年5月のプレミエ・キャスト

 
初演の時からかなり気に入っていたのと、キャストが総入替えなので楽しみにしていました。キャストが変わっても印象がさほど変わらなかったのは、キャスティングが徹底していたせいか、それともベートーヴェンの音楽ゆえかわかりませんが、今回も大いに楽しんできました。がっちりした低音に支えられて、表情豊かに歌手が歌い上げる空間は実に爽快です。初演時よりも、アンサンブルの面ではこなれていたような気がします。これは新国合唱団の力が大きいかと思われます。というのも、ここ1〜2年でのレベルアップが著しく、以前のように「あ〜あ」というのではなく「来たぞ来たぞ」という力強さが加わったから。ま、この作品自体「第九」のように合唱の見せ場が良くできているというのもあるからかな。
 歌手陣は初演も今回も僕は満足です。初演時も素晴らしかったけれど、今回はより情感あふれる歌唱が繰り広げられていたのがmyツボ。僕は上手でも淡々と歌う人は苦手なのですが、今回はみなさんとっても感情豊かで、ちょっとしたフレーズに色気が漂ったり、芝居心を感じたり、一つ一つにジックリ聞き惚れました。中でも、長谷川顯(劇団四季のの野中万寿夫をなぜか思い出させる人です)父ちゃんぶりと、中村恵理のお嬢ちゃんぶりのコンビネーションがバッチリで、親子の愛情がビシバシ。日本人同士のせいだからかもしれませんが、森繁久弥の「屋根の上のヴァイオリン弾き」のように、作品が求める以上、演出家が求める以上に、人情ドラマとして成り立っていました。それに絡む樋口達哉の好青年ぶりがまた良いんですよ。ちょっと情熱的な部分が、一途にマルツェリーネを愛しているのが伝わってきて、サブ・ストーリーながら、実はメインの話よりもこちらの家族関係の方が僕には興味深かったです。
 というわけで、ドン・ピツァロ、フロレスタン、レオノーレの本来のメインストーリーのメインキャストたちですが、音楽的には素晴らしいものを聞かせてくれましたが、芝居の面では日本人歌手たちとのスタイルの違いを感じてしまいました。決して手抜きではなく、ちゃんと芝居しているのですが、どこか方向が違うんですよねぇ。相手の芝居を受けあうのが日本チームなら、外来チームは相手に芝居を投げあう、といったところ。あ、これは僕の私感なので、実際のところは逆なのかもしれませんよっ!(っと言い逃げ準備〜www)


2006年12月08日(金)16:30-17:40
十二月大歌舞伎「神霊矢口渡」@歌舞伎座

 一幕見席 700円 4階-2列-26番 (パンフレット:1200円)

 頓兵衛:富十郎
 新田義峯:友右衛門
 うてな:松也
 六蔵:團蔵
 お舟:菊之助

 急に時間が出来たので歌舞伎座の一幕見席を利用。東宝劇場建て替え前は三階席(取り壊し時点で1200円でした!)から宝塚を観たものですが、劇場建て替え後はチケット代のインフレもあって、今や映画よりも安くお芝居を観られるのは歌舞伎座位になりました。(ちなみに、新国はZ席が1500円です)。今月の歌舞伎座は出演者が地味なせいか、年末でみなさん忙しいのか、作品は悪くないと思うのですが、完売ならず。1〜3階席もあちこちに空席が目立ちましたし、4階の一幕見席も余裕で着席。では、作品がつまらないかというと、これがと〜っても面白くて、大満足だったのです! 何の作品がかかっているのかもわからず、ブラリと覗いたら面白かったなんて、とっても得した気分になります。
 さて「神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)」ですが、前半はコメディ、後半はシリアスといった内容。菊之助のコメディエンヌぶり(コメディアンぶり?)が圧巻でした。義峯が「泊めてくれ〜」と玄関先にやって来た時も菊之助の演じるお舟は「うちは宿屋じゃないから駄目っ」とはねつけるのですが、こっそり玄関の隙間から覗いたら義峯があまりにタイプだったものだから、こんどは「ゼヒゼヒ泊まってって」とコロリと態度が変わるのがまず可笑しい。さらに「泊めてあげる」と約束してから、うてなの存在に気づき「アンタこの人の何なのさ!」と勝手に舞い上がるのでまた大笑い。挙句の果てには義峯に熱〜〜〜いアタック攻撃。義峯がポーカーフェイスなだけに、お舟のからまわりぶりが際立って、ヒーヒー笑ってしまいました。菊之助は「一人だけマイクつけてる?」と錯覚してしまう程、声の通りが良いのと、動きが細かくかつ流麗、さらには舞台化粧が実に綺麗な別嬪ぶり。今や、女形ではいちばんのご贔屓かも。澄ました顔してサラリとおかしなことをしでかすあたり、歌舞伎界の大地真央の称号をささげたくなります。やはり、余裕のある芸って良いですね。
 それが、後半になるといきなり「リゴレット 第四幕」に早代わり。この変換が鮮やかでした。回り舞台でセットが回るとなぜか大海原が登場するのですが、回り舞台を駆使して、歌舞伎座ならではの広い平面空間いっぱいに真っ青な海を描いた床が登場した時は、その鮮やかな色彩感覚に思わず拍手。視覚の爽やかさとは裏腹にストーリーはドロドロ。頓兵衛=スパラフチーレ(リゴレットでも良いかも)、お舟=ジルダ、義峯=マントヴァ伯爵そのまんま。頓兵衛が憎き義峯を刺したつもりが、実は身代わりになって義峯を逃がしていたお舟だったというお話。リゴレットは「呪いだ〜」と叫んで幕となるのですが、頓兵衛は「余計なことしやがって!」と瀕死の娘に対しさらに殴る蹴るの悪役ぶり。富十郎の迫力不足はありましたが、前半とのギャップもあって、かなり見ごたえがありました。でもね、この場面のお舟は「ベルサイユのばら」におけるアンドレのごとき。瀕死のはずがいつまでも死なずに、あれこれポーズを決めてみたり、ちゃんばらまでしてみたり。それぞれは素敵なんです、スローモーションやストップモーションといった、映画的な演出が見ものでした。でも「もうわかったらか、さっさと死んで!」と途中で思ってしまったのも事実。見せ場なのでたっぷり見たいのですが、さじ加減をあやまると「長いなぁ」となってしまうのですから、お芝居って難しいものですね。
 そういえば、前半と後半で義太夫コンビも入れ替わるのですが、前半の人は細い声ながら、通りがとても良かったので、自然に耳に入ってきました。しかし、後半の人は通りの悪い声で、おまけに自分だけ感情たっぷりに熱演してくれるのですが、エネルギーが客席まで届かないので、せっかくの菊之助の熱演に水を差した状態。あんな義太夫だったらない方が良いなぁ。ことに、今回は何から何まで説明するというかなりしつこい歌詞だったので。。。とはいえ、ほんの70分の間にコメディあり、シリアスあり、各種しかけありと、とてもお得感たっぷりでした。


2006年12月08日(金)19:15-21:55
映画「007/カジノ・ロワイヤル」@サロンパスルーブル丸の内

 前売一般 1300円 N列-20番 (パンフレット:800円)

 監督:マーティン・キャンベル

 ジェームズ・ボンド:ダニエル・クレイグ
 ヴェスパー・リンド:エヴァ・グリーン
 ル・シッフル:マッツ・ミケルセン
 M:ジュディ・デンチ
 フェリックス・レイター:ジェフリー・ライト
 レネ・マティス:ジャンカルロ・ジャンニーニ
 ソランジュ:カテリーナ・ムリーノ
 ディミトリオス:サイモン・アブカリアン
 モロカ:セバスチャン・フォーカン
 ミスター・ホワイト:イェスパー・クリステンセン
 ヴァレンカ:イヴァナ・ミリセヴィッチ
 ヴィリアーズ:トビアス・メンジース
 マダム・ウー:ツァイ・チン
 グラフィン・フォン・ウォーレンスタイン:フェルシュカ
 カミノフスキー:ラザー・リトリフスキー
 トメリ:ウルバノ・バルベリーニ
 ギャラルド:チャーリー・レヴィ・レロイ

 実は007シリーズを観るのは初めてなんです。よって、新ボンド=ダニエル・クレイグのキャスティングに関する数々の非難もどこ吹く風。初物ならではの新鮮な気持ちで見てきました。予告編だと高級リゾートや高級クラブの映像が印象的だったので、しょっぱなから無駄に派手なアクションシーンが続くので思わず硬直。話としては面白いのですが、あまりに無謀かつ一般社会への失礼な主人公の暴れぶりに、ちょいと拒絶反応。ま、ボンドガール的存在のヴェスパーも上司のMもボンドのことを最初はかなり「嫌なヤツ」と思っているので、観客もボンドに対して共感を持たなくても良いのかも。その後はどんでん返しの連続、裏切りの連続で、上映時間の長さも相まって……飽きました。いえね、カタルシスが得られれば良いんですよ、長くても。でも、連続テレビ小説を延々と見せられているような気分になってくるんです。一つのエピソードの最後にはどんでん返しがあって「さて、いったいどうなるんでしょう?」みたいな展開の繰り返し。もちろん、それぞれは面白いけれど、映画全体としてはメリハリがなくなってしまった印象。元の話を知らない僕にとって、見ている最中は「どの時点で完結するの?」と不安な気持ちにすらなったほど。通常の映画だと90分前後なので、なんとなく起承転結の時間配分って決まっているでしょ。それが、この作品はそれがなく、あげくの果てに、映画の最後には「つづく」という字幕が現れそうな幕切れ。このシリーズのファンにはそれでも良いかもしれませんが、今回が最初で最後かもしれない観客に対してはちと不親切ではないでしょうか。だって、お尻が痛くなるほど頑張ってみた映画なのに、最後の最後に盛り上がれないなんて。。。ま、もともと僕好みの路線ではない映画なので、こんなもんなのかも。ロマンティックやゴージャスな場面は少しだけで、全体的にハードな印象です。
 ダニエル・クレイグはプロフィールによると、僕よりも3歳年上。「マッスル・ミュージカル」にも参加可能な見事な肉体と、ずんぐりむっくり体系にもかかわらず、かなり機敏な動きが魅力。中年男ならではのそこそこの色気もあります。胸板があるので水着もタキシードもなんとなく似合っていますが、お腹はかなり出ています。腰回りにもしっかり贅肉がついてます。水泳シーンで髪の毛がペシャンコになると、かなりヤバイのがばれてます。いえ、良いんですよ、その登場人物の個性と見ますから。でもね、同世代の俳優の老けっぷりを大画面でタップリ見せられるのも悲しいものがあります。ことに、全裸で椅子に縛られて拷問を受ける場面は見てて辛かった〜。でも、その分ヒロインは知的でキリリとしていて僕好み♪ でもって、M(男性の役だとばかり思い込んでました)役のジュディ・デンチ(ミュージカルファンにはヨダレジュルッのお馴染みさん)がおっかない芝居でキリっと引き締めてて、この手のお芝居大好きな僕は大喜び。大女優の貫禄ぶりが遺憾なく発揮されているのが快感。


2006年12月09日(土)13:00-16:15
松竹「紫式部ものがたり」@日生劇場

 B席 4000円 2階-I列-15番 (パンフレット:1500円)
 演出:宮田慶子

 紫式部(文子)/光源氏:大地真央
 清少納言:酒井美紀
 中宮彰子/夕顔:神田沙也加
 和泉式部:いしのようこ
 安倍晴明:姜暢雄
 侍女左近:植本潤
 藤原伊周:八十田勇一
 虫麻呂:石野敦士
 鳥彦:緒方雅史
 藤原惟規:水谷百輔
 藤原賢子:田島ゆみか
 大江匡衡:曽我廼家文童
 藤原道長:升毅
 藤原為時:上條恒彦

 今年は地方公演の多かった大地真央ですが、ようやく東京に登場。それも、新作コメディとあって、楽しみにしていました。1970〜80年代に麻実れいと人気を二分した大スターですが、その個性は対照的で、真央さんは太陽が照りつけるような華やかなオーラと切れの良い台詞術が魅力。お得意の駄洒落だけでなく、ちょっとした、どうってことない台詞を、幸せいっぱいの笑いでコーティングしてしまうコメディエンヌぶりはこれまた天下一品。中でも、上條恒彦とはすでに何度も親子関係の芝居をこなしているせいか、今回の芝居を飛び越えて「この父にして、この娘あり」と思わせる丁々発止ぶりがお見事。お互い、手加減なし、そして相手の出方にあわせて魅力を高めあう素晴らしいコンビぶりでした。
 今まで、大地真央作品というと、真央さんが中心で真央さんが全てといった状態でしたが、ここ最近はなぜか共演者を立てる方向に向かっている気がします。いくら立てたところで、座長の威信はビクともしないので、逆にそれが余裕に見えてくるので僕は良い傾向だと思っています。今回も、清少納言や和泉式部に打ち負かされそうになる位、対等にやりあったおかげで、女同士の結束の強さや、同士愛が際立ちましたし、神田沙也加を大切に扱うことによって、男役としてのスケールがより大きくなりましたし、お手軽コメディに見えながら、実は大地真央、あれこれ新しい試みに取り組んでました。そろそろ、楽してもトップというポジションでまかり通りますものねぇ。もちろん、二幕頭でのオドロオドロシイ扮装でのダンスシーンなどでは、相変わらず真央さんのショースターぶりが際立ってました。歌もダンスも上手くないのに、なぜか「アンタが主役」となってしまう位取りはなかなかなものです。神秘的な闇の中で、隠しても隠し切れないスター性が麻実れいならば、パワー全開で光を放つスター性が大地真央。正直言いまして、作品の出来はどうでも良いタイプの役者さんとも言えます。真央さんの芸に触れられればエニシング・ゴーズなわけですから。よって、関西芸人さんたちが全然受けずに客席がザッブーーーンと引こうが、暗転がやたらと多くて芝居の流れがぶった切られようが、あれこれ盛りだくさんで話の中心がぼやける台本だろうが、問題ナシ。大地真央が登場すれば全てOKな舞台です。あぁ、座長として君臨するってこういうことを言うのね、とその力量に脱帽。


2006年12月09日(土)18:30-21:20
TPT「黒蜥蜴」@ベニサンピット

 全席指定 8000円 24番 (パンフレット:1000円)
 演出:デヴィッド・ルヴォー、門井均

 緑川夫人 実は黒蜥蜴:麻実れい
 岩瀬早苗:宮光真理子
 雨宮潤一:山ア雄介
 岩瀬庄兵衛:清水紘治
 老家政婦 ひな:浅利香津代
 明智小五郎:千葉哲也
 明智の部下 境:岡本竜汰
       木津:倉本朋幸
       岐阜:田村元
 用心棒 原口:山本亨
      富山:由地慶伍
      大川:廣畑達也
 女中 夢子:佐藤華子
     愛子:坪井美奈子
     色江:植野葉子
 黒蜥蜴の部下 北村:熊本昭博
 侏儒:片岡正二郎
 岩瀬夫人の声:海老原礼子

 麻実れいにノックアウトされた公演でした。大劇場のために生まれてきたようなスケールの大きな女優さんなのですが、ベニサンピットという、僕が足を運ぶ中ではミニマムサイズの劇場でも、場違いになるどころか、ターコ・ワールドで空間を充満させ、観客の魂を吸い取ったのでした。ターコさんは雪組トップ時代こそ白いノーブルな役で観客を魅了させてくれましたが、黒光りするような妖しい役でこそその個性が最大限に生かされる気がします。妖しい役を美味しく演じるには美しくなければいけませんし、観客の心を鷲掴みにする技量が必要になるのですが、ターコさんはこの点に関してはお茶の子さいさい。舞台が明るくなって、ライトが当たった瞬間に、観客の目はターコさんに釘付けってもんです。ギリシャの彫像のようなお顔でフンワリ笑いかけられようなら、誰が彼女の誘惑に抵抗することが出来るもんですか!! その存在だけでも「座長っていうのはこんなオーラが必要なのよ」と語りかけてくるよう。このトップオーラには誰も太刀打ちできないというのに、台詞回しの自在なことといったら!! 彼女の強みは、自分の素質の素晴らしさをあまり自覚していない(ように見える)ことで、さらに深く深く芝居を追求する部分じゃないでしょうか。柔らかさと硬さ、高さと低さ、太さと細さ、などなど、台詞術のあの手この手を駆使して三島由紀夫独特の甘くて毒のある台詞をつむぎだすので、もうウットリ。華麗なる台詞の数々がこれほどまでに自然に似合ってしまうのですからさすがなものです。TPTのプロダクションなので、装置も衣装も決して豪華とは言いがたいにもかかわらず、ターコさんは、美しく華麗で力強い黒蜥蜴でした。トレンチコートとソフト帽をまとえば、共演のどの男優よりもダンディで(ポーズのつけ方一つでピシッと決まる格好良さ!)、売り子さんに変装すれば、なぜか笑いを取ってしまうし、設定上ではソファの中に明智がいるとはなっていますが、舞台上では単なる物体相手にあそこまで濃厚なラブシーンを繰り広げるし、どのシーンも目が離せません。実は今回は前から二列目というとんでもない席だったので、トランス状態のターコさんと何度も目があってしまい、僕は客席で悶絶寸前でした(ちなみにターコさんは近眼なので、目があっても僕が認識できてないはず・涙)。存在だけで大女優という意味では屈指の存在ですね。カーテンコールでの投げキッスのキザなこと、そして決まっていることといったら!! あぁ、ターコさんでノーマ・デズモンド(サンセット大通りです)が観たい!!!
 …ということで、TPTの面々も頑張っていましたが、主役との格の違いがありすぎて、気の毒な限り。作品への愛情は伝わってくるし、丁寧に芝居をしているのは伝わってくるのですが、天性の大女優の前ではその輝きも消されてしまいます。でも、きっと、ターコさんとの共演は彼らにとって大きな糧となることでしょう。だからといって、ターコさんを真似れば良いってもんじゃないのが、芝居稼業の難しいところですが。。。ところで、この作品、宝塚花組で来年上演ですよね。宝塚で黒蜥蜴…スミレコードは、そして作品が求めるスターオーラは大丈夫やろか!? 上演を決定した関係者の英断に絶句。今回は8000円という高額チケットでしたが、元を十分に取った気分です。あまりに素晴らしくて、この公演に触れられた幸せと同時に、今後の公演が楽しめるかどうかという不安にもかられています。はぁ、贅沢な悩みやわぁ。とにもかくにも、黒蜥蜴=ターコさんが僕の中でのベストキャストとなったのでした! 是非、再演してほしいプロダクションです。


2006年12月10日(日)14:00-17:10
新国オペラ「ロッシーニ:セビリアの理髪師」@新国立劇場オペラ劇場

 D席 2992円(ATRE会員割引) 4階-3列-24番 (パンフレット:800円)
 指揮:ミケーレ・カルッリ(ニール・カバレッティ)
 演出:ヨーゼフ・E.ケップリンガー
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 アルマヴィーヴァ伯爵:ローレンス・ブラウンリー(フェルディナンド・フォン・ボートマー)
 ロジーナ:ダニエラ・バルチェッローナ(リナート・シャハム)
 バルトロ:マウリツィオ・ムラーロ(柴山昌宣)
 フィガロ:ラッセル・ブラウン(ダニエル・ベルチャー)
 ドン・バジリオ:妻屋秀和(フェオドール・クズネツォフ)
 ベルタ:与田朝子(与田朝子)
 フィオレッロ:星野淳(星野淳)
 隊長:木幡雅志(木幡雅志)
 アンブロージオ:古川和彦(古川和彦)
 公証人:藤沢敬(藤沢敬)
 
( )は2005年10月公演のキャスト

 メインキャストは総入れ替えですが、脇は日本人キャストでかっちりまとまってます。回り舞台はクルクル動くし、そもそもセットが三階建てなので「どこを見れば良いの?」というプロダクションなのですが、はっきり言って、僕はまったくかってません。舞台機構に演出が負けてしまったとでもいいましょうか、群集処理の中でいかに主役を引き立てるかという部分、あまりに稚拙な演出と感じてしまうのです。色の洪水の舞台とやたらと動く舞台機構に目くらましを受けてしまいますが、ではメインの芝居が印象に残るかというと、途端に記憶があいまいになってしまいます。本来、この作品はロジーナとアルマヴィーヴァ伯爵の恋模様がメインストーリーなのに、二人のラブラブぶりを際立てるどころか、とってもよそよそしいカップル。実際、休憩時間に僕の近くの席の集団が「ロジーナはバルトロと結ばれるのよね?」と思わず椅子からずり落ちてしまうような発言がなされていましたが、今回のプロダクションはバルトロがやたらと目立っていて、それもむべなるかな。主役が映えないのであれば、その部分をどう料理するかが演出家の腕の見せ所だと思うんですけど。。。ま、これはロジーナ役のバルチェッローナにも問題があって、歌はすばらしいけれど、プリマとしての存在感がなさすぎ。大劇場公演なのですから、主役は主役らしくあってほしいものです。華がない分、続演組の安定した芝居に食われてしまってました。  結局、オーソドックス「でない」演出というものは、一度観る分には刺激的で面白いけれど、再演を繰り返すのであれば、オーソドックスなものの方が地力を発揮するのでしょうね。スペインの空気が漂っていて、素朴だけれど、登場人物に血が通っていた以前のプロダクションがなつかしい。。。


2006年12月15日(金)13:30-16:35
宝塚歌劇団雪組「堕天使の涙」「タランテラ!」@東京宝塚劇場

 A席 5500円 1階-23列-56番 (パンフレット:1000円)

 演出:植田景子(堕天使の涙)/荻田浩一(タランテラ!)

 ルシファー(神によって地獄に落とされた堕天使):朝海ひかる
 リリス(輝かしい地位から転落した盲目のバレリーナ):舞風りら
 ジャン=ポール・ドレ(新進気鋭の振付家):水夏希
 シスター・アグネス(教会のシスター長):高ひづる(専科)
 ロベール・ド・ルブラン公爵(ジャン=ポールの義理の父親、パリ劇場界の有力者):萬あきら(専科)
 ジュスティーヌ・ルブラン(ジャン=ポールの母親、元オペラ座の伝説のエトワール):五峰亜季(専科)
 アントン・ヴェルメ(興行主):飛鳥裕
 シスター・テレサ(教会のシスター):灯奈美
 アンリ(狡猾な台本作家):未来優希
 エドモン・ド・レニエ(スランプに苦しむ音楽家):壮一帆
 セバスチャン・ルグリ(敬虔なクリスチャンのピアニスト):音月桂
 マルセル・ドレフュス(エドモンの弟子):彩那音

 「堕天使の涙」ではいきなり真っ赤な鬘をつけての劇中劇でスタート。この鬘、とっても似合っているのですが、決して男役に見えないのがこの人ならでは。結局、女の子のまま男になりきれなかったのは、元の素材が素材だから仕方ないのかな。コッテリメイクを施した時のアン・ハサウェイにソックリなのにのけぞってしまいました。で、いきなり男役を、娘役を引き連れて踊り狂います。彼女のダンスはバレエをベースとしているので、とてもやわらかくてしなやか。同じダンサートップでも星組の湖月わたるとは正反対。おまけに役者としての個性も野郎を得意とした湖月わたるに対して、朝海ひかるは中性的。同じ時期にトップを務めた二人ですが、ローテーションの関係で連続して上演されるのですが、それぞれの個性が引き立ちあい、年間上演スケジュールとしても、良き並びだったなと感じ入ってます。組こそ違うけれど、湖月わたると朝海ひかるは名コンビだったと言っても良いのではないでしょうか。閑話休題。朝海ひかるは鬘をとっかえひっかえ登場するのですが、どれもこれもドンぴしゃり。ベスト鬘ニストの男役部門で第一位といっても過言ではありますまい。ファンタジー色の強い舞台装置だったので、ちょっと現実ばなれした彼女ではありますが、舞台にしっくりなじみ、どの場面も美しさが際立ちました。クライマックスの光のパ・ド・ドゥでの裸舞台の透明感から、幕切れの雪が降りしきるクリスマスならではの豪華な美しさまで、ひたすら目の保養の舞台でした。
 「タランテラ!」では「蜘蛛女のキス」のラストのようなセットだったので、思わず「真ん中に麻実(れい)が登場しそう」という錯覚に陥ってしまいますが、登場するのは「朝海(ひかる)」で、同音ですが別人www 朝海ひかるは全場面に登場してひたすら踊り狂います。トップなのでそりゃ歌だって歌いますが、基本的にダンス部門担当。今回のショーは「役者芸」を追求していて、ダンスの人はダンスばかり、歌の人は歌ばかりという配役。スター主義の宝塚としては珍しいことですが、その徹底振りがナカナカ気持ち良いものですね。プロローグからフィナーレまでノンストップで展開する演出が小気味良く、また選曲も耳障りは良いけれども、手垢のつきまくりの宝塚定番ナンバーのオンパレードではなく、なかなか洒落た新しい曲を集めたあたり、荻田浩一の鬼才ぶりが際立ちます。幻惑的な舞台づくりを得意とする荻田浩一なだけに、朝海ひかるのような存在そのものが幻惑的なスターを得たことは鬼に金棒。それにしても、ダンスが得意なトップさんは今までもいましたが、ここまで踊りっぱなしのトップさんも珍しいのではないでしょうか。袖にはけたかと思いきや、衣装を換えてすぐに登場。で、踊り狂っちゃうのですから。でも、実は朝海ひかるではこんなショーを観てみたかったので、本人はとってもしんどいでしょうが(劇団には彼女に特別手当を払ってもらいたい位!)「スゴイものを観てるぞ」という興奮を味わうことができました。
 個性を生かしきった芝居と、売りを前面に押し出したショー。作品としての色合いは観客一人一人に好みがあるでしょうが、その作り方はファンには嬉しいでしょうし、実際その成果が上がっていたということで、またもや星組が登場してしまいますが、湖月わたるのさよなら公演と並び、近年稀にみる充実したさよなら公演だったかと思います。星組も雪組も一度ずつしか観られませんでしたし、実は「この場面はどこの誰を見れば良いんじゃ〜っ」ということも多々あったのは事実ですが、トップさんを盛り立て、さらにそれによって勢いある公演に仕上がっていたのが嬉しい。朝海ひかるは決して僕の好みのタイプの男役ではありませんが、成仏できました! 素晴らしいさよなら公演でした。


2006年12月15日(金)18:30-21:20
新国立劇場バレエ団「シンデレラ」@新国立劇場オペラ劇場

 B席 4400円(ATRE会員割引) 3階-2列-34番 (パンフレット:800円)
 指揮:エマニュエル・プラッソン
 管弦楽:東京フィルハーモニニー交響楽団

 シンデレラ:アリーナ・コジョカル(英国ロイヤルバレエ)
 王子:フェデリコ・ボネッリ(英国ロイヤルバレエ)
 義理の姉たち:マシモ・アクリ、篠原聖一
 仙女:湯川麻美子
 父親:石井四郎
 春の精:西山裕子
 夏の精:西川貴子
 秋の精:高橋有里
 冬の精:寺島ひろみ
 道化:八幡顕光
 ナポレオン:吉本泰久
 ウェリントン:市川透
 王子の友人:陳秀介、富川祐樹、江本拓、中村誠

 「くるみ割り人形」と隔年交代で上演されている「シンデレラ」です。何と7回公演! そして本日の公演はフルハウス!! 素晴らしい人気です。「シンデレラ」を毎年上演してくれれば良いのに! いっそのこと「くるみ割り人形」と日替わりでも良いのですが。って、ダンサーが大変なことになっちゃいますね(汗)
 プロコの音楽はサウンドがモダンで美しいし、アシュトンの振り付けは遊び心に富んでいるし、衣装は美しく、装置はオペラ劇場ならではの奥行きを生かした豪華版。新国バレエのレパートリーの中でも指折りのオススメのプロダクションです。そして、出演者の豪華なことといったら! 仙女&四季の精にいたっては全員がプリマドンナ。女性ソリストに関して、新国の充実ぶりが伺えます。(男性のプリンシパルも出てきてほしい!)
 再三観ているプロダクションではありますが、ストーリーがわかりやすいだけに(おまけに芝居に関係のない踊りは極力カットされている!)、ダンサーによってちょっとした仕草に別の個性を見ることができるのがリピートの楽しみ。そして、どのダンサーによる公演でもきちんと幸福感に包まれるのが名作ならでは。そりゃ、シンデレラなので意地悪なお姉さんたちは登場するけれど、短に意地悪なだけではなく、コンプレックスや苛立ち、さらに強さ弱さなど、とっても細かく演出された役なので「嫌なやつ」というよりも「わかるわぁ」と共感してしまうことも多々。お姉さんたちに限らず、おのおのの一般的にイメージされるキャラクターの中にそれに相反するものを織り込み、ウィットや皮肉を利かせているあたり、さすがイギリスのバレエだな、と感心しきり。


2006年12月16日(土)11:10-12:00
クァトロ・ピアチェーリ「千住キャンパス・スタジオコンサート」@東京芸術大学千住キャンパス スタジオA

 全席自由 無料 (パンフレット:無料)

 クァトロ・ピアチェーリ
  ヴァイオリン:大谷康子
  ヴァイオリン:齋藤真知亜
  ヴィオラ:百武由紀
  チェロ:苅田雅治

 モーツァルト:セレナード(第13番)ト長調 K.525《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》第一楽章
 ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第8番 ハ単調 作品110
 マランド:エル・チョクロ
 ヤング:80日間世界一周
(アンコール)
 モンティ:チャルダッシュ

 芸大=上野公園というイメージがあるのですが、今回は北千住駅前の千住キャンパスです。このキャンパス、どこにあるのかわからなくて、芸大OBの皆さんに聞いてみても「そんなキャンパス知らない」というつれないお言葉ばかり。何でも、半年前にできたばかりの新しいキャンパス、そして足立区初の大学なんだそうです。実はこのキャンパス、元は小学校だったんです。校舎はそのまま改装して教室として利用、体育館はホールに改装、校庭の半分をつぶして新しい校舎を建築という、なかなか面白い試み。まだ館内には新しい建物ならではの匂いが漂ってました。して、本日は「ART PATH 千住'06」というイベントの一環としてのコンサート。夜の公演は学生によるコンサートだったのですが、スケジュールの関係で午前中のプロの弦楽四重奏コンサートをチョイス。会場のスタジオAは音楽ホールの舞台だけを切り取ってみましたといった作り。客席は100位でしょうか。音響反射板のようにも見える壁面が印象的。広さは上野の芸大の第一ホール位を一回り小さくした感じでしょうか。予約しておいたおかげで一番に入場できたので、最前列を確保。ほんの1メートル先に出演者という贅沢空間。弦楽器の演奏なので、実は近すぎると音が美しくないのですが、演奏者の息遣いや迫力を感じられるのでナカナカ面白い体験でした。
 アニバーサリー・イヤーということで、モーツァルトとショスタコが取り上げられたのですが、モーツァルトは第一楽章のみ。そして、驚くことに、ショスタコは全楽章を演奏。無料イベント用のプログラムとしては確かに重いです。でも、飽きなかったんです。ショスタコ=難しいというのは確かだと思うんです。楽譜通り音を出すだけだと物足りないので、演奏家の味付けが必要になってくるのですが、さすがベテラン揃いのクァルテットだけあって、演奏に余裕がありました。演奏者同士で、そして客席に向かって「どうよ!?」と挑みかかるようなエネルギーが好き! 最後の最後、消え入るように終わるのですが、演奏が終わってもしばらく客席がシーンとしていたのが印象的。といいますのも、今回は未就学児童(恐らく2歳位の子も!)も客席にいたのですが、モーツァルトもショスタコもじーっと聴き入ってるんです。それだけ演奏が本物だったってことがわかるでしょ!?
 ショスタコのあとはぐっとくだけて軽いナンバーが登場。チャルダッシュでは、大谷さんがヴァイオリンを弾きながらぐるりと会場を一周。子供を見かけるとしゃがみこんで目の前で演奏を見せたりと大活躍。こんなのも小さな会場だから可能なこと。決してお客に媚を売るわけではなく、プログラムも手抜き物ではないのですが、和やかで暖かくて、とても素敵なコンサートでした。
 あ、千住校舎には学食がないらしいです(ここ重要!) 仕方がないので終演後は銀座に移動しましたさwww


2006年12月21日(木)19:00-21:20
「ヤマハホールさよならコンサート 第1夜〜2009年リフレッシュ・オープンに向けて〜 第1夜」@ヤマハホール

 全席指定 4000円 1階-E列-6番 (パンフレット:無料)

 横山幸雄
   リスト:リゴレット・パラフレーズ
   ショパン:別れの曲 Op10-3
   ショパン:革命のエチュード Op10-12
 須川展也(ピアノ:林絵里)
   ドーシー:ウードルズ・オブ・ヌードルズ
   小六禮次郎:SAKURA〜NHK連続テレビ小説「さくら」テーマ曲〜
   ピアソラ:アディオス・ノニーノ(啼鵬 編)
 清水和音
   ショパン:夜想曲 第15番 Op.55-1
   ショパン:夜想曲 第16番 Oo.55-2
 天満敦子
   J.S.バッハ:パルティータ 第3番 BWV.1006より「ガボット」
   カザルス:カタロニア民謡「鳥の歌」
   ポルムベスク「望郷のバラード」
(休憩)
 古川展生(ピアノ:林絵里)
   カッチーニ:アヴェ・マリア
   ポッパー:ハンガリー狂詩曲
   ピアソラ:リベルタンゴ
 腰越満美(ピアノ:林絵里)
   ドニゼッティ:一粒の涙
   プッチーニ:オペラ「蝶々夫人」より“ある晴れた日に”
 神野明
   ショパン:バラード 第1番 ト短調 Op.23
   リスト:ラ・カンパネラ

 ヤマハホール53年の歴史も今年いっぱい。といっても、2009年春には新ホールに生まれ変わるということで、悲壮感はありません。東京宝塚劇場立替の時のように「古くて使いにくかったもんねぇ」とややお祝い気分。といっても、音楽ホールが沢山ある東京のこと(ヤマハホールの近所にも浜離宮朝日ホールや王子ホールといったコンサートホールが!)、試写会・発表会・コンクールがメインのホールだったというイメージがあります。事実、今日参加の演奏家たちもさほど利用は……していなかったような(汗) とはいえ、音楽コンクールでは利用したことのある方ばかり。そして、観客にとっては「銀座のヤマハホール」ですから、確固たるブランドイメージはあります。
 ということで、二夜にわたってのさよならコンサート。僕は第1夜をチョイス。幸雄ちゃんものぼぉちゃんも出演ですから。一人約15分という時間の中で、それぞれ個性が出ているのと、いろいろな演奏が楽しめるのがツボ。面白かった〜。
 幸雄ちゃんは登場した瞬間に「老けた!」と。(らっしいも同じ感想だったらしい。。。)そりゃ、最近は音大の教授も勤めているのですから貫禄はあって当然なのかもしれませんが、何といいますか、肉質が中年です。飲みすぎ? シングルに戻って生活が変わった?? ヌーボーと出てくるのは今まで通りですが、ちょっと怖さが加わったかも。それにしても、座ると同時に弾きだす彼の音の美しさといったら! 難曲をいとも簡単にサラリと弾きのけてしまう鮮やかさに圧倒されました!!
 淡々とした幸雄ちゃんの次の須川展也の登場によって一気に祝祭色UP。二種類のサックスを吹き分けて、会場が急に極彩色になったかのよう。選曲も華やか。
 バランスって面白いことに、清水和音は地味なノクターンで登場。実は彼を生で見るのは久しぶりなのですが「誰!?」と最初はわからなかったんです。風貌かわりすぎ。。。ロン・ティボーの優勝者なので巧いのは当たり前なのですが、なんだか「大人のための発表会」に登場したおじさんみたいな弾き方。椅子にきちんと座り、腕の位置も模範的。なまじ体が大きい(特に横方向)ので、その端正ぶりが微笑ましいです。何だか兄を見ているような。。。
 前半のトリは天満敦子。ジーンズにシンプルなワンピースの重ね着。僕は「幼稚園の先生みたい」と、らっしいは「近所のコロッケ屋のおばちゃん」という第一印象。こんな演奏家もいるんだ、とカルチャーショック。ヤマハホールは響きがデッドなので、弦楽器の演奏は映えないなぁ。
 休憩後はヤマハホールの歴史についての短編映像が流された後、神野明、天満敦子、清水和音が登場してヤマハホールについてのトークでスタート。前述のように昨今のメジャーなコンサート会場ではないので、思い入れというよりも淡々としたトーク。登場人物のキャラクターでお客を喜ばした感じ。和音さん、まじめに話しているのに、内容は面白かった〜。一度一緒に飲んでみたいタイプです♪
 さて、後半の演奏はのぼぉちゃんでスタート。真央カラーもとい、マオカラーの黒シャツでした。いくぶんスッキリしたようで、パンツの中にシャツのすそ入れてました。林絵里とのピアノは初合わせかな? お互いの様子をさぐりながらの演奏。今年ののぼぉちゃんの聞き納めです。以前は毎週のように通った時期もありましたが、今年は毎月ならぬ、季節ごと位にしか聴いてないかも。来年は……すでに反省会状態(汗) でも、大好き。
 腰越満美は登場した瞬間からゴージャス。でも、前髪が長くてアフガンハウンドを彷彿とさせられます。改めて思うのですが、人間の声ってどの楽器よりも音量も色もあって、すごいですね。そして、散々待ち時間があった中、登場していきなり二曲のみ歌って去っていくなんて、過酷な条件にもかかわらず、一瞬にして自分色に会場を染めてしまうのは……どうすりゃできるのぉ?
 大トリの神野明はかなり緊張していた様子。年代的にコッテリ型の演奏。幸雄ちゃんとは対照的。個人的にはお祭り的コンサートなので、難曲に挑んで自爆するよりも、華やかな曲で楽しく終わった方が後味がよろしいな、と。。。
 ということで、恐らく両手の指で足りる程度しかこのホールでのコンサートにはご縁がありませんが、僕と旧ヤマハホールのお付き合いもこれにて終了。新しいホールはもっとご縁ができることでしょう。沢山の出会いがありますように!!


2006年12月22日(金)18:30-21:25
新国立劇場バレエ団「シンデレラ」@新国立劇場オペラ劇場

 Z席 1500円 4階-4列-54番 (パンフレット:800円)
 指揮:エマニュエル・プラッソン
 管弦楽:東京フィルハーモニニー交響楽団

 シンデレラ:酒井はな
 王子:山本隆之
 義理の姉たち:保坂アントン慶、奥田慎也
 仙女:川村真樹
 父親:ゲンナーディ・イリイン
 春の精:寺島まゆみ
 夏の精:真忠久美子
 秋の精:遠藤睦子
 冬の精:厚木三杏
 道化:八幡顕光
 ナポレオン:伊藤隆仁
 ウェリントン:貝川鐵夫
 王子の友人:陳秀介、富川祐樹、江本拓、マイレン・トレウバエフ

 昨夜のさよならコンサートが今年最後のエンタメになる予定だったのですが、案の定追加してしました。
先週の「シンデレラ」とほぼ全キャスト入れ替えのため、新国バレエ団の主なソリスト総チェックっといった趣。初日から一週間もたつと、カンパニーもだいぶ作品に馴染んで、良い熟成具合。芝居の一つ一つが丁寧だし、踊りの揃い方もレベルアップ。「役者は場数」と言いますが「ダンサーも場数」ですね。
 さて、本日の僕のお目当ては、と言うまでもなく、おはなちゃんなのですが、動きの美しさ、ステップの決めの鮮やかさは他の追随を許しません。実は今回は脇役にいたるまで、プリンシパル級のソリストがズラリと揃った公演なのですが、その中でも別格といった貫禄があります。おはなちゃんが登場するだけで舞台が一段と華やかになります。強烈なオーラを持った方です(ホレボレ)。「シンデレラ」は他のバレエ作品に比べ、主役の踊りに勢いがなく、まるでストレッチのように静かにゆっくりと動くものが多いのです。並のダンサーだと、その間が持たずに観ているこちらが息苦しくなってしまうのですが、おはなちゃんの場合は、まるでビデオのスピード調節を行った時のように、力強いまま、緊張感を保って、時間タップリに動くのです。そろそろ彼女も力技だけではなく、円熟の味で魅せるダンサーに変貌し始めたという印象を受けました(もちろん、まだまだバリバリ踊ってもらいたいですけど!) みすぼらしい格好をしつつも心優しいということを表現するちょっとした仕草や表情、ことに目の使い方が効果的でしたし、舞踏会でのゴージャスさは相変わらず圧巻。牧阿佐美バレヱ団で新人時代を過ごし、新国バレエ団でプリマとして花開いたおはなちゃん。宝塚でいうとトップ・オブ・トップスとでも言いましょうか。バレエ団からも観客からも大切に扱われているのが伝わってきて、とても嬉しくなります。願わくば、第二の酒井はながそろそろ登場しますように!!
 王子役の山本隆之は、ここ最近プリモの座を独り占め状態。最近、ようやく新公主役が出てきたという感じ。年齢的にもそろそろ主役は辛くなってくる頃かと思いますが、その安定感はさすがのキャリア。いかなる時でもプリマをしっかり守ってくれるであろう、という安心感があります。ちょっと、僕好みのダンサーではないけれど、その存在はありがたいものです。
 今日の注目は、今シーズンからソリストになったばかりの八幡顕光。一週間前とは別人のように伸びやかな道化っぷりでした。素顔だと表情があまりないように感じていたのは、僕が初日ばかり観ていたせいかも!? 動きの軽さ・キレ・いたずらっ子のような表情で、オペラグラスで彼を追いながら、思わずニッコリ。そして、お姉さまがたはすっかり役が手の内にあって、心置きなく笑わせていただきました。ん〜〜〜「シンデレラ」のように芝居色が強い作品は、ゲストダンサーを迎えずに、座組みメンバーだけで公演した方がまとまりが良くなるのかもしれませんね。


2006年12月26日(火)14:00-15:50
映画「シャーロットのおくりもの」@TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン3

 前売一般 1300円 E列-2番 (パンフレット:500円)

 監督:ゲイリー・ウィニック

 クモのシャーロット:ジュリア・ロバーツ(声の出演)
 ファーン・エラブル:ダコタ・ファニング
 ネズミのテンプルトン:スティーブ・ブシェミ(声の出演)
 羊のサミュエル:ジョン・クリース(声の出演)
 ガチョウのグッシー:オプラ・ウィンフリー(声の出演)
 ガチョウのゴリー:セドリック・ジ・エンタテイナー(声の出演)
 牛のビッツィー:キャシー・ベイツ(声の出演)
 牛のベッツィー:レバ・マッケンタイア(声の出演)
 馬のアイク:ロバート・レッドフォード(声の出演)
 カラスのブルックス:トーマス・ヘイデン・チャーチ(声の出演)
 カラスのエルウィン:アンドレ・ベンジャミン(声の出演)
 子ブタのウィルバー:ドミニク・スコット・ケイ(声の出演)

 本編は96分という、最近の映画の中では短めのもの。とはいえ、原作が短い絵本なので、丁寧に丁寧に描写されています。あまりに丁寧すぎて、途中で意識が遠くなりそう(汗) でもって、すっかり汚れた大人の僕にとっては、刺激のないストーリーではありました。牧場のおじさんが、ブタには乳房が10個しかないので、11匹目の子ブタを殺そうとしたところ、その(ファーン)娘が「私が育てる!」と宣言。同じブタ映画でも「ベイブ」は生死をかけた子ブタの活躍ぶりが見ものでしたが、こちらに関しては勝手に「ハムにされる〜」と動物たちが舞い上がっているだけなので、いたって平和。それでいて、ブタを可愛がりつつも、ファーンたちはベーコンやソーセージ(多分ポーク)を美味しそうに食べ、その残飯が子ブタのウィルバーの餌になるあたり、ほのぼのを装いながら、かなりシュールかも(って、何て素直じゃないんでしょ>自分)
 とりあえず、子ブタのウィルバーは可愛いです。鼻をブヒブヒ言わせながら、愛らしい瞳でジーっと見つめるもんだから、もうタジタジ。この可愛らしさを眺めるだけで僕は満足です。そして、多分、それ以上でもそれ以下でもない映画かと思われます。ちょっとハリウッド的に演出しすぎて、絵本ならではの素朴な味が失われている気がするんです。「ベイブ」は素朴な良さがあったよなぁ、と。タイトルロールのはずのシャーロットもクモというキャラクターゆえ、実写映画だと主役としてはかなり損していました。ま、動物好き、子ブタ好きにはかなり満足できる映画かと思います。あ、もしかしたら、犬が出てこないから満足度が低い!?!?


2006年12月30日(土)17:35-19:25
映画「ヘンダーソン夫人の贈り物」@ル・シネマ2

 当日一般 1800円 K列-7番 (パンフレット:700円)

 監督:スティーブン・フリアーズ

 ローラ・ヘンダーソン:ジュディ・デンチ
 ヴィヴィアン・ヴァンダム:ボブ・ホプキンス
 バーティー:ウィル・ヤング
 クローマー卿:クリストファー・ゲスト
 モーリーン:ケリー・ライリー
 レディ・コンウェイ:セルマ・バ0ロウ
 ジェーン(歌手):カミーユ・オサリヴァン
 マギー(助手):ドラリー・ローゼン