観劇日記〜2007年01月〜
04日(木) 17:00 「ウィーン・ミュージカル エリザベート 来日記念コンサート」初日 新宿コマ劇場
05日(金) 15:00 宝塚歌劇団星組「ヘイズコード」 日本青年館
06日(土) 13:00 ホリプロ「スウィーニー・トッド」 日生劇場
07日(日) 11:00 宝塚歌劇団宙組「維新回天・竜馬伝」「ザ・クラシック」 東京宝塚劇場
12日(金) 13:00 ベルガモ・ドニゼッティ劇場「ドニゼッティ:ランメルモールのルチア」追加公演 東京文化会館
13日(土) 17:30 劇団四季「Contact」 四季劇場[秋]
21日(日) 14:30 NTTフィルハーモニー管弦楽団「第20回定期演奏会」 サントリーホール
26日(金) 14:30 映画「マリー・アントワネット〜MARIE ANTOINETTE〜」 TOHOシネマズ 市川コルトンプラザ
スクリーン1
27日(土) 15:00 宝塚歌劇団宙組「維新回天・竜馬伝」「ザ・クラシック」 東京宝塚劇場
27日(土) 15:00 藤原歌劇団「プッチーニ:ラ・ボエーム」 オーチャードホール


2007年01月04日(木)17:00-19:10
「ウィーン・ミュージカル エリザベート 来日記念コンサート」初日@新宿コマ劇場

 招待席(S席 9000円) 16列-30番 (パンフレット:1500円)
 演出:小池修一郎

 第一部 トークと映像
   出演:マヤ・ハクフォート/マテ・カマラス/ルカス・ペルマン//シルヴェスター・リーヴァイ
   特別ゲスト:稔幸/彩輝なお/美々杏里
   司会:小藤田千栄子
 第二部 ガラコンサート
   プロローグ(トート:マテ、コーラス)
   愛と死のロンド(トート:マテ)
   嵐も怖くない(エリザベート:マヤ、フランツ:ルカス)
   最後のダンス(トート:マテ)
   私だけに(エリザベート:マヤ)
   闇が広がる(トート:マテ)
   私だけに(エリザベート:マヤ、トート:マテ、フランツ:稔)
   キッチュ(インストゥルメンタル)
   私が踊るとき(エリザベート:マヤ、トート:マテ)
   闇が広がる(トート:マテ、ルドルフ:ルカス、コーラス)
   僕はママの鏡だから(エリザベート:マヤ、ルドルフ:ルカス)
   夜のボート(エリザベート:マヤ、フランツ:稔)
   エピローグ(エリザベート:マヤ、トート:マテ、コーラス)
   カーテンコール

 来日記念コンサートですが、前半はトーク、後半はコンサートという作り。視界は小藤田千栄子。ミュージカルを語らせたらこの人!ではありますが、さすがに年齢が年齢なので「大丈夫やろか?」と手に汗握りながら応援。動員などの都合があったのでしょうが、宝塚OGだけというのは勿体無かったなぁ。宝塚ファンならばともかく、そうでない方には中途半端な(というよりも、五組・五演にわたる話なので、生徒に詳しくないと話しについていけない!)結果になってしまってました。後半にはウィーン組が加わりますが、通訳が入るのと、段取りが上手く取れてないのか盛り上がり切れないのが残念。司会者かゲストに盛り上げ屋さんって必要かも。でも、宝塚OGってみなさん姿勢が良いですね。ビシっとしていて気持ち良いです。いっそのこと東宝キャストも登場・共演しちゃえば良かったのにね。
 後半のコンサートは初日ということもあってか、コマ劇場の音響が悪いのか、オケの音がこもりがちなのと、コーラス(大阪音大のオペラハウス合唱団)が聞こえなかったのですが、この部分に関しては今後改善することでしょう。特に5月公演では是非とも! でも、コンサート自体は楽しかったですよぉ。マテ・マヤコンビは遠近法を無視しているし(はて、そんなチェリストがいたような…)、ハンガリー語の「愛と死のロンド」や日本語の「闇が広がる」が登場したり、ノルさんがいきなりドイツ語で歌いだしたり、トートがエリザをお姫様抱っこしたり、なかなか注目ポイント多いです。個人的にはマヤさんの歌声とマテさんのエロエロぶり、ルカスさんのルドルフ&フランツの一人親子ぶり、ノルさんの相変わらずのオスカルぶり(ものすごいピンヒール&ヒラヒラ衣装)を堪能してきました。さすがに記念コンサートで9000円は高いのか、客席は半分の入りといったところ。お時間のある方は是非是非ご覧くださいませね。本公演だと上記は観られないですよぉ。

2007年01月05日(金)15:00-17:25
宝塚歌劇団星組「ヘイズ・コード」@日本青年館

 A席 7000円 1階-P列-5番 (パンフレット:600円)
 演出:大野拓史

 レイモンド・ウッドロウ:安蘭けい
 リビィ(オリヴィア)・フォンテイン:遠野あすか
 ウォルター・ブロイディ:一樹千尋(専科)
 サミュエル・マカドゥ:磯野千尋(専科)
 オリガ・ウスペンスカヤ:万里柚美
 コリン・ホワイト:にしき愛
 ガイ・ロビンソン:紫蘭ますみ
 ラルフ・カールトン:立樹遥
 ヘンリー・リッチ:涼紫央
 ミルドレット・マカドゥ:琴まりえ
 ラレイン・ウッドロウ・リッチ:南海まり
 ヴィル・ガーフィールド:麻尋しゅん

 久しぶりにスムーズなトップ引継ぎ公演となりました。雪組→星組への組替はあったものの、ここ数年はずっと星組っ子で、前任トップの元三年間に渡り二番手を務め、何よりも若手の頃からトップ候補として育てられた安蘭けい。文句なしのトップ就任です。円満な引継ぎならではの安心感・安定感があります。おまけに相手役も既に「コパカバーナ」で素敵なカップルぶりを見せている&これまたトップになって当然!と言われ続けた遠野あすかですから、ある意味、お披露目公演ならではの初々しさはなく、すっかり安定期のトップさんの公演。いきなり自分の個性を前面に出し、湖月わたる時代の「昼間の体育会」から「夜のクラブ」へと雰囲気も一新。いずれにせよ、濃〜〜〜い星組というカラーを守ってくれたところに、ファンの安心感があるのかもしれません。宝塚5組の中、唯一組カラーを保っている、最後の砦ですわ。
 今回は当て書きが見事にはまっていて、出演者全員に見せ場があり、下級生が張り切っているのが気持ち良い限り。これは、下級生の頑張りが嬉しいのが半分、下級生を「育てるね!」というトップの余裕への敬意が半分。トップお披露目にして、こんなに余裕のある人も珍しいのではないでしょうか? それでいて、登場すればグワッと場面をさらってしまうのですから、これぞトップさんです。(学年がいってからのトップという共通項はあったけれど、紫苑ゆうのトップお披露目公演を思い出しました)。組子を「泳がせる余裕」を持ったトップさんっていそうでいないんですよね。自分が泳ぐだけのトップさんや、自分以外は泳がせないトップさんはいましたけど。。。願わくば、今回の公演の貫禄・トップオーラを本公演でも発揮していただきたいものです。あるでしょ、小劇場ならば良いけれど、大劇場だと劇場空間を埋められないことって。って、あまり心配してませんけど(コスプレに関してはしばらく封印とあきらめ入ってます。タッパばかりは努力できないし)。でも、今回の公演で、より男っぷりを上げたのではないでしょうか。「王家に捧ぐ歌」以降、女声化していた歌声も、男役声に戻っていたし、これからがますます楽しみです。
 そして、トップ娘役の遠野あすかは星組に来て良かった! 元々女王様系トップを擁してきた組なので、華やかであれば華やかであるほど舞台が輝くってもんです。男役は全員格好良くなくてはならない、娘役は全員美しくなくてはならない、というこれまた紫苑ゆうの言葉を思い出してたりして。ここで言う格好良いとか美しいというのは、生まれながらのものではなく、舞台での輝きのことを差すと思うのですが、思う存分真ん中で輝いてほしいもんです。実は宙組〜花組時代の彼女は苦手だったんです。はっきり言って芝居は下手だったし、前に出たいという意欲と彼女の実力がまだリンクしていなかったし。そのうち、トップさんたちよりも目立つようになって「大丈夫か?」と心配していたら、専科へ異動→星組でトップ就任。この過程で彼女自身、勉強することも多かったのでしょうね。見事な化けっぷりです。技術点云々よりも、娘役スターとしてのあり方に対して。よって、トップさんと一緒の場面では相手に合わせようと芝居のクオリティがあがりましたし、ショー場面では「遠慮なくやらせていただきますっ!」という勢いが頼もしいし。まさか、今になって僕が遠野あすかを褒める時が来ようとは。数年前(というか、つい最近まで)の観劇日記を読み返すとケチョンケチョンにけなしているもの。敵ながらアッパレです(敵だったのか!?)
 作品としては古風な作りで、80年代以前の宝塚歌劇を見ている感じ。たあいもない話をスターの魅力で魅せるタイプ。「昔はどんな作品でも役者の個性でみせたもんだ」と言う声もありますが、やはり、作品に見合ったスタイルというものがありますから。今回の座組みだとトップさんを筆頭に、ひと昔前のタイプのスターなので、ドンぴしゃりでした。お稽古、細かなところまで大変だったのではないでしょうか。というのも、生徒にまかせっきりではなく、ちゃんと演出家の息がかかっているのを感じたからなんです。宝塚は地方の劇団ということもあって、生徒に勝手に遊ばせるとなぜか吉本調になってしまう事が多いんです。これやられちゃうと、せっかくの外国の話も大阪のおばちゃんたちの話に見えちゃって興ざめ。元々の文化の違いなので、生理的なものと思っていただきたいのですが、吉本調はホント、ダメなんです。お好きな方には申し訳ないけれど。「清く・正しく・美しく」を掲げるのであれば、笑いもウィットに富んだものが望ましいかと。もちろん、関西公演もあるので、スッキリしすぎては困るでしょうが、今回はそのさじ加減が絶品でした。下品になる寸前のセンスの良い演出に好感。色物役者も勢いだけではなく、ちゃんと芸で笑わせようとしていたのが嬉しい。ということで、お正月にぴったりな公演を満喫しました〜! 華やかでした。


#2007年01月06日(土)13:00-16:05
ホリプロ「スウィーニー・トッド」@日生劇場

 A席 8000円 2階-F列-40番 (パンフレット:1500円)
 演出:宮本亜門

 スウィーニー・トッド:市村正親(市川染五郎/現・松本幸四郎)
 ミセス・ラヴェット:大竹しのぶ(鳳蘭)
 乞食女:キムラ緑子(市原悦子)
 ジョアンナ:ソニン(沢田亜矢子)
 アンソニー:城田優(立川三貴)
 タービン:立川三貴(中丸忠雄)
 ビードル:斉藤暁
 トバイアス:武田真治
……( )内は1981年7月の東宝版・日本初演キャスト

 搬入時にはゴミ箱をひっくり返したようだった舞台も、本番を迎えるにあたってお行儀良くセットが収まってました。自分で触ったセットともなると愛着もひとしお。また、搬入のお手伝いしてこようかな。 はい、今回はミュージカルには珍しい題材の登場です。いかにもイギリスっぽい作品で「ひげを剃る際に客の首を切って殺す男と、その死体の肉を使って人肉パイを作って大もうけする女の物語」です。男の狂気ぶりと、女の浮世離れしたバイタリティ、そしてそんな男女の心の動きが見もの。
 東宝は帝国劇場で1981年鈴木忠志演出版以来、25年ぶりの再演。まったく記憶にないのですが、恐らく歌詞などは一新されていると思われます。サブタイトルも「フリート街の奇妙な床屋」から「フリート街の悪魔の理髪師」に変更されてます。今回はホリプロによる日生劇場公演。日生劇場は柿落としがベルリン・ドイツ・オペラだっただけに(?)音響が良いのが嬉しいところで、幕開きのコーラスも、パンフレットを見るとミュージカルお馴染みメンバーですが、その響きは他劇場での公演とは段違いの迫力。ホリプロ公演=期待しない、という偏見があるのですが「ジキル&ハイド」にしろ「スウィーニー・トッド」にしろ、コーラスの響きは素晴らしいです。そういえば、どちらも、舞台を取り囲むような巨大な壁を設置した美術。もしかしたら、これらが音響反射板の役をしていたのかもしれませんね。まだ初日後間もなくということもあって、音響は試行錯誤中という部分もありましたが、きっと千秋楽の頃にはより素晴らしい場面になっていることでしょう。亜門演出も舞台装置を縦横無尽に動かして、テンポとリズム感があって楽しいものでした。ミュージカルは音楽劇なので、セットの動きもリズム感があると、客席から眺めていて気持ちが良いもんです。ただし、あまりに装置が自在に動き回ることによって、奥行きやタッパ、そでのなさといった日生劇場の短所をしっかり客席に見せ付けてしまったのは、僕みたいに舞台そのものにも興味がある者には嬉しいけれど、一般的にはどうなんでしょう? 中劇場だから仕方ないといえば仕方ないのですが、無限の空間ではなく、せせこましい現実を見せられたのは残念。
 26年近く前ということもあって、前回公演は僕の記憶から抹消されていて、おまけにパンフも行方不明なのですが、トバイアスは火野正平!? いかにも東宝らしい豪華なキャストでした。そんな中、今回タイトルロールで登場するのが市村正親。コンプレックスを秘めた役は18番とあって余裕しゃくしゃく。時折ちょっとしたスパイスを効かせながらもゾクゾクする凄みで迫ってきます。 登場人物は全員白塗りでアイシャドーもまるで死人であるかのような不気味なメイクで登場するのですが、その中でも市村正親の浮世離れした浮遊感が圧巻でした。現実感がないだけに余計恐ろしい狂人ぶり。歌声も太い声を良くキープしていて、コーラスにも迫力負けしていません。ここ最近の市村歌唱の中では屈指のものだと思います。そして、音程に気をとられず、ちゃんと役者歌として、感情と歌詞を伝えるので、難しいはずの歌が簡単そうに聞こえましたョ。ぶらぁぼ。
 話題の大竹しのぶは歌っている本人が音程がわからなくなってくるのが、客席にもはっきり伝わってきました。さすがに緊張感タップリ、手に汗びっしょり。何かにつけて鳳蘭が「スウィーニィ・トッドの歌に比べれば、どの作品の歌も簡単よ!」と言ってるのですが、大竹しのぶも公演後は同じことを言い始めそう。ソンドハイム物だというのを差し引けば「大竹しのぶ音痴」と言われても仕方がない状態です。久しぶりのミュージカル出演にしてソンドハイム作品だとは大した肝っ玉です。でも、大物女優と言われるだけあって、歌詞を伝える力になると、カンパニーの中でも屈指。「人気があるのには理由があるのね」とい納得。ただし、舞台役者としてのスケールの小ささと、陽のキャラクターになりきれない地味さゆえ、人肉パイ屋のおかみさんを演じるには救いのなさが厳しかったです。ウィットに富んでいるはずの台詞も、大竹しのぶが発すると痛々しく響いちゃうんですもの。大竹しのぶを観ているのに、観てもいないツレちゃんプリィズ状態(それだけ26年前のツレちゃんは強烈だった!)。でも、市村-大竹コンビは芝居に緊迫感があって素晴らしかった〜。
 大竹しのぶに限らず、ミュージカルへはあまり出演していないキャストが多いのと、ホリプロ主催ということで、失礼ながら大して期待をしていなかったのですが(市村正親も歌が得意というタイプじゃないし・汗)、嬉しいことにきっちり歌える人が割と揃っていて、中でも、ソニンと武田真治はかなり自分の持ち歌として歌いこなしていたと思います。オケに乗って自在にこなしてました。その他もメンバーもクセがあったり、好き嫌いはあったりするものの、壊滅的に歌えない人はほとんどおらず、それでいて緊張感にあふれていて、夜勤明けの観劇にもかかわらず、客席のこちらも集中力を持って最後まで引っ張られてしまいました。そんな中、ぶちこわしはキムラ緑子。本人は自分に酔いしれて歌っているけれど、気持ち良いのは本人だけで、客席では何を歌っているのか歌詞もメロディも判読不能。テクニックのある人が「崩し」を行うのは粋だけど、テクニックのない人が「崩し」を行うと下品なだけです。歌えないならば、森繁久弥やレックス・ハリスンのように語っちゃえば良いのに。思わずブーイングしたくなる状態でした。
 きっと公演を重ねていけばもっともっと良いプロダクションになるでしょうし、2階-F列という東宝だったらB席4000円の設定だろうなという席にもかかわらず8000円を取られても「料金分の元は取ったな」という満足感を得られましたが、だからといって、お正月公演にふさわしい題材とも思えず、また、何度も観たくなる作品でもないので、もしかしたら、今回が最後の「スウィーニー・トッド」になるかも。次に再演されるのはいつになるのでしょうね。


2007年01月07日(日)11:00-14:15
宝塚歌劇団宙組「維新回天・竜馬伝」「ザ・クラシック」JCB貸切公演@東京宝塚劇場

 S席 8000円 2階-6列-24番 (パンフレット:1000円)

 演出:植田景子(維新回天・竜馬伝)/荻田浩一(ザ・クラシック)

 坂本竜馬(維新の風雲児と呼ばれた土佐脱藩浪人。海援隊隊長):貴城けい
 お竜(伏見の船宿・寺田屋の養女。後に竜馬の妻となる):紫城るい
 中岡慎太郎(土佐脱藩浪人。陸援隊隊長):大和悠河
 勝海舟(幕府軍艦奉行):立ともみ(専科)
 お登勢(寺田屋の女将):邦なつき(専科)
 中浜万次郎(幕府通訳官):美郷真也
 西郷隆盛(薩摩藩の重臣):寿つかさ
 徳川慶喜(徳川幕府十五代将軍):蘭寿とむ
 武市半平太(土佐勤皇党首領):悠未ひろ
 鬘小五郎(長州藩士。後の木戸孝允):北翔海莉
 お蝶(薩摩の密偵。西郷の愛人):美羽あさひ
 千葉佐那子(千葉道場の道場主・千葉重太郎の妹):和音美桜

 ここ半年、宝塚はサヨナラ公演だらけです。が、先月までは本人もファンも「やるだけのことはやった」「成仏です」といったものばかりで、実に充実したものばかりでしたが、今回はトップお披露目にしてサヨナラ公演。何年もトップを務めた人と若葉マークトップとでは公演の充実度に関しては比べるべくもありません。が、貴城けいはトップお披露目としての硬さがないのはアッパレ。なかなかそんな人もおりますまい。その分、トップとしての輝きも足りなく「一作退団も仕方ないのかな」とも思ったりして。。。 技術点はどの分野も平均点をクリアしていると思うのですが、いかんせん存在感の薄さには呆然。トップさんらしく一番華やかな衣装を着て、一番明るいライトをあてられているにもかかわらず、印象に残るのは一緒の場面に出演している他の生徒ばかり。「竜馬」ではニンの合わない役に苦しみ、「ショパン」ではニンには合いすぎていてインパクトがなかった。これが通常のお披露目公演ならば「次があるさ」だとか「こういう役もやらないとね」となるのですが。。。本人もファンもこの公演に関しては不完全燃焼だったのではないかなぁ。
 花組のバウホール公演で真矢みきが大当たりを取り、退団直前にドラマシティで再演した「竜馬」ですが、今回は小屋は大きくなり、上演時間は短くなっての公演。ダイジェスト版になってしまうのはいたし方ありません。それだけに、型破りで奔放な竜馬のキャラクターを表現するには、ダイナミックな演技とアピールが必要かと思うんです。が、元々線が細く、なまじ技術があるだけに勢いで押す芝居は得意としない貴城けいなだけに「なんか違う」という違和感のみ残してしまいました。真矢みきの竜馬が良いとか見本というのではなく、貴城けいが演じるならば、彼女ならではの竜馬像で観客を納得させてこそトップスターってもんです。何だか新人公演を観ているような、そんな印象を受けてしまいました。また、ショーでは、これといった売りがない分、どのシーンも金太郎飴状態。歌い上げるでなく、踊り倒すでなく、ちんまり歌って器用に踊っておしまい。コレってシーンがないショーも珍しい。。。また、芝居と違って、個人のアピールが重要となるショーでは、現在の貴城けいだと手も足も出ない状態。難しいもんですね。。。
 それにしても「歌の宙組」と言われ「宝塚歌劇団宙組合唱団」とまで揶揄されていた組が、たった数ヶ月のうちにまったく違う印象になったのは面白い限り。男役の主要キャストのほとんどが組替メンバー。そして下級生にいたるまで「ソロ」ばかりでコーラスがほとんどなかったのは実に新鮮。ま、芝居は花組作品のリメイクゆえ、これといったコーラスは登場しませんし、ショーにいたっては主要男役が北翔海莉以外は歌えないから致し方ないんですけどね。今までがトップコンビ(和央ようか+花總まり)とその他大勢だったので、いきなりソロを与えられたその他大勢が戸惑うのも無理ないかもしれません。よって、個性以前に「アピールに戸惑ってます」の集団と化してました。そんな中、輝いていたのは組替メンバーの蘭寿とむと北翔海莉の二人。蘭寿とむは華やかさとアピールの強さでショーを引き締め(実質二番手でしたし、アピール度はトップさん以上でした)、北翔海莉は確かな芸と歌唱力で、芝居もショーも上級生の悠未ひろを差し置いての大活躍。彼女たちの参入が、宙組男役に良い起爆剤になりますように!
 娘役では紫城るいがアッパレ。元々男役なので地声での歌もきちんと歌詞が客席に伝わってきますし、キビキビとした動きとキッパリとした台詞回しも心地良かった〜。ちと姉さん女房風ですが、彼女だったらまだまだ活躍が期待できたでしょうに、一作退団がもったいない! その他の若手娘役たちも、今までになく伸びやかに舞台を務めていました。これらの変化は宙組が新しい時代に突入したのと同時に、組カラーの消失にもつながり「何だか普通の組になっちゃったね」とがっかり気分も。これって、演出家も新しいメンバーをどう使うと良いのか試行錯誤中ってところなのでしょうね。
 泣いても笑っても、貴城-紫城コンビの舞台は二月中旬まで。いつ、何がきっかけで大化けするのかわからないタカラジェンヌたち。今月下旬の観劇の際、どう変化しているのか楽しみにしています。


2007年01月12日(金)13:00-16:10
ベルガモ・ドニゼッティ劇場「ドニゼッティ:ランメルモールのルチア」追加公演@東京文化会館

 C席 10000円 5階-2列-6番 (パンフレット:1500円)

 指揮:アントニーノ・フォリアーニ
 演出:フランチェスコ・エスポージト
 管弦楽:ベルガモ・ドニゼッティ劇場管弦楽団

 エンリーコ・アシュトン卿:マッシモ・カヴェレッティ
 ルチア:ヴァレーリア・エスポージト
 エドガルド・レーヴェンスウッド:ロベルト・デ・ビアージオ
 アルトゥーロ・バックロー卿:マッテオ・バルカ
 ライモンド・ビドベント:エンリーコ・ジュゼッペ・ヨーリ
 アリーザ:ティツィアーナ・ファルコ
 ノルマンノ:ヴィンチェンツォ・サリネッリ

 ドニゼッティ劇場は初来日ということもあってか「アンナ・ボレーナ」と「ルチア」の二本立てで来日。チケット代の安さが好評なのか、追加公演が行われました。追加公演というのはともかく、夜公演のある日のマチネとしてオペラの追加公演というのは初めて聞きました。生声が売りのオペラというのは、通常、一日公演したら二日休演して、というのが基本パターンなんです(二期会や藤原オペラのように劇場を持ってない団体の場合は、一日おきというスケジュールを組むこともありますが)。メインキャストはさすがにWですが、チョイ役の人やコーラス、オケの皆さんに関しては拘束時間も長くなることですし、かなり過酷な状況かとお察しします。平日昼間公演ということもあって、入場料はかなり安く抑えられていて、S席に関しては日本のプロダクションと同じかもしかしたらもっと安いかも、という設定。そして、客席はというと、半分もうまっていなかったのではないでしょうか。こんな状況で追加公演を打つ意味があったのかどうかは……僕が心配することでもないですけどね。
 ドニゼッティ劇場は今回が初来日とのことですが、恐らく、イタリアの田舎の小さなオペラハウスかと思われます。小劇場用のプロダクションを東京文化の大きなステージで再現することの難しさを感じましたが、よそ行きではなく、普段のままの公演といった趣で楽しい時間でした(って、現地でこの歌劇場の公演を観たことはありませんけど)。 それにしても、非常にシンプルなプロダクションです。舞台の上に椅子代わりの枝が置かれているだけだったり、食堂テーブルが2つ並んでいるだけ(椅子なし)だったり。こりゃあ、舞台搬入楽やろなぁ、と変なところで関心してしまいました。コーラスの配置で工夫を凝らしていましたが、恐らくサントリーホールのオペラの方が装置に関してはお金かかってそう。でも、それにもかかわらず安っぽい印象ではなく「アーティスティックだなぁ」と感じさせられたのは、照明と衣装の力かもしれません。人の配置や照明具合で、ちゃんと作品の雰囲気が伝わってきたのですから、演出家ってスゴイと恐れ入りました。変に安っぽい舞台をこしらえるより、高級感を保ったままシンプルな舞台を作り上げた演出家にぶらぁぼです。 やっぱりオペラって高級感は忘れて欲しくないです。贅沢する時にはとことん贅沢しなくっちゃ。
 キャストは総じて裏キャストで、公演案内にもチラシにも大きくは取り上げられない面々。ルチア役のエスポージトは既に全盛期を過ぎてしまった印象。一幕のアリアからして非常に不安定で、声が自在に出てこないもどかしさを感じました。音域もかなり狭いようで、三幕での「狂乱の場」では低音部になると急に地声、そして無理やり押し出しているのがアリアリとしていて、聴いているこちらの喉が痛くなってくるような気分。このオペラ最大の聞かせどころにもかかわらず、拍手がパラパラだったのは仕方ないとはいえ、寂しかったです。その分、男声陣が大活躍で、テノールもバリトンも実に豊かかつ表情豊かな歌を繰り広げて、大喝采を浴びてました。僕もこの二人はかなり好きです。オケイマイチ、合唱まあまあ、男声ソリストなかなか、女声ソリストゲロゲロな公演でした。
 余談ですが、欧米の劇場ってそのまま人名を使う事が良くありますよね。ドロシー・チャンドラ・パビリオンとか、ディズニーホール、セイジ・オザワ・ホールとかのコンサートホールをはじめ、ロッシーニ劇場、ヴェルディ劇場、プッチーニ劇場といったオペラハウス(スカラ座も似たような感覚になるのかな?)芝居小屋に至っては、ロンドンなんて個人名のものがわんさかあります。日本だと……ちと思いつかない。でも、浅○慶太劇場や、植田○爾劇場、だとちょっとヤダ。。。かといって、團伊玖磨劇場、山田耕作ホールだと重いしなぁ。難しいところです。あ、カザルスホールがあったか!


2007年01月13日(土)17:30-19:50
劇団四季「Contact」@四季劇場[秋]

 A席 8400円 1階-12列-3番 (パンフレット:1500円)

 演出:スーザン・ストローマン

 ブランコに乗る女:クリスティン・ゼンダー
 貴族:菊池正
 召し使い:満寧
 妻:坂田加奈子
 夫/バーテン:明戸信吾
 ウェイター長:吉元和彦
 マイケル・ワイリー:加藤敬二
 黄色いドレスの女:酒井はな

 若干の台詞は入るものの、ほとんどダンスだけで綴られるオムニバス三本立てミュージカル。スーザン・ストローマンによる振り付けはトニー賞を取っていますが、個人的には非常にアメリカ色が強く、余韻を感じさせるよりも、徹底的に説明しましょう、というしつこさと、全体的な品のなさで苦手な作品です。前回の公演で「もう結構」と思っていたのですが、黄色いドレスの女に新国バレエ団の酒井はながキャスティングされているということで「おはなちゃんならば!」と足を運んできました。
 第一部は貴族のカップルによる戯れ。四季の役者たちはヨーロッパの雰囲気や貴族の品位を表現するのは元々苦手というのもあるのですが、やはりというか残念ながら、エスプリを感じるというよりも、ヤラシクなってしまったのが残念。アメリカ人によるヨーロッパの貴族描写というのも二重のクッションになってしまったんでしょうね。SEXを連想させる振り付けが明るい笑いにならず、隠微な雰囲気をかもし出してしまうので、作品の印象も待ったく別のものになってしまいます。例えて言うならば「貴族の男が娼婦を呼んだが、立場上世間体が悪いので、召使いと入れ替わった上でプレイに及ぶ」みたいな感じ。これは、貴族カップルの二人に位取りと品格がなく、豪華な衣装も着こなせていなかったのと、召使役の満寧との品位の差がなかったのが原因。でも、僕のストーリーだとちゃんと収まるでしょ。女性たちもイギリスで言うメイフェア・マーセナリーズ(もしくは「椿姫」におけるヴィオレッタみたいな立場ね)じゃないけれど、上流階級の殿方との割り切った遊びに精通していての行動だったと。。。出演者のニンに合わない役ゆえ、出演者たちが頑張れば頑張るほど、ストーリーが横道にそれてしまうのは致し方ないではありませんか!
 第二部は人種や階級格差にクスリと笑うお話なのですが、ここでもまた、その手の部分が自然に出てこない(日本版の場合はどうしても難しいところですね)ので、大げさ感が倍増。そして、台詞を言うことに精一杯で、台詞に血が通ってない四季独特の台詞回しも相まって、ヒロインが夢の中で飛翔する開放感が今ひとつ。昔も今も四季は遊び心よりも一生懸命さ、汗臭さが前面に出てしまうので、これまた観ていてツライものがあります。おまけに、やたらとせわしない振り付けもあって、情感が吹っ飛んでしまってました。
 そんな中、ダンスとしていちばんシックリ来ていたのは第三部ではないでしょうか。タメのあるステップもあいまって、なかなかセクシーな仕上がり。もっとも、日本人は全体的に子供っぽく見えるので、大人の官能感よりも、若者のゲーム感覚の方が勝っていますが、これはこれで納得の路線変更。残念だったのは期待の酒井はな。勿論、ダンスは絶品です。ステップの美しさ、細かな動き一つ一つの情感、強いまなざしを駆使した表情、何もかもが最高。おまけに大劇場での公演がメインの人なので、動きや表情が実に大きくて僕好み。でも、台詞回しはさすがにはなちゃんファンの僕でも思わず直視できなくなるような棒読み。そして、バレエならではの豪華な衣装やセットの中だと感じることはなかったのですが、一般の役者さんに混ざるとあまりにダンサーとして出来上がっている体が悪目立ち(泣) 背中の筋肉、足の筋肉、それぞれ「ものすごいトレーニングを積んでいるんだろうな」と感服ですが、バレエ団ならばともかく、ミュージカル劇団の中では行き過ぎの感が強かったです。おはなちゃんのダンスは大好きだけれど、どうぞ今後はバレエに専念していただきたいと。。。加藤敬二は四季の数少ない看板スターの一人。とはいえ、ダンスの人なので、台詞回しも芝居も今ひとつ。この役は意外とダンス場面が少ないので、彼の個性が生きていたかというと、ちと疑問。そして、アンサンブルがとても若いので、クラブの場面では「うっかり年齢制限ありの会員制クラブに紛れ込んでしまったオッサン」状態。ダンス・テクニックは見事にキープしてはいても、ちょっとした動きでさすがに年齢を感じてしまいます。おはなちゃんもですが、贅肉のない人というのは、いくら舞台化粧を施しても、年齢が隠しきれないといいましょうか。。。期待のカップルだっただけに、その分、ほろ苦さを感じる場面でした。
 と、今回も満足〜というプロダクションではなかったのですが、ほんの二時間の間にさまざまな「コンタクト」を表現するというアイデア、さまざまなダンスを見せる構成力、(適役かはともかくとして)力量あるダンサーを揃えたという意味で素敵な公演ではあります。でも、やっぱり、違和感があるのは確かなんですよねぇ。これは僕だけの感想じゃないと思うんですよ。客観的に観ても、客席の空気の寒いことといったら! カーテンコールでの拍手もパラパラだし。この手の作品がじっくり練り上げられ、そして観客に受け入れられるようになるにはまだ時間がかかるんじゃないでしょうか。もしくは、台詞の問題はあるとしても、四季ではなく、どこかのバレエ団で観てみたい作品ですね。新国バレエ団だと役者が揃っているのでできるでしょう。テディのK-BALLETや、牧さんのところでも面白くなりそう。東京バレエ団だと……四季っぽくなっちゃう?


2007年01月21日(日)14:30-16:10
NTTフィルハーモニー管弦楽団「第20回定期演奏会」@サントリーホール

 全席指定 3000円 1階-2列-9番 (パンフレット:無料)
 指揮:松岡究
 ソプラノ:松尾香世子
 メゾ・ソプラノ:寺谷千枝子
 合唱:NTT合唱団、合唱団ZERO、成城合唱団

 マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」

 ソプラノの松尾さんのチケットをお願いしたところ、当日受付で引き換えとのこと。実は普段「イリスさん」と呼んでいるので、とっさに本名が出てこない! おまけに指揮者の松岡さんと苗字がごっちゃになってしまい「ソプラノの……まつお…かよこさんにお願いしているんですけど」と非常に間延びした引き換えとなりました(お恥ずかしい)。おまけに、席番を確認した瞬間ショック。だって、徹夜明けなのに2列目。確か「復活」のソプラノソロって最後の最後にちょこっとあるだけなはず。ということは、舞台でスタンバイの彼女からは丸見え!?!?(実際は席位置の関係で座った彼女からは見えない(=座っている彼女も見えない)。ふふふ。
 本日の演奏団体は、名前の通り、NTTの社員を中心としたオーケストラ。アマチュアということで期待度は実は高くなかったのですが、どうしてどうして、なかなかの技量のオーケストラで、不安を感じるパートがなかったのはアッパレ!! あの広いサントリーホールが満席なのもスゴイことです。でも、アマチュアならではなのは、オケのメンバーが舞台に登場すると、彼らに向かって客席から手を振る人が多いこと。これ、結構目立つんですね。これからはのぼぉちゃんに向かって手振ってみようかしらん?(無視されるのがオチ!?)
 さて「復活」を最後に聴いたのはいつかと資料をひっくり返してみたところ、両手の指では足りないかなりの昔、ロリン・マゼール×読売日響with片岡啓子&伊原直子によるものでした。その時は一楽章が終わったあとにしばし指揮者が指揮台の上で休憩しちゃうのと、絶頂期の伊原直子の深々とした声、武蔵野音大合唱団のド迫力に感動した記憶があります。今回は会場が東京文化→サントリーになったせいか、かなり曲の印象が変わりまして、管楽器のコラールの響きに新鮮な感動をおぼえました。ワーグナー作品などで、新国でも良く聴く和音なのですが、ほら穴(=オケピ)の中から響いてくるものと、空間が広く爽やかなサウンドが持ち味のサントリーでは音の抜け方が全然違って、この部分が一番ジーンときました。なお、一楽章の後の「5分以上の無音状態」は今回はカット。ま、個人的にはカットされている方が好きですね。今回、出だしが硬かったオケもコーラスも演奏しているうちに硬さが取れてくるのがアリアリ。この部分、プロオケよりも起伏が激しいです。途中、集中が切れる場面はありましたが、クライマックスではオケとコーラスとソリストが一丸となってトランス状態。マーラーはこうでなくっちゃwww
 曲の途中で舞台登場したソリスト二人ですが、普段はにこやかな松尾イリスさんがものすごく強張った表情。ま、この曲でニコニコ登場というのも変ですが、戦闘態勢といえる硬い表情に思わずドキドキ。緊張感が客席に怖いほどに伝わってきます。そして、登場後もしばしオケだけの演奏が続くのですが、いざメゾのソロが始ると同時にイリスさんのことを忘れてしまうような問題が発生。私的なことですが、このところ毎日飲んでいる風邪薬の効き目が切れたのです。そういえば、お昼に飲み損ねてた。。。急に喉がイガイガして、セキをしたくて仕方がないのに、pppの場面は長大なのだぁ。涙目になってこらえていたら、我慢しすぎで呼吸困難。「もしかしたらコンサート聴きながら死ぬかも」なんて思った程。もうこれ以上我慢できない!という分だけ失礼させていただき(我慢していたから変なセキ)、オケの演奏がfffになるのを待ち構えて盛大なセキ&のど飴捜索。いやはや、おかげさまで、ソプラノ・ソロは涙をためながら聴くことになりました〜。それにしても「復活」のコーラスを聴きながら、黄泉の世界→現世への「復活」を体験できるなんて、そうそうこんな経験する人もいないのでは?


2007年01月26日(金)13:15-15:25
映画「マリー・アントワネット〜MARIE ANTOINETTE〜」@TOHOシネマズ 市川コルトンプラザ スクリーン1

 全席指定 1300円 J列-6番 (パンフレット:600円)
 監督:ソフィア・コッポラ

 マリー・アントワネット:キルスティン・ダンスト
 ルイ16世:ジェイソン・シュワルツマン
 デュ・バリー夫人:アーシア・アルジェント
 マリア・テレジア女帝:マリアンヌ・フェイスフル
 ノアイユ伯爵夫人:ジュディ・デイヴィス
 ルイ15世:リップ・トーン
 メルシー伯爵:スティーヴ・クーガン
 フェルゼン伯爵:ジェイミー・ドーナン
 ポリニャック公爵夫人:オーロール・クレマン
 シャール公爵夫人:オーロール・クレマン
 ソフィー内親王:モリー・シャノン
 ヨーゼフ2世:ダニー・ヒューストン
 プロヴァンス伯爵夫人:クレメンティーヌ・ポアダッツ

 平日の昼間だというのに、やたらとお客の入っている映画でした。日本におけるアントワネット人気が伺われます。さすが! とはいえ、この映画は歴史物大作でも、一大ラブロマンスでもなく、まるでアメリカの高校生の生活を扱ったかのような映画でした。実際、そのまんまLAあたりの高校生の話に以降できそうな台本。ベルサイユ宮殿や豪華な衣装、ラデュレのカラフルなお菓子が登場しますが、そんなものは脇役で、フランス王妃としてではなく、一人の女の子の心のうちを扱った映画です。
 この一年間、宝塚の「ベルサイユのばら」を筆頭に、松竹の「マリー・アントワネット」、東宝の「MA」とアントワネット漬けだったので(ってオーバーか)、舞台上ではちょっとした台詞で処理される部分がリアルな映像で迫ってきます。お輿入れの際に下着まで脱がされたり、ダンナ(=ルイ16世)があまりにでくの坊だったり、フェルゼンがフェロモン撒き散らしていたり。そして、群集がベルサイユに押し寄せる際の迫力は映画ならでは。
 母親からは「さっさとSEXして子供を作りなさい(具体的な誘惑方法まで手紙で指示あり!)」と責められるものの、肝心なルイ16世があまりにもでくの坊で、そんなストレスから散在に走るのが前半。ヨーゼフ2世がルイ16世にじきじきに子作りの方法を伝授する(このあたり、宝塚じゃ無理な描写ですね・汗)やいなや、子供がどんどん産まれ、それに伴い、贅沢→家族愛で満たされるのが後半。
 「フランス王妃といえども、普通の女の子だった」という視点からすれば狙い通りなのかもしれませんが、ゴージャスでもお馬鹿さんでも、ビッチでもない主人公は、僕の好みではございませぬ。贅沢三昧のシーンも見ていてカタルシスが得られません。親近感の持てるヒロイン描写ではあるけれど、スケールの小ささは否めません。おまけに、キルスティン・ダンストがあまりに庶民的で、王室物の映画だということを忘れてしまうほど。
 マリー・アントワネットについてこの映画で初めて知ったという人はともかく、なまじフランス革命だとかバスティーユのこと、そして登場人物一人一人の設定について予備知識があるだけに、僕にとっては「あれっ、これだけ!?」という肩透かし感でいっぱい。フェルゼンなんてプレイボーイとして登場し、SEXだけしてさっさと王宮を去ってしまうのにいたっては「!」です。そういえば、登場人物の心のひだについてはほとんど描写されてなかった!! 結局、映像の美しさを愛でれば良い映画なのかもしれません。ちょっとクセが強すぎるクセに、コクのなさが物足りませんでした。でも、方向性と個性の強い演出なので、好きな人にはたまらないのかも。歴史物の重さが苦手な人には新鮮ですよ、きっと。


2007年01月27日(土)11:00-14:05
宝塚歌劇団宙組「維新回天・竜馬伝」「ザ・クラシック」@東京宝塚劇場

 S席 8000円 1階-10列-63番 (パンフレット:1000円)

 演出:植田景子(維新回天・竜馬伝)/荻田浩一(ザ・クラシック)

 坂本竜馬(維新の風雲児と呼ばれた土佐脱藩浪人。海援隊隊長):貴城けい
 お竜(伏見の船宿・寺田屋の養女。後に竜馬の妻となる):紫城るい
 中岡慎太郎(土佐脱藩浪人。陸援隊隊長):大和悠河
 勝海舟(幕府軍艦奉行):立ともみ(専科)
 お登勢(寺田屋の女将):邦なつき(専科)
 中浜万次郎(幕府通訳官):美郷真也
 西郷隆盛(薩摩藩の重臣):寿つかさ
 徳川慶喜(徳川幕府十五代将軍):蘭寿とむ
 武市半平太(土佐勤皇党首領):悠未ひろ
 鬘小五郎(長州藩士。後の木戸孝允):北翔海莉
 お蝶(薩摩の密偵。西郷の愛人):美羽あさひ
 千葉佐那子(千葉道場の道場主・千葉重太郎の妹):和音美桜

 登場前に「日本一明るい男」として紹介される坂本竜馬。そんな役を「悩める男」を演じさせたらピカ一の貴城けいが演じるという意外性が楽しみな舞台でした。宝塚最後に回ってきた役は彼女が今までに演じたことのないタイプの役。彼女なりに豪快さを見せようと元気イッパイの舞台でしたが、どう演じようにも暗いイメージが勝り、日本を、世界を動かそうという勢いに欠けてしまいました。逆に、テンションの強さが痛々しく見えることも。。。彼女の線の細さと、かもし出す気品を考えると、いっそのことショーのテーマになった「ショパン」でミュージカルを、日本各地を飛び回る「竜馬」で和物ショーを作ったら、なぁんて思ってしまいました。もちろん、キャリアと実力のある人なので、丁寧な役作りでそれなりにまとめていますが、元々、カラッとした芸風の真矢みきが下級生時代に勢いで演じて大当たりを取った作品だけに(退団直前に再演してますけど)、ニンの違いの落ち着きの悪さは隠しきれません。それにしても、この芝居、現在の貴城けいの状況にも当てはまる台詞が多くて、痛いわなぁ。志半ばに死す男。。。
 お竜の紫城るいも、チャキチャキ娘というよりも、洗練された都会の空気が持ち味の娘役なだけに、東宝劇場を沸かせるような大芝居は苦手な様子。和音美桜が扮する千葉佐那子と竜馬の取り合いをしたり、二人で意気投合して「竜馬の」まで叫んだら、他の人に「バカヤロー」と先を越して叫ばれてしまったり、結構大笑いのシーンが容易されているのですが、サラサラと流れすぎて、笑うに笑えないのが物足りない。彼女も勢いで突っ走るよりも、あれこれ理性的に計算した芝居の方が得意そうな印象。もちろん、ちょっとした仕草や目線での感情表現はアッパレ。でも、でも、貴城けいといい、紫城るいといい、大劇場の主演スターとしてはどうよ!?状態。小さくまとまる=スケールが大きくならないなので、一作退団も仕方ないなぁと妙に納得(ファンの方ゴメンナサイ。嫌いなスターってわけじゃないんですけどね)。
 寿つかさが演じる西郷隆盛は、線の太さが実に魅力的。スミレコードに引っかかりそうな「(夜の女性のお相手は)テクニシャン〜」の件も、彼女が言うと下品にならなくって良いです。「照れくさいな」のところとか、ちょっとしたオッサン台詞が抜群にうまくて、下品にならずに堂々と言い切ってしまうのはタダモノではありません。西郷隆盛という役柄もありますが、舞台の上での存在感と貫禄はトップさんを食ってました。ダンサーだと思っていたのですが、いつの間にやら素敵な役者さんになりました。でも……日本の明日の前に宙組の明日が心配。。。
 さて、ショーですが、出来とは関係なく「クラシックって何?」と根源的疑問を抱いています。「幻想即興曲」にせよ「華麗なる円舞曲」にせよ、クラシックでない音楽家が演奏した時点で「ジャズ」として分類されたり「タンゴ」になってたりしますが、その逆ってないですよね。で、今回のショーですが、開演アナウンスが流れる時点では「雨だれのプレリュード」が上品に流れていて、さぞかしエレガントなショーになるかと思いきや、その後はロックで押しまくり。それも1曲をきちんと使うのではなく、2〜3小節ずつブツ切り。テレビの歌謡番組では、ダンサーがせっかく踊っているのに、1〜2秒ごとにカメラアングルを切り替えてしまい、振り付けもダンスも「結局どんなだったかわからない」とイライラすることが多いけれど、今回のナンバーの扱いもまるでイントロクイズを延々と出題されているようで、やたらと疲れました〜〜〜。恐らく、クラシックの曲を丸々一曲歌える男役スターがいないための苦肉の策なのでしょうが、あまりに作者の手の内が見え見えなのでかなり白けます。ほんの一瞬で曲世界を伝えるのってかえって難しいんですけどね。。。
 でも「別れの曲を聴いたら、私のことを思い出してください……言葉はいらない(だったかな?)」とか客席に向かって語りかけた直後に、大階段でサヨナラの思いをタップリこめた大ナンバーを歌い上げることに突っ込みを入れつつ、ようやくシットリ&タップリ聞かせてくれる場面に溜飲。貴城けいは、決してショースターではなく、今回のショーもしどころのない役ばかりでしたが、最後の最後に彼女のための場面が与えられ、彼女自身も男役トップの意地を見せた大熱唱。色々な意味で「成仏しました」とは思えない舞台ですが「悔いなし(あ、僕がね)」の場面となりました。



2007年01月27日(土)15:00-17:50
藤原歌劇団「プッチーニ:ラ・ボエーム」@オーチャードホール

 D席 5000円 3階-3列-8番 (パンフレット:1000円)

 指揮:園田隆一郎
 演出:岩田達宗
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 ミミ:リ・ウンキョン(李恩敬)
 ロドルフォ:笛田博昭
 ムゼッタ:佐藤美枝子
 マルチェッロ:谷友博
 ショルナール:柴山昌宣
 コッリーネ:田島達也
 べノア:折江忠道(山田祥雄の代役)
 アルチンドロ:柿沼伸美
 パルピニョール:田代誠

 毎年「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」が上演されてきた藤原歌劇団のニューイヤーオペラ@オーチャードホール。今年は「ラ・ボエーム」が登場です。実はこのオペラ、中学生の頃は嫌いだったんです。なぜって、とりたてて派手な事件が起こるわけでもなく、出演者はみんなウジウジしているばかりなレ・ミゼラブルな世界。ま、小中学生には恋する若者たちの心のヒダヒダはまだわからなくても仕方ないのかも(理解してたら可愛くないしww)。で、あれこれ恋愛を経験した今は結構好きな作品です。共感できる部分も多いですし。1幕での「あぶく銭はパーっと使ってしまうところ」とか(今日もちょっとした収入があったので…散在しました・汗)、2幕でのムゼッタvsマルチェッロの「LOVE GAME」、3幕では心とは裏腹な言動をとってしまう「愛の苦しみ」、4幕では「イライラしていると仕事が手につかない」様子などなど、どれもこれも「うん、うん」と共感。ビバヒルの貧乏版みたいでしょ。
 今回は新人公演の様相。役と役者が合っているかよりも「勉強のためにこの役に取り組ませましょう」という空気を感じました。よって、熟成した技術よりも若さを前面に押し出した演奏・演出で、これはこれで気持ちの良いものでした。スター歌手による公演はワクワクしますが、僕とは同世代の「若手(!)」歌手たちによる公演は格別のものがあります。
 ミミのリ・ウンキョンと、ロドルフォの笛田博昭はたぶん初めて観る方達ですが、なかなか爽やかなカップル。ミミは清楚でおっとりしていて「ウルセー、このブリッコめっ!」と暴言を吐く気分になんてなることもなく、安心して芝居に誘われます。ロドルフォも実に真っ直ぐな声で勢いもあります。日本人にしてこれほど楽々と劇場中に声を響き渡らすことのできる人って貴重ですね。名前は出しませんが、脇役の何名かは声を張り上げることばかりに集中してしまい、無理やり歌ってますという聞き苦しいものを披露していました。頑張っちゃうと、感情こもらない、音程も怪しくなってハーモニーも悪くなるなど、良いことないんですけど。。。閑話休題。で、笛田ロドルフォは実に真っ直ぐで勢いのある歌。考える前にとりあえず動いちゃうロドルフォなので、病気のミミの扱いに困って暴言・暴力に走るのも納得の能天気さ。まだ若い今だからこそ許される、貴重な直球勝負です。
 ムゼッタ&マルチェッロは今回の公演の中ではベテラン組。安心のお二人です。マルチェッロの谷友博も朗々とした素晴らしい声を披露。Wキャストの場合、僕が観ない方の公演にキャスティングされることが多いので、生・谷友博は楽しみにしてました。メイクがとても上手で舞台栄えして男前になるし(プロフ写真はそろそろ差し替えた方がよろしいかと。。)新人公演の中でホッと一息。ムゼッタの佐藤美枝子はチャイコン優勝が売りの方ですが、いかんせん華がないのと垢抜けしないのが難。今回の「ムゼッタのワルツ」の場面も「ザ・パリジェンヌ♪」として素敵に登場のはずが、ドレスに負けてました。一番派手な衣装を着ているのに、とにかく地味。これは彼女の資質の問題もあるけれど、それでも、歌手を立派に見せる制作サイドにブーイング。
 藤原歌劇団は来年の一月もオーチャードで「ラ・ボエーム」を上演するのかと思いきや、公演案内を見ると、そもそも一月公演そのものがないんです。ってことは、オーチャードホールのニューイヤーオペラはこれが最後!? さびしいなぁ。。。