観劇日記〜2007年02月〜
02日(金) 18:30 新国立劇場バレエ団「眠れる森の美女」 新国立劇場オペラ劇場
03日(土) 12:30 フジテレビジョン「タイタニック」 東京国際フォーラム ホールC
10日(土) 17:00 二期会「R.シュトラウス:ダフネ」 東京文化会館
11日(日) 17:30 オペラ工房「モーツァルト:フィガロの結婚」 misicasa
16日(金) 17:30 映画「幸せのちから〜THE PURSUIT OF HAPPYNESS〜」 TOHOシネマズ 市川コルトンプラザ スクリーン8
17日(土) 15:30 宝塚歌劇団月組「パリの空よりも高く」「ファンシー・ダンス」初日 東京宝塚劇場
18日(日) 15:00 新国小劇場オペラ「オベール:フラ・ディアヴォロ」 新国立劇場小劇場
20日(火) 19:00 JTアートホール室内楽シリーズ
「JTアートホール・チェロ・アンサンブル 〜チェリストによる作品を集めて〜」
JTアートホール
22日(木) 14:00 フジテレビ「BKLYN〜ブルックリン〜」 東京芸術劇場中ホール


2007年02月02日(金)18:30-22:10
新国立劇場バレエ団「眠れる森の美女」@新国立劇場オペラ劇場

 Z席 1500円 4階-4列-4番(第一幕より11番の席に移動) (パンフレット:800円)

 指揮:エルマノ・フローリオ
 管弦楽:東京交響楽団(コンサートマスター:グレブ・ニキティン)
                        ↑
 ニ幕でのまるでヴァイオリン協奏曲のような間奏曲のソロを見事に演奏。バレエとしては珍しくオケに「ぶらぁぼ」が飛んでました!)

 オーロラ姫:川村真樹
 デジレ王子:貝川鐵夫
 リラの精:湯川麻美子
 カラボス:ゲンナーディ・イリイン
 フロリナ王女:さいとう美帆
 青い鳥:江本拓

 95年ローザンヌ国際バレエコンクールでスカラシップを受賞し、プリマとして迎えてくれるバレエ団もあるという中、あえてコールドとして新国バレエ団に入団。「十二夜」でソロはあるものの「もったいないなぁ」と思っていたら、ここ数年の間にコールド→コリフェ→ソリストと抜擢続き。気がつけば、準主役級の役を負かされるように。そして、このたびついに主役デビュー。ゲストダンサーとしての主演ではなく、最初からスター扱いだったわけでもなく、新国バレエ団で研鑽を積み重ね、新国バレエ団で花開いたスターです。祝祭色の強い「眠れる森の美女」(お誕生日→成人式→結婚式とお祝いだらけの作品なのだぁ)ほど、川村真樹の主役デビューにふさわしい役もありますまい。慣れ親しんでいる空間のせいか、客席も舞台も暖かでした。
 オーロラ姫の登場場面では、四人の王子がちょっとずつ絡んで手を取るのですが、さすがにこの場面は緊張が感じられました。でも、王子達が手を「ギュッ」と握り締めるのがオペラグラスごしに見て取れて「彼女は幸せ者やぁ」と思った次第。このバリエーションが実に丁寧、そして初々しくて、終了と同時に「ブラァヴァ」のかけ声。川村真樹が伸びやかに硬くならずに主役を踊り通せたのは彼の応援が大きいのでは、と嬉しくなってしまいました。そして、元々、新国バレエ団は女性ダンサーの層が厚いけれど、脇を固める面々が看板ダンサーたちなので、万全のフォロー。リーダー格のリラの精を踊る湯川麻美子なんて「私に任せておきなさい!」ととでも言いたげな、実にアッパレな姐さんぶり。ゆったりふんわり踊る役が多いこの作品の中で、空間を切り裂くような彼女独特の動きが実に効果的でした。この手の役の湯川麻美子は他の追随を許さないウマさが光ります。
 舞台美術は豪華だし、上演時間の長さも破格のバレエで、作品としての評価も高い「眠れる森の美女」ですが、個人的には苦手な作品なんです。感情移入できる役が僕にとってはカラボスだけで、その他は完全無欠な役ばかり。登場人物、ことにオーロラ姫の感情の起伏が感じられないので、大したストーリーがないだけに緊張感が切れてしまうんです。そして、振り付けも地味に難しいものばかりで「これぞ」という大技がないので、メリハリがなくって。。。もっとカラボス役が大きくてビッチな役として舞台に影響を及ぼすとか、オーロラ姫やデジレ王子のナンバーも優雅にのんびりまったりとではなく、激しく血が沸きかえるような生命力があれば良いんだけど。。。せっかく新国オペラ劇場を使うのだから、舞台が沈んだり回ったり、装置があちこちにはけたり……なぁんて、スーパー歌舞伎ならぬ、スーパーバレエにしてくれないかなぁ。(かなり邪道なのは承知しております!)


2007年02月03日(土)12:30-15:25
フジテレビジョン「タイタニック」@東京国際フォーラムホールC

 A席 7000円 3階-10列-28番 (パンフレット:2000円)

 演出:グレン・ウォルフォード

 トーマス・アンドリュー(タイタニック号設計士):松岡充
 ハロルド・ブライド二等通信士:鈴木綜馬
 フレデリック・バレット(ボイラー係):岡幸二郎
 ジム・ファレル:浦井健治
 ウィリアム・マードック一等航海士:岡田浩暉
 ケイト・マクガワン:紫吹淳
 アリス・ビーン:森口博子
 イーダ・ストラウス(イジドーの妻):諏訪マリー
 ウォーレス・ハートリー(バンドマスター):浜畑賢吉
 J・ブルース・イズメイ(ホワイト・スター・ライン社社長):大澄賢也
 イジドー・ストラウス(メイシーズ百貨店経営者):光枝明彦
 ヘンリー・エッチズ(一等船客の客室係):藤木孝
 キャプテン・E・J・スミス:宝田明

 徹夜明けでしたが、ちゃんと船を漕がずに見てきました。幕が開いて間もなく、青山劇場で劇団四季を観ている気分になりましたwww そんなキャスティングです。(四季劇場で劇団四季を観ている気分ではないです、はい) でもって、主要キャスト表に入らないメンバーの中も結構な確立で元四季の役者がズラリ。彼らが劇団四季に残っていてくれたならば、今ごろ浅○さんも安泰なんでしょうにねぇ。。。
 さて、今回の「タイタニック」ですが、昨年の「グランドホテル」と同様、ブロードウェイ版とは別演出。全く別の作品と思って観るのがちょうど良い出来です。ハッキリ言って、グレン・ウォルフォードの演出は緩くてぬるくてよろしくありません。あえてブロードウェイ版とは別の演出家によるプロダクションを作るのであれば、オリジナルを超える何かがあってしかるべきだと思うんですけど。それができない演出家を毎年起用する意図が僕にはわかりませぬ。別の演出家にチェンジする事はできなかったんでしょうかねぇ。
 さて、今回の観劇にて気になった問題点は二つ。まず一つ目は階級問題や人種問題が表面化していないこと。せっかく一等〜三等まで客のクラスが分けられているのに、舞台の上では誰が一等客で、誰が三等客かわかりません。衣装だけでなく、動きやかもし出す雰囲気などなど、全然違いがないんですもの。この手の表現に関しては日本で上演する場合は難しいですね。上流の人が上流に見えず、かといって最下層階級の人もそこそこ品良くなってしまうので、森口博子の熱演も空回り。格差社会ゆえの悲劇というのが浮かび上がらないと、この作品のテーマが狂ってしまうってもんです。そもそも、底辺層を演じるのが、岡幸二郎、浦井健治、紫吹淳とキレイどころですもの!!
 そして、二つ目は舞台に緊迫感がないこと。きちんと歌っているし、台詞も通るのですが、そこに感情が存在してないんです。船が沈むというのに、全然焦る様子もなく、みんな淡々としているんです。もっとパニックにならないのかなぁと。どこか他人事という空気が舞台に満ちているので、客席で架空の世界に酔い浸るなんて無理っ! またもや演出家の悪口になってしまうけれど、緊迫感を表現するのにどんな指示を出していたのか気になるところです。
 キャストは主役経験者がズラリなので、場面場面はそれなりに見せてくれます。四季組、宝塚組、東宝組、フリーと入り混じったキャストなのですが、個人芸のアピール方法って、出身団体によって抜けないものなんですね。コレって面白いことです。「タイタニック」は誰が主役ということがない群集劇なので、ホントはこのあたりの交通整理も演出家にしてほしいです。実力者揃いなのにそれが生かされてないのがもったいないことといったら!!
 中でも存在感が別格だったのが諏訪マリーと宝田明。キャリアの差といってしまえばそれまでですが、台詞やナンバーの重みが段違い。前述したように、決してこの二人が主役というわけではないのに、舞台をビシッと締めてくれました。そして、この二人の好演を見事に台無しにしてくれるのが、またしてもウォルフォードの演出。もう、何とかして。。。そんな中、一応「主役」となっている松岡充ですが、手も足もでない状態。役作りではなく、ひたすら自分を格好良く見せようということに集中していて、やたら顔の角度を気にしたり、表情を作ってみたり。。。そもそも、眉毛をいじりすぎのメイクや、妙な髪形など、こちらの面もチェックして欲しかった。。。でも、良い声をしているので、作品・役・スタッフに恵まれれば、素敵なミュージカルスターに化けるかも。


2007年02月10日(土)17:00-18:55
二期会「R.シュトラウス:ダフネ」日本初演・初日@東京文化会館

 E席 2000円 5階-L2列-8番 (パンフレット:1000円)

 指揮:若杉弘
 演出・振付:大島早紀子
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 ペナイオス(漁師、ダフネの父親):池田直樹
 ゲーア(ダフネの母親):板波利加
 ダフネ:釜洞祐子
 ロイキッポス(ダフネに想いを寄せる羊飼い):樋口達哉
 アポロ:福井敬
 羊飼い:勝部太、塚田裕之、村林徹也、斉木健詞
 乙女:平井香織、江口順子
 メインダンサー:白河直子
 ダンサー:木戸紫乃、小林史佳、斉木香里、横山博子

 R.シュトラウスというと、摩訶不思議なメロディと、複雑でいながら心地良い響きのが魅力ですが、今回はさらに目の保養もさせてもらいました。舞台美術はシックだし、展開はスピーディにもかかわらず下品にならないし、ダンサーと歌手の共存も違和感がなかったし、実に素晴らしいプロダクションでした。登場人物は少ないのだけれど、舞台のあちこちで歌手が、ダンサーが、装置が(装置も立派な出演者でした!)が色んなことをしでかしてくれるので、舞台のどこを見たら良いのか悩んでしまう程。えてして、あれこれ舞台上で動き回る演出は煩わしいことが多いのですが、音楽とマッチしてでの動きなもんだから、煩わしいどころか興奮しっぱなし。思うに、大島早紀子の世界観がしっかりしていたこと、オペラの中でのダンサーの扱いに違和感がなかったこと(「エリザベート」の影響を強く感じました)、振付が激しく鋭いながら、音楽から逸脱していなかったことなど、何もかもが良い方向に作用した、ここ最近の二期会公演の中では白眉の仕上がりだと思ってます。
 幕開きはいきなり白河直子のソロ。大きな羽根の生えた椅子に座っているのですが、その姿はまさに「トート閣下」そのもの。女性ダンサー四人はさながらトートダンサー。人間柱だってちゃんと登場します。黒光りする床、四つの中階段を移動させながらの劇進行、柱状の装置を縦横無尽に動かしての場面転換。変化に富んだドラマティックな照明とスモークもくもく(歌手の喉は大丈夫かぁ!?)と、はて、今日の演出は小池修一郎だったっけ?との錯覚を覚えるほど「エリザベート」の世界でした。そういえば「ダフネ」のストーリーも「アポロが人間を愛する、そんなことが許されるのだろうか?」ってなお話なので、結構共通点はあるかも。アポロの暴走=トート閣下のストーカーぶりにソックリで、恋敵は平気で殺しちゃうところとか、それでいながら苦悩してしまうところとか。……ということで、かなり僕好みの世界が展開。大島早紀子の演出・振付だけでも「元は取った」という気分になる公演でした。フィナーレのダフネの変容部分もまた白河直子によるダンスで表現されるのですが、これがまた官能的で切なくて、まことに感動的な幕切れでした。決して舞台上の歌手を邪魔することはないのに、ちゃんと主役を盛り立て、黒子として舞台を仕切りつつ、自身も超絶技をサラリと披露して舞台を去るんです。格好良かった〜〜〜。
 歌手ではアポロの福井敬が絶好調。重厚なオケにも負けない鋭い声、傲慢さが魅力に見えてしまう舞台上での色悪オーラ、ダンサー達にも負けない存在感、さすが劇団の看板歌手だけあります。最近の歌手では珍しい主役専科だけあって、舞台上での存在感は圧巻です。今が絶好機であろう、充実振りが実に頼もしい限り。おかげで、周りの歌手が霞んでしまったのはいたし方ないところ。福井敬と並ぶと声の力や主役としての大きさの差がくっきりしてしまうんです。コンサート歌手と違って、オペラ歌手は押し出しの良さがあってナンボのものだなぁ、と改めて思った次第。主役たるもの、スターでなくっちゃ。そんな意味では、どんなに上手に歌おうと、華のないプリマや、無理やり声を押し出しているような「声に恵まれてない歌手」は僕の好みじゃないんですよねぇ。無理しなくても声の通る人や、pppの美しさで勝負する人は好きですよ。でも、声量がないのに張り上げ一本やりの人や、pppになると全然通らない声の人にはお金払いたくないわぁ。
 今回はベテラン歌手が揃っているせいか、ほとんどの役で破綻がなく、楽しませてもらいました。普段のオペラ公演とは全然違う舞台上での動きや、音取りがさぞ大変かと思えるような曲を危なげなしに、そしてアンサンブルとして緊張を持って歌いきった初演キャストの面々に拍手です。それを導いたであろう若杉弘にも。でもね、これだけの作品を見事に上演しているにもかかわらず、どことなく「余裕」があるんです。観客も出演者も「必死」ではなく「楽しいでしょ?」「うん、楽しい」という舞台と客席との交流があったとでもいいましょうか、実に暖かい拍手であり、伸びやかな公演でした。こういうのを「底力」と言うのでしょうね。ここ最近、主役が地味な印象の二期会オペラでしたが、生かすも殺すも演出次第、スターに育てるのも演出次第、ではないでしょうか。素敵な時間でました。満足です。


2007年02月11日(日)17:30-20:25
オペラ工房「モーツァルト:フィガロの結婚」@misicasa

 全席自由 3500円 (パンフレット:無料)

 演出:吉兼保
 演奏:小松美穂(VL)、菊地秀夫(Cl)、林憲秀(Ob)、武石玲子(Pf)

 フィガロ:宮田景介
 スザンナ:鈴木佳奈
 アルマヴィーヴァ伯爵:桝谷裕
 伯爵夫人ロジーナ:飯原道代
 ケルビーノ:竹野智子
 ドン・バルトロ:上川路啓志
 マルチェリーナ:沢海陽子
 ドン・バジーリオ:國井有
 クルツィオ:北野雄一郎
 アントニオ:今井典和
 バルバリーナ:金子加於理

 知人の桝谷さんから「こんどオペラに出ます」と案内を頂き、musicasaへ行ってきました。演目は僕の大好きな大好きな「フィガロの結婚」です。恐ろしいことに「音楽大学で声楽を学んだ者はほとんどおりません」という団体が上演。オケは室内楽に編曲、レチタティ ーヴォは全て台詞に、アンサンブルの難しいナンバーは省略ではあるものの、なかなか立派な公演でした。それにしても、バジーリオ以外はシングルキャスト、そして二日間に四公演だなんて、なんと過酷な上演だったんでしょう! 僕はその最終公演を観たのですが、終演後思わず「二日間で四公演も良く歌いきったね〜」と桝谷さんに駆け寄ってしまいました。それにしても、これほどまでにミニマム・サイズのオペラの上演は初めてです。8畳位のステージの上で全てが演じられ、舞台装置は椅子が二脚とついたてが一つあるだけ。小道具もほとんどなく、衣装も現代服。でも、この作品って現在に時代を動かしても無理なく上演可能なんですよね。人気の要因は普遍的な人間模様を描いているからなんだと、普段の上演では見えない事が見えてきたりして面白い体験でした。一つ気になったのが歌詞の古めかしさ。二期会が日本語上演していた頃のものと同じ堀内敬三の訳詩なのですが、いかんせん表現が今回の上演にはマッチしておらず、台詞と歌詞とのスタイルの違いが目立ってしまいました。フィガロがいきなり「一尺、二尺…」と歌いだした際に、思わず椅子からずり落ちそうになりましたwww それはそうと、フィガロの本名は「ラファエロ」と言語上演だと歌われるのですが、今回はなぜか「エマニュエル坊や」となっていました。何故だかわからないんだけれど気になる〜〜〜。


2007年02月11日(日)12:40-14:45
映画「幸せのちから〜THE PURSUIT OF HAPPYNESS〜」@TOHOシネマズ 市川コルトンプラザ スクリーン8

 全席指定 1200円 K列-20番 (パンフレット:600円)
 監督:ガブリエレ・ムッチーノ

 クリス・ガードナー:ウィル・スミス
 リンダ:タンディ・ニュートン
 クリストファー:ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス
 ジェイ・トゥイッスル:ブライアン・ハウ
 アラン・フレーケシュ:ダン・カステラネタ
 ウォルター・リボン:カート・フューラー
 チュー夫人:タカヨ・フィッシャー



2007年02月17日(土)15:30-18:35
宝塚歌劇団月組「パリの空よりも高く」「ファンシー・ダンス」初日@東京宝塚劇場

 S席 8000円 2階-4列-37番 (パンフレット:1000円)

 演出:植田紳爾(パリの空よりも高く)/三木章雄(ファンシー・ダンス)

 アルマンド・ジャッケ(ペテン師):瀬奈じゅん
 ミミ(パリの花売り娘):彩乃かなみ
 ギスターブ・エッフェル(建築家):霧矢大夢
 ジョルジュ・ジャッケ(ジュリアン・ジャッケの遺児):大空祐飛
 レオニード・マンジュボア(上院議員):未沙のえる(専科)
 エレノール・ラ・モール(ホテル・ド・サンミッシェルの女主人):出雲綾
 ドミニク・パチコーフ(陸軍将軍):嘉月絵理
 アルベール・デ・サンルー(パリ銀行頭取):遼河はるひ
 エルザ(ミディネット):城咲あい

 久しぶりにサヨナラでもお披露目でもない公演。「パリの空よりも高く」は菊田一夫の「花咲く港」を宝塚風にリメイクした作品。
「花咲く港」は新国でも渡辺徹と高橋和也コンビで上演された菊田一夫作品ですが、いきなりレビューシーンが延々と続き「はて、今日はショーの二本立てだったっけ?」と思うころ、ようやくお芝居がスタート。このレビューシーンがなかなか秀逸で、板付きの瀬奈じゅんが「振り返るだけで格好良い」というトップオーラ発揮でスタート。燕尾服の男役と、ふんわりカラーの娘役たちによる、ザ・タカラヅカな世界。「花咲く港」なんてどこ吹く風、思いっきりフランスの香りが漂います。九州→パリに変更されているのに伴い、船→エッフェル塔、かもめ館→ホテル・ド・サンミッシェルなどなど、もはや〜菊田一夫作「花咲く港」より〜という断り書きはいらないのでは?までの改編。役の数が少ないこと、シンプルな台本で、スターの魅力で役を膨らませる必要があること、「こんなのありえない〜っ!」な突っ込み満載な「妄想上のフランス」が登場すること、(トップも含めて)娘役の扱いが軽いことなどなど。でも、ほのぼのとした空気といい、作品全体に流れるテンポといい、最近の宝塚には珍しいホンワカ空気が魅力的でした。原作も古ければ、演出家も古いので、70〜80年代の宝塚歌劇みたい。作品としては悪くないんです。演出も宝塚の王道とでもいいましょうか、場面転換は鮮やかだし、(個人的には嫌いですけど)求める以上の情報を延々と台詞で説明してくれるし)、芝居の合間に若手による歌やダンスが挟まれているし、気楽に楽しめます。で、こうなると浮かび上がるのが世代感覚。今回より月組組長に就任の出雲綾は星組出身だけあって、大芝居はお任せあれの、堂々たる女主人っぷり。彼女の踏ん張りでお芝居は何とかまとまっていたと言えるでしょう。瀬奈じゅん、霧矢大夢、大空祐飛の男役トリオはそれぞれ頑張ってはいましたが、作品に流れるテンポと彼女たちの芸風のテンポの違いが埋められず、間が持ちこたえられないまま幕となってしまいました。オモロイ台詞が結構あるのですが、どれもこれもサラリと流されてしまい、笑いにつながらないのが勿体ないです。ツレちゃんのように(せめて紫苑ゆうのように)、台詞の間の眼力や表情でも客席を沸かせる位でないと、古い作品を持ちこたえるのは難しいですね。初日とはいえ、既に大劇場公演が終了してからの公演にもかかわらず、三人がいっぱいいっぱいで余裕がないため「誰が主役?」状態なのは否めません。コメディが苦手なのかなぁ。音楽担当の吉田優子も、そつなくまとまってはいましたが、コレぞという曲はなく、主題歌も耳に残るほどではないのが惜しい。若手スターたちも、時間と空間を持て余している、そんな印象を受けます。OG公演での上演の方がふさわしい作品だったのではないでしょうか。現代の環境で上演するには難しい作品ですが、爽やかな優しい舞台です。
 打って変わって「ファンシー・ダンス」は月組の面々が伸びやかに踊りまくる素敵なショーでした。といっても、こちらも作品の作りがひと昔前のもので、トップスターが出ずっぱりではなく、職人ダンサーや下級生にまで見どころをあたえ、要のシーンでトップが登場という美味しいもの。芝居では手も足もでなかった男役トリオが大活躍でした。全員がやたらと踊りまくるショーではあるのですが、場面ごとにメリハリがついていて、力で押した次にはシックでアダルトな場面になるなど、変化あるダンスの数々に、あっという間に時間がたちました。この作りはかなり僕好みです。トップの瀬奈じゅんは決して歌が得意というスターではないのですが、最近の宝塚では珍しく「太い声でお腹から声を出す」タイプなので、場面のクライマックスで彼女が吼えるように歌うのがいかにも主演という感じで、場面が引き締まります。レビュースターのあるべき姿といえましょう。霧矢大夢は病気休演以来、ここまで踊ったのは初めてかもしれません。下級生をひっぱって、舞台の真ん中で先頭を切って踊りまくっていました。彼女の全力投球の踊りっぷりは実に爽やか。そして、大空祐飛も、押し出しがかなり強くなり、正直言いまして歌もダンスもアレアレなのですが、下級生にしんどいパートは任せ、自身は貫禄で押し切るという、これまたスター技で勝負。おまけに、組長自らバリバリ踊るわ歌っちゃうわだし、新参入の遼河はるひが長身を生かした&野郎っぽさで月組に新たな風を吹かしちゃうし、桐生園加は宝塚きってのダンサーぶりを発揮。場面によってはトップさん以上に目立ってしまうという美味しい箇所もあったりして、それぞれが全力投球。全員が力を出し切ることによって、作品が引き締まり、トップさんも安心して自分の得意分野に集中できるという好循環。こちらは70年代〜80年代のショーに、高いダンス技術とスピードが加わって、素敵に生まれ変わった印象。娘役トップの綾乃かなみも、今まではシンガーとしての扱いが多かったけれど、彼女の歌声はショーよりも芝居向きの柔らかいものなので、今回のように踊りまくりの方が僕は好きです。二番手娘役の城咲あいとのカラーの違いを生かして、これまた変化に富んだダンスの連続。ポスター、古臭いデザインの現行のものよりも、ショーを主体としたスタイリッシュなものにしたら、もっとチケット売れたかもなぁ、なんて思ってます。


2007年02月18日(日)15:00-途中退席
新国小劇場オペラ「オベール:フラ・ディアヴォロ」@新国立劇場小劇場

 全席指定 4725円(会員割引) 1階-D4列-14番 (パンフレット:無料)

 指揮:城谷正博
 演出:田尾下哲
 管弦楽:新国立小劇場オペラ・アンサンブル

 フラ・ディアボロ:永澤三郎
 コックバーン卿:小林由樹
 パメラ:山崎知子
 ロレンツォ:水船桂太郎
 マッテオ:松本進
 ツェルリーナ:山本真由美
 ベッポ:加茂下稔
 ジャコモ:大久保眞
 ドロンヌ:木村真樹

 新国の小劇場オペラも今回が最終回だそうです。大劇場では上演が難しそうなマイナーな作品、メジャーな作品が室内楽版で登場したり、小劇場の舞台機構を駆使してプロセニアムを取っ払ったオープンスペースでの演出、何よりも新人歌手や演出家の登竜門として、数々の舞台を楽しませていただきました。実は、このシリーズ「上演すればするほど赤字になる」という、民間ではありえない、新国立劇場ならではの企画でした。はなから「黒字を出せ」というプレッシャーがないせいか、かなり演出家が自由に遊んでいるのが印象的なシリーズ。今後も是非続けていただきたいだけに残念です。
 最後の作品として登場したのは「フラ・ディアボロ」というおかしな響きの作品。昨日の宝塚が日本→外国に書き換えた演出だったのに対し、今回のオペラは外国→日本に書き換えた演出。ここで明暗がハッキリ分かれてしまいました。個人的にはオペラ歌手に対して、芝居的要求が高すぎた舞台と思っています。演出は映像を多用していますし、舞台装置も二階建てなだけでなく、一階の一部はリフトに乗った装置が出し入れされるなど、なかなかの出来。日本語上演なのですから、いっその事、役名も日本語にしちゃった方が良かったかも。
 でも、役者が演出についていけなかった! いっぱいいっぱいの芝居は見ているコチラが辛くなってしまいます。今回の座組みで、主役と脇役があいまいな演出は酷というものです。演出家の独りよがりさが鼻につき、役者への愛情が感じられない舞台に辟易し、一幕終了とともにギブアップ。こんな舞台こそ、バウ・ホール公演として登場したら面白いと思うんですよ。役は多いし、結構遊べるし、アンサンブルとしての見せ場もあるでしょ。見どころが多くて「どこを見たら良いかわからない〜」というものは大歓迎ですが、見るべき部分も曖昧で「どこを見たら良いかわからない〜」という作品は勘弁してください。スミマセン。
 とはいえ、やる気はあれども、技を磨く機会の少ないオペラ歌手の面々にとって、これほどシンドイ舞台というのは、本人たちにとっては嬉しい経験でしょうね。役に見合った人物に見えない、という結果ではありましたが、「自分にあったキャラクターの役」よりも「キャラクターに合わせなければならない自分」がほとんどのオペラ界に一石を投じる公演だったと思います。これといったアリアもないこの作品、よくぞ見つけてきた&上演したもんです。個人的にはパスな公演でしたが、こんな公演を打っちゃう新国立劇場って好きですねぇ。


2007年02月20日(火)19:00-21:05
JTアートホール室内楽シリーズ「JTアートホール・チェロ・アンサンブル 〜チェリストによる作品を集めて〜」@JTアートホール

 全席指定 3000円 2列-13番 (パンフレット:無料)

 チェロ:菊地知也、桑田歩、田中雅弘、銅銀久弥、長谷部一郎、藤森亮一、古川展生、向山佳絵子、山内俊輔、山本裕康、山本祐ノ介、渡辺辰紀

 ポッパー:マーチのテンポで Op.16a
 クレンゲル:即興曲 Op.30
 カザルス:東方の三賢人
 カザルス:サルダーナ
 ソッリマ:ヴィオロンセル・ヴィブレ!!〜2本のチェロと減額のためのバラード〜
(休憩)
 オッフェンバック:ボレロ
 山本裕康:スケルツォとカーニバル
 カサド:トッカータ
 ダヴィドフ:讃歌
 フィッツェンハーゲン:協奏的ワルツ Op.31
(アンコール)
 トーマス=ミフネ:クロマティック・シンコペーションズ

 安心と信頼のブランド。ハズレなしがほぼ確約されたのぼぉちゃん出演のJTアートホール公演。JTの12人のチェロ・アンサンブルのコンサートも今回で10回を迎えるそうです。パチパチ。よくもまぁ、チェロ・アンサンブルのための曲をこれだけ見つけてくる&編曲するもんだと、スタッフの皆さんにまずは感謝。そして、毎回、毎回、素敵な演奏を繰り広げてくれるチェリストの面々にまた感謝。JTは音響が抜群に良いので、12人のチェロが一斉に演奏しても、音がこもらずにクリアな響きになるのが魅力で、実力者揃いのチェリストが、曲によりとっかえひっかえパートを入れ替わり、編成を変えて登場するのに、毎回ワクワクしてしまいます。今回は途中から「のぼぉちゃんはどこに座るか?」クイズになってしまい、「この曲はお休み!」と予測した曲はトップで登場だったり、「この曲はのぼぉちゃんの得意分野でしょう」という曲に限ってお休みだったり。はて、ツーカーの仲ももはやこれまでかぁ(汗) あげくの果てには「最後は田中さんに花を持たせて、左から二番目!」とみんなで納得してたのに、トリでトップの席についたのは向山佳絵子。はい、一番の花形を忘れてました〜。
 それにしても、低音の迫力と、まるでヴァイオリンかのようなクリアで繊細な高音が同居しているのですから、チェロって楽器は面白いですね。そして、どの音域もごく自然に弾き切ってしまう面々の腕達者なこと! 和音使いといい、ソロの割りふりといい、実に見事な曲が並ぶので、観客としては飽きることもなく、あっという間の二時間だったのですが、全員チェロとはいえ、これだけパートが細分化されていると、個人練習の段階では、さぞや何を弾いているのかわからない状態でしょう。でも、いざ本番となると、互いにコンタクトを取り合い、目だってみたり引いてみたり、そのやり取りが実にお見事。時折「やったね!」と微笑み合うのが幸せ気分を盛り上げます。
 JT公演は、客層も「耳が肥えてそう」な方々が多く、今日もガサガサしたり、咳き込んだりなんて皆無。拍手だって、余韻を実に大切にして、しばしシーンと静寂を楽しんでからだったり、会場の一体感にも酔いしれることができました。それでいて、堅苦しいこともなく、和やかムード。向山佳絵子も、トークはまるで自宅にリビングにお客を招くかのようなリラックスぶり。曲の合間には一言二言出演者同士で声の掛け合いがあって、みなさん伸び伸び。それでいて、演奏は難しそうなパッセージも「スゴイでしょ」という表情を浮かべつつ、ピタリと揃うのですから、プロってスゴイ〜とこれまた嬉しくなってしまいました。チェロ・アンサンブルに限らず、JTによって室内楽の楽しさを教わっている気がします。サントリーホールといい、JTアートホールといい本気モードだけれど肩の力の抜けた企画って、音楽と愛情に満ちていて、その場に居合わせる幸せを噛み締めて帰路につきました。


2007年02月20日(火)14:00-15:50
フジテレビジョン「BKLYN〜ブルックリン〜」@東京芸術劇場中ホール

 A席 8500円 2階-D列-33番 (パンフレット:1500円)

 演出:菅野こうめい

 ブルックリン:伴都美子
 パラダイス:マルシア
 テイラー:石井一孝
 フェイス:シルビア・グラブ
 ストリートシンガー:今井清隆

 お正月の「Thank You Broadway」で石井一孝が歌った「Sometime」がとっても良かったので、急遽観る事にした作品です。客電が明るいうちに舞台上に男性役者が登場。石井一孝でも今井清隆でもないなぁ、とオペラグラスを覗き込めば、
ハツの父ちゃん(=KAZZ)でした。で、バンドメンバーと一緒に演奏スペースに入っちゃうの。何だろうと終演後パンフを確認してみたら、Backing Vocals:KAZZ、尾藤桃子(イサオ氏のお嬢さん)となってました。なるほど。
 この作品、ミュージカルというよりも、ライブハウスでのパフォーマンスを観ているようで、とっても面白い作りでした。浮浪者たち(ど根性ズというネーミング)が繰り広げる劇中劇という設定なので、大掛かりな道具類は登場せず、道具も衣装もゴミからのリサイクル。ちょっと「Cats」を彷彿とさせるものがあります。テープ(紐?)を天井からぶらさげたシルエットのエッフェル塔、「エンジェルス・イン・アメリカ」に登場しそうな天使の輪は何と丸型蛍光灯を代用しているし、その外、ペットボトルのマイク、工事現場の△コーンのメガホン、大工道具によるサックスなどなど、なんだか子供のころのお遊びを思い出してしまいます。そして、衣装だってリサイクルで、一見小林幸子なみにゴージャスなのですが、オペラグラスで良く見ると、ペットボトルやゴミ袋、スナック菓子の空き袋をつなげて作ったドレスに、テーププレゼント包装用リボンのように束ねた髪飾りなど、アイデア満載。キャストの面々が見事に着こなしているので、とってもお洒落に見えるのですが、良く観察すると、とんでもない素材なのが面白くて、「芸劇なのに12倍のオペラグラス持って来ちゃって失敗」と反省していたはずが「この倍率のオペラグラスを用意して正解!」と。
 よくぞまぁコレだけのメンバーを集めたもんだというキャストは大活躍。表記メンバー以外にアンサンブルなんて登場しやしません。主要の役以外にもいくつもの脇役を演じなくてはならない、という「レミゼ」も真っ青な演出。衣装の早替わりに装置転換、声の出演に他キャストの早替わりの手伝いなどなど、暗転と同時に走り回ってます。舞台の上で役者同士ぶつからないかと心配になってしまう程。そして、どの役もちゃんと別人として存在しているのはベテランならでは。たった五人のミュージカルにもかかわらず、もっと大勢のキャストが関わっていたように見えます。普段、舞台の真ん中でデーンと君臨している面々なだけに、とっても新鮮な構図。
 そして、期待の歌やパフォーマンスはさすがです。すごかった〜。マルシアの「私がスターよ」というゴージャスぶり、突き抜けるような高音のシャウト、ビッチな役作り、、、個人的に彼女のベスト・ステージだと思います。突っ張ってる中に寂しさや弱さをホロリと見せることに関しては、メチャクチャ上手いですよねぇ、マルシア。石井一孝は元々「歌の人」という扱いでしたが、勢いで歌うのを卒業し、味わいある歌唱になっていてビックリ。元々突き刺さるような声が通る人でしたが、心に染みるわぁの味わい。伴都美子のパパ役としては若いような気もするけれど、劇中劇だから良いか。まだ若者役も出来るし、中年役もこなすし、今とっても良い状態なんでしょうね。彼でロジャー(RENT)ってのも面白そう。次回のRENTは東宝公演だから実現するかも!? もう一人のバルジャン=今井清隆は相変わらず包み込むような美声。彼の歌声大好きなんです。暖かくて力強くて、ちょっと不器用で。体格と声質から哀愁ある役が振られることが多いけれど、プレスリーのようなフサのついた衣装と大きな帽子をかぶって、お茶目に舞台をチョコマカするなどまだまだ動けるんですから大したもんです。ストリート・ミュージシャンがいることによって、ブルックリンがホッとするのだけれど、今井清隆が一緒だから伴都美子もノビノビ演じられる……そんな気分にもなってくるような大きさがあります。シルビアも多彩な声で役を演じわけ、失礼ながら「こんなに踊れる人だったんだ!」と感嘆するようなダンスを披露し、さすがの座組みっぷり。
 と、全体的にとってもステキな公演だったのですが、一つだけ難点を挙げるとすると、会場が広すぎました。芸劇中ホールよりも芸劇小ホール、どこかのライブハウスなどで小ぢんまりと上演する方がふさわしい気がします。そもそも、路上でのパフォーマンスなわけですから、美術の工夫も衣装も、遠目で眺めるよりも、近くでジックリ見た方がふさわしいわけですし(実際、オペラグラスがないと、今回の演出の面白味は半減)、もっと舞台と一緒になってワイワイ応援したかったなぁ、と。もちろん、そうなったら、今回のような豪華キャストは望めなくなりますけど。あ、それ以前に、今日のキャストだと、芸劇よりも小さい小屋の場合、あまりの音圧で劇場が壊れちゃうか(笑)