観劇日記〜2007年04月〜
01日(日) 12:00 慶應義塾ワグネル・ソサエティ・オーケストラ
「2007 オープンハウス サントリーホールで遊ぼう!
オーケストラ・コンサート」
サントリーホール
01日(日) 12:00 宝塚歌劇団宙組「A/L 〜怪盗ルパンの青春〜」初日 日本青年館
07日(土) 11:00 宝塚歌劇団OG「心中・恋の大和路」 東京芸術劇場中ホール
08日(日) 16:00 竜小太郎四月浅草特別公演
「緋牡丹慕情 浅草版」「豪華絢爛 竜小太郎の世界」
浅草大勝館
09日(月) 18:30 東京バレエ団「白鳥の湖」初日 東京文化会館
10日(火) 18:30 宝塚歌劇団花組「明智小五郎の事件簿―黒蜥蜴」「TUXEDO JAZZ」 東京宝塚劇場
11日(水) 18:30 東京バレエ団「白鳥の湖」千秋楽 東京文化会館
14日(土) 15:00 東京バレエ団「ドン・キホーテ」 東京文化会館
15日(日) 14:00 新国立劇場「プッチーニ:西部の娘」プルミエ 新国立劇場オペラ劇場
20日(金) 19:00 古川展生、菊池洋子「Beautiful Classic Concert」 東京文化会館小ホール
21日(土) 12:30 フジテレビ「モダン・ミリー」 新国立劇場中劇場
22日(日) 12:00 来日カンパニー「エリザベート」ウィーン・オリジナル・バージョン 梅田芸術劇場メインホール
22日(日) 16:30 NewOSK日本歌劇団「春のおどり」 大阪松竹座
25日(水) 18:00 宝塚歌劇団宙組「NEVER SLEEP」 日本青年館
26日(木) 13:00 来日カンパニー「エリザベート」ウィーン・オリジナル・バージョン 梅田芸術劇場メインホール
27日(金) 19:00 東京藝術大学学生オーケストラ演奏会I「グリーグ&シベリウス・プロジェクト 第1回」 東京藝術大学奏楽堂
28日(土) 17:30 昭和音楽大学「ドニゼッティ:愛の妙薬」 テアトロ ジーリオ ショウワ


2007年04月01日(日)12:00-12:50
慶應義塾ワグネル・ソサエティ・オーケストラ
「2007 オープンハウス
サントリーホールで遊ぼう!
オーケストラ・コンサート」@サントリーホール

 全席自由 無料 2階-P7列-6番 (パンフレット:無料)
 指揮:大河内雅彦

 シュトラウスII:オペレッタ「こうもり」序曲
 チャイコフスキー:弦楽のためのセレナード ハ長調 OP.48から第2楽章「ワルツ」
 ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
(アンコール?)
 ベートーヴェン:交響曲第7番から第1楽章のさわり

 舞台のセッティングからリハーサルを経て、最後にコンサートという、一連の流れを見せるという面白い趣向なのですが、僕は時間の関係で最後のコンサートのみ。入退場自由だし無料だし、何よりも子連れが多いので、空席を求めて、客席を大勢の人がウロウロしている中の演奏は、当初「気の毒〜」と思っていました。が、ワグネルの名演に程なくして、会場は静まりかえりました。こんな時、音楽の持つ力の素晴らしさに嬉しくなっちゃいます。今年は何かと「のだめ現象」が話題になりますが、学生オケ=のだめオケみたいな追い風がありますね。出演者はノビノビ演奏しているし、観客もオケを気楽に楽しんでいるんです。約30分とコンサートにしてはとても短いけれど、小さな子のコンサート入門としては素晴らしい企画だと思いませんか? クラシックコンサートにご縁のない人に擦り寄るのではなく、引き込むという作業。もっと気軽なポップスナンバーを演奏するのかと思っていたら、オケの魅力を最大限に発揮する選曲に、彼らの「本気」を感じませんか? 大学オケなので、外部生もいるはずですが、慶應はねぇ、中等部の段階からオケのレベル高いですものねぇ。やはり、ヴァイオリンは小さいころから触っている人たちは違います。音色の豊かさや音量の幅、何よりも舞台上で「自信」に満ちているんですもの。
 で、メイン・プログラムも素晴らしかったのですが、アンコール(?)が圧巻でした。いきなり大河内さんが「指揮してみたい人〜?」と呼びかけた途端、会場中が大興奮。「ハイッ!!」の絶叫。手を振る位じゃ全然目立たず、ジャンプしちゃう人、舞台に駆け寄る人、持ってるもの振り回しちゃう人、などなど。いつから日本人はこんなに積極的になったんでしょう? で、適当に選ばれた六人が指揮をすることに。で「のだめ」のテーマ曲として知名度はあがったものの、シロウトにこの曲を振らせるのぉ、な「ベト7」。まずはお手本ということで、大河内さんが振ったら「こんなのできんのかよぉ」の声が会場の中を駆け巡ること駆け巡ること。今日のお客さんは感情が外向的でオモロイなぁ。で、トップバッターはなんと小学一年生の男の子。途中、大河内さんのフォローが入ったものの、ちゃんと振り切ったもんだから、会場のボルテージが上がります! その次に登場した女の子は「クラシックコンサートは来たことがない」というツワモノ。その外、指揮棒よりも膝の方が揺れてる子あり、振っているうちにテンポがどんどん遅くなる人ありで、なかなか個性豊か。もうこの段階で客席は楽しみまくっているのですが、どうみても指揮なんてできなさそうなオトウチャンが、いざ指揮させてみたら、千秋真一が乗り移ったかのような大きな動きとアクションで大名演。会場は興奮のルツボ。感想を聞かれて「オーケストラの指揮をするのが夢でした」と。この一言になぜか泣けた! 夢を現実にさせてくれたサントリーホールに大拍手。トリは佐渡っちのような派手なアクションの男の子。大河内さんにカメラマンをお願いしちゃうし、演奏後は勝手にオケを起立させ、コンミスと握手までしちゃう大暴走に大笑い。これはこれで面白かったけれど、オトウチャンの深みには歯が立ちません。適当に選んだとは思えない素晴らしい人選でした。それにしても、どんな指揮にもきっちりついていくワグネルにも「すごいオケだねぇ」と大拍手が送られました。指揮者によって全然違う曲になるというのを、見事に示してくれましたし。


2007年04月01日(日)15:00-17:55
宝塚歌劇団宙組「A/L 〜怪盗ルパンの青春〜」初日@日本青年館

 A席 7000円 1階-R列-32番 (パンフレット:600円)
 演出:大野拓史

 A/L(アール) / ラウル・バラン:大和悠河
 アニエス・ド・スーピーズ:陽月華
 アンリエット:光あけみ(専科)
 ドクトル・ゴッズ:寿つかさ
 伯爵夫人:鈴奈 沙也
 ガニマール刑事:初嶺麿代
 ヴィクトワール・ル・ブラン:美風舞良
 ルイ・アントワーヌ・レオン:悠未ひろ
 スーピーズ伯爵:夏大海
 シャーロック・ホームズ:北翔海莉
 ローアン枢機卿:十輝いりす
 アンリエット(過去):鮎瀬美都
 エヴァ・ローレン:和音美桜
 ドニス・カンデラ:早霧せいな
 ミミ・ガーター:華凜もゆる
 ラウル(少年):美牧冴京
 ジョー・ワトソン:春風弥里
 ミレディ・サンクレール:花露すみか
 バジル・モルガン:麻音颯斗
 ペリーヌ・フルー:妃宮さくら
 ジャコ刑事:七海ひろき
 ピエール・カルバン:雅桜歌
 ジニー・パパン:萌野りりあ
 コレット・プティ:琴羽桜子
 アニエス(幼少):千鈴まゆ
 ジル・イスマエル:颯舞音桜
 ジゼル・ミクー:百千糸

 大和悠河&陽月華の新トップコンビのプレ・お披露目公演です。二人揃ってスタイル抜群、技術よりも勢い優先で突っ走る、アイドル・タイプとあって、大地真央&黒木瞳時代の月組を彷彿とさせられました。とにかく舞台がキラキラしているのが魅力。トップお披露目公演というよりは、研5あたりのバウ初主演公演のような作品ではありますが、主役が格好良く見えてナンボなのが宝塚歌劇。これはこれで納得です。深みだとか技術云々について口を挟ませない勢いがあります。はて、このタイプのスターって久しぶりじゃないですか?
 実は観劇前はかなり心配していた公演でした。何って歌が。でも、幕開きの歌がいきなり良いんです。上手いっ、元気があるっ、耳に心地良い! さっすが座付きスタッフ、トップさんを格好良く見せる術を心得ています。何しろ、音域が異常に狭いトップさん用の曲が、ほとんど5〜6音で作られているんです。それも、大和悠河の出しやすいラシドレミあたりを行ったり来たり。ナンバー全域でも1オクターブ位しか使われてないはず(ちなみに、エリザの「私だけに」は2オクターブ以上使います)。メロディラインも、仮面ライダーやガッチャマンの主題歌のようなノリの良さで、半音や装飾音、臨時記号は極力使われておりません。その代わり、フランス的な音階や、凝ったリズムの曲は北翔海莉がカヴァー。こ出演者の使い分けが見事。歌姫・和音美桜も適度に歌うけれど、トップ以上に目立つことのないよう「パリッ、パリッ♪」と軽い曲。よって、歌唱力に問題はあるものの、声量なら任せておけの大和悠河が映えること映えること。座付きスタッフによるオリジナル作品は、生徒のためだけでなく、観客にも良いですねぇ。
 大和悠河もバックアップに応えてます。お披露目公演ならではの華やかさや初々しさはあるけれど、スター街道まっしぐらの人なので、ある意味余裕もあるわけでして、観客サービスが素晴らしいです。最近のスターさんは、観客とは一線を引く人が多いけれど、彼女の場合はきざって足を組むのだって、客席の拍手に応えて、だんだん派手になるし、流し目あり、ウィンクありの大サービス。何をやっても大和悠河ととらえるか、ツレちゃんタイプのスターをとらえるかは観る人の好み次第ですが、少なくとも、座長はこうでなくっちゃのお手本ではあります。
 陽月華は星→宙に組替えになって、いきなりトップダンサー。男役のサポートなくても踊れちゃう人なので、デュエットダンスの色気はなかったけれど、男役以上にキレ良く動きも大きなダンスに思わず釘付け。ラブシーンだって、男役にリードされる前に自分から「キスして」と迫るという台本でしたが、大和優雅との兄妹のようなサバサバ感。新しいタイプのコンビとして、今後に期待が持てそう。
 独裁者政治だった和央時代、いきなりのペレストロイカで混乱をきたしていた貴城時代を経て、宙組もついにコマーシャル社会に突入。人間大道具たちだった下級生たちが自己アピールを始めたら、にぎやかなコミック・ワールドになろうとは! もしかしたらブレイクするかも、この組。おもちゃ箱をひっくり返したみたいでオモロイです。でも……とっても疲れますよぉ。妙にテンション高いからwww


2007年04月07日(土)11:00-13:45
宝塚歌劇団OG「心中・恋の大和路」@東京芸術劇場中ホール

 A席 6000円 2階-E列-24番 (パンフレット:1000円)
 演出:菅沼潤、谷正純

 忠兵衛:瀬戸内美八
 梅川:南風まい
 八右衛門:峰さを理
 かもん:若葉ひろみ
 与平:あづみれいか
 妙閑:鈴鹿照(宝塚歌劇団)
 孫右衛門:大路三千緒
 お清:藤京子(宝塚歌劇団)
 藤屋:未央一
 丸十:真山葉瑠
 伊兵衛/忠三郎:加茂千条

 歌舞伎でもお馴染みの「冥途の飛脚」のミュージカル版です。とはいうものの、ミュージカルナンバーはさほど多くありません。が、一つ一つの場面を実に丁寧に描いた名作だと思います。歌舞伎も人気作品の一つですが、ミュージカル版もなかなか素晴らしい出来です。一幕目では、忠兵衛が封印切りという大罪を犯すにいたる彼の心理状態、彼を心配し軌道修正させようと心を砕く八右衛門、忠兵衛との将来を夢見る遊女・梅川のそれぞれの思いが交錯する面白さ。ちょっとした行き違いでそれらの思いがすれ違ってしまう歯がゆさ。初演時よりコンビ(と呼んで良いと思う)を組んでいる、忠兵衛:瀬戸内美八と八右衛門:峰さを理のがっちり組んだ芝居は絶品です。間や余韻を大切にした台詞回しや芝居の動きがお見事。そして、今回が梅川デビューとなる南風まいですが、元・峰さを理の相手役で、ルミさんとの共演も多いので息ピッタリ。現役時代はチャキチャキした娘役でしたが、瞳に涙を溜めた、潤いのある表情が実にたおやか。華やかな風貌と、内に秘めたる想いとのバランスが絶妙。そして、前回は梅川役だった若葉ひろみが今回はかもん役に回ったのですが、幸せをつかむために、したたかに生きるかもんの強さが出たのは彼女ならでは。かもんが身請けされる際、梅川と一緒に踊り倒す場面では、星組トップ娘役vs花組トップ娘役の華やかさ比べであでやかでした。脇は「全員が専科生」で固められているので、年齢が良い意味で浮き出てきて、寄り合いの会合など、重みがありました。OG公演ならではです。洋モノ作品だと実年齢が出てしまいますが、和モノ作品は見た目は衣装とメイクで不詳になり、代わりに芸力が浮き出る気がします。
 と、話がそれてしまいましたが、二幕目は畳み掛けるように観客泣かせのシーンが続きます。幸せに身請けされるかもんと、まやかしの身請けで幸せから絶望に突き落とされる梅川との対比。梅川に真実を伝える忠兵衛の心意気と胸が裂けるようなつらさ。逃亡者として現れたため、実の息子に声をかけてやれない、そして梅川への憎しみと愛情が入り乱れる孫右衛門。忠兵衛に友情を誤解されながらも、寄り合い衆に対立してまで最後まで忠兵衛を応援する八右衛門。雪の中、互いをかばい合いながら、命を失う忠兵衛と梅川(「愛の死」みたいな場面です)。もう、涙が乾く暇もなく、人情に訴えてくるんです。現役時代から芝居巧者として鳴らした瀬戸内美八の口の表情(目の表情ではない)に目は釘付け、もともと与平のナンバーだったけれど、八右衛門として、峰さを理が押さえて押さえて最後に絶唱というマーラーのコーラスのごとき名唱に耳を奪われるクライマックス。宝塚版は生々しくならない分、魂の昇華が視覚として訴えてくるのが強み。会場のあちこちから嗚咽の声が漏れる感動的舞台でした。でも、そろそろルミさんの忠兵衛も観納めかなぁ。


2007年04月08日(日)16:00-19:35
竜小太郎四月浅草特別公演
「緋牡丹慕情 浅草版」「豪華絢爛 竜小太郎の世界」@浅草大勝館

 指定席 4000円 ロ列-2番 (パンフレット:500円)
 演出:中原薫

 矢野竜子:竜小太郎(竜小太郎)
 舎弟 石丸:加東岳史(高橋光宏)
 乾分 河豚勘:藤田信宏(山下禎啓)
 温泉宿の女中:飯田碧(佐藤美佐子)
 猪熊虎吉:長門勇(長門勇)
 妹 花:京町歌耶(吉野悦世)
 金津新蔵:高野晃大(高野晃大)
 鏑木剛蔵:石橋雅史(石橋雅史)
 客分 蛇常:朝倉一(西田良)
 芸者 梅香:佐藤美佐子(藤川恵梨)
 藤原りき:弓恵子(三浦布美子)
  ※( )は2006年三越劇場公演

 芝居と早替わりショー、そしてフィナーレの三部構成。半年前の三越劇場公演と同じ演目ですが、多くの役者が入れ替わり、全体的に若返った印象。正直、三越劇場の時の方が装置など立派でしたが、なぜか大勝館だとそんなことは気になりません。阿国じゃないけれど「ちっちゃいこと、ちっちゃいこと気にしない♪」の気分です。竜小太郎は既にこの役が手の内になっていて、実に自然なたたずまい。実は、彼のみ女形で、他の役は役に合わせた性別の俳優が演じているんです。それなのに、違和感がないというのも凄いことです。ここ数年で、彼の顔つきもかなり変化して、やわらかな顔から、ちょいキツメの顔になっていて、通常の女性よりも、変化の幅が大きいみたい。数年後にはさらにどんな顔になっているんでしょうね。ある意味、座長としての貫禄と余裕が身に付いた表情とも言えるのではないでしょうか。ちょっと前までは登場と同時に「俺が座長だぁ!」とエネルギー全開で勢いある舞台姿だったのですが、落ち着きが出てきたように見受けられます。ま、これは体型の変化も影響しているのかもしれません。正直……太りすぎ。身長が低い人なので、ウエストなし&二重あごだと、いっきにおばちゃんの雰囲気に。おまけに、今回はアンサンブルに長身スリムなダンサーが加わっているため、美貌の衰えが目立ってしまった模様。元々洋舞の場面では、ドレスが似合わない体型なのにオッパイミサイル付きのようなケッタイなドレスを着てドタバタしているのは観ていてツライものが(ドキドキ)。何度も登場するということは、ご本人はやりたい衣装なのでしょうね。でも、でも、キツイわぁ。。。桃太郎侍みたいな場面はそのふっくらお顔が舞台で映えるんですけどね。求められる体型も顔も極端に違う和洋モノ。その両方を早替わりの中で演じちゃうのもスゴイことですけど。
 ショーの構成は相変わらずです。「千の風になって」や「ワンナイト・オンリー」など話題の曲の場面もありますが、定番シーンはほとんど入っていて、安心してみていられます。が、今回はリピーターがズラリのファンクラブ席だったので、ホントは舞台と振るタイミングが違って大笑いになるハンカチのシーンなど、指導なくても舞台とピッタリ。客席降りの際も、落ち着いてご祝儀やプレゼントを用意。この団体以外では見たことのない風景です。今回はパンフレットにDVD、Tシャツやハンカチなど、みなさん物凄い勢いで購入されていたのが印象的でした。一人いくら使われているんだろう???
 さて、今回のmy目的女優の佐藤美佐子さんですが、女優の出番の少ない芝居とあって、登場するのはたったの一場面。悪役の悪事ぶりを引き立てるスパイシーな役どころです。実は今回のみさこちゃんはお色気担当です。って「ウッフーン、アッハーン♪」と桃色吐息ではなく、そこはかとなく漂う女の色気って部分。ボーイッシュでノンセックスアピールの女優さんや、ちょいとくだけ過ぎて下品に片足を突っ込んでいる女優さんもいる中、澄まして気障って立っているのですが、時折見せる「行くわよ、フフッ」という微笑みに一本釣りされます。変にクネクネしないので、品を保ったまま色気を出すのに成功しているんです。これ、大事。客サービスは大歓迎だけれど、媚びられても醒めちゃうので、このギリギリの線をキープしている姿は貴重なものがあります。その時の座組みにあわせ、キュートな娘→イイオンナ→品ある女性と自己キャラクターを切り替えてしまうあたり、頭の良い女優さんだなぁ、と感心してしまいます。もっと年を取ったら、藤原りきを彼女で観てみたいもんです。格好良いぞぉ、きっと。


2007年04月09日(月)18:30-21:25
東京バレエ団「白鳥の湖」初日@東京文化会館

 E席 3000円 5階-L2列-27番 (パンフレット:1500円)

 指揮:アレクサンドル・ソトニコフ
 管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

 オデット/オディール:ポリーナ・セミオノワ
 ジークフリート:フリーデマン・フォーゲル
 ロットバルト:木村和夫
 道化:大嶋正樹
 パ・ド・トロワ:小出領子、長谷川智佳子、中島周
 四羽の白鳥:森志織、福田ゆかり、佐伯知香、阪井麻美
 三羽の白鳥:西村真由美、田中結子、奈良春夏
 チャルダッシュ:乾友子、古川和則
 ナポリ:高村順子、大嶋正樹
 マズルカ:坂井直子、田中結子、中島周、横内国弘
 スペイン:井脇幸江、奈良春夏、平野玲、後藤晴雄

 僕が観た「白鳥の湖」の中でも、指折りの素敵なカップルです。170cmのセミオノワ、190cmのフォーゲル。身長が高いだけでなく小顔で手足が長いので、プロポーション抜群。そして美男美女で、バレエだってスーパーテクニシャンときたもんだ。登場しただけで舞台が華やかになるのはスターの証拠。周囲のダンサーが霞んでしまうのもいたしかたありますまい。大きな体を持て余すどころか、しなやかにダイナミックに舞うさまは非常に見ごたえがあります。「芸術作品をみている!」という気持ちになります。バレエ公演においては、音楽がダンサーに合わせてテンポをやたらと動かすのが通例なのですが、セミオノワもフォーゲルも音楽にあわせて、動きやスピードを微調整。よって、どの場面もオケとダンスがピッタリ寄り添っていて、非常に音楽的な上演となりました。第二幕の王子とオデットの出会いのデュエットなんて、感情が実に大胆に表現されていて、思わず鳥肌。そして、オディールの登場する第三幕なんて、鋭い目つきとキレの良い動きを生かした「クール&エレガント」につきます。はっ、これってどこかの某国立オペラ団の2006-2007年シーズンの標語だぁwww とりあえず「僕がダンサーだったら、絶対に共演したくないお二人」と断言しちゃうほど、美しさがダントツ。恥ずかしくて隣りになんて立てない!!
 フォーゲルは、登場した瞬間から金髪サラサラのハンサムな王子様。彼がスゴイのは「王子だから品良く見せよう」というのではなく、逆に「自由を求める王子」といった風情で、品を崩そうとすることに特徴があるように思えます。崩しても醸し出てしまう気品が実に素晴らしい持ち味。群集には威厳を持って、母親にはニコヤカに、そして一人になると仏頂面といった、その瞬間ごとに応じたコロコロかわる表情に彼の芝居心を感じます。ニコニコ→ツーンの切り替えがmyツボでした。踊りも、優雅にジャンプしているのですが、跳躍力が強く、上のフロアから見下ろしていても「高い!」と息を呑むようなハイ・テクニックを披露。リフトは上手というタイプじゃないけれど、安定感があります。そして、第四幕での戦いの踊りは実に力強く「オデットを守る王子様」を完璧に表現。セミオノワだって負けちゃいません。第二幕のゆ〜〜〜っくりでしんどいはずのオデットを「私は重力なんて感じません!」とばかりに優雅にゆったりと超絶技巧を披露。長身のダンサーにもかかわらず、バランス感覚が絶妙で、どんなポーズでもふらつくなんてありません。第三幕のオディールなんて、ニコール・キッドマンばりの顔芸に加え、王子のサポートなしても踊りきってしまいそうな勢いで踊りきり、会場を興奮の坩堝に。いやはや、テクニックと感情を自由自在にブレンドできるダンサーってすごすぎ!!
 実は、この二人と東京バレエ団の相性はあまり良くないです。バレエ界の劇団四季とでも言いましょうか、東京バレエ団は個々のアピールが弱く、表現も内面的なものを得意とする印象のあるバレエ団。「白鳥の湖」においても、第三幕のようなレビュー的シーンも、個々のアピールがないので、公演がだれてしまうのです。(これはコンテンポラリーの時には強みにもなる特徴ですが。。。)。そして、色気や軽やかさよりも、汗と努力が似合うダンサーが揃っているので、どうも王宮物、コスチューム物は納まりが悪いんです。コールドだって、間を詰めての集団演技は素晴らしいけれど、あまりに無機質で、せっかくの白鳥の群舞が美しくないんです。妙にバキバキと直線的ですし。何よりも、衣装と装置がわが目を疑うショボさです。キレイじゃない、豪華じゃない、優雅でないの三拍子揃っていて、とっても安っぽいです。衣装も布地からしてペラペラのプリント物で、重みがなく、色味も微妙。。。照明はボロ隠しなのかやたらと薄暗いですし。。。新国のあまりに輝かしい美術に慣れているせいか、ショックでした〜。官能的なラブシーンを披露したセミオノワ&フォーゲルには新国バレエ団や牧阿佐美バレヱ団に客演して欲しかったです、ええ。


2007年04月10日(火)18:30-21:35
宝塚歌劇団花組「明智小五郎の事件簿―黒蜥蜴」「TUXEDO JAZZ」@東京宝塚劇場

 2階16列席 2500円 2階-16列-66番 (パンフレット:1000円)

 演出:木村信司(黒蜥蜴)/荻田浩一(TUXEDO JAZZ)

 明智小五郎(名探偵):春野寿美礼
 黒トカゲ(銀座のクラブ「黒トカゲ」のマダム緑川、実は…):桜乃彩音
 雨宮潤一(元ボクサー、黒トカゲの知人):真飛聖
 岩瀬(宝石商。早苗の父親):夏美よう
 お重(岩瀬家の使用人):梨花ますみ
 天城刑事(刑事、波越の部下):高翔みず希
 波越警部(警部、明智の友人):壮一帆
 小林少年(明智の助手。少年探偵団):桜一花
 早苗〈実は桜山葉子〉(岩瀬の娘〈早苗の替え玉〉):野々すみ花

 怪盗と盗賊との歪んだ愛の駆け引きだった作品が、戦争孤児の兄妹の話になるとはっ!! これって近親相姦!? スミレコードは大丈夫かぁ!?!? 美輪明宏や麻実れいのような妖艶な黒蜥蜴ではありません。あくまで宝塚オリジナルとして、新鮮な気持ちで観る必要がある舞台です。でもミステリー物ならではの、狭い空間での心理描写が劇場サイズに合わせてかなり拡散してしまいました。ショーアップしていますが、舞台がスカスカ。。。小劇場用の作品を大劇場用にリメイクするのであれば、も少し何かが欲しかった気がします。二階席から見下ろすと、舞台前面のみで進行している平坦な演出というのが見て取れ、余計にわびしさが募ってくるんです。もちろん、回り舞台を利用して、装置がそのまま45度回転するのはなかなかの迫力でしたし「グランドホテル」の椅子がズラリと並ぶとそれはそれで壮観(ついでながら、この椅子はあまりに存在感ありすぎて、使いまわしのしにくい道具だと思う。。。)。でも、推理物なのに、ネタバレというか「それしかありえないだろう!」と謎解きを楽しむ隙もない舞台面は正直かなりキツイです。スターたちの個人芸を楽しむ他ありますまい。(そして、現在の花組には僕が苦手なスターが何人もいたりします・汗)
 トップの春野寿美礼は作品が発表になってからも、黒トカゲを演じるのか、明智小五郎を演じるのかは発表されず、かなりやきもきさせられましたが、今回は明智小五郎役で登場。いきなり「明智小五郎です」と自己紹介して登場した後は、売店の親父や松公の変装があり、本人が楽しそうに演じているのが心地良かったです。キャリアを生かした設定ですし、彼女のファンにとっては「たまらない」のではないでしょうか。個人的には、役になりきるよりも「皆様、ただいまより、春野寿美礼が売店の親父を演じつかまつります」的な独特の台詞回しが好みじゃないので「ふぅーん」と醒めてるんですけどね。ただ、芝居も歌も、四番手時代をピークに(三番手、二番手という時代はなかったけれど)、荒れまくってるのが気になります。声の力も色もある人だと思うのですが、このところコントロールが制御不能になっていて、1フレーズの中での音圧・音質の軸がぐらついてしまい、観客が台詞や歌詞を聞き取る妨げになってしまっているのです。くぐもった声でブツブツする→どなるように大声でがなりたてる、という芝居が彼女の基本形なだけに「盛り上がっているのは本人だけ」という状況。また、同じパターンでの芝居が続くと、せっかくのpp→ffの変化が、成功かはさておいても、効果が薄れてしまうのは確か。クライマックスが観ていてわからない〜。これはショーについても同じで、トップが出ずっぱりの作品で、メリハリがつかずに単調なシーンばかりが続くと「ここが見せ場!」というヤマがわかりにくいんです。これは、演出・振付にも問題があります。ダンサーがユルいダンスを踊ると粋になって「ジャズ!」となるけれど、ダンスが苦手な人が必死でユルさを表現しようとすると、フォームが崩れるだけで見苦しくなります。もちろん、キザるべきシーンでキザれない春野寿美礼の芸風や、張り上げると女の子に戻ってしまう歌唱のクセも影響してますけど。それにしても、芝居でもショーでもスーツとタキシードしか着ないトップさんていかがなものでしょう? 線の細い人なので「トップ!」「座長!!」というよりも「ちょっと店員さん!」となってしまうんですよねぇ。2002年5月の「琥珀色の雨にぬれて」からなので、そろそろ満5年を迎える主演任期ですが…意外と衣装のバリエーションが少ない気がします。
 さて相手役の桜乃彩音ですが、今回は相手役というよりもほとんど主演状態。「ファントム」ではブリッ子にも見える、ベタベタした台詞回しに拒絶反応を起こしてしまいましたが、二番手男役を子分に、男役トップとも対等に張り合う美味しい役が結構お似合いでした。娘役よりも女役が似合うタイプの女優です。もちろん、技術面での問題は山積みですが(ショーになると存在感が半減します)、キリリとした表情は、昔、花組娘役トップだった若葉ひろみの舞台っぷりを彷彿とさせます。彼女のキャラクターだったら、無理してティーンエイジャーの処女としなくても良かったんじゃないかなぁ。トップスターに寄り添うのではなく、自分一人で輝けるタイプとお見受けしました。となると、これまた相手役をさほど必要としていない(というように見える)春野寿美礼にはぴったりの人事状況といえましょう。とはいえ、まだ「小っちゃい事なんか気にしない!」と客席を丸め込む程のスターオーラでないので、冒頭シーンからして、「銀座でバーを営業するなんて。。。パトロンは誰?」とか、「この店では黒服は何をしてるんだ?」と突っ込みどころ満載。
 真飛聖は、華奢な男役が多い花組では線の太さが魅力的でしたし、野々すみ花は今回一番芝居(そしてし甲斐がある)の難しいロールを見事に表現。桜乃彩音とは違うタイプの女優なので、今後の化けっぷりが今から楽しみ。そして、最優秀助演賞を差し上げたくなったのが桜一花。キビキビした動きで少年探偵団をまとめる手腕と、アニメの主人公がそのまま立体になったかのようなコスプレ(とは言わないか。。。)が似合うの何のって! それにしても、宝塚の生徒たちって、子役を演じると不思議と名優続出しますね。ハツラツとしていて、観ていて心地良いです。
今回は江戸川乱歩からも、美輪明宏や麻実れいからも別世界の黒蜥蜴。いっそのこと「外伝」としてもっと自由に飛翔した方が書きやすかったかもしれません。いつの間にやら、政治色の強い作品になってしまいましたねぇ。今回の台本で押し通すならば、シメさん時代の星組で観たかったです。あ、以下、妄想劇場ですけど。
 明智小五郎:シメさん(大人の貫禄)
 黒とかげ:あやちゃん(色っぽいぞぉ)
 雨宮:マリコさん(たくましいでしょ?)
 早苗:おハナちゃん(まだ女帝になってない時代。お嬢様役だし、気も強いし)
 サソリ:タキちゃん(恐そうだぁ。女帝に意見できる唯一のオヒト!?)
あ、でも、ジュンベさんの役がない〜。 少年探偵団か!?


2007年04月11日(水)18:30-21:25
東京バレエ団「白鳥の湖」最終日@東京文化会館

 D席 4000円 4階-R1列-10番 (パンフレット:1500円)

 指揮:アレクサンドル・ソトニコフ
 管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

 オデット/オディール:ポリーナ・セミオノワ
 ジークフリート:フリーデマン・フォーゲル
 ロットバルト:木村和夫
 道化:古川和則
 パ・ド・トロワ:小出領子、長谷川智佳子、中島周
 四羽の白鳥:森志織、福田ゆかり、佐伯知香、阪井麻美
 三羽の白鳥:西村真由美、田中結子、奈良春夏
 チャルダッシュ:乾友子、大嶋正樹
 ナポリ:高村順子、古川和則
 マズルカ:坂井直子、田中結子、中島周、横内国弘
 スペイン:井脇幸江、奈良春夏、平野玲、後藤晴雄

 一昨日の公演の興奮から覚めやらず、最終日の(って、初日・中日・楽日の3公演だけですけど)の公演を当日券で観てきました。やっぱりセミオノワ&フォーゲルが最高。一昨日はLサイドの席からでしたが、今日はRサイドの席からの鑑賞。白鳥たちの出入りは舞台カミテ奥からですし、宮殿内の玉座は舞台カミテ手前、そして、王子が友人たちとたむろするのはなぜか舞台シモテ手前。……ということで、今回のプロダクションに関しては、LサイドよりもRサイドの方が観ていて楽しいです。フォーメーションもちょうど僕の席に向かって組んでくれるので、実に見栄えがよろしゅうございます。
 一昨日はセミオノワとフォーゲルを追うので精一杯でしたが、今日改めて発見したのは「オディールはどの白鳥よりもでかい!」ということ。小さな白鳥はともかくとして、大きな白鳥よりもオディールの方が大柄です。そして、禁欲的な東京バレエ団の中、一人輝かしい舞台姿を披露しているセミオノワは、いわば白鳥たちのお母さんのように見えます。子供たちのために、恐いけれど王子に近づき、それが本気の愛の駆け引きになった……と勝手にアダプトして鑑賞。でも、実際、日本人ダンサーはかなり若く見えるし、セミオノワと子供達、といった見た目になります、ホントに。可憐で壊れそうなオデットではなく、己の輝かしさでロットバルトの支配する闇の世界に光を差し込む、そんなイメージを抱きました。
 オケは一昨日のボロボロ状態よりもかなり滑らかになっていました。やはり、公演も三日目になると違いますね。第二幕の白鳥たちのコールドバレエのシーンでは、踊りに合わせてか(?)かなりのっぺらぼうな表現でしたが、第三幕のクライマックスでようやく感情爆発。このまま調子良く決まるか?と期待してたら、興奮しすぎたようで、第四幕は金管とパーカスが暴走。荒れまくってしまいました。あ〜あ。
 古川和則の道化は猫のようなしなやかさとちょこまかとした動きがキュート。そして、スターダンサーがズラリと揃うスペインでは、勢い良く(でも色気に関しては新国の湯川麻美子ぷりぃず!)華やかに決めていました。そして、湖のシーンでは照明が暗すぎてほとんど見えず、明るい第三幕ではかぶりもののせいで客席に顔をさらせないというソンな役回りのロットバルトですが、終幕で、王子に羽根をもぎ取られてジタバタともがき苦しむさまがリアルで面白かったです。白鳥たちの踊りはテクニックをしっかりと磨かれているのはわかりましたが、それだけ。ハートには響かない白鳥たちだったのが残念。第三幕は衣装の安っぽさが響き、王子の花嫁候補が召使にしか見えず。実はチュチュの張り具合、しなり具合、ドレスの質感や裾の動きなど、衣装のクオリティの低さには同行者ともどもがっかり。王子なんて、森の中で狩りをする時も、花嫁選びのパーティ会場でも同じ服。着たきりスズメです。おまけに、第三幕で、オディールとロットバルトがカミテにはけているにもかかわらず、なぜかシモテ袖に駆け込んでしまうし。振付とは別に演出チェックもきちんとされた方がよろしかと……って、お前はナニモノ!?な感想ですねぇ(汗)


2007年04月14日(土)15:00-17:30
東京バレエ団「ドン・キホーテ」@東京文化会館

 D席 4000円 4階-R1列-10番 (パンフレット:1500円)

 指揮:アレクサンドル・ソトニコフ
 管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

 キトリ:上野水香
 バジル:高岸直樹
 サンチョパンサ:高橋竜太
 ドン・キホーテ:芝岡紀斗
 ガマーシュ:古川和則
 メルセデス:井脇幸江
 エスパーダ:木村和夫
 ロレンツォ:平野玲
 キトリの友人:乾友子、佐伯知香
 若いジプシーの娘:奈良春夏
 ドリアードの女王:西村真由美
 キューピット:高村順子

 オペラと違って、バレエ公演は幕を入れ替えたり、曲が増えたり減ったりなど、テコ入れが大規模に行われます。東京バレエ団の「ドン・キホーテ」はプロローグの段階で賑やかな第一幕の音楽を起用。いきなり、キトリとバジルも登場していてビックリ。この二人の登場する意義はいまいちわからないのですが、芝居部分のカットの多いヴァージョンともあって、ダンス・ダンス・ダンスな構成。 芝居としての余韻よりも、ショーとしてのテンポの良さを重視しているようです。「ドン・キホーテ」はスパニッシュからクラシックまで、バレエ芸術の様々な踊りがたたみかけるように登場するので、僕のお気に入りの作品の一つです。おもちゃ箱をひっくり返したような雑多感が魅力(今年はこれから新国〜スカラ座〜グルジア国立バレエを見歩きます!)。
 先週の「白鳥の湖」に引き続き、東京バレエ団の古典作品となりましたが、一週間に三公演観ていると、さすがにこのカンパニーの特徴にも慣れてきました。情感や余韻を溜めるよりもサラサラと踊り、個々のダンサーが芝居をするよりも無表情に黙々と踊る(特に男性ダンサー)。個人の芸ではなく、役そのものを感じてください、といったところでしょうか。「白鳥の湖」の時はゲスト・ダンサーとのスタイルの違いがかなり気になりましたが、今回はバレエ団メンバーのみによる上演とあって、かなり統一感が取れていたかと思います。
 期待のキトリ:上野水香ですが、スケートにおける浅田真央じゃないけれど、高度なテクニックをいとも簡単に披露。メリハリをきかせてバリバリ踊るのかと思いきや、意外にゆったり、のんびり。バネを効かせてしなるように踊る(よって、1フレーズの中にスピードの差がある)のではなく、ノン・アクセントで均一スピードで動くんですね。切れ良く踊るというタイプではないので、ちと僕好みじゃなかったなぁ。まだ「女性」というよりも「女の子」という風情で、色気や香りのないダンサーなので、非常にピュアな印象を受けました。まだまだ、長い手足を持て余しているように見受けられるので、今後に注目です。大きな目をクリクリさせての表情はとっても愛らしくて華やかです。
 バジル:高岸直樹はすっかりベテラン。力で押し通す若手ダンサーとは貫禄が違います。セーブした中で、ここぞという場面でエネルギー全開。年齢的にこの役もそろそろ踊り納めかもしれません。森下○子のように、いつまでも主役をはるプリマ・バレリーナの相手役ならばともかく、上野水香との並びも、対等なコンビというよりも、未成年者と犯罪者みたい(って書きすぎ・汗) 二人とも若手ならば、勢いと迫力で、二人ともベテランならば、かもし出す情緒で魅せられるのですが、そんな意味でも、この二人は別のパートナーと組んだ方が魅力的なのではないかと思ってます。とはいえ、大型コンビは登場するだけで舞台が華やぎます。
 オケは相変わらずひどいです。「バレエのオケはねぇ。。。」と陰口叩かれるのを鎮火するどころか、火に油を注ぐような演奏。弦はザラザラ、管は不安定、パーカスはやかましい、ハープはブツブツ。おまけに一本調子ときては、怒る気にもなりませぬ。舞台を盛り上げるどころか、途中あちこちで、バレエの舞台を無視して「今の誰?」とオケピを覗き込んでたりします。演奏が盛り上がると、ダンサーもより張り切ると思うんですけど。。。


2007年04月15日(日)14:00-16:45
新国立劇場「プッチーニ:西部の娘」プルミエ@新国立劇場オペラ劇場

 D席 4000円 4階-R1列-10番 (パンフレット:800円)


 C席 6300円 3階-L4列-3番 (パンフレット:800円)
 指揮:ウルフ・シルマー
 演出:アンドレアス・ホモキ
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 ミニー:ステファニー・フリーデ(キャロル・ヴァネスの代役)
 ジャック・ランス:ルチオ・ガッロ
 ディック・ジョンソン:アティッラ・B.キッシュ
 ニック:大野光彦
 アシュビー:長谷川顯
 ソノーラ:泉良平
 鉱夫 トゥリン:秋谷直之
 鉱夫 シッド:清水宏樹
 鉱夫 ベッロ:成田博之
 鉱夫 ハリー:高野二郎
 鉱夫 ジョー:羽山晃生
 鉱夫 ハッピー:大森一英
 鉱夫 ラーケンス:今尾滋
 ビリー・ジャックラビット:片山将司
 ウォークル:三輪陽子
 ジェイク・ウォーレス:米谷毅彦
 ホセ・カストロ:大久保眞
 郵便配達夫:大槻孝志

 プッチーニの隠れた名作、とのうたい文句でしたが「隠さなくてよろしい」素晴らしいプロダクションでした。滅多に上演されない分、カンパニーの面々がみっちり稽古したのが客席にも伝わってきて、初日にしながらも安定した演奏。プッチーニならではの、身悶えするような半音や、時折混ざる不協和音→協和音の響きの変化に気持ち良く身をゆだねてきました。もちろん、滅多に上演されないだけあって、これといって強い印象を残すアリアや、身を乗り出すようなストーリー展開があるわけではなく、お約束の連続ではあるけれど、安心して演奏に集中できるのもまたオツなもの。「蝶々夫人」では日本が、「トゥーランドット」では中国が舞台でしたが、「西部の娘」はアメリカが舞台。元来は西部劇よろしく、アメリカ田舎の酒場が舞台の作品ですが、今回は時代を現代に移し、ローカル色は薄れています。登場人物も多国籍を意識し、インディアンあり、東洋人あり、ヒスパニックありと、民族問題を表面化したのが面白かったです。新国は固定メンバーが短期間に様々な作品のコーラスを努めることもあってか、カンパニーとしてのまとまりが良く、一人一人が自分の役割を楽しんで演じているのが心地良いです。仮装対称の楽屋裏みたいな雑多なエネルギーが強烈でした。それでいて、個人プレーのみに走るのではなく、団結すべき部分では団結してソリストを盛り上げてくれるので、「歌劇団」という感じがして好きですね(歌劇団じゃないけれど)。
 作品の性質もあってか、ミュージカルを見ているよう。そもそも、西部で若い娘が一人で大活躍&よそ者と恋に落ちるという設定は「クレイジー・フォー・ユー」みたいだし、終幕で「ジョンソンを許してやろう」と一人が説得していくと、徐々にその声が高まり、最後は大コーラスに発展する部分は「ミュージカル李香蘭」のクライマックスそのもの。今回の演出家は「フィガロの結婚」の際は、ダンボールだらけでスカスカの舞台に嫌悪感を感じましたが、今回は新国の広い舞台いっぱいにダンボールをいく層にも積み上げ、階段のように使ったり、屋台崩しをしてみたり、ダイナミックで見ごたえがありました。幕が開いた時は「えぇ〜!?」と思ったけれど、結果としてはとっても楽しく、あっという間に終演。あらためて「スケールの大きい演出って好き♪(バブリーな演出はもっと好き♪)」と自分の好みを再認識した次第。
 ソリストも好調。そもそも、チョイ役も含めると、結構な人数のソリストが必要で、もしかしたら、これが原因で上演頻度が低いのかもしれないけれど、その少ない出番の中で「おぉ!」と唸らせる歌を聞かせてくれた人が何人もいたのが嬉しいです。やる気に満ちた舞台って、輝きが断然違いますもの。そんな中、登場するヒロインは、ピンクのつなぎ…というか作業服。唯一のヒロインだというのに、さすがにこれはかわいそうでした。いえね、別にドレスでゴージャスでなくても良いのですが、お尻の大きさや、お腹のポッコリ具合は気の毒。パンツ&ジャケットになった時にはホント安心したもんです。せっかくの新作プロダクションなのですから、出演者が魅力的に見えるようフォローがねぇ。。。男性陣もコットンシャツにジーンズだったりで「稽古着?」ないでたちですが、こちらは太っていても何となくサマになるもんです。ま、そんなルックスの問題も、歌い出せば吹き飛んじゃうものでして、大規模なオケや男性重厚コーラスに負けず、それでいて劇場中に朗々と鳴り響く声の競演に全身鳥肌。ぶらぁぼの嵐です。手を叩きすぎて痛い〜!
 も一つ嬉しかったのが緞帳担当さんのセンス。第一幕は曲の途中で幕が降り始めるのですが、「ジャンッ」と曲が終わるど同時に着地。第二幕では、余韻をもって音楽が終わりそうな中、ワンテンポ遅れて降下開始。消え入るような音と緞帳の降下が見事なリンクで、演奏が終わっても、緞帳が降りきるまで息をつめて客席が静まり返る中に居合わせるのは、幸せそのもの。音に自分が溶けていくような快感でした。演出家の指示にせよ、緞帳係りの職人技にせよ、今まで劇場通いをしている中でも、1,2を争う素晴らしい昇降でした。
 せっかくの東京文化なのに、ザラザラしまくりで、ミスにも開き直りのオケを一週間聞き続けた直後だけに、東フィルの柔らかなサウンドに、思わず涙チョチョ切れ。「そうそう、オケはこんな響きが聞きたかった!」と、改めてハーモニーの美しさに感銘。ヴァイオリンやチェロのソロも実に見事。よだれがジュルッ!!


2007年04月20日(金)19:00-20:55
古川展生、菊池洋子「Beautiful Classic Concert」@東京文化会館小ホール

 全席指定 4500円 L列-13番 (パンフレット:無料)

 古川展生:VC
 菊池洋子:Pf

 ベートーヴェン:モーツァルトの「魔笛」から「恋を知る男たちは」の主題による7つの変奏曲 変ホ長調
 ベートーヴェン:チェロソナタ第3番 イ長調 Op.69
(休憩)
 ラフマニノフ:チェロソナタ ト短調 Op.19
 ピアソラ:ル・グランタンゴ
(アンコール)
 ラフマニノフ:ヴォカリーズ

 「貴方のためにソロ・コンサートやりますっ」と言ってくれたわけじゃないけど(勝手にそう思うのは許されるでしょ!?)のぼぉちゃんが久しぶりにクラシックばかりのリサイタルをやるというので、いそいそと東京文化へ。今回はピアニストが菊池洋子とあって、丁々発止のやりとりになるのではないかと期待に胸が膨らみます。客席に着いてみれば、ピアノの蓋が全開なのにまずビックリ。のぼぉちゃんは音が大きい演奏家ではないので「大丈夫か?」と心配になります。が、菊池洋子はppの名手でした。どんなに小さな音になろうとも、音が細くなることはけっしてなく「こんなに太い音のpって可能なんだ」と目からウロコ。おまけに、音色の種類が実に豊富で、ピアノ一台でまるでオーケストラのような響き。ここ最近の自分の練習放棄(最後にピアノに触ったのはいつだろう……汗)をさておき「早く家に帰ってピアノに触りたい!!」とピアノの虫が騒ぎ出します(蛇足ながら、自己嫌悪に陥ることになるんですが!)。よって、のぼぉちゃんも無理せず朗々と自分の音楽。力みのない暖かい響きに「のぼぉちゃんのこの音が好きなんだよねぇ」とニヤニヤ。コンビとしての妙はまだまだな蒼いカップルですが(菊池洋子がソリスト志向が抜け切らないから!?)、お互いの長所を消しあわない組み合わせでした。
 二人の音楽は、スリムで都会的な音楽が持ち味。骨太なベートーヴェンとの相性はどうよ?な部分もありましたが、ここいらは僕の好みと、聞きなれない響きに戸惑っているだけで、もしかしたらものすごい名演だったのかも!! コッテリ濃厚ではなく、あっさりサラサラ、時折コクを、という演奏は、この二人だけではなく、最近の若手には多いスタイルなので、近い将来、僕好みのタップリ歌う演奏は「古めかしいスタイル」なんて言われるようになるのかもね。
 何年か前に、のぼぉちゃんでラフマニノフを聴いた時は、まだまだ曲の大きさに完敗でしたが、さすがに年季を重ねると彼ならでは作品世界を構築してました。今はまだボージョレ・ヌーヴォーですが、今後、どんな熟成ワインな音楽を聞かせてくれるかと思うと胸ワクワク。今回は破綻はないけれど「チェロ伴奏付きのピアノ・ソナタ」な風情。菊池洋子に貫禄負け。よって、「これからものぼぉちゃんの音楽を追っかけなくっちゃ」と決意を新たに。結局、のぼぉちゃんの変化にリアルタイムで立ち会うという魔力に取り付かれてるから追っかけてるんでしょうねぇ。今の段階でののぼぉちゃんのベストはピアソラ。グラン・タンゴをライヴで聴くのは久しぶり。俺様!のイメージに反して、ピアニストに合わせて変化するのぼぉちゃんの演奏ですが「俺が引っ張らなくっちゃ」という気負いがなく(それを許さない気の強いピアノでした)、互いを信頼してのぶつかり合い。それでいて馴れ合い皆無のドキドキハラハラの演奏。「年に○度の名演奏だ!」というコンサートではないんだけれど「今日、このコンサートを聴かずしてどうするよ?」という美味しいコンサートでした。アンコールも「今日はこう来たか!」の瑞々しさ。


2007年04月21日(土)12:30-15:10
フジテレビ「モダン・ミリー」@新国立劇場中劇場

 S席 9000円 2階-3列-24番 (パンフレット:1800円)

 演出:ジョーイ・マクニーリー

 ミリー・ディルモント:紫吹淳
 ジミー・スミス:川崎真世
 トレバー・グレイドン:岡幸二郎
 ミス・ドロシー・ブラウン:樹里咲穂
 マジー・ヴァン・ホスミア:今陽子
 ミセス・ミアース:前田美波里
 ミス・フラナリー:高谷あゆみ
 チン・ホー:西原純
 バン・フー:青山明

 意外にも、紫吹淳が宝塚退団後にミュージカルの主演を張るのは今回は初めてなんだとか。個人的には「何を今さら」ですけど。退団してから数年たつのと、主役ではないけれど、出演しているミュージカルが結構あるので、安心して観られるかと思っていたのですが……カンパニーの足をひっぱりまくり。大コケです。もっとも、彼女はトップお披露目公演の時も声がでなくなって惨敗状態だったので、もしかしたらプレッシャーに弱いとか!? とにもかくにも、聴いていてつらくなるんです、歌が。元々、歌は苦手としている彼女ですが、音を取るので精一杯のため、感情表現皆無。その音すらちゃんと音にできないのですから。では、芝居が良いかというと、こちらもかなり微妙で、コメディの場面がコメディになってない恨みが残ります。メイクも何を勘違いしたのか、一人だけ宝塚調で、あまりの濃さにおてもやん状態。元来、素顔を女顔でかわいいはずなのに、メイクアップじゃなくて、メイクダウン。彼女のファンでない限り「何でこの人が主演なの?」といぶかること必至。歌と芝居、そしてルックスが微妙な座長だとかなりツライです。とりあえず、相手役の川崎真世も歌がアチャーなので、主演コンビのバランスは身長も含めて取れてるといえば取れてるんですけど。良かったのは脚線美。現役時代から「脱いで〜〜〜」と叫びそうになる、綺麗なおみ足の持ち主ですが、今回のような1920年代の衣装が実に彼女の足にお似合い。それだけに、メイクが〜、メイクが〜〜〜。
 そんな主役を食いまくったのが強力なアンサンブル。岡&樹里コンビは歌えばザ・オペレッタだし(樹里咲穂は非常にクラシカルなメゾ・ソプラノ!)、サービス精神旺盛な二人とあって、会場は拍手と笑いの渦。退団して間もなく、美貌とは言いがたい、大阪の庶民・樹里咲穂が「超・お嬢様」な役と聞いて、か〜な〜り〜心配な配役でしたが、何の何の、芸の力でお嬢様。ドレスさばきといい、妙なさばけ具合といい、実に見事でした。本物のお嬢様って、上品ぶる必要がないのさばけてるで、結構さばけてるもんだよね、と納得させる勢いがあります。そういえば、紫吹淳に比べて、女優歴は短いのに、なんだか10年くらい女優してますって顔してました。ちなみに、樹里咲穂も現役時代は僕の中で紫吹淳と並んで素晴らしい脚線美の持ち主。こうして、共演すると、目の保養として実に嬉しい。もちろん、コメディエンヌとしての才能は昨今の宝塚では屈指の方なので、盛り上げ屋として大活躍。
 でも、若手がどんなに頑張っても、登場した雰囲気だけで胡散臭いのが前田美波里・今陽子・高谷あゆみのトリオ。芸の風格が大劇場サイズなので、中劇場だと舞台からはみ出そう。声の張り上げ方、台詞のテンポや間の取り方一つとっても貫禄タップリ。舞台を盛り上げつつ、自らも楽しんでいるのがアリアリ。樹里咲穂はどちらかというとこちらのトリオ寄りですが、芝居にせよ音楽にせよ、40代以上のアーティストと、30代以下のアーティストでは、濃厚さが急激に違うんです。何がきっかけで急激な変化が起きているのかは誰も研究してくれてないのですが、どうしてなんでしょうね。逆に言えばサバを読んでいても、芸風で年齢がバレルってもんですwww
 それにしても、今回の舞台は「コーラスライン」OB版が上演できそうな位、劇団四季出身者がズラリ。現在の四季では、スケールがあわないやろなぁ、という濃い方々ばかり。そんな中、青山明だけはなぜか四季臭がプンプン。この方、外部に出るよりも、四季にいた方が活躍できそうなのに……と僕が心配しなくても、結構いろんな舞台に出てますね。
 さて、すっかり最後になってしまいましたが、この手の「そりゃないだろう!」な展開のコメディ、結構好きなんです。ミュージカルという、非日常のありえない空間だからこそ盛り上がる虚構の世界。ウソをいかにエンタメとして魅せるかが役者の腕の見せ所。紫吹淳と川崎真世の二人はまだウソとしての存在が弱く、舞台の上に現実を持ってきちゃうのが今回の敗因かも。歌唱力はなくても舞台を持たせる人っているでしょ。歌えないから舞台が弾まないというのは、主演コンビとしては致命傷かも。


2007年04月21日(土)12:30-15:10
来日カンパニー「エリザベート」ウィーン・オリジナル・バージョン@梅田芸術劇場メインホール

 S席 16000円 1階-9列-26番 (パンフレット:2000円)

 演出:ハリー・クプファー

 エリザベート:マヤ・ハクフォート
 ルイジ・ルキーニ:ブルーノ・グラッシーニ
 トート:マテ・カラマス
 皇帝フランツ・ヨーゼフ:マルクス・ポール
 皇太后ゾフィ:キャロリーネ・ゾンマー
 皇太子ルドルフ:マルティン・マルケルト
 バイエルン公爵マックス:デニス・コゼルー
 ルドヴィカ公爵夫人/フラウ・ヴォルフ:アネッテ・ヴィンマー
 皇太子ルドルフ(子役):アンドレアス・ヒンターレッガー

 ウィーン・オリジナル・バージョンとうたってはいますが、劇場の規模も機構も異なるので、大阪用バージョンです。場面が多く、その一つ一つが二度と登場しない、という贅沢な演出なのですが、ツアー用に演出助手がつじつまあわせを行うのではなく、演出家自らが再演出するというのは強いです。とりあえず、梅芸のセリと回り舞台を駆使して、極力ウィーン版を再現しています。セリの規模が小さいのと、水平移動しかできないということもあり、舞台が三次元に動くことは再現できませんでしたが、その代わり、間口1.5倍になった分、装置も巨大化していて、非常に迫力のある仕上がり。パンフ担当としては「また装置変えるのやめてよね!」というのも正直なところですが(汗) ほら、記載されているのと実際の舞台が違うのって恥ずかしいやん。。。
 今回の来日公演で一番素晴らしかったのはオーケストラ。歴代のミュージカルの来日公演の中でも屈指のレベルでした。弦はつややかで表情豊かだし、管はひっくり返らないばかりでなく、シャウトまで「楽々と」こなしているのですから、舌が回ります。日本の某劇場のオケだと「まるで楽譜にそう書かれているかのように」毎回同じ場所でひっくり返ってくれるため、それが当たり前になっていたりするので、オケ同行は嬉しい限り。このまま日本に残ってそのまま宝塚公演も担当していただきたい位です!! 「出来るかな?」と恐る恐る演奏するのではなく「どう表現しようかな?」と一歩踏み込んだ段階の演奏は俄然面白くなります。リズムセクション一つとっても、惰性で繰り返すのではなく、ちゃんと芝居に合わせて変化を付けているんです。東京公演はコンサート・バージョンなので、演奏により集中できるのが今から楽しみ。
 キャストのレベルもかなり高く、来日ミュージカルとしては屈指の公演だったのではないでしょうか。ことにマヤ・ハクフォートは「エリザはこうして歌うのよ」という自信と安定感に溢れていて「音、出るかな?」という不安材料はまったくナシ。基礎があってこその表現は説得力があります。同行者曰く「初めて、不安にならずに聴けたエリザ」というのも納得です。日本版(特に東宝版)は、歌唱力や声の強さの関係もあって、突っ張る中で見せる「弱さ」が印象的なエリザ役ですが、マヤ・エリザは押し捲りです。一歩も引きませぬ。そして、王宮を敵に回して、一人で自分の地位を築き・守るにはそうでなければ無理なのかも。弱さを見せることは敗北につながりますもの。これは、そういう文化なのですからいたし方ありますまい。よって、トート(猿山のボス猿みたいでした…)も、ルキーニ(東宝の誰かと違って「ごまかして崩す」のではなく「思いのままに崩す」歌唱力と臨機応変でウィットに富んだラテンなルキーニ、ハプスブルク家を守ろうと身を張るゾフィ、はてにはボヘミアンなシシィ・パパまで、いやぁ、みなさん自己主張の強いこと。「私はこうしたい!」をここまで言えたらさぞかし気持ち良いでしょうね。そんなわけで「皇帝の義務」に生きてしまうフランツの影が薄いわぁ。スケール面でもエリザには物足りない旦那様ですわ。
 あ、例外でよろしくなかったのがルドルフ。子ルドルフは近年まれにみる音痴。音取りができないまま発表会本番を迎えてしまったかのように「僕の初見歌唱よりも音あやしいんじゃない?」というフラフラ感と、今どきの子には珍しい音域の狭さにビックリ。ウィーン=ウィーン少年合唱団のイメージがありますが、オケにつられてボロボロ。もっとも、素人さんらしいんです。ウィーンから子役は連れてこれなくて、日本で「オーストリア人に見える子役」を探したらしいので。でも、それは裏事情であって、高いチケット代を払って来場するお客さんにとっては関係ないこと。そして、大人のルドルフはアンダーの人。このルドルフ役、登場場面こそ少ないけれど「エリザベートVSトート閣下の闘い」に終止符を打つ重要な役どころ。アンダーの人も悪くはないんだけれど、スターとしての輝きは今ひとつ。
 それにしても、久しぶりにウィーン版を観ると、小池版がいかに日本の観客のためにアレンジを施したのかがわかります。政治的状況や、欧米人ならではのドライな人間関係を、日本人が受け止めやすいように、あの手この手で味覚修正。初演当時は「ウィーン版への冒涜だ!」まで言われましたが、そこまでアレンジを加えたからこそ日本でヒットしたんだな、と改めてその仕事っぷりに脱帽。今回の来日公演も「宝塚版か東宝版は観てますよね?」というのが前提にあるんでしょう。ハンガリー革命なんて出てこない上に、演出はかなり抽象的とあって、いきなりこれを見せられたら「何だかわからないけれど、とりあえずクプファーは天才だ!(僕の学生時代の日記より!)」となる人続出! 登場人物の感情のやりとりよりも「私だけに!」というトンでもない曲が象徴するように、みんな「私」「私」「私」なんですよね。一番厳しいようでいて、実は一番自我を抑えていたのって……ゾフィ?


2007年04月22日(日)16:30-19:25
NewOSK日本歌劇団「春のおどり」@大阪松竹座

 2等席 3500円 3階-1列-6番 (パンフレット:1000円)

 演出:山村若(第一部「桜・舞・橋」)/横澤英雄、名倉加代子(第二部「桜ファンタジア」

 大貴誠/桜花昇/若木志帆/北原沙織
 高世麻央/朝香櫻子/水無月じゅん
 緋波亜紀/桐生麻耶/折原有佐/春咲巴香
 美砂まり/貴城優希/爽加凛/牧名ことり
 珂逢こころ/平松沙理/桂稀けいと/蒼音淳
 琴野まいり/鈴峯ゆい/真麻里都/白藤麗華
 京極遥/一条祐里/香月蓮/虹架路万
 紅いずみ/恋羽みう/楊琳/瀬乃明日華
 和紗くるみ/天馬立
 【研修生】
 柑奈めい/悠浦あやと/愛瀬光/花澪あさひ
 篁汐音/妃那マリカ/奈々海そら

 OSKとは不思議な劇団です。宝塚の演出家が、宝塚でおなじみのスタッフを起用して作ったとしても、宝塚とは似てもつかない舞台になるのですから。その底力は恐るべし! 今回も洋物ショーは横山英雄&名倉加代子によるのですが「OSKのレビュー」でした。決して宝塚ではないのです。こういう強烈な「匂い」を持った団体、好きですねぇ。再三、僕が主張している「昭和40年生まれ芸風入れ替わり」の例にもれず、ちと主要スターの年齢層の高いOSKは、今なお濃いステージです。今回はトップスターのサヨナラ公演なのですが、OSKも世代交代によってどんなステージに変貌するのか興味があります。
 出演者のレベルは得てして高いです。踊りはキビキビ、歌もナカナカ。宝塚で良くある「トップさんと仲間たち」というスタイルの公演で、衣装が豪華なのはトップさんだけで、二番手あたりのポジションに2〜4人が同等に並ぶという座組み。宝塚の場合はトップさんとその他大勢なので、微妙に違うんです。トップさんは出ずっぱりではなく、スター候補には平等にチャンスがあたえられている印象。ま、衣装が地味だったり、装置の変化がなかったりなので、スターの名前も顔も知らない僕にとっては、正直だれる場面もあったのですが、舞台の上では場面場面がトップスターへの真剣勝負。テンションの高さに圧倒されました。ず〜っと高いままなんですもの。
 チョンパで幕が開き、華やかな総踊りで始まる第一部ですが、何とテーマは「橋」とのこと。珍しい題材を持ってきたものです。そして、いきなり飛び込むコントの場面。なんでも大阪の「橋」を題材にした言葉遊びらしいのですが、いかんせん初めて聞く名前ばかりなので「どこが面白いのかわからないうちに終わってしまった」というのが正直なところ。この場面にも限らず、客いじりや客反応はどれも大阪ローカル。せっかく大阪まで来たので、大阪っぽい作品に出会えてラッキーです。和服を着てはいても、振り付けや内容が洋物ショーそのものって場面もあって、ちと竜小太郎の世界に共通したものがあるかも。タイトルこそ「春の踊り」ですが「春の祭り」みたいな賑やかさが魅力でした。中でも、トップ3が毛振りを並んで行うサマは豪華でした。
 洋物ショーはOSKならではの「宝塚の倍速」ラインダンスや、安定した歌唱力によるスターたちの歌は楽しかったです。が…飽きました。そもそも、チケット購入の際に上演時間を確認したら「休憩を入れて2時間の“予定”です」とのこと。ま、上演時間があらかじめ決まっているのは宝塚位なので、伸びるだろうとは思っていましたが、まさか5割り増しとは思いもしませんでした。宝塚の地方公演レベルの地味なセット、変化に乏しい場面割り、統一感は取れても華やかさに欠ける衣装という、現在のOSKの弱点がモロに出てしまい、メリハリのない作りもあって、僕は駄目〜。ダンス教室の発表会じゃないんだから、延々と踊るだけでもねぇ。。。
 で、しつこいようですが、今回はトップさんのサヨナラ公演です。劇団解散〜全員解雇〜自主運営で劇団復活〜キャストみんなで営業活動、とOSKの激動の時期をリーダーとして引っ張ってきたトップさん、どんな方なんだろう?と興味津々でした。正直、歌とダンスはさほど得意ではなく、ショースターとしてはかなり地味な方ですが、リーダーとしての風格があるんです。自分の立場を考えて、いかに後輩を立て、育てようか、というのが客席からもうかがえて「オットナ〜」なのです。カーテンコールでのご挨拶も立派なもので、OSKが85周年を迎えられたことの感謝、そして、今後のOSKをヨロシクというありきたりの内容なのですが、背水の陣の劇団を引っ張ってきた人の言葉だけに、非常に重みがあります。「どうか、どうか、OSKをよろしくお願いしますっ」の絶叫に感動しました。この人が中心にいたからこそ、OSKはここまで息を吹き返したんだろうな、と。何かの記事で「東京公演も行いたい」とありましたが、今の段階では、まだ力不足みたい。夢を見せてくれるべきレビューで、舞台裏をあまりに感じさせる状況ですから。それに、も少し、ローカルパワー全開の舞台を続けてほしい、と勝手なことも思ったりしてます。いずれにせよ、また機会があればお邪魔したい劇団です。次回は全員出演じゃなくてもかまわないので、小劇場公演を観てみたいなぁ。


2007年04月25日(水)18:00-20:30
宝塚歌劇団宙組「NEVER SLEEP」@日本青年館

 B席 4000円 2階-D列-13番 (パンフレット:600円)
 演出:大野拓史

 サミュエル・ハート:蘭寿とむ
 ブリジッド・オトゥール:美羽あさひ
 ジミー・ウォーカー:萬あきら(専科)
 ジェイムズ・アーチャー:一樹千尋(専科)
 キャロリン・ロススタイン:五峰亜季(専科)
 アーノルド・ロススタイン:美郷真也
 ユーフェミア・ビライン:彩苑ゆき
 マイヤー・ランスキー:天羽珠紀
 オウニー・マドゥン:風莉じん
 マイルズ・グッドウィン:七帆ひかる
 コニー・パターソン:大海亜呼
 ドロシー・ハート:花影アリス

 昨年は一年間でトップさ四人も退団した宝塚歌劇団。ということで、今年はトップお披露目公演のラッシュなのですが、それに伴い、二番手の番付が面白いことになっています。トップというポジションは、好き嫌いはともかくとして「やっぱりあの人ね」となるのですが、二番手に関しては、近いうちのトップ候補ということで、個人的には一番気になる番付だったりします。一年間でトップ二人を送り出した宙組の新二番手に就任したのは蘭寿とむ。研4の頃から「研14みたい」と口の悪い人に言われたものですが(って、僕ですけどwww)、学年を重ねるごとに若返りに成功。スーツの似合う、素敵な青年になりました。彼女の一番の売りはダンスになるのかな。プロローグで男役を引き連れて踊るダンスは、タメがあって見ごたえがありました。最近は流れるようなダンスが主流だったので、空中で止まるようなダンスが、いつも以上に「男」っぽく見えました。歌はまだ波がありますが、良く通る声をしているので、上手に聞こえる部分も出てきて「エリザベート」新人公演の頃とは段違いの成長振りを見せてます。座組状況とポジションからして、今後は「歌が苦手…」であろうと、ビシバシ歌わされることでしょうから、ますます上手くなるかも!と期待中。
 蘭寿とむが若返った分、おっさんとしのて際立ったのが七帆ひかる。かなり学年は若いはずなのに、ちゃんと蘭寿とむと同期かつ上司に見えます。久しぶりのオッサン型スターによだれがジュルッ。この学年でここまで出来るなんて素晴らしい。元星組の妙に濃〜〜〜い(ゆえに好きです)本専科の二人に囲まれても、悪目立ちすることなく、ちゃんとオッサンしてました。歌も今後の宙組の貴重な戦力になることと思われます。現在の宙組は技術よりもアイドル性が売りの組となっているので、そんな中、正反対の個性を持つ七帆ひかるがどう扱われていくかが興味あります。(大和悠河>蘭寿とむ>北翔海莉>七帆ひかる と、番手が下=学年も下になるにつれ、オッサン度がUPしちゃうのも前代未聞!?)
 作品は、展開があらかじめ読めてしまい、ミステリーとしてはいま一つ面白くないんだけれど「私も今後のスターね」という若手の張り切りぶりが伝わってきて、そのエネルギーで見せきってます。若手がエネルギーで突っ走る場合、作品が空中分解してしまうことは珍しくありませんが、そこはベテラン専科を三人導入。萬あきらがこんなに踊ったのって久しぶり。濃いまなざしが「男役」としての色気タップリで、思わずヨダレ。一樹千尋はみのもんた風なしゃべり癖が際立ってますが、舞台がドンッと締まります。美郷真也は現役の組子〜組長〜ですが、すっかり専科の味わい。ベテランが後輩を守り立て、フォローする姿って劇団ならではですよね。暖かくで良いカンパニーです。
 が、せっかくのお膳立てを台無しにしているのが娘役たち。美羽あさひはヒロインのはずが、一幕ではほとんどシドコロがなく、せっかくのレビューガール役なのに、地味なことこの上なし。群集に埋もれてしまうのが致命傷。かといって、歌もダンスも際立つものではないので……なして彼女が起用されるのか僕には不明。花影アリスも、タレントの千秋そっくりなしゃべりで、「良い年した大人の女性が幼稚」という僕がもっとも嫌いなパターン。ま、宙組の娘役は芝居らしい芝居をしてない人が多いので、これからドラマティックに伸びるのかも。その過程が見られると良いなぁ。


2007年04月27日(金)19:00-20:40
東京藝術大学学生オーケストラ演奏会I「グリーグ&シベリウス・プロジェクト 第1回」@東京藝術大学奏楽堂

 全席自由 無料 14列-2番 (パンフレット:無料)
 指揮:ダグラス・ボストック
 チェロ:辻本玲

 ホルスト:どこまでも馬鹿な男
 サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番イ短調 作品33
(休憩)
 シベリウス:交響曲 第1番 ホ短調 作品39
(アンコール)
 ブラームス:ハンガリアンダンス 第1番

 芸大オケです。新年度の公演っていつも楽しみなんです。「私は芸大オケのメンバーでトップ奏者ですのよっ」という高ピーさが魅力。いえ、別に高ピーなんじゃないけれど、自信に満ち溢れているところが良いではありませぬか。中でも、ヴァイオリン・セクションなんて「格好良いお姉さま」でむせ返っております。本日も第三プルトに「何でワタクシがこんな場所で…。コンミスの間違いじゃなくて?」なお姉さまを発見。勝手にキャラクターを設定してプププと喜んでおりました。(妄想上の)攻撃対象となるコンマスは、ぬーぼーとした兄ちゃん。演奏はともかく、生気のなさが気になるところです。もっとも、この位の方がお姉さまたちの攻撃(て何の!?)をかわすにはちょうど良いのかも。
 ところで、プログラム一曲目にご注目ください。「どこまでも馬鹿な男」。原題は「Thae perfect fool」です。「The」が付けられてます! 綺麗な翻訳ですが、要は「完璧な馬鹿」でしょ。こんなタイトルで組曲を作っちゃうなんて、いかにもイギリス人。たぶん、童話か何かの原作があるんでしょうが、いただいたプログラムには曲目解説がなかったので、何の情報も持っておりませぬ。いきなり金管が活躍するのですが「今から東京文化に行って、お金もらってらっしゃい!」な出来。半年前の藝祭の際は「副科なの?」「……本科です」だったパートとは思えない。今年の芸大オケは金管が良いです。
 とはいえ、やっぱり主役はヴァイオリン。怖いもの知らずで、それでいて難度の高さもなんのその、軽々と鮮やかに弾いてしまうのですから、この学校のレベルは計り知れないものがあります。選曲も気のせいかヴァイオリンが活躍して盛り上がる曲のような。。。でもね、気になるのは表情のなさ。演奏は素晴らしいです。技術もプロ顔負け。でも、熱演じゃないんです。表情はいたってクール。演奏後も興奮するでなく、感動するでなく、澄まし顔がズラリ。難しいところは「難しい〜」と弾いてくれると、聞いているこちらも「すごいことやってるんだなぁ」となりますが、簡単そうに弾いちゃうもんだから、あまりその辺もひっかかることなく。。。若いからというのを差し引いても、コクがないんですよねぇ。だから、とっても「疲れない演奏」で、耳ざわりがとてもよろしゅうございました。
 現役生ではないけれど、指揮者のボストックはとってもダンディ。動きの一つ一つが映画俳優みたい。でも、妙に足が細く、ヒップが大きいので……ミッキー・マウスみたい。同行者にそれを漏らしたら「ほんとだ〜」と同意してくれました。大きく背伸びしたかと思うと、卵産みます!な鶏のポーズを取ったり、わかりやすい指揮。チェロの辻本玲はもしかしたらのぼぉちゃんよりもテクニックあるかも。音量もあれば、難しそうなパッセージも実に鮮やか。でも、贔屓目もあるとはいえ、のぼぉちゃんの敵ではありませぬ。演奏家って演奏の実力だけでなく、舞台に登場した時の華だとか、観客をひきつけるニッコリなども大切な武器なのだぁ。


2007年04月28日(土)17:30-20:10
昭和音楽大学「ドニゼッティ:愛の妙薬」@テアトロ ジーリオ ショウワ

 A席 4000円 3階-2列-43番 (パンフレット:無料)
 指揮:松下京介
 演出:馬場紀雄
 管弦楽:SHOWA ACADEMIA MUSICAE管弦楽団

 アディーナ:光岡暁恵
 ネモリーノ:小山陽二郎
 ドゥルカマーラ:三浦克次
 ベルコーレ:折江忠道
 ジャンネッタ:廣田美穂

 今年の四月から、厚木→新百合ヶ丘に昭和音楽大学が移転。新校舎に立派なオペラハウスが登場しました。大学でオペラハウスを持つのって、大阪音大に続いてじゃないやろか?(未確認) 学校の施設なのでかなりシンプルな作りですが、ヨーロッパのオペラハウスのようなコンパクトな馬蹄型。客席数は約1,300席。かなりコンパクトにまとまって素敵な空間でした。音響もなかなか良かったです。新宿から結構遠いけれど、駅からホールまで5分位で到着できるので、これからのラインナップが楽しみ。この規模のオペラハウスは音の充満度が大劇場とは違って心地よいですね。学生の時からこんな素晴らしい劇場で訓練を受けられるなんて、なんて恵まれているんでしょう。最寄り駅からバスで20分もかかった旧校舎に比べて、立地条件も格段に良くなりましたし、志願者増&学校全体のレベルも上がるのではないかと思っております。
 昭和音大のオペラはオケやコーラスこそ学生ですが、出演者やスタッフはプロが揃います。それも、藤原オペラで活躍している人が多いかな。装置も藤原オペラのものなので、非常に本格的ですし、何よりも劇場ロビーのお出迎えメンバーが「ここは新国!?」なのですから。。。おまけに「愛の妙薬」は二年に一回のペースで上演されている定番作品。「コーラスの活躍が期待できる」「バレエ場面がある」などが作品選定の基準なのでしょうが、安定したプロダクションです。ほら、バレエコースから舞台制作まで、学生で一通りまかなえますから。
 本日のソリストは「今、この作品を上演するなら、この人でしょう」というキャストが揃いました。アディーナは田舎娘の素朴さが、ネモリーノはおっとりさが自然に出てきて、一歩間違えると「嫌な女」「馬鹿男」となりかねないのに、メルヘンの世界へと昇華させてくれました。(蛇足ながら、小山陽二郎氏は近々「トスカ」に出演なんです。彼の声でカヴァラドッシ…気になるぅ〜)。でもって、本日の白眉はドゥルカマーラ先生。三浦克次はこの役を何度も演じていると思うけれど、ひょうひょうとした浮世離れっぷりが圧巻。ドゥルカマーラの商売って、テレビショッピング的な販売なんだけれど、三浦氏がとっても楽しそうに演じているので、思わず「一つください!」と声を上げそうになります。それでいて、大阪商人的したたかさを持ち合わせていて、ネモリーノからぼったくっちゃうあたり、実に人間的で、この作品の中で一番魅力的。ベルコーレはドゥルカマーラに比べてしたたかさがない分、良い人で終わっちゃうのがもったいない。って、作者に今さら文句言う筋合いはないけれど。
 豪華な作品でのこけら落とし公演も良いけれど、手馴れたプロダクションを、安定したメンバーで上演というのも、ほのぼのと暖かい空気が流れて良いものですね。昭和音大のオペラは今年はこれでおしまいかと思いきや、秋にはドニゼッティの「ピア・トロメイ」があるとか。来ちゃうかも。