観劇日記〜2007年06月〜
01日(金) 13:30 宝塚歌劇団星組「さくら」「シークレット・ハンター」 東京宝塚劇場
01日(金) 19:00 新国立劇場「夏の夜の夢」 新国立劇場中劇場
02日(土) 12:30 音楽座ミュージカル/Rカンパニー「アイ・ラブ・坊っちゃん」 東京芸術劇場中ホール
03日(日) 14:00 弦楽合奏団 アンサンブルディヴェルティメント「第10回定期演奏会」 日本橋劇場
04日(月) 19:00 古川展生×山本修「Alone〜そして二人〜」 浜離宮朝日ホール
09日(土) 15:00 宝塚歌劇団「大坂侍」初日 日本青年館
09日(土) 18:30 ミラノ・スカラ座バレエ団「ドン・キホーテ」 東京文化会館
16日(土) 18:00 宝塚歌劇団月組「ダル・レークの恋」 神奈川県民ホール
17日(日) 14:00 新国立劇場オペラ「R.シュトラウス:ばらの騎士」 新国立劇場オペラ劇場
19日(火) 19:00 新国立劇場オペラ「ヴェルディ:ファルスタッフ」 新国立劇場オペラ劇場
23日(土) 17:00 東宝「レ・ミゼラブル」 帝国劇場
28日(木) 18:30 新国立劇場バレエ団「ドン・キホーテ」初日 新国立劇場オペラ劇場
30日(土) 17:00 東宝「レ・ミゼラブル」 帝国劇場


2007年06月01日(金)13:30-16:45
宝塚歌劇団星組
「さくら〜妖しいまでに美しいおまえ〜」
「シークレット・ハンター〜この世で、俺に盗めぬものはない〜」
@東京宝塚劇場

 S席 8000円 1階-12列-23番 (パンフレット:1000円)

 演出:谷正純(さくら)/児玉明子(シークレット・ハンター)

 ダゴベール(ダグ):安蘭けい
 ジェニファー:遠野あすか
 セルジオ:柚希礼音
 フランシス国王:汝鳥伶(専科)
 ダゴベールの父/ダゴベールの母:英真なおき
 フェリシア:万里柚美
 ジョエル・ロビュション:立樹遥
 マックス:涼紫央
 ブリジット:琴まりえ
 アナ・マリア:南海まり
 イグナシオ:和涼華

 ショーはまずタイトルが間違ってます。「〜妖しいまでに美しいアタシ〜」でしょ。星組なんだから!!! 和物ショーの場合、別格トップとして松本悠里(専科)が登場して、トップの安蘭けいとやたらと組むので、そもそも「おまえ」が誰を指すのか不明ってのもタイトルとしてキビシイ。。。新トップの安蘭けいは「和物の人」というイメージがあったけれど、意外や意外、和物ショーは初めてなんだとか。でも、メイクは綺麗だし、踊りは腰が入っているし、さすが雪組育ち。安心して観ていられました。他のメンバーは、組長を筆頭に腰じゃなくって肩が入ってキザっている人がズラリ。重心高いまま、バレエのような外またでドタバタ踊る若手にいたっては外国人が踊る日舞みたい。ド素人の僕が観ても違和感たっぷりの日舞ショーでした。それをカバーするためか、洋舞を絡めて見たり、踊りよりも舞台をどたばた暴れるような芝居を挿入してみたり。このあたり、生徒の力量に応じて作品を作った作者に脱帽ですが、宝塚の和物ショーの将来はかなり厳しそう。最初から最後まで賑やかで押し通してしまったので、しっとりわびさびや雅な空気を感じさせられる場面があると嬉しかったなぁ。話題の超高額衣装は写真で見た時は「ちょっと地味?」と思ったけれど、舞台で照明を浴びると、複雑な色あいが何とも色っぽくて素敵でした。そして、安物衣装との格差が激しくて、舞台全体のバランスは悪かった! 一部の衣装を豪華にするのではなく、全体的な衣装のレベルアップが必要かも>衣装部。和物ショーというと、浅草の仲見世で売られていそうな安っぽい着物(男役は水色、娘役はピンク、足袋もヴィヴィッドなブルーにレッドってのは…悪趣味〜〜〜www) 派手と下品は別モノだと思うんですけどね。ま、踊りも含めて下品だったので、これはこれで統一が取れていたのかも!? もちろん、幕開きの華やかさには「おぉ〜」とどよめきがあがりましたし、たたみかけるようなテンポは宝塚ならでは。こうなったら楽しむ者勝ち。「若い子たちが頑張ってて可愛いわぁ」と観るのが正しい姿勢です♪
 後半のミュージカルですが「ガイズ・アンド・ドールズ」のような設定で始まる泥棒劇。どちらも「俺にできないハズがない」と豪語することによって始まるのが同じ。それでいて「シークレット・ハンター」は「ローマの休日」が絡んでくるのかな。しばしパクリだ〜と批判されることの多い児玉明子ですが、台本の中に出典をさりげなく織り込むあたり、プロっぽくなってきました。途中でネタがバレバレになるのが惜しいけれど、トップコンビがあちこちの島(や国)を渡り歩き、各地でのカーニヴァルをからめていて華やかな作り。下級生に至るまで見せ場が与えられていて、新生星組の中で生徒一人一人が新しいポジションに張り切っているのが感じられます。中でも、柚希礼音は「ピッカピカの二番手就任」とあって、もしかしたらトップ以上の注目度。ガタイは良いし、歌も太くていかにも男役という声だし、ダンスも賑やか(上手いとは思うけれど、重くて女性っぽくて僕は苦手)。さすがに芝居は安蘭けいとのキャリアの差がありすぎて、手も足も出ない状態でしたが、若さと勢いで乗り切ってしまった感があります。委縮せずに大きくノビノビとしているのはいかにも宝塚のスターっぽくて気持ち良いです。
 さて、トップ就任の安蘭けいですが、技術的な問題はありません。実に立派なトップさんです。同期の一人は既にトップをまっとう&退団し、もう一人の同期は「いつまでやってるの?」と僕にブーブー文句を言われている位ですもの。キャリアは十二分。歌なんて現在のトップさんの中ではピカ一でしょう。遠野あすかとのコンビっぷりもラブラブではないけれど、同格に渡り合うあたり「同志」って雰囲気が漂ってます。が、が、いかんせん華がなくて地味なんです。派手な衣装を着て、銀橋を渡る時は良いのですが、本舞台で群舞にまざると「アレ、どこに消えたの?」と行方不明状態。歌もダンスも人一倍力が入っているだけに、気の毒としか言いようがありません。青年館クラスの劇場だと感じないので、これはひとえに芸風の大きさによるものでしょう。そして、高齢でトップ就任の生徒にありがちなのですが……すでに女性の二度目の性長期に突入していて……おばさん化が目立ちつつあります。これは、声のコントロールと動きのキレ、そしてメイクのノリに現れちゃうのでどうしようもないのですが。まだまだヤレルとは思いますが、旬はそろそろ過ぎそう。早く代表作に恵まれますように!!


2007年06月01日(金)19:00-22:10
新国立劇場「夏の夜の夢」@新国立劇場中劇場

 Z席 1500円 2階-2列-72番 (パンフレット:800円)

 演出:ジョン・ケアード

 シーシアス(アテネの公爵)/オーベロン(妖精の王):村井国夫(江守徹の代役)
 ヒポリタ(アマゾンの女王、シーシアスの恋人)/ティターニア(妖精の女王):麻実れい
 パック、またはロビン・グッドフェロー:チョウ・ソンハ
 ライサンダー(ハーミアを恋する若者):細見大輔
 ディミトリーアスハーミアを恋する若者):石母田史朗
 ヘレナ(ディミトリーアスを恋する乙女):小山萌子
 ハーミア(イジーアスの娘、ライサンダーを恋する乙女):宮菜穂子
 クウィンス(大工):青山達三
 イジーアス(ハーミアの父)/フィロストレイト(シーシアスの饗宴係):大島宇三郎
 ボトム(機屋):吉 直
 スナウト(鋳掛け屋):大滝寛
 スナッグ(指物師):小嶋尚樹
 スターヴリング(仕立屋):酒向芳
 フルート(ふいご直し):水野栄治
 豆の花:神田沙也加
 カラシの種:松田尚子
 蛾の精:JuNGLE
 蜘蛛の糸:坂上真倫
 オーベロンの妖精:森川次朗、一弾丸、柴一平、西田健二

 オケピが設置されていて、8人編成のオーケストラがメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」序曲を演奏。そういえば、メンデルスゾーンの曲を使用してのこの作品の上演は初めて!と嬉しくなっちゃいました。が、演奏の途中からロックテイストが加わり、いつの間にやらメンデルスゾーンも消えてしまいました(涙) 結局、E-G-C-Eのテーマが繰り返し使われる以外はほとんどメンデルスゾーン先生はご退場。そういや、プロコ先生による「ロメジュリ」やチャイコ先生の「四羽の白鳥の踊り」も流れていたような。。。いえね、イギリスのシェイクスピアというと重〜いorオタク〜というイメージがあったのですが、イタリア音楽が流れると、舞台上の空気が軽やかになった気がしたんです。しょっぱなから登場の麻実ターコさんの「はぁ〜〜〜」って表情だけで爽やか♪ が、ターコさんはなぜかタイテーニアでない名前で呼ばれはじめるんです。はて?と思っていたら、どうやら二重構造の劇の様子。あ、ちょっと混乱しそう(汗) とりあえず、この作品は「PUCK」がベースとなっているので(嘘です、逆です)、勝手に「麻乃佳代が〜」とか「天海祐希が〜」とリンクさせながらの観劇。コレ、邪道ですが、人物整理には結構便利な方法です。
 それにしても、全員が良く動き回る舞台です。野田秀樹のように、むやみに走り回るのではなく、新国ならではのタッパと奥行きのある装置に合わせて、まるでダンスのようにみなさん動く動く。ターコさんもいきなりバレエを踊っちゃうんですから! このターコさん、ティターニアになってからは、いっちゃってます。狂気の沙汰です。何が可笑しいんだか皆目わからんぞなもし、なのに一人でテンション高く騒いで暴れて悶絶してます。目薬さされるのにあの大きな目をパシパシするだけで笑いを取っちゃうし、ロバ男に優しく甘えていたかと思うと急に男役声でどなり散らしたり、なまじスケールの大きな人なので、その変幻ぶりはド迫力です。僕は好き〜♪ そして、そんなターコさんに振り回されていそうで、悠々とマイペースなのがオべロンの村井パパ(あ、パパはエリザだけか・汗)。奥様がどんなに暴走しようとも動揺せず、そしてカップルで寄り添う場面だとさりげなく愛撫のお芝居。色気のあるチョイ悪ダンディを演じる村井さんも大好きなんです。まじめ一本槍じゃなく、ニヤリとしつつも奥様大切ってのが余裕あって素敵じゃないですか。僕もあんなダンディになりたいもんです!!!
 若手だとパックのチョウ・ソンハが自由自在。チビなので、羽根をつけても妖精じゃなくてハエみたいに見えちゃうけれど、舞台狭しとちょこまか良く動いてます。運動量は一番多い役じゃないでしょうか。そして、ハスキーな声で早口セリフをベラベラ喋りまくるのですが、不思議とイライラしないんです。セリフがちゃんと伝わってくるのと、感情がきちんと込められているからかと思われます。そして、ハーミア〜ヘレネ〜ライサンダ〜ディミトリーアスの四人は体力勝負。男優は女優を突き飛ばし、放り投げちゃうんです。そして、女優は女優で男優にしがみついたら振り回されようと逆さにされようとタコのように離れない! 運動神経と体力に舌を巻きました〜。でも、これまた観ていて疲れるばかりの某演出家のものとは違って、観ていて楽しいけれど疲れないんです。僕と波長が合うのかしらん?
 だれたのは劇中劇の場面。大団円か思いきや、くっだらない内容の素人芝居が披露されるのですが「いつまでやるんでしょ?」と飽き飽き。プロの手にはよるんだけど、プロの技を見せてくれない場面は僕には興味ありませぬ。ターコさんの「手短にお願いしますっ!」という野次に思わず拍手です。蛇足ながら、アテネの公爵邸と妖精たちの森は回り舞台を利用して表と裏の対になって登場。そして、フィナーレでは、それらの装置の裏側を素明りでお披露目。ついでに広〜い袖舞台の奥まで見せてくれちゃって、劇場オタクの僕は大喜び。表からだとひたすらゴージャスなお屋敷も張りぼてなんですもの。そして、ホンモノの舞台監督さんの姿までバッチリみられちゃうなんて面白かった〜。終わり良ければすべて良しってか!?
 シェイクスピア劇にありがちな重苦しさはなく、適度にゴージャスで適度に商業演劇というのが僕には良かったです。その上でリクエストですが…このメンバーだったらミュージカルにして欲しかったですっ。ソロナンバーがあるのが神田沙也加だけというのは勿体ない!(彼女は声量豊かってわけじゃないけれど、とても通る声なんですよね。四人組の妖精の一人なのにもかかわらず、スター!というオーラを放っていたのはさすが)。


2007年06月02日(土)12:30-16:10
音楽座ミュージカル/Rカンパニー「アイ・ラブ・坊っちゃん」@東京芸術劇場中ホール

 B席 5670円 2階-E列-17番 (パンフレット:無料)

 演出:ワームホールプロジェクト

 坊っちゃん:吉田朋弘(畠中洋/畠中洋・縄田晋/中村繁之)
 夏目漱石:松橋登(松橋登/近藤正臣・畠中洋/浜畑賢吉)
 正岡子規・山嵐: 安中淳也(佐藤伸行/佐藤伸行・清水博司/佐藤伸行)
 赤シャツ:新木啓介(キモサベポン太/新木啓介/園岡新太郎)
 野だいこ:佐藤伸行(飯山弘章/飯山弘章/三谷六九)
 校長:小林アトム(菱谷紘二/徳川龍峰/治田敦)
 うらなり:藤田将範(清水博司/吉野圭吾/高野絹也)
 高浜虚子・漢学:五十嵐進 (五十嵐進/五十嵐進・菊地正之/五十嵐進)
 小使い:広田勇二(神保幸由/神保幸由/小関明久)
 体育:萩原弘雄(新木啓介/萩原弘雄/萩原弘雄)
 博学:渡辺修也(浅野忠嗣/田中廣臣/森山大輔)
 少年:山合大輔(畠中洋/斎藤桐人/阿部義嗣)
 赤シャツの弟:関川慶一(家内規至/尾関英雄/折井洋人)
 夏目鏡子:秋本みな子(土居裕子/土居裕子/今津朋子)
 清:大方斐紗子(福島桂子/福島桂子/大方斐紗子)
 登世:浜崎真美(土居裕子/土居裕子/浜崎真美)
 マドンナ・雪江:磯貝麗奈(中里美樹/渋谷玲子/渋谷玲子)
 女中:清田和美(猪狩利江/猪狩利江/伊東弘美)
 萩野夫人:堀川亜矢(藤森裕美/小安展子/伊東弘美)
 猫:野田久美子(小飯塚みどり/小飯塚みどり/藤咲みどり)
 筆子:大川麻里江(宮本順子/小林里奈/大熊亜里紗)
 小鈴:野口綾乃(荒井美乃里/小飯塚みどり/藤咲みどり)
  ( )は1993年初演/1995年再演/2000年公演。

 個人的に「アイ・ラブ・坊っちゃん」は和製ミュージカルの最高傑作だと思ってます。劇場に向かう道すがら「坊っちゃんだよ♪」と心ウキウキ。何度観ても笑って泣いて最後はホッコリになりますもの。終演後は、あの曲この曲を口ずさみながら幸せ気分で帰宅できるのも嬉しい。今回が四演の上演となります目。持ち役として演じ続けているのは高浜虚子:五十嵐進のみかな。そして14年ぶりに漱石:松橋登が再登場です。今まで「坊っちゃん」の主要キャストを務めていた人たちも、今回はアンサンブルに回り、ほとんど全員が初役。そりゃ、14年もたつ作品ですから、若返りも必要ですわなぁ。
 上演のたびにあれこれ手の入れられる音楽座ミュージカルですが「坊っちゃん」に関しては横山由和が演出した当初のものをほぼ踏襲。振り付けやナンバーのマイナーチェンジはあれども、「レミゼ」で行われたチェンジ位の微々たるもの。安心して身を任せられます。
 ……なはずでしたが、しょっぱなからシートベルトが必要に(汗) 坊っちゃん:吉田朋弘の歌が破滅的に下手っぴなんです。歴代、この役は歌える人は演じてないのですが(それなのに、シンプルで音域が広くて難しい曲が多い)、それでもスター性だとか押し出しの良さで盛り上げていたんです。が、新人公演状態の吉田朋弘は歌い踊る必死さが全面に出てしまい、オープニングナンバーがピシッと決まらないのです。山嵐:安中淳也も同様な状態。歌声がか細く、客席に声が届かないのが役のイメージと違和感があります(コクーンや新国に比べ、芸劇は音響が悪いのかも)。現在の音楽座はキャストの層が薄いので、他に適役がいなかったのでしょうが、力不足は否めません。かといって、歌の下手さを演技力(芝居歌)でカバーできる域には達していないんです。江戸っ子らしさや、べらんめぇ口調のキレも今一つで、芝居部分もスカスカ。何が原因からなぁ、と思いつつ観ていたのですが、歌・セリフ・芝居ともに、リズムに乗ってない気がするんです。自分がリズムに乗れないし、相手のリズムを読むのも無理。よって、台本通り、サラサラと芝居が流れていっちゃう。タメがないから、観客が思いを役者に託す前に、舞台だけはどんどん進行。よって客席からの拍手もまばらでした(拍手のタイミングがつかめない・涙)
 じゃ、今回の公演が良くなかったか、というとそんなことはなく、全体のバランスは良かったんです。これが生の舞台の面白いところ。というのも、「坊っちゃん」の小説部分があまりに強力ゆえ、今までの上演だと、夏目漱石の心の葛藤や鏡子や登世らのストーリーが霞みがちだったんです。それが、今回は同格どころか、夏目漱石が主役として芝居全体をコントロール。二重構造の浮かび上ががりかたは今回が最高。「坊っちゃん」という作品は、劇中は坊っちゃん→清への、実生活では漱石→妻・鏡子へのラブレター(広い意味でとらえてね)だったんだなぁと、新たな発見。いえ、この発見は前々から言われていたことではあるのですが、観劇のさ中に実感したのは今回が初めて。夏目漱石:松橋登の渋さ(初演時よりも今回の方が好き)と、清:大方斐紗子のトニー賞もの芝居に「この人たちがいるかぎり、若手もきっと素敵に成長するはず」と頼もしく、そして嬉しくなりました。若手だけではなく、ガッチリ作品を支えてくれるベテランに恵まれたのは、作品にとっても劇団にとっても幸せなこと。両手では数えきれない程観ている作品ですが、いつもと違って、ベテラン勢に感情移入したせいか、泣き所がいつもと違った観劇でした。
 末筆ながら印象に残ったキャストたちです。新木啓介にはムカムカ〜。セリフの一言一言が厭らしいんです。赤シャツに坊っちゃん兄にヴァイオリンの先生にと、嫌な役を一手に引き受けて、ムキーって気分にさせてくれました。ま、ムカムカするけれど、そのおかげで芝居が盛り上がるので複雑な気持ちwww 佐藤伸行はねぇ、今までは愛すべき&味のある山嵐が大好きだったのですが、これまた厭らし〜い野だいこ。主役路線の人だっただけに、ここまで作品のために「嫌な奴」になられたことにショック〜。世代交代の悲しさはこういうところにあります。もちろん、本人はそのところ割り切っているようで、楽屋口に待ち伏せして、石投げたくなるような、ムシズが走るような野だいこでした。もうね、赤シャツ&野だいこが、これでもか!とばかりに悪知恵を回すところ、血圧が上がりました〜(ムキャーッ) 鏡子:秋本みな子は、台詞や歌がいかにも「四季出身です」といった感じ。思わず漱石にくってかかるあたりの「強さ」に迫力がありました。中学生役たちの芝居は相変わらず上手で、彼らがウワァーっと机を持って舞台に駆け込んでくると同時にオペラグラス構えて「誰から観よう!?」と僕も臨戦態勢。それだけに、チャカチャカした舞台を一瞬にして別空間にいざなってくれる、土居裕子ばりの歌唱力の女優(はっきり言っちゃうと鏡子や登世ら)がほしいところです。DAMN YANKEESにおける、杜けあきのような、元締め俳優って大事でしょ。「キャッツ」にはオールド・デュトロノミーが、「李香蘭」には裁判長が、その他、ほとんどのミュージカルで締め担当っているじゃないですか。今回も、そんなナンバーやシーンはあるんです。それだけに、アニエス@帝劇を他の女優さんに譲ってでも、坊っちゃんに出てほしかったなぁ>土居裕子


2007年06月03日(日)14:00-16:40
弦楽合奏団 アンサンブルディベルティメント「第10回定期演奏会」@日本橋劇場

 全席自由 1000円 1階13列-3番 (パンフレット:無料)

 ヴィヴァルディ:協奏曲集「四季」より 春
 フィンジ:ピアノと弦楽合奏のためのエクローグ
(休憩)
 第10回記念特別企画「この10年」
  1998年 My Heart Will Go On(セリーヌ・ディオン)
  1999年 LOVEマシーン(モーニング娘。)
  2000年 地上の星(中島みゆき)
  2001年 いつでも何度でも(木村弓)
  2002年 大きな古時計(平井堅)
  2003年 炎上(フジテレビ「大奥」より)
  2004年 マツケンサンバ2(松平健)
  2005年 Butterfly(幸田來未)
  2006年 誰も寝てはならぬ(プッチーニ)
  2007年 ディベルティメント K136 第二楽章(モーツァルト)
(休憩)
 チャイコフスキー:フィレンツェの思い出



2007年06月04日(月)19:00-21:00
古川展生×山本修「Alone〜そして二人〜」@浜離宮朝日ホール

 全席指定 4500円 2階C3列-3番 (パンフレット:無料)

 チェロ:古川展生
 コントラバス:山本修
 ピアノ:塩入俊哉

 ソッリマ:アローン
 タバコフ:モティヴィ
 ハイドン:ポロネーズ
 ロッシーニ:チェロとコントラバスのための二重奏曲 ニ長調
 山本裕康:組曲 Lovin' Baroque
(休憩)
 ピアソラ:ブエノスアイレスの秋
 ピアソラ:アディオス・ノニーノ
 ピアソラ:天使の死
 ピアソラ:コントラビヒッシモ
 ピアソラ:タンティ・アンニ・プリマ
 ピアソラ:ブエノスアイレスの冬
 ピアソラ:リベルタンゴ
(アンコール)
 塩入俊哉:ある午後の日に

 当日券利用で二階席の一番後ろの席を購入。浜離宮朝日ホールは音響が抜群だけれど、一階席はほとんどフラットなので、一階席の後ろだったらこちらの方が見やすいです。おまけに音もこちらの方が良いんじゃないでしょうか。さらに、後ろに人がいないので、舞台に向かって手を振るんだって自由! ご本人様は気付いてないでしょうけどwww
 前半はチェロとコンバスのみの登場。コンサートにしては珍しく、暗転があるんです。そしてスポットライトに照らしだされての演奏。コレ、格好良いです。そして、ホールの大きさとのぼぉちゃんの音がマッチして、会場全体に音が響き渡る快感! やはり、ホールと演奏家との相性って大事ですねぇ。のぼぉちゃん、実に気持ちよさそうに弾き通していたというのが今回の収穫。だれることも飽きることもなく、集中力が持ってて、聴いてて心地良かったです。のぼぉちゃんの音色は人間の声でいうとハスキーヴォイスなので、合う・合わないが結構ハッキリ出てしまうのですが、そういうところも拡大されちゃうのが音響の良いホールの長所であり、怖いところでもあります。たぶん、激しい曲が好きなんだと思います。熱演です。指も素晴らしく動いていて、音楽が壊れることはありません。でも……音が付いてこないもどかしさ。声楽の人って自分の声にあった曲を選ぶけれど、器楽の場合、とりあえず演奏はできちゃうんですよね。これが下手っぴだったら気にしないのですが、上手いんだけど相性が悪い…そんな曲を演奏するのぼぉちゃんを見る(聴く)のはちと悲しいものがあります。でもね、小洒落てて、品がある演奏にかけては素敵です。そんなのぼぉちゃんの特性を知っての作曲かどうかは存じませんが、山本裕康:組曲 Lovin' Baroqueはクラシカルな面とポップな面を持ちあわせた、まるでのぼぉちゃんのための曲。甘くてちょい悪で素晴らしかった〜。チェロ&コンバスという編成なので、次にいつ聴けるかどうかはわかりませんが、個人的にはアンコール希望! 作曲の山本裕康には拍手の際、ぜひ舞台にものぼって(のぼぉてwww)いただきたかったです。
 後半はのぼぉちゃんの十八番ともいえるピアソラ特集。コンバスが加わると低音が厚くなるし、重奏部分も甘く朗々と響くのが僕好み。男声コーラスを聴いているかのような深々とした響きが実に魅力的でした。のぼぉちゃんは普段オケで演奏しているだけあって、アンサンブルになると絶妙なバランス感覚を発揮。コンバスの山本修の歌いっぷりに合わせて、あれこれ音色にボリュームに変化をするので、ライヴならではの醍醐味がタップリ。次にどう出てくるのか聴いていて実に楽しいんです。激しい曲はコンバスの後押しがありましたし、甘い曲はのぼぉ節炸裂……お酒片手に「舞台の上で」聴きたかったですっ。
 で「またか…」と言われそうですが、せっかくの演奏をぶち壊したのが塩入俊哉。今回のチケットを購入すべきかどうか当日まで悩み続けた原因が彼なんです。彼のピアノって大っ嫌い。ペダルなんて乱暴に踏みっぱなしで鍵盤を叩きまくるので音が割れるわ濁るわ、おまけにピアノの蓋が全開だったので、せっかくのデリケートなチェロ&コンバスのアンサンブルが台無し。ピアノで「歌う」のではなく「叩きまくる」ので、本来ならばまだまだ「鳴る」であろうピアノも、音が全部つぶれてしまうんです。他メンバーの演奏に合わせようという意識がないのが悲しい。。。音色と音量の幅がないのもちょっとねぇ。ただ、メロディメーカーとしては耳心地の良い曲を作ってくれます。アンコールの「ある午後の日に」は、ミュージカルナンバーとして、男女で歌って欲しい、甘く切ないメロディ。実は宝塚にピッタリな作曲家だと思っているんです、彼のこと。耳心地良いけれど、自己主張は強くないBGM風な曲や、甘くて時に雄大なメロディライン。ね、ピッタリでしょ。ちなみに、アンコール曲の解説をのぼぉちゃんが朗読したのですが……あまりの下手さに椅子からずり落ちました。色気なくって棒読みで、情景が全く浮かんでこないのwww それでいて、演奏が始まるとぱ〜〜〜っと風景が目の前に広がって来ちゃうもんだから、余計に「解説いらないっ!」なぁんて。ファンだけども(だから?)ドキドキ・ハラハラ。


2007年06月09日(土)15:00-17:35
宝塚歌劇団月組「大坂侍」初日@日本青年館

 B席 4000円 2階-I列-12番 (パンフレット:600円)

 演出:石田昌也

 鳥居又七(川方同心):霧矢大夢
 お勢(大和屋の元気娘):夢咲ねね
 渡辺玄軒(剣術の先生):未沙のえる(専科)
 大和屋源右衛門(豪商、お勢の父):箙かおる(専科)
 黒門久兵衛(ヤクザの親分):嘉月絵理
 鳥居弥兵衛(又七の父):北嶋麻実
 高麗屋お善(高麗屋の女主人、数馬の母):瀧川末子
 豆奴(又七にホの字の芸者):花瀬みずか
 田中数馬(又七の妹・衣絵の許婚):青樹和
 天野玄審(黒門一家の用心棒):星条海斗
 極楽の政(又七の手下):龍真咲

 賑やかな祭り風景で幕あき。いかにも予算がなさそうな舞台装置に最初は「・・・」となりかけました。が、竜小太郎のごとく、霧矢大夢が客席から賑々しく登場してからは、ラストまで突っ走ります。突っ込むすきを与えぬまま、客席を沸かし続けるあたり、僕が観はじめたころの宝塚っぽくって、懐かしく、そして月組の面々のスターっぷりを堪能してきました。大きな劇場で幅広い年齢層の観客を沸かせるのは結局スターの魅力だと思うんですよね、宝塚って。歌唱力やダンスの力じゃなくって、スターとしていかに夢を見せて(&魅せて)くれるかどうかが大切ではないかと。実際、鳳蘭も麻実れいも、大地真央も麻路さきも、ヘッタクソでした。もう、お話にならない位。でも、アンタは真ん中に立たないと落ち着きわるいわぁ、という怪物オーラがありました! 逆に、技術点が低いからこそ、どうやって魅せるかで開花したタイプとも言えるのではないかしらん? 今回はドッカーン、ドッカーンと芝居のそこここで客席の笑いが爆発。休憩時間や終演後、知らない人と笑顔で「おもろかったね〜」と言い合いながらホールを後にできるって幸せ。
 さて、霧矢大夢ですが、現役スターの中では実力派と呼ばれています。その実力ゆえに、小さくまとまっている、というもどかしさがあったんです。トップさんであろうとも、青年館どまりのスターオーラの人が珍しくなくなりました、最近は。で、霧矢大夢も本公演だと今のところコレという役には恵まれておらず、舞台を支配することはない足踏み状態。そんなわけで、今回の公演は和モノだし、新人さんがズラリと居並ぶ公演だし、舞台をまとめるために、小さくなるかと危惧していたので。しか〜し、まるで新人公演主演であるかのように、エネルギッシュな舞台に好感を持ちました。かつてツレちゃんがそうであったかのように、セリフの間を表情だけで埋め、客席をいじり、新進娘役を持ちあげてました。キーの高い霧矢大夢にもかかわらず、劇中ナンバーは結構低音のものが多く、とっても歌いにくそうなのに、キレイに歌おうとするのではなく、勢い良く歌っちゃうあたり、彼女の意気込みがわかるってもんでしょ?(実際、曲によっては「湖月わたるが歌ってるの!?」な状態でした)。大阪弁のキレの良さと、ボケや突っ込みはお手のものだし、しっとり芝居良し、コメディ良しと、彼女の魅力満載。文句なしの代表作と言えましょう。実際「これで退団になっても、明日から舞台に立てなくなっても悔いはありませんっ」な全力投球。この作品にかける意気込みを感じます。トップになれるかどうかで、健康問題がいつも浮上する霧矢大夢ですが、この舞台っぷりは、トップが内定したか、はたまた退団を決めて全力投球かのどちらかじゃないかなぁ、って勝手な憶測ですけど。
 そんなわけで、真ん中がキラキラしているもんで、専科コンビは主役を引き立てる役目から解放され、コメディ・リリーフとして大活躍。久しぶりに芝居に歌にセーブなしで暴走する二人の芸をたっぷり味わいました。ハッキリ言いまして「この場面はワタシが主役!」と思いながら演じているに違いありません。援軍としての専科ではなく、最前線で大活躍の専科たち。ハイッ、大好きです。嬉しそうに舞台に登場し、鮮やかにかっさらって行きます。客席の反応も凄かったです。霧矢&専科Sによって、近年まれにみる劇場中が爆発状態。素晴らしかった〜。
 そんな中心に引っ張られるかのように、組子たちも大活躍。夢咲ねねなんて新人とは思えない大物娘役ぶり。現在居並ぶ娘役トップたちはその地位が脅かされそうな勢い。歌や踊りが安定しているだけでなく、芝居が素晴らしいです。イキが良いというか、はねっかえりが良いというか、男役をいやがうえでも本気で芝居させてしまう「危険な香り」の芝居をします。相手が上級生であろうと容赦しない芸の厳しさ。芝居で必要とされるのであらば、お澄ましスタイルなんて捨てて、どっぷり役にはまるあたり「芝居好きなのね〜」と。この手のタイプの娘役は暴走することが多いんだけれど、ちゃんと相手に合わせて情感ある芝居もできて、今回の公演の大収穫。押し出しの良さと実力のバランスが取れているあたり、僕好みです。応援するわぁ。
 ベテランの嘉月絵理は相変わらず舌を巻くうまさ。元々童顔なので、ルックスとしては可愛い男役なんだけれど、メイクに凝り、セリフにドスを利かせ、見事な化けっぷり。それでいながら、初日のごあいさつで「劇場が大きくなった分、客席の反応がドッカーンときました」と挨拶する時には女の子。ギャップの激しいお方です。そして、下級生たちが意外にも芸達者。しっかり男役として芝居してます。女の子に戻らないのはアッパレ。男役として未熟な自分に役を引っ張ってくるのではなく、役に自分を合わせるのは苦しいだろうけれど、全員がエネルギッシュにそれに取り組んでいて、成果もあげているんですもの。客席から眺めていて、実に良い汗かいてました。「どう、良いでしょ!?」な表情に迫ってくるのもGOOD!! 着物着てジャズダンス踊るというとんでもないフィナーレなんだけど、ここまで堂々とされちゃうと、思わず「格好良い〜〜〜っ」と叫びそうになりましたさ。
 芸達者揃いにもかかわらず、本公演だとそれが生かされずちんまり。そして、分裂公演ともなるとそれぞれが評判良し。というのが現在の月組ですが、、、ということは、瀬奈じゅんと霧矢大夢の並びが効果的でないのか、はたまた作品(演出家)に恵まれてないのか。。。いずれにせよ、本公演でも組子一人一人がはじけて、実力を発揮しあう、そんな元気な公演に巡り合えますように!!


2007年06月09日(土)18:30-21:20
ミラノ・スカラ座バレエ団「ドン・キホーテ」@東京文化会館

 E席 5000円 5階-R1列-28番(第1幕)/3階-L2列-2番(第2幕)/3階-L2列-7番(第3幕) (パンフレット:2000円)

 指揮:デヴィッド・ガーフォース
 管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

 ドン・キホーテ:フランチスコ・セデーニョ
 サンチョ・パンサ(従者):ステファーノ・ベネディーニ
 ロレンツォ(宿屋の主人):マシュー・エンディコット
 キトリ(ロレンツォの娘)/ドルシネア:タマラ・ロホ
 バジル(床屋):ホセ・カレーニョ
 ガマーシュ(裕福な貴族):ヴィットリオ・ダマート
 キトリの友人:マリア・フランチェスカ・ガリターノ、ララ・モンタナーロ
 街の踊り子:ベアトリーチェ・カルボーネ
 エスパーダ(闘牛士):アレッサンドロ・グリッロ
 ドリアードの女王:ジルダ・ジェラーティ
 キューピッド:ソフィー・サロート

 オペラやミュージカルと違って、バレエはカンパニーによって別モノ作品として仕上げられます。使用する音楽だって、曲の順番も、テンポも違うんです。今回も、ドン・キホーテの部屋で始まるので「新国に近いヴァージョンかな?」と思ってたら、全然違ってて、もちろん、有名なソロやパ・ド・ドゥなんかは一緒だけれど、全然異なる色アイの舞台でした。
 で、スカラ座バレエの特色はというと「大人のドン・キホーテ」でした。おとぎ話なんかではなく、情熱的で色っぽいの。そして。舞台装置も衣装も豪華さが全然違います。やっぱり一流オペラハウスはバレエも一流ですわ。フリルの数も違えば、生地の質感が国内某バレエ団とは別世界(って、どこのバレエ団かバレバレですね。新国ではありません)。やっぱり、夢の世界に浸りに来るので、現実に戻されない舞台というのは必須でしょう。そして、コールドのみなさんも「シンプル」だとか「個を殺して集団としてまとまる」なんて考えちゃいなさそうなのがラテン系バレエ団。本来、通行人程度の役であっても、アピールしまくり。目くばせのひとつ位、お茶の子さいさい。恋人キトリなんて何のその「私はバジルが好き〜っ」と情熱的に迫っていきます。で、これがバラバラな舞台なのかというとそんなことはなく「みんなが目一杯個人アピールする」ことにより、結果的に「全員が統一された」バレエとなるわけです。この中に禁欲的ダンサーが混ざったら目立つぞ〜(笑) 言いかえれば、コールド不在のバレエ団。全員がソリスト気分になってます。
 そんなバレエ団に客演するのはタマラ・ロホとホセ・カレーニョの、現&元ロイヤルコンビ。ロイヤルスタイル(ってここも統一感のないバレエ団ですが)がスカラ座には合わなさそうですが、ラテン系ダンサーの二人なので、濃厚なアモーレの世界。喧嘩(というかからかい合い)も派手なら、パ・ド・ドゥも濃いこと、濃いこと。典型的日本人の僕としてはあてられっぱなしです。有名なナンバーも単に振り付けをなぞるだけ(←淡泊になります)のではなく、力の抜き入れが抜群。よって、勢いで回ってしまいそうなターンも、回転の中にリズムやスピードの変化アリ、足あげひとつ、スピード調整が完璧。筋肉の美しさ、人間の動きの美しさでタップリ酔わせてもらいました。そして、骨格の立派さを生かした力強い動きの数々には、同じ人間とは思えない悔しさすら感じました。日本人ダンサーの場合、小さい・華奢・セックスレスというイメージが強いけれど(そして、実際その通りなんだけど)、役に合わせてダンサーを選べるシステムになるのはまだまだ先のことでしょうね(女性ダンサーはそうなりつつありますが)。ロホ&カレーニョのダンスは「いい? ドンキってこうやって踊るんですよ」という貫禄と自信にに満ちてました。
 バレエはアムールです。そして、アムールには何が必要なのか? ということを考えさせられるステージで、目線の飛ばし方、体の使い方、音楽への合わせ方など、ひとつひとつが「!」の連続。派手なテクニックが好きな僕のお気に入りバレエのひとつが「ドン・キホーテ」なのですが、テクニックよりもメンタル面で感銘を受けようとは思いもしませんでした。あ、もちろん、テクニックは凄いんですが、それ以上にメンタルが舞台を支配していたので。。。こんなに官能的なドンキは初めてです。そして、完全にハマりました。ひたすらウットリと舞台に酔いしれたひと時でした。願わくば、シティ・フィルではなく、スカラ座オケも同行してくれれば良かったんだけどねぇ〜〜〜。


2007年06月16日(土)18:00-21:05
宝塚歌劇団月組「ダル・レークの恋」@神奈川県民ホール

 S席 6500円 1階-7列-37番 (パンフレット:1000円)

 演出:酒井澄夫

 ラッチマン:瀬奈じゅん(麻路さき)
 カマラ:彩乃かなみ(星奈優里)
 ペペル:大空祐飛(稔幸)
 インディラ:出雲綾(立ともみ)
 チャンドラ:越乃リュウ(夏美よう)
 ハリラム:一樹千尋(専科)(千秋慎)
 クリスナ:遼河はるひ(絵麻緒ゆう)
 リタ:城咲あい(羽純るい)
 アルマ:憧花ゆりの(朋舞花)
  ( )は1998年3月帝国劇場公演

 インド版「風と共に去りぬ」といったストーリー。さすがに1959年月組公演は観ていないので、1998年の星組公演以来の観劇です。同じ恋愛ものでも、感情的な星組公演と、理性的な月組公演とでもいいましょうか。組の個性がとても出ていて、それでいて、どちらも魅力的な仕上がりです。月組は前回の公演でダレン・リーを振り付けに招聘していたので、今回の公演も星組公演の時のダレン・リーの振り付けが再現されるのかと思っていたのですが、これは誤算でした。KAZUMI-BOYがダンサー揃いだった星組とは別に月組用に新しい振り付けを提供。これがまた現在の月組スターの魅力を発揮させる良い出来でして、思わずジュルッ。
 さて、瀬奈じゅん演じるラッチマンですが、宝塚の男役トップスターの演じる役には珍しく、悪の匂いがプンプン漂う、美味しい役です。色悪の魅力とでもいいましょうか、格好良さに拍車がかかります。瀬奈じゅんはパッと明るいキャラよりも、どっしりと構えたクラシカルな役の方が似合うタイプなので、今回はドンピシャリの当たり役。1998年の星組公演は、男役としてのピークを迎えていた麻路さきによる妖しい色気ムンムンの色っぽいラッチマンでしたが、瀬奈じゅんのラッチマンは甘さよりも軍人のキリリとした面が前面に出ていた気がします。「お殿様、お戯れを〜」のダンス場面も、18禁の空気はさほどなく、恐い人になっていたのもその個性ゆえ。
 彩乃かなみは、お姫様というよりも、お嬢様だけれど、これまたインドの衣装が似合ってるのと、たっぷりと芝居の見せ場が与えられているのが嬉しい。第一幕では心を偽ってラッチマンを拒絶するのですが、心の両面を観客に示すのが上手いですわ(「風と共に去りぬ」だったら、スカーレットとスカーレットIIが登場しそう)。ラッチマンとのバレエシーンは、ホントにラッチマンが憎そうで、その逞しさが好きやわぁ(嫌よ嫌よも好きのうち、な星奈優里とはこれまた個性が違うので、同じ場面なので印象が異なって面白れ〜〜〜っ)。そして、第二幕ではラッチマンにキッパリ振られちゃうんですが、ここはお姫様役者ではないかなみちゃんだと、振られてもしっかり生きていけそうなんですよねぇ。星奈優里のカマラはラッチマンに振られた後の「ホタルの墓」状態が壮絶でしたが、かなみちゃんだと次の人生設計を立ててそうwww 本編でもダンスシーンが結構ありますが、フィナーレでの踊り曼荼羅で大きなソロを与えられて、それをきっちり魅力的に仕上げるあたり、さすがトップ娘役の風格が漂います。
 ピラミッド式のスターシステムがまだ確立しきってない時代の作品とあって、ラッチマンとカマラ以外はあまり序列がない作品なんです。下手したらトップコンビと新人たち、という振り分けをされかねない作品にもかかわらず、月組のベテランがズラリと並んだとあって、若手には出せない重厚感出ていた気がします。この重厚感は王族の貫録にもつながって、やはり上級生は上手いなぁ、と。二番手扱いの大空祐飛も、出番はほんのわずか。おまけに彼女はダンサーでも歌手でもないので、正直、ショースターとしての魅力は僕にはないのですが、きっちりと存在感をアピールしちゃうのですから。そして、毎公演美声を響かせてくれる出雲綾組長が、今回はなんとソロなしという贅沢な使われ方。専科の一樹千尋はラッチマンの父親役がメインですが、その他にも貴婦人や庶民のおっちゃんなど、チョイ役でこれまた雰囲気作りに大活躍。そんなわけで、若手が登場するといかにも「若手」っていう未熟さが出ちゃいますが、本公演ではありえない見せ場が与えられるのも地方公演ならでは。今回の抜擢が将来に向けてのステップとなりますように!
 そうそう、桐生園加のダンスですが、彼女の踊りを見ると、元花組トップの大浦みずきを思い出します。キレの良さ、キザり方、動きの滑らかさ、どれもとっても魅力的。群舞の中でもひときわ目を引きます。場面によっては、トップトリオを差し置いて、思わず注目! 今の宝塚で1、2を争うトップダンサーじゃないでしょうか(歌は……いらなかったwww)
 今の月組で本公演で上演するには役が少ない作品ですが、コスプレの美しさ、男役としての芸の楽しさ、一癖も二癖もある登場人物の多面性、どれをとっても「ザ・タカラヅカ」なこの作品。ツアーとしては豪華なセットを用意していましたが、ここは一つ、日生劇場公演で、しっかり組んだセットで濃厚なスターさんで、また再演してほしいです。スターの個性によって、別の輝きを放つ作品だと思うんですよねぇ。地方公演だけで終わらせるのは勿体ない!!


2007年06月17日(日)14:00-18:35
新国立劇場「R.シュトラウス:ばらの騎士」@新国立劇場オペラ劇場

 B席 12600円 2階-1列-1番 (パンフレット:800円)
 指揮:ペーター・シュナイダー
 演出:ジョナサン・ミラー
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 元帥夫人:カミッラ・ニールント
 オックス男爵:ペーター・ローゼ
 オクタヴィアン:エレナ・ツィトコーワ
 ファーニナル:ゲオルグ・ティッヒ
 ゾフィー:オフェリア・サラ
 マリアンネ:田中三佐代
 ヴァルツァッキ:高橋淳
 アンニーナ:背戸裕子
 警部:妻屋秀和
 元帥夫人の執事:秋谷直之
 ファーニナル家の執事:経種廉彦
 公証人:晴雅彦
 料理屋の主人:加茂下稔
 テノール歌手:水口聡
 帽子屋:木下周子
 動物商:青地英幸
 レオポルド:三戸大久

 素晴らしいプロダクションです。評判が評判を呼んで、当日券を入手するのは至難の業。僕なんて平日マチネ公演の当日券、発売一時間前から並んだにもかかわらず爆死してます。今日はあらかじめ前売りで購入しておいたやつですが、劇場に到着してみれば、キャンセル待ちの列の長いこと、長いこと。まるで「これから当日券を発売します」みたいな状態。人気のほどがうかがえます。
 このオペラ、あまりにウィーン色が強いのと、音楽的難しさで来日公演以外ではほとんど上演されていません。今回の新国立劇場版は日本の団体が上演するものとしてまだ数回目のハズ。でも、変な緊張感はなく、出演者からは作品にかける意気込みが伝わってきますし、客席は「この作品大好きっ♪」な空気が流れていて、満員に膨れ上がった劇場には実に良い空気が流れていました。ま、この作品に「一生懸命」だとか「熱演」なんて言葉は似合いませんもの。R.シュトラウスの香り高い音楽と、誇り高きウィーン貴族たちの物語に酔いしれるのがふさわしいってもんです。ワタクシごとですが、前夜の徹夜により、ちょっと意識朦朧。でも、大好きな作品なだけに、眠くなるなんてことはなく、ちょいといただいたワインも良い作用で、夢見心地な四時間を過ごしてまいりました。「今がとっても幸せ♪」な日曜日の午後。シアターゴーアー最高の瞬間です。
 さて、今回のジョナサン・ミラーによる演出は舞台を1911年に以降。日本人にはとうてい似合わないロココの舞台装置と衣装から解放されたのが今回の成功の要因かもしれません。それでいて、適度に豪華な舞台。そもそも「ばらの騎士」なんて制度はこのオペラでのみ存在する架空のおとぎ話。となったら、舞台自体もおとぎ話に徹していただきたいわけで、今回の奇をてらわない演出はホッと安心。(二期会で上演したものは下品になりすぎてて僕は苦手)。ちなみに、今回は主要キャストを欧米人が演じているので……来日公演を観ているような気分だったのも事実。新国ならではのことですけど。
 今回は、貴族社会が無条件に君臨していた台本の世界ではなく、貴族社会の崩壊寸前、たそがれ時の「ばらの騎士」とあって、舞台は華やかな中にも影が落ちてます。第一幕の最後はマルシャリンがもの思いにふける中、幕が降りてくるのですが、今回のマルシャリンはタバコをくゆらせながら、雨の降りしきる窓の外(照明が素晴らしかった!!)を眺める中、幕となります。彼女の心情を表現するのに、雨を用いるなんて何て心憎いんでしょ。まだ1/3しか終わってないのに「今回は名演だ!」と勝手に決め付けちゃった程。第二幕のかの有名な「ばらの騎士の儀式」も、これ以上ありえないってほど、オーケストラがキラキラな音楽を奏でる中、オクタヴィアンが登場しますが……地味っ。ここに関してだけはブーイング。オクタヴィアンがお付きの者と同じ衣装、それもネイビーカラーだなんて。これはアンドレの色です、平民の色です。やはりここは純白に金の刺繍の豪華絢爛な衣装で音楽に負けずにキラキラしていただかなくてはっ! ファンファーレが鳴り響いての登場なので、思わず拍手しちゃうってほどでなけりゃ、ゾフィーが一目ぼれしちゃうのに納得がいきませぬ。きばるところはきばって欲しい。。。でもって第三幕ですがクライマックスの三重唱の前ではどんな演出もぶっ飛んでしまいます。音楽だけで至福の異次元にいざなわれてしまうので、視覚上のことなんて気にならなくなっちゃうんです。ソプラノだけの透明な響き、愛の譲渡という精神の極み、長時間演奏してきたオケも「最後の聴かせどころっ」と盛り上がりますし、他に何を望むっていうんでしょう。マルシャリンが先頭を切って最初のフレーズを歌いだした瞬間に何もかもがフリーズです。一幕の最後では情緒不安定になってこの瞬間を恐れていたのに、いざその瞬間になってみればなんと清々しいんでしょう。おそらく、恐れというものは、それを待ち構えている時の方が数段ツライんでしょうね。逆に恐れが訪れた=恐れがなくなる瞬間でもありまして、どことなく卒業式を思わせるものがあります。マルシャリン、オクタヴィアン、ゾフィーが微妙に立ち位置を変えながら、実に細やかな感情表現がなされていました。もう、このシーンは涙なくしては観られませぬ、聴けませぬ。あぁっ!
 今までこの作品を観る時は、ばらの騎士=オクタヴィアンを中心に眺めていたんです。坊や→青年への脱皮という変化がドラマティックでしたから。そして、年齢も17歳という設定なので、特に大学生の頃なんて、自分がオクタヴィアンになったかのような気分で舞台に接していたもんです。が、今回はマルシャリンに舞台制覇されてしまいました。芝居の中では大御所的扱いですが、そんなに年増じゃないと思うんです、この役。彼女も娘→成熟した女性への脱皮なのかなぁ、と思ったのは今回が初めて。オクタヴィアンと遊び呆けていた生活が一瞬にして崩壊するなんて何てドラマティック。もちろん、片方の目に涙をためて毅然として舞台を去る彼女には取り乱すなんてありえないので、今までちと気付かなかったのですが、そういえば、彼女の心情を表わすしかけがそこここになされていて、胸がキュンと(死語?)なりました。引き際が実にみごと。僕好みの、格好良い大人の女です。オクタヴィアンが彼女の元を去るのが信じられないわぁ。
 逆に若さゆえの残酷さが浮き彫りになったのがオクタヴィアン。言っときますが、僕が今まで触れた中でも最高のオクタヴィアンですよ。美しいったらありゃしません。返す返すも第二幕の衣装が白地に金のロココ調でないのが悔やまれます。ファスベンダーのオクタヴィアンは「無理して男の子の芝居してます」というものでしたが、ツィトコーワのオクタヴィアンは適度にテンションが低いあたり、まずは芝居巧者なところを見せつけます。ティーンエイジャーの男の子は、ダルダルなもんです。そして、自然に舞台上で坊やしてました。ちょっとしたしぐさが、目くばせが男の子なんです。この芝居、ティーンエイジャーの頃のディカプリオを思い起こします。起き抜けに「昨夜のキミのsexは最高だよっ!」をはじめとするノー天気なセリフの数々も「まだ坊やだもん、それ位、口走っちゃうよね」と妙に説得力が出るってもんです。歌はちょっと野太い印象はありますが、ウィーン公演ならいざしらず「トーキョーカヴァリエ」としてはこれ位の強さがふさわしいです。
 で、個人的あんまり感心しなかったのがゾフィー。いいんですよ、修道院から出てきたばかりの世間知らずなので「おぼこ娘」でも。生粋の貴族じゃないから、お嬢様度が低くても一向に構いません。でも、マルシャリンからオクタヴィアンを一瞬にしてかっさらう何かを感じなかったなぁ。お歌も、しっかり歌っているんだけれど、上っ面を滑るような歌声がもどかしい。。。ま、今回はマルシャリンもオクタヴィアンもパワフルなので、損なんですけどね。日本人アンサンブルがカツラと衣装が似合わないのは覚悟していましたが、ゾフィーちゃんもドレス姿がいけてない。。。んもうっ。ブツブツ。。。
 オックス男爵は野暮野暮な田舎貴族ではなく、やや垢ぬけた俺様キャラな設定。欲深くてエッチだけれど、そして今回は総スカンをくらってしまうけれど、魅力的な人かも、と思わせます。今まで、貴族だということでチヤホヤされているだけに、傲慢なんだけれど、マルシャリンにたしなめられると妙に素直だし、意地悪さよりも駄々っ子さを感じました。マリアンデルを口説く時、「この曲は俺の好きなナンバーだ!」とゴキゲンになる時、実に幸せそうな無垢なお顔に。困り者だけれど、ひねくれ野郎ではありません。それだけに、彼の味わう挫折感に同情してしまいました。独裁可能だった世界の崩壊。「ばらの騎士」というとマルシャリンの環境の変化が注目されますが、実は男たちも挫折を味わうわけです。オックスは既に述べた通りですし、ファーニナルは「予定通りうまく行かない」ことに順応することを学び、オクタヴィアンなんて自分で自分の感情の変化に戸惑いをおぼえます。今回は個々の心情が実に丁寧に描かれていて、面白〜い。
 さて、唯一思い通りに生きているのがヴァルツァッキ。日本人は大きな表情や位取りをする様式芝居は似合わないけれど、この手の細かな芝居はなかなかのもの。高橋淳はメイクに凝り、表情に凝り、これまた目を離したくない一人。離したくない、と書いたのは離しちゃうからwww だって、マリアンネがいるんだもん。彼女の芝居は絶品です。舞台の奥の奥、もしかしたら一階席からでは見えない位置でも手を抜くことなく、舞台上の出来事を伺い、次の打つ手を企ててる様は、ゾクゾクするような楽しさに満ちています。目の力が違うんです。ギョロリと華やかな欧米人の目に負けていません。そして、相手を油断させる時はとたんにダラリ舞台そででパンを食いちぎり、それがボソボソなもんだから、ついでにスープをかっくらうまでの流れは無言芝居なのですが、実にやる気に満ちていて、思わず注目。舞台の上での存在感をクローズアップさせたり、逆に消滅させたりの切り替え術に長けていて、まるで猫みたい(トート閣下でも良いや)。失礼ながら、オペラ歌手の方がここまでの芝居を見せてくれるとは思ってもみませんでした。最優秀助演賞モノです。
 ……すっかり長くなってしまいましたが、今日だけかどうか気になったのがいくつかあるので、残りは箇条書きに。(1)ヴァイオリンがフラフラで、幕切れのソロの長い音が「途切れるなよ〜」状態。 (2)金管が美味しいところでやたらとひっくり返ってくれました。東宝のオケみたい。。。ま、演奏時間考えたらお疲れですよねぇ。。。 (3)オックス男爵は手酌でワイン(たぶんジュース)をグビグビ。あれよあれよと言う間に1リットル近く飲み干してしまいました。急にそんなに飲んでも平気で歌えることに感服。でも、トイレは大丈夫なのやろか? (4)三幕で給仕がスープをオックス男爵にはスープ皿にサーブ。でも、オクタヴィアンにはワイングラスにサーブ。グラスの中にはまだワインが残っていたので、淡い紫の美しいスープに。で、オクタヴィアンは涼しい顔して、それをスープ皿にぶちまけてましたが。。。 (5)黒人の坊やは通常、最後の最後にゾフィーの落したハンカチを拾いに来ますが、今回はサービステーブルに直行。ブドウをむさぼり食う中幕。ハンカチ拾った上での芝居なのか、そもそもハンカチについては無視の演出なのか、はたまたハンカチを落とすのを忘れての応急処置なのか。。。謎です。


2007年06月19日(火)19:00-21:45
新国立劇場「ヴェルディ:ファルスタッフ」@新国立劇場オペラ劇場

 C席 6300円 3階-4列-52番 (パンフレット:800円)
 指揮:ペーター・シュナイダー
 演出:ジョナサン・ミラー
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 ファルスタッフ:アラン・タイタス(ベルント・ヴァイクル)
 フォード:ヴォルフガング・ブレンデル(ウラディーミル・チェルノフ)
 フェントン:樋口達哉(ジョン・健・ヌッツォ)
 医師カイウス:大野光彦(ハインツ・ツェドニク)
 バルドルフォ:大槻孝志(中鉢聡)
 ピストーラ:妻屋秀和(妻屋秀和)
 フォード夫人アリーチェ:セレーナ・ファルノッキア(スーザン・アンソニー)
 ナンネッタ:中村恵理(半田美和子)
 クイックリー夫人:カラン・アームストロング(アレクサンドリーナ・ミルチェーワ)
 ページ夫人メグ:大林智子(増田弥生)
 ( )は2004年プレミエ公演

 「ばらの騎士」の酔いがまだ醒めずに劇場にフラフラ入って当日券を衝動買い。もともと、スケジュールの関係で観られないかも、という公演だったのですが、運良く観られてとっても嬉しい。おまけに三階席最後尾の端。ここは舞台全体が見渡せるし、音は良く飛んでくるし、乗り出そうが踏ん反り返ろうが誰の邪魔にもならないのでお気に入りなんです。ま、位置に関係なく、新国は三階席がオススメです。
 今回は再演になるのですが、ピストーラ:妻屋秀和以外はキャスト一新。全体的にレヴェルアップしました。何のレヴェルかというと、コメディのレヴェル。前回も立派な歌手が揃っていましたが、コメディが似合わない人が多かったので、作品の面白さが今思うと半分しか伝わってこなかったんです。が、今回は芸達者が揃ったおかげで、始終クスクス笑いっぱなし。ファルスタッフのアラン・タイタスは難しい顔して歌う人というイメージがあったのですが、思いっきりそのイメージを壊してくれました。クルクルかわる表情が実に愛らしいんです。そして、意外にも(失礼!)動きが軽やか。ステップ踏んで踊っちゃうし、身振り手振りはディズ二―アニメみたいだし、洗濯かごへも「ドッコイショ」とまたいで入るのではなく、お尻からドスンッと落ちていきます。ヌイグルミが動いているみたいで可愛い♪ そんな彼に「世の中全て冗談さ!」なんて歌われちゃったら「そうだ、そうだ」と合わせるしかないじゃないですか! きっと、彼は懲りもせずナンパを続けるでしょうし、いまさら品行方正になんてなりっこないけれど、それでも「人間だもん、仕方ないよね」と苦笑して許される姿が想像できるんです。そして、冗談だらけのようでいながら、歌唱は誰よりもパワフル。拡声器が付いているかのような別格ヴォイスに惚れぼれ。そういえば、僕が今まで観てきたファルスタッフって、枯れたおじいちゃんか、マジメ一本槍の人ばかりだったので、目からウロコの面白さでした。きっと、シェイクスピア大先生も天国で大喜びしていることでしょう。
 もう一人凄かったのがフォード:ヴォルフガング・ブレンデル。こちらは、気の良い兄ちゃん(おっちゃん)を演じるのはお得意。となると、タイタスvsブレンデルの芝居合戦が実に見事。狸同士の化かし合いの緊張感が満ちていて、丁々発止の応酬が実に見応えありました。ブレンデルも楽々と声を出しているのに、劇場中にビンビンに響き渡るんです。その余裕っぷりと芝居がリンクして、凄いものを聴いているのに、客席は肩の力が抜けます。とにかく、おっちゃん二人組の牽引力たるや、「ばらの騎士」のソプラノ・トリオに負けちゃいません。あちらが精神の極みであれば、こちらは自由自在の極み。これらの作品を交互に上演しようと決めたプロデューサーに脱帽です。とってもバランスがよろしゅうございました。
 おっちゃんたちが茶目っ気に溢れていると、おばちゃんたちも思う存分舞台で暴れられて気持ち良いもんです。フォード夫人アリーチェ:セレーナ・ファルノッキアなんて、おっちゃんそれぞれと大きな見せ場があって、女の手練手管の数々を披露。「女って恐いわぁ」と背中をゾクゾクさせながら笑っちまいました。歌のスケールも大きくて僕は大好き。そして、その娘ナンネッタ:中村恵理はとっても涼やかな声。濃い&暑い演唱の中、一服の清涼剤のよう。リリカルにリリカルに、劇場中が柔らかな響きに包まれました。リリカルといえば、終幕での女声コーラスが透明感があって、幻想的で実に素敵でした。僕がゴージャスな声が好きなので、今まで新国の女声コーラスを褒めた事はないんですけど(多分)、今回はたっぷり堪能。クイックリー夫人:カラン・アームストロングは既に声を失っているので、ナンネッタとは対照的に、歌い回しだけで勝負。芝居心あふれた歌なもんだから、ところどころ音痴にもかかわらず、ブーが飛ぶどころか拍手喝采。かつての名歌手の見事な脇役への転身ぶりに目を見張りました。
 そういえば「ファルスタッフ」ってイタリア・オペラなんですよね。シェイクスピア色が強いのと、キャストにイタリア人がほとんどいないのと、何よりも、ドイツ系おっちゃんのカラーが濃厚なので、標準的な上演じゃないかもしれません。美術だってオランダ絵画をモチーフにしているし。でも、でも、ここまで僕を楽しませてくれた「ファルスタッフ」は今回が初めてなんです。オペラって音楽だけでなく、いわゆる総合芸術なので、美術やお芝居に魅力を負う比重も結構あって、それらのバランスさえ良ければ結構楽しめるもんです。フィナーレのフーガに至っては、作品の中だけでなく、今年度をもって新国を退任されるノヴォ芸術監督へのオマージュにも聞こえて、思わず涙。革新的政策で、すったもんだがありましたけれど、確かな足跡と成果があったんじゃないかな。ようやく彼の采配による上演の成果が出てきたところなので、あと1シーズン続けて欲しかったなぁ。。。寂しくなります。


2007年06月23日(土)17:00-20:10
東宝「レ・ミゼラブル」@帝国劇場

 B席 4000円 2階-M列-5番 (パンフレット:1500円/2000円)

 演出:トレヴァー・ナン、ジョン・ケアード

 バルジャン:橋本さとし
 ジャベール:阿部裕
 エポニーヌ:笹本玲奈
 ファンテーヌ:山崎直子
 コゼット:富田麻帆
 マリウス:小西遼生
 テナルディエ:三谷六九
 テナルディエ夫人:田中利花
 アンジョルラス:原田優一
 リトル・コゼット:柳下花恋
 リトル・エポニーヌ:赤石玲子
 ガブローシュ:原田光

 長大な小説を短時間にまとめているので「ハリー・ポッター」の映画版のごとく、ダイジェスト色がどうしても強くなってしまいます。現在上演されている「レ・ミゼラブル」は短縮ヴァージョンなので、曲のあちこちが刈り込まれていたり、余韻を感じる間もなく次の場面へ移ってしまったり。最近の演劇界は無感情でサラサラ進行するのが主流みたいだけれど、この作品はいわゆる時代劇なので、タップリ演じて欲しいな、というのが正直なところ。ブロードウェイじゃないんだから、東宝はオリジナルのノーカット版の上演というわけにはいかないのかしらん? 以前は暗転しても小芝居が舞台上で続けられていたのに、今やまだ薄明かりが残っているのに、舞台上の役者たちがはける事に一生懸命。優雅な白鳥も水面下の水かきを見せられちゃ台無し。指揮の塩田明弘がせっかく余韻ある演奏でフォローしてくれてもお構いなし。あらら。。。
 さて、東宝版「レ・ミゼラブル」も初演からついに20周年。20年間エポニーヌ一筋の島田歌穂、ブランクをあけた後に再登場の鹿賀丈史、岩崎宏美、阿知波悟美(鳳蘭とWだった初演以来だ!)、年を重ねるうちに役をシフトしている今井清隆、石川禅、今拓哉、安崎求、さらにはアンサンブルからの出世組、子役からの成長組などなど、すっかり「レミゼ・ファミリー」が形成されています。今年はかなりキャストの入れ替えがあり、初役となる人がズラリ。初演帰りと言いましょうか、無名の俳優さんの起用が目立つように見受けられます(それぞれキャリアはある方ばかりですけど、大物はいない)。そして、上演のたびに大なり小なり演出のチェンジが加えられていて、今回は仮出獄したてのバルジャンが宿屋に宿泊拒否されるシーンが復活、ガブローシュのナンバーの入れ替えなどが行われました。あ、この20年の間の変更点をまとめたら、かなり面白い特集ができそう! おーー、企画案ですよ〜>編集長様!
 ということで、初日から一週間ほど経ちますが、舞台はまだまだ混沌としています。クワトロキャストが基本のメインキャストは自分の役にいっぱいいっぱいだし、アンサンブルの面々もまだ手に汗握る状態でアップアップしてます。正直、新人公演を観ているような、プレビューを観ているような、そんな気分。本公演のレベルにはまだまだです。ま、これは大幅にキャストが入れ替わる度に思うことではありますが。
 レベルがかなり落ちてしまう反面、新たな発見があるのは入れ替えならでは。20年も上演され続けているうちに、かなり日本に帰化し、親子モノとして、片思いの恋愛モノとして、かなりお涙頂戴になっていたのですが、今回はかなりドライです。エポニーヌ→マリウスのキスも、マリウスとアンジョルラスの恋愛に近い感情も(ロンドンでは一時期、この二人が○×※って演出の時も!)カット。それとない表現におさまってます。代わりに一定の年齢以上になると、親子の関係から大人同士の関係へとシフトするフランスの家族環境がクローズアップ。そして、宗教にせよ法律にせよ「契約」の絶対性の高さが浮き彫りになっているのが今回の特徴です。かなり辛口の作品にリニューアルされました。もっとも、これは本日の感想なので、キャスト変われば感想も変わる可能性大ですが。。。
 で、この変化に大きく関わっていたのが橋本さとし。初演の時の滝田栄や鹿賀丈史よりも年齢が上のるはずなのですが、かなり若々しいです。これは動きの滑らかさや大きさも関係しているんでしょうか。まだまだ現役のエネルギーに満ちていました。コゼットの育ての父親よりも足ながおじさんの感覚。このままコゼットと恋仲になっても納得できちゃいます。父性愛の甘さは影をひそめ、神との契約ゆえに人格者としての言動を取ることがクローズアップ(神との契約はバルジャンではなく、司祭様によって代理契約されちゃったわけですが)。随所でみられる天井桟敷を見上げる芝居や、十字を切る仕草、「ブリング・ヒム・ホーム」をはじめとするナンバーの数々は「神との対話」として昇華。普段、宗教に縁のない生活を送っている僕ですら「ハッ」とするような宗教色濃いバルジャンの登場です。正直、歌は技術面での厳しさがあるんです。でも、あえて楽譜に忠実に歌おうとするあたり、これまた契約色に貢献。絶唱ぶりがバルジャンのギリギリのところで生きている感じで切ないです(絶唱しても絶唱にならないあたり、技術点の低さを芸術点に引き上げている印象。あ、音域は広いです)。そして、コゼットをマリウスに託したことで契約完了。安心して息を引き取るわけです。正直、ミュージカル版は台本上で省略が多くて、すべての展開がやたらと唐突なのですが、「ばらの騎士」におけるマルシャリンじゃないけれど、自分の保護下にあったコゼットを大人の女性として送り出すわけ(「ばらの騎士」だと少年だったオクタヴィアンが大人の男性としてゾフィーと結ばれることを後押し)。もちろん「俺のものじゃない〜♪」と人間臭さを残してはいますが、基本的にメガネにかなった男性(マリウス)にコゼットを託して自分は身を引く。。。最後の三重唱、かなり泣けました。「レ・ミゼラブル」は音楽の美しさに酔っちゃうことが多いけれど、その中に潜む芝居の深さに打たれるバルジャン♪
 神との契約に生きているバルジャンに対して、法律との契約に生きているのがジャベール。立場こそ違えど、この二人って思考回路がソックリです。契約を成就したバルジャンはお出迎えの中、天国へと旅立ちますが、契約を破棄したジャベール(バルジャンの逮捕をやめたこと)は、ゲームオーバー。もはや自殺するしかありません。そして、カトリック教会において自殺は許されざる行為。「みじめな人々」の主人公はジャン・バルジャンですが、クライマックスで一番みじめになるのはジャベールかな。心の動きがかなり大きくて、美味しい役です。阿部裕のジャベールはスターオーラこそ感じられませんでしたが、黙々と職務を遂行するキャラクターにはピッタリ。まじめで不器用ゆえに自殺に走るのも納得です。異議をはさむスキを与えない、重みのある声もナカナカ。色気や洒脱さは……別ジャベールにお任せwww。職人型ジャベールでした。
 その他のメンバーはまだ弱点の方が強くて、今の段階ではかなり厳しい方が多いです、正直なところ。これから千秋楽に向けて、どう変化していくかは楽しみですが……リピーターならともかく、一回だけ観劇の人にはちと失礼な状態かも。山崎直子ファンティーヌは声域が合わずに低音がまったく聞こえないけれど(この役、音域広いので、みなさん高音か低音のどちらかに苦しんでますね)、薄幸ぶりが似合ってて適役。富田麻帆コゼットは声が薄っぺらいのと、表面的に音を取っているだけなので用なし。姿が可憐なわけでもなく、なぜ起用されたか疑問。小西遼生マリウスも近年まれに見る歌の不安定さ。歌いだしと同時に椅子からずり落ちました。発声のポジションがおかしくて、音は震えちゃうわ、音程も揺れちゃうわ、何よりも声量がないままノッペラボウなお歌に辟易。顔で選ばれたのがアリアリのキャスティング。コゼット&マリウスが大根歌コンビなので、バルジャンはやりきれんわなぁ。ミュージカルにおける歌は、オペラと違うので、技術的なものや統一感は(あるにこしたことはないけれど)なくてもなんとかなるんです。でも、一本調子の歌だけはいけません。役者が歌っている強みを放棄してどうするよ!?!? 「役者歌」が歌えてこそミュージカル俳優ってもんです。
 そんな意味で、まだ役がこなれていないものの、三谷六九テナルディエ、(地方公演では登場しているけれど東京は初登場の)田中利花テナルディエ夫人はキャリアの差とでも言いましょうか、ナンバーの中に芝居を見せるのがお上手。そして、唯一の続投役者として笹本玲奈エポニーヌがスターとしての見せ方と、相手のセリフや言い回しに対するアンサンブル芝居に、他キャストとは段違いのものを見せてくれました。ミュージカルスターとしての彼女のスター性や実力はいまだ良くわからないけれど(あるんだか/ないんだか、上手いんだか/下手なんだか、作品によって波が大きい)、彼女が出てくると安心。


2007年06月28日(木)18:30-21:25
新国立劇場バレエ団「ドン・キホーテ」@新国立劇場オペラ劇場

 B席 4400円(バレエ・プルミエ/ATRE会員割引) 3階-2列-32番 (パンフレット:800円)

 指揮:エルマノ・フローリオ
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 キトリ:スヴェトラーナ・ザハロワ(シーズンスペシャルゲスト、ボリショイ劇場バレエ)
 バジル:アンドレイ・ウヴァーロフ(ボリショイ劇場バレエ)
 ドン・キホーテ:長瀬信夫
 サンチョ・パンサ:奥田慎也
 ガマーシュ:ゲンナーディ・イリイン
 街の踊り子:西川貴子
 エスパーダ:市川透
 キトリの友達(ジュアニッタ):遠藤睦子
 キトリの友達(ピッキリア):本島美和
 メルセデス:湯川麻美子
 ギターの踊り:大森結城
 ジプシーの頭目:冨川祐樹
 二人のジプシー:グリゴリー・バリノフ、吉本泰久
 森の女王:川村真樹
 キューピッド:さいとう美帆
 ボレロ:楠元郁子、マイレン・トレウバエフ
 第1ヴァリエーション:寺島まゆみ
 第2ヴァリエーション:本島美和

 幕開きからいきなりゴージャス。装置の豪華さといい、衣装の質感や装飾といい、これぞバレエの醍醐味! 新国の広い舞台を集団で踊り倒すエネルギーは圧巻です。新国バレエは楽しんで踊っているのが感じられるのが嬉しい。お坊っちゃま、お嬢様揃いの東京芸大を彷彿とさせるカンパニーです。努力とか汗とかいう言葉が舞台ににじみ出ちゃうのは個人的に大嫌いなので、まずは出演者が楽しんでいるのは僕のハートをくすぐります。新国バレエ団はオープン時から新しいスターの育成に力を注いでいますが、その甲斐あってか、今回も脇役にいたるまで主役経験者がズラリ。やはり、主役経験者は舞台での輝き方が違います。通常だったら「プリマの踊りの繋ぎね」と眠くなるような小さな踊りも「ふふん、私が踊るとこんなに素敵でしょ、それでいて余裕でしょ」ってなるのが嬉しい。ま、今回は余裕が出すぎてしまったのか、はたまたソリストへの抜擢が多すぎたのか、群舞の一部はかつての勢いが失せていたような気もするのですが。。。いずれにせよ、ここ毎月のように観ている「ドン・キホーテ」ですが、誰にでもオススメできるのは新国版。美術も技術もオケも良かった。バレエ公演だとひどい演奏を平気でしでかす東フィルですが、今回は力が入ってました。ハープのソロも音に色気があって、滑らか&鮮やか。弦も管もノリノリで、来日公演や東京バレエ団公演を担当した某オケとは段違い。
 とはいえ、登場しただけでそんな面々を支配しちゃうのがザハロワ。彼女の足さばきは今や世界一じゃないでしょうか。バネを利かせるのでもなく、無重力のごとく、気がつけば足が頭上にある、とかでもなく、「重力をコントロール」しちゃってます。足あげ一つ一つが実に優美でコントロールされたもの。そして、終始笑顔を絶やさないので、美貌がさらに際立ってました。どんな凄いテクニックを披露しようと、苦しいポーズになろうと「楽しいわぁ」といった表情。一幕なんて、茶目っ気タップリ。先日のスカラ座バレエ団の「ドン・キホーテ」はラテンカップルによる熱さが魅力でしたが、本日のロシアン・カップルは恋の駆け引きぶりが楽しいコンビ。簡単にラブラブになるのではなく、互いの愛情を信頼しつつも、ゲームとして満喫しているのが小粋です。バランス芸のところはさっさと片付けてましたが、終幕の回転技連続披露においては、シングルの間にダブルを組み込み、さらにレベルアップ。それでいて、ますます技が冴えちゃうんえすから、この人の怪物ぶりは凄すぎ!
 バジルも、ちょっと前に怪我して休演した人なのが信じられない元気さ。ステップは若干勢いを抑えていたけれど、ジャンプになると、手足が長いのでちょっとの回転で遠くまで吹っ飛んでます。バレエは元来西洋人によって作られたものなので、同じステップでも、手足の長さでより映えるように作られているんです。こればかりは日本人はハンデを追っているのは仕方ありません。舞台人は技術だけでなく、ルックスも大きな武器になってしまうのが難しいところ。そんなわけで、ルックスと実力を兼ね備えたスターダンサーは、天下無敵! コンパスのごとき細長〜い足が、細かく鋭く舞台を駆け巡るのですから、これまた拍手喝采。息のあった最強コンビとして、劇場が割れんばかりの歓声に包まれました。再演モノで平日公演なのにもかかわらず、客席ビッシリというのが最高! 客席が大喜びなので、二人とも実にゴキゲン。
 もちろん、新国ソリスト陣も、大人の色気だとか、チームワーク抜群のお芝居、キュートなダンスなどで、それぞれの得意分野で実力発揮。素直に「楽しかった〜」と思える舞台ってありそうでないのですが、一幕目の段階でニコニコしたまま終幕まで見入ってしまいました。笑顔が数時間張り付いていたせいか、出演者じゃないのに、顔の筋肉が痛い!!


2007年06月30日(土)17:00-20:10
東宝「レ・ミゼラブル」@帝国劇場

 B席 4000円 2階-M列-51番 (パンフレット:1500円/2000円)

 演出:トレヴァー・ナン、ジョン・ケアード

 バルジャン:今井清隆
 ジャベール:石川禅
 エポニーヌ:知念里奈
 ファンテーヌ:シルビア・グラブ
 コゼット:辛島小恵
 マリウス:山崎育三郎
 テナルディエ:駒田一
 テナルディエ夫人:森公美子
 アンジョルラス:岸祐二
 リトル・コゼット:大下夕華
 リトル・エポニーヌ:加藤ゆらら
 ガブローシュ:横田剛基

 先週が初登場キャストばかりの新人公演だとしたら、本日は経験者だらけの本公演。舞台上での余裕が段違いで、客席からも安心して観ることができます。場面ごとの自分の役割を心得ていて、盛り上げるところは盛り上げてくれるし、自分の芝居と相手の芝居のキャッチボールが行われているし。同じ稽古不足ながら、さすがの安定ぶり。舞台人は場数が勝負ですね。
 舞台でもいくつものドラマが一つに集約し、階級社会が崩れ去り自由で平等な世界が現れるのが「レミゼ」の感動です。第一幕ではジャベールなんて「俺様」的発言が多く、工場長もパワーハラスメントしまくり。そんな中、娼婦たちは「金持ちも貧乏人もズボンを脱いだらいっしょじゃん!」と実は時代の先の思想を持っているのが面白いところ。そんな娼婦を演じていた役者が、新しい時代を象徴するコゼット役を兼ねているのは偶然か計算か、ちと気になるところです。いろんな立場の人たちの心が一つになると「ブルー・ブラン・ルージュ」を模したものが舞台に登場するのもさりげなく状況解説されててリピーター魂をくすぐります。
 さて、本日のキャストですが、今井バルジャン大好きなんです。先週の橋本バルジャンがワールドワイドな役作りだとしたら、今井バルジャンは日本人の情に訴える暖かなバルジャン。気は優しくて力持ちをそのまんま体現していて、観ていて安心。そして、歌声も包み込むようで聴いてて安心。続投の役なので、手抜きをするかなと危惧していたのですが(あ、そんなことするのは別の人だwww)、歌に芝居にいつも以上に力が入っていて、今が旬の充実ぶり。
 対するジャベールは歌は上手です。芝居も細かくてふてぶてしくて、素晴らしい出来。拍手も凄かった! でも、まだまだいけるはず、と僕は思ってるんです。今はまだキャパいっぱいいっぱいで、バルジャンと対等に渡り合っていません。これは声質が原因なのかもしれません。頑張って太い声を出していましたが、いかんせん明るい響きが通る人なので、重みにかけてしまうんです。この個人の持っている資質と、自分が目指したい演劇スタイルとのギャップをどう埋めていくのか、今後に期待したいです。今井バルジャンよりも、新人同士ということで、橋本バルジャンと組んでみたらバランスが良いかも。それにしても、あれほどバルジャンに良くしてもらてたマリウスがねぇ〜、パン一つの罪で粘着質になって追っかけまわすなんて……この恩知らずめっwww
 シルビア・ファンティーヌ、駒田&森テナルディエ夫妻、岸アンジョルラスは職人芸。アンサンブルの若い子たちにもちょっかいを出して、舞台をリードしてくれました。プリンシパルはこうでなくっちゃ。今日は気持ち良く作品に酔えました。
 そして、最近の子役の上手さと層の厚さにあらためて嬉しくなりました。かつては女の子>男の子でしたけれど、「アニー」の癖が抜けない子が多い女の子より、男の子たちの方が元気良く舞台で弾けている気がします。「美女と野獣」や「ライオンキング」なんかが影響しているんでしょうかね? マリウスはお腹から良い声出していて耳心地が実によろしゅう。やっぱり舞台俳優は技術あってこそ! なかなかの美丈夫でした。辛島コゼットはきれいな声だけど歌としてはつまらなく、登場と同時にヒロインぶりを見せる域にはまだまだ。エポニーヌは破れかぶれの歌だけれど、役の上ではあってるのではないかと。コゼットよりもキャラクターがあってるし。
 先週は「今年はハズレか?」とチケットまとめ買いをちょっと悔いてましたが、こうしてベテランが頑張ってくれると、来週の観劇がまた楽しみです。若手もそろそろ元気が出てくるころですし。