観劇日記〜2007年07月〜
01日(日) 13:00 劇団四季「ウィキッド」 電通四季劇場[海]
06日(金) 19:00 伊藤亮太郎「ヤマハ"アルティーダ"プレミアム・コンサート」 日本大学カザルスホール
07日(土) 17:00 古川展生「リクライング・コンサート・シリーズ
チェロの日〜チェロ界のプリンス、無伴奏に挑む〜」
Hakuju Hall
08日(日) 17:00 東宝「レ・ミゼラブル」 帝国劇場
14日(土) 13:00 オーストラリア・バレエ団「白鳥の湖」 東京文化会館
15日(日) 11:00 宝塚歌劇団雪組「エリザベート」
東京宝塚劇場
15日(日) 18:00 劇団スイセイ・ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」 東京芸術劇場中ホール
20日(金) 13:40 映画「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」 サロンパス ルーブル丸の内
20日(金) 19:00 劇団四季「ジーザス・クライスト=スーパースター」
ジャポネスク・バージョン
四季劇場[秋]
22日(日) 13:00 来日カンパニー「hairspray」 オーチャードホール
22日(日) 18:00 グルジア国立バレエ「白鳥の湖」 東京文化会館
29日(日) 11:30 新国立劇場こどものためのオペラ劇場
「スペース・トゥーランドット」
新国立劇場中劇場
29日(日) 14:00 二期会「モーツァルト:魔笛」 新国立劇場オペラ劇場


2007年07月01日(日)13:00-16:05
劇団四季「ウィキッド」@電通四季劇場[海]

 A席 9450円 1階-12列-41番 (パンフレット:一般1700円、四季の会会員1500円)

 演出:ジョー・マンテロ

 グリンダ: 沼尾みゆき
 エルファバ:濱田めぐみ
 ネッサローズ:小粥真由美
 マダム・モリブル:森以鶴美
 フィエロ:李涛
 ボック:金田暢彦
 ディラモンド教授:武見龍磨
 オズの魔法使い:松下武史

 シェイクスピアの有名なセリフに「キレイはキタナイ、キタナイはキレイ」っていうのがありますよね。「ウィキッド(悪人)」ままさにそんなミュージカル。悪役の側から見た「オズの魔法使い」の物語が語られます。劇中のディラモンド教授の言葉に「事実ではなく、信じたモノが歴史なんだよ」という意味合いのものがありましたが、まさにそんな作品。ヒーローと悪役が入れ替わってしまう面白さ。ま、歴史なんてそんなもんかもしれませんね。どこの国も「自国こそが正しい」という教育を行っているわけですし。同じ物語でも視点を変えることで何て面白くなるものでしょう。そういえば、この作品の中での殺し文句は「別の視点で見られるから」(だったかな、セリフはかなりうろ覚え)というのがありました。物事をグローバルにとらえられるかどうか、国際人としての人間のあり方を考えさせられるミュージカルでした。
 そんなわけで、比較対象となる「オズの魔法使い」は観劇前にぜひ復習されることをおススメします。舞台版が一番オススメですが、ジュディ・ガーランドの映画でもまずまず。最悪、原作本を読むとか。というのも、視点が全然異なることによって対立していた「オズの魔法使い」と「ウィキッド」がパズルが完成していくかのように、パーツ一つ一つがはまり、最後には一つのものとして成立する醍醐味がこの作品の見どころなのですから。設定の一つ一つ、セリフの一つ一つに複線が張られまくっていて、そのリンクぶりが実に面白いのです。おまけに「ジーザス・クライスト=スーパースター」や「オペラ座の怪人」。「エビ―タ」といったロンドンミュージカルまでパロディにして笑い飛ばしているんです。……全然受けてませんでしたけど。このブロードウェイやウェスト・エンドだったら拍手喝采になるであろうシーンもおとなしく進行してしまうあたり、劇団四季公演の物足りなさを感じます。ぜひ、アメリカやイギリスで観たい作品です。数年分完売が当たり前と言われている公演ですが、日本版は割と売れ残っていて……この手の作品のロングランの難しさを感じました。一般客よりも、ミュージカルファン向けのオタク作品なので(演出などで一般性は出してましたけど)、一般的ヒットは難しいんじゃないかなぁ。
 そして、今までもさんざん言われ続けていることですが、四季の俳優さんたちはコメディが苦手。面白いセリフも一本調子で棒読みなので、盛り上がるものが盛り上がらないんです。間だとか声色を変えるなんて意識にすらないのでしょう。丁々発止の渡り合いがのんべんだらりとしているので、作品の中での人間関係の変化が全然際立たない! これは主役から脇役まで統一されていて、今回のように劇団内だけでキャスティングを行うことによって、その特色が前面に出ています。作品のふくらみが出てこないので「面白い作品だな」という気持ちと「つっまんねー上演」という気持ちが同時に浮かぶ不思議な感覚の観劇でした。
 で、技術的な面ですが、劇団四季は劇団四季です。予想以上でも以下でもありません。ダンスは振り付けのフレッシュさと、ダンサーたちの確かな技術でとっても素敵です。でも、役付きの人とダンサーたちが「別のグループ」となっていて、一つのエネルギーにならないのも四季ならでは。遠慮があるのか、スター性のなさをカヴァーするためか不明ですが、今回もちょっと舞台上にすきま風を感じました。とってつけたような笑顔なので、感情の変化が感じられないのと、ガヤガヤ芝居も取ってつけたように「今からワタクシがセリフを言いますっ」なので、役同士のバランスが取れていません。ま、この部分は上演を重ねていくうちにどう変わるのかがリピーターの楽しみになることでしょう。
 でも、致命傷は……歌。熱唱と名唱は別です。エルファバなんて、黒人特有のネットリしたゴスペル発声を生かしたナンバーなので、それを和風に歌っちゃう濱田めぐみはかなりキツイ。この人「アイーダ」でも椅子からずり落ちちゃうような歌を聴かせてますが、他に役者はいないんでしょうか?>劇団四季持てるテクニックを駆使して、頑張って歌いあげていましたが、聴いてて気の毒になるほどボロボロ。そして、ちょっと気を抜くと、途端に弱弱しい歌いくちになってしまうのも苦しい。日本人の声にあったアレンジを施して、なんとか形を整えてあげてほしいもんです。そして、沼尾みゆきはセリフだけでなく歌も一本調子なので、これまたクラシカルな良さを生かせずじまい。クラシック歌唱とブラック歌唱のリンクというのもこの作品の魅力なだけに、どちらの魅力も出てこない=リンクどころのレベルじゃないというのが残念。そして、濱田めぐみも沼尾みゆきも、スター性で魅せるタイプじゃないので、劇場を包み込むようなオーラは皆無。。。初演キャスト、それもプリンシパルを揃えてこの上演というのも……ねぇ。とりあえず、次の観劇の予定は未定です。リピートしたい上演じゃないです。
 といっても、プロダクションとしては好きです。そもそも「クスッ」と笑える仕掛けがいっぱいの作品なので、舞台のあちこちに仕掛けられた「知らなくても大丈夫だけれど、知ってるともっと面白いでしょ」というお遊びが実に楽しい。さっすが、レジャー大国、アメリカの作品だけあります。そして、衣装の色遣いといい、メタリックな装置と幻想的な照明といい、きらびやかで華やかで、都会的な美術が美しく、実に素晴らしかった〜。四季の劇場は小さいので、オペラグラスなしでも細かな部分まで良く見えるのが嬉しい。そして、登場人物の全員が何かしらの成長(変化)をみせるので、観劇後の気分が清々しくなります。変化がある=あれこれ書き込まれているわけで、どの役のセリフにも色んなことを考えさせられるものがあって、気楽な中にも深味を感じます。
 それだけに、この作品はブロードウェイやウェストエンドで観るべしっ。一部の観客は拍手バチバチでスタンディングするほど興奮していましたが、僕はどっちらけで帰宅。下手なものは下手。……「お前、何様?」な観劇日記になってしまいました(汗)


2007年07月06日(金)19:00-20:45
伊藤亮太郎「ヤマハ"アルティーダ"プレミアム・コンサート」@日本大学カザルスホール

 全席自由 無料(招待) 1階-A列-7番 (パンフレット:無料)

 ヴァイオリン:伊藤亮太郎
 ピアノ:青木京子

 モーツァルト:バイオリン・ソナタ No.40 変ロ長調 K.454
 プーランク:バイオリン・ソナタ Op.119
(休憩)
 パガニーニ:カンタービレ
 クライスラー:ウィーン風小行進曲
 クライスラー:ベートーヴェンの主題によるロンディーノ
 サラサーテ:チゴイネルワイゼン
 ブラームス:F.A.E.ソナタ 第3楽章 「スケルツォ」
(アンコール)
 モンティ:チャルダッシュ
 マスネ:タイスの瞑想曲

 何年かぶりのカザルスホール。明治大学はいつの間にか改築されてるし、お茶の水スクエアはビルが半分なくなって、駐車場と運動場になっているし、なんだか知らない街にまぎれこんだかの気分。さて、今回はYAMAHAの新しいヴァイオリン「アルティーダ」君の普及活動コンサート。カザルスホールは癖なく響く良いホールだし、亮太郎君もオーソドックスな演奏なので、今回の企画の趣旨にはどんぴしゃり。古典から近代、民族音楽まで幅広いプログラムを楽しませていただきました。
 亮太郎君が千葉県民だったころは、近くでのコンサートが多かったので割と顔を出していた(方だと思う)のですが、札幌でコンサートマスターになってからはとんと御無沙汰。どう変化しているか楽しみなのが半分、変わってたら嫌だなぁという我儘が半分。まずホッとしたのは演奏が丁寧なこと。どの音も美しくて温かくて、耳に優しいんです。ステージマナーや醸し出す雰囲気がどことなく皇太子殿下に似ていらっしゃるので(と、なぜか敬語www)雅な気分に。アグレッシヴなはずのプーランクのソナタも、情熱的なジプシー音楽も爽やか。これは亮太郎君の売りでもあり、弱点でもあるのですが、演奏態度も醸し出される音も「俺様」度が低いんです。「てめぇら、俺様の演奏が聴きたいかっ!?」なんて間違ってもシャウトしませぬ。「みなさま、今から私が演奏いたします」と奥ゆかしいんです。よって、いつでも安心の信頼印ではありますが、大人になってヴァイオリンを始めた人の「はじめての発表会」を見ているみたい。もちろん、プロですから、満場のお客を前に舞い上がるなんてことはなく、まるで学校の練習室でおさらいをしているかのように自然体のまんま。
 そんな亮太郎君が大好きだけど、ソリストとしては「もったいないなぁ」といっつも思います。せっかくのすごいテクニックがすごく見えないんだもん。僕が芸大のコンサートが好きな理由に「自信満々の(きれいな)お姉さんがワンサカいる」というのがあるのですが、亮太郎君もたまには「どーよっ!?」でも良いと思うんだけどなぁ。きっとこれからもロイヤルな雰囲気なんでしょうねぇ。。。
 以前は見た目だけでなく、演奏もひ弱だったチゴイネルワイゼンやチャルダッシュですが、ウニョ〜ンという音に色気が加わって、ちょっとアダルト路線になってました。でも、個人的に好きだったのは、パガニーニ。低音の色彩感が増してて、上品な中にもセクシーさがあって個人的に本日の白眉。アルティーダ君もきっと喜んでいることでしょう。


2007年07月07日(土)17:00-18:10
古川展生「リクライニング・コンサート・シリーズ
第40回 チェロの日〜チェロ界のプリンス、無伴奏に挑む〜」
@HAKUJU HALL

 普通席 2000円 G列-5番 (パンフレット:無料)

 チェロ:古川展生

 ソッリマ:アローン
 J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第2番 ニ短調 BWV.1008
 コダーイ:無伴奏チェロ・ソナタ op.8
(アンコール)
 カザルス:鳥の歌

 コンサート会場がリクライニング席を用意したHAKUJU HALLということもあって「あなたは聴きますか、それとも眠りますか?」と挑発的なチラシのキャッチコピー。かつて奈良まで遠征したにもかかわらず、最前列で爆睡した前科者としては参加しなくちゃ、のコンサートなのでありますっ。一時間強という、ラ・フォル・ジュルネのようなプログラムなので、一瞬の睡魔が命取りにもなる、非常にチャレンジャーなコンサート。その分、のぼぉちゃんも力の入った演奏でネッスン・ドルマ(誰も寝てはならぬ〜イナバウアー〜)な演奏。いきなりソッリマのアローンを持ってくるのも冒険ですが、バッハもコダーイもさぞ弾きこんだんでしょう、という充実ぶり。ホールの音響もあって、弱点とされる低音もビンビン響き、あっという間の一時間でした。同じアルコのメンバーではあるものの、昨日の亮太郎君とのぼぉちゃんは正反対な音作りで、まずは勢いで弾き切っちゃうのがのぼぉちゃん流。細かな部分にこだわらないで、大らかに演奏しちゃうあたり、ライヴのパフォーマーとしては大歓迎。スリルは感動への良きスパイスです。
 昨日一回、本日二回という、同一プログラムの全三回公演でしたが、適度にこなれてて、適度に疲れてて、肩の力が抜けた小粋な演奏になってました。空回りすることも、気障って格好付けることもなく、素直なのぼぉちゃん。音の行方を追いかける余裕も見せて、リラックス・モード。演奏することを楽しんでいる様子に、思わず僕もニッコリ。それはそうと、演奏中の表情がいつになく柔らかかったのはなぜだろう!?!? 「プリンス」を意識してたとか!?(大江千里さんにテキ屋のオヤジと言われてたのにねぇwww)
 のぼぉちゃんのリズム処理と、ちょっとしたフレーズの歌いくちは今日もまた心地良く、テキ屋ぶってる中から垣間見せるお坊ちゃまぶりが相変わらず愛らしいです。いろんなジャンルの音楽に手を出していますが、やはりクラシックの人ですわ。いちばん落着きがよろしゅうございます。


2007年06月30日(土)17:00-20:10
東宝「レ・ミゼラブル」@帝国劇場

 B席 4000円 2階-J列-51番 (パンフレット:1500円/2000円)

 演出:トレヴァー・ナン、ジョン・ケアード

 バルジャン:別所哲也
 ジャベール:岡幸二郎
 エポニーヌ:新妻聖子
 ファンテーヌ:渚あき
 コゼット:菊池美香恵
 マリウス:泉見洋平
 テナルディエ:徳井優
 テナルディエ夫人:田中利花
 アンジョルラス:原田優一
 リトル・コゼット:佐藤瑠花
 リトル・エポニーヌ:高橋りか
 ガブローシュ:新井海人

 「レミゼ」最後のバルジャン・ファンティーヌ・エポニーヌの三重唱になると、バルジャンと一緒に、観ているこちらも重荷を下ろす気分になります。「cats」における「memory」は第一幕では要求だらけの歌詞、第二幕では未来への希望を歌い上げてクライマックスとなるのですが、「レミゼ」における「on my own」も、かなわぬ夢や願いを歌い上げていたナンバーが、幕切れになって自我が昇華し「誰かのために」と変化するのが感動的。ぶっちゃけ、散々な人生を歩んだ人たちばかりですが、こんな社会や時代だからこそ神様って求められたのかもしれませんね。今、神様(仏様、マホメット様etc)が生活に浸透していないのは、ある意味幸せなことなのかもしれません。神頼みしなくても幸せってね。
 別所バルジャンは以前も観ているはずなのですが、印象に残ってないんです。そして、今回もアピール度が低いです。一階席前方で観た知人は「良かった、良かった」と言っているので、大劇場の主演にはまだスターオーラが足りないのかもしれません。歌は…相変わらずです。体や会場に響かせるのではなく、無理やり絞り出すような発声なので、聞いているこちらの喉が痛くなってきます。上手い下手以前に、生理的にダメ。これも、近くの席だと「会場にどう響かせるのかな」という聴き方ではなくなるので、違う感想になるのかも。彼のバルジャンは結構気難しそうな顔つきをしています。そして、マリウスがコゼトに近づこうものならばズンッと割って入るし、男装のエポニーヌ坊やのことは出てけっとばかりに門から突き飛ばしちゃうし。そういえば、工場の場面でも自分にすがってくるファンティーヌを思いっきり拒絶してたし、一貫した性格を作ってます。19年も刑務所に入れられて強制労働させられてたら、笑顔なんて失っちゃうんだろうなと、背景が見えてくるようなバルジャンでした。これで、市長様と慕われるようなカリスマ性がも少し出てくると結構面白くなりそう。今のところ、オペラグラス必携の役者さんですね。
 そんなバルジャンに愛される菊池コゼットですが、今回のコゼット役者の中では歌と芝居のバランスが最良ではないかと。歌にうまく感情が乗っています。泉見マリウスはもう余裕。単なるハンサム君ではなく、テナルディエとのやり取りも実はしたたかだったりして、小芝居がナカナカ楽しい。学級委員長タイプじゃないあたり「こいつにだったらコゼットを任せられるな」とバルジャンが認めるのも納得。前回までは「若いマリウス」と思っていたけれど、いつの間にやら貫禄が出てきて、顔つきも凛々しくなってました。アンジョルラスが頑張りが見えすぎちゃってる原田優一なので(今回はまだ助走中という感じ。芝居も歌も余裕なしなので、次回に期待!)、余計にマリウスが大人っぽく見えます。
 で、せっかくマリウスがあれこれ芝居をふっているのに、キャッチボールをしようとしないのが徳井テナルディエ。無表情で棒読みセリフなので、せっかくのコメディリリーフが生きてこないんだもの。そして、歌は壊滅的です。一本調子な上に付点を一切無視するので、シェーンベルクのせっかくのメロディがのんべんだらりとしたものに。リズム感のない役者をミュージカルに起用するのはいい加減にしてほしいと、彼が登場するたびにイライラ。田中マダムも、カーテンコールではかなりオモロイことをしでかしてくれますが、本編ではまだ不完全燃焼。彼女ならもっとできるはず、と中途半端な存在感にフラストレーションがたまります。怖いんだか、お笑いなんだか、悲しいんだか、方向性がはっきりしないんです。場数を重ねればオモロイ夫婦になれるんじゃないかな。でも、今の調子だと、次回からは声かからないかも。。。
 新妻エポニーヌは声が伸びず不調。ちょっと意外。渚ファンテーヌは好調ではあるものの、宝塚の外に出てみればあまりの声量のなさで、全然声が届かず。ま、ファンテーヌって音域が結構低いので、元娘役の彼女にはつらいわなぁ。でも、その分、終幕の三重唱での浮世離れした存在感、透明な歌声など、彼女ならではという成果を残しているのは流石と言えましょう。
 儲け役であり、ここ最近「どの子も上手いなぁ」というガブローシュ。今日は久し振りに……(以後自粛)。それにしても「レミゼ」における司祭様って「善のシンボル」でしょ。バルジャンの改心のきっかけにもなってるし。それにもかかわらずバリケードの場面で「三発目(でしたっけ?)で僧侶と司祭」なんて歌っちゃうなんて、空気の読めない痛い子。おかげで、あの場面、泣けなくなりました。。。


2007年07月14日(土)13:00-16:00
オーストラリア・バレエ団「白鳥の湖」@東京文化会館

 E席 5000円 5階-R2列-14番(第1幕)/2階-L1列-19番(第2,3幕) (パンフレット:2000円)

 指揮:ニコレット・フレイヨン
 管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

 オデット:マドレーヌ・イーストー
 ジークフリート王子:ロバート・カラン
 ロットバルト男爵夫人:ルシンダ・ダン
 女王:シェーン・キャロル
 女王の夫:ロバート・オルプ
 第一王女:ゲイリーン・カンマーフィールド
 第一王女の夫:藤野暢央
 侯爵:アダム・スーロウ
 侯爵の若い婚約者:カミラ・ヴァーゴティス
 伯爵:マーク・キャシディ
 伯爵の侍従:マシュー・ドネリー
 提督:コリン・ピアズレー
 侯爵:マーク・ケイ
 男爵夫人の夫:フランク・レオ
 宮廷医:ベン・デイヴィス

 グレアム・マーフィーによる現代版「白鳥の湖」が来日しました。オデット=ダイアナ妃、ジークフリート王子=チャールズ皇太子、ロットバルト男爵夫人=カミラ夫人、という何ともシュールな配役です。ロマンティックな作品を予想して行くと度肝を抜かれます。そして、役名が「女王の“夫”」だとか「男爵夫人の“夫”」だとか、何かと女性上位なのも、クスッと笑えるでしょ。女性ダンサーが長身揃いで、見た目「強い女」が揃っているこのカンパニーにピッタリ!
 序曲の段階から思いつめた表情のオデットが登場。そのままカーテンの裏に隠れると舞台に登場するのはジークフリート王子。カーテンごしに愛撫を始めるけれど、いざカーテンを開いてみるとそこにいるのはロットバルト男爵夫人! このカーテン、上手から下手へオデットが「自分で」引っ張って行くのがミソ。短い序曲の間で、観客に彼らの状況を完璧に説明する見事な処理。このカーテンの動かし方による場面転換はミュージカルでは良くある手ですが、バレエで登場するのは珍しいのでは。そして、そのままスピーディに物語は展開。舞台が中世のどこかの国ではなく、現代の英国王室とあって、舞台美術もかなり斬新。貴族たちの衣装はベージュとシルバーを基調としたシンプルなもの。ロイド・ウェバーのミュージカルを観ているような気分です。白鳥たちが登場する湖も「ライオンキング」のプライドロックのようなかなり傾斜のきつい円形舞台。サナトリウムに閉じ込められたり、精神の自由を表現したりするダイアナ妃……もといオデットは「エリザベート」の世界だし、王子を奪いあっての女たちの戦いは「cats」のマキャヴィティの場面にソックリなど、ミュージカル・ファンには「この演出、どこかで観たなぁ」というものばかりですが、民族舞踊などを一掃し、三角関係にのみ集中した舞台は、ミュージカル的要素もタップリなわけで、まずは台本作りに関心。
 そして、ベージュとシルバーの第一幕、ブルーグリーンの第二幕、ブラックが強烈な第三幕と、各幕ごとの色分け、メタリックを基調とした色彩感覚、舞台の奥行きを生かしたラインダンス(横一列になったまま回り舞台に乗っているかのように回転)や、同じメロディを繰り返す中、次から次へとスター……じゃなかった、来賓が登場する舞踏会シーンなど、レビュー色タップリ。これは、各国のプリンセスという役割を奪われ、個性の発揮が難しいというのも影響しているんでしょうね。そんな中、一人だけ長いすそを引きずって登場し、王子と甘く踊るオデットはまるで花總まり、オデットをサナトリウムに追いやって、王子の心ばかりか社交界での実権を握るロットバルト男爵夫人は洲悠花(古い?)かっていうオモロイ舞台でした。
 ということで、設定はともかくとして、ショーの処理としては、とりたて日本では珍しくはないけれど、スピーディな処理、ズケズケと、それでいてサラリと英国王室を揶揄するあたり、面白く観られます。でも、精神面を病んでしまい、幻想だか幻覚だかの世界へ逃げてしまうあたり、マシュー・ボーンの「スワン・レイク」と重なってしまい、個人的には盛り上がりイマイチ。そして、精神を病んだ人の表現にモダン・バレエは最適だとは思うんだけれど、美しい動きではないので、アンマリ好きじゃない。。。とはいえ、上品さのかけらすらかなぐり捨てて、感情むき出しでアグレッシヴな動きの数々はとても迫力がありました。そして、どんなに本性むき出しになろうとも、下品にならないのは、ダンサーの品格なのか、振り付けの品格なのか。。。終幕の最後、王子がオデットへの愛を誓ってロットバルト男爵夫人を拒絶するあたり、チャールズ皇太子とは違うんですけど、王族の品位はこれやんっと嬉しく感じました。後味がよろしゅうございます。
 オーストラリア・バレエ団は基本的に白人ばかりで構成。理性では「人種による入団規制云々は…」というのは理解できるけれど、舞台の美しさ、見栄えの統一感という意味ではやはり白人で揃えるとスッキリします。日本人としてこのカンパニーに参加している藤野暢央は目立っていたけれど、その原因が体型だとか、見た目の異質感からというのは悲しいけれど事実。もっとインターナショナルにキャストが揃っているバレエ団ならばともかく、このバレエ団で主役を任されることはまず考えられないし「上手けりゃOK」とはならない舞台芸術の悲しさを感じてしまいました。ま、彼の将来は今回の公演には関係ないけれど、ちょっと悪目立ちしていたのは事実。
 そして、それ以上に悪目立ちしていたのがオーケストラ。今年は東京シティ・フィルの演奏を聴くことが多いのだけれど、一度として良かった試しがありません。終幕のパーティのシーンではトランペットのファンファーレが通常の版よりも回数多く登場するのですが、全部音を外してます。あまりのひどさに客席から失笑が洩れてました。10回位演奏して一度も成功しないのってどうよ!? ホルンはヨレヨレ、ハープはブツブツ、弦はガサガサ、管はキンキン……どうにもフォローのしようがありませぬ。最近、シティ・フィルを使うバレエ団多いけれど、他のオケにしましょうよ。ダンサーのためにも、観客のためにも。舞台にウットリって場面に限って派手にやらかしてくれるのは勘弁してほしい。。。


2007年07月15日(日)11:00-14:05
宝塚歌劇団雪組「エリザベート」@東京宝塚劇場

 SS席 10000円 1階-3列-33番 (パンフレット:1000円)

 演出:小池修一郎

 トート:水夏希
 エリザベート:白羽ゆり
 フランツ・ヨーゼフ:彩吹真央
 ルイジ・ルキーニ:音月桂
 ルドルフ:鳳稀かなめ
 マックス公爵:立ともみ(専科)
 ツェップス:磯野千尋(専科)
 グリュンネ伯爵:飛鳥裕
 ルドヴィカ侯爵夫人:灯奈美
 皇太后ゾフィー:未来優希
 エルマー・バチャニー:彩那音

 いよいよ始まった「エリザベート」二順目(って、今後の上演スケジュールなんて知りませんけど)。トート閣下は歌唱力に問題のあるスターの時の方が面白いことが多いので、歌が苦手な水トートには密かに期待していたんです。(「歌が得意」とされているスターの場合、歌に頼りすぎてしまって、芝居としてはつまらない事が多いので……)。ということで、水トートですが、蛇女です。ストレートのブルーグリーンの桂と白塗りメイクが実に不気味。そして、動きが妙に艶めかしくて、今までにない新しいトート像を創造。これがはまってて僕としては大喜び。芝居の最中に「フッ」とほほ笑みを漏らすのが「チロチロ」と舌を出し入れしているようで、そして時折感情をあらわにする時は「シャーッ」と相手を威嚇しているようで、かなり妖しい。そして、ダンサーならではの見事な身のこなしで、衣装の着こなしといい、ポーズの決め方といい、一つ一つが絵になります。中でも裾さばきは歴代トートの中でも屈指のもので、舞台上での存在感が一挙に増します。舞台上での移動も蛇女そのもので、ドタバタなんてせず、ヌルヌルと這いずりまわる感じ。宝塚版は一幕の最後でトートがオケピから銀橋に登場するのですが、スピーシーズがエイリアンかって程にベッタリ現れちゃって、気持ち悪いの何の。この成り切りに惚れました。この役作りゆえ「男役」というよりも「女」としての魅力が前面に出ちゃった気がします。男にはあんな色気は出せません。足の細さや長さ、華奢な体をクネクネと動かすさま、不敵な微笑み、どれをとっても素敵なんだけれど「格好良いお姉さん」でした。ま、トートは人間じゃないし、これはこれで好きですね。自分の個性を生かしてて。歌はppとffの二種類。間がないんです。パワフルなトートではなく、ヌメヌメしたトートなので、囁くような歌い方は僕としてはOK。もちろん、場面によってはも少し頑張っていただきたかったけれど(そして、頑張っていただきたい場面が多かったけれど)。自信を持って歌うところは悪くないんだけれど、途端に自信なさげになって、音程もフラフラ(というか音痴に)になることも。大地真央も日向薫も麻路さきも歌はド下手でしたが、舞台上では「私は名歌手」という顔で歌ってました。やっぱり、舞台の上では諦めるなんてことをせずに化かし続けてほしいです。フィナーレはダンスメインなので、水君のダンサーとしての魅力が爆発。素敵なショースターでした。でも、でも、芝居中の暗い照明では映えたトートメイクを、フィナーレ用の煌びやかな照明でさらされると……とっても怖いです。タイのオカマショー見てる気分です。
 白羽ゆりのエリザベートは期待外れ。アントワネットの大芝居は良かったんだけれど、エリザベートの複雑な人物が描ききれてないんです。一つ一つの感情の表現が微妙に甘いので、メリハリが利かず、よって全体の印象も「もやもや」としたものに。元がお姫様役者なだけに、バイエルンの田舎娘らしさがないんですよねぇ。ヘレネのお見合いの段階で「エリザベートも花嫁修業完璧」みたいでしたもん。よって、姑と張り合って自由を求め続ける迫力に欠けます。もちろん、死を愛してしまう、尋常でない様子も力不足。ま、このあたりは、役者の持ち味の部分が大きいから致し方ないのかな。歌も意外や意外、苦戦してました。「私だけに」などはかなり練習したのね、というのがうかがえるのですが、歌いこんでなさそうな曲になると途端に表現力が落ちちゃって、いかにも「この曲は捨ててます」というのがバレバレ。とはいえ、豪華な衣装をゴージャスに着こなして堂々と登場されると、いかにも「宝塚娘役トップ」という華やかさで、細かなことはどうでも良くなります。ウィーン版ではあまりの衣装のしょぼさに「あれはネグリジェですか!!!」と怒り狂ったんですが、豪華でした〜、綺麗でした〜。近くで見ると、意外に小柄な人なんですね。
 彩吹真央はフランツを演じるために雪組に連れてこられたのではないかと思うほど適任。歌も芝居も安定してます。青年から老人まで演じ分けないとならない役ですが(なぜかエリザベートはあまり老けこまないけど)、その変化の過程がとても自然。違和感なく時の流れを感じさせます。そして、いきなり皇帝就任ではなく(花組時代に)皇太子時代を過ごしているせいか、位取りお見事。あまりに見事でちょっとスターオーラは不足しちゃった位。このあたりの見せ方、宝塚は難しいと思います。上手いにこしたことはないのですが、上手ければ上手いほど、なぜか脇役っぽく見えてしまうんです。技術点に関係なく、舞台の中心が似合ってしまう人もいるし、面白いところです。
 音月桂は今までフェアリー・タイプの役が多かったし、小柄で女顔なので、ルキーニとしては期待していなかったのですが、これがドンピシャリ。まずは舞台上でイタリア人に見えたこと、クサイ表情や台詞回し、舞台の過不足ないひっかきまわしっぷり。いつの間にこんなに上手くなったんだ!と嬉しい驚きを感じます。舞台で自由に息をしているので、肩に力を入れずに観る事ができます。顔の表情はあるんだけれど、無駄に大きくないので、ちゃんと男になってました。(オーバーだと女の子になっちゃうんですよねぇ)。彼女のルキーニはエリザベート殺害に向けての狂気っぷりが良かったんだけれど、高笑いはまだ苦手みたい。あの笑い声が決まれば、もっと話題になるのではないかと。いずれにせよ、新生雪組での今後の活躍がとても楽しみな一人。まだまだ伸びてるっていう勢いが頼もしいです。
 鳳稀かなめはボジョレ・ヌーヴォー。身長はあるし、美形だとは思うけれど、男役としてはまだまだ。舞台上でボーっと立ってると女の子(時にはおばちゃん)になるので、スターを狙うならばもっと求心力を磨かないと危険。コクがないんです。
 美穂圭子のリヒテンシュタイン、未来優希のゾフィー、天勢いづるのヴィンテッシュ嬢、晴華みどりのマダム・ヴォルフらは役を自分のものとして引きつけていて、新たな魅力を見せてくれ、また実力に見合ったアピールなり抑えを行っていて、作品にコクと安定感を与えていました。でも、全体的に、今回の「エリザベート」はフワッとした幻想的雰囲気が魅力のように思えます。今までにない、個性的な「エリザベート」でした。パレードの大羽根は孔雀女でしたし。


2007年07月15日(日)18:00-20:45
劇団スイセイ・ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」@東京芸術劇場中ホール

 S席 8000円 1階-O列-29番 (パンフレット:1800円)

 演出:西田直木

 マリア:中村香織
 トラップ大差:美木良介
 エルザ:夏樹陽子
 マックス:吉田要士
 リーズル:綿引さやか
 ロルフ:大阪俊介
 ゼラー:田代久雄
 シュミット:佐藤志穂
 フランツ:佐久間義也
 シスター・ベルテ:青山由美
 シスター・マルガレッタ:加藤玲子
 シスター・ソフィア:伊藤みさお
 フリードリッヒ:杉中美樹
 ルイザ:島田華衣
 クルト:影山樹生弥
 ブリギッタ:西原杏佳
 マルタ:今澤汐音
 グレーテル:田村芽実
 修道院長:ペギー・葉山

 スイセイ・ミュージカルによる翻訳ミュージカル第二弾(第一弾は「FAME」)が登場。意外にも古典中の古典作品が登場。ちなみに、中村香織は日本における7代目のマリアになるそうです。でも、歴代マリアの紹介がパンフになかったので、勝手に過去パンフをあさってみることに。ちなみに、日本で「サウンド・オブ・ミュージック」を上演したのは、東宝・宝塚歌劇団月組・二期会、というのは把握していますが、その他のプロ団体の上演は存じておりませぬ。そして、二期会公演はご縁がないので資料なしです。誰がやったんでしょう? なお、来日公演に関してはデータはありますが、配役調べはリジェクトしました。

 マリア:淀かほる(淀かおる)/越路吹雪/安奈淳/坂口良子/春風ひとみ/大地真央
 トラップ大佐:高島忠夫/宝田明/瑳川哲朗/坂本博士/児玉清/神山繁/郷真由加/若林豪/村井国夫/古谷一行
 演出:菊田一夫/松浦竹夫/広部貞夫/キャッシュ・バクスター/マイケル・ボグダノフ/三木章雄/宮本亜門/山田和也

 ロジャース&ハマースタイン作品は古い時代のものなので、普通に上演したらかなり長いんです。休憩を含めると3〜4時間になるんじゃないかな。それをいかに刈り込んで、ブラッシュ・アップするかが演出家の腕のみせどころ。今回はナンバーをモザイクのようにつなぎ合わせたり、テンポアップするなどして、のどかなオペレッタ風味がなくなり、かなりショーアップした作り。正直、あまりにサラサラと話が展開するので「ちょ、ちょっと待ってよ〜」と思ったのも事実です。主人公のマリアは、あっという間に子供たちと打ち解け、大佐とはラブラブになり、民族色の強い場面はばっさりカット。その代り、映画版のナンバーが入ったり、ミラベル宮殿の装置が登場したり、派手なダンスが挿入されたり、かなり盛り沢山。上演時間の短い&変化の激しい最近のミュージカルと並んで上演するにはこれも手かな、と。まだ初日が開いたばかりで「ドレミの歌」の場面なんて、出演者は必死に舞台を走り回っているし、オケなんて打ち込みと勘違いするような混乱ぶりだし(パーカッション最悪)、正直、まだまだプレビュー状態ですが、上演を重ねてこなれてくれば、スピートと情感がリンクして、素敵なプロダクションになるのではないでしょうか。
 今回は「映画もかなり研究したんだな」というのを各所で感じたのですが、一番ショッキングだったのはザルツブルク音楽祭におけるマックスの取扱い。トラップ一家を救うために時間稼ぎをすることによって、射殺されてしまうなんて、今までこんな演出はなかったと思います。状況を考えればそうなるであろう状況ですが、気づきませんでした。トラップ大佐とマックスは、金持ちvs貧乏人、信念の人vs流れに身を任せる人、と一見相反する生き方ですが、互いに相手を尊重しあい、表現は違えども、祖国を愛する男同志の友情がくっきり出ていて感激。マックス・エルザ・トラップ大佐による三重唱「どうにも止められない(ウララーウララーじゃないからねっ)」で、今まではマックスとエルザの二人で大佐を攻撃する、と思っていたシーンですが、エルザはエゴで、そしてマックスは大佐への友情で歌ってたんだ、と新たな発見。同じ歌詞、同じメロディなのに、根底に流れるものが全然違うなんて凄いことです。男の友情が前面に出て、実に硬派な仕上がりでした。
 もちろん、中村香織のマリアも爽やかで、元気が良くって検討してましたよ。最近、劇団が大々的に売り出していますが、今はまだボジョレ・ヌーヴォーの味わい。一生懸命さが取れれば、舞台も一回り大きくなるんじゃないかな。美味しく熟成しますように!!
 でも、何と言っても圧巻だったのは修道院長のペギー葉山。こちらは年代物のワインの味わい。30年以上前ですでに「歌のおばさん」なので(決して「お姉さん」ではなかった)かなりの年齢なはず。正直「客寄せのために過去のスターを連れてきたのね」と期待していなかったのです。が、もの凄い歌唱力。音程やリズムがしっかりしているとか、声量たっぷりなんてレベルじゃないです。フレーズの一つ一つに情感がこもっていて、マリアがぞっこんになるのも無理がない歌い回し。温かくて、力強くて、まさに「修道院長さま」なんです。「すべての山に登れ」のクライマックスでいきなり一オクターブ下げられちゃったのは「モーツァルト!」の久世星佳以来のド衝撃でしたけど、それ以外は完璧。ずっと聴いていたかった〜。カーテンコールで「ペギー葉山さんと一緒に“ドレミの歌”を歌いましょう」なんて言われちゃあ、ポンキッキ世代、それもペギー葉山最盛期世代の僕としては幼稚園生に戻った気分。楽しかったなぁ。最近のサラサラ歌唱に慣れている若手俳優にとって、ペギー葉山との共演、生の歌声に触れることはとっても貴重な体験になるはず。


2007年07月20日(金)13:40-16:10
映画「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」@サロンパス ルーブル丸の内ル

 全席指定 前売一般 1300円 H列-19番 (パンフレット:700円)

 監督デイビッド・イェーツ

 ハリー・ポッター:ダニエル・ラドクリフ
 ロン・ウィーズリー:ルパート・グリント
 ハーマイオニー・グレンジャー:エマ・ワトソン
 ベラトリックス・レストレンジ:ヘレナ・ボナム=カーター
 ルビウス・ハグリッド:ロビー・コルトレーン
 フリットウィック先生:ウォーウィック・デイビス
 ヴォルデモート:レイフ・ファイウンズ
 アルバス・ダンブルドア:マイケル・ガンボン
 マッド・アイ・ムーディ:ブレンダン・グリーソン
 バーノン・ダズリー:リチャード・グリフィス
 ルシウス・マルフォイ:ジェイソン・アイザックス
 シリウス・ブラック:ゲイリー・オールドマン
 セルブス・スネイプ:アラン・リックマン
 ペチュニア・ダーズリー:フィオナ・ショウ
 ミネルバ・マクゴナガル:マギー・スミス
 ドローレス・アンブリッジ:イメルダ・ストーントン
 リーマス・ルーピン:デイビッド・シューリス
 シビル・トレローニー:エマ・トンプソン
 モリー・ウィーズフィー:ジュリー・ウォルターズ
 コーネリウス・ファッジ:ロバート・ハーディ
 アーガス・フィルチ:デイビッド・ブラッドリー
 アーサー・ウィーズリー:マーク・ウィリアムズ
 ドラコ・マルフォイ:トム・フェルトン
 ネビル・ロングボトム:マシュー・ルイス
 ルーナ・ラブグッド:イバナ・リンチ
 チョウ・チャン:ケイティー・リューング
 ダドリー・ダーズリー:ハリー・メリング
 フィッグばあさん:キャスリン・ハンター
 ニンファドーラ・トンクス:ナタリア・テナ
 キングスリー・シャックボルト:ジョージ・ハリス
 フレッド・ウィーズリー:ジェイムズ・フェルプス
 ジョージ・ウィーズリー:オリバー・フェルプス
 ジニー・ウィーズリー:ボニー・ライト

 キャストを書き出したら止まらなくなってしまいました。だって、どこまで書いても重要な役が登場するんですもの! ということで「ハリー・ポッター」もいよいよ後半戦です。今回からまた監督が代わりました。何しろ、ハードカヴァーの分厚いやつ×2冊を2時間にまとめるわけですから、いかに刈り込んだ台本にするか、どこまで説明するか、などが監督の腕のみせどころ。個人的に前回は「とりあえずなぞってみました」という薄味がいま一つ好みじゃなかったのですが、今回はハリーのイライラ部分をピックアップして、上手にまとまっていた気がします。実は原作を最後に読んだのが数か月前なので、ところどころ忘れている部分があったけれど、違和感なく最後まで楽しく見られたので、きっと良い台本なんだと思います。
 でもね、正直、冷静な状態じゃ見てないんです。「北の国から」じゃないけれど、子役一人一人に対して「大きくなったねぇ」なんてオッサン感覚で見入ってしまいます。ハリー&ロン&ハーマイオニーが三人で絡むというのはさほどないのですが、長年連れ添ったキャストとあって、互いの信頼感が画面からも伝わってくるのが嬉しいです。そして、ハリーを助けるためにマッドアイ・ムーディを筆頭に魔法使いたちが集団で登場する場面、シリウスがハリーに「落ち着いたら良い家庭を作ろうね」と夢を語る場面、学校の中で孤立するハリーをロンとハーマイオニーがハリーに鬱陶しがられても守る場面などに、ただただ涙。いかにも「泣いてください」というシーンは幸せなシーンに弱いんです。ってことは、僕が「闇の魔術の防護術」を受講した場合、守護霊を呼び出すのは楽チン!?
 今回もトンクスは格好良いお姉さんです。チョイ役だけれど大好き。恐いんだけれどもハートフルなマクゴナガル先生は出てくるだけで安心だし、ハーマイオニーも素敵な「強い女」になりつつあり、二年後はさらにどうなっているのか楽しみ。女性って素敵になる時の変化がドラマティックですね。
 で、再登場ながらぽしゃったのがチョウ・チャン。ハリーのファースト・キスを奪うという美味しい役どころにもかかわらず、この二年間で全然素敵になってない! ハリーのダニエル君がだいぶ大人びてきちゃったので、この二人の並びは美しさに欠けます。
 特別出演的なポジションだったのが全身ピンクで登場のアンブリッジ。にこやかに物腰柔らかく、それでいて冷酷なところを完璧に演じてました。日本人だったら出雲綾が適役(あ、誉めてるんですよ、その演技力を!)。主人公たちをキリキリさせるので、観ている間は「キーッ、何なの、このオンナ!!」とブチ切れてるんですけど、もしも僕が女優だったら、この役やりたいです!
 そうこうするうちに、英語版だけれど最終巻が発売になりました。果てしなく頂戴なプロジェクトに思えた「ハリー・ポッター」もいよいよ終盤戦。観終わったばかりですが、次回がまたまた楽しみになってきました。


2007年07月20日(金)19:00-20:45
劇団四季「ジーザス・クライスト=スーパースター」ジャポネスク・バージョン@四季劇場[秋]

 C席 3150円 2階-8列-19番 (パンフレット:一般1500円、四季の会会員1300円)

 演出:浅利慶太

 ジーザス・クライスト:柳瀬大輔
 イスカリオテのユダ:金森勝
 マグダラのマリア:高木美果
 カヤパ:青木朗
 アンナス:明戸信吾
 司祭:阿川建一郎、田辺容、河原信弘
 シモン:神崎翔馬
 ペテロ:飯田洋輔
 ピラト:村俊英
 ヘロデ王:下村尊則

 四季ファンには申し訳ないけれど、正直「金返せ!」な上演でした。劇団四季=個性を殺した端正な舞台が売りで、誰がキャスティングされようとその日のベストの舞台が観られる……となっていますが、工業製品じゃあるまいし、役者が変われば舞台の印象なんてガラリと変わって当然です(宝塚の「エリザベート」なんて、トップさんによって毎回雰囲気違いますもん)。よって、誰がキャスティングされても盛り上がりのないつまんない上演、というのが現在の状況。四季劇場ができる前までは、それでも主要スターが頑張ってたんですけどね。かつての栄光よ、今一度、という願いをこめてなんとか劇場には足を運んでいますが、正直、リピートはできません。無感情のまま淡々と舞台が進行するのってかなり不気味です。役者のレベル・ダウンもあって、観ていてイライラ。さりとて、ミュージカル・ファンとしては四季をチェックしないわけにもいきませんし…難しいところです。
 さて、劇団四季の「ジーザス・クライスト=スーパースター(JCS)」は二つの版があります。エルサレム版は割とオーソドックスな演出。そしてジャポネスク版(公演によって江戸版だったり歌舞伎版だったり名前が変わります)は和楽器も加わったエキゾティックな演出。今回はジャポネスク版で、ジーンズにボロ服をまとった役者たちが登場。メイクは白塗りで、歌舞伎の荒事に登場するような隅取メイクが施されています。このメイク、ロンドン公演の際に評判を呼んだ反面「表情が見えない」と叩かれもした両刃の剣。でも、この表情のなさが四季の売りであり、ジャポネスク版の大きな武器ともいえます。「JCS」はイエスも一人の人間だった、という設定だし、個性なき民衆の止められない勢いの怖さがメインなので、劇団の個性、演出の個性、作品の個性が三つ巴となった面白さがあります。シンプルな中から湧き上がるエネルギーは圧巻です。
 が、今回のプロダクションはほころびが多く、とにかくヌルイんです。そういえば、演出家が多忙につき、一つ一つの作品をチェックしきれない、という言い訳が四季の会の会報に記載されていましたが、別演出家を起用するとか、作品の上演スケジュールをずらすとか、何らかの対策を施すのがプロってもんでして、観客としては舐められてるなぁ、と気分がよろしくないです。で、どこがヌルイかというと、群衆のエネルギーがないんです。八百屋舞台の上を人間が走り回り、転げ落ちてという勢いが魅力なのに「落ちないように」「転ばないように」というブレーキをかけているのが客席にしっかり伝わってきてます。これは劇場サイズもあるのかもしれません。日生劇場や青山劇場だと全速力で走りまわれたけれど、[秋]劇場だと舞台が狭いので動きが小さくなってしまう、とか。でも、そこを調整するのが演出家の腕のみせどころであり、役者の技量ってもんで、突き飛ばされる「芝居」をしているのは、力が入ってない動きでバレバレ。こういうのってかなり白けます。そして、イエスに向かって「何とか助けてください」と押しかけているにもかかわらず、切実感ゼロ。それどころか「次は私が歌う番ね」という準備過程がバレバレ。大きく息を吸って、ちょっと緊張して、とりあえず芝居はSTOPというのもねぇ。この作品はアンサンブルといえども、数秒ずつのソロがあったりするのですが、ちょっとしたソロの声量や歌唱力の差が大きく、歌い継ぐ過程を楽しむことができないのも困ったちゃん。それでいて、コーラスは割ときれいにまとめられるのですから、不思議な集団です。女声もソロだとか弱くて喉を引っかくような発声が気持ち悪いけれど、集団になると透明感のある響きになって魅力的。舞台のオモロイところです。
 さて、メイン役者たちですが、役にあった役者を配置、とはお世辞にも言えない状況。力不足でもとりあえずやらせちゃえ、という按配なので、全員アップアップです。声域があってない人に関しては上手い下手の前に気の毒。スター不在の公演なので、「イエスもユダもマリアも民衆の一人でしかないんだ、一人だと何の力もないんだ」という図式が浮かび上がって、このあたりは面白かったです。ロンドンやブロードウェイの公演だと、タイトル通り、ジーザス・クライスト=スーパースターで、存在感や歌唱力が圧巻なのですが、このあたり、とても四季的。そして、その個性を生かした演出でもあります。四季も昔の方が座組みに合わせた丁寧な演出だったんですよねぇ。。。
 山口祐一郎退団後はジーザスを一手に引き受けている柳瀬大輔ですが、ようやく声が落ち着いてきて、中音域では響きが抜群に良くなっていました。体が一回り大きくなったせいか、声の安定度が高まってます。ただし、カリスマ性のなさと、歌唱テクニックの問題は相変わらずで、音域によって声量や声色がバラバラなこと、裏声に逃げると音程があやしくなること、何よりも楽譜通り歌えずあちこち勝手に編曲していること(「ゲッセマネ」ではいきなりオクターブ低く歌っちゃったりしてビックリ)など、まだまだ力不足。前回公演に比べ抜群に良くなったけれど(ってことは、前回いかにひどかったか。。。)まだまだ変化の余地があります。彼はスター性を磨くのか、技術を磨くのか、そろそろ進路を考えているでしょうが、微妙なポジションですね。ユダの金森勝は知らない名前だなぁ、と思ってたら、どうやらキム・スンラが名前を変えたようです。彼は歌も芝居もこれからです。ま、今回がロール・デビューですし、ユダはJCSの中で難しい役ですから、イッパイイッパイなのは仕方ないんですけど、それが彼だけだったらまだ許容範囲だったんですけどね。マリアは感動的に存在感ナシ。四季のソプラノはみなさんノッペラボウに歌って、音色や歌い回しは放ったらかし。音大組のみなさん、習ったことはちゃんとプロになっても活かしましょうね。
 ということで、最近四季ファンになった人からは「厳しい」と言われるんですが、以前出来てたことができなくなった舞台に対して絶賛なんてできませんっ。ひどい出来はひどい出来として観客が意思表示することも舞台の発展につながると思うんです。僕の周りでは、四季ファン以外からはかなり厳しい意見が飛び交っています。もちろん、応援している人の舞台を褒めたたえたいのはわかるけれど、良くないものは良くないと、全体を眺められるようになってこそ、演劇のレベルアップになるのではないかと。もちろん、個々の評価は何を基準とするか、という問題はありますが、その理由を意見交換することで、より舞台を観る目が養われ、ひいては観劇が楽しくなると思うんです。


2007年07月22日(日)13:00-15:30
来日カンパニー「hairspray」@オーチャードホール

 A席 10000円 1階-36列-3番 (パンフレット:2000円)

 演出:JACK O'BRIEN

 Tracy:BROOKLYNN PULVER
 Amber Von Tussle:PEARL MALLON
 Link Larkin:CONSTANTINE ROUSOULI
 Edna Turnbland:MICHAEL WALKER(JERRY O'BOYLEの代役)
 Penny Pingleton:ALYSSA MALGERI
 Wilbur Turnbland:DAN FERRETTI
 SeaweedJ. Stubbs:CHRISTIAN WHITE

 以前、トニー賞授賞式の「hairspray」のパフォーマンスは、賑やかではあったけれど、楽しさが僕には伝わらなかったんです。「なんで、これが受賞するの?」と不思議な感覚。今回はそれを確かめたくて劇場に来てみたのですが、大当たりでした。いきなり志村けんが登場しそうな、ベッドを垂直に立てたセットが登場。ま、ここまでは冷静でした。が、ヒロインが歌いだすやいなや、ノリノリに興奮。マシュマロ・ウーマンとでも言いましょうか、日常生活で見かけたら、まずノッタリした動きにイライラしそうな体型なのですが、他の誰よりも元気に陽気に歌い踊っちゃうんです。通常であればコンプレックスになりがちなことも、彼女は全然気にせず、常に明るくてポジティヴ。良く「人は見かけじゃないよ」というお説教めいたミュージカルってありますが、やっぱり見た目って大切。元気はつらつはモテモテのコツです(って、すぐにそうなれるかというと別問題ですけどね)。
 扱っているストーリーは結構重いんです、実は。貧富の問題や人種差別なんぞが登場するのですから。でも、それをはねのけてしまうようなバイタリティがあります。リアルを追い求めれば「欲望という名の電車」のような、重くて汗臭くて汚れた舞台が登場してもおかしくないというのに、ポップでキュートでカラフル。まるでパリのお菓子屋のショーウィンドウを眺めているみたい。色のトーンもマカロンやキャンディ調で、派手派手だけれど、どこかやさしい雰囲気。今回は真夏の公演でしたが、クリスマス直前にもう一度観たいです。これは、AIDSもベトナム戦争も登場する前、アメリカ黄金時代である1960年代を扱っているというのもあるかもしれません。天真爛漫な時代なだけに、差別も今と違って単純だし、その解決に向けて(未だに解決はしてないと思いますが)の希望もキラキラ。子供たち主導による問題解決なので、実際のところはともかく「仕方ないわね」と大人たちが簡単に納得してしまうのが、いかにもミュージカル。今年の東京は暗い作品が多いので、この手の作品は大歓迎。笑って、拍手して、一緒に踊って大満足です。
 主役のトレイシーは期待通りの肉厚(嫌味じゃなくってよ)の歌声と、仔犬が飛び跳ねているかのようなメレンゲの効いた(バネが効いたとは思えない動き!)ダンスで観客をあっという間に魅了。登場するだけで場面が明るくなるのですから、主役にぴったり。もう一人の主役、トレイシー母・エドナは残念ながら代役でしたが「これで大役?」というドンピシャリの肝っ玉母さん。堅物のようでいて、娘におだてられると簡単に芸能界デビューしちゃうのが可愛い。ちなみに、エドナ役は男性が演じます。サイズといい、芝居といい、すべてのスケールが大きいです。そして、巨漢二人に囲まれていて、ますます細さが際立つトレイシー父・ウィルバーは、存在感は薄いものの、みんなに愛され、家長として大切にされているのはなぜだろう、と思ってたのです。最初は。でも、娘と妻をこれ以上なく愛し、ゆったりとほほ笑みながら、優しく応援するあたり「ええパパやぁ」とウルウル。トレイシーが良い子なのは、このパパあってこそ。
 蛇足ですが、今回の日本公演のスポンサーはVO5。観客へのお土産として、ヘアスプレーを配ったセンスに乾杯!


2007年07月22日(日)18:00-20:25
グルジア国立バレエ「白鳥の湖」@東京文化会館

 E席 4000円 5階-L2列-4番 (パンフレット:1000円)

 指揮:ザザ・カルマヘリーゼ
 管弦楽:東京ニューシティ管弦楽団

 オデット/オディール:ニーナ・アナニアシヴィリ
 プリンシパル・ダンサー/ジークフリート王子:アンドレイ・ウヴァーロフ
 芸術監督/悪魔:イラクリ・バフターゼ

 幕が開くとそこはドイツかどこかの宮廷……のはずが、いきなり稽古着のダンサーたちがバーレッスンやらストレッチやら。どうやら「リハーサル」として「白鳥の湖」が演じられるという趣向。まー何てお金のかかってない舞台なんでしょwww そして、プリンシパル・ダンサー役のウヴァーロフが駄目だしされまくりというとっても無理のあるストーリー。だって、誰よりも動きが美しいんですもの。監督さん、何を見てるんですかっ!と投書の一つもしたくなります(嘘) このまま、オデットも普段着だったら嫌だなぁ、と心配していたのですが、リハーサルの途中でなぜかプリンシパル・ダンサーはスヤスヤとお昼寝。第二幕からは急に通常の「白鳥の湖」に。今年は各種「白鳥の湖」が入り乱れている東京なので、たまにはこんな演出も良いですよ。でも、でも、衣装がない貴族たちのシーンって、かなり物足りない〜〜〜。ゴージャスな場面はゴージャスに演出してくれるのが好きですわ、僕は。
 11年ぶりに登場というアナニアシヴィリですが、ブランクのせいか、それとも彼女の役作りのせいか、とても元気で健康的なオデットでした。手足が短いせいか、ゆったりたおやかに、というのではなく、結構体操チック。前評判が高いだけにこれ、結構意外でした。指先まで優雅なオデット、というのではなく、力を入れてぶんぶん手足を振り上げるオデット。最初はとまどったけれど、結構新鮮。色気で酔わすのではなく、迫力で脅すタイプのオディール。僕がここ最近観ていたダンサー文科系だとすると、アナニアシヴィリは体育系。オディールなんて、乱暴かと思えるほど、舞台で暴れまくってました。第三幕の32回フェッテはすべてシングルでしたが、まるでスケートの3回転ジャンプを観ているかのような迫力がありました。観客をどう酔わせるかを知っている方ですね。
 ウヴァーロフは稽古着の時点で「別格オーラ」をガンガン放っていましたが、王子役として登場するとやはり圧巻。手足が長く、微妙にしなるのが実に優美。バレエダンサー、それも王子役は、気品と手足の長さ、顔の小ささが必須アイテムです(実存の王族の方たちがどうかは別問題!ここでは無視してください)。第四幕では、オデットを追って颯爽と登場、と思ったら、いきなり白鳥たちに囲まれて、よってたかってリンチ……って、これじゃ、マシュー・ボーンのスワンレイクになっちゃいますが、今回は別の版。囲まれているうちにこっそり着替えて、再び舞台はバレエ団の稽古場。オケが最も情熱的にテーマ音楽を奏で、舞台ではジークフリート王子vsロットバルトの戦いがドラマティックに繰り広げられる場面がばっさりカット。とってつけたように、リハーサル場面に戻って「こんなところで何、寝てんのさ」というコテコテの芝居が入っておしまい。ん〜〜〜、破たんはないけれど、わざわざ作りかえるほどの演出じゃないわぁな。台本の弱さを感じました。
 おそらく、衣装や装置といった予算の都合、女性に対して、男性の人数が少ないというダンサーの構成の問題もあったのでしょう。そんな舞台裏を上手にカヴァーした、あの手この手の演出家の力量に拍手です。そして、今のところ、どのカンパニーのどの演出でも、音楽の良さ、踊りの美しさのおかげで、楽しめない公演はないっというのが「白鳥の湖」の凄いところ。一番人気なのも納得の名作です。


2007年07月29日(日)11:30-12:45
新国立劇場こどものためのオペラ劇場
「スペース・トゥーランドット」@新国立劇場中劇場

 全席指定 2100円 1階-14列-17番 (パンフレット:無料)
 指揮:三澤洋史
 演出:田尾下哲
 管弦楽:新国立劇場こどもオペラ・ヴォーカルアンサンブル

 フローラの王:大澤建
 ラベンダー姫:中村恵理
 タムタム:直野容子
 キャプテン・レオ:小原啓楼
 氷の女王トゥーランドット:高橋知子
 ペペ:高橋淳
 ロン:米谷毅彦
 チーノ:峰茂樹

 ノヴォさんの最後のお仕事はこどものためのオペラ劇場です(お約束ですが、のぼぉじゃありません。彼にはまだまだ働いてもらいますっ)。以前は子連れじゃないと入れなかったので「姪っ子貸して〜」とレンタルして「ニーベルングの指環・一時間に短縮ヴァージョン」を観たのですが、今回は「トゥーランドット」が題材。約1/3への短縮なので、前回に比べれば……てことはなく、かなり作りこんでます。トゥーランドットが氷の心のお姫様という設定は代わりませんが、王子たちの首をちょん切ってしまうという部分はすみれコードならぬ、こどもコードに引っかかりあえなくカット。僕の世代には懐かしいピン・ポン・パンの三人も、番組が終了している現在はペペ・ロン・チーノに。今でこそポピュラーなパスタですが、僕が小学生のころってミートソースかナポリタン、お洒落なところで明太子位しかなかったから、時代の流れを感じるヒトコマです。人殺しを扱わないので、奴隷女リューもラベンダー姫へと大出世。その代わり、カラフ王子は警備隊のキャプテンに降格。こども達がとっつきやすいよう、あれこれ工夫された台本です。
 演出もなかなか凝ったもので、幕開きは劇団四季のファミリーミュージカル調で、オペラ版には登場しないタムタム(サイボーグ)による、大人にはかったるいお芝居。このあたり「お母さんといっしょ」風でもあります。そして、登場するレオはゴレンジャーのような衣装。男の子だったら、一度は着てみたいと思ったことがあるに違いない、真赤なアレです。おまけに、変身ポーズもどきを披露してくれるので、客席の子供たちが大喜び。もちろん、僕も。初めてのオペラとして、ここまで観客に媚びた作りというのは僕の好みじゃないけれど(ちなみに、僕が小学生の時に初めて観たのは「天国と地獄」でその次は「メリー・ウィドウ」でしたがちゃんと面白かったもんっ)まず掴みはOK。ペペ・ロン・チーノはディズニーランドで見かけるようなカラフルな衣装でしたし、ラベンダー姫は宝塚の娘役みたい。そして極めつけはトゥーランドット姫。衣装と装置が一体化していて、それがぐるぐるまわって、キラキラ光って小林幸子状態。(宝塚ファンだと「イッツ・ア・ラブ・ストーリー」の中詰めシーンを思い出していただければ)。飽きる前にあれこれ視覚的効果をあげるのですから、大人だって楽しいです。ちなみに、フィナーレは「Cats」方式で、客席にキャストが飛び出し、握手大会。
 感動的だったのは、ザワザワしていた客席が、「誰も寝てはならぬ」や「氷のような姫君の心も」のアリアになるとシーンと静まり返ること。演出こそPOPですが、演奏は本気です。そして、本気モードは絶対客席に伝わりますもの。すっかり「イナバウアー」で有名というのもあれど(「氷のような〜」は有名じゃないのに!)、ちゃんと客席は感動。良いものは良いわぁと嬉しくなる瞬間でした。この日はオペラ劇場では二期会の本公演が上演されていたのですが、ベテラン歌手はこぞって中劇場だったんですよねぇ。ペペ・ロン・チーノのお三方なんて、普段は真面目くさって神妙に歌ってますが、今日ばかりは衣装に負けじと弾けまくってました。大仰な芝居あり、大汗かいてのダンスあり、客席降り(新国の場合は客席登り?)あり。毎度のことながら、歌科のみなさんって、クラシック演奏家の中でも化けっぷりがすごいというか、自ら楽しんでいるのが観ていて嬉しい。ま、それ位じゃないと、オペラなんてできないかっ。
 とにかく、メルヘンチックなラベンダー姫は歌い出したら「今すぐオペラ劇場に移動しなはれ」な見事な歌いっぷりだし(中村恵理は研修所を卒業してからの飛躍ぶりがすごいですね)、台本の関係上、ほとんどのソロをカットされてしまったトゥーランドットですが、高橋知子はネタが古〜い、しょーもないナゾナゾをやたらドラマチックに盛り上げて、理性だとバカバカしいのに本能的に楽しんじゃう名場面にしてくれるし、ピンポンパン…もとい…ペペロンチーノは見事なアンサンブルっぷりだし、音楽的にもなかなかのものを聞かせてくれました。今やもっとも有名なオペラアリアを与えられたキャプテンレオはとんだ儲け役。「誰も寝てはならぬ」が何度も出てきて(フィナーレではサンバにアレンジ!)テノール冥利につきるってものでしょう。
 でも、唯一のブーイングがキャプテン・レオ。歌は素敵だったし、芝居も熱演だったのですが、いかんせん科学戦隊の衣装が感動的に似合わない。。。原因は短足&メタボ腹。筋肉を強調する胸当てよりも腹がボッテリ。これにはいくらなんでも引きまくります。ヒーローはヒーローらしくあってほしいなぁ。ここは歌唱力は落ちたとしても、岡幸二郎あたりで格好良く見せていただかないことには、納得いかない!!(ポップに編曲されてることだし、一人くらいオペラ歌手じゃなくっても良いかと。。。) 格好良く決めてるポーズが、お笑いの人にしか見えないなんて痛すぎます。こればかりは歌手がどんなに頑張ってもどうこうなるものではないので、キャスティングを考えてほしいもんです。やっぱり、初めてのオペラでスターに出会えるか出会えないかって、今後のファン生活に大きく影響すると思うんですよねぇ。
 ま、それは小さな問題(あくまで好みの問題ですし)で、大人が本気になって上演するこどものためのオペラ。企画も素晴らしいし、ノリノリ具合が非常に心地良い公演でした。今回は最下手の席だったので、舞台の一部が見えなかったのですが、いつかそのうち、こどもの手を引きながらセンター席でみたるっ!! 終演後「楽しかった〜」と叫ぶ前席の子、アンタ良い子だね〜。その一言、大人になっても叫んでください!!!


2007年07月29日(日)14:00-17:25
二期会「モーツァルト:魔笛」@新国立劇場オペラ劇場

 C席 7000円 3階-L7列-2番 (パンフレット:1000円)

 指揮:高関健
 演出:実相寺昭雄
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 ザラストロ:堀野浩史
 夜の女王:品田昭子
 タミーノ:小貫岩夫
 パミーナ: 増田のり子
 パパゲーノ:山下浩司
 パパゲーナ: 九嶋香奈枝
 モノスタトス:吉田伸昭
 侍女1:渡邊史
 侍女2:星野恵里
 侍女3:高柳佳代
 武士1:行天祥晃
 武士2:岩本貴文
 童子1:猿山順子
 童子2:金原智子
 童子3:小林久美子
 僧侶1:村林徹也
 僧侶2:大川信之

 すっかり二期会の人気プロダクションになった感のある「実相寺版“魔笛”」ですが、今回で三演目となります。ハチャメチャな台本を生かして、ロールプレイング・ゲームの中の出来事としての演出は、奇想天外ではあるものの、違和感がなく、実にPOPで楽しい仕上がり。モーツァルトが生きていたら大喜びだったのではないでしょうか。装置や衣装も依然のままで、大階段が回り舞台に乗せられて、グルグル回る演出は、転換のスピーディさや、立体的な舞台美術でひときわ効果をあげていました。もちろん、お楽しみのウルトラ怪獣の面々も登場。「こどものためのオペラ劇場」となっている中劇場にまけずに、親子連れの目立つオペラ劇場でしたが、パパも子供も大喜び。そういえば、この演出って、男の子の好きそうなものがギューッと凝縮されてるんですよね。王子は勇者として凛々しく登場するし、機関車あり、お色気姉さんトリオあり、前述の懐柔あり、メカニカルな装置や小道具あり。そして、真面目一本槍ではなくお笑い担当あり、かわいい(ってことにしときましょ)お姫様あり、おどろおどろしい悪役あり。はい、僕も大好きですっ。
 連続ヒーロー物って実は主役が面白くないことが多いんです。品行方正だしマジメだし、ふざけないし。人気テレビアニメで人間らしくて愛らしいヒーローって思い浮かびますか? 少なくとも、僕がテレビアニメを見ていた時代は主人公は大人しいもんです。(ジャンルは違うけれど「水戸黄門」も主役よりも脇役(悪役)がいて初めて舞台が盛り上がるような)。タカラジェンヌも「二番手時代が一番面白い。トップになると役柄が限られるから」と良くインタビューで答えてます。
 で、今回の「魔笛」はベテランが中劇場に流れたせいか(?)新人公演状態。ほとんど全員が(程度の差はあれども)無名の歌手たち。客席を圧倒するような技術も、登場するだけで拍手をしたくなるようなスターはいません。でも、アンサンブルの良さで懸命に舞台を盛り上げ、楽しい時間を醸し出してくれました。ここまで露骨な、急激な世代交代というのもどうかと思いますが、「レミゼ」のようにスター不在の舞台なので、一人一人は頑張るので、これはこれで、新人育成には良いのかも。委縮する同僚がいないというのは、伸び盛りには有効ですね。
 「魔笛」の主役はタミーノとパミーナは真面目な王子様&お姫様ですが、この二人、芝居としては一番つまらない役。でも、二期会本公演の主役ですョ、主役。その意識が全然感じられず、舞台上での存在感がないんです。カーテンコールの時なんて「そういえばいたっ」と思った位。舞台の上で、他の役の面々が全身全霊で盛り上げようとしているのに、その芝居をまったく受けず、ぼんくら王子しているので、つまんないことこの上なし。舞台の上で役として生きているのではなく、舞台を務めるだけで精一杯。これは痛いです。もっと「私が主役ですっ」とアピールしないと、今後の主役の座もかなり危ないのではないかな。派手な装置、派手な衣装、派手なメイクと、歌唱・芝居がかみ合っていませんでした。
 逆に実に生き生きとして魅力的だったのがパパゲーノとパパゲーナ。前回公演の面々も良かったけれど、自由奔放に遊び、暴れ、感情を露にできるので、やりやすいといえばやりやすいんでしょう。でも、一歩間違えると単なる下品で空気を読めない嫌な奴となりかねなりところ、グッとこらえて、愛らしい自由人としてまとめ上げたあたり、ナカナカのもの。弟キャラのパパゲーノに、しっかり女房な姿を予感させるパパゲーナ、まじめ→堕落のギャップが楽しい僧侶2らが舞台に登場すると、とたんに生き生きとした空気に変わります。正直、今回の主役はパパゲーノ&パパゲーナ。もちろん、ハイライトシーンの「パ・パ・パ」からフィナーレにかけては、テンポ良く盛り上げます。歌だけでなく、動きやセリフも伸び伸びしていて気持ち良かったです。
 残念だったのは夜の女王。一番有名なf音連発のアリアはほとんど全部の音を外しました。ちゃんと出せたのって一回位? 歌っている本人が途中で嫌気がさしているのが感じられ、と〜ってもシラケました。もっとも、この役はとっても難しい曲(超高音を鋭くドラマティックに歌いあげなければならない)なので、音は出るけれど迫力がないとか、迫力と存在感はあるけれど音が出ないとか、もしかしたら「ラ・トラヴィアータ」のヴィオレッタ以上に無理難題な曲かもしれません。出番が少ないから挽回する暇もありませんし。今回の女王は、女王としての貫録もなければ(セリフの切れの悪さ、下品なイントネーションで「女中のがぴったりだよねぇ」と)、歌も声が軽すぎて散ってしまうわで、散々な出来。おまけに、美川憲一ばりのマンボッな衣装も着こなしができてなくて、個人的に「勘違い女NO.1」に認定。女王だけで登場だったら気にならなかったのかもしれませんが、今回の侍女トリオがあまりに素晴らしく、女王よりも気品と押し出しの良さがあったのも災いしてました。三人三様に実に色っぽく格好良いお姉さんたちで、タミーノやパパゲーノなんて刃が立ちませぬ。表情の作りといい、ポージングや三人連携の芝居など、二期会のアンサンブルの素晴らしさを見せつける出来。この中で一人でも照れたり、レベルが落ちたりすると台無しですが、一人一人が「私って良いオンナでしょ」と自覚しているのが心地よかったです。夜の女王なしで、三人で勝手に動いてたら、クーデターも成功してたに違いないです!!好きやわぁ、この三人組。
 オケはこのところ酷いのばかり聞いていただけに、柔らかくて軽やかな弦の歌いっぷり、音程を心配せずに音色を楽しめる管楽器、舞台の邪魔をしないパーカッションなど、当たり前と思っていた各パートの素晴らしさにただただウットリ。貫禄が必要な役は専科クラスの歌手を投入して、また再演してくれないやろか。頼みまっせ。