観劇日記〜2007年09月〜
01日(土) 11:00 宝塚歌劇団宙組「バレンシアの熱い花」「宙FANTASISTA!」 東京宝塚劇場
07日(金) 14:10 東京芸術大学音楽学部声楽科3年生
「モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ」
東京芸術大学奏楽堂
07日(金) 18:30 「アフリカ音楽紀行 マダガスカル」 中野サンプラザ
08日(土) 15:00 二期会「ヴェルディ:仮面舞踏会」 東京文化会館
09日(日) 13:00 インペリアル・アイス・スターズ「SWAN LAKE ON ICE 〜氷の上の"スワン・レイク"〜」千秋楽 東京厚生年金会館
15日(土) 11:00 宝塚歌劇団星組「KEAN」 日生劇場
22日(土) 18:00 ODミュージカルカンパニー「ラ・マンチャの男」 青山劇場
26日(水) 18:30 劇団四季「ウェストサイド物語」 四季劇場[秋]


2007年09月01日(土)11:00-14:05
宝塚歌劇団宙組
「バレンシアの熱い花」「宙FANTASISTA!」@東京宝塚劇場

 B席 3500円 2階-12列-3番 (パンフレット:1000円)

 演出:柴田侑宏、中村暁(バレンシアの熱い花)/藤井大介(宙FANTASISTA!)

 フェルナンド・デルバレス:大和悠河(榛名由梨)
 イサベラ:陽月華(小松美保)
 ラモン・カルドス:北翔海莉(順みつき)
 ロドリーゴ・グラナドス:蘭寿とむ(大地真央)
 レオン将軍:美郷真也(水代玉藻)
 ルカノール侯爵:悠未ひろ(藤城潤)
 シルヴィア:美羽あさひ(舞小雪)
 マルガリータ:和音美桜(優ひかり)
 セレスティーナ婦人:邦なつき(専科)(三鷹恵子)
 ルーカス大佐:十輝いりす(鷹匠恵)
   ( )は1979年公演

 ラモンとロドリーゴを演じる、蘭寿とむと北翔海莉が役を交換。本日は北翔海莉がラモン役。同じラモン役でも、演じる人が変われば印象も変わるのが面白いところ。乱暴な言い方をしてしまえば、勢いで演じる蘭寿とむvs計算で演じる北翔海莉といったところでしょうか。フェルナンドは「ハムレット」のような「忠臣蔵」のような、腹に一物隠しながら仮の姿で生きているし、ロドリーゴは「ドン・カルロ」のような「源氏物語」のような複雑な恋愛状況だけれど、身分が身分なので自分を抑えてる。。。そんな中、ラモンだけは感情に正直に自由奔放に生きている印象を受けます。個人的にはひねくれのない人って好きやわぁ(って、ひねくれてないとドラマは生じないけれど)。
 北翔海莉は昨日までロドリーゴを演じていたせいか、それとも、優等生気質が影響したのか、芝居の計算が良く見えるラモンでした。上手いんだと思います。そして、場面場面であれこれ考えているのはわかります。でも、台本を見せられているような、舞台裏を露にされているような、そんな居心地の悪さを感じます。自由なはずのラモンが、がんじがらめに規制・コントロールされているような印象。ファンの方には叱られてしまいそうですが、彼女のお芝居はハートよりもハードが先行していて、心に響かないんですよねぇ。。。大和悠河と蘭寿とむの二人がラフな芝居をしているので、余計に計算高さが目立ってしまい、個人的にはミス・キャストだと思っています。北翔海莉は、大和悠河と役変わりだったら面白い効果が出たかも(って、トップさん相手だからそんなことありえませんけど)。
 一方、蘭寿とむは思っていた以上に貴族らしさは出ていたけれど、とってもラフに演じてしまうので、ロドリーゴの役が単純やせ細り、ボリュームが小さくなってました。印象に残らない役に格下げ。。。この手の辛抱役は、昨今のサラサラ芝居に慣れている若手にはまだまだ難しい役のようです。役の状況を演じようとすると、情報がたくさんで結構ドロドロになるはずなんですけど。思えば、初演の時は榛名由梨・瀬戸内美八・順みつきといった、いずれも芝居巧者ぶりが売りのトリオが「三人トップ」と言わしめるほどの芝居合戦を繰り広げた作品なだけに、ハードルが高いです。大和悠河も貴公子ぶりと華やかさは買いますが、セリフが上ずってて、芝居としてはまだまだ。
 さて、ショーですが、一度目には気にならなかったのですが、二度目になったら、スターさんたちの歌が気になってきた〜(汗) トップコンビの歌は、ここまで破滅的だと、逆に売りになるかも。というのも、プロローグのテーマ曲、パレードで下級生たちが歌い継いでたものと同じ曲のはずなのに、全然違う曲に聞こえるんですもの。前衛音楽みたいにも聞こえてきますwww もとはといえば、大和悠河の音域に合わせてない曲をあてがったということで、音楽スタッフは吊し上げの刑に処して良いと思いま(トップを立てないでどうするっ!) 出ない音域を無理やり出そうと、いきなり全力で歌い出してしまうので、いざ曲が盛り上がっても、それ以上盛り上げられなくて、一本調子になってしまうんです。それをカバーしようと音程そっちのけでシャウトしちゃうので、やかましいだけになってしまう……というのが僕の観察結果。もう少し易しく優しく歌い始められる曲ならば、もっと映えたでしょうに。音域の狭いトップさんなので、劇団スタッフはもっとプロの仕事をせなアカンわなぁ。出ない音程をウロウロしているトップさん、気の毒すぎます。
 それにしても、ここまでトップさんが出ずっぱりなショーも珍しいです。全場面に大和悠河が登場しますし、踊り狂ってます。高年齢トップさんの場合、この手のショーだと疲れが見えちゃうものですが、大和悠河の偉いところは、最後までフルパワーで完走しちゃうところ(あ、歌と一緒だぁ)。ヒーヒー踊ってる下級生がいるなか、実に立派です。華やかで元気で健康的。体育会ですね。
 そんな大和悠河に負けず劣らず舞台で大暴れしているのが陽月華。「トップさんについていきます」的な甘ったるい娘役ではなく、自分一人でどんどん輝けるタイプ。トップお披露目公演なのに、既に大トップの風格すらあります。二番手以下の男役を引き連れて舞台の中心で踊るのが、完全に男役連中を食ってて、実に頼もしい。男役以上にシャープで大きいダンスなので、彼女を支えられるのはトップ=大和悠河の華だけというのが恐ろしい。。。舞台を走るのだって、ちょこまかと可愛くなんて中途半端はせず、世界陸上代表のごとく、シャープに大胆に横切ってます。大和悠河との銀橋渡りだって、通常はトップさんにひきずられるようにして、小走りになるところを、大股でジャンプしながら移動。手のかからないスターっぷりが気持ち良いです。それどころか、下級生にハッパかけまくりなところが好き〜〜〜。今後、お姫様タイプの場面が与えられた時どうなるかはちと心配ですが(マッチョ体型で、夏河ゆらみたいなんだもんっ!)、トップと互角にやりあえる娘役は気持ち良いですね。相手の顔色ばかりうかがってる娘役が多い中、とっても新鮮。歌は遥くららな処理がなされたます。影武者のように毬谷友子……じゃなかった、和音美桜ががっちりカバー。でもね、コーラスの場面で、一番「上手いでしょ」って顔して気持ち良さそうに歌ってるのが陽月華。アッパレです。


2007年09月07日(金)14:10-17:05
東京芸術大学音楽学部声楽科3年生
「モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ」@東京芸術大学奏楽堂

 自由席 無料 7列-23番 (パンフレット:無料)

 指揮:道端大輝
 演出:柳澤佐和子
 管弦楽:GEIDAI Festival Orchestra 2007

 ドン・ジョヴァンニ:上原理生/井口達
 騎士長:菅谷公博/菅谷公博
 ドンナ・アンナ:平尾遥/渡邊仁美
 ドン・オッターヴィオ:鹿野浩史/山際隼人
 ドンナ・エルヴィーラ:竹森真子/杉浦倫代
 レポレッロ:赤木克行/加藤知志
 ヅェルリーナ:根之木里理/谷垣千沙
 マゼット:高品哲平/高品哲平
 (T幕/U幕)

 芸祭オペラです。前夜の台風の影響で上演延期が危ぶまれたのですが、予定通り上演。通常、音大オペラはOBやOGがソリストを占めるのがほとんどで、芸大オペラもその例に漏れませんが、芸祭オペラは出演者もスタッフも現役の学部生によって上演されます。ということで、20歳位の若い子たちが舞台を占めるわけで……年齢といい、未熟度といい、宝塚の新人公演を観ている感じ。芸大もピアノ科とヴァイオリン科は学生離れした堂々たる演奏を繰り広げる人が多いけれど、他の科は高校生と大差ないような、幼さを感じます。舞台の上で照れてると、観ているこちらも困ります。本番はスターになり切らないことにはねぇ。このあたり、ピアノ科とヴァイオリン科だけ特化しているのか、他の科が頼りないのかは不明ですが、これはモーニング・コンサートでも感じること。プロ意識の違いでしょうかねぇ。ジュリアードではステージマナーの授業があるそうですが、芸大はないのかな?
 さて、本公演の装置や衣装を流用できる宝塚と異なり、芸祭オペラはそれらをイチから準備するのですが……かなり予算がなさそうです。客席からの見た目でいうと、私立高校吹奏楽部の定期演奏会の方がよっぽど予算をかけてます。元々奏楽堂は劇場ではないので、オペラ上演はかなり厳しい条件が揃っていますが、ホール・オペラのノリで工夫を凝らしているのはアッパレ。ドンナ・アンナのお屋敷は入口のアーチがあるだけ、ツェルリーナとマゼットの結婚式は何もない土間にお客がペタリと地座り、ドン・ジョヴァンニのお屋敷も椅子とテーブルがあるだけ、などなど、かなり省略化されていて、想像力が要求されますが、慣れてくるとちゃんとそれらしく思えてくるのが面白いところ。演じる側は、観客の想像力を喚起しなければならないのが大変でしょうが、その分刺激的な作業だったのでは? 学生だけでここまでの公演を作りあげたのはアッパレです。
 出演者は一部を除いてWキャストです。タイプの異なる生徒が登場するので、U幕の初めはちょっと戸惑いますが、一度の公演で2タイプの役者を楽しめるのが美味しいです。で、ついつい比べてしまうのですが(あぁ、嫌な観客!)、華のある人とない人がはっきり表れていて、上手い下手の前に「この人は今後これほどの役を演じることはもうないだろうな」と思わせられる人もチラホラ。ソリストなのにコーラスに埋もれてしまう人もいたりして、知っている出演者が皆無なのでハッキリ書いちゃいますが「なんでこの人がソリストなの?」というお方も。。。ま、コーラスの中にも表情が強張って能面状態の人がいたりして、このあたり、いかにも新人さんたちで楽しいです。これから、オペラの世界で活躍する人も出てくるでしょうが、これほどまでに全員が真摯に作品に取組み、緊張感がみなぎっている公演もそうありますまい。まだ輝く前の宝石の原石たちですが、キラキラしたものが見え隠れして、刺激的な公演でした。
 ただ、一つだけ苦言をすると、歩き姿が見苦しいです。特に男性。スリッパで歩いているように足を引きずるのはとっても下品。舞台上では、普段以上に気を張ってないとすぐに品がなくなるので要注意。オペラに限らず、今後の演奏活動でも大事なことかと。。。


2007年09月07日(金)18:30-20:40
「アフリカ音楽紀行 マダガスカル」@中野サンプラザ

 招待席  1階-9列-35番 (パンフレット:無料)

 演出:大塚照信

 民音の看板シリーズの一つ「アフリカ音楽紀行」。今回はマダガスカルが登場。島国として大陸から隔離されているせいか、風景の写真もサバンナなどとは全然異なり、緑豊かな大都会といった趣き。全体的にトーンが明るいんです。そういえば、アフリカ系の音楽というと、貧乏だとか、苦難の話、奴隷についてなど、人生のダークサイドを扱ったものが多く、個人的に苦手なのですが(同じ理由で演歌もネガティヴでダメ)、マダガスカルはカラっと晴れ渡った音楽。歌舞伎もドラマティックなものではなく、日常のちょっとしたエピソードをほのぼのと演じあげるものってありますよね。あんな感じ。ディズニーランドに登場しそうな、ハッピー・モード全開なのが嬉しい。今まで登場した国に比べ、ショーアップ度が高く、出演者も「楽しませる」という気質なのが特徴。自分たちだけの歌と踊りではなく、観客を酔わせようという意気込みが感じられます。
 出演者は素朴なものが得意なチームと、コンテンポラリーが得意なチームが混合されていて、マダガスカルの「今」の音楽を多面的に紹介していたのが興味深かったです。ヨーロッパで活躍しているチームなんて、ほとんどゴスペル・ミュージック状態。黒人特有のネットリしたドラマティックな声が大好きな僕としては「この人たちで“ウィケッド”や“ライオンキング”を上演してほしい!」と脱線した願望に取りつかれてしまいました。日本人が逆立ちしても出せない声! 来日公演の醍醐味です。
 使用楽器は弾くタイプの弦楽器とパーカッションが中心。笛やヴァイオリンのような楽器もたまに登場。全般的に優しい暖かい音色です。ショーの合間の楽器紹介の際は、一つ一つ説明しながら音出しをしてくれるのですが、見た目と異なる面白いサウンドにびっくりしたり、このあたり、いかにも民音による「未知なる音楽の紹介」色が出ていて、素直に楽しめます。リアル楽器辞典。


2007年09月08日(土)15:00-18:10
二期会「ヴェルディ:仮面舞踏会」@東京文化会館

 D席 5000円 3階-L4列-25番 (パンフレット:1000円)

 指揮:オンドレイ・レナルト
 演出:粟國淳
 管弦楽:読売日本交響楽団

 ウォーウィック伯爵リッカルド:福井敬
 レナート:福島明也
 アメーリア:木下美穂子
 ウルリカ:押見朋子
 小姓オスカル:大西ゆか
 水兵シルヴァーノ:佐藤泰弘
 伯爵の仇敵サムエル:鹿又透
 伯爵の仇敵トム:米谷毅彦
 判事:森田有生
 アメーリアの召使:高田正人

 結構な人気作品だと思っていたのですが、意外にも二期会初演だそうです。実は観る前からあまり良くない評判を聞いていたので、ドキドキしながら劇場入り。開演間もなく登場する福井リッカルドですが……声が伸びない。というか、とっても調子悪そうです。無理して声を押し出しているのがアリアリ。音程も怪しいところがチラホラしてましたし。福井敬の売りとも言える、メリメリッと劇場が軋むような張りのあるテノールにはほど遠い状態。割と安定している歌手なだけに、客席のこちらがショック。とはいえ、場数を踏んでいるベテランなので、終幕に向けてきっちり盛り上げてくれるところは流石。絶唱ではありましたが、終幕のアリアを見事に決めてくれたのはスターの意地ってもんでしょう。東宝の「歌う電信柱」の異名を取る、歌いあげが得意な某俳優じゃないけれど、福井氏も正直大根テノールです。でも、歌い上げたら値千金。最後の最後に「良かったわぁ」という印象を観客に残す力量はたいしたもんです。二期会のトップテノールとして、まだまだ活躍していただきたいだけに、調子が早く戻ることを祈るばかり。こんな状態なのに、終演後にサイン会を行うって、辛いやろなぁ。。。
 一方、バリトンの雄、福島レナートですが、こちらも調子がいま一つ。もしかしたら、最盛期を過ぎた?早すぎない??て程に声が出ない、伸びないのです。リッカルドとアメーリアがあまりに立派な声のカップルということもありますが、この二人とトリオを組むにはパワー不足は否めません。でも、まるで「オテロ」のように妻を疑って正気を失っていく過程は、芝居としてきっちり見せていただき、役者ぶりで歌の不調をカヴァー、面目を保った次第。オペラの台本にケチつけ出したらきりがないけれど、レナートってエリートなわけでしょう? も少し冷静でいられないものかしらねぇ。妻が殺さなくてはならない程の不貞を働いたわけでなし、子供たちの幸せを顧みないエゴイストな父親ぶり丸出し。こんな人がエリートだなんて、とんと信じられないわぁ。
 実は、福井リッカルドと福島レナートの場面ではプロンプターが大活躍していました。初日近くの歌舞伎座でよくお目にかかる状況ですが、プロンプターの声がだんだん大きくなってくるため、客席にもしっかりハッキリ聞こえてしまう状況。よって、まるで輪唱を聴いているような気分にすらなってきます。舞台の要の二人が、それも二期会の中でもトップ級のお二人がこれというのはよほどのことではないでしょうか。暗譜……稽古の時は大丈夫だったんでしょうか? カーテンコールではぜひプロンプターも呼び出して拍手を送りたかったです!!
 調子が良かったのは木下アメーリア。日本人離れしたタップリ&深々した美声をしっかり響かせてくれました。本日の公演に関しては、福井リッカルドを完全に食ってました。声量といい、歌い回しの自在さといい、圧巻です。個人的には彼女のppの歌が好きですね。ffは張り切りすぎか、やや割れる傾向にあって、時折ドキっとすることも。でも、このところ、スターの小粒化が感じられる二期会のソプラノ陣の中で、大化けてくれそうな一人。もう少し華やかさが加われば鬼に金棒。
 男装の麗人として美男ぶりと華やかな歌唱で場を盛り上げた大西オスカル、そもそも中途半端な占いをしたことによって今回の悲劇が生じたんだから反省なさいっな押見ウルリカら若手はカッチリ役をこなしていて、歌も安定していました。それでも、不調の二人には刃が立たないのですから、舞台人というのはケッタイな職業ですね。脇役はベテランずらりでしっかり固めていて、こちらは安心。コーラスも鳴りは良いし、ヘアメイクも統一が取れていて衣装にフィット。頑張ってました。傷はあったけれど、公演全体としては「楽しかった!」につきます。壊滅的にダメな人がいなくて、それぞれの調子はあったものの、きっちり見せどころ・聴かせどころを決めてくれたあたり、かなりの底力を感じました。
 演出は……凡庸です。予算のなさがアリアリとしていて、舞台装置は斜めに傾いた中ゼリサイズの階段を舞台のあちこちに移動させて流用しただけのもの。見せ場ともいえる仮面舞踏会の場面では、数組のダンサーたちが華やかな衣装を身につけているだけで、コーラス隊はモノトーン。ここは、見た目の華やかさと、どす暗いドラマの対比のためにも張り込んでいただきたかった場面。ダンサーとコーラスの動きがそれぞれ独立していて絡みがないのも、舞台の一体感を削いでいたかと思います。倹約するところは倹約して結構ですが、気張るところは気張っていただかなくては。でもね、モノトーンのコーラス隊がカーテンコールで並んだ様は、その隊列と舞台上につり下がっている黒い板の角度も相まって、まるでグランドピアノが登場したかのような、意外なるレビューシーンとなって、結局のところ大喜びで拍手したんですけどwww
 昨日の学生オペラも面白かったけれど、あらためて「プロはすごい!」と感銘を受けた公演です。舞台での安定度、コンディションがどうあれキッチリまとめ上げる力量、何よりも自己アピールの強さはアマチュアとプロの差が大きいです。稽古の段階ではいくら努力してもかまいませぬ。でも、ひとたび本番になったら、今持っている条件の中で、いかに最高のものを見せるか、観客を納得させるか。「努力してます」というのを見せて許されるのはアマチュアだけ。プロの厳しさと凄さを見せつけられたひと時でした。
 あ、ピットに入るのは珍しい読売日響ですが、重めの響きの弦、安心して聴ける金管(ホルンが良かった!)、ちょっと頑張っちゃった木管と、良い仕事してました。東フィルとも東響とも異なる読響サウンドが新鮮。ワイルドな響きでした。僕は好き♪


2007年09月09日(日)13:00-15:30
インペリアル・アイス・スターズ「SWAN LAKE ON ICE 〜氷の上の"スワン・レイク"〜」千秋楽@東京厚生年金会館

 S席 11500円 1階-6列-22番 (パンフレット:2000円)

 演出:トニー・マーサー

 ジークフリート王子:スタニスラフ・エフドキモ
 オデット(白鳥):エレナ・ボゴスパシーバ
 オディール(黒鳥):スヴェトラーナ・マスケヴィッチ
 ロットバルト:マキシム・ベリアコフ
 ベノ:アレクセイ・ミニン
 王妃:エレナ・ボフデンコ

 厚生年金会館の舞台の上に氷を敷き詰めてのアイス・ショー。通常のスケートリンクの1/6位でしょうか。かなり狭いです。でも、その上でジャンプにリフトにスピンに……。舞台からキャストが落ちてきそうな大迫力でした。通常、フィギュア・スケートというと広い会場で、リンクからかなり離れた位置から眺めるので、至近距離からの鑑賞はとってもドラマティックでした。砂ぼこりならぬ、氷ぼこりも良く見えますし、何よりも、スケート靴が氷を削る音まで良く聞こえるのが実に新鮮。そして、通常のバレエに比べてスピードがかなり早く(録音演奏もとってもスピーディ)、本当に水上を白鳥が泳いでいるみたい。スピードがついているので、ジャンプも高いし回転多いし、スケートで「白鳥の湖」を上演しようという発想にまずは拍手です。
 今回はロシアからの来日カンパニーになるのですが、ホンット、ロシア人って足がキレイ。長いしまっすぐだし、立ってるだけで絵になります。元々長い足ですが、スケート靴を履いているので、さらに長身・足長になります。金髪率は高いし、長身率も高いし、キャストを眺めるだけでまずは幸せ。同じ人間として、わが身が恥ずかしくなる位、美しいです。
 まずは素材として美しい人たちですが、スポーツ選手みたいなもんですから、体型も見事にコントロールされています。この年代のロシア人はまだお腹は出ていませんし(いつ、あの体型にシフトするのか、その時はどんな心理なのか、昔からとっても気になってるんです。聞けないけど)。筋肉ムキムキってわけではなく、マッチョ体型は男も女もほとんど見かけないのですが、一人で三人位リフトして、そのままスピンしたり、舞台を自由自在にウロウロしたり、なかなかの力持ちです。シルク・ド・ソレイユの力自慢は見るからにアスリート体型ですが、スワンレイク組は芸術家体型(ってどんな体型よ?)。凄いことをやっているのですが、いとも簡単に涼しい顔をしているのが僕好み。アクロバットあり、フライングあり、炎を使った演出あり、などなど、2時間半ものあいだ、ずっと拍手しっぱなしでした。競技会でのフィギュア・スケートはほんの数分ですが、今日ばかりはタップリ堪能させていただきました。大満足です。今日が千秋楽じゃなかったら、きっとチケット買い足してました。「次はないぞ」ということで、目を皿のようにして、見入ってました。この緊張感、このところ忘れがちだったので……疲れました(汗)
 で、思ったのですが、舞台上の役って、王子様系よりも悪役系の方が僕は惹かれますわ。澄ましてないし、テクニックはバリバリだし、キレ良くスピーディにキビキビしていて気持ち良いです。ダンスのテクニックもロットバルト&オディール組の方がバリバリ。ジークフリートはほとんど出ずっぱりですが、そのうちの半分はサポート役でしょうか。力技が多いので、よくまあ体力がもつもんだとビックリ。バレエ版に比べ、ベノが大きな役になっていて、王子に変わって、テクニック面担当。開演当初は固くてジャンプの失敗が目立ちましたが、ニ幕になるとなかなか好調。最後のジャンプが決まった瞬間、割れんばかりの大拍手。何しろ、リンクが狭く、そんな中に大勢のキャストがひしめいているので、ジャンプする場合、助走距離も短ければ、滑るコースも飛び上がるタイミングも全て決まっているわけでして……とにかく凄い!


2007年09月15日(土)11:00-14:05
宝塚歌劇団星組
「KEAN」@日生劇場

 A席 5000円 2階-H列-24番 (パンフレット:1000円)

 演出:谷正純

 KEAN:轟悠(専科)
 プリンス・オブ・ウェールズ:柚木礼音
 エレナ・デ・コーバーグ公爵夫人:南海まり
 アンナ・ダンビー:蒼乃夕妃
 コーバーグ公爵:にしき愛
 ソロモン:紫蘭ますみ
 ミセス・スパロー:百花沙里
 バーナビー:彩海早矢
 エイミー:華美ゆうか
 ネヴィル卿:一輝慎
 キャロライン:音花ゆり
 ベン:鶴美舞夕

 ちなみに、1999年10月に新国中劇場で上演されたストレート・プレイ版の配役は以下の通り。

 エドマンド・キーン:江守徹
 エレナ:峰さを理
 ケーフェルト伯爵:高木均
 アンナ・ダンビー:渡辺梓
 アミィ:石立凉子
 ソロモン:山本龍二
 プリンス・オブウェールズ:千葉哲也
 ロード・ネビル:田代隆秀
 ピーター・ポット:沖恂一郎

 ミュージカル「Kean」の初演は1961年11月2日。場所はブロードウェイ劇場でアルフレッドドレークはトニー賞の主演男優賞にノミネートされるものの、92回の公演でクローズ。正直、ミュージカルとしての魅力に乏しい作品で、音楽がストーリーを運ぶというよりも、長台詞にメロディをつけてみました、といった処理。耳に残るメロディは、やたら繰り返される(そして脇役のナンバー)「〜Penny Plain, Twopence Colored〜」なんです。決して有名でもヒット作品でもない、この作品。よくぞ見つけてきた、よくぞ上演にこぎつけたと、プロデューサーの発掘能力に拍手。もちろん、日本初演です。とはいえ、ミュージカル化の意義が感じられない作品で「ストレート・プレイで良いやん」と元も子もない感想を抱いております。
 宝塚歌劇は若い(って、たまに例外はいますが)女性のみによる劇団の割に、意外と中年モノの作品が好きみたいです。「ガイズ・アンド・ドールズ」「グランドホテル」「ミー&マイガール」などなど、主人公がかなりのオッサン。「H2$」や「ファントム」だって、主人公はともかく、脇は押し並べて中年〜老人が主流。そんな作品の数々を、ショーアップして、細かな設定を忘れさせて楽しませてくれるのが通常の宝塚公演。本来の姿を歪ませるのですから、かなり難易度の高い作業になると思われます。が、今回はそのアダプトぶりがかなり甘かったです。特に振り付けの尚すみれと若央りさがひどかった。ロンドンの香りも、時代設定もほったらかしな、かなり下品な振り付け。やたら足をあげて舞台上でヒラヒラしているだけ。ダンスとしての魅力も乏しければ、劇を牽引する力もなし。シェイクスピアを彷彿させる雅な響きの音楽と、華やかなレビュー調の振り付けの相性の悪さといったら特筆モノです。舞台に流れるスピードとダンスのスピードがミスマッチなんです。今回は主要キャスト以外はほとんど新人という、表現力ではまだまだという生徒が踊っているだけに、ストーリーとの繋がりの全くない(かといってショーシーンとしての魅力もない)余計なシーンになり下がっていました。これ、困ります。中年役として芝居していても、歌や踊りになると若さが出てしまうのは仕方ないけれど、そこを何とかするのがスタッフの腕のみせどころじゃないでしょうかねぇ。。。
 素晴らしかったのは照明スタッフ。特に劇中劇の場面。三週間という短期公演で、日生劇場のみという制約、厳しい予算ということもあってか、舞台装置はかなり簡略化されたものですが、そのハンデを見事にフォロー。舞台装置だけでは現実と劇中の区別が付きにくい中、一瞬にして幻想的な雰囲気を醸し出していました。幕開きでの轟悠登場のシーンでは思わず拍手が洩れる華やかさあふれるライティング、そして、終幕のキーンの謝罪〜幕切れまでの状況に応じた変化で、言葉の洪水に、受け入れ側が麻痺してきているにもかかわらず、舞台の収束とカタルシスに持って行ったのが素晴らしい。ここ最近の宝塚の照明の中では屈指の効果だったと思います。今回「来て良かった!」という気分にさせてくれた功労者です>担当者。
 さて、主演の轟悠ですが、大健闘です。星組の若手というよりも新人たちを率いて「私が頑張らなくてどうするっ」的な悲壮感すら漂う熱演。歌も台詞もほぼ一人じめで、その労力は、通常の公演一年分に値するのではないかとすら思うボリューム。もちろん、イッパイイッパイな感じはところどころあるんです。でも、プリンス・オブ・ウェールズ侮辱の謝罪演説場面において、シェイクスピアの数々の名作のセリフをつなぎ合わせて演説を行い、さらにその演説を行うことによって自らの悩みが解決していき、おまけにミュージカル自体を収束させなければならないという、構造が実に複雑かつ任務重大なクライマックスをまとめ上げたのが圧巻。轟悠以外にキーンを演じられる生徒が思い浮かばない名舞台でした。「プロデューサーズ」のクライマックスで、マックスが劇中のナンバーをメドレーにして歌い踊るシーンがありますよね。あれのさらに重厚ヴァージョン。轟悠は声に迫力があるのと、舞台上での貫禄があるのとで、舞台をしっかり支えてくれました。線の太い役が実に似合う方です。「星組公演」ではありますが、実質は轟悠特別の公演でした。凄いです。
 とはいえ、客席は寒〜い状況。雪組組子時代から動員力のある人じゃなかったけれど、週末公演にもかかわらず、二階席は半分いるかいないかの入り……痛いです。原因はトップ時代から言われていますが、華がないんです。もちろん、地味とはいえ、宝塚歌劇団の元トップですから一般的には華やかな部類ですし、芸歴からくる技術でみせてくれます。でも、宝塚っぽい華やかさに乏しいのはいかんともしがたいです。 声が重く、ハスキーなので、セリフや歌詞が一本調子ですし、早口やアップテンポの曲になると、音の立ち上がりの悪さが災いして、何を言ってるのか聞き取れないのは、もう治らないでしょうね。でも、唯一無二の魅力を持っているのですから、技術的なことは問題外。望むべくは、せっかくの専科のポジションなので、轟悠でなくてはっという作品に恵まれますように。彼女を生かすためには(そして宝塚歌劇公演を盛り上げるには)そろそろ、本公演や日生公演での轟悠主演は苦しいと思います。「マイ・フェア・レディ」のヒギンズ教授や、「ファントム」のキャリエールのような、年配だけれども重要な役で出演する方が、座内のポジションとしても、客席からの印象もしっくりくるのではないかと思っています。今回の「キーン」も、専科生公演としてバウホールで上演されていたら(東京公演は芸劇あたりかなぁ。青年館じゃなくってね)、渋くて味わい深い作品に仕上がったかも。
 ということで、轟悠以外の若手は「頑張り」と「勘違い」が前面に出てしまい、僕としては総入れ替え希望です。あまりに役からかけ離れていて、手も足もでない状態でしたもの。気の毒でした。小奇麗でスタイルが良く、貧乏な雰囲気がなく、ギラギラしてない、今の若手たちには、ロンドンの下町の「中年」たちを演じるのは無理ってもんです。新人さんたちにとって、この公演は有意義だったのでしょうか!?
 宝塚の公演は「生徒による研究発表」という名目がありますが、実質はプロとしての公演ですし、結構な値段を取っているわけで、プロデューサーと演出家の今回のお仕事はかなり不満です。観客に媚びる必要はないけれど、結構な値段を取っているのですから「通いたい!」と観客に思わせてほしいもんです。もしも新人育成の勉強会に付き合ってほしいのであれば、新人公演みたいに料金を格安にしていただきたいな、と。


2007年09月22日(土)18:00-20:40
ODミュージカルカンパニー「ラ・マンチャの男」@青山劇場

 A席 8400円 2階-E列-31番 (パンフレット:1500円)

 演出:デイビット・スワン

 セルバンテス/ドン・キホーテ:チョ・スンウ(松本幸四郎)
 アルドンサ:キム・ソニョン(松たか子)
 サンチョ:イ・フンジン(佐藤輝)
 牢名主/宿屋の主人:チェ・ミンチョル(上條恒彦)
 カラスコ博士:ミン・ギョンオン(福井貴一)
 神父:ジン・ヨングク(石鍋多加史)
 アロンソの家政婦:キム・ミョンヒ(荒井洸子)
 アントニア:チョン・ミョンウン(松本紀保)
 床屋:キム・ホ(駒田一)
 ( )は2002年7〜8月、帝国劇場公演

 「ジキル&ハイド」に引き続き、今年ODミュージカルカンパニーが持ってきた演目は「ラ・マンチャの男」。前回もでしたが、来年に東宝版の上演が控えているので、今回も競演の形になります。(ちなみに、来年は再び「ジキル&ハイド」で来日公演予定だとか)。本来、この作品は休憩なしで上演されるのですが、今回は「見果てぬ夢」の後で休憩15分を挟むニ幕構成。日本では、セルバンテス=松本幸四郎の独占状態なので、別プロダクションでの上演はとても新鮮。セットや演出が日本版とはかなり異なり、日本版の良さが見える場面もあれば、韓国版の魅力が際立つ場面もあり、面白かったです。見せ方が全然違うんです。日本版は様式美で見せるのに対し、韓国版は若さと勢いで押し切る感じ。役者の熟成度もあるんでしょうね。
 ということで、タイトルロール役の若さにまずビックリ。幸四郎さんもロール・デビューは20代のはずなので、ビックリすることはないのですが、老人の役と思っているところに若者が登場するのにはインパクトがあります。でも、アロンソ・キハーナ/ドン・キホーテは老人の役だけれど、「ラ・マンチャの男」は牢獄に放り込まれたセルバンテスによって語られる劇中劇なので、別に老人でなくても良いわけです。舞台上で老人メイクを行うのは日韓共通ですが、歌舞伎の早変わりよろしく、見る見るうちに老人に変身する幸四郎は、何十年と重ねてきた「芸」の重さや鮮やかさがありました。名セリフを朗々と語り、瞬時にセルバンテス/アロンソ・キハーナ/ドン・キホーテを行き来する幸四郎の芝居力を改めて感じたのが今回の収穫。凄いものを見てたんだな、と。対してチョ・スンウはどうしても若さが出てしまう役とのギャップを生かして「いかにも劇中劇」という役作り。全編勢いで押しているのと、歌声が若々しいので、当初は「新人公演観てるみたいだなぁ」と思っていましたが、その熱さが、ある意味不器用に生きているドン・キホーテやセルバンテスの姿に重なって、徐々に違和感がなくなるのは役者としての力量発揮ってところでしょうか。まだ、芝居のパレットの色が乏しいので、変に笑いを狙った芝居を行うと、芝居が拡散してしまうのが気になりましたが「熱演」が「ラテンの熱さ」に繋がって素敵なドン・キホーテでした。「見果てぬ夢」のメロディラインが一部異なるのは、韓国語歌唱のために処置なんでしょうか?(「エリザ」も日本語で歌うために一部メロディ変わってたりしますし)。韓国語がわからないというのもありますが、「見果てぬ夢」は歌唱力で聴かせていて、ドラマとしての重みはまだこれからかな。幸四郎のように、これから何十年と演じ続けてくれたら素敵でしょうね。
 そして、個人的に本日のヒットはアルドンサのキム・ソニョン。歌は韓国人スター特有の強靭な喉を生かした、荒々しく、そして非オーソドックスな歌い方なのですが、この歌い方が、常にギリギリのラインの上で生きているアルドンサにピッタリ。人生を諦めたアルドンサ、男たちの中で荒々しく生きているアルドンサ、そんな彼女がドン・キホーテと出会い、始めは聴く耳を持たなかったものの、人生における「希望」に気づき、それと同時に「失望」という残酷さを身をもって知る。。。それでいながら、最後には「それでも希望を忘れずに生きていこう」という昇華。「ラ・マンチャの男」の中で最もドラマティックに人生観が変わる人なのですが、キリキリとした人生が実に切実に再現されていました。レイプされるシーンの絶叫・イヤイヤぶりは、舞台を直視できない程の生々しさ。ご縁のない女優さんなので、日常生活は存じませんが、激しい感情表現が絶品でした。凄い歌唱力ですが、歌唱法は独特で繊細さは乏しいので、演じられる役は限られてしまうでしょうが、少なくともアルドンサに関しては絶品です。このまま舞台でぶっ倒れるんじゃないか、とすら思えるエネルギーに感服。
 牢名主、カラスコ博士はキャラクターがはっきりしているせいか、なぜか歌う声質も日本版と韓国版はソックリ。全体的にキャストの年齢が若く「劇団四季で観てる気分」な劇団でした。「ジキル&ハイド」ではヨーロッパの貴族ぶりやセクシーさがかなり不満足だった僕ですが、今回は素直に楽しかったです。装置も螺旋階段や壁が岩でできているように作られていて、いかにも光の届かない地下牢といった感じが出てて重苦しさが絶品。この装置に関しては、妙に綺麗な東宝版より僕は好きです。オペラのセットみたいでした。オケピではなく、舞台奥にオケが控えているのは日韓共通デスガ、オーバーチュアで塩田氏が登場して華やかな指揮ぶりをされるのを見慣れているので、真っ暗な中でのオーバーチュアーはちとさびしかったなぁ。そしてカーテンコールでの「見果てぬ夢」は、オリジナルの英語もしくは日本語で歌って欲しかったな。芝居とはかけ離れたフィナーレ扱いですが、有名ナンバーなだけに、一緒に歌いたかったです(って、もちろん心の中で、ですけど)。幸四郎版のカーテンコールは英語での歌唱ですよね。もちろん、韓国語のままでも何ら問題はないのですが、なんだか取り残されたまま幕になったような気がして寂しかったです。


2007年09月26日(水)18:00-21:25
劇団四季「ウェストサイド物語」@四季劇場[秋]

 C席 3150円 2階-9列-9番 (パンフレット/四季の会会員割引:1500円)

 演出・振付:ジェローム・ロビンス

ジェット団
 リフ:松島勇気
 トニー:鈴木涼太
 アクション:西尾健治
 A-ラブ:大塚道人
 ベイビー・ジョーン:厂原時也
 グラジェラ:高倉恵美
 エニイ・ボディズ:礒津ひろみ
シャーク団
 マリア:笠松はる
 アニタ:樋口麻美
 ロザリア:鈴木由佳乃
 ベルナルド:加藤敬二
 チノ:中村匠
おとなたち
 ドック:立岡晃
 シュランク:牧野公昭
 クラプキ:荒木勝

 ソプラノ・ソロ:久保田彩佳

 宝塚〜ジャニーズ〜来日公演と、しばらく四季とWSSは遠ざかっていました(どーでも良い情報ですが、公演によって、日本語表記が微妙に違います)。前回の公演は日生劇場なので、かなり昔になります。今回は四季劇場[秋]での上演。劇場のサイズがかなり小さくなるので、装置も今まで観た中ではミニマムサイズ。オーケストラも室内楽サイズ。オーケストラと弦楽四重奏じゃないけれど、サイズが小さくなる分、高い精度が求められますね(って、規模が大きければ雑で良いってことじゃないけれど)。
 四季劇場は音響が悪い上に、オケが歴代一、二を争うヘタレぶりで、オーバチュアの時点で雲行きのあやしさを振りまきます。弦はキンキン軋むわ、管は高音でことごとくひっくり返るわ、パーカスはバランス関係なくぶっ叩くわで、怒りを通り越して、役者が気の毒になりました。こんな演奏で歌い踊らなくてはならないなんて…って。僕が雇い主だったら、こんな演奏家にはクレーム出しまくり。音楽事務所に人員交替を願い出るところです。期間限定公演なんだし、バーンスタインなんだし東フィルあたりと契約してくれれば良いのに。もっと奏者選ばなくっちゃ。そりゃ、東宝も宝塚もオケのレベルは低くて、普段から文句つけまくりですが、浅利氏の人脈で、もっと良い指揮者と演奏者こそ引っ張ってきてほしいです。S席を15000円位に設定すりゃできると思うんだけどなぁ。。。
 WSSは古い作品だけあって、歌手の役(トニー、マリア)、ダンサーの役(ベルナルド、エニイ・ボディズ)、役者の役(大人たち)とはっきり分かれています。アニタとリフのみ、歌って踊ってで、そういえば、オペレッタ的なミュージカルから、ジャズやロックのテイストのミュージカルへの変換期の作品なのが見て取れます。欧米ではオペラハウスで上演してしまうのも、役割分担がはっきりしていて上演しやすい、というのがあるのでしょう。そして、プロフェッショナルたちにはプロフェッショナルな曲やダンスが与えられているのが聴きどころ、見どころ。オーケストレーションも時に野暮ったいまでにシンプルなので、フレーズを支え切るのが難しい作品です。若手にはその間が支え切れないことが多々。プロの技の連発を堪能できるか、ボロボロの状態を耐えなければならないのか、かなりリスキーな作品です。
 さて、四季のWSSは、プロローグの時点で「あ、おじさん!」というのが印象的。中高生あたりの少年たちによるドラマなんですけれど、出演者はみなさんかなりトウが立っています。宝塚版は若手男役による少年たちだったので、透明感が高かったし、ジャニーズはそのまんま少年たちによる上演、来日公演もかなり年齢が若い役者によって演じられていて勢いがありました。が、四季版はそもそも主役の面々が高齢者。舞台上の年齢と実年齢は関係ないといえば関係ないんですが、やはり集団でおじさんが登場だと見た目的にショックを受けます。が、逆に考えれば、その分安定度が高いのが劇団四季の強み。「大人が演じる少年たち」と言っても良いでしょうか。歌にダンスに、そりゃ支えが利かない若手もいましたけれど、集団としては、頑張って踏みとどまっていました。これは、最近の若者たちだけはできない芸当。今回、四季があえてWSSを上演する意義はここにあるのではないでしょうか。そして、それらを援護するのが音楽と振り付け。秋劇場は日生劇場やオーチャードホールに比べて舞台がかなり狭いので、横移動がほとんどできず、舞台の上を走り回ることができず、スピード感がなく、勢いが欠けはしましたが、ロビンズの振り付けが丁寧に再現され、やはり素敵なダンスシーンだな、と舞台に引きこまれます(オケがひっくり返ることによって現実に戻されますが)。バーンスタインの音楽の雄弁さ、ロビンスのダンスの多彩さによる、見事なコラボレーション。若手中心の四季のダンサーたちがかなり魅せてくれます。筋肉の使い方まで伝わってくるような素晴らしいプロローグ。
 が、セリフや歌が入ると途端にトーンダウン。音楽やダンスがあれだけ雄弁にもかかわらず、セリフはどれも一定のテンポ、一定のトーンで、おっそろしいまでの棒読み。ダンスだけだとあれほどまでに変化に富んでいたお芝居が途端に色褪せます。母音を強調したセリフ術は好き嫌いはともかくとして、四季の個性として受け入れましょう。でも、棒読みはないでしょ、棒読みは。芝居って、言葉がわからなくても感動することってあるじゃないですか。オペラだって、外国で観るお芝居だって、ハッキリ言って、言葉なんてわかりゃしません。でも、ちゃんと感動するのは、声に色があり、リズムがあるから。「アニー」における子役たちのような、変に声を張り上げてベタベタしゃべられると、世間に犯行してピリピリしているはずの少年たちのはずなのに、舞台に流れる空気はの〜んびりしたモノ。白けますわ。
 そんな中、舞台の空気を変えたのがアニタの樋口麻美。黒塗りメイクにパーマをあてたヘアスタイルがとてもお似合いで、登場しただけでニューヨーカー。大きな目がギラギラ光り、セリフにうるおいと力強さがあって、彼女の四季におけるベスト・パフォーマンスかと思います。今の年齢で、今のキャリアでこの役に巡り合えたということに、彼女の役者としての運の強さを感じますし、ここまで役を作りあげた彼女にブラァバです。アニタというとベテラン女優が充てられる事が多いのですが、設定上は20歳位の役なんですよね。マリアに対する姉御ぶりと、女としての心の揺らぎ具合が今の樋口麻美だからこその絶妙なバランス。今後はよりベテラン色が出てしまうでしょうし、今回は彼女を観ることに意義がある公演と言っても過言はないでしょう。
 アニタの恋人ベルナルドは逆に「なして今さら?」な加藤啓二。日生劇場公演の時は出演しなかったので、既に役をレパートリーから引っ込めたとばかり思ってたのに、まさかの登場。かなり苦しいです。年齢の割に踊れるのは素晴らしいのですが、ダンスや芝居のスタイルが若手とは異なるので、微妙にテンポがずれて舞台から浮いてしまうこと、いくらメイクしたとはいえ、肌質は年齢をごまかせず、照明の跳ね返し方が違うこと、舞台上での余裕がどうしてもにじみ出てしまい、少年には見えないこと。「大人たち」を演じても良い年齢なだけに、観ちゃいけないものを観ている気分に。ジャニーズの少年隊版のように、中年俳優がメインを占めているならばともかく、今回の四季のカンパニーでは浮きます。Somewhereの素明かりの中でのシーンは、げっそりやつれた姿。恐かったです(ちなみに、エニイ・ボディズの礒津ひろみもおばあちゃん状態。年齢くった役者に強烈な照明は禁物です!)
 さて、歌唱専科のトニーとマリアですが、二人揃って不発でした。トニーの鈴木涼太はそもそも音域が合わず、やたらと裏声に逃げてしまうこと。そして、裏声での歌唱が苦手なようで、途端に声のパワーも表情もなくなること。鈴木涼太の声質やテクニックとトニー役の相性が悪く、痛々しい歌唱でした。もっと歌える人だと思ってただけに意外。音も外しまくりで、大ナンバーなのに歌い終わっても拍手がおこらず、客席シーンというドッチラケムードを作ってくれました。マリアの笠松はるはオケや相手役とピッチが合わず、全編音程がフラット気味。常に不協和音として微妙なうねりが舞台上に渦巻いていて「やめてくれ〜」な状態。音大→四季の役者にありがちなのですが、声ができ上らないうちに舞台で酷使することによって、響きのない薄っぺらい歌唱法でがなってしまうという悪いルーティンにはまってしまった模様。高音の荒れ具合は尋常じゃありません。華のあるタイプの役者ではないので、正直、彼女のミュージカル女優としての寿命は長くない予感がします。もっと声を大切にして欲しいです。荒れた歌唱って、客席で聴かせられると、こっちの喉まで痛くなってくるんですよねぇ。。。
 アンサンブルは女性優位。ドラッグストアのバーカウンターに集合して「コーラをくれ!」と不良の割には健全な少年たちは、たぶん高校生位かな。そんな彼らを尻目に「私たちは大人ね」と言い放つグラジェラたち。四季の女優としては珍しく、お色気を振りまいていました。ここでいう「大人」というのが、20歳なのか、処女ではないという意味なのかは微妙ですが、少なくとも、少年たちは童貞のはず(アニタをレイプする場面に繋がる伏線ですね)。このちょっと背伸びして大人ぶってる女たちの表現が絶妙でした。日本の女優は若く見えるので、彼女たちも今の年齢で演じるのが丁度良いのかな。「アメリカ」も気持ち良く暴れてましたし。ちゃんとポーランド系とプエルトリコ系で存在感が違うのが良かった〜。今の座員でWSSを上演しよう、と言い出した制作陣の、旬をつかむ力に脱帽!
 男性アンサンブルはなぜか小柄な子が揃っていて、女性陣と踊る時は文字通り背伸び状態。同年代の少年少女たちの場合、えてして少女たちの方が大人びているので、これもまたドンピシャリなキャスティング。セリフは前述のように少年どころか小学生っぽいのが気になるのと、歌唱力がダントツに低いので「オフィサー・クラプキ」のようなコメディ場面が全然笑えないのは残念。四季としてはちゃんと声の出ない役者が揃ってしまったようで、こんな時に例を出しちゃ申し訳ないけれど、ジャニーズのアイドルグループの歌を聴いているみたい。舞台で歌い演じるのがいっぱいいっぱいで、客席に何かをアピールしましょう、という余裕がないんです。同じ劇団でも、宝塚場合は本公演に必ず出してもらえるけれど、四季は公演ごとにオーディションですよね。その割に…アピール力の弱さが感じられます。NYで大人たちを、世間を相手に社会問題を提起する少年たちを演じるには、今回の男の子たちは力不足。ワルぶってても、ボンボンっぽくなるのは、今の日本じゃ仕方ないんでしょうね。(日常生活ではボンボンって大好きなのですが、お芝居の時には邪魔になりますねぇ)。
 余談ですが、テレビの英語番組に純名りさが出演した際に「大好きなんです」と「トゥナイト」導入部分でマリアの1オクターブ半を一気に歌いあげる部分を披露してくれたのですが、声の柔らかな響き、フレーズの表情付け、声量のいずれも実に立派でした。一度、彼女のマリアを観てみたいもんです。そして、僕が勝手に「歴代一!」と思っている樹里咲穂アニタも一緒に登場してほしい(年齢的に二人とも、今を逃したらもうないかも)。「レミゼ」における20周年キャストのように、劇団四季公演ではあるけれど「スペシャル版」として数日で良いからやってほしいなぁ。四季の客寄せにもなるし、劇団内外の交流って刺激的だと思いません?