観劇日記〜2008年01月〜
02日(水) 14:00 コマ・スタジアム
「美ら島伝説〜暴れん坊将軍スペシャルII」
新宿コマ劇場
12日(土) 15:00 宝塚歌劇団月組
「A-"R"ex」
日本青年館
15日(火) 12:10 東京都交響楽団メンバー
「第79回 昼どきクラシック 〜新春を飾る室内楽の調べ〜」
横浜みなとみらいホール
15日(火) 14:30 東京都交響楽団メンバー
「第79回 昼どきクラシック 〜新春を飾る室内楽の調べ〜」
横浜みなとみらいホール
15日(火) 14:30 映画「俺たちフィギュアスケーター」 シネマGAGA!渋谷
19日(土) 15:00 宝塚歌劇団月組
「HOLLYWOOD LOVER」初日
日本青年館
20日(日) 14:00 新国立劇場オペラ
「プッチーニ:ラ・ボエーム」
新国立劇場 オペラパレス
24日(木) 18:30 宝塚歌劇団星組
「エル・アルコン―鷹―」
「レビュー・オルキス―蘭の星―」
東京宝塚劇場
25日(金) 19:00 関西二期会
「R.シュトラウス:ナクソス島のアリアドネ」
新国立劇場中劇場
28日(月) 18:30 ホリプロ
「ペテン師と詐欺師」
日生劇場


2008年01月02日(水)14:00-17:20
「美ら島伝説〜暴れん坊将軍スペシャルII」」@新宿コマ劇場

 B席 4000円 30列-58番 (パンフレット:1300円)

 演出:水谷幹夫

 徳川吉宗/徳田新之助:松平健
 加那:汐風幸
 お庭番 陣十郎:園田裕久
 加納五郎左衛門・儀間恒心:内山惠司
 島津久貴:新田純一
 伊集院修理:勝野洋
 お庭番 楓:若葉ひろみ
 お庭番 野分:真島茂樹
 谷茶:江幡高志
 金城貢:松山政路
 鳳彩王女:鳳蘭

 今年の芝居始めは松平健vs鳳蘭という、お正月ならではのおめでた感満載、そして、濃〜〜〜いこの一本でスタート。昨今のサラサラ芝居流行の中、我が道を貫き通すお二人が共演とあって、何ともコッテリの一本です。でも、大劇場芝居をここまで極めているという意味では人間国宝モノで、上手下手だとか、作品の出来云々ではなく「どんな作品であろうと、どんな演出であろうと、スターの輝きで観客を魅了しましょうぞ」な姿勢が圧巻。そういえば、宝塚のスターは衣装や装飾品についてあれこれウルサイ(もとい、こだわりがある)方がほとんどな中、あてがわれたモノを黙って使うんでツレちゃんは有名でしたっけ。それでいて、誰よりも派手に存在。昨今の芝居に慣れている人には拒絶反応を起こされることでしょうが、これぞ大劇場芝居というスターオーラに満ちた数時間、はまると抜け出せなくなるってもんです。正直、この二人の存在感が圧巻で、他キャストの印象なんて霞むこと霞むこと。元花組トップの若葉ひろみも、専科だった汐風幸も、アイドル出身の新田純一や、大地真央の性転換後最初の相手役だった勝野洋も、最近メキメキ売り出し中の真島茂樹も、みなさん健闘してるのですが…スターオーラが違いすぎます。
 ということで、舞台はマツケンさんの場orツレちゃんの場が交互に登場しているような印象。徳川幕府のお殿様がさすがの貫録と鮮やかな殺陣で舞台をさらってみれば、次の場面では琉球王朝の王女様(!)のツレちゃんが俺様…もとい…王女様ぶりで舞台を支配。 ツレちゃんとしてはかなり抑えた芝居ですが、逆に抑えているからこそ「この人タダものじゃないぞ」という雰囲気がプンプン。キツネとタヌキじゃないけれど、マツケンさんとツレちゃんが互いに自分の身分(将軍/王女)を隠しての初顔合わせの場面は、爪を隠した鷹同士の迫力。なまじ主役のみで生きてきた人たちなので、一歩も引かない丁々発止。
 ストーリーはベタですし、登場人物に裏なんてありゃしません。第一印象のまま悪役は悪役、不幸役は不幸役で一貫。安心して予定調和が楽しめます。お屠蘇気分で観に行くには最高の舞台。ささっ、どうぞ劇場へ!!


2008年01月12日(土)15:00-17:45
宝塚歌劇団月組「A-"R"ex」@日本青年館

 B席 5000円 2階-F列-11番 (パンフレット:600円)

 演出:荻田浩一

 アレックス:瀬奈じゅん
 ニケ:彩乃かなみ
 ディオニュソス:霧矢大夢
 オリンピアス:矢代鴻(専科)
 フィリッポス/ダリウス:萬あきら(専科)
 アテナ:出雲綾
 アリストテレス:北嶋麻実
 タイス:音姫すなお
 ヴァルシネ:天野ほたる
 ヘファイスティオン:龍真咲
 セレウコス:綾月せり
 クレオパトラ:麻華りんか
 スタテイラ:白華れみ
 アンティゴノス:響れおな
 カッサンドロス:貴千碧

 映画版「ジーザス・クライスト=スーパースター」を思い起こさせるシーンで舞台がスタート。舞台装置は世界地図を立体化させたような見た目楽しいもので、ほとんど転換なし。〜如何にして大王アレクサンダーは世界の覇者たる道を邁進するに至ったか〜という長いサブタイトルが付けられたこの作品。宝塚としてはかなりの意欲作です。演出家によると「自由に生きているように見せかけることを求められた人間が、求められたままに自由に振る舞ってみせる狂言を演じながら、何とか自由にたどり着こうとした物語」とのことですが、なんだかそれが「タカラジェンヌ」という生き方に重なって興味深かったです。本当は女の子なんだけれど、男役として格好付けて生きていく人たちの物語。
 女役の面々は自然体です。組長の出雲綾はいままでにない大量の台詞を与えられ、劇中劇の構造を支える役として、客席と舞台をつなぐ役どころ。客いじりを行い、舞台上の役者を紹介したり役を越えた声かけを行ったり。変幻自在に生きてます。そして、今回の舞台をもって定年退職となる矢代鴻も、ことに第一幕では「私が主役」とばかりに、これまた歌いまくり、相手役が口を挟む隙もない程に機関銃のごとく台詞を乱射。相手がトップさんであろうと「私のサヨナラ公演よ」とでも言っているかのようなど迫力。このあたり、宝塚歌劇というよりも、シアターコクーンあたりのお芝居を感じさせますが、さすがのキャリアのお二人とあって、長台詞の引っ張り具合、場面のさらい具合が圧巻。今回は青年館公演としては珍しく、ベテランがズラリの公演ですが、出演者の力量を生かした、座付き作者ならではの、うまい使い方ですね。出来る人には難しいことを。別格のお二人には別格の役どころ。タイプこそ違えども、宝塚が誇る名歌手二人の競演とあって、実に贅沢な空間。
 現役生では、トップ娘役の彩乃かなみが登場。全娘役の中でも一、二を争う実力派とあって、宝塚調の芝居からはみだしてしまう事があるせいか、東宝劇場での本公演では虐待とでも言いたくなるような不遇な扱いをされることが多い彼女ですが、歌に芝居にたっぷり使われる今回の公演では実に伸びやか。既に出雲綾や矢代鴻が歌いまくった後に歌うなんて、通常の娘役なら聴きお取りするところでしょうが、柔らかな美声でいきなり高音から下降する難しいフレーズをピシっと決め、中低音では音に色気を持たせたたっぷりした歌唱で、これまた別格の貫録を示し、トップさんが突っ立ってる中、ソロを歌いきるという、通常と逆のパターンの場も見事に持ちこたえ、素敵な位取り。芝居も宝塚の娘役としての美しさを残しつつも、表面的美しさに留めるのではなく、かなり突っ込んだ切り込み型。トップさんがうかうかできない、かなり手ごわい娘役として存在。アレックスを戦いへと駆り出す一人として、そして、アレックスの自由を求める旅に終止符を打つ者として、たぶん、この作品の中で一番しどころのある役かと思います。自分が変化するだけでなく、誰かをも変化させてしまう大きなエネルギーを感じられます。
 では、男役や若手は手をこまねいていたのかというと、そんなことはないんです。何しろ、トップ&二番手という組の看板をかけた二人が出演しているのですから。アレックスはジーザスのように、作られた虚像に悩み、そして、それから大きく逸脱することを許されないことに悩む、しどころがないけれど、大きな存在感を求められる難役。次々に進軍してインドまで戦いに勝ち続けたというのは、すべて台詞の上で語られるだけで、戦いに勝利するというヒーロー部分が舞台に登場することがないのでどう格好良く見せるかは役者の腕の見せ所。トップの瀬奈じゅんは眉間に皺をよせ、悩ましげに演じてます。宝塚なので、とっかえひっかえ衣装を変えることにより、動きで心情の変化を大きくアピールできない分、かなり助けられていたと思います。「ゲッセマネ」のような、ここぞというナンバーがないので、女性陣にやや押され気味ではありましたが、トップも3年となるとしっかり持ちこたえてます。この役、キャリアのない役者や存在感の薄い役者にはかなり厳しいと思いますが、少なくとも「俺様」というキャラクターが確立している瀬奈じゅんだからこそ、貫禄が押さえても押さえきれず、何とか持ちこたえた、そんな印象を受けました。二番手の霧矢大夢は、アレックスの影となり、時には扇動役として、歌で芝居で何かと絡みますが、いかんせん主役がなかなかアクションを起こさないゆえ、これまた厳しい位置付け。得意の歌は存分に歌っていましたが、正直、役の上では強い印象は残らず。そして、ロングのストレートの鬘が……全然似合わず。若手だと既に新人公演の主役も務めている龍真咲がモヒカンhair(地毛!?)を披露。チョイ役だけれど、その中でどうアピールするかに力を入れ、座組全体のバランスを考えてか、遠慮なしでやる気に満ちてます。ま、それ位で丁度良い、濃〜〜〜い上級生が揃ってるんですけどね。
 非宝塚チックな座付き演出家=正塚晴彦という図式が定番化しているけれど、荻田浩一もかなり非宝塚という印象を持ってます。華麗で老若男女向きの遊園地のアトラクションという作品が多数だった宝塚も、最近は観客を選ぶ作品が増えてきましたね。 独特のカラーを持った演出家なのは魅力だけれど、日本青年館公演とはいえ、宝塚歌劇の場合、そのカラーを生かしきる難しさを感じている次第。もちろん、他劇団の台詞が機関銃となるお芝居に比べれば、歌やダンスが加わっている分、かなりわかりやすい仕上がりです。出演者のレベルも揃っていて、クオリティもまずまず。ただ、もっと小さな劇場で上演するともっと個性が生きる気がします。かといって、そんな小劇場で小洒落た芝居ができるカンパニーが思いつかないんですけどね。ロンドンのフリンジや、NYのオフオフあたりの(できればテーブルがあってワイン片手に観劇できるような)小屋で観てみたいなぁ。それも、年配の味のある役者さんでね。


2008年01月15日(土)12:10-12:55
東京都交響楽団メンバー「第79回 昼どきクラシック 〜新春を飾る室内楽の調べ〜」@横浜みなとみらいホール

 全席指定 700円(通し券割引) 1階-C16列-12番 (パンフレット:無料)

 フルート:小池郁江
 ピアノ:鈴木慎崇
 ヴァイオリン:菅沼ゆづき
 ヴィオラ:渡邉信一郎
 チェロ:古川展生

 モーツァルト:フルート四重奏曲第3番 ハ長調
 モーツァルト:ピアノ四重奏曲第1番 ト短調

 みなとみらいホールにおけるのぼぉちゃん=平日マチネというイメージがあります。数年前にリサイタルでお邪魔した際も平日マチネで仕事をさぼった記憶があります(記者会見行ってきます!と嘘ついて職場を抜け出しました…今だから懺悔しますけど)。当時は桜木町駅からかなり歩いてホールまで向かったものですが、みなとみらい線みなとみらい駅を出て地上に出ればそこはホールの近く。マッタク便利になったもんです。
 ホール主催の「昼どきクラシック」は休憩なし、1時間弱の短いコンサート。ラ・フォル・ジュルネの普段着版とでも言いましょうか。ホールの稼働も最小限で、クロークはサービス休止、バーカウンターも全部は営業してないという状況。なに、長居するわけじゃないので、それ位がまんしましょうぞ。全面ガラスのロビーにポカポカ日差しが差し込んで気持ち良い空間です。
 今回は室内楽ということで、都響のメンバーを中心としたアンサンブル。一回券だと800円ですが、通し券として購入すると700円に割引となります。たかが100円ですが、その心意気が嬉しいってもんです。そして、お昼にのんびり室内楽を楽しむのにモーツァルトほどピッタリの作曲家もいますまい。フルートの柔らかな響き、弦楽器の爽やかなサウンドに包まれて、すっかりほろ酔い気分。短めの四重奏曲、それもタイプの違うものが二曲と、選曲もなかなか考えられてます。正直、のぼぉちゃんの見せ場、聴かせどころがある曲とは言い難いのですが、アンサンブルの響きを楽しむには実に楽しいもんです。今回のメンバーは「私を聴いて〜」「俺様の音楽を聴きやがれ!!」というタイプがいないので、のぼぉちゃんもおとなしめ。普段顔を見合わせているメンバーのせいか、アイコンタクトもアッサリ。
 このコンサート、今日みたいな「連休明けで仕事が忙しそうな平日」ではなく、お正月休み中にニューイヤーコンサートとしてだともっとフィットしたかも。1000人位の客が入っていましたが、もったいないなぁ。もっと大勢の方に楽しんでもらいたいです。紀尾井ホールあたりでもやってくれれば良いのに。


2008年01月15日(土)14:30-15:20
東京都交響楽団メンバー「第79回 昼どきクラシック 〜新春を飾る室内楽の調べ〜」@横浜みなとみらいホール

 全席指定 700円(通し券割引) 1階-C16列-7番 (パンフレット:無料)

 フルート:小池郁江
 ピアノ:鈴木慎崇
 ヴァイオリン:菅沼ゆづき
 ヴィオラ:渡邉信一郎
 チェロ:古川展生
 コントラバス:佐野央子

 モーツァルト:フルート四重奏曲第3番 ハ長調
 シューベルト:ピアノ五重奏曲 イ長調「ます」より第1,3,4,5楽章

 第2回もモーツァルトでスタート。この曲のでだし、和音の重なりといい、和音進行といい、かなり僕好み。不勉強なものでして、良く知らない曲なのですが、ほんの数小節だけで「むきゃー」となります。曲のある部分がやたらと好き……そんなことってありませんか? 僕は結構あって、それが有名でない部分だったりすると、あとで「何の曲だっけ?」と悶々となることも多々あるんです。
 モーツァルトに続いてはシューベルト。ここで舞台転換を利用して、菅沼ゆづきによるトークあり。他愛もないおしゃべりですが、女性だと話しっぷりに華があって、何とも垢ぬけた雰囲気になりますね。小池郁江→佐野央子→のぼぉちゃんに引き続き、渡邉信一郎とリレーインタビューがあったのですが、渡邉信一郎相手になるといきなり白々しい空気が流れ出したんです。事情を知ってるので「突っ込んで良いんやろか!?」と反応に困ってたら、自席でスタンバイ状態に入っていたのぼぉちゃんがツツツと寄ってきて、いきなりマイクを奪い「実はこの二人、夫婦なんですよっ」と突っ込み。のぼぉちゃんナイスジョブ!! タイミングも良かったけれど、のぼぉちゃんが「よっ」付きでとっさに話せるとは。いつもだと、モゴモゴと表情も硬くしゃべるのですが(かなり人見知り!?)いたずら心が勝ったのか、実に自然な声のトーンとはっきりした響き。なによりも「よっ」が加わることによって、柔らかな雰囲気が醸し出されて、会場の雰囲気もほんわか。出来るじゃん!!
 トリはシューベルトの「ます」。公演時間の関係だと思うのですが、大して長くないんだから、全曲聴きたかったというのが正直なところ。だって、良かったんだもん。コンバスが加わると途端に音の厚みが増し、フレージングのたっぷり具合、楽器同士のかけあいなど「シューベルトは確かにロマン派の作曲家やね」とモーツァルトとの聴き比べもまた楽し。それにしても本日の鈴木慎崇のピアノは、上品で音の粒が立ってて、とにかく美しい演奏。一音一音がとても丁寧に処理されていて、ポロポロと玉が転がり落ちるかのような見事な指さばき。ずーっと聴いていたいと思わせる、素敵なピアノでした。この人のピアノで室内楽、いろいろ触れてみたいです。よろしくっ>のぼぉちゃん


2008年01月15日(火)16:40-18:30
映画「俺たちフィギュアスケーター」@シネマGAGA!渋谷

 全席指定 当日一般 1800円 H列-12番 (パンフレット:なし)

 監督:ウィル・スペック

 チャズ・マイケル・マイケルズ:ウィル・フェレル
 ジミー・マッケルロイ:ジョン・ヘダー
 ストランツ・ヴァン・ウォルデンバーグ:ウィル・アーネット
 フェアチャイルド・ヴァン・ウォルデンバーグ:エイミー・ポーラー
 コーチ:クレイグ・T・ネルソン
 ケイティ・ヴァン・ウォルデンバーグ:ジェンナ・フィッシャー  ダレン・マッケルロイ:ウィリアム・フィクトナー
 ジェシー:ロマニー・マルコ
 ヘクター:ニック・スワードソン
 プライス:ロブ・コードドライ

 タイプの違うライバルスケーターが、同点一位になったものの、表彰台で乱闘騒ぎを起こしたため、フィギュアスケート界から抹消。でも、規約の隙をついて、ペアスケーターとして再登場し、チャンピオンになる、といった単純なストーリー。正直、台本はかなり浅いです。あまりの中途半端さに、ライバルチームやチームメンバーをはじめ、主人公に至るまで、登場人物のキャラクターはみな薄っぺらく感じますし、スケートのシーンもグランプリ・シリーズなんぞを見慣れていると、大した技が登場するわけではありません。あまりに唐突なストーリー展開、ありえないでしょって技の連発を、マンガ感覚でアハハと笑い飛ばすだけのB級映画。パロディのために、本物のスタースケーターや政治家、北朝鮮の将軍様に至るまで「出演許可取ったのか?」と心配しちゃう人まで登場し、ひたすらお馬鹿な笑いを追究。リピートする気もないし、きっと数年後にはタイトル聞かされても「どんな映画だったっけ?」となっていることでしょうが、頭をカラッポにして楽しむ分には満足の一本。正直、美しくもない男の裸は出てくるし、ブラック・ジョークも満載なので「成人指定にすべきではないか」と思う程ですが「アッハッハ」でも「クスクス」でもなく「ビョヘ〜ッ」な笑いを求めている方にはオススメの一本です。
 

2008年01月19日(土)15:00-17:40
宝塚歌劇団月組「HOLLYWOOD LOVER」初日@日本青年館

 B席 4000円 2階-G列-13番 (パンフレット:600円)

 演出:植田景子

 ステファーノ・グランディ:大空祐飛
 ローズ・ラムーア:城咲あい
 ウォルター・ローガン:磯野千尋(専科)
 シーラ・グレアム:五峰亜季(専科)
 レイ・ハドソン:越乃リュウ
 マーガレット(マギー)・コーマン:花瀬みずか
 リチャード・R・ローガン:遼河はるひ
 ダニエル・デイ:良基天音
 ビリー・コーマン:桐生園加
 モニカ・アジャーニ:涼城まりな
 ヘッダ・ホッパー:憧花ゆりの
 リタ・ボーン:妃鳳こころ
 ベン:姿樹えり緒
 サミエル(サム)・ブライトン:麻月れんか
 カマラ:美夢ひまり
 フィリップ・ディオン:榎登也
 エドウィン・シュバーク:光月るう
 ナンシー・ベネット:夏月都
 マリオ・カヴァッリ:彩央寿音
 ハロルド:美翔かずき
 チャールズ:彩星りおん
 グロリア・シモンズ:夏鳳しおり
 ステファーノ(過去):紫門ゆりや
 シルヴィア・パーソン:咲希あかね
 ローズ(過去):蘭乃はな
 エヴァ:舞乃ゆか
 アン:真凜カンナ
 ジーン:都月みあ

 1940年代のハリウッド映画全盛期を扱った作品ですが、この時代の粋な男たち、慎み深く自制心を重視した生活から自由に向かって殻を破ろうとする女たち。現代を生きる者にとっては、異次元な世界を生きる彼らですが、女性でありながら男性を演じ、その演技法も様式化している宝塚の生徒によって演じられることによって、ピシッと様になるのがお芝居の面白いところ。自然な芝居をしている人なんておりませぬ。でも、この作品でナチュラルな芝居をしたところで、話のスケールにそぐいませぬ。男たちはみなヒーローで、女たちはみなヒロイン。もしかしたら、宝塚のお芝居のお手本はこの時代の映画に流れ着くのかもしれませんね。
 先週「A-"R"ex」観たが宝塚としては実験的な公演だったのに対して、今週の「HOLLYWOOD LOVER」は、ザ・宝塚と呼びたくなるような、宝塚ならではのメロドラマ。宝塚ならではの型の芝居を積み重ねることによって、男役が、そして娘役が魅力的に浮かび上がります。この際、歌やダンス、芝居の上手・下手は関係なくなります。技術的なものではなく、いかに化けるか。芝居の中でステファーノ・グランディ:大空祐飛が「芝居をしなくて良い。ただ役を感じれば良いんだ」と演技指導していますが、まさにその通りの世界です。そして、リアリティを追うだけでなく、合間合間にリアリティとはかけ離れた幻想シーンを盛り込んだ映画……これって、宝塚のお芝居そのまんまじゃない!と面白く拝見しました。宝塚歌劇が自らの特異なスタイルを逆手に取っての芝居作り。植田景子の非凡さが光る部分です。
 大空祐飛は声の調子が悪いのか、歌詞や台詞が聴きとりにくい部分がありました。元々この人はハスキーで芯のない声なので通りが悪いのですが、それをカヴァーしようと声を張ろうとするので、独特の太い声になります。たぶん、そんなことも影響してか、セリフ回しは小回りが効かず、ぶっきらぼう。でも、通りの悪い台詞や歌ゆえ、観客は集中して耳を澄まし、逆にいつの間にか大空祐飛の世界に引き込まれてしまうのです。クリアな声だとビシバシ切り込まれているような印象を受けますが(例:本日だと五峰亜季)、ボソボソだと温かく包みこまれるよう。正直、本日の公演の主要スターの中では最も悪声にもかかわらず、一番印象的なセリフ回しとなっていたのですから、何を魅力に転じるかは本人の心意気かもしれません。
 今月の月組は「A-"R"ex」「HOLLYWOOD LOVER」「ホフマン物語」と3チームに分かれての公演なので、「アンタ誰?」な下級生まで台詞が与えられています。配役表を見ても誰が誰やらサッパリ。そんな中、一目を引いたのが衣装係役の咲希あかね。やたらと表現がオーバーないかにも西海岸にいそうなオバチャン。まさに「役を感じて」ました。逆に墓穴を掘っていたのはせっかく目立つ役をもらった麻月れんか。ガチャガチャと騒がしく幼稚で、てっきり子役だと思ってたんです。撮影所の誰かの子供で使いっぱしりとして手伝っている子と。でも、バーのシーンでいきなり「飲むぞ〜」って、アンタ大人だったんかいっ。いくら宝塚がリアリティを追ってないとはいえ、あれはあんまり。
 ローズ・ラムーア:城咲あいは時折若さが出てしまったけれど、懸命に大女優の貫録と色気に挑戦し、リチャード・R・ローガン:遼河はるひは、子供の頃のトラウマいにより、歪んだ愛情表現しかできず、仕事もプライヴェートも温かみなく冷血な大人になってしまったにもかかわらず、最後の最後は妻の名誉と自分の仕事の責任(大ヒットさせねばならぬというプロデューサーの使命)を守るために、死のフライトに向かうという、演じようによっては、かなりの儲け役。人間としての変化だとか、自分の立場と本音との葛藤、初めての挫折など、台本の書き込みは薄かったけれど、とても魅力的な人物。最後の表現がサラサラしていたのは、主役の大空祐飛に遠慮してのことなのか、彼女の持ち味なのかはわかりませんが、僕はこの役が一番好きですね、今回。
 題材はとても面白いし、主役については良く書きこまれているホンだと思います。主役を取り巻く人たちもも魅力的な人ばかりなんですって。でも、主役以外はみな中途半端な書き込みで「そこんところも少し詳しく聞かせて」な人材もわんさか。ハリウッドという虚構の中で暮らしつつ、みな孤独やコンプレックスと闘っている……華やかな世界だけれど、世間から隔離された若い独身女性の集団とどこか重なる部分が非常に興味深く「ビバリーヒルズ白書」みたいなドラマとして一人一人掘り下げて扱うと、コアなファンができそう…そんな気分の観劇でした。実際、フラッシュバック多用の演出で、過去と現在が混在(役者のタイプが異なるので、なくても良かったのでは、と思いますけど)してましたし。一本立てとはいえ、宝塚は休憩が長いので、実質2時間の舞台で扱うには魅力がありすぎる題材です。
 でも、その粗削りな台本を雰囲気と勢いで押し切ってしまう演出は実は僕の好みですし(観客を酔わせてこそ舞台人!と思ってるので)、何よりも出演者がノッているのが舞台から客席にエネルギーとなって飛んできて、魅力的でした。ちなみに、この公演が終了と同時に、終演の大空祐飛が月組→花組へと組替えになりますが、そのせいか、あちこちのセリフに別れをイメージしてしまい「チャオ」と片手を挙げて去っていくラストシーンでは、鼻をすすりあげる音が客席のあちこちから聞こえてきて「何だかサヨナラ公演みたい」な独特の雰囲気に。でもね「これが星組(紫苑ゆうや麻路さき)だったら、もっと禁断のエロス全開になったんだろうな」とも。もちろん、ヒロインは白城あやかね。


2008年01月20日(日)14:00-16:50
新国立劇場オペラ「プッチーニ:ラ・ボエーム」@新国立劇場オペラパレス

 C席 6300円 3階-4列-3番 (パンフレット:800円)

 指揮:マウリツィオ・バルバチーニ
 演出:粟國淳
 管弦楽:東京交響楽団

 ミミ:マリア・バーヨ
 ロドルフォ:佐野成宏
 マルチェッロ:ドメニコ・バルザーニ(ヴィットリオ・ヴィテッリの代役)
 ムゼッタ:塩田美奈子
 ショナール:宮本益光
 コッリーネ:妻屋秀和
 べノア:鹿野由之
 アルチンドロ:初鹿野剛
 パルピニョール:倉石真

 一幕と四幕装置はいかにも屋上の掘っ立て小屋だし、二幕は舞台装置が音楽に合わせて縦横無尽に動き回り、まさに「音楽劇」になっていたし、三幕はクローズアップの手法と、プレミエを観た時から褒めまくってますが、このプロダクション好きなんです。観客が今「全体を観たい」のか「クローズアップして欲しいのか」を敏感にキャッチして、かゆいところに手が届く名演出。
 オペラというと、非現実的なストーリーが大半な中、ドラマティックな展開があるわけでもなく、あらすじだけだと単純明快。登場人物も一般人。話の展開だって、好きになった→倦怠期を迎えた→別れた→よりを戻した、といった、実に身近な話題。テレビドラマに丁度良い題材です。正直、学生のころは「この話のどこが名作なの?」でしたが、あれこれ年とともに経験したおかげか、今や一番好きなオペラの一つ。詩人だのお針子だの言うと身近でないけれど、今風に直すと、売れないミュージシャン=ロドルフォ、売れないグラフィックデザイナー=マルチェッロ、アパレルOL=ミミ、ホステス=ムゼッタ、てなところでしょうか。クリスマスは派手に騒ごうと友達仲間で繁華街に繰り出したり、ヒロインが彼との恋愛相談を彼の親友にもちかけたり……今日もどこかで誰かがやってそうですよね。男たちが集まればおふざけやちょっとした悪戯の相談、そして仲間のために一肌脱ごうとするし、女たちは女たちで相手に感情移入して親切だし……誰かが金持ちとくっついても嫉妬などせず、いいヤツばかりです。たぶん、日本人の「今」の生活に一番密着したオペラではないかと思ってます。パリでなくLAが舞台だったら、結核なんぞも縁なく、同じ貧乏でもカジュアルライフを楽しく幸せに送ったことでしょうに。つくづく、太陽のエネルギーを強く感じます。。。
 って、全然オペラ公演に関係のない話ばかりですが、安心して身を委ねられる演奏でした。ロドルフォは声量こそ乏しい箇所がありましたが、柔らかく軽く歌い上げるし、芝居も自然。マルチェッロも暖かな響き、そしてコッリーネはズドーンと重く、みなさん好調。てんでバラバラに自分の歌いたいことを歌ってるように聞こえ、目まぐるしく曲調の変わるプッチーニのスコアは、ペチャクチャしたおしゃべりそのもので、実に心地良く響きますね。実は女声はちと僕好みではなく、ミミのキンキンした金属音は苦手。おまけに猫背で表情も独特で、おぼこ娘というよりも、おばあちゃんみたい。正直、ロドルフォが恋に落ちるのが納得いかない〜っ! そして、ムゼッタはプレミエの歌手(誰でしたっけ?)と違って存在は華やかでしたが…すでに声は過去の人。高音が苦しいのと、音の粒が立たないのとで「こんなんだったっけ?」とガッカリ。ミミとムゼッタの声が逆なら良かったのに。。。でも、良いんです。だって、スーパースターの役じゃないんだもの。仲良しグループのアイドルであり、一般庶民の恋人ですもの。こんなのもアリかな、と。
 第二幕の群衆は相変わらず新国合唱団の独断場。生活感を出すのがホント絶品な方々です。「お馬とラッパ」を息子&パルピニョールにまんまと買わされてしまうおっかさんの「ダメでしょ→仕方ないわねぇ→えっそんなにするの!?→息子も喜んでるし買うっきゃないか→買って良かった、息子可愛い」といった表情の変化だとか、屋台のスープ屋のおかみさんと旦那さんのちびまる子一家のような商売っぷりや、カフェの店員の「俺アルバイトだしぃ」な態度だとか(耳を引っ張って先輩に裏に連れ戻されてました)、カフェ・モミュスのシーンだけDVDで繰り返し再生してあちこちチェックしたい!!! 集団としてショー的な動きをする演出も楽しいけれど、リアルにパリの街を再現(道路の作り方など美術さん頑張った!)されると「あぁ、年末はパリに行きたい」と思ってしまいます。
 実は新国のロビーは開演前→幕間→終演後と、ワゴンを駆使して模様替えがされてます。売店の内容や位置がその時その時でベストのものに差し替えられるのですが(ケーキは幕間にならないと登場しませんwww)、いっそのこと、舞台の再現をして、店員さんの呼び込みなんてあったら良いのになぁ、なんて考えながら、ワイン片手に気持ち良く酔っ払ってまいりました。音楽の力か、お酒の力かわかりませんが、舞台と現実が一緒になって、あれこれ感じたり考えさせられたりして、ボーっと過ごすのがこれまた楽しい時間。最後はミミの死というエンディングですが、友情と愛情に満ちた舞台なので、後味も悪くないですし。また再演されますように!!!


2008年01月24日(木)18:30-21:40
宝塚歌劇団星組「エル・アルコン―鷹―」「レビュー・オルキス―蘭の星―」@東京宝塚劇場

 S席 8000円 1階-7列-32番 (パンフレット:1000円)

 演出:齋藤吉正(エル・アルコン)/草野旦(レビュー・オルキス)

 ティリアン・パーシモン:安蘭けい
 ギルダ・ラバンヌ:遠野あすか
 ルミナス・レッド・ベネディクト:柚希礼音
 グレゴリー/サンタクルズ:英真なおき
 イザベラ:万里柚美
 ジェラード・ペルー:立樹遥
 エドウィン・グレイム:涼紫央
 ペネロープ・ギャレット:琴まりえ
 ニコラス・ジェイド:綺華れい
 シグリット・シェンナ:南海まり
 キャプテン・ブラック:和涼華

 宝塚はたまにマンガを舞台化します。「ベルサイユのばら」「オルフェウスの窓」「風のゆくえ」「とりかえばや異聞」「大江山花伝」「虹のナターシャ」「あさきゆめみし」などなど。今回は「エル・アルコン―鷹―」「七つの海七つの空」という二つの漫画から一つの物語にしたそうです。舞台はみな観ていますが、一つとしマンガには目を通しておりません。ということで、マンガと舞台を比べてだとか、舞台化にあたっての変更といった、パンフに書きたくなるようなことは申せませぬ。
 マンガと舞台は別物なので、原画をやたらと表に出すのは役者にとってやりにくいと思うのですが、まずはチラシの段階でマンガと同じ紛争の役者が登場。個人的には、マンガよりも役者の方がスタイルも美貌も上のような…そんな気がします。あ、ここは好みの問題ですね。「ベルサイユのばら」のように、舞台にもマンガの絵がやたらと登場したら嫌だなぁ、と危惧していたのですが、幸いにしてイラストは登場せず。その代わりと言っちゃなんですけれど、プロローグでは舞台奥のスクリーンにやたら役者のアップ写真が写し出されるんです。役者名と役名併記されてたりして、なんだかテレビドラマの主題歌シーンみたい。せっかく男役を男として自分を騙して観ているのに、巨大画像が登場した瞬間に「女の子だよね」と現実に戻されてしまうので、僕はこの手法は好きじゃないです。かつて「ベルサイユのばら〜オスカル編〜」で涼風真世のドアップ映像が登場した瞬間に爆笑してしまいましたが、今回もこのシーンは痛かった。見なれた宝塚メイクとはいえ、あそこまで巨大に映されるとかなりひきます。。。テレビ中継だと、常にアップを見ているせいか、それとも画面が小さいせいか、気にならないんですけどね。今回は視界のほとんどにあのメイクが飛び込んでくるので…怖かったです。
 さて、現在の星組はというと、安定期のトップコンビ&活きの良い若手、芸達者なベテランたちと、舞台のあちこちで見どころ満載。それに合わせて役が沢山、設定は複雑とあって、正直、終演後にストーリーを同行者と確認しあうことに。というのも、登場するたびに立場が違っていて戸惑うことも多々あったから。ティリアン・パーシモン:安蘭けいは国籍はスペイン貴族の母(従兄とラブラブで、夫を殺した息子にもベッドでしなを作り、気がつけばパーシモン卿の正妻の座に収まる、魔性の女!?)とイギリス貴族の父の間に生まれ、国籍はイギリス、職業はイギリス軍人にもかかわらず、なぜかスペイン艦隊に参加し「七つの海を制覇したい」という意気込みを持ち、邪魔ものは殺しても気にしないという、なんだかライブドアの元・社長さん(さすがに人殺しはされてないけれど)をイメージさせる役。完全無欠な王子様ではなく、ほとんど悪役と言っても良い無愛想で冷血な男を好演。犯罪者の道を爆走するという、トップとしては異例なタイプの役ですが、目をギラギラさせた役は安蘭けいの得意分野とあって実に鋭く演じていました。不遇な身の上だとか、何かに飢えてギラギラしている役は彼女の独断場ですね。ただし、トップになってからの衰えがかなり顕著で、まずは声量がなくなり、小柄&押し出しの良くない芸風ということも相まって、輝きが乏しいんです。高い声を無理やり低くして、悪の香りを醸し出しているのですが、包容力や甘さに乏しいので華やかさに乏しいです。女にモテモテな悪の大物を演じるにはスケールが小さいんです。ちなみに、今回の安蘭けいのお芝居、麻実れいにそっくり。押さえた声でのセリフ回し、クールで硬質な大芝居。ただ、役者としてのタイプが違うので、甘さや包容力はナシ。これは、演出でティリアンのスケールの大きさを見せる場面がなかったのも大きいかも。豪華な衣装を着ては登場するものの、殺陣の相手役は大柄で恰幅の良い柚希礼音なので、どうしても弱そうに見えてしまうし、タイトルの「エル・アルコン」号はあっけなく炎に包まれてしまうし……。もっとも相手役の芝居にも同調やブリッコを求めないので、サバサバした関係が心地よいですね。
 ギルダ・ラバンヌ:遠野あすかも安蘭けいに並び「庶民派」タイプなので、フランス貴族といいながら海賊女という設定がナカナカ。ベッド・インを要求されても恥じらうなんえことなくサッサと脱いじゃうのが気持ち良いです。この人は、相手役を立ててる時よりも、子分たちを率いている時の方が生き生きしているみたい。甘さを打ちだすコンビが多い中、ドライでいながら互いの力量を信頼しているような、良いコンビです。でも、1時間40分の作品にギルダが登場すると話が混乱する元のような気がしました。海賊モノにロマンスが登場すると盛り上がりますけれど、正直、今回のストーリーだと登場しなくて良かったかも。主題の影でティリアンとギルダが勝手にラブラブになっているだけで、別の人たちにはさして影響ないんですもの。トップ娘役に割り振るための苦肉の策のような印象を受けてます(原作読んでないから独断と偏見です)。
 ルミナス・レッド・ベネディクト:柚希礼音は今が伸び盛り。前回公演では若葉マークの二番手だったのが、今回は実に堂々と押し出しが良くなりました。宝塚って、ポジションが上がるに従い、それに見合ったスター性が不思議と身についていくのが面白いですね。声の力強さや太さは時にトップさんを凌駕するほど。もちろん、トップの座を目指して、似合う鬘処理だとか、シャープなラインの見せ方、憂いある表情など、修行は必要ですが、勢いが良いので気持ち良いです。役としてはティリアンに拮抗しそうでいない全然相手にされてないという歯がゆさがあります。そろそろトップと対等に絡む役を与えても良いかと思います。伸び盛りといえば、立樹遥&涼紫央が微妙なポジションに回る中、和涼華が三番手としてのポジションを確立しましたね。キャプテン・ブラックが背中を向けてせり上がり、振り向いた際の眼光の鋭さといい、上級生たちを相手に押し出しの良さを見せ、今後どのようなスターに育てられるのか楽しみです(テクニックはまだない)。
 イギリス人、スペイン人、フランス人が入り混じり、さまざまな立場の人たちが登場、主役はスパイなので自分について多くを語らず……というお芝居をわかりやすく交通整理するには、齋藤吉正はまだキャリア不足が感じられました。勢いで押し切ってしまうという演出は魅力的でしたが、コスチュームや衣装、役者の年齢の幅の狭さもあって(おまけに女性のみだ!)「誰が誰だかわかりにくい」宝塚歌劇とあっては、演出でもう少しなんとかならなかったものかと思います。そういえば、音楽は、三連符を多様したオーケストレーションが、南欧の空気を感じさせてくれて、今までになく新鮮。海辺の町でアンサンブルが状況を歌い継ぐ、というのは良くある手法ですが、音楽に助けられて、場面の変化を強く感じました。いっそのこと、ダンスも国別にスタッフをそろえたら面白かったかも。
 さて、ショーは堕作だと思ってます。少なくとも、宝塚には、星組には全然似合っていません。トップコンビが踊れないのに、ほとんど踊りっぱなし。宝塚のトップコンビは踊りが得意な人も苦手な人もいますけれど、それぞれの売りに合わせた作品が必要なのではないでしょうか。外部のダンスカンパニーに張り合うほどの成果は期待していませんが、少なくとも「下っ手クソ〜」と目を覆いたくなる状態は何とかならなかったものかと。オープニングなんてなぜか全員花を口にくわえてのダンスですが、表情は動かせないので強張るし、なによりも「ヨダレをたらしたら大変!」とこらえる顔・顔・顔は、その痛々しさに同情。また、ショーの中で「今からオルキス・ダンスをお教えしましょう」という先生役の方が必死の形相でヒーヒー踊っているようでは、おちおち楽しんでもいられませぬ。トップコンビが歌まくり、二番手以下が踊り狂うってので良かったのに。。。なお、芝居で予算を使い切ってしまったのか、ショーはいかにも金欠状態。安蘭けいは芝居はともかくショーだと登場した際のインパクトが弱いのと、本人がガーっと押し出し良く舞台で暴れるタイプでもないので、演出家泣かせだとは思うけれど、プロローグでの安蘭けいの衣装なんて生地がやたらと安っぽくテロテロで、華奢な足のラインがやたらと見えてしまい興ざめ。格好良く見せようというスタッフの愛情が感じられませぬ。男役は女を感じさせちゃいけないよぉ。おまけに衣装は全編にわたって下品そのもの。ショッキングカラー連発はともかく、色合わせが全然美しくなく「スタッフ一同でカラーコーディネートの研修を受けてらっしゃい!」な状態。華やかな衣装と下品な衣装は違うと思うんですけどね。なぜ、その柄が登場する?なぜその色を組み合わせる?だらけ。カットが生徒にあったものとも思えず、安蘭けいなんてよだれかけのようなベストですよっ。トップがよだれかけって絶句です。(安蘭けいはあまりに華奢ゆえ、衣装下の詰め物が多すぎ、通常のベストは着用ができず、脇の下にやたらと切り込みを入れ、それにともない肩幅はやたら狭くなり……実にケッタイなデザイン。) 「アディオス・ノニーノ」の場面になってようやく目が落ち付く衣装に(って黒燕尾ですけどね)。宝塚に色気を求めた振付家と、スターを生かしきれなかった演出家、おざなりな仕事でお茶を濁した衣装スタッフ、それらを許したプロデューサーにブーイング!!! そんな中、投げ出すことなく、必死に客いじりに励む安蘭けい……エライッ。
 粗削りながら、スタッフの作品や生徒への愛情を感じられ、生徒は舞台端でも手を抜かずに頑張ってたお芝居は「もう一度観ても良いかな」と思ったけれど、ショーを観終わったら「今回の公演にこれ以上お金は払えない!」気分。ぜんぜん好みじゃなかったです。宝塚のショーは「宝塚でないとできないショー」が良いです。


2008年01月25日(金)19:00-21:50
関西二期会「R.シュトラウス:ナクソス島のアリアドネ」@新国立劇場中劇場

 S席 8032円(ATRE高齢者割引) 1階-17列-43番 (パンフレット:無料)

 指揮:飯守泰次郎
 演出:松本重孝

 管弦楽:関西フィルハーモニー管弦楽団

 執事:蔵田裕行
 音楽教師:萩原寛明
 作曲家:福原寿美枝
 テノール歌手/バッカス:竹田昌弘
 士官:角地正直
 舞踏教師:北村敏則
 かつら師:服部英生
 下僕:木村克哉
 ツェルビネッタ:日紫喜恵美
 プリマドンナ/アリアドネ:畑田弘美
 ハルレキン:大谷圭介.
 スカラムッチョ:八百川敏幸
 トルファルディン:藤田武士
 ブリゲルラ:馬場清孝
 ナヤーデ:高嶋優羽(福嶋千夏から変更)
 ドリャーデ:山田愛子(宇野宏美から変更)
 エコー:森原明日香(岡本寿美から変更)

 新国立劇場の「地域招聘公演」の第3弾。すみだトリフォニーホールの「地方オーケストラ・フェスティバル」のオペラ版。今回は関西二期会が登場。オペラの世界ってスタッフは関東と関西がリンクしているのですが、歌手に関しては交流がほとんどなく、今日の出演者も知らない人ばかり。よって、キャリアも経歴も存じておりませんので、なんだか来日公演を観にきたかのようなそんな感覚。実は、このシリーズあまり人気ないんです。毎回チケットはかなり売れ残っています。観客は正直です。
 さて、今回のプロダクション、舞台装置は日本青年館での宝塚公演レベル。お金はかかっていませんが、照明と演出が素敵にリンクしていて、小洒落ていて美しい舞台です。プロローグはごちゃごちゃした空間がいかにも舞台裏という雰囲気を醸し出していましたし、オペラでは装置の切れ目からコバルトブルーの海が見えて、いかにも洞窟の中という幻想的な雰囲気。衣装もオペラチームは地味にオーソドックスに、喜劇一座はイタリアンカラーの華やかな衣装。見た目からして、互いに拒絶反応を起こしそうな楽しいしかけです。
 さて、歌ですが、何とも独特の個性を持った団体です。ホールの音響を差し引いたとしても独特の響きを持っています。発声方法が全然違うといいましょうか、体の中で響かせる場所が違うとでも言いましょうか、響きがとっても薄いのが新鮮。でも、たぶん、これはかなり特殊な状況かと思います。そして、この団体が「ナクソス島のアリアドネ」を上演するのは、実力ギリギリのレベルでこなしているのではないかと思いました。歌に余裕のある方が正直いなかったような。。。
 「プロローグ」で素晴らしかったは作曲家:福原寿美枝。メゾならではの深々した響きを駆使し、線の太い歌声でプロローグは独断場。音楽教師:萩原寛明もタッパの高さが舞台映えするのとクリアな声の通りが良くて的役。オペラはコンサートではないので、歌だけでなく、ルックスや芝居力も大きいウェイトを占めますもの。他歌手はまだエンジンがかかってない状態で、プリマドンナ:畑田弘美は声すら出てない状態。石投げようかと思ったのが執事:蔵田裕行。素人の僕が聞いても「カタカナ読みじゃん」なドイツ語。日本語しゃべってるじゃないかと思いましたさ。ツェルビネッタ:日紫喜恵美に関しては作曲家と同じ感想です。実に下品で、僕は大嫌い。コケティッシュじゃなくって下品なの。動きも表情も粋が感じられません。カーテンコールなんて演歌歌手みたい。
 こんなんで大丈夫だろうか、と心配する中始まった「オペラ」ですが、悪い予感は的中。アリアドネ:畑田弘美は実年齢は存じませんが、既に過去の人ではないでしょうか。音域によっては響きますし、音楽の緊張感はありますが、歌唱技術がかなり衰えていて、主役として演じるには首をかしげてしまいます。芝居もまっすぐ立つことすらできず、せっかく逆行で神秘的に登場するオープニングも、美しい衣装でバッカスと抱き合うラストもラインが崩れて汚いのです。バッカス:竹田昌弘も立ち姿が最悪。常に膝を曲げて極度の内股。歩き姿なんて堂々としているべき場面でもチョコマカしちゃって貫禄皆無。さらに、なぜか首をすくめて猫背なって歌うので、何とも珍妙な舞台姿。彼は前述の表面的発声なので、アリアドネとは声が響き合わず、なんだか付き人みたい。このコンビ、歌もルックスも芝居も微妙で……かなり不思議なキャスティングです。感動的に終わるラストで、思わず「プププ」と噴き出してしまったもの。ツェルビネッタ:日紫喜恵美は小林幸子のような表情作り、汀夏子のような媚。それでいてそこまでのスター性がなく、動きが千連されてないので、プロローグ以上に下品に拍車がかかります。様になるなら良いんですよ、様になれば。でも、非常に素人くさく、観ているこちらが顔を赤らめてしまうほど。肝心なお歌も勢いで歌っているだけで、コロラチューラの粒がつぶれてしまい、ショーストップになるはずの「偉大なる王女さま」を歌い終わってもおざなりの拍手だけ。主役三人がパッとしないので、なんだかとっても長く感じた公演でした。
 でも、公演全体としては、突出した箇所はなくとも、アンサンブルも張り切っていて(なぜか吉本調に見えるのは先入観?)、関西からも大量に応援団がやってきていて「ブラボー」の嵐。ん〜〜〜「ブ―」を飛ばしたい箇所はあったけれど「ブラボー」と叫ぶほどではないなぁ。でも、すべてのオペラ団体が同じ方向を向くことはないし、ちゃんとファンがついていて、独特のローカル色を発揮して活発な公演活動を行っている団体です。観る側がそのモードに合わせれば入り込めるんじゃないかと。サービス精神は良いので、ご贔屓なんか作ると楽しいかと思います。


2008年01月28日(月)18:30-21:30
ホリプロ「ペテン師と詐欺師」@日生劇場

 B席 3150円 2階-K列-21番 (パンフレット:1500円)

 演出:宮田慶子

 ローレンス・ジェイムソン:鹿賀丈史
 フレディ・ベンソン:市村正親
 クリスティーン・コルゲート:ソニン(奥菜恵)
 ミュリエル・ユーバンクス:愛華みれ
 ジョリーン・オークス:香寿たつき(高田聖子)
 アンドレ・チボー:鶴見辰吾
 ( )は2006年10月初演キャスト

 日本初演から一年ちょっとぶりの再演。三人いたヒロイン役のうち二人が入れ替わり、小屋もちょっと大きめの日生劇場へ。前回は名前だけの変更とはいえ、一応新しい劇場のこけら落とし公演ということと、市村&鹿賀というドリームキャストの共演ということで話題でしたが、今回はちと話題不足かも。ヒロインも、愛華&香寿という共演も多い元トップさんということで、四季と宝塚のドリームキャスト×2なのですが、僕の周りでも「やってたの」だとか「ふーん」というそっけない反応ばかり。そういえば、客入りもあまり良くないみたいで、余裕で当日券を確保。念のため、昼休みに買いに行ったのですが、劇場入りの際でも大丈夫だったかも。
 相変わらずだったのは鹿賀丈史。名前を出して申し訳ないけれど、個人的に、鹿賀丈史・草刈正雄・藤木孝のお三方は「朗々と歌いそうな顔していて、フニャフニャな歌を聞かせる人」として苦手なんです。今回も、歌は発声が安定せずに音域によって支えが効かなかったり歌詞が聞き取れなくなるのは相変わらず(四季っぽくない方ですよね)。ま、年齢を考えれば頑張っている方だと思いますが、もっとお腹から声を出してほしいなと、今回も思ってしまいました。日生劇場は今の鹿賀丈史にはちと大きすぎるかも。そして、表情も豊かではないので、ジャベールのような能面役はともかくとして、ジキル&ハイドや今回のローレンスのような役だとちと物足りなさを感じます。ヨーロッパの香り(って、ネタバレするとアメリカ人でしたが)を漂わすという意味では、この作品、ホリプロよりも宝塚の方がマッチするような気がします。って、前回もそんな感想書きましたっけ。
 して、宝塚出身として、今回初参加の香寿たつきですが……コメディできない人でした〜。優等生的芝居が抜けない人で、はじけることがないので、とてつもなくイッチャッタ人を演じるにはパワー不足。鹿賀&市村(今回はなんだか志村けんに見えました、ファンの方ごめんなさい〜〜〜)をタジタジとさせるには、そしてタジタジとさせられる割に、とても冷静だった気がします。「ブルックス・ブラザーズ」のお母さんのような役だとどんぴしゃりだと思うのですが、西部の女や、ラテンの女を演じるには、血がおとなしい方だと思います。
 とはいえ、鹿賀&香寿が出演していると、相手役が実にやりやすそうに演じているんです。共演者を立て、魅力的にみせることにかけては稀有の実力を持った二人だと思います。もちろん、大劇場での主役経験があるので、それなりの存在感があるのですが、人を押しのけてという芝居をする人たちじゃないのと、受け身の芝居を得意としているから、というのもあるんでしょうね。
 なお、今回の舞台の実質的な主役はソニンだと思ってます。実にすばらしいヒロインぶりでした。清楚なお嬢様から詐欺師の本性を見せる際の変化っぷり、高い歌唱力、クリアなセリフなどなど、今後の活躍が期待されます。何よりも、鹿賀&市村を手玉に取り、最後には手下(っぽく)してしまう貫禄がその芝居っぷりや技術からもにじみ出ていて、ラストシーンが実に説得力がありました。舞台度胸と歌唱力のあるミュージカル役者は強いですね。