観劇日記〜2008年02月〜
02日(土) 18:30 フジテレビ
「THE PRODUCERS〜プロデューサーズ〜」初日
東京国際フォーラム ホールC
07日(木) 19:00 梅田芸術劇場
「ファントム」初日
(フィリップ:ルカス・ペルマン)
青山劇場
08日(金) 19:00 梅田芸術劇場
「ファントム」
(フィリップ:ルカス・ペルマン)
青山劇場
09日(土) 11:00 コマ・スタジアム
「星屑の町 〜新宿歌舞伎町篇〜 コマ劇場SPECIAL」
新宿コマ劇場
09日(土) 17:00 東宝
「ウェディング・シンガー」
日生劇場
10日(日) 16:00 小空間オペラTRIADE
「欲張りオペラ〜観たらあなたもオペラ通〜」
千葉県文化会館小ホール
17日(日) 15:00 東京オペラプロデュース
「ワーグナー:妖精」
新国立劇場中劇場
18日(月) 19:00 「JTアートホール チェロアンサンブルII〜クラシック萌芽期の作品を集めて〜」 JTアートホール アフィニス
19日(火) 18:30 東宝
「ウェディング・シンガー」
日生劇場
21日(木) 19:00 梅田芸術劇場
「ファントム」
(フィリップ:パク・トンハ)
青山劇場
24日(日) 14:00 二期会
「ワーグナー:ワルキューレ」
東京文化会館
27日(水) 11:30 浜離宮ランチタイムコンサート
古川展生「チェロリサイタル」
浜離宮朝日ホール


2008年02月02日(土)18:30-21:25
フジテレビ「THE PRODUCERS〜プロデューサーズ〜」初日@東京国際フォーラム ホールC

 A席 9500円 3階-8列-25番 (パンフレット:2000円)

 演出:スーザン・ストローマン

 マックス・ビアリストック:伊ノ原快彦
 レオ・ブルーム:長野博
 ウーラ:彩輝直
 カルメン・ギア:岡幸二郎
 ホールドミー・タッチミー:松金よね子
 フランツ・リープキンド:桑野信義
 ロジャー・デ・ブリー:藤木孝

 先週に引き続き、馬鹿らしいストーリーによる詐欺師の物語。こちらも2005年8月公演の再演です。主要キャストが全員前回と一緒という、2年以上ぶりの再演としては珍しい状況。馬鹿らしいんだけれど、夢いっぱい、笑いいっぱいで幸せなひと時です。前回は来日公演からの続演(ゆえに舞台装置もそのまま借用)だったので、今にして思えば、英語版との比較で終わってしまったような気分ですが、ちょっとインターバルが入り、その間に海外での観劇もあったりして、観る側のスタンスも変化。あらためて、綿密なコメディとしての作りに舌を巻きました。ちょっとしたセリフの一つ一つが、動きの一つ一つが、実に綿密に計算されていて「何度観ても面白いというのは、完璧に計算されているからなんだ」と古典落語じゃないけれど、ネタがわかってても笑えるというのは凄いことだと思います。
 この作品は、スターとしての役者自らの輝きを求める割に、決まり事がやたら多いのですが、初日とは思えないほど、その段取りが自然に流れ、再演の強さ、そして、再演までの役者の成長ぶりを強く感じました。恐る恐るではなく、いきなり全力疾走での芝居っぷり。技術的に不安を抱えていた方は相変わらずではあるものの、いかに観客を楽しませるかに徹底していて、ハンデをさほど感じさせないほど。何よりも「来たからには楽しんで帰ってもらうからね」に徹したステージをみせられては、こちとらノリノリにならないわけにはいきますまい。舞台と客席が一体になった時、ライブならではの感動を得るものですね。
 そして、ミュージカルとしての輝きをみせる場面の数々。会計事務所や老人ホームが一転してレビューシーンに変貌するところももちろん素敵ですが、僕が個人的に好きなのは、ロジャー・デ・ブリーのリビングで、演出依頼を承諾させようとマックスとレオが交渉する際の「トニー、トニー、トニー」というコーラス。スタッフ一同が目をキラキラさせちゃって「できない→やるわっ」と一転してしまう鮮やかな変化とトニー賞の威力! そして、裁判の場面で「マックスに傷つけられたことはありませんね」との問いに「もちろんよ」と答えて、マックスの弁論に「アーアーアーアーーー」と無垢なコーラスを利かせるおばあちゃんコーラス。マックスは詐欺をしでかしたけれど、おばあちゃんたちを大切にし、夢を見せてたんだ、とこちらもウルウルしてしまいます。マックス役に伊ノ原快彦は確かにまだ早いんだけれど、その若さが生きて、孫とおばあちゃんのような関係が浮き彫りになって、実に良い場面に仕上がったなぁ、と良い気持ちになります。
 松金よね子のアンサンブルでの多彩な活躍や、幕切れの際に電飾で降りてくる、ブロードウェイの名作をパロディにした電飾の数々、さすがに日本だと反応が鈍いんだけれど、パンフレットに丁寧に解説されていて、制作スタッフの作品に対する愛情を感じ、また嬉しくなっちゃった次第。正直、日本のプロダクションの公演でパンフレットが2000円というのはどうかと思うけれど(最近インフレ気味ですね)、今回のパンフはそのオタク心をくすぐる内容に免じて購入!


2008年02月07日(木)19:00-22:10
梅田芸術劇場「ファントム」初日@青山劇場

 S席 12500円 1階-XC列-29番 (パンフレット:2000円)

 演出:鈴木勝秀(中村一徳)

 ファントム(エリック):大沢たかお(和央ようか→春野寿美礼)
 クリスティーン・ダエー:徳永えり(花總まり→桜乃彩音)
 フィリップ・シャンドン伯爵:ルカス・ぺルマン(安蘭けい→真飛聖)
 カルロッタ:大西ユカリ(出雲綾→出雲綾)
 アラン・ショレー:HISATO(鈴鹿照→夏美よう)
 ルドゥ警部:中村まこと(寿つかさ→大伴れいか)
 ジャン・クロード:永島克(美郷真也→高翔みず希)
 文化大臣:コング桑田(夢大輝→悠真倫)
 ゲラール・キャリエール:伊藤ヨタロウ(樹里咲穂→彩吹真央)
 ベラドーヴァ(映像出演):姿月あさと(音乃いづみ→花咲りりか)
 ※( )内は2004年7〜8月宙組公演→2006年8〜10月花組公演の時の配役
 アンサンブル:阿部よしつぐ、角川裕明、金澤博、田ア悠人、田村雄一 、中井智彦
          荒木里佳、稲田みづ紀、浦壁多恵、杵鞭麻衣、金城尚美、山本悠記子

 いまだかつてない歌唱力の公演。歌い回し以前に、音量の差やアッチェルランドをはじめとしたテンポを動かすなんて論外。小学校低学年用の伴奏と言いましょうか、オケもひたすら一本調子に変化乏しく演奏しているにもかかわらず、不協和音連発(°□°;)。「オペラ座の怪人」じゃなくって「音痴座の怪人」だぁ。正直、第一幕はかなり厳しかったんです。何しろファントム、クリスティーン、カルロッタ、キャリエールの主要キャストのうち、誰一人として満足に歌える人がいないんですもの。おまけに、初舞台で棒立ちのクリスティーン、メイクもドレスも似合わない下町おばちゃんなカルロッタ、棒読みな上に噛みまくりのアラン・ショレー、良くなったらしいけれどまだまだ日本語の怪しいフリップ。。。芝居で頭に血がのぼり、歌で真っ青になるという、血圧が上がったり下がったりの体力勝負な公演です。正直、音楽面では前代未聞の低レベルな公演で、誰にでもお勧めできる舞台とは言えません。
 でも、そんな悪条件の中、感動にもっていったカンパニーはエライッ!! 観るまでは、密かにプロデューサーを呪っていたたのですが、拍手を送りましょうぞ。見どころはあるんです。クリスティーン・ダエー:徳永えりは確かにどうしようもないです。「アニー」の子役のような台詞回し、カンパニーの誰よりも下手で声量もない歌(でも、一番上手いと称えられちゃうんですよねぇ。おまけに姿月あさとの歌声にそっくり…ってどこがやねんっ)、ドレスの着こなしも裾捌きもバッサバサ。ミス・キャストには違いないのですが、新人ならではの初々しさは今ならではの貴重なもの。芝居の中で高評価を受けると「信じられない〜」って顔して目をキラキラさせるのは、ベテラン役者では出せない味。(ま「信じられない〜」と思うのはこっちだよ、ですけど)。エリックが彼女に母性を感じたのは疑わしいけれど、地下の闇の中に明るい光を投げかけたのであろうことは想像できます。そして、ゲラール・キャリエール:伊藤ヨタロウは、小柄な体格と、ちょっと斜に構えた視線で「わけあり」な人物像を見事に造形。父子を名乗りあう感動的なデュエットも芝居で盛り上げてました。正直、エリックとキャリエールの芝居のみが突出していて、クリスティーンやフィリップ要らない位。父子物ファントムとして盛り上げてくれます。
 して、ファントム(エリック):大沢たかおですが、メイクはかなりあっさり。仮面を外しても美しいんです(@_@)。長身で体が締まっていて、顔が小さいのでカツラや衣装が映えて、見た目に関しては歴代屈指のファントム(*^o^*) 宝塚と違って、ファントムダンサーズがいないせいか、地下に一人ぼっちで過ごしているエリックの孤独が際立って、彼の深く重い哀しさがビシバシ。ようやく出会えた光=クリスティーヌを手に入らないと悟った時の絶望感が鋭かった〜。も少し歌唱力があれば、貴重なミュージカルスターになれるのに。。。台詞だと感情豊かなのに、歌になるととたんにのっぺり一本調子。
 翻訳ミュージカルでの歌や芝居はテレビと違って、どこかの国の空気を醸し出さなくてはならないこと、マイクに頼るだけでなく、舞台用の発声が必要なこと(歌もセリフも)、感情表現はスピードやスケールも計算した上で行うことなど、かなり特殊な要素がてんこ盛りなので、そりゃいっぱいいっぱいになるのは承知。テクニックも経験もないのを承知の上で、主演を引き受け、観客の「大丈夫か?」の目や耳にさらされながらも、自分の持ち味を発揮して、観客を納得させるのって、相当の自信がないとできないこと。「俺様の魅力、思い知ったか!」の主演ぶり、とくと堪能してきました。立ち見までぎっしりの青山劇場、終演後の拍手が観客の満足度を示していたことと思います。
 でも、しつこいようですが、万人受けする舞台じゃないです。さんざんミュージカルを観ていて「こんな変化球もあるのね」という方でないと厳しいかも。実は明日も観劇予定です。初見だとついつい宝塚版と比べながら観てしまう部分もあるのですが、最初から今回の舞台のモードで観られるハズなので、たっぷり楽しんで来ようと思ってます。


2008年02月08日(金)19:00-22:00
梅田芸術劇場「ファントム」@青山劇場

 S席 12500円 1階-I列-19番 (パンフレット:2000円)

 演出:鈴木勝秀(中村一徳)

 ファントム(エリック):大沢たかお(和央ようか→春野寿美礼)
 クリスティーン・ダエー:徳永えり(花總まり→桜乃彩音)
 フィリップ・シャンドン伯爵:ルカス・ぺルマン(安蘭けい→真飛聖)
 カルロッタ:大西ユカリ(出雲綾→出雲綾)
 アラン・ショレー:HISATO(鈴鹿照→夏美よう)
 ルドゥ警部:中村まこと(寿つかさ→大伴れいか)
 ジャン・クロード:永島克(美郷真也→高翔みず希)
 文化大臣:コング桑田(夢大輝→悠真倫)
 ゲラール・キャリエール:伊藤ヨタロウ(樹里咲穂→彩吹真央)
 ベラドーヴァ(映像出演):姿月あさと(音乃いづみ→花咲りりか)
 ※( )内は2004年7〜8月宙組公演→2006年8〜10月花組公演の時の配役
 アンサンブル:阿部よしつぐ、角川裕明、金澤博、田ア悠人、田村雄一 、中井智彦
          荒木里佳、稲田みづ紀、浦壁多恵、杵鞭麻衣、金城尚美、山本悠記子

 気付くのが遅くてお恥ずかしいのですが、今回の「ファントム」は対比の上に成り立っています。よって、演出にしろ、舞台の色合いにしろ、必ず何かと対になっているのが特徴です。装置も回り舞台を駆使して、常に表と裏を意識させた舞台作り。初見の時はあまりに前方席過ぎて、演出家の意図が読み取れませんでしたが、やはりある程度距離をもって眺めた方が舞台全体が楽しめる、そんな気がしました(このあたりは僕の好みでもあるけれど)。
 第一幕は混沌のうちに始まります。客席をうろつきまわるアンサンブル。いきなり客席通路で歌いだすクリスティーン。出演キャストが少ない公演なので、客席降り=音の拡散となり、舞台の芯を担当する人がいないので、実に不安定な状態です。芝居のタイプ、歌のメソッド、芝居のタイプなど、劇団でない短所が端的に出てしまい、目の前に誰がやってくるかで途端に印象が変わってしまうのがちと残念。このあたり、カンパニーとしてのアンサンブルの弱さを感じてしまいます。正直、ビストロの場面もオペラの場面もイライラしっぱなしなのです。このあたり、原因は新支配人夫妻。アラン・ショレー:HISATOは芝居のキャッチボールを放棄していて暴走。ご自身の役の背景やルックス、求められているポジションを無視して、好き放題。台詞がどれもこれも流れてしまい、せっかくのおいしい役を活かせないまま。そして、カルロッタ:大西ユカリはセリフを口にする時は頑張って芝居するけれども、それ以外は目を閉じ、口をへの字に曲げたまま棒立ち。肝心の歌もかなりゆがめて歌ってしまい、メロディラインが崩壊。姿勢の悪さや、品のなさはプリマには程遠い。……という怒りでいっぱいになるのですが、実はこのひどい状態、演出家が仕組んだことではないかと思っているんです。エリックが、地上の世界を嫌悪し、自らの美の世界を追い求める姿に非常に共感できるんですもの。地下の世界はそりゃ光が差し込まずに暗いけれど、静寂や調和に満ちていて、落ち着く状態なのも事実。言葉の粒がたたずに汚く流れてしまう地上の人に対し、エリックが口にする言葉はまるで詩のように美しくロマンティック。おそらく、人との交流がなく、一人ぼっちで詩集などによって得た言語能力なんでしょうね。時にテニソンのように、時にシェイクスピアのように文学的な香りが漂う言葉の一つ一つを、ファントム(エリック):大沢たかおが実に丁寧に扱っていて、ついつい音楽に頼ってしまいがちなミュージカルという分野において、無言や静寂が実に大きなパワーを持つ仕上がりです。仮面で顔を隠しているのに、万華鏡のようにきらめき、変化する感情の数々が客席に伝わってくるのですから、役者という稼業の底力を見せつけられます。素晴らしいファントムです。そりゃ、欲望と計略が渦巻く地上の世界からお気に入りの女の子(=クリスティーン)を地下に連れ去りたくなるも無理はありません。
 とはいえ、そのエリックも無垢と冷酷を併せ持っていて、人殺しを犯した直後に甘い愛の言葉をささやいたり、先生として大人の貫禄を保っていたはずが、一瞬にして幼児のような精神状態に戻ってしまったり、感情の幅が実に広く、台詞の一つ一つ、歌詞の一節一節を聞き逃すなんてできず、観客席も集中力が要求されます。正直、歌のテクニックがないので、アルペジオの反復や、半音がやたらと登場すると「音痴座の怪人」となってしまい「さて、正しいメロディがわかりますか?」になるのは事実です。ま、歌唱力は主要キャスト全員の問題で、大ナンバーを歌っても拍手がない……なんて恐ろしい瞬間もありました。
 が、第二幕になって、親切と残酷、無垢と冷酷、光と影、猥雑と洗練、動と静、調和と混沌などの、対比の構造が見え出すと、今までのイライラが感動に昇華してしまうのですから、正に演出家の思うツボです。大ナンバーを歌いあげて、嫌がるエリックに「仮面を外せ〜〜〜」と強引に迫るクリスティーン(実に嫌なオンナだ)が、いざ仮面を外したら後ずさりしてエリックの元から逃げ去ってからは、エリックの独断場。地下の生活で唯一の光だった母の歌を心の支えに生きてきたエリック。ようやく母の声を持つクリスティーンと知り合い、愛を語り合うまでになってにもかかわらず、素顔を見せた際「ありがとう、神様」と微笑みと愛情を注いでくれた母とは裏腹に、ものすごい形相で逃げ帰ってしまったクリスティーン。手に入りかけた光が一瞬にして失われる残酷さ。心がズタズタになってしまい、風格すらあった立ち姿も崩壊。まるで母の胎内に逃げ込むかのように、卵型のポーズにうずくまって、わが身の運命を嘆くエリック。このあたりの心の叫びになると、音程や音量なんてどうでも良くなり、思いのたけを歌に託す迫力が全面に出てきます。歌手が「きれいに歌おう」としてしまう事が多い中(ま、それゆえに盛り上がるんですけど)、感情の吐露の迫力で客席を魅了する芝居歌が実に感動的。続く父子名乗り合いを経て、殺害を頼む際なんて「アンタ」とか「ゲラルド」としか父を呼んだことのないエリックが「父さん助けて!」と感情のままに絶叫するとなると、涙なくしては見ていられません。普段は音楽重視でミュージカルを観ていますが、今回ばかりはセリフ術に完敗です。トーンや声色、間の取り方やテンポ。普段、自分がいかに言葉をおろそかにしていたことかと反省してしまいます。
 結局、父の手によって殺されるエリックですが「母さんのところへ行きたいんだ」「これでやっと三人が一緒になれたね」と安らぎの表情を浮かべるエリックの仮面をまたもや剥ごうとするのがクリスティーン。一度はエリックが拒絶して手を引っ込めるものの、最後はやっぱり剥ぎとっちゃうんですよね。いえね、クリスティーンが母性を発揮していて、エリックが劇中に安らぎを得ていたのなら良いんですよ。本来はそういうストーリーですから。でも、クリスティーン・ダエー:徳永えりが実に幼稚で、アニーじゃあるまいし、声が割れるのも気にせず、そして、ほんの0.5秒の間を保てずに、粒の立たないセリフをペラペラ早口でしゃべるので興ざめ。歌えない、芝居できない、姿勢悪い、美しくないヒロイン……見事に舞台をぶち壊してくれます。悪役担当の新支配人夫妻とは立場が違うんですから。。。彼女の歌声を絶賛したという演出家の耳を疑ってしまいますし、彼女でGOサインを出した人の感性を疑ってしまいます。


2008年02月09日(土)11:00-14:40
コマ・スタジアム「星屑の町 〜新宿歌舞伎町篇〜 コマ劇場SPECIAL」@新宿コマ劇場

 S席 11000円 15列-41番 (パンフレット:2000円)

 演出:水谷龍二

 正木俊(要旅館の支配人):前川清
 赤羽ミミ(新しいボーカル):高橋由美子
 山田修(ハローナイツ・リーダー):小宮孝泰
 市村俊樹(ハローナイツ・メンバー):ラサール石井
 込山晃(ハローナイツ・メンバー):渡辺哲
 西一夫(ハローナイツ・メンバー):でんでん
 山田英二(ハローナイツ・メンバー):菅原大吉
 青木五郎(ハローナイツ・メンバー):有薗芳記
 黒田百合(クラブJのママ):田島令子
 柴拓次(伝説の元やくざ):左とん平

 キッカケって大切だと思うんです。出会いの場、認識の場、足を運ぶこと、その他もろもろ、一人だと何一つ変化なんてしませんから。そして、今回の公演も、ちょっとしたキッカケによって劇場に足を運ぶことになりました。コマ劇場……ミュージカル&マツケン公演でした来たことがないので、歌手が座長を務める王道公演を観るのは初めてなんです。さすがに、出演者も客層もほとんど馴染みがありません。でも、想像していた通りのコッテコテなコマのお芝居に接することができ大満足であります。もっとも、前川清は座長扱いではありますが「星屑の町」というお芝居ではゲスト扱いなので、お芝居部分に関しては「誰が主役なのかわからない」状態です。でも、なに、ストーリーなんて難しく考えることないみたいです。場面場面を楽しめればOKの作り。時折意識を失おうと、決しておいてきぼりになんてなりません。どこまで台本で、どこからアドリブなのかわかりませんが、時事ネタてんこ盛り、役者のプライベートもさらしものにされてます。お芝居のラストで、前川清が感動的に歌いあげる中、今後を暗示させる無言劇が舞台で繰り広げられるのですが、四場面が同時進行、そして、回り舞台がメリーゴーランド並のスピードでぐるぐる回るので、平均年齢の高い今回のカンパニーでは「目を回す役者がいるのではないか?」と心配になるほど。回り舞台は各地の劇場でおなじみですが、ここまで高速で回転し続けるのって初めてみました。10回転位したんじゃないでしょうか。
 3時間くらいかかって、ようやく終了かと思いきや、幕前に左とん平氏が登場。左とん平というと、大地真央の相手役として「エニシング・ゴーズ」での歌やお芝居が印象に残っていますが、あれから20年近くたつというのに、豊かな声量が顕在。ラップ調の難しいナンバーも、リズムにすんなり溶け込み、ブラボーものの名演。こんなおじいちゃんに私もなりたい! そして、左とん平が歌っている間に、舞台装置が片付けられ、ジャジャーンと前川清がせり上がり。お芝居ではさえないおっちゃんの役でしたが、スターですねぇ。おとなしい衣装で動かずにせりあがってくるだけなのに、会場のボルテージがあがりましたもの。そして、音域の広さ、声量の豊かさ、歌い回しの多彩さは、テレビ以上に酔わせてくれます。長年、人気を誇る人たちってダテじゃありません。客席で誰かが手を振ると、ニコニコと振り返してくれるし、あ、宝塚もトップさんが銀橋を渡る際に、手振ったり、愛きょう振り撒いたりしたら、ファンみな悶絶するんじゃないかなぁwww 舞台上で前川清グッズが本人の解説付きで販売されたり、客席からのプレゼントやお花をショーの途中で受け取ったり、これらに関しても「あぁ、コマ劇場」と思ったのでした。ちゃんちゃん。


2008年02月09日(土)17:00-20:00
東宝「ウェディング・シンガー」@日生劇場

 B席 4000円 2階-J列-38番 (パンフレット:1500円)

 演出:山田和也

 ロビー:井上芳雄
 ジュリア:上原多香子
 グレン:大澄賢也
 ホリー:樹里咲穂
 ジョージ:新納慎也
 アンジー:ちあきしん
 リンダ:徳垣友子
 ロージー:初風諄
 サミー:鈴木綜馬
 ドラマー・ジム:佐野真吾
 アンサンブル:奥山寛、小原和彦、KENTARO、坂元宏旬、笹木重人、佐々木誠、田之内清章、前恵治、安江友和、横沢健司
          家塚敦子、岩ア亜希子、大澤恵、樺島麻美、後藤藍、坂井朋子、史桜、中村紗耶、難波美妃、林希、柳橋さやか、やまぐちあきこ

 素晴らしい舞台でした。オープニングからして、キャストのやる気満々ぶりが強いエネルギーとなって客席に迫って来ます。塩田氏の指揮は、ぐいぐい音楽を引っ張り、舞台を、そして客席を瞬時にノリノリにしてくれるので大好きです。物語の背景が1980年代ということで、僕にとっても、出演者の多くにとってもおなじみの時代というのも「私たちに任せなさいっ」というエネルギーに繋がったのかもしれません。主要キャストの一人一人に大ナンバーが与えられ、見せ場の連続なのですが、それぞれのキャストが自分のバックグラウンドを活かしたかのような魅力的なステージを見せてくれること、そして、東宝ならではのスターの競演とあって、どの場面もだれることがないので……あっという間の三時間です。
 ロビー:井上芳雄、ロージー:初風諄、サミー:鈴木綜馬は今までのイメージをぶち壊してくれます。髪の毛逆立て、派手な衣装を着て、舞台を暴れまくって……ファンの方はショックを受けるか惚れ直すかどちらか必至。ソロの歌もたっぷりあり、最近主演続きの井上芳雄は別として、初風諄と鈴木綜馬については、得意な音域での得意なナンバーをタップリ歌えるとあって、実に気持ち良さそう。歌の方々の面目躍起です。そして、ファントムだ、アントワネット様だという過去を超え、まだまだやってくれます。グレン:大澄賢也、リンダ:徳垣友子のダンサーチームも、超絶技巧を涼しい顔してこなしてしまうプロの技を見せつつ、アダルト路線へのシフトチェンジを無事完了。勢いだけでなく、流してみたり、間を大切にしてみたり、メリハリがあって、ピリリとしたスパイスぶり。
 主役の二人は、座長としての貫録はないけれど、無理しなくても、回りがちゃんと盛り上げてくれるし、適度に立ててくれるので、実にのびのびとしています。井上芳雄なんて、かわいがられている孫キャラをちゃっかり生かしてて、主役として舞台の中心に立つ姿に違和感がありません。(声が安定してきていて中音域以下もしっかり音が響き、歌詞がちゃんと伝わるのが嬉しい限り)。そういえば「エリザ」におけるおばあちゃんもお父さんも一緒なんですね(蛇足ながら、樹里さんもルドルフ&パパ役でした♪) カンパニーを率いて、横移動するダンスシーン(上島雪夫の振り付けが秀逸で「並んでエアロビ」ではなく「フォーメンションがダイナミックな群舞」)で見ごたえがあります。座長として、貫禄はないけれど、がっちり脇に固められた中、自由に泳ぎ回っている爽快感に満ちています。ジュリア:上原多香子も舞台女優として決して上手くないけれど、今の実力に開き直って、ちょっと固くはあるけれど、勢いがあってチャーミング(個人的には舌足らずな歌い方は苦手ですが)。舞台経験が少ない人にしては、セリフが丁寧で聞き取りやすいのもポイント。
 と、みなさん張り切ってますが、一番張り切っていたのがホリー:樹里咲穂。ひいき目を抜きにして、日本ミュージカル界の宝です。歌にダンスに、手加減一切なしで、広い音域や声量を活かして盛り上げまくる歌、ステップからステップへ移る際の余韻を活かしたダイナミックなダンス、そしてスタイル抜群のバディを惜しみなく見せつけるサービス精神の良さで、ショースターの実力躍起。彼女が歌い踊るだけで、舞台の温度が上がりますし、客席もノリノリ(カーテンコールの拍手も最大でした!)。正直、主役よりも目立ってますし、カンパニーを引っ張っているのは樹里咲穂と言い切っても文句はどこからも出てこないはず。でも、彼女がすごいのは、どんなに自分がすごくても、舞台を盛り上げるだけ盛り上げておいて、美味しいところを主役にハイっと渡してしまうこと。主役にしてみれば、こんなにありがたい共演者もおりますまい。体力やチャレンジ精神、現在置かれているポジションを考えると、おそらく、女優人生において、現在最盛期を迎えているのではないかと思う充実感です。一幕最後は、あまりの格好良さに感動の叫び声があがりますって、ネタばれになりそうですが、彼女がお立ち台の上にのぼったら、決して目を離してはいけません。盛り上げまくって、最後の締めをきっちり決める姿に背中がゾクゾクしますぞ。


2008年02月10日(土)16:00-18:45
小空間オペラTRIADE「欲張りオペラ〜観たらあなたもオペラ通〜」@千葉県文化会館小ホール

 全席指定 5000円 2列-3番 (パンフレット:無料)

 演出・構成・進行:中津邦仁

 ソプラノ:砂田恵美  ソプラノ:永吉伴子
 メゾ・ソプラノ:西けい子
 テノール:中鉢聡
 テノール:小山陽二郎
 バリトン:森口賢二
 バリトン:江原実
 ピアノ:瀧田亮子

 ヴェルディ:「椿姫」より「乾杯の歌」(全員)
 ドニゼッティ:「ドン・パスクワーレ」より「騎士の眼差し」(砂田)
 ヴェルディ:「リゴレット」より「女心の歌」(中鉢&小山)
 ヴェルディ:「ドン・カルロ」より「友情の二重唱」(中鉢&森口)
 プッチーニ:「トスカ」より「清らかな優しい手よ〜上手く死んだ真似をするのよ」(永吉&小山)
 モーツァルト:「魔笛」より「パパパの二重唱」(砂田&江原)
 ロッシーニ:「チェネレントラ」より「四重唱 静かに音を立てず」(小山&森口&砂田&西)
 ドニゼッティ:「愛の妙薬」より「ドゥルカマーラの登場〜ネモリーノ・ドゥルカマーラの二重唱」(江原&小山)
(休憩)
 ビゼー:「カルメン」より
     子供たちの騎兵隊の歌(ジュニアコーラス・フェアリーズ)
     ハバネラ(西)
     花の歌(中鉢)
     闘牛士の歌(森口)
     エスカミーリョとカルメンの二重唱(西&森口&中鉢)
(休憩)
 J.シュトラウス:「こうもり」より
     夜会へ行こう(中鉢&森口)
     一週間もただ一人(中鉢&永吉&砂田)
     グラスを挙げて飲み干せ(小山)
     さあ参りましょう 私の鳥小屋は(永吉&江原&小山)
     お客を呼ぶのは私の趣味で(西)
     侯爵様(砂田)
     チャルダッシュ(永吉)
     フィナーレ ぶどう酒の泡にまみれ(全員)
(アンコール)
 レハール:「メリー・ウィドウ」より「女のマーチ」

 千葉県文化会館は非常に古い施設で、小ホールが改装されて今のスタイルになったのは20年位前……って書くと非常に詳しそうでしょ。千葉県民なので、学生時代はコンクールの度に楽器担いでえっちらおっちら千葉駅から歩きましたが(まだモノレールがなかったんです)、とにかく不便な場所&小山の上に位置しています。で、この改装はコンサート用としてのものではなかったようで、僕が知る限り、1・2を争う「響かないホール」です。ティンパニやスネアドラムを叩いても、響きが吸収されちゃって、オモチャの太鼓のような面白い響きに変換されてしまうので、リハーサルの際、思わず大爆笑し、リラックスしたまま本番の舞台を迎えた、という記憶があります。今日も一曲目の段階で「あ、歌いにくそう…」とスカスカなまま改善されてない音響にビックリしたものの、二期会や藤原歌劇団で数々の主役を務めてきた面々(&亮子さん)にとっては問題ではありませぬ。サービス精神と熱気で、会場いっぱいに豊かな音が充満。素敵なコンサートでした。
 名曲揃いなので、そのままガラ・コンサートとしても成り立つプログラムですが、今回は〜観たらあなたもオペラ通〜なものですから、司会・解説付きです。そして、まじめな演奏でありながら、お遊びも豊富。「女たらしの歌」では中鉢→小山と歌い継いだはずが、クライマックスのハイCの部分だけ、中鉢氏が舞台に舞い戻ってきて、聞かせどころを奪っちゃったり、観客を舞台上にあげてみたりとエンターテインメントとして小洒落たことをしてくれます。3回ほど舞台に上がるチャンスがあったのですが、実はこのメンバーは入場の際に配られる抽選番号によって、強制的に決められてしまうもの。おとなしく舞台の上で棒立ちしている方々を眺めながら「なんで、僕の番号が当たらないのさっ!」と毒づいておりました。滅多にない機会だから、こりゃぜひとも上がりたくなるってもんです。僕だったら、ドゥルカマーラから薬ビンを買い求め、カルメンにはちょっかいを出し、オルロフスキーと一緒に乾杯したり踊っちゃったりするっ。そして、どさくさにまぎれてコーラスパート歌っちゃう!!!
 第二部は「カルメン」ハイライト。20分位にまとめられているのですが、端折り方が尋常じゃないので、すっかりコメディ。カルメンは兵隊さんたち(舞台に乗せられたおじ様達)にちょっかい出しまくりだけれど、ホセに「花の歌」を聞かせられると思わずホセと抱き合っちゃうような女。よってエスカミリオに「闘牛士の歌」を聞かせられるとコロリと鞍替え。ホセが「マ、カルメーン」と叫んで幕。ミカエラもジプシーも関係なく、なんだか、カルメンがいかに移り気かっていうお話に、思わずプププwww
 第三部のこうもりだって、アイゼンシュタインとロザリンデとアデーレが別れを惜しんで嘆き悲しんでいたはずが、数時間後にオルロフスキー侯爵のパーティに全員集合。思わずシャンパン飲んでアッハッハという、超省略バージョン。はて、監獄は?パーティでの浮気は??など細かいことなし。3行にまとめたあらすじをそのまま上演してみました、みたいな構成。ここまで強引なのって……好き♪ 登場人物が多く、あれこれ小芝居が積み重なるオペラも、こうして単純化すれば、説明簡単やん!!って、このまんまプログラム作ったら、絶対「書き直しっ!」と突っ返されるでしょうけど(汗)
 と、超特急ではあれども、3時間近くの大コンサート。幕間にはワインサービスあり、公演中はキャンディのサービスあり、おまけに終演後は写真撮影会と至れり尽くせり。ホントは集合写真のみなのですが、おばちゃまたちがそれで納得するわけがありません。個別にソリストを囲んでの懇親会。今回はファンサービス旺盛な面々なので、声かけたい人がいっぱいいる場合は大変。とりあえず、もりっちさんと亮子さんとスタッフの大澤さんには声かけられたけれど、うかうかしているうちに中鉢氏に声かけるタイミングを逃してしまいました。ま、舞台から「来たのね!」って顔してくれたから良しとしましょう。そして、その他ソリストの面々にも声かけられず。ばんこさんのトスカは久しぶりだったし、小山氏は気づくと追っかけ状態なのにお話できなかったし、砂田氏、西氏、江原氏も楽しかった〜と言いたかったのに。って、すっかりミーハーですが、舞台と客席が一体化するのも、小空間でのコンサートの特色。もちろん、新国や東京文化での装置や衣装、フルオーケストラでのオペラは魅力ですし、僕の好みはゴージャス路線ですが、せっかくスターの面々と直接お話しできるのですから、こういうのも好きなんです。もちろん、大澤さんという個人の制作による、という公演環境もあるんでしょうけどね。(こうして応援したい人が増えると…追いかけきれなくて大変になるんですけど・大汗) はっ、亮子さんの次のスケジュール聞くの忘れた!!


2008年02月17日(日)15:00-18:45
東京オペラ・プロデュース「ワーグナー:妖精」@新国立劇場中劇場

 S席 12000円 1階-16列-27番 (パンフレット:500円)

 指揮:マルコ・ティトット
 演出:松尾洋
 管弦楽:東京ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽団

 アーダ:大隅智佳子
 アリンダル王子:内山信吾
 ローラ:松尾香世子
 ゲルノート:保坂真悟(小島聖史の代役)
 モラルト:杉野正隆
 グンター:江原雅敏
 ツェミーナ:藤永和望
 ファルツァーナ:背戸裕子
 ドロッラ:鈴木彩
 妖精の王/グロマ:森田学
 ハラルト将軍:白井和之
 伝令:浅野和馬

 ワーグナー初期の滅多に上演されることのない作品。今回が日本初演だそうです。上演されないのも納得な「ワーグナーの個性がまだ出てない」作品。日本初演なのにもかかわらず「この場面、どこかで観たぞ」なシーンが次から次へと登場。それが、ワーグナーだったり、ヴェルディだったり、はたまたモーツァルトだったり色々。オリジナルが売りのワーグナーですもの、そりゃ引っ込めたくもなるなぁ、と妙に納得。でも、逆に、それが聞きやすさ、ストーリーのわかりやすさにつながり、なかなか楽しい仕上がりでした。
 ストーリーはかなり波乱万丈です。アリンダル王子旅先で出会った女性(アーダ)が実は妖精なのですが、8年間もラブラブに付き合って、二人の子供までもうけておきながら、8年目の最後の日に王子にさんざん嫌がらせをして愛を確かめる、という悪趣味の極み。子供を目の前で火あぶりにしてみたり、王子の王国を滅ぼしてみたり(って、どれもそう見せただけですけど)、こんなことされたら、100年の恋も冷めて「離縁だ〜っ」となるのも当たり前。裁判にかかったらあっけなく離婚成立でしょう。それでいて、王子が「呪ってやる!」とブチ切れたら、今度は逆切れして「アナタは私を不幸のどん底に落とした」って、アンタそりゃあんまりでしょう。フェアリーというよりも妖怪に近いオンナ。ああ、恐ろしい。。。
 ま、王子も王子で、8年も国を放り出しておいて、今更「私の王国が!」というのもなぁ。ボンボン丸出し。正直、アーダとラブラブそうには見えなかったのですが(これは第一幕でのお芝居、および演出の不手際)、そんなアーダでもいざいなくなってみると精神錯乱になって、いきなり狂乱の場となるのですから、男としてどうよ、そんなんで国政は大丈夫か?な情けなさ。クライマックスも格好良く試練に打ち勝つかと思いきや、魔法使いの影の声に従うだけで何なり問題クリア。あ、プロンプターボックスの前で指示される通り歌うオペラ歌手みたいな感じです。
 と、ストーリーを考えればとんでもない話なのですが、とんでもなけえばないほど盛り上がるのがオペラの不思議。第一幕で王子とアーダが夫婦面をしている段階(そして、妖精なのに人間として結婚することを悩むアーダ。このあたり、貴族なのに平民と結婚することを悩むような感じで、共感できるハズなのですが、オペラとしてはまだまだ不完全燃焼。面白くなるのは第二幕になってドラマティックに叫びだしてから。アリンダル王子も、復讐劇になってからが俄然面白くなります。そりゃ、展開は早いです、ぶっ飛んでます。60分間ひたすら「愛してる〜〜〜」とデュエットさせてしまうワーグナーのスタイルはまだ確立していません。歌の中で次から次へと感情が変化し、それに伴ってストーリーも二転三転します。回り舞台で人間界と妖精界を行き来する演出は、一つの事柄を二つそれぞれの立場から眺めていることが強調されていてなかなか興味深い作り。
 強引に主筋を動かすとあって、アーダはとってもドラマティック。そりゃ、感情表現や所作についてはあれこれ注文はあります。が、まずは声の力によって観客を酔わせてくれた威力に脱帽です。濃厚で悶えているかのような声がとても魅力的。そして、最後までパワーを失わなかった事に拍手。ワーグナー作品は何よりもスタミナが大事。その点、アリンダル王子(話がとっても飛びますが、都響の首席ヴィオラ弾きの渡邉信一郎氏に雰囲気がそっくりで、登場するたびに「渡邉さんだぁ!」と喜んでおりました)は、柔らかな雰囲気や、衣装の映える長身が武術に長けた王子様にはぴったりでしたが、途中で力尽きてました。ちとパワー不足、スタミナ不足。ステーキの差し入れが必要な印象。でも、純粋にアーダを愛し、子供たちを愛し(ハグハグする場面が秀逸!)ていたのに、散々な目にあわされた揚句三行半を突き付けられちゃうこのとんでもない役を、主役として務めあげたのはご立派。ちゃんと、主役として舞台の中心に収まるのですから。
 そういえば、アリンダル王子って本人は純粋なのに、回りは腹黒い人ばかり。放浪にも忠実につき合ってくれたゲルノートなんて、8年ぶりの恋人との再会だというのに、喜ぶよりも前に「貞節かどうか試してやろう」とウソの女道楽ぶりを披露して相手の嫉妬を買おうとする男の風上にも置けないアホンダラですし、信頼していた将軍ハラルトは敵軍のスパイだったし、もう散々。お祓いしてもらった方が良いみたい。ま、ゲルノートについては、恋人のドロッラも似たような思考回路で、喧嘩したあげく仲直りという定番の流れなので、外野がつべこべ言うのも野暮なのかもしれません。
 そんなトンデモ人種てんこ盛りの中、唯一まともなのがローラ。兄が不在の間はワルキューレのように、みずから剣を取り国を守り、8年ぶりに兄が帰国すれば素直に再会を喜び、恋人とも素直にラブラブ。兄とアーダのスキャンダルの場面でも取り乱すことなく、兄の精神錯乱ゆえに王位についても浮かれ騒ぐことなく冷静に国を眺めている。それでいて、兄とアーダの恋愛を応援し、姪っ子&甥っ子を「かーわいい♪」と眺めるあたり、非常に魅力的な女性。キャリアウーマンの鏡です。実は松尾・イリス・香世子さんの声でワーグナーを上演すると聞いた時は「のどは大丈夫か?」と心配したんです。だって、ワーグナーでイメージする野太い声とは゛正反対の声質ですから。でも、ワーグナーも初期はリリカルな役があったんですね。装飾音符がわんさか出てくる曲も見事にこなし、良い意味で予想を裏切る好演。いきなりジャンヌ・ダルクのような扮装で登場し、剣を床にバーンと投げ捨てて「もうダメだ」と敗戦色濃くなった兵士たちを「気合いだ〜っ」と叱り飛ばすあたり「格好良い〜」と惚れぼれ。ドレスが場面を追うごとに女性らしく、豪華にドレッシーに変化していくあたり、登場するだけで役の状況を表現できる着こなし術にも溜息。感情(精神状態?)の変化をしなやかに表現していて、声質といい、存在の柔軟性といい、アーダと対照的。やはり、主役に拮抗できる、それでいて対照的な役が配置されると舞台は盛り上がりますね。このあたり、劇場人ワーグナーの面目躍起。
 東京オペラ・プロデュースの公演は実は初めて観ます。セットは予算のなさをアイデアで勝負していて、回り舞台の多様や照明の変化で安っぽく見せず、衣装も丁寧に作られていて、制作スタッフの舞台に対する愛情が伝わってくると、僕まで嬉しくなります。コーラスは25人位と小規模ですし、舞台のスケールも小さいけれど、新国オペラや藤原歌劇団、二期会の公演をグランド・オペラだとすれば、室内オペラと呼びたくなるような、小ぢんまりとしたアットホーム感が魅力のカンパニーでした。突出したスターで見せるのではなく、チームとしてのまとまりの良さが素敵です。本日ゲルノートに代役として登場した保坂真悟に対する空気も暖かいものを感じました。舞台のそこここでちょっとしたことだけれど応援されているのって客席にいてもちゃんとわかるんですよね。決して一流の公演というわけではないけれど、普段着のオペラ公演として僕は好きですね。またお邪魔したい団体でした。


2008年02月18日(月)19:00-21:00
「JTアートホール チェロアンサンブルII〜クラシック萌芽期の作品を集めて〜」@JTアートホール アフィニス

 全席指定 3000円 2列-2番 (パンフレット:無料)

 チェロ:
  菊地知也
  桑田歩
  斎藤千尋
  田中雅弘
  銅銀久弥
  長谷部一郎
  藤森亮一
  古川展生
  向山佳絵子
  山内俊輔
  山本裕康
  山本祐ノ介

 フンク:組曲ニ長調
  序奏(アダージョ)
  フーガ
  サラバンドと変奏
  アルマンド
  クーラント
  エア(アリア)
  サラバンド
  ジーグ
 ハイドン:チェロ協奏曲 第1番 ハ長調 Hob.VIIb-1
(休憩)
 クープラン:演奏会用小品
 バッハ:ブランデンブルク協奏曲 第6番 BWV.1051
 春畑セロリ:J.S.B.サラダ
(アンコール)
 春畑セロリ:J.S.B.サラダ〜G線上のアリア以降〜

 JTアートホールの室内楽シリーズです。プランナー各位の頑張りのおかげで「絶対外れず」いつ来ても大満足必至の宝石のようなコンサート。どのプログラムも真剣勝負だし、ちょっとした挑戦やお遊びがあるのだけれど、そのバランスが絶妙で、前衛的作品において行かれることもなく、さりとて、変わり映えしない定番プログラムでもなく、実に刺激的。
 のぼぉちゃん関係のチェロアンサンブルというと、都響のメンバーによるものもありますが、元々オケとして機能している都響のチェロ・アンサンブルはまとまりの良さで、(もちろんオケのメンバーもいますが)JTのチェロ・アンサンブルは「俺を聴け〜」という自己主張のぶつかり合いが魅力。まったく個性の違うアンサンブルです。
 まずはフンクの組曲でごあいさつ。このところ声楽系が続いていたので、室内楽ホールの楽器の響きがストレートに響く音響が新鮮。いかにも古典作品といった明快な響きなのですが、仕事帰りの一曲目がこれはちときつい。幸せな精神と疲れた肉体とのバランスがいま一つしっくりきません。が、次のチェロ協奏曲で一気に挽回。メトのガラやバレエ・フェスなんかで良くありますが、楽章ごとにソリスト交替という豪華版。一気に華やぎを増します。一楽章:桑田歩、二楽章:銅銀久弥、三楽章:のぼぉちゃんと、なんだか「ラ・トラヴィアータ」を幕ごとに違うソプラノで聴くような感じ。それぞれ個性が違うので、コンチェルトのまとまりとしてはどうかと勘ぐっているアナタ、心配無用です。オケではなく、チェロ・アンサンブルによる共演なので、さほど違和感はありません。元々、チェロという楽器はオケをバックにコンチェルトを弾くには音量がありませんし、ハイドンのコンチェルトの規模からいっても、今回のチェロ・アンサンブル版の方が僕は好きです。ソリストは張り切りすぎず、オケパートも抑えすぎず、バランスがよろしゅうございます。そして、ソリストに負けず劣らず、ヴァイオリンパートまで弾くオケパートの奏者もかなり難しそう。でもね、こんなこと書くとのぼぉちゃんあたりにぶっとばされそうですが、ハイドンのチェロコンチェルトって非常にピアニスティックなイメージがあるんです。三楽章のパッセージもチェロが張り切ってコロコロと弾いてますが、ピアノだったらもっと粒が際立って素敵じゃないかと(あ、書いちゃった!ごめんなさいっ、ぶたないでっ!!) ソロのお三方はそれぞれ個性を出しての快演でしたが、フィナーレ担当ののぼぉちゃんがやはり得なポジション。本人も「上手に弾けちゃった!」と気持ち良さそうにしているし、共演者には肩をポンポン叩かれてるし(僕だったら頭を良い子良い子しちゃう!)、10年ものあいだ、コンサート漬けの人にもかかわらず、毎回幸せ感を醸し出す人です。
 休憩を挟んで、前半ソロを弾かなかった人たちによる、小編成のアンサンブル二曲を挟み、トリは春畑セロリ:J.S.B.サラダ。これ、圧巻でした。「フックト・オン・クラシック」のような作りのバッハ・メドレーなのですが、単にメロディーをつなげるのではなく、二つの曲を合体させたり、リズムを崩したり、近代的和音やコード進行を付加してみたりと、自由自在にバッハで遊んでます。恐らく、一人で譜読みをしている段階では「なんだ、この曲?」だと思います。舞台での演奏を実に細かく計算していて、ラスベガスはベラッジオの噴水じゃないけれど、上手の奏者から音を重ねて行くのと、下手の奏者から音を重ねていくのをぶつけてみたり、何人かずつのチームが万華鏡のように組み合わせを変えて新しいチームに瞬時に入れ替わったり、各自バラバラの演奏が急に全員一緒のアンサンブルになったり、ここまでバッハで遊べ、そしてそれが実に楽しそうに舞台で再現されているなんて、作曲家冥利ではないでしょうか。通常、コンサートでは作曲家の手から演奏家の手に曲が委ねられるものですが、今回の曲に限り、演奏家が作曲家の掌の上で遊ばれている感じ。ピアノ・レスナーにはお馴染みのバッハのインベンションも、アンサンブルにしてみると構造がわかりやすいし、なんだか馴染みが出てきた〜。ものすご〜くバッハを研究しないとできない編曲でしょうが、観客には難しいことを考えさせずに、めくるめくキラキラな音楽を披露。素晴らしかったです。
 のぼぉちゃんは、ここ数年、音もフレージングもかなり変化し続けているのですが(ゆえに追っかけをやめられない)、時折乱暴になる癖は相変わらずですが、全体的に柔らかく、そしてさりげない演奏になりつつあります。テクニックが安定して「頑張り」が表面に出にくくなったというのもあるのでしょうが、ご本人様の表情も穏やかで「あ、今、良い状態やね」というのが嬉しい。一時期のキリキリ感が失せて、柔らかいんです。元々、先輩方に可愛がられて自由に泳がせてもらう時の演奏で本領発揮のタイプなので、特に今回は弾きやすかったとは思いますが、それはそれで、ファンとしては満足です。


2008年02月09日(土)18:30-21:20
東宝「ウェディング・シンガー」@日生劇場

 B席 4000円 2階-H列-29番 (パンフレット:1500円)

 演出:山田和也

 ロビー:井上芳雄
 ジュリア:上原多香子
 グレン:大澄賢也
 ホリー:樹里咲穂
 ジョージ:新納慎也
 アンジー:ちあきしん
 リンダ:徳垣友子
 ロージー:初風諄
 サミー:鈴木綜馬
 ドラマー・ジム:佐野真吾
 アンサンブル:奥山寛、小原和彦、KENTARO、坂元宏旬、笹木重人、佐々木誠、田之内清章、前恵治、安江友和、横沢健司
          家塚敦子、岩ア亜希子、大澤恵、樺島麻美、後藤藍、坂井朋子、史桜、中村紗耶、難波美妃、林希、柳橋さやか、やまぐちあきこ

 ベタで展開が読めてしまうストーリーの作品ですが、舞台も客席もノリノリ。まだ公演の折り返し地点を過ぎたばかりだというのに、スタンディング・オベイションで大盛り上がりです。日生劇場がこんなに笑いに包まれ、熱い拍手で包まれるなんて、とても幸せ!
 10日の間に舞台はさらに進化してました。井上芳雄の歌唱はさらにロック色が強くなり(オープニングはそれがゆえに歌詞が聞き取りにくくなったのと、喉を壊しやしないか心配)、それでいて、バラード調のナンバーや男声三重唱の場面ではしっかり音大発声にチェンジ。このあたりの切り替えが上手いです。何がって、音を外さないところ。そして、頑張って声を太く張り上げているけれど、この人の魅力は柔らかな声を活かしてソフトに優しく歌うところかなぁ。嬉しかったのは、遊べるメンバーに恵まれたおかげか、舞台で遊べるようになったこと。思うに、この「ウェディング・シンガー」という作品って宝塚歌劇っぽいんです。それも、若手主演のバウ公演。中心の二人はういういしいけれど、実はさほど盛り上げ役ではなく、上原多香子なんて「相手役の邪魔さえしなければOK」な娘役レベルの扱い。でも、今回は作品と配役ばピタリとはまり、井上芳雄は実に気持ち良さそうに主役として「持ち上げられてました」し、上原多香子もアイドルとして可愛く控え目に存在(僕としてはもっと上手な人を使ってほしいけれど、ま、この作品に限ればギリギリ及第点)。
 アンサンブルの面々はさらに絶好調。それぞれ確かな技術を持っていることに自信を持っているんでしょうね。自分が活躍するだけでなく、相手を立てることに屈託がないんです。スポットライトが当たった瞬間は、劇場を支配しようとエンジンフル回転ですが、スポットライトが他の役者に移動するとさりげなく脇に回るという見事さ。樹里咲穂なんて、ますますパワーアップ。前回はオペラグラスの故障により、顔の表情までわかりませんでしたが、目の大きさや眼力だけでものすごい情報を発信。歌もダンスも気がつけばセンターに位置していて、主役陣を率いて踊ってるし、フル回転。大澄賢也は鍛えられた肉体とダンステクニックを駆使して、実に細かな芝居をしてます。車が動く時の微妙な体の動きや、飛行機でリクライニングを倒した時の角度(腹筋力にぶらあぼ)、そして、殴られたり、突き飛ばされたりした際のスローモーションの動き、ダッサダサなダンスを格好良く見せてしまう技術などなど、決して前面に「俺が、俺が」と出るタイプではないのに、思わず目が行ってしまうんです。そして、初風諄も、フランスの女王様だとか、オーストリアの影の帝王だとか、ヘアフォード家の女主人だとか、偉い役が多いので、演出家に言われるがまま、懐メロビクスだの、下ネタトークだの(ちょっとした出番なのに拍手喝采)、ラップでシャウトする歌も素直に演じ、恐ろしいことに、瞬時にそれらが似合う顔になってしまうのが圧巻。彼女の凄いのは「頑張ってます」など微塵も感じさせず「私、若いころからコレが得意だったのよ」と思わせてしまうところ。失礼ながら、ラップが得意な年代とは思えないのですが、リズムにノリノリで、七色の声を使い分けて、演奏者や観客にもちょっかい出しまくりの名唱。名歌手とは名ラップスターでもありますね。そして、実にセンターが似合います。何しろ、フィナーレなんて、主役コンビが立ち位置1番だというのに、一人だけさりげなく後方で立ち位置0番をキープして歌い踊っているのですから、演出家の手腕と、カンパニーからの敬意が感じられるではありませんか! さらに、鈴木綜馬も、前回は気づきませんでしたが、ハイキックを含めたダンスを久しぶりに真剣に踊ってますっ、ヒッピー風の衣装やメイクも妙に似合っていて、時にオーバーに思えるお目目見開きも、オーバーなストーリーのこの作品では見事にフィット。いやはや、カンパニー全体でそれぞれが適材適所に収まっているなんて、実にすばらしいです。嫌な役者がいないというのが何よりも嬉しい。無理して収まっているいる人がいないとあって、誰もがのびのび。幸せいっぱい。
 この作品、もちろん一階席からの観劇も良いでしょうが、実は二階席からの観劇をお勧めします。というのも、舞台の横だの奥だのでの細かな芝居が多く、一階席からだと首がつかれるか、舞台前面の役者が邪魔になること必至ですもの。二階建てのセットやお立ち台も絶対二階席からの方が見栄え良いはず。照明も凝ってましたし。そして、何よりも、踊る指揮者:塩田明弘が張り切りまくり。拍手をあおったり、オーバーなアクションで指揮したり、ジャンプしたりは今までもおなじみでしたが、今回は場面の雰囲気に合わせて、気がつくとジャケットの色が変わってるんです。そして、大詰め場面になると、指揮するのを放り出して、役者と同じ振りで踊り狂ってるんです。こんなに踊れる指揮者をあたしゃ彼以外に知りません。それでいて、音楽は見事にコントロールしていて、オケの面々のはじけっぷりといい、高テクニックといい、お隣りの劇場のオケピにぜひ借り出していただきたい名演奏。踊りの合間にビシバシ指示出しまでしちゃうのですから恐れ入ります。もちろん、彼に対しても大拍手。
 あまりにメインが素晴らしくて書き忘れちゃうのですが、ジョージ:新納慎也(絶対、ボーイ・ジョーイの物まね!)のはまりっぷりといい、SMの女王様のリンダ、ティナ・ターナーやシンディ・ローパー、マイケル・ジャクソン、はたまたイメルダ・マルコスのそっくりさんたちのなりきりぶりが圧巻。実に良く研究してます。そういえば、1980年代を扱ったこの作品、ベスト・ヒットUSA世代には、実にツボの多い演出が施されていて、セリフの端々に登場する80年代ネタに思わずクスッと笑ってしまうこと多々。アンサンブルには若手もいらっしゃいますが、プリンシパルの面々は僕と似たような年代の面々。そりゃ、リアルタイムで経験している時代ですもの、ノリノリになりますわ。おまけにバブル全盛期ネタですし。また観たい、まだ観たいプロダクションです。たったの一か月公演なのがもったいなさすぎます。


2008年02月21日(木)19:00-22:00
梅田芸術劇場「ファントム」@青山劇場

 S席 12500円 1階-XC列-28番 (パンフレット:2000円)

 演出:鈴木勝秀(中村一徳)

 ファントム(エリック):大沢たかお(和央ようか→春野寿美礼)
 クリスティーン・ダエー:徳永えり(花總まり→桜乃彩音)
 フィリップ・シャンドン伯爵:パク・トンハ(安蘭けい→真飛聖)
 カルロッタ:大西ユカリ(出雲綾→出雲綾)
 アラン・ショレー:HISATO(鈴鹿照→夏美よう)
 ルドゥ警部:中村まこと(寿つかさ→大伴れいか)
 ジャン・クロード:永島克(美郷真也→高翔みず希)
 文化大臣:コング桑田(夢大輝→悠真倫)
 ゲラール・キャリエール:伊藤ヨタロウ(樹里咲穂→彩吹真央)
 ベラドーヴァ(映像出演):姿月あさと(音乃いづみ→花咲りりか)
 ※( )内は2004年7〜8月宙組公演→2006年8〜10月花組公演の時の配役
 アンサンブル:阿部よしつぐ、角川裕明、金澤博、田ア悠人、田村雄一 、中井智彦
          荒木里佳、稲田みづ紀、浦壁多恵、杵鞭麻衣、金城尚美、山本悠記子

 いよいよ明日のマチネが千秋楽となります。そして、ようやくパク・トンハのシャンドン伯爵を鑑賞。が、印象残らない〜。目立つシーンも見せ場もほとんどない役ですし、Wキャストのルカス・ペルマンに合わせ過ぎたのか、台本も片言日本語だし、歌詞も何やら怪しいし。そして、パク・トンハの日本語は韓国人俳優の中ではかなり自然な方だとは思うけれど、お手本がいなかったせいか、はたまたルカスのセリフ回しでイメージができてしまったのか……何言ってるのか分からない。。。今回のカンパニーでは唯一ミュージカル慣れしている俳優として期待していたのですが。
 ということで、全公演が終了しちゃったので、言いたいこと言いますが「素人さんたちによる発表会」というのが今回の感想です。これに尽きます。誰一人として歌えません、芝居もできない人が多すぎます。そして何よりも、パリのオペラ座のお話だということを忘れている人が大多数。大沢たかお人気で大入りにはなりましたが、ミュージカル・ファンには歯がゆい公演であり、また普段ミュージカルを見ない方に「ミュージカルってこんなもんなのね」と誤解を受けてしまうであろう悔しい公演でもありました。
 素人さんの公演なので、余裕がないです。特にヒロインがそんな状態なのでお芝居ぶち壊し。相手の芝居を受けるなんて上級テクはありません。そして、困ったことに「自分は芝居している」と勘違いしているのか、やたらとテンションだけは高く、収集のつかない状態に。今までは自分で自分を騙して「このプロダクションだって観るべきところはあるはず」と一生懸命見どころを探してみましたが、もう限界。成長のないクリスティーンの芝居は見る気にもなれず。エリックのこともシャンドン伯爵のことも、いつ好きになったのか、そもそも、彼女は二人のことを好きになったことすらあるのだろうか?という疑問がわきあがってしまうんです。彼女の芝居は自分だけ勝手に盛り上がって、勝手に叫んでしまうので、観客はおいてきぼり。正直、クリスティーンが舞台に登場しない方がすっきりまとまったのではないかと思ってます。プリマとして開花するシンデレラ・ストーリーではないし、ファントムもしくはシャンドン伯爵との恋はどちらも中途半端だし、もちろん歌唱力や細かな芝居力は皆無なので、運命の女としてのおいしいポジションが全く活きないまま。千秋楽まで、こんなに成長しない人も珍しいのではないでしょうか。。。
 そして、関西の笑いをパリのお話に持ってくるのはいい加減にして欲しいです。ルドゥ警部:中村まことの笑いにエスプリも何もなく、浅草の香りが漂ってしまうのにはホトホト参りました。舞台の端でカルロッタたちに事情徴収する際の、本人は面白がっているでしょうが、ひたすら下品な、そして吉本調のコントをされても、舞台の雰囲気をぶち壊すだけ。カルロッタやショレーはまっすぐ立てない、まともに歩けない、芝居心がないので、感情をこめて話せば話すほどこちらは笑いをこらえるのに必死。同じ関西のプロダクションでも、宝塚歌劇はちゃんとパリの話になっていたというのに、梅芸のプロダクションになると、こうも下品になるものかと呆然です。舞台に出来はカンパニーの面々が一番身にしみて感じているものがあるでしょうが、やけを起こしちゃいけませぬ。アンサンブルも、プリンシパルを立てる気にもならないのか、暴走。集団で舞台を盛り上げるシーンなんてあったやろか?
 それもこれも、こんなキャスティングを許可したプロデューサーの責任大ですが、材料を活かしきれなかった演出家にも激怒なんです。ミュージカルの醍醐味である「音楽が芝居を運ぶ」ことを放棄して、肝心な場面になると音楽がなくなり、セリフ劇へと変換。出演者を考えれば、まともに音楽で盛り上げるのは無理ではあるものの、非常に居心地の悪い思いをしております。群衆処理も含めて、今回の演出家は大劇場芝居の演出はまだ無理なのかと。芝居の主幹ではなく、枝葉ばかりいじくってみてもダメなものはダメです。そして、自分からジョセフ・ブケーに仮面を外して素顔を見せておきながら「素顔を見られたんだぞ」と理不尽な事を言って殺人に走るファントム、必要以上にファントムに対抗心を燃やすシャンドン伯爵、クリスティーンとは似ても似つかない声のベラ・ドーヴァ(姿月あさとの歌も映像も???でしたが)、クビになってもなぜか劇場内に居座るキャリエールなど、観客を納得させる事は全くなし。
 ダメついでに、オケもよろしくなかったです。どの曲も一本調子で、情感なし、盛り上げなし。おまけに、舞台奥に控えていたせいか、録音演奏みたいなこもった音で、せっかくの生演奏にもかかわらず、音が客席に迫ってこないんです。ま、こういった、オケの扱い一つをとっても、演出家の音楽に対する意識の低さ、そして、音楽が命であるミュージカルへの愛情のなさに「きぃ〜〜〜」とヒステリー起こしそうに。作品は素敵なんです。ロイド・ウェバー版と違い、一度聞けば覚えられるメロディ(及び、音楽のレッスンを受けている者にはとっつき安いバリエーション)だし。本来はエリックvsシャンドン伯爵、クリスティーンvs(今回は歌ってますけど)ベラ・ドーヴァ、キャリエールvsルドゥ警部など、光と影ではないけれど、相反する者たちが相手との対称性を強調することにより、芝居に重みや感動が生まれるようにできている台本なんですけどっ。
 ま、これがどこかの大学のミュージカルサークル公演なら文句もありませぬ。」頑張ったね〜」でおしまい。でも、12500円も入場料を取る公演としてはあんまりではありませんか! こんな歌や芝居を披露されちゃ、逆にこちらがお金をいただきたい位。素人さんの自己満足発表会に付き合わされる身にもなってほしいもんです。


2008年02月24日(日)14:00-18:45
二期会「ワーグナー:ワルキューレ」@東京文化会館

 D席 5000円 3階-L4列-6番 (パンフレット:1000円)

 指揮:飯守泰次郎
 演出:ジョエル・ローウェルス
 東京フィルハーモニー交響楽団

 ジークムント:大野徹也
 フンディング:小鉄和広
 ヴォータン:泉良平
 ジークリンデ:増田のり子
 ブリュンヒルデ:桑田葉子
 フリッカ:増田弥生(押見朋子の代役)
 ゲルヒルデ:林志保
 オルトリンデ:星野尚子
 ヴァルトラウテ:三本久美子
 シュヴェルトライテ:北澤幸
 ヘルムヴィーゲ:吉村美樹
 ジークルーネ:浪川佳代
 グリムゲルデ:田辺いづみ
 ロスヴァイセ:平舘直子
 ローゲ:桜観

 日本人キャストによるワーグナー。正直、不完全燃焼でした。何がって、悔しいけれど、人種による肉体能力の限界を見せつけられた感じです。外来歌手の場合、ppからffまで楽々と劇場空間も自分の肉体の一部であるかのように鳴らしてくれるのですが、日本人歌手だと絶唱しているのに全然声が届かないというもどかしさ。これは体の大きさから恐らく声帯の作り、そしてスタミナを含めどう逆立ちしても叶わないんだろうな、という絶望的な気持ちにすらなります。東京文化は音響が良いので、声がストレートにビンビン飛んでくるのですが、今日はオケの厚みを突き抜けることなく、また、ドラマティックにと力んだ挙句力尽きてしまった、そんな印象を強く持ちました。ここは日本人のワーグナーと割り切って、リリカルな声を活かした歌唱で魅了してくれたのはジークリンデ:増田のり子。フンディング:小鉄和広もここぞというシーンで声を張り上げるものの、あとは上手にコントロールしていて、聞いていて耳が楽。が、他キャストはおしなべて無理しすぎ。「頑張ってるね」というねぎらいはあれど「素晴らしかったね」というには余裕がありません。そして、ジークムント:大野徹也はもはやワーグナーを歌う力はありません。声が出ない過去の名歌手。そして、ヴォータン:泉良平は逆に若過ぎてまだ役を消化していない感じ。同じ声が出ないのでも、役の大きさに負けてしまった感じ。女戦士たちは、アンサンブルで勝負といったところでしょうか。ドラマティックな歌唱はもとからあきらめ、ハーモニーで聴かせてくれ、これはこれで良かったです。ドラマティックが無理ならば、代わりにリリカルで勝負するという姿勢が僕は好きです。もちろん、役にあった歌手が揃うのが一番ですが、そうでない場合はせめて「俺の(私の)歌をききやがれっ」と変化球で勝負できる歌手を揃えていただければと思います。
 さて、ワーグナーの神話ですが、日本神話に出てくる神様たちとは全然違います。正直に言いまして、ダメ男、ダメ女が神様の条件ではないかと思う位。そもそも、一番威張っているヴォータンがボスとしての品位に欠けるのが「ニーベルングの指環」のトラブルの発端なのです。もっともらしいことを言って威張っているくせに、とにかく女癖が悪すぎます。正妻がいるにもかかわらず、妾はいるわ、現地妻はいるわで、そりゃ家庭内騒動が起きない方が無理ってもんです。正妻のフリッカとしては、夫の浮気で外に出来たジークムントやジークリンデを夫が可愛がればそりゃムカつくでしょうよ。ましてや、ジークムントに英雄の剣を与えたなどとなれば、本家の面目丸潰れ。「あの子に加勢するのはやめて頂戴!」となりますわ。でもって、女好きな人に限って、本妻をないがしろにするもので、嘘つくわ、逃げ回るわ、だますわで、ホント馬鹿っ夫=ヴォータン。そして、ヴォータンが別の浮気相手(エルダ)に産ませたのがブリュンヒルデ。「お前のおっかさんは最も知性がある」とさんざん言われていりゃ「あたしにゃ知性はないけど」と歌いたくなるのももっとも。ま、おっかさんに知性があってもおっとさんがヴォータンですから大したことありますまい。このブリュンヒルデがまた困ったちゃんで、フリッカのことを母親と認めていないから困ったもの。ヴォータンに対して「あなたの妻が!」と言っちゃうんですから。ま、フリッカの継子たちに対する言動からすれば、母親として認めたくないのもごもっとも。そして、妾の子同士、力になろうとするのも自然な流れかもしれません。よって、ブリュンヒルデがフリッカを毛嫌いし、ジークリンデを助けようとするのも納得。でも、助けるは良いけれど、勝手に子供の名前をジークフリートと決めちゃうのはどうよ?(蛇足ながら、将来この子とおば&甥として結婚しちゃうんですよね)。あ、ちょっと待って、ジークフリートはジークリンデとジークムントの子だったぁ。双子の兄妹の子が、そのおばと結婚。ったく、色欲まみれのヴォータンの血をひくだけのことがあります。
 とまぁ、今の日本ならば犯罪者として逮捕されかねないヴォータンですが、困ったちゃんの王道とでもいいましょうか、人の話を聞かない&思い通りにならないと怒鳴りまくるという、まさに午後のワイドショーがぴったりのお方。なして、この方が神々の長なのか、こんなダメんずキャラを主役にしたてたのか、ワーグナー先生の文学的センスをかなり疑っております。正直、僕は「ニーベルングの指勘」はひとつも感情移入できないんです。もしかしたら、ワイドショーの方が面白いもの。ま、そんなダメダメな神たちが自業自得で黄昏を迎えてくれるので、最後にやっと落ち着くのと、義理人情と良識との間で神々が悩む姿が意外と日本人ぽい(というか歌舞伎の世界?)なのが人気の秘密かも。歌舞伎として通し上演したら面白い作品かもしれませんね。仕掛けもあれこれ使えるし。
 で、義理人情ですが、せっかくフリッカが悪役となって、夫に正しい道を説いているのに、ツーンとそっぽ向いてて「アナタ、私の目を見て返事しなさいっ」だなんて、情けない〜。そして、継子とはいえ、その直後にブリュンヒルデからも「私の目を見て!」と責められるんですからねぇ。。。本来はこの相容れないような中からも「家族の絆」が見えて「妻に叱られても妾の子に思いをはせる父親」「父親の本位を汲み取って、父親に罰せられると知りながらも父のためにつくす浮気相手の子」という、お涙頂戴の感動があるはずなのですが。はて、今回は血のつながりを感じることなく、気づけば終演。せっかくの涙ちょちょぎれの場面をサラリと流してくれちゃったのは演出:ジョエル・ローウェルス。このあたりが日本人との感性の違いかもしれませんね。大芝居で見得を切るのが似合う作品で、細かな芸術性を狙ってしまったラストは拍子抜け。ローゲ:桜観の炎のダンスはダンスとしては面白かったけれど、ここはベジャールの火の鳥じゃないけれど、いっそのこと100名のバレエ団でも登場させるべきではないでしょうか。
 今、ふと思ったのですが「ニーベルングの指環」の演出は「ベルサイユのばら」や「義経千本桜(この恋は雲の果てまで)」などで、大劇場ならではのケレンとスペクタクルで見せきった植田紳爾の演出だったら、世界に誇る素晴らしいプロダクションが生まれると思います。ダイナミックな舞台転換に、小さなことは気にせず、メインの場面を盛り上げるだけ盛り上げてくれる植田歌舞伎の世界。主役はひたすら映えて、脇役も盛り上げ役として活躍、舞台機構使い切っての究極の世界。亜門さんをオペラの世界に引っ張り出した位ですもの、ここはぜひ植田紳爾にリングの演出を!! 二期会のプロデューサーの方、ぜひぜひご検討ください。絶対大当たりしますって。


2008年02月27日(火)11:30-13:15
浜離宮ランチタイムコンサート 古川展生「チェロリサイタル」@浜離宮朝日ホール

 全席指定 2800円 1階-7列-3番 (パンフレット:無料)

 チェロ:古川展生
 ピアノ:坂野伊都子

 フランクール:チェロ・ソナタより
 フォーレ:シチリエンヌ
 フォーレ:エレジー
 フォーレ:夢のあとに
 ドビュッシー:チェロ・ソナタ
(休憩)
 ポッパー:ハンガリー狂詩曲
 サン=サーンス:白鳥
 サン=サーンス:アヴェ・マリア
 カッチーニ:アヴェ・マリア
 カサド:親愛なる言葉
 ピアソラ:ブエノスアイレスの冬
 ピアソラ:タンティ・アンニ・プリマ
 ピアソラ:リベルタンゴ
(アンコール)
 アメイジンググレイス
 バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番〜プレリュード〜

 半年のシリーズが追加公演も含めて完売という朝日新聞社主催のランチタイムコンサート。のぼぉちゃんじゃないけれど「平日の午前中からみなさん仕事はどうしてるんでしょ?」な状況です。男性客、予想以上に多いんですから! 時間的に東京文化や芸大奏楽堂でのコンサートのような1時間モノだと思っていたら、休憩あり、アンコールありのフルサイズのコンサート! 結構ウレシイ♪
 のぼぉちゃんは黒パンツに白シャツというシンプルかつカジュアルで、伊都子さんはトルコ石のような爽やかかつヴィヴィッドな色合いの肩出しドレスで登場。前半はフランス物特集。前々から、のぼぉちゃんのチェロはフランス物が一番似合うと思ってるんです。淡い色彩がきらめく感じって彼のチェロそのものじゃないですか? 古典から近代にいたるまで、音色の多彩さや、フレージングの洒落っ気が何とも垢ぬけていて大好き。次のレコーディングはぜひフランス物で一枚作ってほしいです(と言い続けている間に何枚リリースされてることやら)。丁寧に楽曲に向かい合ってくれたおかげで、フランス音楽の進化(というとオーバーだけど)を体験でき、非常に面白いプログラムです。フォーレはオケ用、チェロ用、声楽用と三種別々の個性の楽曲が並びましたが、いかに編成に合わせて書き分けられているかも面白いポイント。良く、チェロ=バリトンと表現されますが、のぼぉちゃんのチェロってメゾ・ソプラノのような印象を受けるんですよねぇ。結構細かな動き得意だし、力技もこなしちゃうし。
 前半は「のぼぉちゃん向けの曲」の連発だったのに対し、休憩を挟んでの後半は「のぼぉちゃんが弾き込んだ曲」の連発。いえ、プロですから、前半もちゃんと「聴かせる」状態なんですけれど、後半は「俺の音楽を聴け〜」とばかりに、超絶技巧も手慣れた感じでポロリンと披露。ちょっとしたキズなんて気にせず、迷いなくグイグイ弾き進むさまは爽快感タップリ。ちなみに、ピアソラでは「ブエノスアイレスの冬が一番好き」とのことでしたが、僕は「タンティ・アンニ・プリマ」が好きなんです。大人しい曲なんだけれど、幸福感いっぱいで何とも良い気分。そして、のぼぉちゃんのチェロってルンルン感があるので、聴き終った際にゴキゲンになれるんです。暗い影がないと言いましょうか、いつだってHAPPY気分をくれるので大好き!
 大好きといえば、伊都子さんのピアノも相変わらず絶品。チェロに合わせて多彩なp〜pppを披露してくれるのですが、押さえた音量の中での色彩感や表現力に「ピアノって最大でもこの音量だったっけ」という錯覚に陥る程。時にチェロに寄り添い、時に自己主張をする阿吽の呼吸がのぼぉちゃんとはぴったり。そして、のぼぉちゃんのハッピー・チェロの相棒として、キラキラしたピアニズムは何ともフィット。もちろん、これだけでも素敵なのですが、僕が彼女のピアノをなぜ好きかというと「ここは私の出番よぉ〜」と、超ドラマティックな表現を繰り出してくれること。抑えていた感情が抑えきれずに爆発する際のエネルギー、力感に背中がゾクゾクするような感動を覚えます。それでいて、自分だけ目立つのではなく、一瞬にしてのぼぉちゃんの立て役に戻る潔さ。伴走者として最高。
 そいういえば、前回の浜離宮朝日ホールのリサイタルものぼぉちゃん&伊都子さんとのコンビでしたが、その際の譜メクリストをご記憶でしょうか。朝日新聞の重役でたまたま伊都子さんのファンです、といった風情のおじ様が登場したは良いけれど、譜面をめくるべきところでめくらず、ぼーっとイスに座りっきり。最初は睨みつけていた伊都子さんも途中でブチ切れたかのように自分で猛烈な勢いで楽譜をめくり始めたほど。それ以来、楽譜を読む気力すら失ったのか、舞台には登場するものの、目は楽譜を追わず、呆然としていたおじ様。今回は大丈夫かなぁ、と心配(&期待もチョッピリ)していたのですが、伊都子さんのお弟子さんのような、若い男の子が登場。黙々と楽譜をめくるだけでなく、演奏終了後にのぼぉちゃん&伊都子さんがご挨拶する段になると、さりげなくピアノの影に身を隠すというできた子。見た目は高校生みたいで、スーツがシックリこないのに、仕事はプロフェッショナルでした。ぶらぁぼ。