観劇日記〜2008年08月〜
12日(火) 18:30 フジテレビ
「SHOUT!」初日
博品館劇場
14日(木) 18:15 歌舞伎座百二十年 八月納涼大歌舞伎 第三部
「新歌舞伎十八番の内 紅葉狩」「野田版 愛陀姫」
歌舞伎座
16日(土) 12:00 松竹
「幕末純情伝 -龍馬を斬った女- 」
新橋演舞場
19日(火) 18:15 東宝
「ミス・サイゴン」
帝国劇場
23日(土) 15:30 宝塚歌劇団星組
「THE SCARLET PIMPERNEL(スカーレット ピンパーネル)」
東京宝塚劇場
24日(日) 21:30 映画「SEX AND THE CITY」 TOHOシネマズ市川コルトンプラザ スクリーン7
31日(日) 13:00 来日カンパニー
「Swing!」千秋楽
オーチャードホール


2008年08月12日(火)18:30-20:20
フジテレビ「SHOUT!」初日@博品館劇場

 S席 8500円 L列-6番 (パンフレット:2000円)

 演出:菅野こうめい

 ブルー:紫吹淳
 オレンジ:樹里咲穂
 グリーン:岡千絵
 レッド:入江加奈子
 イエロー:森口博子

 60年代を描いたモッズ・ミュージカルの登場です。役名があり、それぞれのキャラクターは確率しているものの、それぞれの一人芝居が入れ替わり立ち替わりのノンストップにぶっ飛ばします。ソロ・パートが終わると同時にアンサンブルに早変わりとなるので、全員が主役で全員が出ずっぱり。常に歌うか踊るか芝居するかで、完成するまでさぞかしハードだったことと推測いたします。が、よくぞ揃えた!の芸達者な五人組は「こんなの朝飯前よ」とばかりに余裕綽綽で観客を魅了するのですから大したもんです。アメリカのコメディ・ドラマみたいなノリなので、リピートしなくては、という気分にはならないけれど、60年代の約10年という短期間で、女性がいかに変化し、自己主張が行えるようになったのか、そして、愛の形が一つの決まった型ではなく、それぞれの幸せの形を主張できるようになったのか、ひいては、言われるままの人生ではなく、自分で切り開く人生(それには苦味も伴いますが)を歩く勇気を得るまでの、ドラマティックな変化のミュージカルです。客席は、モッズ世代のファッションに度肝を抜かれ、クラシカルな思想の女性たちに最初は笑いながらも、さてはて、自分で切り開かなければならない人生というものははたして幸せだろうか、と、あれこれ考えさせられるのでありました。
 舞台はギャツビーのキムタクか、ソフトバンクのキャメロンが登場しそうな、POPでヴィヴィッドで、まるでアメリカのキャンディ・ストアみたいな色合い。役名通りに派手な色の衣装で登場する五人衆は60年代のファッション雑誌から飛び出してきたかのようなフェミニンでお洒落。オリジナル版(って、写真でしか知らないけれど)に比べ、スタイルが良いので、見栄えがすることすること。ポージング一つでファッショナブルです。
 ブルー:紫吹淳はまるで彼女のための書き下ろしのよう。美容にかける執念のダンスナンバーや、無表情に低音で「おちんちん」を繰り返すマリファナのシーン、長い手足をさらけ出したらセクシーどころか剣闘士みたいになっちゃったり、ドキドキも半分ですが、スタイルの良さやサイボーグのような芸風がピタリとはまり、ダンスで鍛えた動きの美しさと相まって、ためいきモノの美しさ。そして、五人が並列で同じようなポーズを取っても、ちゃんと「主役!」となるのはさすが元・トップスター。そして、どんなきわどい台詞や芝居であっても、下品にならないのは奇跡的。清く・正しく・美しくの教えは抜けないものですね。
 オレンジ:樹里咲穂は実力で勝負。クラシックからゴスペル調まで、どの曲もそれらしく歌い分ける歌唱力は圧巻です。元・男役の癖がなく、実に豊かなソプラノを響かせますし、リズム感やパンチの効いた地声歌も健在。博品館は舞台が狭いのでダンス場面はさほどないのですが、その代わり、舞台が近いとあって、細かな芝居まで良く見えるのが嬉しい空間。そんな空間をうまく利用しての客いじりはお茶の子さいさい。元トップスターと共演とはいえ、食うか食われるかの外部の舞台ですので、手加減なし、容赦なし。コメディエンヌとして脂の乗った名舞台を見せてくれました。客席もノリノリで、笑いあり手拍子あり、ショーストップあり、スタンディングあり。もちろん、五人の力の結集ですが、客席を乗せる上手さは樹里咲穂が別格。舞台中央での華を誇った直後に、存在感を消してアンサンブルとなれちゃうのは、この人ならでは。
 そんな元タカラジェンヌを相手に、色気場面を受け持ったのがグリーン:岡千絵。声だけによる性交表現や、男性器を求めて身悶えしたりとハードコア場面を一手に引き受けてました。でも、セクシーだし、かなりな事を口走っているにもかかわらず、キュートで可愛らしいんです。ダンスや動きの美しさで、猥雑なはずの動きが芸術になっちゃったかのようなそんな感じ。
 レッド:入江加奈子はすっかりお笑い担当。長身ダンサーが控えているせいか、舞台映えについてはとっても不利なのですが、ブスでさえない女の子役を実に楽しそうに演じてました。自分を落として笑いを取る呼吸が素晴らしく、客席全体に向かって台詞を言っている合間に、真下の観客にだけ向かって一言二言挟んでみたり、清純なイメージでの台詞と本音のダークな台詞をリンクさせてみたりと、かなりやりたい放題(な台本、なんだと思います)。台詞のスピードやリズム、声の出し方など、もの凄い技術を使っているのに「頑張ってる」だとか「努力しました」という空気が皆無なのが嬉しい。初日ではあるけれど、一期一会なのが舞台。この完成度が嬉しい。
 イエロー:森口博子はアイドルならではの、登場するだけで舞台がパッとあかるくなるのが気持ち良く、POPな空気を醸し出してくれました。思うに、この五人組、それぞれ持ち味が異なり、それをちゃんと理解し、自分のなすべき仕事をしっかりこなしてるんですよね。自分が出ている場面の色を変える、というのはどの舞台でもあることですが、出ずっぱりの舞台で、自分を前面に出したり、逆に自分を消してみたり、瞬時にあれこれ切り替えが行われるのは、まるで室内楽での音の掛け合いみたいで、アンサンブルとしての妙を堪能させていただきました。
 それにしても、キャラクターこそ違えども、健康的で、エネルギッシュな女性五人衆、とっても強力です。男性が入り込む隙間なんてありゃしません(そういえば、バンドも全員女性でした!)。まさに、女性の女性による女性の応援歌なミュージカル。初日とあって、関係者らしき男性が多かったけれど、客席の応援ぶりも賑やかで「今日、初日ですよね?」な息のあった応援ぶり。手拍子はともかく、掛け合いで歌っちゃったり、立ち上がって踊っちゃったり、凄かった!! 舞台がノリノリ、客席もノリノリで、観終わった後に「気持ち良かった〜」なミュージカルなのであります。メッセージとしては、あれこれ考えさせられるものの、小さな悩みなんて押し出してしまうエネルギーがありました。満足♪


2008年08月14日(木)観劇中止
歌舞伎座百二十年 八月納涼大歌舞伎 第三部
「新歌舞伎十八番の内 紅葉狩」「野田版 愛陀姫」@歌舞伎座

 2等席 8400円 2階-9列-30番

 演出:野田秀樹(愛陀姫)

 オペラ「アイーダ」の歌舞伎化ということで、とっても楽しみにしていた公演です。一幕見席だと観られない恐れがあったので、奮発して2等席を購入したのですが、急遽、引越となりまして、当初はそれでも夕方から劇場へ行く予定だったのですが、業者の作業の遅れなども相まって、泣く泣く観劇を断念。こんなんだったら、誰かにチケットを差し上げるんでした。あぁ!!!


2008年08月16日(土)途中退席
松竹「幕末純情伝 -龍馬を斬った女- 」@新橋演舞場

 三階席 3500円 3階-1列-28番 (パンフレット:1200円)

 演出:つかこうへい

 沖田総司:石原さとみ
 坂本龍馬:真琴つばさ
 高杉晋作:吉沢悠
 西郷隆盛:舘形比呂一
 嘉代:宇津宮雅代
 鬼畜丸:橋大五郎
 土方歳三:矢部太郎
 芦沢鴨・岩倉具視:武田嘉晴
 東宮:赤塚篤紀
 島崎藤村:岩崎雄一
 新撰組隊士トメ:とめ貴志
 中村半次郎:小川岳男
 グラント:トロイ
 勝海舟:若林ケン
 徳川慶喜:早坂実
 近藤勇:山崎銀之丞
 秋月兼久:春田純一

   沖田総司や坂本龍馬というと「誠の群像」や「猛き黄金の国」、「維新回天・竜馬伝」など、ここ近年でも結構観ている主人公たちです。和物独特の間や、台詞の合間の思いのやりとりなど「あぁ、日本人だなぁ」と思う観劇の数々。が、今回は同じ題材を扱いながらも全然色合いが違いました。新橋演舞場の公演だというのに、盆は回らず、セリは動かず、おまけに劇場の奥行きの半分も使ってなく、何とも勿体ない、そして期待と違う方向の演出でした。そういえば、つかこうへていません。そういえば、つかこうへい演出作品を観るのは今回が初めてかも。そして、残念ながら……拒絶反応を起こしてしまいました。
 ノドにやたらと力を入れた、耳触りの悪い、こちらのノドまで痛くなってくるような発声って苦手なんです。オペラでも、ミュージカルでも、そういえば「楽な発声をしてない人」って苦手なのですが、セリフ劇においてもこれは変わらず。生理的なものなので理屈抜きにしてとっても辛く、機関銃のような余韻のない台詞が飛び交う中、「早く休憩にならないかなぁ」とそればかりを思っていました。
 明治維新前後の時代劇のはずが、何やら第二次世界大戦やら現在の話やらも同時進行していて、全く知識のないフィクションの話だと気にならないでしょうが、なまじ聞きかじりの知識があるだけに「はて?何言い出してるの??」という違和感が先に立ってしまうのに、自分の頭の固さが原因でありながら、お芝居に入り込めない原因になっていて、つか作品でも「銀ちゃんの恋」では感じなかった居心地の悪さがありました。
 そして、台本が練られているコメディは大好きなんですが、いわゆるお笑い系の笑いを苦手とする僕には、理性では「もっと素直に楽しまなきゃ」と焦りまくるものの、どうしても内輪受け的なお笑いはダメなんです。せめて、沖田&坂本の芝居をガッチリ観られれば違う感想になったんでしょうけど(石原さとみは切羽詰まった雰囲気と透明感が、真琴つばさは舞台上での自然な呼吸感が魅力でした)。主役を差し置いて、脇役の面々が「俺が、俺が」と前面に出てくるのって「芸で場面をさらっちゃいました」ならばともかく、騒がしさばかり売りの面々だととっても苦しい。……と、とっても観劇ジャンルが偏っている者の感想ですね。途中で席に穴をあけちゃってごめんなさい。


2008年08月19日(火)18:15-21:40
東宝「ミス・サイゴン」@帝国劇場

 B席 4000円 2階-L列-26番 (パンフレット:1500円)
 演出:ニコラス・ハイトナー

 エンジニア:橋本さとし
 キム:新妻聖子
 クリス:藤岡正明
 ジョン:坂元健児
 エレン:鈴木ほのか
 トゥイ:泉見洋平
 ジジ:菅谷真理恵
 タム:首藤勇星

 2004年公演の段階ではまだ歌の一部がおぼつかなかった橋本さとしも、ミュージカルの舞台をいくつもこなしたせいか、堂々とした歌いっぷり。決して上手くはないんだけれど、正攻法の歌唱なので、声がクリアに響いて耳ざわりが良いんです。そして、お芝居はますます自由自在に舞台上で暴れてます。先月の筧エンジニアがギラギラしてたとすれば、今月の橋本エンジニアはチャラチャラしてます。役作りは違えども、どちらも「あり」で面白いもんですね。橋本さとしは、タッパはあるし、動きはシャープで大きく、観客へのサービス精神も旺盛なので、舞台での存在感がタップリです。やはり、役者は身長があると得ですね。腕を振り下ろすのも、上着を着るのも格好良いです。そして、お笑いについては、客席をちょこちょこといじっても、瞬時に舞台上の人物に戻ってくれる、引き際を見極めるセンスが洒落てるのも素晴らしいっ。ついつい客席いじりすぎたり、内輪受けになる人って多いでしょ。なんとも貴重なバランス感覚の持ち主ですわ。
 エンジニア:橋本さとしが「動」の魅力を振りまくのに対抗する魅力を振りまいたのが、エレン:鈴木ほのか。正直、エレン役を演じるにはトウが立ってます。クリス:藤岡正明と夫婦だなんて無理がありすぎ。初演時に比べ、芝居の包容力が増えた分、母親のような大きな愛でクリスを包む、そんな印象すら受けました。でも、セリフのない部分でのお芝居が抜群に細かくなっていて、セリフと裏腹にとっても傷ついている女心を強烈にアピールし、出番がかなり少なく、その歌声も全盛期に比べかなり衰えを感じるにも関わらず、強いインパクトを残したのでした。今までどちらかというと「上手いんだろうけれど印象の残らない女優さん」という方だっただけに、ここ数年での急激な芸の深まりに「役者の仕事にゴールはない」ことを見せつけられ、あらためてシアターゴーアーの楽しさを再認識した次第。
 そんなわけで、キム:新妻聖子もクリス:藤岡正明もジョン:坂元健児も、技術的には初演キャスト以上ですし、かなり熱演していたのですが、味の面ではまだまだ「若手」です。でも、だからこそ、今後の舞台もとっても楽しみだったりします。
 でも、一番進化してほしいのはオーケストラなんです。帝劇の無響空間という音響の悪さはさておき、スコアだと「盛り上がれ〜」とクレッシェンドしていようと、楽器の重なりで厚みを増そうと、常に一定の音圧に調整されてしまうため、ボリューム感は大きく変わるわ、浮かび上がるべき音が飛んでこないわで、興ざめも甚だしい。おまけに、たたみかけるようなクレッシェンドやアッチェルランドなんて無視して、ひたすらノッペラボウな伴奏になり下がっているので、熱演が白々しくなってしまう役者が気の毒で気の毒でたまらなくなります。せめて、もう少し、情感ある、もしくは盛り上げ気質の演奏家が揃っていたら、と残念でなりません。でも、先日ご一緒した某マエストロ情報によると、東宝の音響スタッフはスコアではなく、台本見て音響卓を操作(それも調整ではなくほとんどボリューム調節)という実態を聞かされると、あまりのひどさに涙が出てきてしまいます。
 状況を知らないでチケットを押さえていたのですが、ファン感謝デーということで、終演後に約30分のトークショーがつきました。エンジニア:橋本さとし、ジョン:坂元健児、トゥイ:泉見洋平のトリオによる、楽しいトークショーがありました。失敗談や、今までの公演との変更点といったおなじみの内容に加え、本公演だと客いじりの引き際のセンスを見せた橋本さとしも、このコーナーに関しては暴走ノンストップ。泉見洋平が冷静に「橋本さんへの質問です」と観客からの質問状を読み始めて強引に進行させた位。会社のだらだらした会議でありがちなシチュエーションwww フィナーレは、橋本キム&坂元クリスという幻のキャストによる「サン&ムーン」の披露。エンジニアの衣装で、ミス・サイゴンの冠だけかぶって、男声でキムを演じる橋本さとし……あまりの怖さに涙流して笑っちゃいました。坂元クリスが小さいので、リフトはもちろんキムがクリスを振りまわすのはお約束!?
 あ、トゥイ:泉見洋平ですが、相変わらず壊れっぷりが素敵に怖いです。目はガバッと見開くし、断末魔のような叫び声もあげちゃうし。キムじゃないけれど、悪夢に出てきそう。でもって、そんな状態でも、セリフや歌詞がクリアなので、キムを挟んでのクリスとトゥイの歌のかけあいが聴き応えありました。(どーでも良いけれ「サイゴン」と「レミゼ」はかなりキャストがかぶるのですが、本日の出演者でいうと、二人のマリウスがエポニーヌの愛を争うなんてクールなシチュエーション。でもって、最後にクリスがコゼットを選び、エポニーヌは彼の腕の中で息絶える。。。)


2008年08月23日(土)15:30-18:30
宝塚歌劇団星組
「THE SCARLET PIMPERNEL(スカーレット ピンパーネル)」
@東京宝塚劇場

 S席 8000円 1階-6列-35番 (パンフレット:1000円)
 演出:小池修一郎

 パーシー・ブレイクニー:安蘭けい
 マルグリット・サン・ジュスト:遠野あすか
 ショーヴラン:柚希礼音
 サン・シール侯爵/プリンス・オブ・ウェールズ:英真なおき
 ドゥ・トゥルネー伯爵夫人:万里柚美
 アントニー・デュハースト:立樹遥
 アンドリュー・フォークス:涼紫央
 アルマン・サン・ジュスト:和涼華
 マリー・グロショルツ:夢咲ねね

 パリの色だ〜、このフレーズ良く歌いきった!、幕前がないっ!、マルグリットが歌っている際のパーシーの無言劇がすばらしいっ、アピールしてるのに芝居の邪魔はしないアンサンブルがエライ、二番手の歌が良くなった!、トップが本気で歌い上げてる、トップトリオの役が揃って面白い……などなど、一幕半ばにして修ちゃんにメールするほど興奮しちゃいました。「明日も来ちゃうかも」と。
 作品、出演者、スタッフに恵まれた素晴らしい公演です。公演前は、かつて宝塚で上演された「柴田版"紅はこべ"(松あきら主演、地方公演では真矢みき主演)でいいじゃん」と思ってたのですが、「ワイルドホーン版じゃないと物足りない!」といともあっさり趣旨がえに。それほどワイルドホーンの音楽の魅力は圧倒的。スケールが違います。ここ最近、耳に残るナンバーに恵まれない宝塚ですが、一回しか観てないのにこの作品の曲は帰り道で勝手に頭の中をリフレイン。メロディ・メーカーとしてのワイルドホーンの面目躍起です。宝塚版に取り入れられた新曲「ひとかけらの勇気」は、ドラマティックに盛り上がるだけでなく、作品の要所要所で効果的に挿入されて、主題歌としての重責を見事に果たしました。
 新しい主題歌が全面に押し出されることにより、ブロード・ウェイ版をかなりいじっているのですが、個人的には、宝塚版の方が登場人物の書き込みが深まり、より面白い仕上がりになっていると思います。小池作品というと、細かくて細かくて細かい演出により、時に大筋のストーリーがぼけてしまう時がありますが、メイン・ストーリーがしっかりしていて、あれこれいじるには制約がある翻訳作品に関しては、その細かさが良い方向に作用している気がします(この作品に限らず、ね)。それでいて、宝塚歌劇としてのツボをしっかり押さえているのがベテランならではの素晴らしさ。
 演出面では、劇場の大きさと舞台機構を活かして、幕前芝居なしに、流れるような舞台転換が特に素晴らしく、回転することによりフランスからイギリスに様変わりする舞台装置は、物語の裏表をあぶりだし、斜め方向の設置は舞台に奥行きを与え(音響的にも○)、たたみかけるような進行が実い快感。中でも、セリと釣り幕、舞台袖から現れる小さな装置の組み合わせで、瞬時にして船上のシーンとなる流れは「Cats」における、スキンブルシャンクス(鉄道猫)のゴミたちによる蒸気機関車登場に勝るとも劣らぬ見事さ。ミュージカルは、役者だけでなく、装置や証明も音楽とリンクしてこそ魅力倍増となりますが、まさにその至福のシーン。また、芸達者な生徒たちが、変装場面をいとも楽しげに演じていたこと、コスチュームの着こなしや動きの美しさなど、宝塚の美点がアピールされまくり。
 宝塚の(1)スターシステムで序列が定まっていること、(2)出演者が多く、下級生にまで見せ場を与えなくてはならない、という制約は既成作品上演の際のネックになるのですが、星組の生徒の面々がチームとしての充実ぶりを見せつけてくれました。元スター候補生の上級生たちが、すんなり脇へのシフトを認め、余計なアピールなしにスッキリ身を引き出しゃばらないにもかかわらず、ポイントポイントで舞台を引き締め、また、下級生たちも「群衆の壁」となることなく、舞台の奥にいてもアンサンブル芝居を行っているので、実に見応えがあります。
 トップさんによっては「私が演じている時に邪魔しないで!」というタイプの方もいらっしゃったりもするのですが、安蘭けいが「歌える役者」であり「芝居巧者」であるがゆえに、その舞台は実に余裕タップリ。「アンタたち、好き放題やりなさい」とばかりに、肩の力を抜きつつも圧巻の存在感。これまた相手役の助けなくとも自分で輝ける「トップ娘役タイプ(対するはトップ相手役)」の遠野あすかが安蘭けいに拮抗した舞台を見せてくれたこと、二番手の柚希礼音がトップに対抗する大役を、安蘭けいとは全くことなる、大柄な体躯と深く響く低音を武器にスケール大きく演じ、終演トリオのトライアングルが見事に成り立ったのが今回の見どころ。トップ一人だけが目立つ作品って奥行きがでずに平坦になりがちですが、トップvs二番手が大きく対抗するので、芝居が膨らみます。トップvsヒロイン、二番手vsヒロインの化かしあいも絡んで息の抜けない展開です。そして、その緊張感を星組のトリオが見事に持続。 専科の出演なしに、ブロードウェイ・ミュージカルをここまでのレベルに仕上げるとは驚きです。通常、宝塚における外来ミュージカルの公演は、女性だけで演じるハンデをかなり感じるものですが、今回はほとんどそれを感じることがなかったのは、出演者の奮闘と、潤色・演出の充実ゆえでしょう。大作にもかかわらず、組長以下、遊び心に溢れた舞台ぶりが、舞台に弾みをつけてます。
 余談ですが、パンフの作曲家からの要望で「是非歌唱力のあるスターにやってほしい」とあったのには爆笑。ワイルドホーンが楽曲提供の「NEVER SAY GOODBYE」上演時はトップ〜三番手までの男役も、トップ娘役も歌を苦手とする面々でしたものね。今回シングル・キャスト、週10回公演にもかかわらず、フル・ヴォイスで歌いきったトップスター、役者歌として表情豊かに歌いあげた面々に満足なことでしょう。「ブラァヴィ」です。これが最後の宝塚観劇だとしても満足(まだまだ観る予定ですが)です。


2008年08月24日(日)21:30-00:05
映画「SEX AND THE CITY」@TOHOシネマズ市川コルトンプラザ スクリーン7

 全席指定 ナイトショー1200円 L列-4番 (パンフレット:600円)
 監督:マイケル・パトリット・キング

 キャリー・ブラットショー:サラ・ジェシカ・パーカー
 サマンサ・ジョーンズ:キム・キャトラル
 シャーロット・ヨーク:クリスティン・デイヴィス
 ミランダ・ホップス:シンシア・ニクソン
 ミスター・ビッグ:クリス・ノース
 イニド・フリック:キャンディス・バーゲン
 ルイーズ:ジェニファー・ハドソン
 スティーブ・ブレディ:デヴィッド・エイゲンバーグ
 ハリー・ゴールデンブラット:エヴァン・ハンドラー
 スミス・ジェロッド:ジェイソン・ルイス
 アンソニー・マランティーノ:マリオ・カントーネ
 マグダ:リン・コーエン
 スタンフォード・ブラッチ:ウィリー・ガーソン

 人気テレビ・シリーズの映画版ですが、いきなり映画を観ても楽しめるであろう作品。恋愛ネタという、性別も年代も人種も関係ない不変的なテーマを扱い、無理やり話を終わらせようとせず、常に「次はどうなるの?」と考えさせるところが人気のポイントでしょうか。そして、キャリーの比重が高いとはいえ、主人公た4人組で、様々な考えやトピックスを扱う「身近さ」が楽しい趣向。もちろん、ニューヨークを舞台とした、ちょっとハイソでスタイリッシュ(そして時に毒舌)という「夢見る部分」を忘れないのも大事。ってことで、僕好みの作品です。
 女三人で姦しいとは言いますが、四人集まると無敵です。「忙しい、忙しい」と威張り散らしながら、なぜか四人全員集合できるスケジューリングに突っ込むなんて不可能! まるで10年ぶりの再会かのように、ギャーと叫び、駆け寄ってハグして、男が間に割って入る隙なんてありゃしません。悩みやストレスは思いっきり笑い飛ばし、仕事に恋に、本能のままに生きる彼女たちはとっても魅力的。いかにもアメリカ〜ンなパワフルで怖い物知らずな女性たち。笑いと元気が必要な時はぜひオススメの映画です。
 ファッションはね、とってもゴージャスです。これでもかって程、有名ブランドから知らないブランドまで、デパートの商品を全部登場させましたって程、とっかえひっかえ。でもって、ゴージャスな服を着こなすのって、女優自信がゴージャスじゃないと無理なんですね。ったく、何を着ても貧相なオンナね〜、という人も!
 ミスター・ビッグ:クリス・ノースが「高橋英樹みたいだな」と僕は思って見てましたが、同行者はは「ミスター・ビーン:ローワン・アトキンソンみたい」と思ってたそうな。この二人…似てます!?!?


2008年08月31日(日)13:00-15:05
来日カンパニー「Swing!」千秋楽@オーチャードホール

 A席 9000円 3階-2列-14番 (パンフレット:1500円)