観劇日記〜2008年09月〜
04日(木) 18:30 藤原歌劇団
「ヴェルディ:ラ・トラヴィアータ」
東京文化会館
05日(金) 19:00 東京ニューシティ管弦楽団
「第57回定期演奏会」
東京芸術劇場
09日(火) 15:30 宝塚歌劇団星組
「THE SCARLET PIMPERNEL(スカーレット ピンパーネル)」
東京宝塚劇場
13日(土) 15:30 宝塚歌劇団星組
「THE SCARLET PIMPERNEL(スカーレット ピンパーネル)」
東京宝塚劇場
14日(日) 14:00 二期会
「チャイコフスキー:エフゲニー・オネーギン」
東京文化会館
15日(月・祝) 12:00 Burn The Floor Company
「Floorplay〜フロアプレイ〜」
東京国際フォーラム ホールA
20日(土) 14:00 CIRQUE DU SOLEIL
「ZED」トライアウト公演
シルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京
21日(日) 11:00 宝塚歌劇団月組
「グレート・ギャツビー」
日生劇場
21日(日) 15:30 宝塚歌劇団星組
「THE SCARLET PIMPERNEL(スカーレット ピンパーネル)」
WOWOW貸切
東京宝塚劇場
25日(木) 18:00 新日本フィルハーモニー交響楽団
「第436回定期演奏会」
トリフォニーホール
27日(土) 13:00 ピュアマリー
「アプローズ」
東京グローブ座


2008年09月04日(木)18:30-21:30
藤原歌劇団「ヴェルディ:ラ・トラヴィアータ〜椿姫〜」@東京文化会館

 E席 3000円 4階-R1列-34番 (パンフレット:1000円)

 演出:ペッペ・デ・トマージ
 指揮:ジュリアーノ・カレッラ
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 ヴィオレッタ:出口正子
 アルフレード:小山陽二郎
 ジェルモン:三浦克次
 フローラ:向野由美子
 ガストン:市川和彦
 ドゥフォール:若林勉
 ドビニー:須藤慎吾
 グランヴィル:東原貞彦
 アンニーナ:竹村佳子
 ジュゼッペ:川久保博史
 使者:堀内士功
 召使:佐藤勝司

 藤原歌劇団にとって「ラ・トラヴィアータ〜椿姫〜」は最も上演頻度の高い作品で、毎年のように取り上げられています。今回は再演となる演出、オーケストラやコーラスはすでに音楽が手中となり、ソリストの面々もすでにお馴染座付き歌手。ジェルモン:三浦克次という、ロール・デビューはあれども、彼は別役で何度も舞台に登場しているので、正直新味はなく……どことなく、東宝「レ・ミゼラブル」を彷彿とさせませんか? で、仕上がりも似た雰囲気。舞台も客席も慣れ親しんだ作品を気負いなく演じていて、決して感動の名演ではないけれど、破たんなく安定した舞台進行。もちろん、個々の仕上がりや出来には好き嫌いはあれど、ロングラン作品としてはこんな感じかな、と。
 暴言を承知で書いてしまうけれど、脇役キャストがプリンシパルとなった場合、実力や安定度はともかくとして、華のなさはいかんともしがたいのが舞台の残酷なところ。アルフレード:小山陽二郎の安定感(彼は小ホールだと声がこもって聞こえるけれど、東京文化だと気持ち良く伸びやかな声!)ジェルモン:三浦克次の枯れた味わい(いばりん坊のジェルモンではなく、とっても老人なジェルモン)は、それぞれ好演なのですが、今回の、演出では二人とも求心力不足がアリアリで、印象に残らないんです。常に脇役として自分を押さえてきた人たちと、スターとして押し出しの良さを追及し、まわりからもそのような扱いを受けてきた人たちとの愕然とした差異。
 では、ヴィオレッタ:出口正子はどうかというと、プリマ路線で使われているにも関わらず地味な方です。お化粧は相変わらずド下手で、メイクアップどころかメイクダウン。眉毛が左右でちぐはぐなのを、舞台裏で誰も指摘しないのかと、毎度のことながら気になって気になって。そして、正直、ヴィオレッタを歌い演じるにはお歳をとりすぎで、舞台での表情や動きがおばあちゃん。藤原歌劇団の中で世代交代がかなり進んでいることも相まって、「CATS」のグリザべラじゃないけれど、生きていく活力を失った「年老いた娼婦」が、若い男と出会って希望を取り戻した話……になっちゃうんですよねぇ。歌は立派です。実に丁寧で、pppの弱音が見事にコントロールされ、ホール中に響きわたる見事さは実に素晴らしいです。ちょとしたフレーズの歌い回しもなかなかドラマティック。彼女の個性もあってか、花形娼婦ではなく、落ちぶれていく女の哀しさを全面に打ち出しているように感じました。
 と、ゴージャスな「椿姫」とはかけ離れた公演でしたが、これが悪くなかったんです。まるでバレエ用であるかのようなシンプルな舞台美術、丁寧に丁寧に歌い演じるという統一のとれたキャスト、だれがちなバレエ場面をスピーディに駆け抜けたオケ&宝塚の男役のように指先までセクシーかつスタイリッシュに踊り切ったダンサー(この場面のバレエとしては歴代でもトップクラス!)と、気負いなく、仕事帰りにキャストチェックも忘れてフラリ&の〜んびりオペラを楽しむにはうってつけの公演。新作ミュージカルではなく既に何年もロングランを続けているブロードウェイの劇場、メジャーなオペラハウスでのプレミエ公演ではなく、ヨーロッパの地方都市での座付メンバーによるレパートリー公演、そんな印象の宵を過ごしてきました。華やかでもスリリングでもない公演でしたけれど、定番をキッチリ上演し続ける歌劇団の姿勢に好感。定食屋で美味しく食事した、そんな気分です。でも、やっぱり好演の「売り」が乏しいので、客入りは半分といったところ。あ、このあたりもロングラン公演のミュージカルと似てますね。ジャンルは異なれども、観客は結局「非日常」を劇場に求めてるのかと。


2008年09月05日(金)19:00-20:55
東京ニューシティ管弦楽団「第57回定期演奏会」@東京芸術劇場

 B席 3000円 3階-H列-21番 (パンフレット:無料)

 指揮:曽我大介

 ベートーヴェン:交響曲第1番 ハ長調 op.21
 ベートーヴェン:バレエ音楽「プロメテウスの創造物」 op.43より
          ・序曲
          ・導入曲「嵐」
          ・第10曲「パストラーレ」
          ・終曲
(休憩)
 ベートーヴェン:交響曲第3番 変ホ長調 op.55「英雄」

 ピリオド奏法によるベートーヴェン特集プログラム。コンバスが客席正面に陣取り、ヴァイオリンのファーストとセカンドがお見合い体制という、ウィーン・フィルのような並び。チェロはコンバスの前で客席に胴体を向けているので、とにかく低音が良く届きます。芸劇にお邪魔するのは久しぶりだったけれど「このホール、こんなに響いたっけ?」と嬉しい驚きに包まれました。
 ベートーヴェンというと、気難しい音楽というイメージがあり、ピアノ・ソナタの後期作品なんて、譜読みする気にすらならないけれど、若者時代の作品は伸びやかなフレーズ、爽やかな響きで、耳に体に心地よいですね。
 「のだめ」はクラシックを身近にした功績が大きいけれど、曲によってはとんでもないイメージを植え付けてくれました。「プロメテウスの創造物」では、鳥に体をついばまれて「ヒィ〜」となっている千秋の顔が、そして「英雄」では、水鳥のように首を上に向けて演奏するヴァイオリニストたちの映像が、勝手にオーバーラップされてしまうんですもの。漫画って印象が強いだけに、読み過ぎ注意ですね!


2008年09月09日(火)18:30-21:30
宝塚歌劇団星組
「THE SCARLET PIMPERNEL(スカーレット ピンパーネル)」
@東京宝塚劇場

 当日B席 2500円 2階-16列-2番 (パンフレット:1000円)
 演出:小池修一郎

 パーシー・ブレイクニー:安蘭けい
 マルグリット・サン・ジュスト:遠野あすか
 ショーヴラン:柚希礼音
 サン・シール侯爵/プリンス・オブ・ウェールズ:英真なおき
 ドゥ・トゥルネー伯爵夫人:万里柚美
 アントニー・デュハースト:立樹遥
 アンドリュー・フォークス:涼紫央
 アルマン・サン・ジュスト:和涼華
 マリー・グロショルツ:夢咲ねね

 二幕後半のシャルル王太子の「パーシーを悪く言わないで」の台詞以降、クライマックスの船が出てきて幕になるまでの展開、次々に場面もソロもアンサンブルも入れ替わるのですが、まるで万華鏡のように「ばらばらに揃う」よう処理されているのが背中ゾクゾクもの。二階のテッペンから見ても見事な演出!群衆処理の巧みさに舌を巻きました! そこんじょそこらの演出家とは、格が違います、格が! せっかくの大劇場・大所帯をスカスカにしか動かせない演出家には「見学日」を設けていただきたいもんですっ!(内外問わずね)
 出演者だけでなく、装置も証明も舞台機構も音楽に合わせて連動する際に生まれるダイナミック感は、バブル時代のメガ・ミュージカル以降ちょっとご無沙汰。劇場が「生きている」ことを感じる瞬間で、あまりの幸せに涙を流しちゃいました。おかげで、せっかくのシーンの一部の映像がぼやけてしまいましたさ。植田作品とは手法が違うけれど、大劇場芝居の醍醐味を堪能させてくれる演出家として、今や修ちゃんの右に出る人はおりますまい。決して楽譜に強い演出家ではないけれど、聴き込みの鋭さ、音を大切にした処理のスマートさは「ミュージカル演出家」の貫禄です。


2008年09月13日(土)15:30-18:30
宝塚歌劇団星組
「THE SCARLET PIMPERNEL(スカーレット ピンパーネル)」
@東京宝塚劇場

 S席 8000円 1階-6列-34番 (パンフレット:1000円)
 演出:小池修一郎

 パーシー・ブレイクニー:安蘭けい
 マルグリット・サン・ジュスト:遠野あすか
 ショーヴラン:柚希礼音
 サン・シール侯爵/プリンス・オブ・ウェールズ:英真なおき
 ドゥ・トゥルネー伯爵夫人:万里柚美
 アントニー・デュハースト:立樹遥
 アンドリュー・フォークス:涼紫央
 アルマン・サン・ジュスト:和涼華
 マリー・グロショルツ:夢咲ねね

 予定以上に観劇回数が増えている「スカーレット・ピンパーネル」ですが、宝塚歌劇の場合、リピーターも想定してあちこち遊びが加えられているのが楽しいところ。トップ・トリオ以外はチョイ役だらけにも関わらず、生徒が(そしてもちろん演出も!)役を大切にあの手この手で息吹きを与えているので、舞台からのエネルギーが実に大きく感じられます。場面によっては宝塚の限界を超えたスケールの大きな作品なのですが、物理的弱さを舞台にうごめくエネルギーで補っている感じ。個人的に、確かな技術を粋にみせる役者が好きではあるのですが、今回は「気合いだ〜っ」な舞台に感服です。
 とはいえ、熱演でありながらも余裕を感じさせるのがパーシー・ブレイクニー:安蘭けい。大石内蔵助のごとく、ハムレットのごとく、本心と言動がアンビバレンツという非常に面白い役を、実に気持ち良さそうに演じてます。台詞回しや声色、イントネーションなどを自在にあやつり、いくつものキャラクターを演じ分ける力量は大したもの。それぞれが説得力があるので、初見の時には、ショーヴランたちと同じように「ひぇ〜っ」とビックリさせられた場面も。そして「歌が得意」とされる宝塚の男役の中でも、歌詞を明確に客席に届けられること、感情のこもった「役者歌」を聴かせることについては絶品の技巧者。
 この作品が安蘭けいの代表作になろうことは多くの人の賛同を得られると思うけれど、組構成に恵まれたことも見逃せません。かなり上級生トップな安蘭けいですが、さらなる上級生が何人も在籍していて、脇をガッチリ固める手堅さは他組の追随を許さない、現在の星組の強み。上手い・下手を超越した安定感があります。中でも、プリンス・オブ・ウェールズ:英真なおきの世間ずれした、それでいて位取りを感じさせるたたずまいはさすが星組のボス。大きなお腹をあちこちにぶつけながら、愛らしくも利口そうな国王を創造する緩急自在な芝居っぷりに惚れ惚れ。また、立樹遥と涼紫央がちょっと頼りない下級生男役たちを引っ張り、要所要所で作品をキリリと引き締めるのも職人技が光ります。「ご自分の芝居だけに集中してください」というばかりの組子たちによるバックアップを受け、、マルグリット・サン・ジュスト:遠野あすか、ショーヴラン:柚希礼音もとても演じやすそう。男役としての素質を存分に見せつける柚希(芸の深さはまだまだ伸びそう)、娘役としてよりも女役としての色気を発揮した遠野。この二人にとってもターニング・ポイントとなる作品ではないでしょうか。実はまだ観劇予定が詰まっているこの作品。観る度に新たな楽しみが見つかって、まだまだ楽しみです。


2008年09月14日(日)14:00-16:55
二期会「チャイコフスキー:エフゲニー・オネーギン」@東京文化会館

 D席 5000円 4階-R3列-4番 (パンフレット:1000円)

 演出:ペーター・コンヴィチュニー
 指揮:アレクサンドル・アニシモフ
 管弦楽:東京交響楽団

 ラーリナ:与田朝子
 タチアーナ:津山恵
 オルガ:田村由貴絵
 フィリピエーヴナ:村松桂子
 エフゲニー・オネーギン:黒田博
 ウラジーミル・レンスキー:樋口達哉
 グレーミン公爵:佐藤泰弘
 隊長/ザレツキー:畠山茂
 トリケ:五十嵐修

 コンヴィチュニーの演出というとブーイングの嵐、というイメージがありますが、今回の演出は一言でいうと「宝塚歌劇」でした。開場した時点で、既に幕が上がっているのですが、舞台装置はというと、東宝劇場から借りてきたかのよう。思わず「プリンス・オブ・ウェールズ主催の舞踏会のセットだ〜」と口にしてしまった程。おまけに、東京文化会館に銀橋を設置し(あまり活用されなかったけれど)、さらには、二階Lブロックを使用しての客席での芝居もあり。観客と舞台を一体化させようという試みはオペラの世界では珍しいこと。
 残念なのは、東京文化会館の客席が六角形のため、場面場面で見切れ席が多いこと。銀橋場面ではL/Rブロックの観客はおいてきぼりですし、二階Lブロックでの芝居はLブロック及び、一階前方の観客は空っぽの舞台を眺めるだけ。ここは、新橋演舞場のように、モニターを各ブロックに設置していただかなくては。そして、二期会の大所帯が出演するとはいえ、東京文化のステージがスカスカになってしまうのは何とも勿体ないです。ヨーロッパの小さな劇場で上演されたプロダクションをそのまま東京文化に持ってくるのであれば、そして演出家も来日hしているのであれば、もう少し作り直しても良かったのではないでしょうか。個人的には今回のプロダクションは日生劇場だったらフィットしたと思うんです。舞台は小さいけれど、コーラスは良く響くし、グランドサークルの出っ張りは、舞台は観にくいけれど、客席からは良く見える席ですし。ま、客席数が1000減なのがネックになるんでしょうね。
 ロシアのオペラというと、かなり重量級で、コッテリした味付けの演出が多いようなイメージがありますが、今回はかなりリリカルです。これは、出演者の個性によるところが大きい気がします。タチアーナとオルガはいきなり田舎のおぼこ娘。舞台メイクなので、オペラグラスでアップにすると怖いけれど、遠目だとちゃんと女の子。そして、ドラマティックな声ではなく、リリカルな声で歌われるのが役のイメージ。前半部分はとっても良かったです。公爵夫人になってからの大人っぽさも変化があって、おねー銀じゃなくても「おぉっ」と目を見張ります。この変身ぶりがとっても素敵。一旦は「私は人妻ですから!」とオネーギンを振り切るけれど、この場面(そして音楽が終わってからも)狂乱してしまうあたり、いかにもコンヴィチュニーな皮肉であり、そして「アンナ・カレーニナ」みたいに、情熱的な愛の炎に身をゆだねちゃうのではないかしらん?という強烈な余韻を残しました。この役に関しては非常に書き込まれていて、面白い役になってました。できれば、もう少しスター級の人が演じた方がオネーギンのキリキリ舞いぶりが伝わってくるのかと。
 黒田博は好きな歌手なんです。とっても良い声だし、芝居心もありますし。が、今回はちとミス・キャスト。オネーギンが登場しただけで「タチヤーナが恋に落ちて当然」といったキラキラ感が乏しく、レンスキー:樋口達哉が華やかなだけに、タイトルロールとしてのインパクトが弱いです。グレーミン侯爵の歌に合わせてコーラスがザワザワするのを揶揄したり、酔っ払った芝居をしたり、歌いながらタチヤーナにキスしたり、中階段をかけ上ったりと、なかなか細かな芝居をしているのですが……なんで際立たないんでしょう??? 銀橋での歌いあげのシーンも、求心力が乏しく、せっかくの美味しい演出が生かせず、ショーストップ未遂。今や二期会のバリトンのトップスター扱いの方ではあるのですが、「主役の人じゃないんだよねぇ」と寂しい思いも。裏キャストの与那城敬がナカナカの押し出しの方なので、うかうかしていられないですわ。でも、キッチリ仕事をされる職人タイプの方なので、レンスキーの死体とのダンスは「コッペリア」みたいな振り付けも相まって、オネーギンのレンスキーへの愛を感じたのですが、演出家は別の事を考えていたかも!?


2008年09月15日(月・祝)12:00-14:15
Burn The Floor Company「Floorplay〜フロアプレイ〜」千秋楽
@東京国際フォーラム ホールA

S席 10500円 1階-35列-42番 (パンフレット:2000円)
 振付:Jason Gilkison ジェイソン・ギルキソン

 DANCERS
  Trent Whiddon & Gordana Grandosek Veera Kinnunen
  Damon Sugden & Rebecca Sugden
  Sasha Farber & Giselle Peacock
  Damien Whitewood & Peta Murgatroyd
  Dannial Gosper & Ash-Leigh Hunter
  Robin Windsor → Kevin Clifton & Jessica Raffa
  Patrick Helm & Sharna Burgess
  Sarah West & Carmelo Pizzino
  Clare Clifton & Tristan MacManus
  Laura Zmajkovicova & Lenny Gouwerok
 VOCALISTS
  Rebecca Tapia & Kieron Kulik

 ACT.1
  DANCED ALL NIGHT
  THE SAMBA
  LEADING ME ON
  THE DANCE OF LOVE
  HARLEM NIGHTS
 ACT.2
  THE LATIN QUARTER
  FIRE IN THE BALLROOM
  2AM
  CODA
  TURN THE BEAT AROUND

 すっかり定番となったBurn The Floor Companyの来日公演。一部メンバーの入れ替わりがあるものの、ほぼ前回公演のメンバーが参加。今日が千秋楽ということもあってか、出演者も観客も「楽しむぞ!」の空気がいつも以上に充満。キャストは観客をいじりまくり、客席もノリノリに応えるという、理想的な空間でした。国際フォーラムのホールAは5000人収容という、東京でも有数の大ホールですが、このホールの空間を完璧にコントロールし、舞台から遠い席でも白けさせずにショーに集中させる求心力は圧巻です。前回はオーチャードホール公演でしたが、このカンパニーには国際フォーラムが似合います。今回は、舞台両脇の壁面に巨大スクリーンを設置し、客席降り場面や、メインダンサーのアップなど、観客にやさしい作り。オペラグラスを持参したものの、ほとんど使わずに済みました。
 この手の大ホールになると、開演時間がずれ込む、ということが多々あり(実際、遅れてくる観客も多かった!)、時間通りに入場している者としては「ムッ」となるのですが、開演時間になると、ダンサー数名が客席に乱入し、観客いじりを開始。シルク・ド・ソレイユほど指名された人が緊張するような演出はなく、女性ダンサーとちょこっと踊るだけなのですが、欧米人は表情が豊かなのと、コミカルな味付けで、開演前から客席は笑いと拍手でいっぱい。そして、いざ舞台がはじまれば、マイ・フェア・レディの優雅な調べによる新場面でスタート。このあたりの展開はかなりなめらか。そして、お馴染みのTHE SAMBAの場面からは客席のボルテージは一気に上昇。
 同じ振りつけでもダンサーによって異なり、そしてそれぞれが「私を観てっ」とアピールしまくりなのですが、白人ダンサーの集団とはいえ、お国柄が出るものでして、ワイルドだったり、エロエロだったり、ちょっと澄ましていたりと見比べが楽しいこと楽しいこと。最初は単なる群舞に見えていても、ダンサーの個性が把握できると同時に、ソロの集合体として見え方が変わり、フォーメーションではなく、個々の魅せ方の違いが面白くなってくるんです。それでいて、バラバラになるわけではないのですから、テクニシャンたちって凄いですね。
 ショー本編も素晴らしかったけれど、カーテンコールでのスピーディかつ激しいダンスは「最後にこんなハードなものを持ってくるか!!」と客席も大興奮。スタンディングしているついでに一緒に踊ってしまいましたが…これが長いっ。ほんの数分で素人はゼーゼー&ハーハーです。でも、良い汗かきました。気持ち良いです!!! 今月は東宝劇場でのレビューがないので、ショー大好き人間としては、この作品がとっても嬉しい♪


2008年09月20日(土)12:00-14:15
CIRQUE DU SOLEIL「ZED」トライアウト公演@シルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京

オーバービュー 6240円 24列-98番 (パンフレット:2000円)
 演出:Francois Girard フランソワ・ジラール

 新しい劇場に足を踏み入れるのはワクワクするものです。ことに、作品ごとに様々な劇場を建築するシルク・ドゥ・ソレイユ。期待が高まります。とはいえ、ロングラン公演ともなると「いつでも観られるさ」と油断しがちで、今回も間もなく本公演が始まる、というのであわてて当日券で入場。席割が細かく分かれていますが、この団体のショーはどの席からも観やすいので、迷わず天井桟敷を指定。この劇場の座席はアメリカン・サイズで、横幅も足元もユッタリしていて、非常に心地良いです。とはいえ、24列目なので、舞台が近いこと近いこと。
 客席に足を踏み入れての第一印象は「キャッツ・シアターみたいだなぁ」と。客席数が倍近くあるので、装置は人間サイズなのに、なんだか猫になった気分なんです。そして、舞台は「オペラ座の怪人」のごとく、薄い幕で装置がカバーされてます。このあたり、ミュージカル・ファンとしてはムフフ♪なんです。ツボッ。
 開演時間近くになると、クラウンが二人登場して、客いじりをするのは、シルク・ドゥ・ソレイユのいつものスタイル。開演時間が押しても、早くから来ている観客がイライラしない上手な導入。日本の観客も最近はノリが良くなってきたとは思うけれど、舞浜の客層は、松濤あたりの客層ともまた異なり、どこまで客いじりをして良いかどうかはまだ手探り状態みたい。ラスベガス公演だと、かなりクラウン=いじめっ子?な位、度を越した悪ふざけがなされるんですが、大人しいです。そして、いじられる観客も、反応が悪い人もチラホラ。せっかく、イクスピアリを通り抜けてきたのだから、観客もショーの出演者と化さなくては!!
 ストーリーは簡単。鍵のかかった禁断の本の鍵をうっかり開けてしまったクラウン二人が本の中に吸い込まれて、幻想的な世界を旅して戻ってくるまで。クラウンが飲みこまれると同時に、大音量とともに、装置をカバーしいた幕が瞬時に消え去り、装置が登場するのですが、規模が大きいだけに、非常にドラマティックな転換。現れるのは、音楽座「マドモアゼル・モーツァルト」の地球儀のような、宝塚星組公演「夢は世界をかけめぐる」のような、まるで地球の内部に入り込んでしまったかのようなモノ。もしかしてテーマが共通!? 本の中の世界では、クラウンだけでなく、ZEDが冒険の主人公として全場面に登場します。
 さて、この劇場は常設劇場ということですが、アメリカのシルク・ドゥ・ソレイユのような劇場を想像してはガッカリします。「O」や「LE REVE」のように、一瞬にして床がプールになることも「KA」のように床やプロセニアムがなく、装置が空中に浮いたまま場面転換されたりという超メカトロ設備ではなく、「MISTERE」クラスの大人し目なもの。舞台機構は、新宿コマ劇場みたいな感じで、蛇の目の回り舞台と、各種小ぜりを多用といった、ここ最近のミュージカルやショーではご無沙汰なもの。なかなか小気味良いです。そして、舞台上方からの装置の昇降や客席からの役者の出入りは「CATS」のごとし、綱渡りシーンでの安全装置の登場は「レミゼ」のバリケードのごとし。……正直、目新しい場面も演目もないのですが、それぞれの技はバージョンアップされていたりするので、初めて観る人は定番に舌鼓を打ち、リピーターはマイナーチェンジを楽しむ、ということで、万人にオススメ。そして何より、仮設劇場ではないので、観劇環境が抜群に良いのが嬉しいですね。
 この劇場の登場によって、舞浜というエリアがますますアメリカンに変貌しているのですが、こうなったらとことんエンターテインメント・シティとして突き進んでいただきたいものです。風俗方向に走ってしまうと嫌だけれど、ちょっとアダルトな夜の大人のためのエンターテインメントなんかもあると深みが出ると思うんですけどね。健全なだけでは、薄っぺらいですもの。夜通し営業しているバーだとかゲームコーナー(ゲームセンターじゃなくってね)とかも。


2008年09月21日(日)11:00-13:55
宝塚歌劇団月組
「グレート・ギャツビー」@日生劇場

 S席 7000円 1階-B列-17番 (パンフレット:1000円)
 演出:小池修一郎

 ジェイ・ギャツビー:瀬奈 じゅん
 デイジー・ブキャナン:城咲 あい
 警視総監/ヘンリー・C・ギャッツ: 汝鳥 伶
 ジョージ・ウィルソン:磯野 千尋
 エリザベス・フェイ/セイヤー夫人:梨花 ますみ
 マイヤー・ウルフシャイム 越乃 リュウ
 アンソニー・フェイ/スラッグル/カーター:一色 瑠加
 ニック・キャラウェイ:遼河 はるひ
 ジョーダン・ベイカー:涼城 まりな
 トム・ブキャナン:青樹 泉
 マートル・ウィルソン:憧花 ゆりの
 ヒルダ:妃鳳 こころ
 サリー/マーゴット・ニコルソン:美夢 ひまり
 ユーイング・クリフスプリンガー/サム:綾月 せり
 ジュディ・フェイ:羽咲 まな
 ビロクシー:光月 るう
 キャサリン:夏月 都
 ラウル:彩央 寿音
 ニコルソン市長/ビル:華央 あみり
 ミニー:紗蘭 えりか
 ボブ:美翔 かずき
 レクエルドの歌手:沢希 理寿
 ディック:宇月 颯
 ギャツビー(少年時代):彩星りおん
 エディ・ニコルソン:紫門 ゆりや
 ジャッキー:白雪 さち花
 ニッキー:咲希 あかね

 小池修一郎の初期作品は原作物の宝塚歌劇へのアレンジした作品が主流でした。デビュー作にして、関西公演のみだった「天使の微笑み・悪魔の涙」(ファウスト)を筆頭に、「アポロンの迷宮」(怪盗ルパン)、そして第三作目の「華麗なるギャツビー」、「ベイ・シティ・ブルース」(ハムレット)、「PUCK」(真夏の夜の夢)などなど、年一本のペースで新作を発表。「浪漫歌劇」と銘打った初期の二作品を経て、シンプルに「ミュージカル」とだけ名乗るようになったのは「華麗なるギャツビー」からで、各種演劇賞を獲得しまくりのきっかけともなった、エポック・メイキングな作品と言えましょう。それまでの宝塚歌劇というと、プロローグがあって、トップの主題歌歌唱&銀橋渡りを経て「いつになったらお芝居が始まるんだろう?」と観客が飽きた頃にようやく本編が始まるというスタイルだったのが、いきなり本編が、それも重要な場面で始まるという「絶対、開演に遅れてはいけない作家」として話題になったものです。初期の名作の一つとして、再演希望が高かったのですが、当時流行りだった「替え歌ミュージカル」ということもあり、著作権などの絡みで、何と17年ぶりの再演となりました。劇場は旧東宝劇場から日生劇場になり、ダブル・ビルの一作品としてではなく一本物として、そして出演者の数が半減というなかなか厳しい条件の中での公演です。
 初演当時の雪組は、杜けあき体制三年目という安定期で、二番手男役には一路真輝、三番手男役には、高嶺ふぶき/海峡ひろき/轟悠、そしてそのトリオに食い込んでカルテット状態を作り出した香寿たつき。すでに新人公演では主演級の役を与えられていた和央ようかという、何とも強力な布陣。娘役も、トップ娘役の鮎ゆうきがサヨナラ公演に見合った熱演で「自分が幸せということも忘れる馬鹿な女の子」を見事に演じ切り、早乙女幸、美月亜優らの上級生娘役がガッチリ脇を固め、組配属間もない純名里沙が歌いまくるという、何ともゴージャス感溢れる公演でした。それに対し、今回は「名前も知らない新人さんたち」による公演ということで、かなりのハンデがあります。何しろ、トップの瀬奈じゅんは組長よりも上級生という孤軍奮闘状態。層の薄さは致し方ありますまい。
 そんな瀬名ギャツビーですが、トップとしてのキャリアと、自分が月組を引っ張っていかなくてはという意気込みがヒシヒシ。アイドルとしてのトップから、役者としてのトップに脱皮したように感じました。無言のまま背中で語るよりも、やたらと説明調な印象もありますが、これは演出によるものも大きいかと。ダンサーなので、動いちゃうんです、芝居でも。でも、その動きの一つ一つが綺麗で、指さばきなんてヤラシイの一言。歌もかなり上手くなり「朝日が昇る前に」もドラマティックに歌いあげて、男役として「大きくなったなぁ」と。ラストに射殺されるシーンでの撃たれてから崩れ落ちるまでのフォルムの美しさは特筆モノ。素敵でした。
 一方、城咲デイジーは、鮎ゆうきのサヨナラ用の台本で、初トップ相手役となるのでかなり苦戦。スタイルの良さと、技術の安定度は鮎ゆうきよりも上なのでしょうが、スターとしての魅せ方はまだまだこれから。瀬奈じゅんの相手役としてガチガチでした。潤いや間で魅せる芸風が確立してないので、ポイントのセリフが決まらない弱さがあります。でもまぁ「もう一人で行けるね」だとか(よりを戻すのは)「やっぱり無理よ」など、サヨナラを意識した台詞の数々が、今はまっても困ってしまいますけど。せっかく、ミュージカルナンバーやら出番やらを倍増してもらったにもかかわらず、勿体ない状態。シンプルなだけに難しい役ですね。
 ニック以下、若手生徒たちは「新人公演」になっていたため、感想=悪口になってしまいそうなので、今回はバッサリ割愛。早く忘れてしまいたい……それだけです。でも、博多座組が加わったとしても、あちらも若手ばかり。この在籍生徒のバランスの悪さはどうしたものでしょうね。
 さて、いつもは大好きな修ちゃんですが、いろいろ制約はあったとは思うものの、やはり今回のお仕事は「好きじゃなかった」と申し上げざるを得ません。ただでさえ16mしか奥行きのない日生劇場なのに、舞台後方にオーケストラをあげてしまったので、装置がどれもこれも前方すぎて、まるでカーテン前芝居ばかり。また、デイジーの殺人の罪をギャツビーが代わりにかぶることを、初演ではデイジーとギャツビーだけの秘密だったので「格好良い男や」となったのに、今回はそのことを全員が知ってしまい、あげくにそれについて歌い継ぐため、やたらと展開が滞る上、ギャツビーの男っぷりが下がりまくり。不言実行が魅力のギャツビーが、やたらと薄っぺらい男に見えてしまいました。これ、困ります!! そして、1時間半の作品を伸ばすためとはいえ、いきなり宗教観を持ちだして「神の目が見ている」の大ミュージカルナンバーが導入されることにより、ギャツビーの男気よりも、事件のもみ消しがクローズアップされてしまい、よって、トムはとっても悪人に見えるわ(ボンボンならではの世間知らずなだけなのに…)、クライマックスの情感ある場面との空気感の差がありすぎて、幕切れの余韻がなくなるわで興ざめ。興ざめといえば、ギャツビー父:汝鳥 伶はミスキャスト。二役で演じている警視総監の貫録がありすぎたせいか、田舎のさえないじいさんに見えないんです。ギャツビー父が枯れていれば枯れている程、ギャツビーの出世欲、コンプレックスが際立つのに。「滅びゆく男の美学」を演出させたらピカイチの修ちゃんにして、まさかのミス連発。
 今回の公演が初ギャツビーとなる知人に「この作品のどこにはまったワケ?」と突っ込まれ、とっても悲しかったです。なまじ完成度の高い作品は、部分的にいじると全体のバランスが崩れるので、日生劇場公演とはいえ、前回の完成版の台本での上演で良かったのではないかと思ってます。「小さな花がひらいた」の再演の際は休憩なしの一幕物だったんですけどね。
 花道の代わりに、一階前方左右の客席入口を、銀橋の代わりに、オケピ席と一般席間の通路を多用する演出だったので、SS席扱いのオケピ席より、S席扱いの一般席の方が観やすい構成でした。舞台にも他の生徒がいるにも関わらず、振りむいて後ろを見るわけにもいきませんものね。今回はB列を用意していただいたので、銀橋もどき場面では、手に取るような位置。宝塚の生徒たちって、じろじろ見られるのに慣れているせいか、逆にこちらのこともじ〜っと見つめてくるのでドキドキしちゃいます。久しぶりにトップさんと見つめあってきました(人はこれを“気のせい”と言います」

2008年09月21日(日)15:30-18:35
宝塚歌劇団星組
「THE SCARLET PIMPERNEL(スカーレット ピンパーネル)」
WOWOW貸切公演
@東京宝塚劇場

 S席 8000円 1階-18列-11番 (パンフレット:1000円)
 演出:小池修一郎

 パーシー・ブレイクニー:安蘭けい
 マルグリット・サン・ジュスト:遠野あすか
 ショーヴラン:柚希礼音
 サン・シール侯爵/プリンス・オブ・ウェールズ:英真なおき
 ドゥ・トゥルネー伯爵夫人:万里柚美
 アントニー・デュハースト:立樹遥
 アンドリュー・フォークス:涼紫央
 アルマン・サン・ジュスト:和涼華
 マリー・グロショルツ:夢咲ねね

 予定としては最後の観劇となります。主要キャストの芸の深まりだけでなく、アンサンブルの一人一人の遊び具合も深まっています。確かに、主要キャストの少ない作品ですが、かつての宙組のように「歌う大道具」と化すのではなく、個性と個性が合体した集団なので、舞台奥、舞台端も見どころ満載。真ん中も端も観たい!という欲張りな人には、今日のお席は打ってつけ。上級生の面々がしっかり芝居を固める中、下級生たちが伸び伸びと自分の芝居を深めているのを目にすると「良い組だなぁ」と、部外者にもかかわらず幸せ気分でいっぱいになります。
 今回のプロダクションはブロードウェイ・ミュージカルにもかかわらず、かなりの潤色がなされているのが特徴ですが、音楽処理が見事なんです。新曲がごく自然に作品に溶け込んでいて、歌われる場面以外でも、要所要所で効果的にオーケストラ演奏でリフレインされるのが実に効果的。開幕早々に歌われる主題歌「ひとかけらの勇気」なんて、モノローグ的語りとして歌われ、その合間合間に状況説明の小芝居が挟み込まれるのですが、これがまるで映画のような効果をあげていて、出演者それぞれの状況や立場が瞬時にして理解出来てしまうんです。その他、瞬時にしてイギリスとフランスの場面が入れ替わったり、いくつものストーリーがミュージカル・ナンバーの中で同時進行されたりと、改めて、計算された作品の強さを感じました。オリジナル・スタッフだけでなく、宝塚版スタッフも良い仕事をしてます!
 「滅びゆく男の美学」を描いたらピカイチの修ちゃんですが、いきなりサン・シール侯爵がフランス貴族としての誇りある死を遂げ、また、ショーブランの強い信念と挫折、敗北に至るまで、実に丁寧に登場人物の心情をあぶりだしていきます。誰もが信念を持っているので、観る時の気分によって、感情移入する人物も意見もうつろうのがリピーターとしては面白いところ。確認してませんが、たぶん、ショーブランなんて修ちゃん好みの役なんでしょうね。コンプレックス感タップリで見応えあります。……もう一度位観ちゃおうかなぁwww


2008年09月25日(木)18:00-22:05
新日本フィルハーモニー交響楽団「第436回定期演奏会」@トリフォニーホール

 C席 8000円 1階-29列-28番 (パンフレット:無料)

 演出:飯塚励生
 指揮:クリスティアン・アルミンク
 管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
 合唱:栗友会合唱団

 R.シュトラウス:楽劇「薔薇の騎士」op.59

 元帥夫人:ナンシー・グスタフソン
 オックス男爵:ビャーニ・トール・クリスティンソン
 オクタヴィアン:藤村実穂子
 ファーニナル:ユルゲン・リン
 ゾフィー:ヒェン・ライス(森麻季の代役のルーシー・クローウェのさらに代役)
 マリアンネ:田中三佐代
 ヴァルツァッキ:谷川佳幸
 アンニーナ:増田弥生
 テノール歌手:佐野成宏
 警部/公証人:大塚博章
 元帥夫人の執事/ファーニナル家の執事:渡邉公威
 動物商/食道の主人:高野二郎
 3人の孤児:佐藤奈加子、赤羽佐東子、金子美香
 帽子屋:國光ともこ
 レオポルト:神谷真士
 モハメド:飯塚映励奈
 天使1(幼少時代の元帥夫人):工藤優
 天使2(少女時代の元帥夫人):仲本詩菜

 舞台上にはひし形状にオーケストラが配置。下手側の三角スペースにベッドやイスが用意されるだけのコンサート・オペラ形式で、衣装もあり合わせのものを組み合わせた感じです。でも、「薔薇の騎士」に登場するのは、寝室とリビングと食堂の個室なので、ちょっとした装置だけでもかなり様になるんですね。新発見です。個人的にシェンク演出版のようなゴージャスな装置や衣装が好きなのですが、予算ナシのしょぼいプロダクションで悔しい思いをするならば、今回のようなヴァージョンの方がよっぽどお洒落。
 しょっぱなから、オクタヴィアン:藤村実穂子が快調。何でも今回がロール・デビューなんだそうですが、すでに100回位演じてそうな素晴らしいオクタヴィアンでした。カジュアルな裾出しシャツ、メイド服、黒燕尾、白燕尾と、衣装もとっかえひっかえ。新国の「モーツァルト:イドメネオ」での男役はかなり中途半端で観ていてむず痒くなったものですが、今回は登場シーンから男の子。ティーンエイジャーの突っ張った感じと(多分、ロール・デビューで固くなった)芝居が何ともフィット。元帥夫人に「坊や」扱いされるのも納得です。それなのに、客席から従者を20人位引き連れての薔薇の騎士登場場面では、一転して輝くばかりの眩さ。装置なしでもここまで持ってくる役者根性に思わず「○○屋!」と叫びたくなりました。もちろん、R.シュトラウスの輝かしい音楽の効果も絶大なのですが、キビキビと凛々しい身のこなしは宝塚に入っても大丈夫! 殺陣場面で腰が引けさえしなければ完璧! そして終幕では、芝居はリラックスし、それと同時に少年から男への脱皮と言いましょうか、元帥夫人に保護される立場から、ゾフィーを保護する立場への戸惑いと決意がこれまた素晴らしい変化っぷり。たぶん、初役としての立ち居振る舞いと、オクタヴィアンの心情の変化が見事にマッチした結果だと思うのですが、そんな瞬間に立ち会えたことの幸せを感じます。歌声は厚いオケすら突き抜ける「さすがヴァイロイトが認めた声!」なのですが、勢いだけでなく、声色の使い分けといい、歌い回しといい、今回のカンパニーでずば抜けた実力。年齢や他キャストとの演出上のバランスからも、通常のオペラ公演でオクタヴィアンを歌う機会が来るかどうか微妙ですが、僕が今まで観た彼女の舞台の中でベストでした。ぶらあば!!!
 元帥夫人:ナンシー・グスタフソンは大人の色気が売りですね。第一幕でオクタヴィアン少年を相手にする際の大人の余裕、第三幕で青年オクタヴィアンを前にるす際は、対等の関係で大人の色気。母性愛でオクタヴィアンを包みこむ元帥夫人ではなく、まだまだいけまっせ〜な、女盛りな元帥夫人。今が最盛期なだけに「女の色気」で勝負できる限界を彼女が感じているのが何とも切ないんです。老いへの不安ではなく、第一線(という言葉がふさわしいとは思いませんけど)からの去り際の美学。劇中では「貴族として対面を保って退場なさい」とオックス男爵を叱りつけますが、これは彼女自身に語りかけてもいるわけですよね。実にスタイリッシュな女性です。登場するだけで華があり(動きは少ないけれど、位取りが必要な役!)、下手すると「オクタヴィアンのとりかえばや物語」というコメディになりがちな「薔薇の騎士」という作品の真の主役たることを示し、人生を考えさせる素晴らしい役ですね。。
 そして、個人的にお気に入りなのがオックス男爵:ビャーニ・トール・クリスティンソン。オックス男爵というと、確かに田舎者で粗野で野暮ですが、貴族としての貫禄はあると思うんです。一般市民がガサツなのと違って「うちの旦那は相変わらず仕方ないなぁ」と部下が笑い飛ばしてくれそうな。だからこそ、元帥夫人も自分の不倫をばらしてしまうし、最後の最後に男爵を救いに来るんだと僕は思うんですよね。で、今日のオックス男爵はわがままな中に「可愛いじゃない」と思わせる芝居なんです。女の子を目の前にして、本当に嬉しそうな顔をしますもの。根は良い人なんじゃないでしょうか。ただ「自分の望みに忠実な」言葉や態度なため、誤解されやすい人物。お金はないんだから、ケチになっちゃうだろうし、生まれながらに貴族教育をされてりゃ、ちっとは嫌味な人物になるでしょうよ。でも、きっと良い人。彼を尻に敷くような女性が現れれれば、意外と良き夫になるんじゃないでしょうか。愛する人のためなら自分がにくまれ者になっても守ってくれそう。意外と素直ですし。クリスティンソンの声は深々としたものではなく、結構リリカルなのですが、それでも低音までちゃんと響き、バスの魅力に溢れていました。音が「良い状態で」当たってこそ、お金の取れる歌ですね。ぶらあぼ。
 その他のアンサンブルは二期会公演や新国立劇場公演、神奈川県民ホール公演でお馴染みの方々ばかり。今回は新プロダクションですが、やはり経験者が揃うと安定感が違います。歌も芝居もやる気満々。マリアンネ:田中三佐代なんて、歌わない場面でも細かな芝居で、目が離せませんし(ベスト・チョイ役!)。そして、栗友会合唱団がアマチュア(というよりセミ・プロですが)とは思えない素晴らしい歌と芝居。オックス男爵の従者たちに追っかけられて、客席通路を悲鳴をあげながら逃げ惑う際の悲鳴といい、本当に嫌そうに体をくねらせるあたりといい、これ以上ない熱演。主役陣が充実していると、脇の脇まで舞台を張り切ってて、実に張りのあるカンパニーでした。久しぶりに「また観たい」というプロダクションです。4時間超という上演時間にも関わらず、あっという間。
 残念だったのがいくつか。テノール歌手:佐野成宏はここ最近の不調から脱出できず、声の輝きも高音の伸びやかさもなく、苦しそうな歌唱。パパイヤ鈴木のようなコンマスのソロは、高音になるに従い、どんどんピッチが悪くなり、一幕最後のとろけるように消えていくpppが、不協和音となったのには閉口。演出はおおむねオーソドックスで、安心して観ていられるものの、幼少時代&少女時代の元帥夫人役の子がやたらと舞台に登場するのが謎。コンサート・オペラ形式の際はあまり手の込んだ演出はしなくても良いのではないかと。ミュージカル「モーツァルト!」におけるアマデ少年ほどの効果も必要性も感じられないのですが、どんな意味があったんでしょう???
 それにしても、R.シュトラウスの音楽は圧巻ですね。イタリア・オペラのように、朗々とメロディが流れるのではなく、まるで気の置けない友人とのおしゃべりのように、誰かが素敵なメロディを奏でても、全然違うメロディを他の誰かがぶつけて、コロコロと曲想が変わるのは、まるで映画のBGM。映画「SEX AND THE CITY」では、女たちがてんでバラバラに自分のことを話すけれど、それがそのまま音楽になったかのよう。二幕での銀の薔薇贈呈の儀式では、登場人物がそれぞれ違う曲を歌っている感じで、字幕がなくても内容がわかっちゃう位、実に情感豊か。瞬時に時間が止まったり、永遠を感じさせたり、こんなにも変幻自在な作曲家を他に知りません。そして、ホフマン・スタールの台本も実に良く練られていて、デビューと引退、貴族と庶民、若さと老い、過去と未来などなど、様々なキーワードが対になって登場するので、笑っているそばから泣かされたりするので、何度観ても感動するし、あれこれ考えさせられる凄い作品だと思います。満足〜〜〜♪


2008年09月27日(土)13:00-16:00
ピュアマリー「アプローズ」@東京グローブ座

 A席 7800円 3階-B列-41番 (パンフレット:1500円)
 演出:浜畑賢吉

 マーゴ・チャニング:(越路吹雪→越路吹雪→越路吹雪→前田美波里→)前田美波里
 イヴ・ハリントン:(雪村いづみ/江崎英子→雪村いづみ→三田和代→久野綾希子→)貴城けい
 ビル:(池田鴻→浜畑賢吉→細川俊之→浜畑賢吉)→宮本益光
 ハワード:(田中明夫→井関一→松宮五郎→松宮五郎→)倉石功
 ドゥエイン:(飯野おさみ→飯野おさみ→小宮守→市村正親→)佐野瑞樹
 ボニー:(木の実ナナ/多川理英→木の実ナナ→末次美沙緒→服部良子/北村岳子→)紫城るい
 バズ:(日下武史→日下武史→光枝明彦→光枝明彦→)越智則英
 カレン:(藤野節子→藤野節子→藤野節子→木村不時子→)駒塚由衣
 (1972年日生劇場→1973年日生劇場→1976年日生劇場→1982年日生劇場→)2008年東京グローブ座

 劇団四季のレパートリーだった「アプローズ」も、すっかりご無沙汰。今回もピュアマリー制作によるプロダクション…とはいえ、前田美波里の主演で、演出は浜畑賢吉、アンサンブルには四季出身者も多く、何だか劇団四季公演っぽくもありました。カラオケ公演ってこともあいまって、なんだか70〜80年代にタイムスリップした感じ。久しぶりのカラオケ公演は、はやり落ち着きが悪いです。長いオーバーチュアーを聞きながら、客席の白けた空気はいかんともしがたいものがあります。おまけに、この録音状態が悪く、まるでモノラル録音の映画を見ているかのよう。もしかしたら、時代感を出すために狙ったんでしょうか???
 さて、前田美波里は何と26年ぶりの主演。前回は「私もう40よ!」というセリフを聞いた瞬間「うそつけっ!」と思ったものですが、今回は別の意味で「うそつけっ!」と思いました。でも、大女優の役で、貫禄とgoing my wayが許される存在として、今回の方が役にフィットしているんじゃないでしょうか。まだまだ踊れるわよっという迫力と、小屋に合わせてセーブしてるんじゃないかとすら思う声量豊かな歌声も健在です。「芝居のスタイルが……」とイブに指摘されるのも、トップを極めた者だけが感じる孤独感も、彼女の肉体を通すと実に説得力があります。一幕ラストの「ようこそ、劇場へ」は、実に迫力があって怖かったです。近年の前田美波里のベスト・ステージではないでしょうか。
 一方、イブ役の貴城けいは、前半の野暮ったい田舎娘の場面では、隠したくても隠しきれない華やかさは、元・宝塚トップだけのことはあります。第一幕では、マーゴに取り入ろうと、爪を隠して、ひたすら控えめかつ細々とお世話をして、誰からも可愛がられ&評価されるる完璧な付き人。第二幕では、女優として成功しようとあこぎな手段を次々に繰り出す怖い女。ストーリーとしては映画「ショーガール」みたいな感じで、結局のところ、裏の顔がみんなにバレバレになって、それでもトニー賞主演女優として生きていくという役。とはいえ、程度の差こそあれ、上司に取り入り、業界人に取り入り、実力者に取り入り、時には枕営業をしてでもキャリアを重ねていこうとする女性(だけじゃないですね、男性も)は現実にもありうるわけでして、「エヴィータ」だって「リトル・ミー」だって、「H2$」だって、主人公のやり口は似たり寄ったりです。貴城けいは、計算高くて嫌味な女を結構リアルに演じていて、第二幕で、かつての友人を見下し「後にして!」とニコニコ顔でありながらものすごい目付きで睨みつけるあたり、背筋が寒くなりました。
 今回のカンパニー、26年前の公演と違って、歌えない人や踊れない人はそういないんです。ミュージカル界全体のレベルアップを感じます。が、かといって、ミュージカル専門ばかりを集めたわけではない今回のカンパニー。主要キャスト一人一人の出身が異なるせいか、非常にバランスが悪い公演でした。マーゴ:前田美波里はアメリカ〜ンな芝居と歌唱なのに対し、ビル:宮本益光はオペラ歌唱をそのまま持ち込んだために、曲想と違和感たっぷり。イヴ:貴城けいはセリフも歌唱も宝塚調だし、カレン:駒塚由衣は新劇的というか、一人鹿鳴館状態。一人一人は良い仕事をしているんですけどね。癖はあれども「劇団四季公演」「二期会公演」「宝塚公演」といった、同じ訓練を受けている人たちのチームワークには太刀打ちできません。
 元が映画なせいか、音楽が途中でブツ切りになったり、かなりの時間無音状態になったり、はたまた突然歌い踊っちゃったりと、かなり時代を感じさせる作品です。古い作品なので、アンサンブルの人数が多いのですが、グローブ座の無理やりプロセニアムをこしらえた舞台は、その狭さがお気の毒。また、日生劇場クラスの劇場で、同門の俳優さんたちによる公演で観たい作品です。美波里さんなら、東宝でも四季でも可ですし。