観劇日記〜2008年11月〜
01日(土) 14:00 古川展生、三宅進、山本裕康、渡邉辰紀
「Cello Repubblica〜チェロ弾き達のオーケストラ〜」
浜離宮朝日ホール
02日(日) 14:00 Le voci 第6回公演
「プッチーニ:蝶々夫人」
市川市市民会館
02日(日) 18:30 ブラス・エンジェルス2008
「ODYSSEY/オデッセイ」
JCBホール
03日(月・祝) 12:10 映画「ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢」 新宿ピカデリー スクリーン3
03日(月・祝) 15:00 宝塚歌劇団星組
「ブエノスアイレスの風」
日本青年館
04日(火) 18:30 東宝
「エリザベート」
帝国劇場
06日(木) 18:30 東宝
「エリザベート」
帝国劇場
08日(土) 13:00 劇団四季
「ソング&ダンス 55ステップス」
四季劇場[秋]
08日(土) 18:00 東宝
「RENT」
シアタークリエ
11日(火) 19:00 エヴァ・メイ&アントニーノ・シラグーザ
「デュオ・リサイタル」
東京文化会館
15日(土) 14:00 新国立劇場バレエ団
「デヴィッド・ビントレーの アラジン」プレミエ
(山本×本島)
新国立劇場オペラパレス
16日(土) 14:00 新国立劇場バレエ団
「デヴィッド・ビントレーの アラジン」
(八幡×小野)
新国立劇場オペラパレス
16日(日) 21:05 映画「ハッピーフライト」 TOHOシネマズ 市川コルトンプラザ
19日(水) 19:00 グザヴィエ・ドゥ・メストレ
「魅せる。ハープの室内楽」
トッパンホール
22日(土) 14:00 新国立劇場バレエ団
「デヴィッド・ビントレーの アラジン」
(芳賀×湯川)
新国立劇場オペラパレス
23日(日) 16:00 銀座チェロフェスタ2008
「古川展生サロンコンサート」
ヤマハ銀座店(仮店舗)6Fサロン
25日(火) 19:00 銀座チェロフェスタ2008
「チェロアンサンブルコンサート」
王子ホール
26日(水) 19:00 クリスチャン・ツィメルマン&チョン・ミョンフン 東京文化会館
28日(金) 18:30 シュツットガルト・バレエ団
「オネーギン」
東京文化会館
29日(土) 14:00 宝塚歌劇団星組
「外伝 ベルサイユのばら −ベルナール編−」
「ネオ・ダンディズム!III」
神奈川県民ホール
30日(日) 14:00 CIRQUE DU SOLEIL
「ZED」
シルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京


2008年11月01日(土)14:00-16:00
Cello Repubblica「l`orchertra di violoncellisti」 @浜離宮朝日ホール

 全席指定 4000円 1階-7列-9番 (パンフレット:無料)

 チェロ:古川展生、三宅進、山本裕康、渡邉辰紀

 モーツァルト:「フィガロの結婚」序曲
     〜三宅/古川/渡邉/山本
 黛敏郎:文楽
     〜三宅
 山本裕康:ラヴィン・バロック〜チェロ2台のための〜
     〜古川/山本
 ポッパー:演奏会用ポロネーズ 作品14番
     〜古川/渡邉/山本/三宅
(休憩)
 ハイドン:チェロ協奏曲 第1番 ハ長調
     〜soro山本/渡辺/古川/三宅
 サマー:Lo, How a Rose E'er Blooming〜「エサイの根より」の主題による変奏曲〜
     〜渡邉
 バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティ―タ 第2番 ニ短調 BWV1004より“シャコンヌ ”
     〜渡邉/三宅/古川/山本
(アンコール)
 ヴィヴァルディ:「四季」より「冬」第二楽章
     〜渡邉/三宅/古川/山本

 オケからソロまで様々な形態の演奏活動を繰り広げているのぼぉちゃんですが、今日はチェリスト四人でのアンサンブル。「話半分、いや、四分の一で聞いてください」という山本氏の説明によれば、ゴルフ仲間によるコンサートらしいですが、なかなかアットホームです。先日の桐朋学園のチェロ・グランド・コンサート程肩ひじ張らず、都響のチェロセクションほどリーダー色は求められず、誰か一人をスター扱いするのでなく、それぞれに主役どころが与えられ、年代的にもテクニック的にも、浮く人のない、仲間とのパーティがそのままコンサートになっちゃった感のある二時間。「シャコンヌ」の早いパッセージの掛け合いが、こんなに対等に面白く聴けるのもそうありますまい。
 チェロはメロディも伴奏ももってこいな、音域と音色幅の広い楽器ですが、「フィガロ」のような太陽のように明るく輝く曲より、しっとり落ち着いた曲の方が僕は好み。山本裕康:ラヴィン・バロックは、楽器だけでなく、元々のぼぉちゃんが演奏するという前提で書かれた山本裕康:ラヴィン・バロック〜チェロ2台のための〜など、人数半減なのに、なんでこんなにホール中に音が溢れるの?な、嬉しさに思わずニコニコしちゃう曲あり、ハイドン:チェロ協奏曲 第1番 ハ長調のような、山本さん以外の誰か間違ってソロパート弾いちゃわないの?な曲あり、つい手拍子を入れたくなるサマー:Lo, How a Rose E'er Bloomingといったリズムの鋭い曲ありと、バラエティに富んだプログラム。でもって、ヴィヴァルディ:「冬」でシットリとしめるあたり、非常に満足度が高いプログラムでした。こういった歌モノっぽい曲に関して、のぼぉちゃんは歌いくちが何とも暖かくて好きです。HAPPYな気持ちにさせてくれる演奏家です。
 ということで、メンバーも良かったし、プログラムの変化もあり、さらには、お馴染みの曲でも気を抜けない状態というのもあってか、のぼぉちゃんもなかな好調(って書くと可愛くないファンだなぁ。。。) でも、この人は出来不出来が本人の表情だとか、音にも出やすいのでわかりやすいといえばわかりやすいんです。「本気で演奏すると神が降りてくるのに、本気でない時ってホント別人よね」と、のぼぉちゃんファンでない知人がボソリ言ってましたっけ。
 今日限定なのか、ここ最近の傾向なのかわかりませんが、のぼぉちゃんの音が逞しくなりました。以前はテクニックに走ると音が痩せてしまう傾向があったのですが、ガツガツ感が消えて、良く響くようになりました。まだまだ変化の渦中で、面白いです。


2008年11月02日(日)14:00-16:35
Le voci 第6回公演「プッチーニ:蝶々夫人」@市川市市民会館

 全席自由 3000円 1階-7列-9番 (パンフレット:無料)

 演出:森山太
 指揮:安藤敬
 エレクトーン:橘光一、安藤江利、柿崎俊也
 ヴァイオリン:立田祥子
 ハープ:大木理恵

 蝶々さん:奥村喜美子
 スズキ:梶沼美和子
 ピンカートン:安藤英市
 シャープレス:川上敦
 ゴロー:阿部修二
 ケート:小田嶋薫
 蝶々さんのおば:宮下奈美
 蝶々さんのいとこ:笠原身奈子
 ボンゾ:五島伝明
 神官:五島泰次郎
 ヤマドリ:辻淳
 ヤクシデ:藤枝坦

 オケピのある文化会館ではなく、講演会場みたいな古くて設備の整ってない市民会館でオペラを上演!と聞いて、足を運んでみました。ここで音楽を聴くなんて小学生の時以来(当時はまだ文化会館がなかったのさっ)。客席に足を踏み入れてみれば、舞台と最前列の隙間にキーボード×三台(パンフだと二人になってますが、実際はもう一人追加!)、ハープ・ヴァイオリン×各一。音楽座のピットみたい。 最近のエレクトーンは音質が抜群に良くなりましたね。生オケのような臨場感はないけれど、ナカナカ良い雰囲気を出してます。歌とのバランスも良く、音響さん頑張りました! 客席前方10列位が使用禁止になってて「えぇ〜(-"-;)」とビックリでしたが、きっと前方席はオケが邪魔になっちゃうんでしょうね(市川オペラがこのホールを本拠地にしていた頃ってどうしてたんでしょう?)。マエストロは最前列に腰かけて指揮するのかとばかり思ってたら、二列目に入り込み、立ったまま指揮してました。こんなにも指揮者が目立つオペラは初めてです。身振りが大きく大熱演。歌いっぱなしと、動きっぱなし、どちらがよりシンドイんでしょ?
 今日はセミプロのカンパニーで、知らない歌手ばかり。個々のレベル差が大きいものの、今回の公演にかける熱意と意気込みを強く感じ、緊張感の中に遊びもあって楽しい公演です。美術は下手よりに花道があり、八畳位の母屋に繋がっているシンプルなもの。このプロダクション、能楽堂でもそのまんま上演できそう。全国の能楽堂縦断ツアーのオペラってのも面白いんじゃないでしょうか。
 ゴロー:阿部修二がヤンキーたちに日本家屋を説明する箇所は、さすがに何もない舞台ゆえ、芝居のしどころがないけれど、そういえば、この作品って、アメリカ人が現地妻用に月極めでレンタルしている家なので、大劇場ではなく、小さい会場の方がフィットするもんですね。元は栄たとはいえ、今や落ちぶれて、父は切腹、母は貧乏という芸者の結婚式、ゴージャスじゃないのが逆にリアル。でも、結婚式は結婚式。バタフライは満面の笑顔で登場。15歳のお嬢ちゃん♪ 蝶々さん:奥村喜美子は人の話を聞かずに、すぐ怒鳴るんだけど、素晴らしい張りのある声なので、春琴さんみたいで、聞いてて快感。威張ってても、嫌味な女にならず、お嬢様らしさが濃厚なのは、存じ上げない方ですが……地でしょうか!? 終幕でも、周囲が「ピンカートンに捨てられたと知ったらさぞや泣くだろうな」とオロオロする中、しごく冷静に「YES/NO」で答えなさい、とスズキに命令するなど、冷静かつ理路整然。さすが、武士の娘の風格があります。ついつい「蝶々夫人」と聴くと、大和撫子を期待しちゃいますが、改めて「これはイタリアオペラだもんね」と納得。チラリと目で訴えるなんていう和式は用ナシです。素敵な蝶々さんでした。
 1月の新国はカリーネ・ババジャニアン主演の「蝶々夫人」です。演出が嫌いなプロダクションですが、今日の公演を見たら俄然興味が湧いてきました。当日券で観に行っちゃうかも。


2008年11月02日(日)18:30-20:25
ブラス・エンジェルス2008「ODYSSEY/オデッセイ」@JCBホール

 S席 8800円 アリーナ-15列-26番 (パンフレット:無料)

 ビジュアル・ディレクター:スコット・チャンドラー
 ミュージック・ディレクター:ウェイン・ダウニー

 段取りを追うのに一生懸命だったゲネプロと違い、客席へのアピールや観客の反応など、一か月の間に化けました。
 もともと表情については毎日半日がかりのレッスンを行っているとのことですが、歓声に応える表情、今から凄いことやるわョという、自信と緊張の同居した含み笑いなど、すっかりアマチュアからプロに脱皮。才能を認められた舞台人は、レッスンもさることながら、本番のステージでなんと変容することでしょう。オリンピック競技を観戦している時の気分に近いかな。
 でもって、皆さん、女の子から大人の女性に成長してます。このあたり「カワイイ」が褒め言葉の日本と、独立した大人を目指す教育のなされているアメリカとのカルチャーギャップを感じます。威風堂々!!
 それにしても、新しいショー・演出を生み出すアメリカって凄い国です。今回なんて、吹奏楽部・ダンス部・美術部・映画同好会による合同公演みたいな作品なのですが、選抜メンバー(寄せ集めとも言える?)が、それぞれの専門を持ちより、時に本家取りなんぞもしつつ、作品を完成させるエネルギーに感服です。遊びの国(と、あえて言い切っちゃいましょうぞ)の人達が本気になると、もはやおだてなくても木に上っちゃうのね〜
 JCBホールは初めてですが(名古屋の芸術劇場に似た客席構造)最新のホールだけあって、古〜い春日部市民文化会館とは、音響も照明も段違い。舞台のタッパも高く、同じことをしているのに、やたらショーアップされた印象があります。アコースティックな良さがあった春日部のゲネプロに対し、PAがコントロールしまくりのJCBホールでの本公演。全く違った趣なのが舞台の面白いところ。客席数や地の利を考えるに、もしかしたら、今後は新宿の厚生年金会館に代わってのポジションを確立できるかもしれません。


2008年11月03日(月・祝)12:10-13:55
映画「ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢」
Every Little Step: The Journey of a Phenomenon
@新宿ピカデリー スクリーン3

 全席指定 前売一般 1500円 F列-4番 (パンフレット:700円)

 監督:ジェイムズ・D・スターン、アダム・デル・デオ

 ミュージカル「コーラスライン」の再演版のオーディションを追っかけたドキュメント。オーディションを描いた舞台作品のオーディション風景という二重構造ですが、ミュージカルの内容と実際のダンサーたちの姿がリンクしていくあたり、いかに「コーラスライン」がダンサーたちへのオマージュ的作品だったかが浮き彫りになります。ミュージカルの登場人物の順に、オーディションも扱われるので、舞台版に親しんでいる者としては、映画からの情報だけでなく、舞台版の記憶がフラッシュ・バックされることで、より多くの情報量・感動を得るという、上手いんだかズルイんだか判断に悩む作りです。
 そして、ブロードウェイ予備軍の層の厚さは圧巻。日本でも上演されている作品ですが、人種が絡む部分は、芝居だけでなく、発声から体格、表情などなど「多民族のダンサーたち」の物語なので、立っているだけでバックボーンが感じられるのはかなり強み。そんな彼らが八ヶ月もの時間をかけて真剣勝負するのですから、画面にくぎ付けです。おまけに、舞台ではわからない私生活のあれこれまでさらけ出してくれるのですから、面白いの何のって。制作スタッフは役のキャラクターから、求めている人材、オーディション突破のポイントを手に取るように教えてくれるのですから!! おかげで、ドキュメンタリー作品にも関わらず、舞台と同じ位の感動を頂戴しました。そして、ブロードウェイに行きたくなります!!!
 観終わった際に、明日に向けての勇気と元気、エネルギーをもらえる映画って良いですね。気持ち良く泣いてきました!!


2008年11月03日(月・祝)15:00-17:40
宝塚歌劇団星組「ブエノスアイレスの風」@日本青年館

 A席 5000円 2階-C列-16番 (パンフレット:600円)

 演出:正塚晴彦

 ニコラス・デ・ロサス:(紫吹淳→紫吹淳→)柚希礼音
 リカルド:(樹里咲穂→嘉月絵理→)和涼華
 フローラ:(矢代鴻→)音花ゆり
 ビセンテ:(成瀬こうき→汐美真帆→)紅ゆずる
 イサベラ:(西條三恵→西條三恵→)夢咲ねね
 エバ:(美原志帆→美原志帆→)蒼乃夕妃
 マルセーロ:(大和悠河→霧矢大夢→)真風涼帆
 リリアナ:(叶千佳→叶千佳→)水瀬千秋
 ( )は1998年8月大阪公演→1999年7月公演

 東宝劇場と並び、青年館もゲリラ物。よっぽどお好きなんでしょうね>正塚氏 彼の作品は、主人公たちの個性や感情よりも、政治だとか主義主張が前面に押し出すことにより、独特の効果を醸し出します。相手の話を聞いているようで聞いてないため、会話は常に一方通行。なぜか威張り散らした攻撃口調は街頭演説みたい。せめて音楽に乗せて思想→一つのナンバーとなると入り込みやすいのですが、ほとんど歌が登場せず(主題歌はフローラが歌い、ニコラスのナンバーも少なめ、その他の役は…歌ってない!?)、ダンスナンバーも曲の最後がフェードアウトといった、ミュージカルとしての魅力に欠ける処理は、生演奏ではなく、カラオケ公演というのを逆手に取って「静寂」を強調していて、状況を活かしていて上手いなぁ、と。とはいうものの、あまりに好みじゃなくて、すっかり忘却の彼方となっていた作品だけに……うっかり来てしまいました。
 ゲリラだ政治だ革命だ、と大騒ぎしている割に「レミゼ」のような大河ドラマでも「スカピン」のような娯楽作品でもなく、チンピラの内輪揉めをボソボソと一本調子で延々と語るばかり。。一応、ニコラスが主役となっていますが、彼の回りで起こる出来事を扱った作品で、主役としては話を動かすわけではないので難しい役どころ。「革命が終わり、いざ平和になったら、何だか人生物足りなくて悶々としている男」というと、なんだかベトナム戦争後のアメリカを彷彿とさせますが、何しろ舞台はブエノスアイレス。政情が不安定で(その割に治安は良さそう、舞台上の様子からすると)、その政治をまたひっくり返そうと、無鉄砲なことをしでかそうとするリカルド。って、あら、何だか東宝劇場公演と似てません!? でもって、実質的にはリカルドが主役みたいな作品で、ゲリラ参加により精神が壊れてしまった彼が、一般社会生活に戻ることができず、あれこれもがくものの、結局仲間内の争いで、マルセーロに打ち殺されてしまい、何もしないまま死亡。何ともやるせない話です。話のタイミングによってはウェスト・サイド・ストーリーのような友情物になったかもしれませんし、ニコラスをめぐる女たちがもっとニコラスに絡んでくればさらに話が膨らんだかもしれません。が、いかんせんニコラスという役が「ダンスが得意な生徒だらダンサー役にしときまひょ」なだけで、酒場のダンサーである設定はほとんど意味がなく、こちらのラブストーリーは尻切れトンボ。
 そもそも、ニコラスって男として魅力がないんです(と、僕が勝手に思っているだけですけど)。兄を失った妹に対して「これからは俺が兄貴だ」とやんわりと恋愛関係を拒絶し、中途半端な関係を強要するズルイ手です。ここ最近の宝塚は兄妹ネタが多く、首筋がくすぐったくなります。具体的に「○○しよう」と動くわけでなく、ブツブツ・ボソボソ一人悩んでいるばかりで、人とのコミュニケーションを拒絶しているような男…絶対知り合いになりたくないっ! 雪組公演での感想とかぶりますが、この手の汗と泥で汚く、近寄ったら臭そうな男たちのドラマは、スーツ姿が女の子・女の子している宝塚よりも、マッチョな男たちによる映画などで見た方がよっぽど盛り上がると思うんです。ゲリラ場面のフラッシュバックなどを挿入してね。無骨で無愛想な男たちのドラマですもの。
 柚希はマッチョ体型なので、ゲリラの生き残りという設定が今の宝塚の中では納得のキャスティング。二番手として頑張っている彼女だけれど、今回のようにしどころのない役を主役として見せる難しさを感じているのではないでしょうか。足の形が変なので、ダンスの見栄えが悪いのが難。足さばきを得意としていた紫吹淳作品で損をしました。今回は辛抱しどころ。トップに向けて、役柄の引き出しを増やしている最中でしょうが、この公演もぜひ糧にしていただきたいものです。


2008年11月04日(火)18:30-21:40
東宝「エリザベート」@帝国劇場

 S席 13000円 1階-F列-24番 (パンフレット:2000円)
 演出:小池修一郎

 エリザベート:涼風真世
 トート:山口祐一郎
 フランツ:石川禅
 ルキーニ:高嶋政宏
 マックス:村井国夫
 ゾフィー:寿ひずる
 ルドルフ:伊礼彼方
 ルドヴィカ:春風ひとみ
 マダム・ヴォルフ:伊東弘美
 エルマー:中山昇
 リヒテンシュタイン:小笠原みち子
 少年ルドルフ:田川颯眞

 昨日が帝劇初日でしたが、色々思うところがありまして、本日の公演を手配。既に名古屋と九州公演を終えての東京入りなのですが、良くも悪くも全く話題にならなかったのは再演物の宿命??? すっかり一路真輝の独占状態だった東宝版ですが、一路の一期上で彼女と並んで歌で評判をとり「歌の妖精」と称された涼風真世と、一路真輝の次の次の次のそのまた次の雪組トップで、涼風真世主演作品の再演も何本かこなした「ダンサー」朝海ひかるがキャスティング! 再三「一路とダブルで」と僕なんか思っていた涼風真世ですが、ようやくの登板です。
 かなめベートの特徴は滑らかな歌唱。現役時代は音を一つずつポツポツと歌うイメージの人でしたが、いきなりレガートの美しい流れ。エリザベート役はことに独身時代は若さを出そうと、児童合唱団風に歌われることが多かったのですが、七色の声を持つ涼風にとっては普通に歌ってもラクラク表現できるんですね。天真爛漫な少女時代は、かつて少年役を得意としていた彼女の宝塚時代を彷彿させます。不器用ゆえがさつに見える時もあったけれど、エレガントが売りだった一路真輝とは全然違うアプローチで、さすがのキャリアを見せつけました。無理して別モノを作ろうというのではなく、ごくごく自然に個性が生きるあたり、女優として良い仕事をしてきたんだな、と感じます。
 ところで、タカラジェンヌの歌唱がいわゆる「宝塚の歌なら上手いのに他の歌は……」という印象から、退団後もすぐ一般公演に出演できる歌唱にチェンジしたのって、一路・涼風世代あたりからでしょうか。その上の世代は、退団後何をやっても男役歌唱しかできない人たち。大地真央の「ガイス・アンド・ドールズ」以後、頻繁に外来ミュージカルが上演されることや、世間一般でもミュージカルが盛んになったということも影響しているんでしょうね。
 今回の涼風エリザの特徴は「自然体」でしょうか。グローバルではないけれど、確実に自分の歌唱法で歌いきってます。エリザベートという役は意外に低音が多いのですが、ほとんど男役歌唱だけれどこの音域でしっかり響き渡らせるのは立派。高音との声区チェンジはまずまずスムーズながら、まだ「歌いにくそうな音域」が目立つのは、公演回数を考えるとこれから化ける部分かと。。元々音色豊富な人が、その声を駆使して描く「女の一生」。時にヒステリックに孤高の道を突き進んだ一路エリザベートは「ピリピリ」した緊張感が魅力だったのに対して、大仰な見得切りよりも小技を効かせる芝居と響かせる歌唱で勝負の涼風エリザベートは「安らぎを求め続けた人」という印象。天真爛漫な子供時代から、結婚を機に挫折を味わい、戦う女にならざるを得なかった哀しみに泣けました。ゾフィーとの嫁・姑バトルも、最初は「のれんに腕押し」で、何とも調子っぱずれな応対をしていたのに、いつの間にかオスカルのようにキリリとした威厳を漂わせる変化は、彼女の歴代の役が思い起こされます。「私だけに」のラストなんて「シトワイヤン、行こ〜〜〜っ」の表情で、ベッドに仁王立ちになるわ、コブシも唇もブルブルさせちゃうわで、意欲満点。主演であっても、決して舞台を支配するタイプじゃないんだけど、海千山千な続投キャストを向こうにまわし、自然に涼風真世を頂点とするピラミッドが形作られる位取りが素晴らしいです。今の時点でこれだけの仕上がり、今後の公演も楽しみです。記者会見時に比べ、美貌に磨きがかかっているのも素敵です。
 続投キャストはそれぞれの個性を深めてます。両足ジャンケンのチョキのポーズでドスコイッな山口トートは見栄えに反して省エネモード。「ここぞ聴かせどころ」は頑張るだけに、その落差が最近激しくなってます。でも、ドラマティックに歌いあげる山口祐一郎、太い音で歌いあげる涼風真世、安定した歌唱力と感情表現で盛り上げられる石川禅による、一幕ラストの三重唱はオペラティックで聴き応えがありました。その、石川フランツはますます芝居が深まり、老年期なんて老けづくりではなく、じいちゃんが登場したかのよう。この人は、役や年代によって、人相まで変わる、根っからの役者ですね。ワタクシごとですが、今まではエリザベートに感情移入してこの作品を観ていたのに、いざ結婚してみたら、フランツィの状況やら言動がやたら胸に響くんです。興味の対象が移動〜。そして、上演の度に文句タラタラだった高嶋ルキーニは…慣れました。もう勝手にやって頂戴。寿ゾフィーはとにかく怖い! 涼風エリザベート以上に低くて重い曲だらけなのですが、男役以下の低音を力強く響かせます。そういえば、この人も「歌のスター」でしたっけ。初風ゾフィーは時折「やさしいおばあちゃん」がにじみ出るけれど、寿ゾフィーは隙ナシ。この貫録、大好きですっ。
 期待の新キャスト、伊礼ルドルフは僕の中では終わりました。ミュージカル俳優の歌唱について、小池修一郎という演出家と僕とではかなり好みが違うのですが、ちゃんと歌えない人、声域が合わない人は、上手い/下手以前に、僕にとっては用無しキャスト。音域が極端に狭い人で、歴代ルドルフの中で、最も手に汗握る「闇が広がる」でした(トートについては別www)。ダンスもなまじスタイル&恰幅が良いため、彼の周りをダンサーが囲んでしまう(=上手に踊っているように見えてボロが出にくい)という、一路真輝時代の雪組ショーのようなフォローをしているにもかかわらず、動きがニブイ彼は悪目立ち。「立っているだけで皇太子」なのは貴重な存在ですが、まずはもっとテクニックを!な方です。
 宝塚と東宝、そして来日公演と、結局のところ毎年上演されている作品ゆえ、爆発的な話題にはなりにくいですが、演出のブラッシュアップ、出演者の熱気、そして作品の良さで、良い状態に仕上がっています。観終わって「ほぉ〜」という満足感に包まれるのは嬉しいものですね。二階席てっぺんからだとどんな印象になるのかなぁ。折を見てチャレンジしてみるつもり。
 あ、今日のチビルド:田川颯眞、とにかく可愛いです。その上、とっても芸達者。って、パンフを見たところ、小学3年生とは思えない、多彩なキャリアの持ち主だったんですが、芸風がすれてなくて、メロメロ♪


2008年11月06日(木)18:30-21:40
東宝「エリザベート」@帝国劇場

 S席 13000円 1階-F列-26番 (パンフレット:2000円)
 演出:小池修一郎

 エリザベート:朝海ひかる
 トート:武田真治
 フランツ:鈴木綜馬
 ルキーニ:高嶋政宏
 マックス:村井国夫
 ゾフィー:寿ひずる
 ルドルフ:浦井健治
 ルドヴィカ:春風ひとみ
 マダム・ヴォルフ:伊東弘美
 エルマー:中山昇
 リヒテンシュタイン:小笠原みち子
 少年ルドルフ:石川新太

 一日空けて別キャストで観劇。席番もほぼ変わらず。見比べるというのは本来どうかと思うけれど、観劇の一つの楽しみなのも正直なところ。同じ作品、同じ演出なのに別カンパニーを観に来たかのような面白さがあります。ま、それがなければ、世の中のオーケストラ・ファンはなぜホールに行くのか?になっちゃいますけど。
 朝海ひかる(=コムザベート)は背伸びするだけで愛らしさ抜群の美少女として登場。華やかな顔立ちに期待が高まります。村井パパとの二重唱はさぞ素敵かと思いきや……あれ、歌がヘン。どこかの児童合唱団はむやみに首を振って歌いますが、朝海ひかるはスクワットしながら歌うんです。たぶん、高音を出そうとイメージしていることが動きに出ちゃうんでしょうね。かといって、低音は相変わらず支えの効かないカエルちゃんだし。そして、歌詞はというと外人みたいな発音なんです。さらにはピッチが安定せず、歌声が高くなったり、低くなったり。元々、宝塚時代から歌が苦手な人だし、今日も間もなく安定するでしょう、と期待してたら、聞かせどころ「私だけに」で見事にはずしてくれました。「オペラ座の怪人」のカルロッタのように「わ・た・し・ゲロゲロゲロ〜ッ」。今だかつてこんな派手に音を外す人に出会ったことはないってくらい、派手派手。これで委縮してしまったのか、以後の歌唱は恐る恐る。下手でも堂々としてれば様になるもんですが、恐る恐るでは観ている側にとってもチョット…ね。ダブルで演じている涼風真世が自由自在に声をコントロールして、絶唱を披露した直後に、音のコントロールが出来ず、突拍子もない音色やボリュームが飛びだす朝海ひかるの登場は気の毒としか言いようがありません。ハイネに見習って詩を書く場面では、「不協和音の曲を音痴に(音外して)歌ってるのに、正和音にならない」という離れワザを披露。ルドルフの葬式での高音は、最初ふざけてるのかと思って(怒)だったのですが、あまりの出来に気が遠くなってきました。かなり覚悟して臨んだ彼女の歌ですが、相変わらずひどいです。返金求めてよろしゅうござんす。
 歌うのに精一杯だと芝居にも影響が出るのか、それとも元々この仕上がりだったのか知りませんが、芝居も感情なし・回りとの交流なしの一人舞台。エリザベートは自分の殻に閉じこもってしまう内向的な役なので、場面によってはこれがはまりましたが、コムザベートによって、エリザベートという役がいかに発散どころのない辛抱役なのかが浮き彫りになった気がします。今までの上演では、華やかな歌や、パパやトートなどとの間に流れる空気などの雰囲気に酔ってましたが、何ともしんどい役ですわ。
 もちろん、素敵な部分も沢山あります。エリザベートが家族との交流すら絶って、自分一人の世界に入り込む孤独感は絶妙。一路真輝式のヒステリックに外界を拒絶するのではなく、気付いたら外界に取り残されてしまったかのよう。舞台にその他大勢と一緒に登場しているのにもかかわらず、孤独でいる存在が絶妙。そして、宝塚時代からひそかに「拒絶の天才」と僕は思っているのですが、今日もフランツに最後通告を突きつけた直後のトートの誘いを断る際の「出てって!、アナタにはたよらない〜〜〜っ!」の腕から指にかけてのライン一つで劇場の空気を動かしたような気がします。目くばせ、肩を回す、指差すなどのちょっとした動きで感情を大きく伝えられる技量には舌を巻きます。そして、残念ながら今回はダンスを封印された朝海ひかるではありますが、ルキーニに刺された直後、トートダンサーたちをかきわける腕さばきは、芝居の動きなのにもかかわらず、まるで一つのダンスナンバーであるかのような美しさ。美しさといえば、カーテンコールは見返り美人ポーズで登場するのですが、この背中が何とも美しいんです。鍛えられた筋肉が描く美しきライン。あたりを払うようなゴージャス感が漂います。素敵です。
 武田トートはすでに日生劇場公演で観ているはずにもかかわらず、なぜか印象に残ってないんです。まるで初めて観るかのような感覚。二度目の東京公演ですし、今回は東京入りの前に二か月にわたる地方回りを終えているというのに……初々しいです。というか、拙いです。記憶に残らないのは一にもニにも存在感のなさ。もの凄く芝居してます。表情や手の動きなど、Wで入っているもう一人の方が「歌う電信柱」と化している中、自由自在です。が「黄泉の帝王」じゃないんですよねぇ。「黄泉の召使、それも見習い」って感じ。全然貫録ないんだもの。ボスよりもトートダンサーたちの方が迫力があります。舌足らずなセリフや、いかにもアイドル然とした歌い方が帝劇の舞台にそぐわないからかと。音響さんがエコーかけまくってサポートしてくれていますが、カラオケもしくは風呂場の酔っぱらいの歌とあっては威厳の示しようがありませぬ。音域が狭く、声量もないので、あちこち歌詞が聞こえなくなるのですが、歌えないからって急に怒鳴るのは見苦しい。。。でもって、この存在感のないトートを観てて「アレ、存在しなくても成り立つじゃん」ということに気づいてしまいました。もしかしたらトートダンサーたちがエリザベートの妄想の役(「蜘蛛女のキス」のオーロラみたいな感じ)で踊ってれば良いやん、と。よって、本日の「最後のダンス」は文字通り大ダンスナンバーとなり、「私が踊る時」は朝海ひかると迷唱。小さくても光る役者っているけれど、小さいまま埋もれてしまう主役。。。彼もまた「気の毒な人」でした。涼風真世との歌合戦なんて、簡単に負けてしまうわ、こりゃ。
 そんなわけで、エリザベート、トートという大黒柱がボロボロ、シングル・キャストで全公演出演している高嶋ルキーニは初日を終えて、どっと疲れがでちゃったのか、遊びではなく手抜きモード。声は伸びないし、芝居は段取りが見えてしまうし、アンサンブルとの温度差が大きく、一昨日とは別人。彼がストーリーを動かしているようには見えませぬ。見た目も、痩せたというよりしぼんじゃったし。とはいえ、流石のキャリアで、押さえどころはちゃんと押さえて、一定のレベル以下に崩れないのは立派。それにしても、エリザベート、トート、ルキーニと、三者三様で、何ともバランスの悪いトリオです。三つ巴になるはずが空中分解。
 そんな中、しっかり作品を支えてくれたのは助演キャストたち。寿ゾフィーはますます凄味が増し、彼女の取り巻きたちは、芝居では遊びながらも聞かせどころや笑わせどころはしっかり場を盛り上げ脇役の鏡。メイドたちは一部メンバーが入れ替わっているものの、小笠原リヒテンシュタイン伯爵夫人がしっかり取りまとめ、精神病院の患者たちの狂気ぶりはパワーアップ(蛇足ながら、ヴィンデッシュ嬢、エリザベート役者が元男役トップたちなので、なまじ元タカラジェンヌを配すると男役・娘役の空気になってしまう恐れがあるところ、いかにもオーディション突破組な実力はあるけれど主役の柄ではない女優を配するあたり、憎い演出です)。
 そして、特筆すべきは浦井ルドルフ。第二幕の後半でやっと登場するのですが、彼の登場と同時にパッと舞台が華やかになります。いつの間にか頼れるミュージカル・スターになりました。「闇が広がる」なんてほとんどソロ・ナンバー。決して歌手でもダンサーでもないのですが、舞台中心が似合うスター・オーラがあって、革命場面でも、トート・ダンサーを率いているように見えるのはアッパレ。ダンスは型や動きを追うのではなく、ドラマ性ある、魅力的な場面に昇華させる力を持ってますね。今まで印象に残らない俳優だったのですが、ガラスのような繊細な貴公子役だけでなく、大胆な役もこなせる幅が広がり、存在感アップ。もちろん、皇太子としての気品は今なお。でもって、僕が一番好きなのはカーテンコール。ゾフィおばあちゃんを本当の孫のようにやさしくエスコートする姿がなんとも温かくて、実に良い気分で劇場を後にすることができます。
 今日のチビルド:石川新太は一昨日の田川颯眞君(上手い!可愛い!お勧め!)とは芸風が全く違い、いかにも繊細で神経質な王子様。この役にピッタリです。子役にもかかわらず、プロローグでは大人たちに混ざって大きく踊り、「ママに会わせて!」とゾフィーには切々と訴え(これを拒絶するゾフィーてホント、強く・厳しく・冷酷に・冷徹に!な女帝ですね)、「ママどこなの?」ではトート閣下よりも安定した歌を披露。人生がまだ数年の子なのに、芸歴何十年という大人たちも真っ青なものを見せてくれるんですから大したもんです。
 と、あちこち突っ込みまくりですが、結局のところ「楽しかった〜」です。キャストをご覧の方は密かにプププと笑われているかと思いますが「歌で勝負の人たち」が一昨日(例外:伊礼ルドルフ)とすれば、「個性派として勝負の人たち」が今日の人たち。ええ、もちろん、乱暴な分類であることは承知してます。でもって、僕は一昨日チームが好みなので、ついつい今日は文句タラタラになってしまうのですが、個性派は個性派で、真似しようにも真似できない芸を見せてくれるので、役作りの違いから、作品の新たな面が光ったりして、これはこれで来て良かったなと思います。どんなキャストが来ても作品をきっちり完成させてしまう計算された演出と、楽曲の良さ、何よりも舞台から発せられるエネルギーに「明日を生きていくエネルギーを頂戴しました」ということが嬉しいです。満足、満足。


2008年11月08日(土)13:00-15:35
劇団四季「ソング&ダンス 55ステップス」@四季劇場[秋]

 B席 5250円 2階-6列-1番 (パンフレット 四季の会会員価格:1400円)
 構成・振付・演出:加藤敬二

 ヴォーカルパート:
  阿久津陽一郎、高井治、田中彰孝
  井上智恵、早水小夜子、花田えりか
 ダンスパート:
  脇坂真人、岩崎晋也、西尾健治、萩原隆匡、松島勇気
  厂原時也、斎藤洋一郎、徳永義満、神谷凌
  柴田桃子、高倉恵美、杏奈、泉春花、加藤久美子
  須田綾乃、恒川愛、長島祥、駅田郁美、斉藤美絵子

 初日には加藤敬二や芝清道なども出演していたそうですが、この日はすっかり若手中心キャストにスライド。劇団四季の世代交代を強く感じる公演でした。全体レベルはとても高いです。歌もダンスも高レベルのものを安心して楽しむことができます。ダンスパートを中心に「普段見せ場が与えられない役者に見せ場を与えてみました」な作品で、一世代前の役者が降板した現在、逆に四季の個性を際立てた言えるのではないでしょうか。アンサンブルたちは、見せ場を与えられていますが、個性的な役者が存在せず、終演後に強く印象に残るスターがいないのがいかにも「誰が演じても同じ状態」を目指す四季らしいといえば四季らしいです。  ヴォーカルパートでも特出した扱いを受ける人がいなく、主演経験者には気のどく!? 早水小夜子は以前「音大組がミュージカルーに出演させられて、動きが一人だけ浮いてて気の毒」な時期もあったのですが、いつの間にやら立派なミュージカル役者になってました。(スミマセン、四季はついつい敬遠しておりまして…)。動きにキレが出てきて群舞もカンパニーに溶け込み、芝居がかったキザる仕種がサマになってます。歌はクラシカルなものだけでなく、地声のものもかなり音が安定し、素敵な役者になりました。加藤敬二の構成も、スピードとパワー一辺倒だったソング&ダンス・シリーズの中で、ようやく緩急が出てきて、時にしっとりした場面(もっとあって良いけれど)が出てきたので、彼女の見せ場が出来た、というのもあります。
 なお、前半は歴代ミュージカルを中心に、後半は和物ミュージカル&ロイド・ウェバー作品でまとめられているのですが、和物ミュージカルの場面になると急に民放テレビの「年末歌謡祭」状態。編曲といい、構成といい、違和感がありました。和物は別の機会もしくは、別の幕にまとめた方が納まりが良かったかと。高井治が「何を歌ってもクラシック」で、ショースターとしての魅力に乏しいのも一因!?


2008年11月08日(土)18:00-20:45
東宝「RENT」@シアタークリエ

 A席 11000円 22列-15番 (パンフレット:1600円)
 演出:(マイケル・グライフ→)エリカ・シュミット

 マーク:(山本耕史→山本耕史→)森山未來
 ロジャー:(宇都宮隆/渡辺忠士→宇都宮隆→)Ryohei
 ミミ:(浜口司→TSUKASA→)Jennifer Perri
 コリンズ:(石原慎一→石原慎一→)米倉利紀
 エンジェル:(KOHJIRO→藤重政孝→)田中ロウマ
 ジョアンヌ:(坪倉唯子→浦島りん→)Shiho
 モーリーン:(森川美穂→La Pearl→)望月英莉加
 ベニー:(KONTA→泉見洋平→)白川侑二朗
 アンサンブル:
  安崎求、Eliana、Junear、彼方リキト、中村桃花
  戸室政勝、YOKO、高良舞子、田村雄一
( )は→(1998年赤坂ブリッツ・東京芸術劇場公演→1999年日本青年館・東京芸術劇場公演)

 10年ぶり(!)になる翻訳版「RENT」が登場。とはいえ、2000年@文京シビックホール、2002年(GALA)@赤坂ACTシアター、2004年@厚生年金会館、2006年@東京厚生年金会館。2007年@東京国際フォーラムホールCと、5回もの来日公演はあったし、映画版の公開もあったりして、何かとお馴染みの作品です。今回のカンパニーは、ミュージカルにご縁の薄い方々を中心としたキャストながら、それぞれの分野で活躍している(らしい)人材が揃ったのですが、持ち歌ではなく、よそ様の歌を聴かせる難しさを強く感じました。元々一人で歌うのに慣れているせいか、アンサンブルやハーモニーの魅力はほとんどなく、個々の魅力が勝負。……今日のハシゴは昼夜でなんとも対照的な公演のカップリングとなりました。
 演出・美術・歌詞は、以前の翻訳公演とは一新されました。舞台装置はバズ・ラーマンの「ラ・ボエーム」や「ムーラン・ルージュ」を思わせる、屋上の小屋。貧乏よりも愛らしさが際立ちます。この小屋がグルグル回って、内部と外を行ったり来たりするのが新鮮で、何とも小奇麗なイメージ。衣装も全体の色合いが明るくなった気がします。歌詞は……音が割れて聞き取れない&音響さんがバンドと歌唱とのバランスを取ってくれなかったので全然わかりません。もしかしたら、ボロ隠しとしてわざと?…であれば凄いことですが。
 前回のプロダクションも初日近くはコンサートもどきでしたので、今回も覚悟はしていましたが、とにかく芝居はおざなりです。みなさん歌うのに必死。残念ながら、歌や存在感で圧倒する人はいなかったみたい。大人たちやホームレスなどはアンサンブルメンバーが務めるのですが、セリフ(歌詞)とメロディ、リズムがこなれて泣く、粒が立たないので、何とも居心地が悪いです。全体的に演出家が「言葉を大切にしていない」印象が強いです。外来スタッフなので、そのあたりは限界があるのでしょうが、日本側スタッフがもう少し頑張ってほしかった! モーリーン:望月英莉加のショーは観客を放り出して、一人で盛り上がって勝手に終了。見せ場が多いエンジェル:田中ロウマも、女装のみが際立ち、キーパースンとしての芝居の盛り上がりはナシ。ポイント、ポイントとなる一言が全部滑ってるんです。「まじめに生きてる!」をリフレインする掃除夫、「I love boys」とコリンズがボソっと入れる合の手、モーリーンが「ラ・ヴィ・ボエーム」で堅物オヤジに「姉妹なの」と言い放つ鋭さ、エンジェルの死のシークエンス、マーク・コーエンの機関銃のごとくまくしたてる留守電、「seasons of love」でのアンサンブルの聞かせどころなどなど、見事に外しまくり。余韻がないなぁ、と。笑いも感動もいま一つです。観客と舞台が一体化せず、ひたすら舞台の焦りが伝わってくるのがいたたまれません。
 ショーアップはかなりされてます。とにかく、ダンス・ダンス・ダンス。マーク:森山未來なんて厚着&長髪にもかかわらず、歌うか踊るかで、汗びっしょり。(濡れた髪の毛が「増えるわかめちゃん」状態でうざったい位!!) でも、こちらも各自が勝手に舞台を暴れているだけで、カンパニーとしてのパワーに至っていません。ミュージカル中心の方たちでは上演できない作品ですし、様々なジャンルの音楽が入り混じり、さらにはメッセージがあれこれ込められている作品なだけに、ヴェルディの「ラ・トラヴィアータ」じゃないけれど「あちらを立てればこちらが立たず」な難しさのあるミュージカルです。でも、だからこそ、カンパニーが一丸となって、どこかの一点を目指さないと空中分解しちゃうんですよね。今回はまだ目指す先を模索中な状態。本公演というより、舞台稽古を観に来ちゃった、そんな気分で劇場を後にしました。一部Wキャストなので、比較は難しいのですが、次の観劇予定は千秋楽近く。約二か月の公演で、どう進化するかを楽しみにしています。せっかくの異種混合カンパニーなので、ぜひご覧になった方に「ミュージカルって良いねぇ」と思っていただけるような状況になってほしいです。今は……どちらのファンにも不満足かと。。。


2008年11月11日(火)19:00-21:05
エヴァ・メイ&アントニーノ・シラグーザ「デュオ・リサイタル」@東京文化会館

 C席 5000円(都民劇場会員価格) 3階-L4列-24番 (パンフレット:無料/1000円)

 ソプラノ:エヴァ・メイ
 テノール:アントニーノ・シラグーザ
 ピアノ:パオロ・バッラリン

 ドニゼッティ:「ドン・パスクァーレ」より「その差しの魔力」
 ドニゼッティ:「ドン・パスクァーレ」より「もう一度、愛の言葉を」
 ベッリーニ:「清教徒」より「いとしい乙女よ、あなたに愛を」
 ドニゼッティ:「連隊の娘」より「高い身分と豪勢な暮しに・・・・フランス万歳!」
 ドニゼッティ:「連隊の娘」より「マリーのそばに居るために」
 ドニゼッティ:「連隊の娘」より「何ですって? あなたが私を愛している?」
 (休憩)
 カルディッロ:カタリ
 ララ:グラナダ
 ベッリーニ:「夢遊病の女」より「おお、花よ、お前に会えるとは思わなかった・・・・」
 ベッリーニ:「夢遊病の女」より「ああ、この思いを乱さないで」
 ベッリーニ:「夢遊病の女」より「この指輪を受けてください」
 ドニゼッティ:「愛の妙薬」より「人知れぬ涙」
 ドニゼッティ:「愛の妙薬」より「そよ風に聞けば」
 (アンコール)
 プッチーニ:「ラ・ボエーム」より「ムゼッタのワルツ」
 ドニゼッティ:「連隊の娘」より「ああ友よ! 何と楽しい日」
 カプア:オー・ソレ・ミオ
 ヴェルディ:「椿姫」より「乾杯の歌」

 今、絶頂期ではないかと思える二人のデュオ・リサイタル。スターとしての立ち居振る舞いといい、演奏といい、もう余裕綽綽。クラシック歌手のリサイタルって、精神を集中させようと、舞台登場〜歌い出しまで緊張感タップリのことが多いのですが、今日のお二人はあちこちに目線を飛ばしまくり、手を振ったり、ウィンクしたり大活躍。そして、歌い終わればKISSの嵐。歌い手同士、ピアニストと、客席へと、たぶん今宵一夜で100回はKISSが飛び交っているハズ。終始、こんなにご機嫌なクラシック・コンサートも珍しいかと思います。一曲ごとに出入りするんだけれど、ニコニコ&ウキウキなお二人なので、ディズニー・マジックじゃないけれど、会場中が幸せ気分でいっぱい。おかげで「えっ、もう休憩ですか?」と思う位、あっという間に一幕終了。ニ幕になったら、一曲ごとに出入りするのが煩わしくなったのか、ドナルド・ダックみたいなピアニストは居残りを命じられたり/逆に舞台に一人だけ送り出されたり、いじられ放題!(彼も芝居したり、演奏中に髪の毛グチャグチャにされたりと大活躍!?)
 メイは衣装こそ、通勤時の丸の内OLのようなシンプルなものでしたが、ミニー・マウスのようにキュートで、長いモールを駆使して色気を振りまいたり、肩やら足を見せてみたり、結構なサービスぶり(それでいて清潔感があるのだから素敵な方です)。シラグーザにも、歌いながら芝居をしかけるしかける。  シラグーザなんて、舞台に登場した時点で「みなさ〜ん、こんにちは。僕の事大好きなんでしょ。アハッ、僕もみなさんに会えて嬉しいなぁ」とまるでミッキー・マウス。TDRで販売している耳のかぶり物を乗っけたい!! 舞台上でちょこまか動き回る方ですが、小柄なのとベビーフェイスでニコニコしているのとで「ちゃんとしなさいっ」感はナシ。でも、良く考えれば、メイのモールを自分の頭の上にまるでカツラのように乗っけちゃったり、結構やりたい放題。楽しい方々です。
 アンコールでは「アタシが歌うんだからアンタは引っ込みなさいよ」とメイがムゼッタぶりを発揮して笑わせれば、シラグーザは「なんでプログラムに入ってないの?」な「連隊の娘」の中での一番の聞かせどころ、超高音の連続を、とっても簡単そうに聞かせてくれ、最後は仲良くデュエットでお開き。何度も続くカーテンコールでしたが、ミニーちゃんが「ささ、両側からよろしくね♪」とミッキー&ドナルドに両側からKISSさせて、明るい笑いの中に幕となりました。  それにしても、これだけ気楽な雰囲気とは裏腹に、何とも完璧に歌いこなすお二人の歌手としての力量に脱帽です。メイはpppのフレーズもしっかり劇場中に響かせ、シラグーザなんて一曲目でハイDesを軽々と決めちゃうものだから、もうその後なんて、難しいハズの歌が難しく聞こえないんです。ありがたいことに、僕はこの二人の不調には出くわしたことがなく、いつでも満足な歌を堪能しています。嬉しいことです。来年も来日予定があるそうなので、今からとっても楽しみにしています。


2008年11月15日(土)14:00-17:00
新国立劇場バレエ団「新制作/世界初演 デヴィッド・ビントレーのアラジン」プレミエ@新国立劇場オペラパレス

 C席 4200円 3階-L5列-3番 (パンフレット:1000円)

 振付:デヴィッド・ビントレー
 指揮:ポール・マーフィー
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 アラジン:山本隆之
 プリンセス:本島美和
 魔術師マグリブ人:マイレン・トレウバエフ
 ランプの精ジーン:吉本泰久
 アラジンの母:難波美保
 サルタン(プリンセスの父):イルギス・ガリムーリン
 オニキスとパール:高橋有里、さいとう美帆、遠藤睦子、江本拓、グリゴリー・バリノフ、佐々木淳史
 ゴールドとシルバー:川村真樹、西川貴子、貝川鐵夫、市川透
 サファイア:湯川麻美子
 ルビー:厚木三杏、陳秀介
 エメラルド:寺島ひろみ、寺島まゆみ、中村誠
 ダイアモンド:西山裕子

 何とも素晴らしい新作が登場しました。思わず休憩時間にボックスオフィスに出向いて、別キャストの公演を購入してしまった程。振付はビントレーならではの、非常に高度なテクニックを求めながらも見応えがあるし、音楽もバレエ作品としては変化に富んでいて、ライトモティーフなんかもあって、耳馴染み良いし、何よりも新国バレエ団の実力全開といった構成・演出に拍手。残念なのは東フィル。特にラッパのヘナチョコさには脱力。せっかくスター・ウォーズのような音楽だというのに、恐る恐る&失敗だらけってどういうことでしょう!? ロンドン・シンフォニーもしくはボストン・ポップスばりのブラスまでは期待しないけれど、いい加減、バレエ公演でのやる気なしの演奏は勘弁してほしいです。
 「アラジン」というと、お馴染みアラビアン・ナイトの一遍なのですが、どうやら原作は中国が舞台になっているそうです。今回は日本での公演ということもあり、アラブとアジアの融合といった舞台。第一幕の舞台装置は東京ディズニーシーのアラビアンコーストのような雰囲気で、アラジンもおなじみの衣装で登場しますが、そういえば、アラジンの母は衣装も動きも中国人。獅子舞やら龍の踊りやらも登場して、何でもあり状態が楽しい♪
 第一幕では、アラブの雑踏からスタート。いたずら者のアラジンが警察に捕まるのですが、それを救った魔術師マグリブ人は洞窟の中へ古いランプを探しに行くよう命じるのですが、スムーズに動きまわる大道具が大活躍で、街中から旅の道中、そして洞窟の入口や洞窟の中など、場面変換が実にスムーズ。前回公演の「カルミナ・ブラーナ」でも思ってことですが、ビントレーはイギリスの振付家ということもあってか、ミュージカルの舞台をかなり研究されている方ではないかと思うんです。舞台の流れといい、装置のデザインや配置といい「あ、これは○○と同じだ!」ということが多々あります。日本のバレエ団の人ってあまり他ジャンルの劇場で見かけることがないのですが、ジャンルは違えども、同じ舞台芸術なのですから、多彩な舞台に触れて、あれこれアイデアを仕入れるって大切なんだなぁ、と。ちなみに、洞窟のセットはプライド・ロックのような感じ。
 渦を巻く照明が大活躍で、魔法にかかる場面やら、洞窟の中の怪しい雰囲気などを怪しく演出します。でも、いざ洞窟に降り立ってみれば、そこは宝の山! この宝に扮した宝石たちのディヴェルティスマンが何とも秀逸。第一幕にしていきなり大場面です。何しろ、新国の誇るスターたちが次々に登場して超絶技巧を披露していくのですから! 新作とあって、場割も登場人物も知らないまま「凄すぎ、何なのこの作品?」と観ていたのですが、休憩時間に配役表をチェックして納得。すっかりバレエ・ガラ状態です。(新国の女性ダンサーは人材豊富で、個性あるスターが揃っているのでこういう時とっても楽しい。男性ダンサーは最近若手が多いせいかまだこれからに期待。痩せすぎでダンサーとして美しくない体型の人が目立つかな。男性ダンサーはある程度筋肉と適度な体格のための脂肪がついてないと舞台映えしないので要注意です。)
 ここで休憩が入っても良いところでしょうが、スピーディに舞台は進みます。せっかく集めた宝とランプを、なぜかアラジンがマグリブ人への引き渡しを拒否したために、彼は洞窟に閉じ込められてしまうことに! とはいえ、彼は魔法のランプを持っているから大丈夫。ランプの精ジーンを呼び出し、魔法で帰宅しちゃいます! ジーンはいきなり宙吊りで登場。残念ながらフライングとまではいかず(そこまでやるとミュージカルになっちゃう?)、そのまま地上に降り立つだけですが、まさかバレエでこの演出が見られるとは思っていなかっただけに、とっても新鮮。
 洗濯屋を営む母親のところへと帰宅したアラジンが事の顛末を母親に説明し、輿に乗ったプリンセスが浴場でやってきた姿に一目ぼれしてリンゴを投げつけて第一幕は終了。この時点で、アラジンはイタズラっ子なだけでなく、結構欲深く、さらにかなり無鉄砲野郎なことが判明。
 そんなわけで、第二幕はいきなりプリンセスの入浴をアラジンが覗き見する場面でスタート。あっけなく見つかるものの、プリンセスはアラジンにリンゴを投げ返し、いきなり二人はラブラブに。とはいうものの、プリンセスのシャワーシーンを覗き見するなんてもってのほか! アラジンはサルタンの命令によりあっけなく死刑宣告。と、いきなり「エリザベート」じゃないけれど、死刑囚の母(=アラジンの母)が登場して命ごい。シリアスな場面にもかかわらず、中国式のお時儀やら動きやらが楽しく、ファンタジー色が強いです。で、ゾフィー皇太后はいないけれど「却下!」→「いやぁ〜、陛下、お慈悲を、お慈悲を」となるのですが、ふふふ、この母はちゃんと魔法のランプを持ってくるわけでして、ジーンを呼び出して場を治めちゃいます。エライッ。ストーリー上はジーンたちが大騒動を起こすことになっているのですが、バレエとしては、男性アンサンブルを中心にした青色ダンサーズによる大群舞。ジーンを中心に気持ち良く暴れまくります。久しぶりに大役で登場するランプの精ジーン:吉本泰久が大活躍。若手を率いて、暴れまくります。怪我で一線を退き、年齢的にもう引退かと思っていた人が元気に登場するのが嬉しい喜びと、ストーリー上の「助っ人がやってきたぞ!」が重なって、嬉しさ二倍。小柄な人ですが、「俺に付いてこい!」な雰囲気が何とも秀逸。
 でもって、ジーンの魔法により、ゴージャス野郎に変身したアラジンはめでたくプリンセスとご結婚。喜び勇んでのデュエット。そういえば、男らしさ、女らしさの魅力全開の舞台でしたが、ラブラブな場面はここが初めて。この手の場面があってこそ主役ってもんです。オケもロマンティックに盛り上げて、オペラグラス必携の場面です。
 と、青色ダンサーズどもの群舞やら、主役のデュエットやらで、さんざん盛り上がった直後、一人芝居で幕を下ろすのが魔術師マグリブ人:マイレン・トレウバエフ。トップダンサーでありながら、今回はキャラクター役。濃い顔と大きな表情を活かし、今にも声が聞こえてきそうなわかりやすく華やかなマイム。今すぐ「シンデレラ城ミステリー・ツアー(なくなっちゃいましたね)」に登場して欲しい大怪演。帝劇では高嶋兄がルキーニを頑張ってはいますが、この手の役や身振り手振り&表情が豊かで、かつそれが自然な人が演じてこそ。トレウバエフは余裕たっぷりに「ウワッハッハ〜」と高笑いするだけで、その存在感の大きさで舞台を支配。この手のお話は悪役が盛り上がってこそなので、まさに適材適所。
 ちなみに、アラジンの母:難波美保とサルタン(プリンセスの父):イルギス・ガリムーリンがちゃっかりラブラブになるのも見逃せないポイント。第一幕では「ったくこの馬鹿息子!」とキリキリしていたお母ちゃんですが、第二幕では大阪のおばちゃんのノリ。逆ナンパが楽しい。芝居的要素の強いバレエとあって、ショーナンバーの際中も、舞台のあちこちで、小芝居が繰り広げられているのが素敵です。
 終幕は相変わらずわがまましているアラジン(ゲームに負けてはすねちゃうし、新婚早々にもかかわらず、男友達の誘いに妻を放り出して出かけちゃうし)の留守を狙って、ランプ売りに変装したマグリブ人が「古いランプと新しいランプを交換しまっせ」とプリンセスににじり寄り(この王宮、警護はどうなってるんでしょう?)まんまと魔法のランプを手に入れるのですが、かぶっていたマントを脱ぎ棄て「俺と一緒に行くのだ〜」とプリンセスに迫るあたり、エリザベート皇后の体操室の場面を思い起こします。トレウバエフ、歌えるのであればトートでもルキーニでも良いのでぜひ帝劇へ〜〜〜。ジーン・マグリブ人・プリンセスが空を飛んでモロッコに移動する際は、幕に画像を映し出して説明するのですが、何とも可愛らしい姿が動くので、人間によるダンスの見せ場ではないけれど、ここ好きですね。「ライオン・キング」みたい。あ、ビントレーは「ライオン・キング」はともあれ「エリザベート」は観てないですよね、きっと。。。
 して、クライマックスになり、ようやくアラジン・マグリブ人・ジーンのトップ3が同じ板に登場。誰もがテクニシャンなので、戦いの踊りが切れ味鋭くスピーディ。大がかりな舞台機構を使用しないので、ここでもトレウバエフの顔芸が大活躍。ダブルで配役されている冨川裕樹が対照的に薄顔のダンサーなので、どんなマグレブ人を創造するのか興味津津ですが、残念ながら観劇予定なし。。。
 最終場面は大フィナーレ。宝石たちは登場するし、黄金の龍踊りまで繰り広げられますし、トップコンビのデュエットなど、王道のものを一通り登場させて幕。ストーリーの細かい部分はさておき、演出は祝祭色に満ちているし、ダンサーは幸せいっぱいな表情で踊り狂っているし、観ているこちらも良い気分。見どころは多いし、変化に富んでいて飽きることもなく、楽しい・楽しいな絵巻物の世界にどっぷり浸ってまいりました。ぜひぜひ上演を繰り返し、定番作品として定着させていただきたいです。
 アラジン:山本隆之は、二枚目路線専門だっただけに、今までにないキャラクター。ダンスは上手いし、安定感がありますが、いかんせんミス・キャスト。いたずらっ子なガキを演じるには大人っぽい人なので、損をしてます。でも、世界初演の新作の初日に登板するなら彼しかいないでしょうし「模範演技」としてアリかな、と。プリンセス:本島美和は華やかだし、可愛いです。彼女はまだまだ若いので、今後の位どりに期待。……芝居上ではしどころのない、おとぎ話のプリンセスを演じることと、支えることの難しさを感じました。バランスというか、信頼関係というか、長年コンビを組んでいる二人というわけではないのがモロに舞台に出ているかと。。。十分、合格点だし、満足もしていますが、次回は別キャストで観てみたいな、と。


2008年11月16日(日)14:00-16:50
新国立劇場バレエ団「新制作/世界初演 デヴィッド・ビントレーのアラジン」@新国立劇場オペラパレス

 Z席 1500円 4階-R8列-5番 (パンフレット:1000円)

 振付:デヴィッド・ビントレー
 指揮:ポール・マーフィー
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 アラジン:八幡顕光
 プリンセス:小野絢子
 魔術師マグリブ人:冨川裕樹
 ランプの精ジーン:中村誠
 アラジンの母:難波美保
 サルタン(プリンセスの父):イルギス・ガリムーリン
 オニキスとパール:大和雅美、伊東真央、寺田亜沙子、福田圭吾、泊陽平、陳秀介
 ゴールドとシルバー:川村真樹、西川貴子、貝川鐵夫、市川透
 サファイア:湯川麻美子
 ルビー:寺島ひろみ、マイレン・トレウバエフ
 エメラルド:高橋有里、さいとう美帆、古川和則
 ダイアモンド:西山裕子

 昨日の公演がとっても楽しかったので、キャストがほとんど入れ替えになる今日の公演も当日券で観てきちゃいました。同じ作品、同じ演出にもかかわらず、出演者が変わるとだいぶ印象も変わってきます。昨日はLサイドの最下手、今日はR再度の最上手からの観劇なので、見えるものも違ってくるので、結局、今日もどこを見れば良いやら状態。(ちなみに、最終回はセンターからの観劇予定)。
 アラジン&プリンセスは、昨日の山本×本島コンビはゴージャスだったんだなということが今日の発見。キャラクターとしては今日の方がお伽噺にはピッタリなんです。洞窟に降りて行くシーンは、プライドロックが舞台上手奥に設置されているので、今日の席からは何も見えず。でも、昨日見ている場面だし、Z席だし、心は穏やか。して、宝石たちのディヴェルティスマンは昨日が本公演だとしたら、今日は新人公演といったメンバーでしょうか(一部重なってますけど)。今後の新国バレエ団を担っていくであろう面々の踊りを大いに楽しみました。ビントレーの振り付けは体力勝負のものが多いので、若手もアピールしやすいんでしょうか。とはいえ、サファイア:湯川麻美子がセクシー・ポーズで登場すると「若者たち、頑張ってね」と感想も豹変。テクニックだけでなく、舞台でいかに魅せるか、ぜひぜひ今後の舞台に期待です。舞台人は印象に残ってこそナンボですもの。東京バレエ団でお気に入りの一人だった古川和則が新国バレエのメンバーに加わったのが嬉しい。今シーズンからは、K-BALLETの芳賀望も加わったことですし、男性の影が薄い新国バレエ団、ぜひとも女性ファン獲得にむけて、スター男性ダンサーを育成してくださいませ(今のところ、職人系として育っている人が多い印象)。
 昨日は見えなかったけれど、アラジン母はかなり細かな芝居をしていたんですね。「宝石がゴロゴロだって!?……はぁ、まったくうちの馬鹿息子は何をいてるんだか……って、あらま、本当だったの? うひょー、宝石、宝石♪ ささ、さっさと家の中にしまってチョウダイ!!」と仕事そっちのけになる過程が楽しくて目が釘付け。この役好きです。
 第二幕はバスタオルだけでプリンセスたちがダラダラと入浴する鼻血ブーなシーンで始まります。こちらもアンサンブルが大活躍。モップ兄ちゃんたちは「おい、お前さぼってるんじゃねーよ」と言ってる人に限って、バスタオル姉ちゃんに見とれてたりして「こんな人、いるわなぁ」と思わずオペラグラスで観察。主ストーリーには関係ないし、いなくても問題ないチョイ役ながら、いるだけで舞台に奥行きが加わる役を、本気に取り組んでいるダンサーに拍手。素晴らしいスパイスです!!! 侍女たちがバスタオルで囲んで、プリンセスが着替えをするシーンは「うっかり見えたらどうしよう?」な場面ですが、それを覗く八幡アラジン……彼ならば覗いていても「あら、どこの子かしら?」な感じだから、侍女たちが「ぎゃーーー」と悲鳴をあげて置くに逃げ込む程のことはありませぬ。
 さて、二幕後半の見せ場は、ジーン登場の場面と、アラジン&プリンセスの結婚式。本日のジーン:中村誠は長新でスタイルが良く、技の一つ一つが実に見映えします。が、せっかくの資質にもかかわらずカンパニーを率いる迫力がなく、昨日の吉本泰久が「ザ・スター」としてガンガンにオーラを放っていたのと同じ役にもかかわらず、群舞に埋もれてしまう感じ。掛け声がかかってそうな力あるダンスではないので物足りないわぁ。彼は他作品でも線が細い印象があるのですが、もっと客席にガンガンにアピールしてくれると良いんだけどなぁ。アラジン&プリンセスのデュエットダンスは色気よりも若いエネルギーが前面にでたもの。なかなか爽やかなカップルです。ただ、八幡顕光があまりに小柄なので、リフトになるたびヒヤヒヤ。持ち上げても見映えせず、今にも地面にぶつかりそうな技の連発。役を選ぶ人ですね。。。そして、この幕を下ろすのが魔術師マグリブ人:冨川裕樹。トレウバエフのような顔芸ではなく、インテリ腹黒タイプとして造形。どちらもありですが、コミカルさのあった昨日に比べて、今日は怖い〜なマグリブ人でした。
 第三幕の夫婦生活場面は、アラジンもプリンセスも子供っぽさが抜けずに、可愛らしい新婚さん。いえ、夫婦というより友達同士感覚!? マグリブ人に幽閉されたプリンセスをアラジンが救いに来た際のデュエットは情感よりもテクニック優先の印象。実は、四階席には、やたらと「ブー」と叫ぶおっちゃんが一人いたのですが、僕はブーとは思いませんでした。確かに、今後に期待な箇所は多かったけれど、今の時点でもちゃんと魅せてくれますし、ダンサーの個性は生きていたので。個性といえば、花嫁の父として「首をちょん切っておしまいっ」と威張ってたくせに、涙流してヨヨヨと泣き崩れるイルギス・パパと、「私がいるじゃないの」と首をもたれるアラジン母のカップリングがなんとも良い味を出してます。
 衣装や音楽やアジアもアラブもごちゃまぜだけど、何ともスケールの大きなオーケストレーションですし(トランペットは相変わらず。幕間はテーマ音楽ではなく、吹けない部分を練習してほしい。。。)、新国の新プロダクションというよりも「いかにも西洋人が作った東洋の舞台」ですが、何だかディズニーランドっぽくて僕は好きです。「だって、違いがわかんないんだも〜ん」という開き直りが素直でよろしいwww 獅子舞も、結婚式のおめでたい時ですもの、余興として大歓迎(日本の獅子舞に比べて、犬っぽくて可愛いんです)、竜踊りもスリムでスピーディーでなかなか小回りがきいてますし。
 さて、次の週末は庶民派アラジン×クールビューティーなプリンセスのカップリング。古典バレエだと「かくあるべき」という先入観を持っちゃうのですが、新作バレエだと、どれがスタンダードになるかわからないし、全キャスト制覇したくなるような幅のある作品だし、何とも刺激的です。昨日に比べて、音楽も流れも僕の体に入るので、今日の方がずっとリラックスして観られました。今から次が楽しみ〜♪


2008年11月16日(日)21:05-23:00
映画「ハッピーフライト」@TOHOシネマズ市川コルトンプラザ スクリーン1

 全席指定 シネマイレージ利用 無料 J列-24番 (パンフレット:600円)
 監督:矢口史靖

 副操縦士[鈴木和博]: 田辺誠一
 機長[原田典嘉]:時任三郎
 キャビンアテンダント[斉藤悦子]:綾瀬はるか
 キャビンアテンダント[田中真里]:吹石一恵
 グランドスタッフ[木村菜採]:田畑智子
 チーフパーサー[山崎麗子]:寺島しのぶ
 オペレーション・ディレクター[高橋昌治]:岸部一徳
 乗客・カツラ着用の運のない男[丸山重文]:笹野高史
 乗客・問題のビジネスマン[清水利郎]:菅原大吉
 ライン整備士[小泉賢吾]:田中哲司
 バードパトロール[馬場光輝]:ベンガル
 グランドマネージャー[森田亮二]:田山涼成
 乗客・新婚カップルの新郎[岡本福夫]:正名僕蔵
 乗客・新婚カップルの新婦[岡本幸子]:藤本静
 グランドスタッフ[吉田美樹]:平岩紙
 OCCディスパッチャー 気象担当[吉川雅司]:中村靖日
 OCCディスパッチャー カンパニー無線担当[中村詩織]:肘井美佳
 若手のドック整備士[中村弘樹]:森岡龍
 レーダー室の管制官[渡辺忠良]:長谷川朝晴
 レーダー室の管制官(訓練中)[宮本理英]:いとうあいこ
 愛鳥連盟[今井一志]:森下能幸
 コントロールタワーの管制官[水野頼子]:江口のりこ
 コントロールタワーの管制官[竹内和代]:宮田早苗
 機長[望月貞男]:小日向文世
 乗客・菜採と一緒にゲートを走る:竹中直人
 悦子の母[斉藤利江]:木野花
 悦子の父[斉藤直輔]:柄本明

 ハワイまで飛行機を飛ばすためには様々な部署と大勢のスタッフが関わっています。が、それぞれの部署で問題が同時多発したら!?というのがこの映画。一つ一つのエピソードは取りたてて目新しいものはありません。
 機長昇進をかけた最終試験はいきなりの担当試験管チェンジ。おまけに、受験生の鈴木和博は極度の緊張魔。すぐにイッパイ×2になっちゃうので、パニックの嵐。試験管は冷静そうでいながら、いざとなると力なく笑うだけだわ、怪我して操縦できなくなっちゃうわで、こんなコックピットの飛行機嫌〜。
 客席乗務員は「スチュワーデス物語」が復活。斉藤悦子はドジで間抜けで上司からもお客様からも叱られっぱなし。そして、すぐ泣く、良く泣く。仕事は出来ない癖に、とにかく泣かれてばかりじゃ、僕もクレーマーになりそう。でも、チーフパーサーの山崎麗子はいかにも仕事ができる女で、きりりとしたキャリア・ウーマンぶりが僕の好み♪ こんな二人の間に入る田中真里のポジション、美味しいです。騒ぐだけ騒いで、締めはチーフパーサーに任せちゃうんですから。
 地上係員もトラブルいっぱい。オーバーセールあり、アップグレードの調整に、多種多彩なクレーム対応。叫びまくります、走りまくります。体育会系のノリでありながら、妙にクールで、事件だらけの状況を第三者的にバッサリ辛口コメントで片付けるあたりも僕好み。はっ、どうやら、僕は口が悪い、そしてバリバリ働く部署がタイプみたいwww
 その他、オペレーションセンターでは、天気のトラブルから燃料計算、飛行機故障に伴う指示まで一切合財を無線で指示。パニックになっているコックピット・クルーをテキパキ引っ張る手腕はすばらしいけれど、この冷静さと毅然とした態度、緊張とまったりの格差など、ちと僕には無理っ。そして、整備士ともなるとますます無理っ。時間について常にハッパをかけられながら細かな機械を調整し、さらには工具一つの紛失でも「見つかるまで帰れない」なんて、すぐに「○○はどこ〜〜〜っ!?」と騒ぐ僕にはあまりにもかけ離れた世界です。
 そして、乗客も、極端に飛行機恐怖症のカップルや、サービスを受け慣れてないカツラちゃん、ニコニコぶりが一見「良い人」っぽいけれど実はクレーマーなおっちゃん(誰ですか、僕のことだと言ってるのは!?)、他の人のトランクを知らんふりして持って行くお客に、ナンパ野郎などなど。
 場面場面で泣いたり笑ったり怒ったり、たった二時間のうちに一日分の労働をした気分ですが、どんなトラブルに見舞われても、何とかしましょうと駆け回るスタッフの姿が気持ち良く、映画終了と同時に「あ〜、今日も良く働いた!」という気分になりました。全部集まっちゃうといかにもフィクションだしオーバーなんだけれど、日常生活の一場面を切り取ったものばかりのこの映画。「明日から頑張ろう」と妙にエネルギーをチャージしてくれます。


2008年11月19日(水)19:00-21:00
グザヴィエ・ドゥ・メストレ「魅せる。ハープの室内楽」 @トッパンホール

 全席指定 6000円 E列-20番 (パンフレット:無料)

 ハープ:グザヴィエ・ドゥ・メストレ
 ヴァイオリン:小森谷巧、渡辺基一
 ヴィオラ:柳瀬省太
 チェロ :古川展生

 ヘンデル:協奏曲 変ロ長調 Op.4-6 HWV294*
 ドビュッシー(ルニエ編):2つのアラベスク
 ヒンデミット:ソナタ
 ゴドフロワ:ヴェニスの謝肉祭 Op.184
(休憩)
 ドビュッシー:新聖な踊りと世俗の踊り*
  T 神聖な踊り
  U 世俗の踊り
 パリシュ=アルヴァース:コンチェルティーノ ホ短調 Op.34*
(アンコール)
 ドビュッシー:新聖な踊りと世俗の踊り*
  U 世俗の踊り
 ドビュッシー:「ベルガマスク組曲」より「月の光」
 (*は弦楽カルテットが共演)

 ウィーン・フィル首席ハーピスト、グザヴィエ・ドゥ・メストレのコンサート。何とも男性的なハープで、いきなり力強い音色に驚かされました。高音域は琴のような響きです。ポロロ〜ンというのがハープ演奏のイメージですが、彼の演奏は、ポロポロッて感じ。ロッシーニなんかに良く超高音歌手の装飾音多彩な場面が登場しますが、あんな感じではなく、グルベローヴァのような硬質で鋭いコロラチューラをご想像ください。力強すぎて、時に曲の流れと演奏とがかけ離れてしまう箇所もあったけれど(もしかしたら編曲が原因?)ハープという楽器のイメージを覆す、グイグイ引っ張っていくタイプの演奏でした。そして、力強いだけでなく、弱音がとても美しく、今日はトッパンホールという音響が良い小ホールでの公演で、観客も音澪を最後まで大切に味わうだったので、一同が息をひそめる中、満足そうに楽器を立てかけるメストレ。。。何とも幸せな時間を過ごしてきました。
 弦楽カルテットは、小森谷巧のヴァイオリンが「40代の音」(勝手に命名。実年齢は存じておりません)で、艶やかで表現豊かなところが僕好み。ちなみに、若手になると繊細で爽やかだけれど、サラサラした感じになります。渡辺基一はいかにも難しそうな中音域を、飛び出すことなく終始サポート。この二人の演奏好きです♪ ヴィオラ:柳瀬省太はドイツから久しぶりにおかえりなさい! 最近は都響で柳瀬兄を観慣れているせいか、あまりの太りっぷりにまずビックリ。シャツがパッツンパッツンで、お腹突き出して歩く姿は……ちと老け込み早すぎ。舞台人としても少しシャキッとして欲しいです。でも、音色は相変わらず暖かくて包み込まれるよう。で、のぼぉちゃんですが、彼のフランス物は外れたためしがありません。なぜレコーディングしないのか謎ですが、細かなフレージングの処理といい、色気の出し方/引き方のバランスといい、このジャンルについては日本一じゃないかと贔屓目(贔屓耳?)抜きに思ってます。そんなわけで、トップとチェロがブリリアントに、中音域はベテランが職人芸でがっちり固めるカルテットの演奏はアンコールでも演奏した「世俗の踊り」が白眉。管楽器ナシにも関わらず、とても色彩感豊かで、音のうねるまま、気持ち良く悶絶。


2008年11月22日(土)14:00-16:50
新国立劇場バレエ団「新制作/世界初演 デヴィッド・ビントレーのアラジン」@新国立劇場オペラパレス

 C席 4200円 3階-L5列-3番 (パンフレット:1000円)

 振付:デヴィッド・ビントレー
 指揮:ポール・マーフィー
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 アラジン:芳賀望
 プリンセス:湯川麻美子
 魔術師マグリブ人:マイレン・トレウバエフ
 ランプの精ジーン:吉本泰久
 アラジンの母:難波美保
 サルタン(プリンセスの父):イルギス・ガリムーリン
 オニキスとパール:高橋有里、さいとう美帆、寺田亜沙子、江本拓、グリゴリー・バリノフ、佐々木淳史
 ゴールドとシルバー:川村真樹、丸尾孝子、貝川鐵夫、市川透
 サファイア:西山裕子
 ルビー:遠藤睦子、冨川祐樹
 エメラルド:寺島ひろみ、寺島まゆみ、中村誠
 ダイアモンド:西川貴子

 楽しい楽しい「アラジン」もついに千秋楽。今日の主演は芳賀&湯川コンビ。K-BALLETで活躍していた芳賀望のアラジンは王子でも悪ガキでもなく、どこにでもいそうな一青年。そして、湯川麻美子のプリンセスは、漂う気品が、登場しただけでロイヤルです。今回のプリンセスたちの中では一番好き。ストーリー上のバランスとしては、今日の組み合わせが良いのかな。とはいえ、芳賀望には、他二者に拮抗する強い個性が欲しいところ。そして、新国立劇場に慣れていないせいか、四階席を見上げることがないのがちと気になる。。。
 マグリブ人のマイレンは、ますます絶好中。まだまだ動けるダンサーだけど、こうもキャラクター・ピースが似合うと、もう他の役じゃ物足りない!! アラジン母の難波美保、サルタンのイルギスともども、ノリノリのお芝居。客席の反応も良く、今までの観劇ではなかった拍手が公演中のそこここで沸き上がるようになったのも嬉しい限り。かくなる上は定番レパートリーとして毎年上演してほしいし、それに見合った作品だと思います。ダンサーの見せ場も多いし、ストーリーはわかりやすいし、音楽も耳馴染み良いし、新国バレエ団が公演を重ねることによって、世界的レパートリーにもなるかも!?
 アンサンブルは基本的に初日キャストと同じですが、湯川麻美子が主役に回った関係で微調整あり。サファイアは西山裕子が踊りましたが、18禁鼻血ブーだった湯川麻美子とは異なり、キュートなお色気。ダイアモンドは西川貴子。この手のポジションに次々とスター級を投入できる新国バレエ団の層の厚さは圧巻。
 今後に向けては、やはり男性ダンサーの充実が望まれるところ。今シーズンより、K-BALLETの芳賀望と、東京バレエ団の古川和則が加わったとはいえ、スター級の不在が寂しいところ。現在、このバレエ団のプリンシパルは山本隆之ただ一人。「なんで一人も認定されなかったの?」なのが女性ダンサーですが「なんで他にいないの?」なのが男性ダンサー。キャラクターダンサーはいれども、山本隆之の年齢を考えると、古典バレエで芯を張れる看板ダンサーは急募状態。
 とはいえ、今日の公演が楽しかったことについては何の曇りもありません。今後、この作品がより輝くためにも、一度オールスターキャストでの上演も観てみたいものです。ABTあたりが上演してくれないかしらん!? 何はともあれ、再演の発表を心待ちにしてます!!
 文句タラタラだった、トランペットのですが、とりあえず音が取れるようになってたのにはホッ。初日からこのレベルが欲しかった! そして、願わくば「上手に」吹いてほしかった。。。10回公演だったら、もっと美味くなってた!?


2008年11月23日(日)16:00-17:35
銀座チェロフェスタ2008
「古川展生サロンコンサート」 @ヤマハ銀座店(仮店舗)6Fサロン

 全席自由 (パンフレット:無料)

 チェロ:古川展生
 ピアノ:坂野伊都子

 バルトーク:ルーマニア民族舞曲
 グルダ:チェロ協奏曲 第三楽章より カデンツァ
 ベートーヴェン:チェロ・ソナタ 第4番 ハ長調 作品102-1
(休憩)
 シューベルト:アルペッジョーネ・ソナタ イ短調 D.821
 ショパン:チェロ・ソナタ ト短調 作品65より 3楽章
 ショパン:序奏と華麗なるポロネーズ ハ長調 作品3
(アンコール)
 カッチーニ:アヴェ・マリア
 久石譲:映画「おくりびと」テーマ曲

 12時から公開レッスンで5人を相手にほとんど休みなく相手を続けたのぼぉちゃん。ちょこっとだけインターバルを置き、夕方からは自身のコンサート。開場待ちで並んでいたら伊都子さんのお姿を発見。彼女のピアノも大好きなので「うひょぉ〜」と喜びます。さて、ヤマハ銀座店は仮店舗に移る前も店内にサロンがあり、のぼぉちゃんのサロンコンサートも開催されましたが、整理券の関係で、今日も一番前。ふふ、じゃ、僕が講師役になってレッスンしようぞ、と冗談が飛び出す程の至近距離。伊都子さんよりも僕の方がのぼぉちゃんに近いんですから。この距離って非常に弾きにくいと思うんですが、ま、のぼぉちゃんは見られるのが仕事だし慣れているでしょうからと、じっくり観察。事前にのぼぉちゃんの音楽作りについてお話をうかがっているだけに、いつも以上に面白いコンサートとなりました。(レクチャー直後だけに、観客の耳も肥えてましたし、ね)。
 して、いきなり伊都子さんのピアノでコンサートの始まり始まり。チェロのレクチャーなので、公開レッスンではほとんどチェロにしか触れていませんでしたが、ピアノもねぇ、同じ会場・同じ楽器にも関わらず(配置は違いましたけど)、音色のパレットといい、音圧といい「ピアノってこう弾くのよ♪」と瞬時にして観客のハートを鷲掴み。プロの鑑ともいうべき、客席コントロールです。して、のぼぉちゃんお得意の舞曲ですから、いきなりノリノリ。この二人、共演数が多いので、息ピッタリ。のぼぉちゃんは一人で全部仕切るよりも、共演者と丁々発止の駆け引きを行うことで、より魅力を増す傾向があるので、遠慮なくあれこれ遊び(?)を仕掛けてくる伊都子さんとのデュオは何とも魅力的なのです。
 コンサートのタイプとして、曲間にはのぼぉちゃんの楽曲解説が入りますが、このトークが抜群に上手になっていてビックリ。以前だったら「この曲、いろいろとありまして……好きなんです」だけで演奏だったのに、ちゃんと背景などの解説あり、一月のコンサートの宣伝もちゃっかりありで、観客の期待を盛り上げてからの演奏。確か、この曲は以前もサントリーホールで演奏していたような…うろ覚えですが…。全曲ではなく、カデンツァ部分のみの抜粋でしたが、チェロの演奏技法をギューっと濃縮・注入したとんでもない作品。高音なんて、指板ではたりなくなり、本来であれば弓がこする部分(と書いて分かります?)まで左手が繰り出すわ、音程があるんだかないんだか、いったい主のメロディは何なの?な、僕にはちと楽曲分析が難しいタイプの曲なのですが、なんだかスゴイことをしているのだけは伝わってきました。力演です。仮設店舗のサロンなので、音響はとてもデッドで、おまけに至近距離とあって、響きではなく、直接音のみ。超高音については、発泡スチロールをこすり合わせるかのような、心地良くない音なので、ちょこっと「席が近すぎた〜」と後悔する場面もありましたが、大好きな人の演奏が年々進化を続けている過程を楽しめる状況にある幸せをかみしめましたさ。
 グルダに続くは一転して古典派のベートーヴェン。ホッとする選曲です。のぼぉちゃんの音が変わったというのは、最近のコンサートのたびに思っていたことですが、この状態でじっくり聴いて再認識。中音域の表情が抜群に豊かになってます。メロディの幹も太くクッキリしていて、聴きやすいベートーヴェン。
 休憩を挟んでのアルペッジョーネ・ソナタは、ちょっと前に公開レッスンでも取り上げられていた曲なだけに、曲の構成も、音楽の作り上げる過程も「この形を求めていたんですよっ」な模範演奏。でも、のぼぉちゃんの模範というのは、ただ上手に弾くのではなく、いかに音楽を魅力的に仕上げていくかなので、細かなテクニックの積み上げと、全体とのバランスを楽しく拝聴。公開レッスンって、受講生のチェリストにとっても勉強になるでしょうが、聴講生にとっても、色んな影響を与えてくれます。
 ここ最近、古典派寄りの作品に力を入れている印象がありますが、僕としてはやはり後期ロマン派〜フランスの近代音楽がのぼぉちゃんとの相性が抜群だと思ってるんです。適度に甘く、小洒落た歌い回しが見事に曲とフィットするので。そんな中、時代的にはロマン派の走りだけれど、近代音楽のキラキラ感も湛えたショパンの演奏は実に興味深いんです(単にショパンが一番好きな作曲家というのもありますが)。以前、このソナタ全曲を初披露した時には、やっとこさ弾いているということで、文句タラタラ、ケチョンケチョンだったのですが、抜粋とはいえ、今ののぼぉちゃんなら、ショパンの万華鏡のような音楽もお任せ状態。でもって(調子に乗って!?)「本来、アマチュア・チェリストのための作品なので、チェロはメロディを弾くだけで、きらびやかな部分はピアニストが担当している曲ですが、今日はヴィルトゥオーゾ・ピースとして編曲されたものを演奏します」と解説した矢先、「何言ってるの、ショパンの曲はピアノが主役でしょっ!」とばかりに伊都子さんがゴージャスに演奏を始めるのがmyツボ。伴奏だなんて、この人絶対思ってないハズ。でもって、のぼぉちゃんも「俺が主役だ〜」と晴れやかに弾きあげるので、ノリノリの素晴らしい演奏。満足〜〜〜。
 アンコールはカッチーニのアヴェ・マリア。この曲は聴くたびに本田美奈子さんとの壮絶な共演が思い出されます。テンションが高くて、高くて、心かきむしられるアヴェ・マリアでした。今日のアヴェ・マリアは適度に「抜き(手抜きじゃないですっ」が入り、安心と信頼のアヴェ・マリア。最後は「おくりびと」のテーマ曲でお洒落に幕。一時間半というコンパクトなコンサートではありましたが、レクチャーに引き続いてののぼぉちゃん三昧。満喫しましたっ。


2008年11月25日(火)19:00-21:15
銀座チェロフェスタ2008
「チェロアンサンブルコンサート」 @王子ホール

 全席自由 G列-8番(パンフレット:無料)

 チェロ:古川展生、山本祐ノ介、江口心一(山本裕康の代役)、平田昌平

 銀座チェロフェスタ特別レッスンコース
  ボワモルティエ:4本のチェロのためのソナタ
 プロ・アマ混合チェロアンサンブルコース
  バッハ:ブランデンブルグ協奏曲 第6番 BWV1051
  チャイコフスキー:ロココの主題による変奏曲 Op.33
 (休憩)
 4人のマエストロによる〜チェロマスターズアンサンブル〜
  パッヘルベル:カノン
  ゴルターマン:ロマンス
  クレンゲル:「4つの小品」
 プロ・アマ混合チェロアンサンブルコース
  バーバー:弦楽のためのアダージョ
  ロッシーニ:ウィリアムテル序曲 より 「夜明け」「スイス軍の行進」
 (アンコール)
  ロッシーニ:ウィリアムテル序曲 より 「スイス軍の行進」

 一曲目はアマチュアだけの演奏。と、いきなりスーツ姿でマイク持ったのぼぉちゃんが登場してご挨拶。アマチュアのコンサートを盛り上げようと、ニコニコとテンション高いのぼぉちゃんと、かしこまって固くなっているアマチュア・チェリストたちとは対照的で、何だか、中学校か高校の弦楽部のコンサートみたい。微笑ましい光景です。
 で、一部の後半はプロが混ざっての演奏。……と、裕康さんが登場するはずがエグちゃんがニコニコしながら登場。船橋のおじちゃんもいるし、どこかで見た光景。あ、ティーンと一緒のコンサートだ! 何気に都響色が強いです。でもって、これまた中高生の定期演奏会(芸大オケでも可)に顧問の先生が賛助しているような光景。各パートのトップとして演奏をグイグイ引っ張ります。こういうのを見ると、いかにオケにおける各パートのトップの存在が大きいかを感じますね。ましてやコンマス人事が一大事となるのも納得です。
 休憩をはさんでのプロ4人によるアンサンブルは、さながら20周年とか30周年記念コンサートに特別したOBたちのよう。打ち合わせしてなさそうな、でも気心がしれいているせいか何となくまとまってしまったトークを挟み、気楽な小品たちを演奏。パッヘルベルのカノンのチェロ版は初めて聞きます。音域が聴きなれたものと違うので新鮮。(ワタクシごとですが、初めて弦楽部で演奏した曲はパッヘルベルのカノンでした。数十人で弾き始めたヴァイオリンたちが、一人脱落し、二人脱落し、最後にはソロに近い状態という、ハイドンの某交響曲のような仕上がりでしたけど。。。) のぼぉちゃん、司会やら後進の盛り上げやらで頑張ってたけれど、やはり、回りの人のフォローにホイッと乗っかってる姿の方がしっくりきます。今日もマイク押しつけて涼しい顔してましたwww そして、祐ノ介さんのトークって、何だか飲み屋のおっちゃんのような、方向不定&爆弾発言交ざりで、一瞬ドキッとするのですが、ちゃんと落としどころが押さえられていて、実に爽快。学術的なことも小学生に話すようにわかりやすく親しみやすい語法で話してくれるのが好き。あれ、そういえば、えぐちゃんだけマイク握ってなかった!?
 最後は再びプロ・アマ混合アンサンブル。ウィリアムテル序曲は「夜明け」をプロが中心に演奏した後、真ん中をすっ飛ばして「スイス軍の行進」へとワープ。ロッシーニ・クレッシェンドが華やかで楽しく、賑やかに空中分解してお開きとなりました。さすがにチェロだけでこの曲は無理っ。でも、アンコールで再度空中分解。楽しく笑っちゃってお終いというのも、アマチュアならではの締めですね。プロのコンサートだとありえないけれど、アマチュアの技量でも観客を楽しく盛り上げる粋な演出でした。


2008年11月26日(水)19:00-21:05
クリスチャン・ツィメルマン&チョン・ミョンフン@東京文化会館

  C席 5000円(都民劇場会員価格) 4階-R1列-13番 (パンフレット:無料)

 指揮:チョン・ミョンフン
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
 ピアノ:クリスチャン・ツィメルマン

 メシアン:ほほえみ
 ルトスワフスキ:ピアノ協奏曲
(休憩)
 チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調 作品74 「悲愴」

 ドビュッシーなどの近代の作曲家の音楽、母&その友人はダメと言います。「メロディがボヤボヤしていてつかめない」と。でも、僕にとっては大好きな時代。そういえば、今ではクラシックな作品とされるロマン派の音楽も、作曲当時は「前衛的だ」と敬遠されたりもしています。聴き手がどんな音楽に囲まれて育ったのか、どんな教育を受けてきたのか、というのが大きいと思う。ある一定の年代以上の人は極端にリズム感が悪く、いくら言っても体でつかめないのもその一つ。  実は、メシアンだとかルトスワフスキの音楽、全く印象に残ってないんです。メロディもコードもやたらと複雑で、何も感覚的に残ってないんです。感覚的に作ったのではなく、意図的に意味付けに力を入れて作られたのではないかと思ってます。僕にとっての音楽は感情表現。たとえば、今日の「ほほえみ」という曲、聞いた限りでは、どんなシチュエーションで浮かんだほほえみなのか、全く想像がつかないんです。そして、もし、この曲を僕が演奏することになっても(ってそんな予定はないけれど)、どう処理したら良いのかわかりません。数日前のチェロフェスタでのぼぉちゃんが「曲全体の構成を考えてフレーズを組み合わせていかないとダメ」と言ってましたが、スミマセン、どれも無理っ。  とはいえ、フランスなどでは、現代音楽が人気作品として聴衆に迎え入れられているけれど、いったいあの国では、子供に対してどんな音楽教育が行われているのか、興味があります。もし、そんな教育を僕も受けていれば、今、もっと多彩な音楽を楽しめるのになぁ、と。でも、映像が目に浮かぶといっても、CMで使われていたり、何かのBGMだったりという、個人的な経験に基づくことも多いことですし、また、日本の音楽教育も変化しているでしょうし、現代曲を演奏家が演奏し続けるのであれば、未来の誰かにとっては、非常に感情的な曲に聞こえるのかもしれません。  そんなわけで、楽しみにしていたのはツィメルマンのピアノだったのですが、結局楽しかったのはチャイコフスキーのシンフォニー。まだまだ僕にとっては、現代曲よりもロマン派の曲の方がしっくりきます。東フィルの好演もあって、ひときわ心に沁み入りました。冒頭のファゴットのソロの歌い回しにうっとり。これぞロマンティック♪ 続くフルートやクラリネットも艶やかな節回しで、休憩前の硬質な音楽が嘘のよう。新国バレエ「アラジン」ではボロボロだったトランペットも(ピット入りしたメンバーと今日の演奏者が一緒かどうかわわからないけれど)今日はとっても耳ざわり良し。
 都民劇場の音楽シリーズ、普段のコンサートとは客層が違い、割引料金に惹かれて申し込んじゃった、な雰囲気の方とご一緒することが多いので、実は来期の更新はどうしようかな、と思っていたんです。どうせ聴きに行くならば、コンサート慣れした聴衆が舞台を盛り上げる場面に立ち会いたいもの。今日もチャイコの第三楽章の後でパチパチが始まったのにビックリ。ま、盛り上がるんですけどね。でも、そんな観客を見事にひっぱって、終楽章の演奏後の静寂に、オケと聴衆との一体感があって素晴らしい体験でした。ライブは何がおきるかわかりません。


2008年11月28日(金)18:30-21:00
シュツットガルト・バレエ団「オネーギン」@東京文化会館

 E席 5000円 5階-R1列-32番 (パンフレット:2000円)

 指揮:ジェームズ・タグル
 管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

 オネーギン:イリ・イェリネク
 レンスキー:フリーデマン・フォーゲル
 ラーリナ夫人:メリンダ・ウィサム
 タチヤーナ:アリシア・アマトリアン
 オリガ:カーチャ・ヴュンシュ
 乳母:ルドミラ・ボガード
 グレーミン公爵:ダミアーノ・ペテネッラ

 オペラ版の「エフゲニー・オネーギン」とストーリーほとんど一緒です。幕が開くと田舎っぽく野暮ったい民族舞踊。実はオペラの時はあまり感じたことがないのですが「あ、ロシアの空気!」と感覚的に訴えてきます。そんな中登場するレンスキーとオネーギンのコンビ、金髪白王子と、黒髪黒王子。対照的ながら何とも美しいお二人です。野暮ったかった空気が一気に垢ぬけます。こりゃ、オリガやタチヤーナが理性をなくしちゃうのも納得。とはいえ、タチヤーナはティーンエイジャー(16歳位の設定だったかと)で、三十路のオネーギンにとっては恋愛対象じゃないのがとっても良くわかる作り。とにかく素晴らしくガキンチョなタチヤーナ。自己陶酔しちゃうは、ちまちまウジウジしているわ、いざオネーギンを前にすると硬直してるわで、素敵にイライラさせられます。オネーギンじゃなくってもこの手の子はパスッです。
 そんなわけで、恋愛対象外の女の子にお熱をあげられちゃって迷惑至極なオネーギンは、キッパリ彼女を振ります。が、この時に目の前でラブレターを破っちゃうのがマズカッタ。この手の女の子は寝に持つぞ〜〜〜と。どうやら、このオネーギンという男、一方的に迫られるとうっとうしがるくせに、友人の恋人には興味を持っちゃうタイプでして(あ、身近にこんな関係あったっけ)、レンスキーとオリガの間に割って入っちゃうんですよね。して、オリガもあまりオツムが良くない子で、オネーギンとイチャイチャ。このあたり、棒立ちで心理状況を歌いあげるオペラよりも、オリガと、オネーギン・レンスキーの三角関係のドラマティックなダンス場面となって、何ともドキドキ・ハラハラ。そりゃ、恋人が目の前で他の男とダイナミックなダンス(というかお芝居になるわけですが)を見せつけられたら、男の大半は激昂するのではないでしょうか。さっきまでの王子ぶりはどこへやら、怒りに燃えたぎるレンスキーがこれまた格好良いんですわ。そして、オネーギンはオネーギンで色悪の香りがプンプン。  でもって、レンスキーがオネーギンに手袋を叩きつける際、オペラなんかだと手袋を投げておしまいなのですが、そこはバレエですから、往復ビンタあり、ほとんど掴みあいの喧嘩ありで、客席で思わず興奮。長身でダイナミックなダンサーたちなので迫力があります。そしえ、舞台では……三角関係って盛り上がりますね〜。オモロイ。で、そんな男たちの興奮にさっきまでとは裏腹に、決闘を止めに入る女たち。今さら、何を言ってるんだか。そして、貴族同士の正式な決闘の前にウザったいこと。そして、なしてタチヤーナまでオリガと一緒にいるん!?!?
 と、第二幕までは男性上位で、女性陣はあまり感心しなかったのですが、第三幕での化けっぷりで、いきなりタチヤーナがオネーギンを食いました。グレーミン侯爵と踊るタチヤーナの色っぽいこと、大人びていること、堂々としていること。まるで別のダンサーが登場したかのようで、オネーギンじゃないけれど「タチヤーナ……だよね!?」と目を疑いました。今や、50男のオネーギンと三十路のタチヤーナ、何とも情熱的でエロエロなデュエット。いかにも処女然として、固かったタチヤーナがとっても官能的で、解放的でエロエロ。情熱の炎に身を焼き焦がす様が、時間の流れや立場の変化を適格に表現していて、集中度MAX。こうなるとオネーギンの貫録もどこへやら。今まで仏頂面ですかしていたのが嘘のように、女王様の前にひれ伏す求婚者。そんなオネーギンに対し、オネーギンからの手紙を目の前で破り(さぞかしスッキリしたことでしょう)、出てって!と出口を指さす腕の力感の品格に、さっきまでのイライラの分も上乗せして魂を抜かれました。この幕のためにパープー姉ちゃんを演じていたのかと、振付の、ダンサーの力量に感服しました。一幕は45分、第二幕と第三幕なんて25分ずつしかないにも関わらず、非常に濃厚でタップリのエネルギーに満たされた公演でした。素晴らしいですっ。
 さて、ロイヤル・バレエはマクミランやアシュトン、ローザンヌにはベジャール、パリにはプティ、ロシアにはプティパ、などなど、伝統的なバレエ団には売りとなるカップリングが存在します。時代は前後したとしても、その個性や伝統はしっかりと舞台を支配。日本のバレエ団はこの人!という看板振付家がいないのが無個性につながっているのかな、と思っています。強烈な個性はそのままバレエ団のカラーとなり、唯一無二の香りを放つものですから。。。シュツットガルド・バレエというとクランコとのコラボレーションが売り。最初は大人しいかな?とすら思える淡々とした感情表現が、いつしかうねりとなって舞台を包みこむ過程が僕は好きです。そして、濃厚な感情表現の合間に口直しのシャーベットのように挟み込まれる小さな笑いの数々。「オネーギン」では、様々なカップルの形(女性が威張ってたり、喧嘩してたり、浮気がばれたり)というのを、裏芝居としてコッソリではなく、ストーリーの合間に挿入したり、舞踏会場面では、全員が美しく揃うのではなく、ヨボヨボの爺ちゃんが混ざっていたりと、人間模様が多彩。それでいて、主役たちを邪魔しない程度にさっと身を引くバランス感覚が何とも魅力的でした。


2008年11月29日(土)14:00-17:10
宝塚歌劇団星組
「外伝 ベルサイユのばら -ベルナール編-」
「ネオ・ダンディズム!III −男の美学− 」
@神奈川県民ホール

 S席 6500円 1階-21列-38番 (パンフレット:1000円)

 演出:植田紳爾(ベルサイユのばら)/岡田敬二(ネオ・ダンディズム)

 ベルナール:安蘭けい
 ロザリー:遠野あすか
 ジャルジェ:箙かおる(専科)
 コンティ大公妃:万 柚美
 ロベスピエール:にしき愛
 カロンヌ夫人:朝峰ひかり
 マロングラッセ:美稀千種
 アンドレ/アラン:立樹遥
 ランバール夫人:百花沙里
 オスカル:涼紫央
 ドギーヌ夫人:毬乃ゆい
 ランベスク夫人:琴まりえ
 近衛隊士:天霧真世
 近衛隊士/下士官:彩海早矢
 近衛隊士:天緒圭花
 ルシアン:夢乃聖夏
 近衛隊士/下士官:麻尋しゅん

 雪組のジェローデル編、花組のアラン編に引き続き、星組はベルナール編で登場です。全国ツアー限定の外伝三部作。外伝は外伝であって、かなり無理のある作品が都築「この企画は失敗だな」と思いきや、意外にすんなりと収拾。雪組公演と花組公演は、今回の星組公演への伏線だったんですね。トップコンビの関係に無理があった中、ベルナールとロザリーは本篇でも夫婦として登場しているので何とも納まりが良いです。ベルナールは「アンドレとオスカル」編だと黒い騎士として、「フェルゼンとマリー・アントワネット」編だと新聞記者としていつの間にかロザリーと結婚しているので、原作を知らない者にとって謎は多いし、今までカットされていた部分がクリアになって、何ともスッキリした出来上がり。
 今回は、ロザリー、オスカル、アンドレの三人が既に過去の公演で役を自分のものにしていること、主役扱いのベルナールがこの三人に絡む場面が多いのと、安蘭けいが、フェルゼンでもオスカルでもアンドレでもなくベルナールに回ったという(個人的に)ニンに見合った役を得たことなど、見応えのある条件が揃っていました。そして、星組は二班に分かれても、それでもなお上級生が多いので安定感があります。何しろ、他組だったら地方公演で良い役が回ってくる新人公演出演者が、星組に限っては、たとえ新人公演主演者であってもチョイ役しか回ってこないのが、この組の充実度を表しているのではないでしょうか。植田台本は相変わらず和洋文化ごちゃまぜのセリフやら、フランス貴族が湯気立てて怒りそうな下品な芝居のテンコ盛りですが、浮くことなくしっかり客席を沸かせるあたり、さすがのキャリアを見せつけます。反面、砂糖菓子のようなプロローグはちとトウがたってしまう出演者が多いのも確か。
 ショーは湖月わたるのサヨナラ公演用のものの流用。安蘭けいはトップ期間が短い割に、作品に恵まれているスターですが、和物ショーや一本立て大作での公演があるため、実はショーの代表作がない状況。ショーの使い回しは作家にとっては名誉なことでしょうが、あちこちいじられてしまうので、魅力が半減してしまうのも確か。結局、一番盛り上がったのが宙組初公演「シトラスの風」の中の「明日へのエナジー」というのは何とも寂しい。で、その「明日へのエナジー」が素晴らしい出来で、優雅に大人しく歌いあげる合間に踊っていた安蘭けいにとって珍しく激しい場面。続くフィナーレではラフマニノフのピアノコンチェルトを大きく歌い上げて最後の全国ツアーを締めくくりました。決してショースターではないけれど、雰囲気で盛り上げてしまうのがこのひとの凄いところ。でもって本人いわく「会場の高いテンションにつられていつもより汗をかいたら、ちょっとマイクが……」のように、最後の最後、パレードに登場の際にマイクが故障。それでも何事もなかったかのようにいつもの顔で動揺を見せなかったアナタはエライっ!!!
 さて、このショーでは「ドン・キホーテ」の場面では立樹遥と涼紫央が客席降り、「ラフマニノフ」では客席ドアから安蘭けいが登場。今日のお席は横通路と縦通路がクロスする場所なので、とっても美味しい位置……なんですが全国ツアーの悲しさ。照明機器が東宝劇場程整ってないので、全て逆光。仕方がないので、精一杯微笑みかけてきましたさv。


2008年11月30日(日)14:00-16:15
CIRQUE DU SOLEIL「ZED」@シルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京

オーバービュー 7800円 24列-84番 (パンフレット:2000円)
 演出:Francois Girard フランソワ・ジラール

 9月にプレビュー公演をみて「楽しかったよ〜」と吹聴し、今日の本公演はオフィスの仲間を誘って団体観劇。この手の作品は一人で観るよりも、仲間と「うひょ〜、すご〜い」と賑やかに観た方が楽しさ倍増ってもんです。
 さすがに三か月も上演が続くと作品の流れがグンと良くなります。ショー進行が実になめらか。そして、客席案内係もスムーズ。
 初めての観劇の際は「次は何が飛び出すか?」「構成はどうなってるの?」などと、あれこれ思うことが多い割に、見落としている箇所が多いのですが、二度目の観劇ともなると、急に情報量が増えたかのような気分になります。メイン・アクターの他にも舞台袖や舞台上空で、ちょっとした芝居があれこれ仕掛けられているんです。そして、僕はこの手の「主役の邪魔はしないけれど、職人芸としてコツコツ行われている裏芝居」が大好きなんです。「ZED」はシルク・ドゥ・ソレイユとしてはシンプルなショーだと思うけれど、それだけに、人間の芸の凄さをまざまざと見せつけられます。定番演目ではありますが、反動を一切使わず、静かに静かに力技のバランス芸を見せる「ハンド・トゥ・ハンド」そして、対照的に、チアリーディング的な「バンキン」の場面がお気に入り。息するのを忘れて見入っちゃうので、酸欠&疲労感がドッ。こんなことをミスなく毎日演じているパフォーマーたちに感動です。