観劇日記〜2009年02月〜
02日(月) 18:30 藤原歌劇団「ポンキエッリ:ラ・ジョコンダ」 東京文化会館
06日(金) 19:00 JTアートホール室内楽シリーズ「JTアートホール・チェロ・アンサンブルIII」 JTアートホール アフィニス
11日(水) 19:00 ニッポン放送開局55周年記念公演「ALTAR BOYZ」 新宿FACE
12日(木) 18:30 二期会「ヴェルディ:ラ・トラヴィアータ」 東京文化会館
14日(土) 14:00 新国立劇場バレエ団「ライモンダ」 新国立劇場オペラパレス
15日(日) 18:00 ハンブルク・バレエ「人魚姫」 NHKホール
16日(月) 12:30 シルク・ドゥ・ソレイユ「コルテオ」 新・ビッグトップ
17日(火) 18:30 宝塚歌劇団花組「太王四神記」−チュシンの星のもとに− 東京宝塚劇場
18日(水) 19:00 ラファウ・ブレハッチ「ピアノ・リサイタル」 東京文化会館
19日(木) 11:00 東京藝術大学「2008年度 第13回 奏楽堂 モーニングコンサート」 東京藝術大学奏楽堂
19日(木) 13:00 東京都交響楽団「Tea Time Concert」 東京文化会館 大ホール・ホワイエ
19日(木) 13:00 歌舞伎座さよなら公演 二月大歌舞伎「人情噺文七元結」 歌舞伎座
21日(土) 15:00 日本オペラ振興会「水野修孝:天守物語」 オーチャードホール
22日(日) 12:00 マッスルミュージカル「TREASURE」初日 マッスルシアター
28日(土) 15:00 宝塚歌劇団宙組「逆転裁判 蘇る真実」 日本青年館


2009年02月02日(月)18:30-22:10
藤原歌劇団「ポンキエッリ:ラ・ジョコンダ」@東京文化会館

 E席 4500円 4階-R1列-35番 (パンフレット:1200円)

演出:岩田達宗
指揮:菊池彦典
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 ジョコンダ:エリザベート・マトス
 エンツォ:チョン・イグン
 バルナバ:堀内康雄
 ラウラ:エレナ・カッシアン
 アルヴィーゼ:彭康亮
 チェーカ:鳥木弥生
 ヅアーネ:坂本伸司
 イゼーポ:納谷善郎
 聖歌隊員:小田切貴樹
 水先案内人:水野洋助

  第一幕はヴェネチアの祭りの場面。ジョコンダ:エリザベート・マトスが盲目の母・チェーカ:鳥木弥生の手を引いてやってくるのですが、ジョコンダは密偵バルナバ:堀内康雄に目をつけられ、ナンパされまくり、そんなジョコンダに振られたバルナバはチェーカを魔女呼ばわりしてリンチしようと逆切れ。なんだか「トゥーランドット」と「カルメン」と「イル・トロヴァトーレ」が同時上演されてるみたいでしょ。群衆とソリストが入り乱れて大騒ぎしているところへ「静かになさいっ」とマリー・アントワネットのように登場するのがラウラ:エレナ・カッシアン。舞台中央に階段が据えられたセットとあって、立体的で何とも格好良い登場です。時を同じくして、ジョコンダの恋人エンツォ:チョン・イグンが仲間を引き連れて助けにやってくるものの、アントワネット様の後じゃ格好良さも半減。おまけに、短パン&ダボダボのシャツがとっても似合わず、昭和のガキ大将みたい。で、なにやら、ラウラとエンツォは昔恋人同士だったらしいことが判明するのですが、この再開をもって、エンツォはダメ男の道一直線。ジョコンダという彼女を一切無視して、元カノにメロメロになってしまうのですから! 例のバルナバがジョコンダをフリーにするために、エンツォとラウラをくっつけようという計画をエンツォに持ちかけたら、この男、簡単にOKしやがる(あ、だんだん口が悪くなってしもうた)。そして、バルナバはら裏の夫アルヴィーゼ:彭康亮あてに「今夜、あなたの奥さんは元カレと駆け落ちしまっせ〜」と嫌がらせの手紙を出すという、スカルピアも真っ青の悪役ぶり。
 第二幕は、駆け落ちしようとエンツォがワクワクしているところへラウラが登場。主役のジョコンダはエンツォとデュエットなんてしてないってのに、いきなりラブラブな二重唱。えっと、確か、今日のオペラのタイトルは「ジョコンダ」だよねぇ?と意外な展開にびっくりしていたのですが、エンツォが出発の準備をしに引っ込んだすきにジョコンダが登場。「私は彼の彼女よ!」「へっ、何言ってるの、私が昔から彼女よ!!」と女二人が男を取り合っての大ゲンカ。思えば、オペラってこういった場面で名曲が多い気がします。男二人が女一人を取り合うのよりも、女二人がってのがポイント。感情あらわで何ともスリリングです(ほら「フィガロの結婚」のスザンナvsマルチェリーナとか、「アイーダ」のアイーダvsアムネリスとか、「アドリアーナ・ルクヴルール」のアドリアーナvsブイヨンとか、エトセトラ、エトセトラ)。で、ジョコンダが「殺してやるっ!」と振りかざすわ、妻の浮気現場を取り押さえようとアルヴィーゼが舟に乗ってやってくるわで、ラウラが「ひぇぇ、神様〜」と咄嗟に取り出したのが、チェーカを助けたお礼にといただいていたロザリオ。ここで、義理がたいジョコンダは、恨みつらみはいったん胸にしまい、ラウラを逃がしてやるわけです。にも関わらず、エンツォはジョコンダを邪けんにするわけ。
 で、第三幕ではアルヴィーゼがラウラを呼び出す場面からスタート。「名誉を汚した妻には死んでもらうよ」と「オテロ」のように冷たく言い放つのですが、なぜか「ロメオとジュリエット」の神父様のように登場するのがジョコンダ。「アナタ、その毒薬の代わりに、コッチの薬を飲んで。死んだように見えるけれど、ちゃんと生き返るから!」と。で、戻ってきたアルヴィーゼは妻が死んでいる(ように見える)というのに「ちゃんと死んでるな」と喜んで退場。ん〜、この作品に登場する男ってロクなやつがいません。
 と物騒な私室とはうらはらに、広間では大パーティ。ここで挿入されるのがバレエ「時の踊り」。何のパーティだか知りませんが、とにかく華やかです。と、そこへバルナバがラウラを引っ立ててやってくるのですが「死者のために祈ってました」の言葉に、なぜかこのパーティに仮面をつけて参加していたエンツォがアルヴィーゼに「俺のことは追放され、恋人は奪われ、もうやってられねーっ!!!」とヒステリーを起こし、あえなく引っ立てられてしまいます。無謀な恋人を救うために、ジョコンダはバルナバに「エンツォを救ってくれたら、私の体を好きにして良いわ」と色仕掛けで恋人救出作戦。で、このバルナバ、申し出を受けるのですが、こっそりチェーカを誘拐しちゃう、まったく隙のない悪漢。
 さて、終幕ですが、ジョコンダはラウラの命を救い、恋人の自由を取り戻し、さらには二人のために駆け落ちの手配までしているというのに、エンツォは「墓にラウラがいない。お前、ラウラに嫉妬するんじゃねぇ!」とヤクザと愛人じゃあるまいし、とんでもない言動で大荒れ。なんだか、イタリアの話じゃなくて、演歌の世界でしょ。と、そこでタイミング良く生き返ったラウラが事情を説明するのですが、ここまで尽くしてくれたジョコンダに「アディーオ」と言い残して、二人はさっさと駆け落ち。アンタ達、いくらなんでもそりゃ薄情ってものでしょう。残されたジョコンダは、約束を守れとやってきたバルナバの前で「体はあげるわよ」と言い残して自殺。
 ……ね、どうしようもなく、次から次へとトラブルが続くでしょ。でもって、細かな状況やら設定がわからないので、実は観ている時は、頭の中が「???」なんです。結局のところ、エンツォのダメンズぶりが悲劇の原因の気がします。ラウラのことが忘れられない、ラウラのことしか考えてないのに、なんでジョコンダと付き合っちゃったんでしょう。そして、愛されてないことに気付かないまま、元カノ登場まで彼に身も心も捧げていたジョコンダのやりきれない立場といったら!!!。
 そんなジョコンダの感情表現のためにポンキエッリが用意した音楽は、これまた声楽のテクニックを駆使した凄いものでした。ソプラノでありながら、メゾも真っ青な中低音でドスを効かせた曲あり、ドラマティックに張り上げた直後に装飾音バリバリの細かいパッセージあり、天使のような細く美しい声と魂の叫びとも言うべき地声に近い絶唱が入り乱れていたり、とにかくこんな役を歌えるソプラノもそうそういますまい。ストーリーはハチャメチャながら変化に富んでいるし、ソプラノ、メゾ、テノール、バリトン、バスとそれぞれに華やかで聴き映えのするソロ・アリアが用意されている他、さまざまな声の組み合わせの重唱あり、児童合唱まで加わる大コーラスあり、バレエありと、オペラ芸術のありったけの技を集めてみました、という下品なまでのごった煮感がとにかく魅力。これでもかっというボリュームが思考回路を麻痺させます。
 ジョコンダ:エリザベート・マトスは華やかだし、ナンバーごとの歌い回しの変化は鮮やかだし、最大級の拍手を浴びてました。「自殺!」なんて、あまりの凄味にショーストップ。第四幕なんてほとんど出ずっぱりで、絶叫した挙句、ダジリタの連発&ppの軽く美しい響きを醸し出したりと、絶品の歌唱でした。鳥肌モノ。ラウラ:エレナ・カッシアンの力強いメゾは、えてして音程がなくなりがちな中音域での絶唱場面でも芯のある声。この二人が拮抗した声のパワーを持っているので、女の争い場面はなんとも迫力。
 で、この二人に慣れちゃったのか、指揮:菊池彦典はいつも以上に豪快にオケをドライブ。グルーヴィーで勢いがあって、先日の「マンマ・ミーア」のノリ。エンツォ:チョン・イグンは、筋肉質でありながら、力技ではない良い声を響かせているのに、オケにかき消されちゃったのはゴメンナサイ状態。もったいない。バルナバ:堀内康雄はオケに負けず、楽々と声をホールに響かせ、いかにも「ホームグラウンドでの歌唱はまかしておいて」な余裕。リズミカルな曲、華やかな曲を苦手とする歌手の多いバリトンでありながら、第二幕の冒頭では、伸びやかに、切れ味するどく舞曲を鮮やかに歌い上げてこれまた拍手喝采。そして、ジョコンダが「あの気味の悪いやつ」とつぶやくのも納得の悪役メイク。水戸黄門じゃないけれど「この人は絶対悪役!」な不気味なメイク、トート閣下のような神出鬼没な舞台での動き、悪のカラーで舞台を染め上げる存在感が、藤原歌劇団のトップ・バリトンの貫禄。歌でなく、芝居(ジェスチャー)だけで、きっちり芝居にケリをつけ、幕を下ろしてくれる素晴らしいヒール役者でした。
 作品および出演者の知名度が影響してか、客入りは最近の藤原歌劇団公演の中では悪い方だと思うのですが、オペラとしての楽しさでは、なかなかの作品。そりゃ「???」なストーリー展開やら、人物設定やらも多々ありますが、もっともっと上演されても良い作品ではないかと。あ、主役を歌える人が少ないか。


2009年02月06日(金)19:00-20:55
JTアートホール室内楽シリーズ
「JTアートホール・チェロ・アンサンブルIII〜近・現代の彩り〜」
@JTアートホール アフィニス

 全席指定 3000円 1列-13番 (パンフレット:無料)

 チェロ:菊地知也、桑田歩、斎藤千尋、田中雅弘、銅銀久弥、長谷部一郎
     藤森亮一、古川展生、向山佳絵子、山内俊輔、山本裕康、山本祐ノ介
 ソプラノ:半田美和子

 ブラッハー:ブルース、エスパニョーラとルンバ・フィルハーモニカー
 藤森亮一:クレ・アン
 エーダー:メロディア・リトミカ Op.59-1
(休憩)
 ビートルズ:イエスタデイ  ビートルズ:抱きしめたい  マッカートニー:レット・イット・ビー
 ビートルズ:ミッシェル
 ビートルズ:ヘイ・ジュード
 ヴィラ=ロボス:ブラジル風バッハ 第5番
(アンコール)
 フランセ:「チェロ学校」より 第10番 Finale
 文部省唱歌:冬の夜

 JT室内楽シリーズは、数人のプランナーそれぞれが腕をふるってのプログラミングが魅力。開館以来、メンバーの入れ替えもなく、気づけば10年。今月は向山佳絵子による12人のチェロアンサンブル。当初はもちろん、のぼぉちゃん目当てではありましたら、さすがにみなさんお馴染み。楽曲ごとに席替えアリ、パート変更アリで、ポジションが決まってしまうオケやソロ、他楽器とのアンサンブルとは異なり、チェロOnlyならではの楽しさ満載。全員が名手というアンサンブルだけあって、それぞれ聞かせどころがあてがわれていて、個々の味が楽しめるのがポイントです
 今回は割と近代・現代曲がメインでして、一人一人が音を順番に発するような場面も多いのですが、この手の曲って、個人練習の時は何弾いてるのかわからないだろうな、と。まさか、全員がフルスコアを見ながら練習? でも、合奏するまで何だかわからないままってのも怖いですもんねぇ。
 休憩後はビートルズ&定番曲ということもあってか、みなさん各段にリラックス。実に楽しそうに演奏しちゃって「くぅぅ、僕も合奏したい!」と悔しい思いをさせられました。みなさん、のぼぉちゃんも真っ青に足癖悪く、目くばせしあってノリノリ。そういえば、どれも歌物の曲なんですよね。人間が発音することを前提に作られた曲って、楽器演奏であっても、脳内で一緒に歌えるので、器楽曲とはまた違った落着きの良さを感じます。ソプラノ:半田美和子はソプラノ歌手の多くが苦手とする、中音域で実に魅力的な響きを醸し出し、何とも気持ち良いんです。声量や小柄さから、オペラよりもコンサートでまた聴きたい!!(個人的に「私を観て〜っ」なゴージャス系が好きなものでして……)。涼やかな声に惚れ惚れ。


2009年02月11日(水・祝)19:00-途中退席
ニッポン放送開局55周年記念公演「ALTAR BOYZ」@新宿FACE

 全席指定 7800円 10列-5番 (パンフレット:2000円)

 演出:玉野和紀

 フアン:植木豪
 ルーク:田中ロウマ
 マーク:中河内雅貴
 マシュー:東山義久
 アブラハム:良知真次

 「オペラ座の怪人」の中のウバルド・ピアンジのセリフじゃないけれど「この素人どもがっ」というプロダクションでした。そもそも、チケット発売の段階で席割りの問い合わせをした際も、作品についての問い合わせをした際もまともな対応が全然できないのですから、主催者からして困ったチャン。
 そして、劇場に足を踏み入れてみれば、ゲスト・コントロールが滅茶苦茶で、小さな会場だというのに、入り口でモタモタ。今回は海上の関係で1ドリンクオーダーが必要なのですが、このバーも困りもの。カクテルをオーダーすれば、ボトルと注ぎ口とのはめ込みが悪く、ボトルにはたっぷり入っている液体が出てこないし、コーラを注文すれば味なしの炭酸水が渡されるわで、何ともモタモタ。今日が初日ってわけじゃないのに、開演前の準備はどうなっているんでしょう?
 ま、ここいらの不備は今日の本命でないし、と気を取り直して座席を探してみれば……フラットフロアにパイプ椅子。。。席配置がわかりにくいこともあり、座席を求めてウロウロする観客がいても、客席に案内係はいないんです。スタッフはロビーにウジャウジャうるのにみなさん何してんでしょ。そして、僕の席は10列目とはいうものの、前の人が邪魔で、腰下が見えない、場面によっては、顔すら見えない。ミュージカル上演にこんな小屋を選ぶなんて。。。おまけに音響もよろしくなくて、ノイズが出まくり。そういえば、男性トイレ、ロビーとはアコーディオンカーテンで仕切られだけの汚い部屋。古くても、手入れがきちんとしている小屋は味があるものですが、いかにも手入れしてませんな裏さびれた小屋だなぁ。。。
 で、いざ出演者が登場したのですが、絶対スターにはならないだろうなぁ、と思えるアンサンブル役者たちで(ファンの人たちゴメンナサイ、でもスターオーラ感じなかったし)、個性が感じられず、五人が団子状態。セリフは棒読み、歌はまともに聴かせる人は皆無、ダンスは観客を魅せるのではなく、自分のダンスに酔っているだけで……一時間でギブアップ。7800円に見合ったエンターテインメントではありゃしません。ミュージカルって、出演者が素人でも料金だけはしっかり取る、おまけに安い席の設定がなかったりするんだから嫌になっちゃう。
 そりゃ、新人さんたちなので、技術的な面に問題があるのはある程度は仕方ないと思うんです。役者は場数で育つものですから。でも、台本はあってないようなもの、音楽面でも山や谷といったメリハリがない舞台を、ショースター皆無で上演するのって何とも痛々しいんです。出演者が必死になって大汗かいていると、観客は芸に酔うどころか、手に汗握りまくり。オフ・ブロードウェイ作品にかなり日本向けに手を入れてますが、役者の芸を魅せるタイプの作品はちょこっとばかり台本を観客に媚びるようなセリフに置き換えたところで、観るに耐えるものじゃありませぬ。
 ということで、いつまでたっても休憩にならない舞台にしびれを切らして席を蹴って退場することに。が、慣れない会場で出口を求めてウロウロしてもスタッフらしき人は舞台を観ているだけで、蛍嬢の一人として飛んできませぬ。ようやくロビーに出てみれば、これまた一切無視。それどころか、グーグー居眠りしているスタッフなんかもいて、呆れるばかり。エレベーター待ちをしていたら、ようやく一人のお姉さんが「再入場はお断りしてますっ」といきなり高ピー発言。はいはい、再入場するつもりなんてこれっぽっちもありませぬ。そして、こちらの質問にはまともな回答もできず、こりゃ相手にするまでもないと、心おきなく帰宅の路についたのでした。


2009年02月12日(木)18:30-21:20
二期会「ヴェルディ:ラ・トラヴィアータ」@東京文化会館

 E席 2000円 5階-L2列-7番 (パンフレット:1000円)

演出:宮本亜門
指揮:アントネッロ・アッレマンディ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 ヴィオレッタ・ヴァレリー:澤畑恵美
 アルフレード:樋口達哉
 ジェルモン:小森輝彦
 フローラ:小林由佳
 ガストン子爵:小原啓楼
 ドゥフォール男爵:鹿又透
 ドビニー侯爵:村林徹也
 医師グランヴィル:鹿野由之
 アンニーナ:与田朝子
 ジュゼッペ:飯田康弘
 仲介人:金努

 今回の宮本亜門の演出は、きらびやかなパリの高級娼婦の物語はなく、昭和の地下鉄のコンコースのような地味で暗くて汚い空間で繰り広げられる、どこにでもいそうな一人の女の物語でした。舞台は新国のキース・ウォーナー版「ラインの黄金」のようなセット。あちらは白が基調でしたがこちらは黒が基調。舞台上手には、プラスチックのトタン板で拵えた扉が五つ、舞台正面はチドリ柄の壁面、舞台下手にはエスカレーター(と思ったら単なる階段だったそう、動かないの。。。Lブロックからはほとんど見えず)。日生劇場や青山劇場で、これでもかってほどに全ての舞台機構を使いきっていた亜門さんの演出だし、そういえばユーミンのコンサート(松任谷正隆演出)ではエスカレーターが登場したなぁと、前奏曲を聴きながら期待も膨らみます。
 一幕の始まりはフローラの夜会の客が流れ込む……のではなく、押し合いへしあいしながら舞台を下手から上手奥へと行進。おまけに、全員黒塗り。ミュージカル「キャバレー」でMCが顔の真ん中だけ白塗りのダンサーズを引き連れて登場するでしょ。今回は白じゃなくて黒なもんだから、とっても不気味。二期会の合唱団はメイクやヘアが「公演に合わせて何とかしないの?」て言うほどドレスの似合わない素のままな歌手が日ごろ気になっていたのですが、そんな弱点を逆手に取り、全員の個性は消していただき、全員ヘアスタイルはひっつめ、ドレスは黒一色に統一し、表情皆無な群衆として使いきったのがアッパレ。集団として上手から下手へと移動するだけでまるでカラスの一群が空を舞うような迫力。集団演技については逆に得意なものですから、実にドラマティックに生き生き。
 また、普段のオペラで、音楽と装置(&群衆)の動きが音楽と合ってないという不満があったのですが、亜門さんはカラスの集団は舞台上を走らせるし、御馳走の乗ったテーブルは音楽のテンポ通りに出入りするし「オペラは音楽劇である」と思っている僕にとって実に爽快な展開。ようやく他劇場の舞台転換のようにスムーズに。こんなに裏方さんが頑張ってくれたのに、生き急いぐヴィオレッタの心意気を表すかのように、早めのテンポで追い立てるようなオーケストラも刻まれるリズム・テンポに一部キャストがリズムに乗り切れず、間延びしてしまったのは残念。指揮者の音楽と、歌手の音楽にギャップがありました。演出が生きるためには、演出かだけでなく、キャスト・スタッフが一丸になる必要があるのが舞台の面白いところですね。でもって、そんなリズム感の悪い人はカラスの一群が飲み込んでしまう怖さ(アダム・クーパーのスワンレイクのクライマックスをご想像くだされ)。浮わついた様子のヴィオレッタやアルフレード、イライラと高慢ちきなドゥフォール男爵、落ち着きのないフローラ。個々ではどうしようもない「時間」に対する焦りを感じました。せっかくの夜会なのに、誰も楽しむなんてことなく、何かが起きそうなピリピリした雰囲気。怖いよぉ。
 が、いかんせん「昭和の地下鉄のコンコース」なもんで、主舞台には棺桶のような台が一つあるだけで、椅子もテーブルも花もなし。むやみやたらと舞台上を駆け回り、ボロボロのトタン板に寄り掛かって歌う登場人物たちなもんですから、パリの高級娼婦のお話なのに「ここは新宿ですか?」と。。でもまぁ、貴族たちの衣装も普段着に近いし、もしかしたら、日本に置き換えてる???(良くわかりません) そんな中、ヴィオレッタは一人だけ深紅のドレス。これまたスター性が乏しい昨今の二期会のプリマを主役として際立たせるにはなんとも憎い配慮じゃありませんか。群衆の中でひときわ輝くプリマ。非常に美しい舞台です。実は、ヴィオレッタ・ヴァレリー:澤畑恵美の調子が悪く、一幕では声が全然伸びてこないし、響きも浅くて、おまけに東京文化に慣れてない亜門さんがやたら舞台端で歌わせる(=死角の席は反射音の声しか聞こえない)ので、プリマとしてさえなかったんです。
 第二幕第一場では、基本装置はそのままに、正面の壁の一部がくりぬかれて、すみだトリフォニーホール二階席回廊のような空間が登場。「ゴージャスな生活じゃないか」とヴィオレッタにいちゃもんをつけるジェルモンのお言葉がむなしく響きます。はい、本日の影の主役、ジェルモン:小森輝彦の登場です。声量といい、声の響きといい、歌い回しの余裕といい、別格の上手さ。決して体躯が恵まれている人ではなく、平均的な体格の方なのですが、発せられる声は圧巻。そして、DV気味といいますか、口だけでなく手もあげるいばりん坊親父。息子が自分の言葉に耳を傾けないとなると、ビンタしたら突き飛ばしたり、体育会系なジェルモンです。なるほど、瞬間湯沸かし器のように激昂するアルフレードのパパですもんね。納得です。  第二幕第二場では「ライオンキング」のプライドロックのようなセットが下手から登場するのですが、はて、あれは何だったんでしょう。でも、このセットのおかげで、ジェルモン登場の場面では舞台が立体的になり、歌舞伎の見得を切るシーンのようにはまりました。小柄な小森氏に貫録を持たせる素敵なセットです。もちろん、声は放っておいても立派ですから! それにしても、今回のプロダクション、キャストたちがしかるべき位置で指定されたポーズを決める「舞台写真を撮影するならココね」の場面がたくさんあって、このあたり、宮本亜門といえども、ミュージカルではなく、ちゃんとオペラを意識したステージング。動かすべきところは動かすけれど、ストップモーションが必要なところは動きません。
 でもって、第三幕は、瀕死の病人だというのに、ヴィオレッタは床をゴロゴロ這いつくばっているし、なぜか死ぬ間際にエスカレーターのような階段は登場するし、舞台正面の壁にはなにやら薄明るいヒトダマみたいなものがウヨウヨしているし、演出コンセプトははっきり言って、良くわかりません。でも、ここになって、急に音楽がゆったり&タップリ。死を前にしたヴィオレッタの絶唱が何とも迫力。ここにきて、伸びの悪かった澤畑恵美の声が活きて、素晴らしい効果。正直、パーティ場面なんて「ついに彼女も声を失ったか。歌手の最盛期は短いな」と失礼な事を思っていたのですが、逆に言えば、特性がはっきりしている声なので、瀕死のヒロインの場面では「しっかり聞こえているけれど、元気いっぱいではない」な、これ以上なくヴィオレッタらしいお声。終わりよければ全てよしじゃないけれど、そろそろ追い立てられる音楽に疲れてきたところでじっくり聴かせていただき満足。他キャストもホッとした面持ち。
 ということで、宮本亜門ならではの「音楽と一致した舞台の動き」「一つ一つの役を丁寧に扱った演出」が貫かれ、また、最近の悪癖と僕が思っている「キャスト全員に華をもたせようとしてメリハリがなくなる」ということも影を薄め、さすがの指導力を感じさせられました。が「求心力のあるスターがいない公演はつまらない」というジンクスはそのままで、今回はヴィオレッタ・アルフレード・ドゥフォール男爵の三角関係(三者それぞれ、とも言う)は盛り上がらず、もっぱらジェルモンが目立つという舞台だったのがもったいない。歌唱力はともかくとして、佐藤しのぶクラスの歌手が主役だと亜門さんも腕のふるいがいがあるんでしょうけど。そして、何よりも「今に装置が飛んで、ショーアップされるに違いない」という、僕の勝手な期待がことごとく裏切られ、エスカレーター(もとい、階段でしたっけ)の効果もなく、正直期待外れ。
 でもね、藤原歌劇団がオーソドックスなヴァージョンで上演し、新国立劇場が(僕は嫌いですが)シャープで都会的なヴァージョンで演出している上、外来カンパニーも頻繁に上演する「ラ・トラヴィアータ」という作品。あえて二期会が上演するとなったら、今回のような「ブーイング上等!!」な舞台であってほしいです。スターが華やかに上演する団体ではなく、先生色の強い、禁欲的団体が上演するわけですから、中途半端に上演して「鹿鳴館!」となるよりは、今日位、何かになりきっている方が観ていて楽しいですし。でも、でも、リピートしたいプロダクションではありません。次回はぜひ美輪明宏演出でお願いします。ゴージャスにロマンティックに、それでいてドラマティックになりそうでしょ。


2009年02月14日(土)14:00-17:10
新国立劇場バレエ団「ライモンダ」@新国立劇場オペラ劇場

 C席 4200円 3階-L5列-3番 (パンフレット:1000円)
 指揮:オームズビー・ウィルキンス
 管弦楽:東京交響楽団

 ライモンダ:スヴェトラーナ・ザハロワ
 ジャン・ド・ブリエンヌ:デニス・マトヴィエンコ
 アブデラクマン:森田健太郎
 ドリ伯爵夫人:楠元郁子
 アンドリュー2世王: 市川透
 クレメンス:丸尾孝子
 ヘンリエット:西川貴子
 ベランジェ:マイレン・トレウバエフ
 ベルナール:芳賀望
 第一ヴァリエーション:厚木三杏
 第二ヴァリエーション:寺田亜沙子
 スペイン人:湯川麻美子、江本拓
 チャルダッシュ:西川貴子、マイレン・トレウバエフ
 グラン・パ ヴァリエーション:西山裕子

 ここ最近、新国バレエ団の男性ダンサーが自信をつけた印象を強くしました。舞台装置は正面に踊り場付きのちょっとした会談があるだけという、バレエ公演の基本形なのに、出演者の衣装さばきがなんとも大きくて、ゴージャスに見えるんです。ダンサーからスターになったなぁと。今まで女性陣に押され気味だったコールドの面々の表情がキラキラ。「ライモンダ」はコールドにいたるまで、やたらとペアダンスが登場するのですが、女性をリードし、時に振り回すんですから、自信付いてくれて、女性ダンサーも嬉しいことでしょうね。
 さて、この「ライモンダ」という作品、滅多に上演されない作品ですが、話は簡単。第一幕はライモンダのお誕生パーティ。やがて寝室に引っ込んだライモンダはフィアンセのジャン・ド・ブリエンヌの夢を見る。と、これだけのストーリーなのですが、ライモンダのお友達たち〜クレメンス、ヘンリエット、ベランジェ、ベルナール〜が主役級キャストの投入とあって、何ともゴージャス。この手の役って新進ダンサーがキャスティングされることが多いけれど、主役のお友達ですもの、そりゃ主演級だよねぇ、と納得。
 第二幕は、ジャン・ド・ブリエンヌが十字軍遠征からの帰還準備中にもかかわらず、アブデラクマンがライモンダを奪いにやってくるのだけれd、あわやというところでジャン・ド・ブリエンヌがヒーローのように登場して決闘。そして簡単に勝利。このシンプルなストーリーがバレエにはちょうど良いボリューム。白王子のジャン・ド・ブリエンヌと、黒王子のアブデラクマン。ここで三角関係が盛り上がると僕好みですが、バレエはあくまでシンプルなのであっさり。第三幕なんて、ライモンダとジャン・ド・ブリエンヌの結婚式。ストーリーなんて放り出されてます(「眠れる森の美女」と同じ構成ですね)。
 というわけで、ストーリーなんてどうでも良い位シンプルなのにも関わらず、登場役は少なく、上演時間は3時間超。こうなったら、もうダンサーたちの力量に頼るほかはありません。が、今日は安心。何しろ、ザハロワ&マトヴィエンコが主演なんですから。毎年、多くの公演でゲスト・プリンシパルとして参加しているお二人。客演ではなく、すっかりバレエ団のメンバー。よそよそしさがなく溶け込んでます。それでいて、踊り出すと世界のプリマの貫録。派手な振り付けがあるわけでなく、スピードや勢いで魅せる役ではなく、あくまでお姫様としてゆったり優雅なんだけれど、その動きの一つ一つが実に美しいんですもの。腕の上げ下げとっても、すべての筋肉を意識して、しなやかに弾力的に最高のコントロール。「まだまだ動けるわっ」とスピードを下げるのではなく、「これが限界」という方向にスピードが上げるのって、ストップの瞬間のエネルギーが大きくなるんですよね。決して「私を見てっ」というタイプじゃないんだけど、ここぞという場面をしっかり決める緩急自在さが何とも大好き。


2009年02月15日(日)18:00-途中退席
ハンブルク・バレエ「人魚姫」@NHKホール

 S席 23000円 2階-C3列-14番 (パンフレット:1500円)
 指揮:サイモン・ヒューウェット
 管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

 詩人:イヴァン・ウルバン
 人魚姫/詩人の創造物:シルヴィア・アッツォーニ
 エドヴァート/王子:カーステン・ユング
 ヘンリエッテ/王女:エレーヌ・ブシェ
 海の魔法使い:オットー・ブベニチェク

 民音創立45周年、そして、振付家ジョン・ノイマイヤーのハンブルク・バレエ芸術監督就任35周年の記念公演に登場するのは、新作「人魚姫」と、代表作の一つ「椿姫」の2作品。ハンブルク公演では完売続出だったという。
 本日観劇の「人魚姫」はアンデルセンの生誕二百年祭の祝賀作品として、2005年にデンマーク・ロイヤル・バレエによって世界初演、ハンブルク・バレエでは2007年からレパートリーとなっている。またたくまに人気沸騰し、この作品のタイトルロールに対し、ソリストのシルヴィア・アッツォーニが「ブノワ・ド・ラ・ダンス2008」の最優秀女性舞踊手賞に輝くなど、絶賛を博す話題作が、いよいよ日本初上陸!! 一部のバレエ・ファンは熱狂的に騒いでいたので、僕もちと期待していたのですが……好みじゃなかったんです。残念。
 この作品、アンデルセンの童話をベースに、ノイマイヤーが人間関係にフォーカスを当てて、時代を特定しない斬新な世界を創造した舞台で、「人魚姫」の物語に詩人=アンデルセンも登場するのが特徴で、アンデルセンの親友・エドヴァルドが結婚により遠くへ去ってしまう時の気持ちと人魚姫の王子への報われることのない思いが重なりあい、やがて彼らが立ちはだかる障害を乗り越えて、不滅の魂を得るまでを描いた究極の愛が描かれているというのですが、言葉のない「バレエ」という舞台芸術に対し、情報が多すぎ。個人的には二重のストーリーが入り乱れるのではなく、シンプルに「人魚姫」の話を取り上げて欲しいのですが、ま、そうなるとノイマイヤーの世界ではなくなってしまいますものね。そもそも、ショーアップしましょう、という意識が全然なく、音楽面でも盛り上がりはないし、踊りも「ここが見せ場!」という華やかな場面がなく、終始説明調なのが「バレエは気楽に楽しみたい」という僕に合わないのはいた仕方ないところ。悩むなら悩むで、それが官能的にドラマティックに盛り上がるのであればともかく、ネクラなんだもの、みなさん。人生、何をそんなに悩んでいるんでしょうね。同じ悩むならば「悩む事に酔う!」位が好きなんですよ、ワタクシ。
 海中の場面では、隈取りや、袴姿、衣装の引き抜き、黒子といった、歌舞伎や文楽をモティーフにした手法が登場するのですが、テルミンのボヘェ〜〜〜という、締まりのない調べに乗り幻想的な世界……風邪っぴきで体調最悪の身には猫に小判でして、第一幕が終了した時点で、失礼招致で退席してしまいました。あ、でも、人魚姫が人間になる場面、衣装がどんどん引き抜かれ、それと同時に足の痛みを訴える場面、素晴らしい表現でした。でも、でも、ダメなんです。わかって。
 音楽やフォーメーション、これぞというテクニックを見せつけられるのが好きな身には、モダン・バレエはどうにも相性が悪いみたいです。。。素晴らしいことをしでかしているんでしょうが、楽しくない。これにつきます。(実はベジャールも一部の作品を除いて、あまり好きじゃないんです)。レオタードで踊られるバレエって、なんだか稽古風景を見せられてるようで、もっとゴージャスに、もっと華やかにって思っちゃうんですもの。


2009年02月16日(月)12:30-15:00
シルク・ドゥ・ソレイユ「コルテオ」@新・ビッグトップ

 A席 6000円→4000円(都民劇場) F21列-9番 (パンフレット:2000円)

 演出:ダニエル・フィンジ・パスカ

(第一部)
 シャンデリア
 ハウンジング・ベッド
 シル・ホイール
 リトル・ホース
 タイトワイヤー
 ゴルフ
 アクロ・デュエット
 マリオネット
 ヘリウム・ダンス
 ディーターボード
(第二部)
 パラダイス
 クリスタル・グラスとチベタンボール
 アダージョ・デュエット
 ジャグリング
 ラダー
 テアトロ・インティモ
 デュオ・ストラップ
 ツアーニク

 今回で、第8弾となる、シルク・ド・ソレイユ日本公演。会場はお馴染み代々木公園内特設テント。スポーツ的要素が強く、また、近くに電車が走ってないこと、原宿や渋谷の駅から会場に向かうまでが、非日常の世界へといざなう雰囲気に溢れていることから、何ともピッタリなロケーション。いっそのこと常設にしても良さそうな空間です(舞浜に常設劇場はありますけどね)。
 さて、今回の「コルテオ」というのは「行列」という意味があるそうです。が、劇場は円形の設計。そして、一歩足を踏み入れると、新国立劇場中劇場のオープンステージのような、新宿コマ劇場のような、はたまたキャッツ・シアターのような半円形の空間。緞帳はイタリア絵画のような素敵なデザインで、プロセニアムにはパイプオルガン、そして、客席のあちこちにシャンデリアがぶら下がっていて、何ともヨーロピアンな素敵な雰囲気。もうこの段階で僕のハートは鷲掴み。そして、サーカス小屋にふさわしい、妖しげな雰囲気に満ちているのが何とも趣があってよろしゅうございます。そういえば、劇場スタッフも、割と無表情に淡々としていて、召使いみたい!
 シルクのいつものショーと同じく、開演時間直前からキャストが客いじりを行うのですが、なんと、緞帳の向こう側には同じサイズの客席が! はい、半円形の劇場を二つ向かい合わせたような劇場空間。そして、この劇場を分断するかのような長い花道をキャストの面々が「行列」となって登場し、中央の円形ステージ(蛇の目回しあり、中央のセリはありで、新宿コマ劇場仕様になってます)で芝居を行うわけ。劇場大好き人間としては、幕が上がって、目の前に別の劇場が登場するだけで興奮もの。幸せな瞬間でした。
 通常、シルクのショーは、雰囲気だけ作り上げて「あとは観客の解釈に任せます!」と場面の説明も言葉もほとんどないのですが、今回は割と言葉の洪水。多国籍カンパニーならではの処理なのですが、キャストが各自の言葉をしゃべるので、ま、結局、日本人キャストか英語圏キャストのセリフしかわからないのですが「一人のクラウンが死んで、天国に召される直前に、走馬灯のようによぎった情景」とでも言いましょうか。肉体から魂が抜けだし、幻想の世界でたわむれ、最後は全員に見送られて昇天。
 ……とまあ、コンセプトはともかくとして、結局のところ幻想世界なので、ストーリーはあってないようなものですが、今までのショーに比べて、アクティング・エリアが細長く、シルクのショーにしては、大道具も多く、次から次へとパレードのように多彩なキャストが登場するのが魅力。今回は、A席ということで、格安だし、舞台は近くて見やすいけれど、行列が流れていく様や、別劇場と向かい合うことにより、自分が鏡の中に入り込んだかのような幻想的気分を味わうには、見切れることのないSS席でまた観たい、そんな公演です。これからチケットを購入される方は、奮発しましょう。もちろん、A席でも、個々の場面を楽しむ分にはマッタク問題ありません。良く見えます。楽しいです。そもそも、両面正面なので、キャストもあちこち向いてパフォーマンスしていますから。
 もともと、スポーティな技を芸術的に魅せるのが売りのシルク・ドゥ・ソレイユですが「コルテオ」は照明や衣装、舞台美術など、幻想的な雰囲気にかけては屈指のレベルに達してます。オリンピックなんかで、トップ・アスリートの技って、凄いんだけど、美しい動きをしますよね。今回は「技」ではなく「美」を魅せるためにスタッフが一丸になって、イタリア・モードを表現してくれます。素晴らしい2時間半でした。


2009年02月17日(火)18:30-21:30
宝塚歌劇団花組「太王四神記」−チュシンの星のもとに−@東京宝塚劇場

 B席 3500円 2階-15列-67番 (パンフレット:1000円)

 演出:小池修一郎

 ファヌン/タムドク:真飛聖
 カジン/キハ:桜乃彩音
 ヨン・ホゲ:大空祐飛
 ヤン王:星原美沙緒(専科)
 ヨン・ガリョ:夏美よう
 カグン将軍:高翔みず希
 ソノ部族長:眉月凰
 大神官:絵莉千晶
 ヒョンス/フッケ将軍:悠真倫
 プルキル(大長老):壮一帆
 セオ/スジニ:愛音羽麗
 ヒョンゴ:未涼亜希
 パソン:桜一花
 サリャン:華形ひかる
 チョロ:真野すがた
 チョ・ジュド:紫峰七海
 カクダン:望月理世
 セーム:花野じゅりあ
 チャピ/トラジ/産婆:初姫さあや
 イルス:日向燦
 スンノ部族長:紫陽レネ
 コ将軍:扇めぐむ
 カンノ部族長:夕霧らい
 チョク・ファン:祐澄しゅん
 チュムチ:朝夏まなと
 チャンミ:華耀きらり
 セドル:月央和沙
 ヒョンミョン:望海風斗
 メファ/ホゲ(少年):白華れみ
 モラン:華月由舞
 チュモン:嶺乃一真
 ポッコッ:芽吹幸奈
 ナリ:梅咲衣舞
 モンニョン:瞳ゆゆ
 タルビ/タムドク(少年):野々すみ花
 クカ:花蝶しほ
 スリョン:月野姫花

 ぺ・ヨンジュン主演の韓国連続ドラマ24時間分の舞台化。本編2時間ちょっとにまとめてあります。となると、思いだすのが、明治座などで上演される大河ドラマの舞台化作品。圧縮度がとにかく高いので、ドラマ版を知らない人にとては話が飛びすぎでわけがわからず、ドラマ版を観ている人にとってはダイジェスト感がぬぐえないことが多く、なんとも難しい仕事。今回は脚本・演出:小池修一郎ということで、普段から情報の処理能力に秀でている人なので、さてはてどう料理してくれるのか楽しみにしていました。ミュージカルの強みと言いましょうか、ミュージカル・ナンバーの中で、大胆に時空を動かし、セリや盆を利用して、ぐいぐいストーリーを進める手腕を発揮。第一幕は、登場人物の紹介も兼ねているので「レミゼ」のプロローグのように、思いっきり早回しで話が進んでいる模様(って、ドラマ版を知らないんですけど)ですが、下級生のナレーションも聞きやくすスピーディに展開。 舞台美術はLEDの映像が映し出される柱の数々が、ドラマティックな効果をあげていてなかなか見ごたえがあります。爆発の様子や炎がメラメラ燃えている様子は迫力です。また、民族の競争や抗争を色分けして表現したのも、いかにもミュージカルといった華やかさに満ちていて、中でも盾を構えた兵士たちのダンスなんて出色。個々の生徒の顔がわからないので、好き嫌いは分かれるでしょうが、宝塚ならではの登場人数の多さ、レビューで鍛えた集団でのフォーメーションの変化の見事さなどを活かした、一大スペクタクル。テレビならではの表現というのがあると思いますが、「これは舞台でないと魅力が伝えられないでしょう」な、ベテラン演出家ならではのあの手この手が実に爽快。ま、ラストのクレーン車はご愛敬ですけど。これらのミュージカルならではの処理が、普段、このスピード感に慣れてないドラマ版のファンにはどう映るのか興味があるところです。

 今回の作品、登場人物がやたらと多く、数分おきに山場が登場するという、いかにも連続ドラマ的作りです。が、花道の付け根に岩山のような数段の階段を固定し、本舞台ではTDLのスプラッシュ・マウンテンのような大道具を盆でぐるぐる回すことによって、アクティング・スペースを狭め、客席からの視線の方向をコントロールし、また、大セリや階段などで垂直方向のラインを強調し、群衆をすっきりとみせるあたり、大劇場や大人数の処理に慣れたプロの技。舞台いっぱいに人物は配置されているものの、どこを観れば良いのか(ひいていえば、注目すべき数役をそれとなく提示)がわかるので、観ていて安心。正直、チョイ役も多く、若手にいたるまで役が割り振られていて、誰が誰だかわからないんですもの。(まだ個性に乏しい下級生は、判別の難しい衣装や、似たような発声ということもあって、団子状態ですから、ここは交通整理がとってもありがたいです)。今回の小池演出だと、タムドク、キハ、ホゲの三人の見分けがつけばとりあえずOK。それでも、タムドクとホゲが王位をかけた権力争いに巻き込まれる過程、キハを巡っての三角関係、仕事(=権力)を取るか愛を取るかのかけひきなど、彼らだけで見どころ沢山。正直、下級生など相手にしていられませぬ。

 個人的に印象が強いのは、一幕の中盤で、駆け落ちしたタムドクとキハが、タムドクが生まれた場所という、山中の小屋に姿を消す場面。「生まれた場所に帰ろう」みたいなセリフをタムドクが言うのだけれど、ここで言う生まれた場所=子宮=性交のお誘いの流れが、みごとにすみれコードをクリアしていてお見事。で、休憩時間に、その処理を絶賛していたら、案の定、第二幕では「あの時の子供が」とつながって、思わず大笑い。って、最近の宝塚は何かと性交ネタが多い気がします。。。夜通しの性交だったこともほのめかして、初体験(ですよね?)にして、恥じらい知らずのタムドクは何とも大物。そして、真飛聖がトップ2作目にして、芸風が大きくなりました。歌い上げといい、大芝居といい、堂々たるものです。ハスキーだけれど、太くて良く響く低音を持っているので、セリフも歌詞も聴きやすいのが嬉しい。

 ファム・ファタル的存在のキハはタムドク以上に波乱万丈な人生。権力争いに巻き込まれ、囚われの身になるわ、魔術にかけられて多重人格になるわ、二人の男に愛されるわ、恋敵が登場するも実はそれは生き別れの妹だった、怒りと悲しみのあまり制御不能状態になって火柱をドッカンドッカンあげるわなどなど、韓国ドラマお得意の「いきなりその展開ですか?」の何でもあり役。クライマックスなんて、公開出産ですよ、アナタ。トップ娘役がもの凄いうめき声をあげるものですから、これまた客席でビックリ。半透けの幕の後ろであえぐ姿は「これって青少年に見せて良いのやろか?」とおじちゃん心配。。。

 実は今日初めて指摘されたんですが、僕が作品の好き嫌いを決めるのってストーリーよりも音楽が基準らしいです。なるほど。音楽面で盛り上げてくれる作品(&カンパニー)は好き。よって、寄せ集め音楽でまとまりのない作品や、印象の残らない作品は興味なし。って、何十年観劇していて、何を今さらなんですけどね。そんなわけで、今回の作品は、耳当たりは良いものの、記憶に残る曲が一つもなかったので、満足度が低いんです。決して好きな作曲家というわけではないのですが、寺田瀧雄が亡くなって以降、宝塚はメロディが実に弱くなりました。帰り路に思わず主題歌を口にするなんてことがめっきりなくなりましたもの。昨年の主題歌で耳に残っているのは「パッション!」位かなぁ。芝居もショーも記憶なし。良く「名曲のあるミュージカルが名作ミュージカル」なんて記述を見るけれど、メロディ・メーカーとして、外部スタッフをどんどん投入してほしいなぁ。例えば小室哲哉あたり(とっさの思いつきです)が参加したらかなり違ってくるかと。メロディ作りに優れた人材と、編曲や指導に優れた人材って別だと思うんです。でもって、一部ファンにはものすごく高く評価されているこの作品ですが、意外に「う〜ん」とうなってる人もいる(僕もその一人)ので、好き嫌いが分かれるのかもしれませんね。


2009年02月06日(金)19:00-20:55
ラファウ・ブレハッチ「ピアノ・リサイタル」@東京文化会館

 C席 3000円(都民劇場会員価格) 4階-3列-30番 (パンフレット:無料/500円)

 ピアノ:ラファウ・ブレハッチ

 モーツァルト:ピアノソナタ第16番 K.570
 ベートーヴェン:ピアノソナタ第2番 op.2-2
(休憩)
 ショパン:4つのマズルカ op.17
 ショパン:ポロネーズ第6番 op.53「英雄」
 シマノフスキー:ピアノの変奏曲 op.3
(アンコール)
 ショパン:24の前奏曲第4番
 ショパン:マズルカ op.56-2

 泣く子も黙る、ショパン・コンクールの覇者によるリサイタル。アナタ、ショパン・コンクールなんていったら、ピアノ界一の権威を誇るコンクール。さぞかしヴィルトゥオーゾなんでしょうね、と勝手に決め付けて会場入りし、いざプログラムを確認してみたら……なんてまあ地味な曲ばかり集めたんでしょう。まだ20代のピアニストだというのに、ごまかしが一切できない、シンプルな曲を取り上げ、丁寧に丁寧に弾く方です。派手な技巧をひけらすことなく、ここまで素のピアニズムを見せつけることに、この若者のとてつもない実力と自信を感じました。透明でクリアな硬質の音は真冬の午後の日差しのよう。熱い感情も、強いパワーもなく、とってもストイックな演奏。……と書くと、ジジ臭い印象をもたれるかもしれませんが、若者ならではの眩しくきらめいた伸びやかな音楽。
 まずはモーツァルトが貴族のための音楽から自分の思うような音楽へと路線を変更した時代のソナタ。そして、ベートーヴェン初期のソナタ。今はまだ哲学的で思いつめた演奏が想像できないので、古典の中からこれらの曲を選んだのは正解。
 後半はお国もの。世の作曲家の中で、ショパンはダントツに好きなので、待ってました!のプログラムの始まり始まり。同じ会場、同じピアノなのに、急にステレオになったかのような開放感。半音の移行が何とも色っぽくて、ワイン片手に聴きたくなります。四つのマズルカの歌い回しは、ウィーン・フィルでウィンナ・ワルツを聴く時のような嬉しさがこみあげます。ポーランド人だからこんな演奏ができるのかはわかりませんが、歌い回しが自由自在。でも、地味ですよね、この曲。そして、やっと華やかなピースとして英雄ポロネーズ。この曲大好きなので、色んなピアニストの演奏を聴いてますが、今日はリズムが強調された演奏。聴いてて血が沸き立ちます。トリは圧巻のシマノフスキー。超絶技巧も都会的にサラっとこなし、とてもスマート。熱演というタイプのピアニストではありませんが、ピアノという楽器の性能と魅力を極限まで駆使し、一つのテーマをあの手この手で弾き分けられる変奏曲に心から満足。
 アンコールは、花火のようなショーピースではなく、またまた地味な選曲をするあたり、かなりこだわりのあるピアニストですね。演奏も存在感も決して僕の好みのピアニストではないけれど、独自の路線を究めようとしているあたり、尊敬に値する音楽家です。巨匠を目指すタイプ(そして、僕の好みはエンターテイナーなタイプ♪)。聴いていて新鮮ですし、勉強になります。


2009年02月19日(木)11:00-12:15
東京藝術大学「2008年度 第13回 奏楽堂 モーニングコンサート」@東京藝術大学奏楽堂

 全席自由 無料 16列-4番 (パンフレット:無料)

 指揮:松尾葉子
 管弦楽:藝大フィルハーモニア
 ピアノ:別府由佳(3年)
 チェロ:加藤陽子(4年)

 バルトーク:ピアノ協奏曲 第3番
 ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104

 久し振りのモーニング・コンサート。ピアノとチェロという人気楽器が登場のせいか、満席の盛況です。モーニングコンサートのシリーズ、ガラガラの時と立ち見も出る時があるのですが、学生といえども、なんともシビアな世界です。
 一曲目のバルトークは、あまり演奏されない曲ながら、バルトーク特有の「摩訶不思議感」は薄いのですが、何でも、バルトークが白血病で命を落とす直前に、ピアニストだった妻に向けて書かれた、辞世の句のような曲なんだとか。残り17小節を残して寿命となった作曲家の白鳥の歌。もちろん、バルトークですから、超絶技巧の連続です。が、あまりにそれらが多くて、いちいち超絶技巧にびっくりなんてしていられません。そんな状況の中、浮かび上がる音楽は、意外にも華やかでキラキラ。うん、逃れられない運命ならば、最後の最後まで楽しまなくっちゃ、と元気をいただきます。
 常々、芸大のピアノ科とヴァイオリン科は天才少年・少女たちの集まりで、まだ世間の風には吹かれてないので、その実力もさることながら、自信に満ちた演奏っぷりが魅力なのですが(演奏家にはこれがなくっちゃ!)、本日のピアニスト、意外に素朴。登場の段階で緊張からか顔がこわばってて、いかにも学生らしてくて、実に初々しいんです。演奏終了後の拍手の際には泣きそうになってるし、カーテンコールでは、ドレスにもかかわらず、舞台上をダッシュですよ、ダッシュ。今後、彼女がプロのピアニストとして活躍するようになった時の自慢話が出来ました♪
 休憩を挟まず演奏されたのはドヴォコン。ボヘミア〜ンな素朴さと、アメリカ〜ンなエンターテインメントが共存する、素晴らしいコンチェルトなんです。通常、弦楽器のコンチェルトって、ソロ楽器の音量もあってか、オケ・パートはつまらない曲が多い印象があるのですが、まるでシンフォニーであるかのように、管楽器は歌いまくり、弦楽器は重厚に音を重ね合います。おまけに、コンマス(今日はコンミスでしたが)のソロまであって、生半可なソリストでは「アンタ、主役でしょ、しっかりしぃや!」とお尻を蹴とばされそうなケッタイな曲なんです。で、こちらのソリストもステージ上でまだまだ固く、本来はもっと伸びやかに弾くんだろうな、とやや心配な出だし。芸大でのコンチェルトでこのような感情を抱くのは珍しいこと。でも、この大曲のソロを弾かせてもらえるだけあって、オケに負けずにグイグイ弾き進める素晴らしいチェリストでした。お腕は確かです。


2009年02月19日(木)13:00-13:50
東京都交響楽団「Tea Time Concert」@東京文化会館 大ホール・ホワイエ

 全席自由 無料 (パンフレット:なし

 チェロ:江口心一

 バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番ト長調 BWV1007 より「プレリュード」
 バッハ:無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調 BWV1008 より「プレリュード」
 バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調 BWV1009 より「プレリュード」
 バッハ:無伴奏チェロ組曲第4番変ホ長調 BWV1010 より「プレリュード」
 バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番ハ短調 BWV1011 より「プレリュード」
 バッハ:無伴奏チェロ組曲第6番ニ長調 BWV1012 より「プレリュード」
 コダーイ:無伴奏チェロソナタ 第1楽章
 稲本響:船長

 芸大から上野駅に向かう途中、客引きにひっかかり(!)東京文化会館の中へ。こちらも満員で、ホワイエ内の階段に腰掛ける人ズラリ、立ち見の人ワンサカ。そりゃ、ロビーでの演奏なので、逆光となってしまい、えぐちゃんのシルエットしか見えませんし、音響も良くないので、マイクとスピーカーで補強しているのですが、この気楽加減がなんとも心地よいもんです。
 今回は無伴奏チェロ1時間一人舞台ということで、選曲にかなり悩まれたそうですが、バッハの無伴奏チェロ組曲からのプレリュード集というお洒落な構成。各組曲の一曲目ということで、バッハおじさんも腕によりをかけているはず。そういえば「アダージョだけを集めたCD」や「パッヘルベルのカノンだけを集めたCD」なんかもありましたっけ。えぐちゃんのチェロはのぼぉちゃんとも、田中さんとも(あ、二人とも同僚の都響のチェロセクションで一番前に座る方たちです、念のため)違って、滑らかで流麗な音楽。一時間前の芸大のコンサートも素晴らしかったけれど「プロは個性があってナンボ!」な演奏を繰り広げてくれました。どの曲も、サラサラと体の中に染み込んでいくのが快感。難曲のコダーイのソナタも、熱演ではあるのですが、どことなく都会的でお洒落。タナボタなコンサートでした。


2009年02月19日(木)14:40-15:55
歌舞伎座さよなら公演 二月大歌舞伎「人情噺文七元結」@歌舞伎座

 一幕見席 800円 4階-立ち見 (パンフレット:1200円)

 左官長兵衛:菊五郎
 女房お兼:時蔵
 和泉屋手代文七:菊之助
 娘お久:尾上右近
 角海老手代藤助:團蔵
 和泉屋清兵衛:三津五郎
 家主甚八:左團次
 鳶頭伊兵衛:吉右衛門
 角海老女房お駒:芝翫

 午後は芸大旧奏楽堂の室内楽をと思っていたのですが、今日は邦楽コンサート。邦楽だったら歌舞伎座が良いなと、演目も出演者も知らぬままに東銀座へ移動。地上に出たら「お立ち見になります!」と叫んでいる松竹の方がいらしたので、そのまま入場と同時に開幕。が、予備知識なくても問題なしの、わかりやすくて面白い名舞台。
 賭博大好きな長兵衛が、今日も負けて帰ってくると、女房のお兼が「娘のお久が行方不明だ」と大騒ぎ。「父親に愛想をつかしたのが原因だ!」とガミガミ叱るんだけれど、のらりくらりと矛先をかわす左官長兵衛:菊五郎が絶品。いかにも江戸っ子のべらんめぇ調で、チャラチャラしたキャラクターが光りまくり。丁々発止の夫婦喧嘩なんだけれど、どことなく話がかみ合わないので、客席は受けまくり。
 当のお久は父親に愛想を尽かすどころか、借金を払うために身を売ろうと女郎屋へ。お久:尾上右近がいかにもおぼこ娘で、薄汚くて、顔も日焼けして「いくらなんでもこりゃ売れないでしょ」と僕なんかは思うわけですが、女主人のお駒がお久の心意気に感動して、借金の肩代わり&約束の時までに文七が借金を返しに来るならば、その日までお久はお店にはださないとの申し出。知らない作品なだけに、お駒:芝翫が登場したとたんに「あれ、マイク壊れた?(使ってませんけど)」と思う位、セリフが聞こえないんです。歌舞伎座の四階席は天井が頭上すぐに迫っていることと、客席のザワザワした状況が相まって、声量のない役者だと、まったく聞こえないんです。が、そんな客席をシーンとさせ、感動の涙を絞ってくれるのが芸の力。芝翫の慈愛あふれる言葉の数々にお久や長兵衛でなくても心打たれます。
 が、こともあろうに、長兵衛は娘の献身でお駒から借りられた50両を抱えて「早く妻に見せて安心させよう、借金を返して全うに生きよう」といさんで帰宅する途中に50両集金した金をすられたといって、身投げ使用としていた和泉屋手代文七に出会ってしまうわけ。このシチュエーションがコメディでしょ。菊五郎の間の上手さ、三枚目に崩れる表情やクネクネ感が絶品で、オペラグラスで釘付けモノ。自分だって、借金で年越しができず、女房の着物を脱がせて自分が着ちゃうような生活だというのに、ここでポンと50両を渡してしまうのが江戸っ子でしょ。文七:菊之助がどこぞの殿様のようなはんなりした美丈夫でありながら、すました顔してハチャメチャに取り乱したセリフを連発するので、これまたおかしい。ここ最近、歌舞伎座で「この若手、良いな」と思うといつも菊之助。役へ大胆にポ〜ンと飛び込む活きの良さが何とも魅力な役者です。準主役として、舞台をひっかきまわす役を与えられたら、絶品です。それでいて、下品にならないのがこれまた素晴らしい。
 で、イソップ童話の「オオカミ少年」じゃないけれど、日ごろの行いが行いだから、帰宅して女房に事の顛末を説明しても信じてなんてもらえず、大家さんが仲裁に入る程の家庭内大紛争がぼっ発。このあたりで、「歌舞伎だし、このまま心中物になるんだろうか?」「景気が悪い時にこんな話嫌だなぁ」などなど、嫌な予感がしたのですが、松竹の作品選びのセンスは良かった。お芝居ならではの、あれこれ偶然が重なって、お金の心配も、娘の身柄も万事解決。おまけに、さらなるハッピーエンドにつながるとあって(あえてあらすじは説明しませんけど)、「本日はこれにてお開きといたしましょう」のセリフと同時に、客席も嬉しくて、大拍手。ファンタジックで希望に満ちた作品で、悪者が誰も登場せず、全員が幸せになれるという、歌舞伎では珍しいタイプのお芝居。軽いドタバタとしても上演できそうな脚本を、豪華メンバーが本気で演じるものだから、泣いて、笑って、感動して、何とも心温まる素敵な一幕でした。また観たい位。幸せ。


2009年02月21日(土)15:00-16:45
日本オペラ振興会「水野修孝:天守物語」@オーチャードホール

 C席 6000円 1階-38列-12番 (パンフレット:1000円)

 演出:栗山昌良
 指揮:星出豊
 管弦楽:フィルハーモニア東京

 天守夫人 富姫:川越塔子
 姫川図書之助:森口賢二
 猪苗代亀の城 亀姫:佐藤恵利
 奥女中 薄:橋爪明子
 朱の盤坊:豊島雄一
 舌長姥:木下裕子
 侍女 女郎花:田中美佳
 侍女 萩:末吉朋子
 侍女 葛:長島由佳
 侍女 撫子:石田亜希子
 侍女 桔梗:葛貫美穂
 山隈九平:安東玄人
 小田原修理:川久保博史
 武田播磨守:東原貞彦
 近江之丞桃六:大賀寛

 日本のオペラは、表だって感情を爆発させることが少なく、心のひだひだを「感じ取ってね」という作品が多く、また、歌舞伎ばりにストーリーが入り組んでいて取っつきにくい作品が多いのですが、この「天守物語」は富姫がなかなか饒舌ゆえ、再演が繰り返されているような気がします。登場人物こそ多いものの、前半は富姫と亀姫のやりとり、後半は富姫と図書之助のやりとりが中心というシンプルさも受け入れやすいのではないでしょうか。
 とはいえ、泉鏡花の世界なので、魔界といいましょうか、人間離れした設定、独特の世界観は、オペラといえども顕在です。アリアらしきアリアがなく、ひたすら会話調で進行するのと、いかにも現代音楽とでも言いましょうか、旋律の乏しい音楽に、最初は「どうしようか」と居心地が悪いのですが、とっつきにくい音楽が、いかにも魔界的で、この作品にはピッタリ。様々な楽器が多パートに分かれて演奏するオーケストラの演奏も、つかみどころのない鏡花の文体にマッチ。オペラでありながら、台詞劇を観ている気分になってきます。
 日本のオペラとしては珍しく、頻繁に上演されていること、スタッフがほとんど定番と化していることから、安定した上演です。舞台中央に10m四方の小舞台が設置され、そのエリアが天守という設定。獅子頭が不気味に目を光らせるその部屋の中で、富姫と亀姫はなんともエロティックに絡み合うのですが、言葉はよりも音楽でまぐわう感覚が想像力を刺激します。魔界では、人間の言葉など意味を持たないのかもしれません。そんなわけで、富姫と図書之助は言葉のかけ合いが何とも刺激的だったものの、ラストは言葉と音楽が溶け合い、旋律はとらえられないけれど、オーケストラが様々なメロディを奏でるサウンドの中に身をゆだねて幕。約1時間半という上演時間の中で、変化に富み、緊張感を保ったまま独特の世界観にいざなわれる、面白い公演でした。
 個人的には、富姫の侍女たちが、トートダンサーのようで、彼女の意思にリンクして行動すること、また、両者の肉体的苦悩がリンクしているところが好きでした。そして、目が見えなくなった富姫と図書之助が相手の居場所を探り合う場面はミュージカル版「アイーダ」のラストに似ていて、思わずプププ。でもって、全体的に暗い舞台なのですが、カーテンコールで、まるで雛人形のように、出演者一同が小舞台を利用して立体的に居並ぶ光景に「これこれっ」と喜んだのは言うまでもありません。


2009年02月22日(日)12:00-14:20
マッスルミュージカル「TREASURE」初日@マッスルシアター

 S席 7800円 11列-142番 (パンフレット:2000円)

 演出:樋口潮

 一部の友人はかなり前からはまっていたのですが、僕は今回が初観劇。渋谷公会堂、NHKのはす向かいに現れたマッスルシアターは、一見、四季劇場のよう。が、一歩場内に足を踏み入れると、シアターアプルのような、傾斜が急で、天井の低い独特の空間。舞台中央は、ヤクルトホールのような花道があり、客席と舞台との一体化に一役買ってます。
 もともと「筋肉番付」というテレビ番組がベースになっていると聞いていたのですが、導入部はまさにミュージカル。ま、ミュージカルとはいっても歌はまったくなく、ダンスというより、筋トレやエアロのステップ、器械体操などがまるで踊りのように……ってことは「音楽に合わせて運動しましょう♪」というスポーツクラブのスタジオ・レッスンみたい。あれだけ大勢の人気を集める分野ですもの、一流アスリートが集まれば、同じような動きでも見た目は段違い。素人のピアノと、プロのピアノが、同じ曲でも魅力は大違いなのと同じですね。
 さて、幕が上がると、何やらバレエチックな場面。どうやら、王女が街中のヨーヨー少年に恋するものの、身分が違うからと、王様に宝物と共に、水に沈められてしまう、というパントマイムが繰り広げられます。このあたり「アラジン」みたいですね。そして、王女を助けられる勇者たちの繰り広げるバトルが各種体育競技という、なかなか面白い作り。
 まずは、跳び箱がたくさん登場し、出演者がテンポ良く四方八方から飛びまくります。舞台中央には跳び箱も設置され、跳び箱のように飛び越える人、ボンネットの上でポーズを決める人、運転席をすり抜ける人など、シンプルなだけに、その至芸を堪能。と、舞台中央に3mはあるだろう、巨大跳び箱が登場。賑やかだった音楽も音をひそめると、やおら、舞台奥の壁がシアターコクーンのように開き、劇場と屋外とがつながると……一発勝負で巨大跳び箱をクリア。拍手喝采!!
 その他、シンクロあり、トランポリンあり、縄跳びや組み体操あり、体のあちこちをパーカッションのように叩きまわって楽器のように打ち鳴らす場面あり、新体操にバランス競技、巨大なフラフープ、はたまたマジックまで登場などなど、単純だけど、楽しい。常日頃、見慣れているミュージカルだと、ダンスの角度やタイミング、集団でのフォーメーションの美しさなど、技術だけでなく、芸術点についてもかなり神経を使っていますが、マッスル・ミュージカルはひたすら技術点。群舞がバラバラだろうが、個人個人が好き勝手に動いていようが、勢いがあればOKな爽快感。とにかくわかりやすので、ちょっとしたスポーツ観戦気分。プロフェッショナルによるショーアップされた運動会です。
 出演者がアスリートとして活躍しているので、美術さんはかなり頑張ってます。専用劇場ならではのしかけでしょうが、舞台進行に合わせて、TDLのスターツアーズのように、客席が揺れたり、現在、東宝劇場でも活躍中のLEDが会場の狭さも相まって、背景として装置として迫力の効果を出していたり、テレビマンならではの、新鮮な演出が楽しめます。振り付けにシルク・ドゥ・ソレイユも手掛けているスタッフが参加しているせいか、一部、隣りの劇場の「コルテオ」の演目と似ているものも登場しますが、シルクは外国人がメインなので、どんなに凄い演目を上演されても「別世界の人たちが凄いことを涼しい顔して上演しているなぁ」というスマートさが魅力だとすれば、マッスルミュージカルは、日本人がメインとなって「近所の兄ちゃん・姉ちゃんが頑張ってるなぁ」という汗臭さが魅力。それぞれ向かっているベクトルが別なのでより楽しいです。
 それにしても、コシノ・ジュンコの衣装の素晴らしいことよ! そりゃ、舞台衣装として、動きにくそうなデザインのものもありましたが(鎧関係など)、基本的に、男も女も露出しまくり。でも、脇腹や胸板、背中など、鍛えられたアスリートの体型が実に美しくて目の保養。お腹、割れてます。背中、三角形です。観終わったら、その足でスポーツクラブに行かなくちゃって気分になります。あれこれ考えることがあって、頭から湯気が出ている人にはオススメの舞台です。邪念が吹っ飛んで、スッキリします。ただ……動いてないのに、痩せたような気分になるのはどうよ!?!?


2009年02月28日(土)15:00-17:30
宝塚歌劇団宙組「逆転裁判 蘇る真実」@日本青年館

 A席 5000円 2階-F列-6番 (パンフレット:600円)

 演出:鈴木圭

 フェニックス・ライト:蘭寿とむ
 ミラー・アーサー:寿つかさ
 ロッタ・ハート:美風舞良
 裁判長:風莉じん
 レオナ・クライド:美羽あさひ
 マイルズ・エッジワース:七帆ひかる
 ディック・ガムシュー:春風弥里
 ラリー・バッツ:鳳翔大
 モニカ・クライド:純矢ちとせ
 モエノ・クリステル:萌野りりあ
 ロバート:風羽玲亜
 サラ・シェリー:綾瀬あきな
 マヤ・フェイ:すみれ乃麗
 ルイス:蒼羽りく
 ネウス・インビット:瀬音リサ

 ゲームソフトと宝塚歌劇のコラボレーション作品。ゲーム版は全然存じあげていませんが、無駄にアキバ系な娘役のセリフ回しの数々、シチュエーションごとに鳴り響く音楽モティーフ、時にストーリーを離れ無表情で解説が入るあたり「いかにもゲームだなぁ」と楽しくなってくる設定を楽しんできました。なお、作曲:吉田優子となっていたけれど、岩垂徳行かと思われます。 パンフレットにはこのあたりの記載がないのでわかりませんが「ゲームと同じ音楽!」という声がやたらと聞こえてきましたから……。法律物の作品でこれはマズイでしょwww
 ゲームという非現実の世界と宝塚というこれまた非現実の世界。うまくコラボできるのか、はたまた反発しあって空中分解してしまうのか!? ここは様々な作品を舞台化してきた宝塚歌劇団、ぬかりはありません。今回、ゲームから宝塚歌劇にアダプトするにあたり、まず、設定が日本からアメリカになりました。これは、まず裁判の流れが日本よりもアメリカの陪審員制裁判に似ていること、そして、政治家の不祥事ということで、なまじ日本を設定してしまうと生々しくなってしまうこと、そして、ゲームならではの吹き替え版映画のようなセリフがアメリカを舞台にすることで違和感がなく、さらに独特のテンションの高さがいかにもアメリカの裁判の作品といった感じでフィット。観客がすんなり舞台に入り込めるよう配慮されてます。
 ま、元がゲームということで、ハリウッドの裁判映画などと比べたら、台本は非常にラフです。深みを求めちゃいけません。第一幕では、状況紹介がメインで、まだストーリーが動き出さないこと(ラブストーリーはあそこまで盛り上げなくても良いかと)もあって「なんでこんなに人気なの?」といった程度でしたが、第二幕になって、ストーリーが動き出すと、がぜん面白くなってきました。キャラクターがはっきりしている&奥行きがないので出演者も悩みなく思いっきり演じてますし、突拍子もない人物ばかりの登場ゆえか、みなさんノリノリ。そして、恐ろしいことに、なんだか当て書きのような様相も帯びてくるのです。
 フェニックス・ライト:蘭寿とむは「異議ありっ!」を連発する熱血弁護士。スポーツクラブなどにあるボタンを押すと十数秒だけお湯が出てくるシャワーがあるでしょ。時間になると急に水圧がなくなるやつ。彼女のお歌ってあんな感じがしませんか? 歌い出しから数秒は元気なんだけれど、急速に音圧を失ってしまう。。。元々歌を苦手とする生徒ですが、青年館の音響の中では、最後までしっかり歌っていただかないことには歌詞が全然聞き取れませぬ。台詞も粒が立たないので流れてしまうきらいがあって、何となく芝居まで下手に見えてしまうのがお気の毒。とはいえ、役の熱さといい、笑いあり、屈折した人間関係あり、スピード感ありと、今の蘭寿とむの魅力が絶妙なバランスで花開き、歌唱力すら飲み込んでしまう勢い。彼女の代表作になるのではないでしょうか。とはいえ、真っ青なスーツの着たきりすずめ。こんなにも主役の衣装代がかからない公演も珍しいですね。そして、下級生の頃は冗談で「研17みたいに見える」なんて言ってましたが、研13になって、まさかこんなに若返るとは思いもしませんでした!
 負け知らずの検事、マイルズ・エッジワース:七帆ひかるも魅力爆発。冷静で無表情で、それでいて存在感と迫力タップリという、難しい役どころ。おまけに、衣装なんて赤いスーツにフリフリのブラウス。こんな条件の中で、「女性」を出すことなく、男役として一貫していたあたり、彼女の日々の修行ぶりを感じます。長身でスーツでとなると、タカラジェンヌで似合う人はほとんどおらず、おまけに低音が苦手なヒョロヒョロ声の生徒が多い中、七帆ひかるは良く響く低音を武器に、切れの良いセリフの数々で何とも魅力的な敵対役。そして、無表情のまま人情味溢れる芝居、フィナーレでの打って変ったかのようなセクシーなダンスなど「宙組でなく、コスプレの星組や、瀬奈じゅんあたりの組にいたらさぞ大スターなのに」と思うほど、素晴らしい素質タップリ。個人的には早く組替えにならないかなの生徒さん。スケール大きいです、歌もダンスもバッチリです。でも、まだ「俺様オーラ」や「私を見なさいっ」的なギラギラ感が乏しい。今後、組内でのポジションが変わり、トップの座を狙いだす学年となった今、これから面白くなりそうな予感がします。作品に恵まれればブレイクするかも。
 一方、ライトやエッジーワースと同い年という設定のヒロイン、レオナ・クライド:美羽あさひは、無表情な芸風が生きて、まるでバービー人形。ライトに対する態度は胡散臭さプンプンだし、裁判場面など、マネキンのように座っていたかと思ったら、いきなりセリフというより「解説のアナウンサー」のように話し出すなど、怪しい人物の筆頭。キリリとした風情、人間と人形(とあえて書いちゃいますけど)との切り替えの鮮やかさなど、実に鮮やか。下級生がゲームの中の人物のように、やたらハイテンションになって空回りしちゃったりしているのに、美羽あさひはキャリアに見合った実力を発揮。当初「もっと若い娘役がいるのに!!」と今さらヒロインな配役にびっくりしたけれど、彼女ならではの役になっていたのが凄いこと。
 と、主要三役は魅力的ですが、他の役は大したしどころはありません。しつこいようですが、ゲームのキャラクターですから。でも、そんな中で、一人一人にちょっとした見せ場が作られていて、トート・ダンサーならぬライト・ダンサーまで登場しちゃうのにはビックリ。そして、どんなにちょっとした場面でも、しっかり自分をアピールして楽しむ&楽しませるのはタカラジェンヌの得意とするところ。ゲームの一選択肢・一ポイントとして登場する彼女たちですが、真ん中がハイテンションなんですもの、一緒に盛り上がらなくっちゃね。
 でもね、でもね、いちばんのお気に入りは組長さん。ミラー・アーサー:寿つかさは誰よりも元気に、誰よりも切れ良く踊り狂っているし〜〜〜〜〜以下ネタばれ!!!〜〜〜〜〜真犯人として敗れ去った後も、全然暗くならないで「君たちみたいな優秀な若者がいるからアメリカは安泰だ。うわっはっは〜〜〜」と陽気に立ち去ってしまうあたり、いかにもポジティブ・シンキングなアメリカのオッチャンという感じがして好きですね。政治家たるもの、自信家でなくっちゃ!
 かくして「これにて閉廷!」と気持ち良く幕、と思ったら、すっかり忘れていたけれど、ライトとクライドのラブシーンが。えっと、ここは蛇足でしょう。フィナーレで素敵なデュエット場面があるんだし、展開はわかっているんですから、ここでしつこく演じられてもだれます。すんなりフィナーレが良かったなぁ。。。(でも、この場面でのエッジーワースの不器用な友情表現は好きなんですけどね、個人的に)。
 突っ込みどころ満載の舞台ですが、あまりの多さにだんだん可笑しくなってきて、最後は出演者じゃないけれど、一緒にテンションUPして笑って拍手しての舞台。それにしても、宝塚歌劇とは思えないほど男性客が多かったです。客席に響く笑い声が、いつもと違って混声合唱団!! ロビーで耳を澄ましている限りでは、宙組ファンは生徒の扱いに満足しているし、ゲームファンも舞台化に対して満足しているという、ほんわか空気。上演時間の制約を受ける舞台において「太王四神器」のようなボリューミーな原作をスピード感たっぷりに上演するのも凄いけれど、単純なものを単純に楽しく上演するのもこれまた素敵なこと。カーテンコールで、出演者・観客が一体になっての「異議ありっ!」まで満喫して、気持ち良く帰路につきました。こんなコラボだったら大歓迎。