観劇日記〜2009年03月〜
03日(火) 18:30 宝塚歌劇団花組「太王四神記」−チュシンの星のもとに− 東京宝塚劇場
08日(日) 14:30 牧阿佐美バレヱ団「リーズの結婚」 ゆうぽうとホール
14日(土) 12:00 T4(紫吹淳/湖月わたる/彩輝なお/貴城けい)「ファーストコンサート」 東京国際フォーラム ホールC
14日(土) 17:00 東宝「ニュー・ブレイン」 シアタークリエ
18日(水) 19:00 TBS/梅田芸術劇場/ホリプロ「マルグリッド」 日生劇場
21日(土) 14:00 PARCO劇場「ストーン夫人のローマの春」 PARCO劇場
21日(土) 18:00 ホリプロ「回転木馬」 銀河劇場
22日(日) 15:30 宝塚歌劇団花組「太王四神記」−チュシンの星のもとに− 千秋楽 東京宝塚劇場
24日(火) 19:00 船橋市立葛飾中学校管弦楽部「特別演奏会」 習志野文化ホール
26日(木) 18:30 宝塚歌劇団月組「SAUDADE(サウダージ)」−Jにまつわる幾つかの所以− 昭和女子大学人見記念講堂
28日(土) 14:00 神奈川県民ホール・びわ湖ホール・東京二期会・日本オペラ連盟
「プッチーニ:トゥーランドット」
神奈川県民ホール
29日(日) 14:00 新国立劇場バレエ団「バレエ・ザ・シック」 新国立劇場中劇場
29日(日) 14:00 映画「マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと」 TOHOシネマズ 市川コルトンプラザ Screen7
31日(火) 18:30 宝塚歌劇団星組「My dear New Orleans」「ア ビヤント」 東京宝塚劇場


2009年03月04日(火)18:30-21:35
宝塚歌劇団花組「太王四神記」−チュシンの星のもとに−@東京宝塚劇場

 当日B席 2500円 2階-16列-11番 (パンフレット:1000円)

 演出:小池修一郎

 ファヌン/タムドク:真飛聖
 カジン/キハ:桜乃彩音
 ヨン・ホゲ:大空祐飛
 ヤン王:星原美沙緒(専科)
 ヨン・ガリョ:夏美よう
 カグン将軍:高翔みず希
 ソノ部族長:眉月凰
 大神官:絵莉千晶
 ヒョンス/フッケ将軍:悠真倫
 プルキル(大長老):壮一帆
 セオ/スジニ:愛音羽麗
 ヒョンゴ:未涼亜希
 パソン:桜一花
 サリャン:華形ひかる
 チョロ:真野すがた
 チョ・ジュド:紫峰七海
 カクダン:望月理世
 セーム:花野じゅりあ
 チャピ/トラジ/産婆:初姫さあや
 イルス:日向燦
 スンノ部族長:紫陽レネ
 コ将軍:扇めぐむ
 カンノ部族長:夕霧らい
 チョク・ファン:祐澄しゅん
 チュムチ:朝夏まなと
 チャンミ:華耀きらり
 セドル:月央和沙
 ヒョンミョン:望海風斗
 メファ/ホゲ(少年):白華れみ
 モラン:華月由舞
 チュモン:嶺乃一真
 ポッコッ:芽吹幸奈
 ナリ:梅咲衣舞
 モンニョン:瞳ゆゆ
 タルビ/タムドク(少年):野々すみ花
 クカ:花蝶しほ
 スリョン:月野姫花

 初見でもわかりやすく出来てますが、何しろ情報量が多いので、二度目の方が楽しめます。リピーター孝行な作品です。細かなところで、複線張りまくりの台本です。つぶやくようにキーワード的な単語をつぶやくだけなのですが、展開が頭に入っていると「あぁ、この場面があそこに繋がるのね」という面白さ。ただ、今回の演出、プロローグをはじめ、重要な場面が舞台後方にせり上げた大せりの上で演じられるので、二階席からは……見えないっ!

 今回は韓国が舞台になってますが、そういえば数年前の小池作品「薔薇の封印」に似てますね。その他、「里見八犬伝」や「ドラゴンボール」をはじめ、この手のストーリーは世界的にポビュラー! でも、みなさん、なして権力のために宝集めが必要なのかは不明(?_?) 舞台がヨーロッパではなく、韓国なので、使われている色彩がダークです。赤も青も抜けるような色ではなく、黒が混ざっているどす黒くて不気味さが漂います。装置や衣装も黒がベースなので、華やかさよりも壮大さを感じます。

 そんな、ありがちなストーリーの中、物語に深味を与えているのがヨン・ホゲ。元々、小池演出の魅力の一つに「落ちていく男の生きざま」ってのがあって、主役もしくは二番手あたり(この場合Wトップに近い力量のある役者が充てられることが多い)が、女性でありながら、何とも男っぽい芝居を見せてくれます。今回のマトとなったホゲですが、生まれながらにして王者としての教育を受け、家族のみんなから、そして民衆からも持ち上げられる王子様。本人も「将来は俺が!」と思っているわけでしょ。でも、それが間違いであり、さらには、自分の家族が事実を隠し、権力抗争のために自分を利用していたと知ったとなると、価値観が一気に崩れおちるわけで、その哀しさはいかに大きかったことか! さらには、事実隠蔽により、親友により母を殺され、恋する人も奪われたと思いこんでしまうあたり、切なくて悲しい役です。が、事実を知った後も、王者としての教育を受けた者は違いますね。自分の感情を押し殺し、お家のために、名誉のために、落ちるところまで落ちていこうという男のドラマ。このあたり、ますます歌舞伎っぽいのですが、そういえば、死ぬ間際でコロッとしがらみを捨て去り、タムドクに本当の心を伝えて息を引き取るあたり、何とも美味しい役です。芝居の上では、トップ以上にやりがい、面白さのある役でしょう。

 が、やはり音楽が印象に残らないんです。二度目の観劇にしてテーマ曲の記憶なし。耳当たりはとても良いのですが。。。なお、フィナーレでは、メロディーはともかく、フュージョンに徹した編曲が新鮮で、YMOを彷彿させます。人数削減で、かなり編成が小さくなったオケの弱点を逆に生かした素敵な処理ですね。時に「録音か?」と思ってついオケピを覗き込んでしまった程シンセサイザーが活躍(逆に「ここで録音!?」なナンバーもありましたが)。出演者たちも、男役というより、格好良いお姉さんとして踊っていて、どことなく武富士ダンサーズ。ラインダンスの曲調も早く、緊張感がありました。全体的に、新しいことにチャレンジしようという、劇団の意欲を感じる公演で、まだ、消化しきれていない部分もあり、荒削りな作品ですが、冒険をも安心して見せてしまうスタッフたちの仕事ぶりに拍手。



2009年03月08日(日)14:30-16:35
牧阿佐美バレヱ団「リーズの結婚」@ゆうぽうとホール

 C席 4000円 2階-7列-2番 (パンフレット:1500円)

 指揮/デヴィッド・ガルフォ
 管弦楽/ロイヤルメトロポリタン管弦楽団

 コーラス:イヴァン・プトロフ
 リーズ:伊藤友季子
 シモーヌ:保坂アントン慶
 トーマス:本多実男
 アラン:宮内浩之
 村の高商品:加茂哲也
 公証人の書記:鈴木直敏
 若いおんどり:中島哲也
 めんどりたち:森脇友有里、塚田織絵、小松見帆、安部里奈

 久し振りに「リーズの結婚〜ラ・フィーユ・マル・ガルデ〜」を観てきました。会場はゆうぽうと。このホール、国内バレエ団が良く使うのですが、どの席からもストレスなく舞台が見渡せるという意味では、都内でも有数の名ホール。新国も東京文化も歯が立ちません。そして、四季劇場や東宝劇場といった、最新の劇場のように、無駄に二階席を前方にせり出さないので、音響も抜群。今日も、一発目の音からして、音圧が高く、重厚な響きに惚れぼれ。二階一列目あたりの人はせり出していると嬉しいでしょうが、いずれにせよ、二階席は二階席。急斜面にして舞台の見切れが大きいのであれば、視界も音響もクリアな昔ながらのホールの方が素敵です(あ、東京文化は古いですけどね)。一階席も、バルコニーがかぶさる面が少ない分、音が抜けますし、何よりも、開放感たっぷりなのが嬉しいでしょ。

 さて、この作品、実にのどかです。フランスの田舎を舞台に、リーズが恋人と結婚するまでのドタバタ。母親のシモーヌが金持ちのトーマスの息子アランと結婚させようとするのをいかに阻止するか! ま、ドン・キホーテと大した違いはありませぬ。そして、フランスが舞台なのに、演奏される音楽はセヴィリア。あの、作曲:フェルディナン・エロールとなってますが、一幕一場なんて思いっきりロッシーニ。盗作騒ぎにならなかったんでしょうか??? 時効ってこと!?!?

 今回の振り付けは、イギリスの誇るストーリー・バレエの名振付家・アシュトンの手になるもの。芝居に偏りすぎず、踊りとしての魅力を発揮しながら、笑いをちりばめる振り付けに関してはピカイチです。彼の振り付けは陽気でスピーディでたたみかけるようにステップが展開されるので、いつもあっという間に幕となるのですから。そんなわけで、突っ込みどころの多い作品ですが、週末の昼下がり、いろんな作品の美味しいところ取りと割り切れば、これ以上気楽で楽しい作品もありますまい。

 の〜どかに幕が開いて、さて始まり始まりなのですが、やたらと巨大なニワトリ小屋から飛びだしたおんどり&めんどりたちのダンスが実に見事。被りもので顔はわからないのに、あしの動き、腰を「くの字」に曲げたいかにもニワトリな動きに場内から笑いがこぼれおちて、何とも幸せなスタート。そして、本篇のお話では、シモーヌが大活躍。眉毛を釣り上げて、動きは少なく表情だけで芝居をしちゃうシモーヌ:保坂アントン慶はまさにはまり役。彼のこの役大好きなんです。ヨーロッパのちょっと厳しい老夫人の雰囲気バリバリで最高! それにしても、演劇界において、憎まれ役ほどおいしい役はありませんね。リーズとシモーヌの結婚をかけた母娘のバトルに大笑い。だって、リーズ:伊藤友季子が、大人しいお嬢様じゃなく、活発なお譲ちゃんなんですもの。そして、そして、お笑い担当のアラン:宮内浩之が、いかにも田舎者でさえないボンボンで、常に手放さない赤い傘が愛らしくて、一幕最後で暴風雨で飛ばされちゃうあたり、ファンタジー・ランドです。

 でもね、いちばん可愛くて、いちばん釘付けになるのはお馬ちゃん。結構、聴き分けが悪くって、舞台上で好き勝手やらかしてくれるのが何とも可愛い。この子が出ている場面は、ついオペラグラスで動物観察になってしまって……すみません、ダンサー見てませんっ。


2009年03月14日(土)12:00-15:10
T4(紫吹淳/湖月わたる/彩輝なお/貴城けい)「ファーストコンサート」@東京国際フォーラム ホールC

 S席 9800円 2階-14列-11番 (パンフレット:2000円)

 演出:岡村俊一

 紫吹淳/湖月わたる/彩輝なお/貴城けい
 星奈優里/大鳥れい/紫城るい
 本間憲一

T4とは何ぞやとお思いでしょう。なんでも、トップ4人という意味とのこと。峰さを理が中心となる「グラン・カトル」は同時期にトップを張った四人組だけれど、今回はちょっと在位期間に差がある四人。どーでも良い情報ですが、星組でエリザベートが上演された時、ルキーニ:紫吹淳、エルマー:湖月わたる、シュテファン:彩輝なお、マデレード:星奈優里でした。その他、紫吹淳がトップ時代は新専科だった湖月わたるや彩輝なおが二番手格で参加し、紫城るいが二番手娘役でしたし、湖月わたるがトップ時代は、貴城けいが星組公演に何度か特別出演していたし、何げに関係があるのですが……大鳥れいは生粋の花組生徒で、他組との交流にもご縁がなかった関係で、今回のようなOG公演といえども、ちょっと別格な立場かも。単に現役時代から観ている者の思い込みかもしれないけれど「愛と青春の宝塚」のハイライトではともかく、現役時代の代表場面の再現に参加しても、なんだか納まりが悪いなぁ。。。

 さて、今回のコンサート、大きく分けて三部構成です。12月に上演された新宿コマ劇場ファイナル・ミュージカル「愛と青春の宝塚」ハイライト、現役時代の代表場面、退団後の仕事からの代表曲。

 「愛と青春の宝塚」はいきなり大羽根を背負ったトップ4が登場してのプロローグに始まり、各持ち歌を披露……とタカをくくっていたら、やられました。湖月わたるが劇中のわたる役(石井一孝の役)に扮してスーツ姿で石井一孝のナンバーを披露。タカラジェンヌのスーツ姿はスーツがブカブカで似合う人は滅多にいないのですが、彼女はその滅多にいない一人。ちょっと着崩した姿が似合いすぎます。会社にこんな先輩がいたらモテモテなことでしょう。一緒に観劇のりすさんが「もみあげプリィズ」とおっしゃるのも納得な男っぷりです。そして、本来の役については、Wキャストなので、ナンバーによって歌い継ぐWりゅーたんやWたっちーなどが披露されるのですが、Wりゅーたんでは、劇中劇を二人で再現。それも、瞬時に男役と娘役を入れ換わるという離れ業。かつて、ショー「パパラギ」で出雲綾が男歌と女歌を一人でデュエットするという至芸を見せてくれましたが、今回は二人が同時にその芸を披露するのです! 軍帽をキリリとかぶって低音できざった直後、帽子を脱ぐと同時にブリブリの娘役になるのだから、まさかそんな展開を想像してなかった客席は爆笑。いやはや、オモロイものを見せてもらいました。

 続いて、現役時代の代表場面を披露のコーナー。代表曲じゃなく、代表場面ですよ、場面。スゴイでしょ。トップになる人は、自分の芸を確立しているわけで、それぞれ個性的なのですが、いざ全員そろってミュージカルを上演しようとなると、並んだ瞬間に学年順の序列が出来上がり、紫吹淳→湖月わたる→彩輝なお→貴城けいと番手が決まるのですが、ソロ場面になると「ここは私のコーナーね」と遠慮なく化けるのが面白いところ。宝塚の体育会的特性を感じる瞬間です。それにしても、退団してから長くても5年間とさほど期間はない面々といえ、瞬時にして男役に戻れるのが素晴らしいですね。劇団の衣装協力(すでに現役スター用にリフォームした衣装も元の状態に直してのご提供!)もあって、懐かしい場面の再現にオペラグラスにも力が入ります。ちょっと前までは「宝塚を引きずっているOG」と「宝塚をすべて消し去ろうとするOG」に分別できたものですが、四亜金のスターは、男役は男役として再現しつつ、女優としても成功している人が多くて、頼もしい限りです。

 そして、退団後の仕事からのナンバーでは、彼女たちが良い仕事をしているのを強くアピール。紫吹淳は「ボーイズ・フロム・オズ」のライザ役で、湖月わたるは「くたばれ!ヤンキース」のローラ役で、彩輝直は「プロデューサーズ」のウーラ役で、それぞれ配役発表の時に「出来るの!?」と心配させておきながら、いざ幕を開けてみれば「これぞ当たり役!」な輝きを見せて、女優としての成功を獲得しちゃったのですが、男役として、作り込んでいた彼女たちにとっては、女優の役も普通の女性よりも、強烈に作り込む必要がある役の方がやりやすいのかもしれませんね。

 紫吹淳は作り込んだ魅力が最高で、素のトーク場面では、不思議ちゃんなのに、音楽が流れると同時にそれぞれの役へと変身し、完璧なまでに別人格にスイッチするのが見事。アーティストです。湖月わたるは高音も見事で、誰よりも女性らしいしぐさもするのに、相変わらず歌い踊るとスポーティでダイナミックなので、そのギャップが楽しい。オカマちゃんではなく、バレーボール選手のような雰囲気。彩輝なおは、苦手とされた歌唱力が抜群にUPしていて「現役時代にこれほど歌えたならばもっと評価も違っただろうに」という安定感。自分の声質や癖を活かした歌い方を会得され、まさか彼女が歌でここまで聴かせるようになるとは! ドレス姿はハッとするほと美しいし、今後の活躍が楽しみな女優さんに大変身。でもって、トート閣下は妖しい魅力満載で、惚れましたさ、あたしゃ。そんな中、1作トップで、代表場面が本公演のものでなく、また退団後の舞台でも代表作がまだない貴城けいは、まだ女優としては若葉マーク。現役時代は女性っぽさを感じる人でしたが、いざ女優になるとギスギス感が強く、女性になりきれてない感じ。トークも、まだ「かしげブランド」が確立してないので、テンションの高さはあるものの空回り状態。退団後のナンバーでは、主演ではない作品から数曲、そして、今後演じる予定の作品から数曲披露。声域は広いし、今後きっと東宝の舞台での活躍が期待できるものの、既に役を自分のものとしている他スターとならぶと部が悪いのはいたしかたないところ。でも、退団して早2年、そろそろ女優としての地盤を固めたいところですね。心配はしてませんけど。

 何はともあれ、過去の、現在の、これからの姿を魅力的に見せてくれたトップさんたちに大拍手。3時間という長丁場のコンサートにもかかわらず、あっという間でした。年齢的にもキャリア的にも油の乗っている素敵な女性達です。素敵といえば、三階客のために、客席中央にスクリーンをぶら下げ、舞台の様子をアップにして映し出した演出にはぶらぁぼ。一階席・二階席の観客の邪魔にならず(国際フォーラムの客席は天井がやたらと高いのです)、三階席の観客は客席降りも舞台奥で高い位置に立っても、トーク場面で表情が観たくなっても、問題なく楽しめちゃうのです。こういった気遣い、嬉しいものですね。



2009年03月14日(土)17:00-18:50
東宝「ニュー・ブレイン」@シアタークリエ

 S席 11000円 13列-21番 (パンフレット:1500円)

 演出:ダニエル・ゴールドスタイン

 ゴードン・シュイン:石丸幹二
 リサ / ホームレスの女:マルシア
 ロジャー:畠中洋
 リチャード:パパイヤ鈴木
 ローダ:樹里咲穂
 ミミ・シュイン:初風諄
 ミスター・バンジー:赤坂泰彦
 医師:友石竜也
 牧師:田村雄一
 ナンシー:中村桃花

 客席に足を踏み入れると、幕は上がっていて、深紅の壁に囲まれた空間に小型ピアノの一台。三重の円がその上に吊るされていて、カーテンが垂れ下がっている。何やら、アダルトな音楽番組のテレビのセットのような、夜景の綺麗なレストランのステージのような、シックで美しい舞台設営です。シアタークリエでも「小屋が大きい?」と思うのですが、何とも広がりを感じて、僕は気に入りました。(ピアノがあるってだけで3割増しの傾向はありますけど>自分)。

 さて、この「ニュー・ブレイン」はいかにもブロードウェイな作品です。どこがって、作風が。主人公のゴードンは子供番組(NHK「お母さんといっしょ」をご想像ください)の作曲家ながら、メロディが湧いてこないと苦しむ人。この設定だけで、プレッシャーとエージェントと本人のこだわりとでドロドロなんだろうなぁ、と想像していたら、その通りの展開。歌のお兄さんのミスター・バンジーからはガミガミ言われ、エージェントのローダからもギャーギャー言われ、正直「また、この手の話?」と食傷気味な始まり。大ヒットにならなかった原因はここいらにあるのかも。でもって、ローダはゴードンに気があるらしいのだけれど。実はゴードンはゲイで、恋人ロジャーがいてという設定。あぁ、ニューヨーク!

 おまけに、ゴードンは、仕事はスランプ・ゲイ・ユダヤ人と、何やらニューヨークの(アメリカの)色々な問題を一人でかぶっているような設定。さて、今回はどんな展開になるのかな、と思いきや、いきなり食事中に気絶! 即座に病院に担ぎ込まれて検査したところ、脳に問題があり手術が必要ってことで、手術するのですが、成功とは言い難く、植物人間に。この病院では、やたらビッチな女性看護師と、ゲイ丸出しな(たぶん黒人の)男性看護師が大活躍。いかにも訴訟対策な口上をまくしたてる医師に、牧師まで登場と、これまたニューヨーク!! で、周囲に人間が激しく嘆く中、本人の意識だけがさまざまな妄想を展開。

 ゴードンと登場人物同士のつながりは「ひょっとしたら恋人?」と思わせる雰囲気を醸し出すローダ、芸術か契約かで水と油なミスター・バンジー、から元気で勝気なのに時に気弱になる母親ミミ、キスしまくりで一緒にシャワーまで入っちゃう同性の恋人ロジャーと、それぞれひと癖もふた癖もありそう。そして、やたらと哲学的なことをまくしたてるホームレスの女。これらの登場人物をどうさばくのかと思っていたら、無理にまとめることもなく、あくまで人生の一場面に登場する人として処理。人と人との繋がりを求めあっている割に、しっかり自分のペースは譲らないあたり、これまたこれまたニューヨーク!!!

 ここで問題になるのが、人種問題や宗教観、国民性などで、日本で上演する際にはかなりハードルが高い作品だと思います。ローカル色プンプン。知識では理解できていても、感覚がついていかない場面も正直ありました。今にも精神科医が登場しそうな、ピリピリした登場人物たちのウダウダ悩みまくる感情の流れが、僕とは波長が合わないのですが、場面場面で、どのエピソードも「現実にありそう」「現実に起きたらどうしよう」とわが身に置き換えてアレコレ考えさせられるので、エネルギーが必要です。そして、全体のストーリーを追うのではなく、個々の場面の感情を感じるべき作品なのかもしれません。

 ウィリアム・フィンの音楽は素晴らしいです。テーマ曲、カーテンコールの時点で一緒に歌えます。リズムが複雑で難しいけれど、不思議と体になじんで気取った気分になります。彼の作品はかけ合いのナンバーが多く、歌い出すタイミングや、いきなり跳躍する音程など、難題山積み。個々で歌うとわけわからないけれど、誰かとハーモニーを作る際には、声量や声質も統一しないといけないし、でも、それだけに「面白そう、歌ってみたい!」な魅力的なナンバーが揃ってます。でもって、都会的サウンドゆえ、強く深く観客に訴えるエネルギーは乏しいかな。「ついてこられる人だけいらっしゃい、私たちは上級コースよ」と挑発されているみたい。

 今回のキャストは、劇団四季で、宝塚で、音楽座で、それぞれ主役を張ってきた人たちが勢ぞろい。アンサンブル扱いの数人も、印象度や芸の大きさはともかくとして、主演経験者ばかりがズラリなので、どことなく余裕があるんです。一人一人の歌は安定してます(除く・パパイヤ氏)。かけ合いといい、声の混ざり具合といい、面白く聴かせていただきました。

 ここで、気になるのが四季出身者。一人だけの場面でも、きっちり舞台空間を埋めることもできます。それでいてハンサムだし、舞台に品はあるし何の文句もありません。でも、感情表現が地味なので、主役としては「つまんない役者だなぁ」という印象。強烈な個性がなく「私を見て!」を磨いてきた他出身者と並ぶと、とたんに存在感がなくなってしまうのです。いえ、共演者たちは決して、主役の芝居の邪魔をするような方々ではありません(あ、一人例外がいました!名は……伏せときましょう)。それにもかかわらず、舞台での輝きに乏しいのはどうしたことなんでしょうね。きっちり丁寧なだけに「小さくまとまっちゃってる?」と。感情の起伏表現や、表情・身振り、歌の構成など、出身団体の癖ってしばらく抜けないんですよねぇ。もっと悩める人物だったら、さらに作品が奥深くなるのに。

 20〜30代女性をターゲットということになっているシアタークリエですが、まだまだ公演の模索状態が続いてます。作品は悪くないんだけれど、そして東宝色にこだわることなく作品に関わろうという意欲は感じますが、まだ意欲と実態が空回り状態。出演者も「様々な舞台出身者を登用しましょう」な意気込みはかいますが、これならば公演ごとに出身者の傾向を統一した方が、舞台にまとまりが出ると思うんですが、、、現在の意気込みによって、三年後には、日本のミュージカル界にも新しい流れができているのか出来ていないのか、しばらく様子見ですね。(新国も当初はそうだった記憶があります)。ニュー・ブレインを見ながら、ニュー・ブランドを妄想〜〜〜。


2009年03月18日(水)19:00-21:40
TBS/梅田芸術劇場/ホリプロ「マルグリッド」@日生劇場

 A席 9000円 2階-H列-28番 (パンフレット:1500円)

 演出:ジョナサン・ケント

 マルグリット:春野寿美礼
 アルマン:田代万里生
 オットー:寺脇康文
 ピエロ:山崎裕太
 ルシアン:tekkan
 アネット:飯野めぐみ
 ジョルジュ:横内正

 春野寿美礼の宝塚退団後初主演舞台です。久し振りに「元・宝塚トップ」の作品を観た気がします。というのも、ここ最近は、色物的役で、通常の女性では迫力不足になる役を演じて女優デビューする人が多かったので。今回のように「40歳のイイ女」というハードルの高い作品を選んだことにまずは拍手。とはいえ、正直「まだ早かったな」というのが正直なところ。宝塚時代に「歌が得意」と言われた人たちは、宝塚調の歌、男役の音域での歌唱に魅力があったわけで、退団後、女優用の歌、ヒロインの音域でとなると、四苦八苦する人が多いようです。なまじ、歌のスタイルが完成している人ほど、新しい歌唱法にフィットするまで時間がかかります。今回の春野寿美礼も、高音を頑張って披露してはいたけれど、まだ恐る恐るした歌い方で、歌姫としての魅力には乏しい印象。感情をドラマティックに歌い上げられず、小さくまとまってしまったあたり「面白くない」状況。元宝塚トップに求められるものって、技術的なものよりも(動員力はとりあえず置いといて)、登場しただけで観客を圧倒する存在感だと思うんです。作品の良し悪しも超えた「ザ・スター」。今回、それが乏しかったので、地味な作品に仕上がってしまったかと。。。

 さて、お話はというと、「ラ・トラヴィアータ」のミュージカル版です。第二次世界大戦のドイツに占領され、ユダヤ人狩りも横行するパリが舞台で、ヴィオレッタ=マルグリートはドイツの軍人オットーの愛人として登場。愛がないのをお互い承知で、物欲と性欲の交換条件。で、彼女の周りにはそんな彼女に便宜を図る貴族たち。でも、いざ戦争が終わると「敵軍に操を捧げた女」として、リンチにあって殺されてしまう、というのが大きな流れ。それと並行して、アルフレード=アルマンとの不倫(娼婦だから不倫とは違うけれど)のような危険な恋、ジョルジョ・ジェルモン的な役は登場せず、代わりにドゥフォール男爵=オットーが拡大。彼は「トスカ」におけるスカルピア男爵じゃないけれど、権力を使い、恐怖で人を支配し、欲望のためならば権力乱用も、人をだましたり拷問したりするのも平気な男。彼の存在ゆえに、貴族達アンサンブルは個性を身に付け、マルグリットは破滅の道へと転がり落ちていきます。単なる「道を踏み外した女」ではなく、時代の流れの中で、そう生きざるをえなかった女の一生。

 ジョナサン・ケントは、いかにもヨーロッパの演出家らしく、シンプルで美しい舞台を作り上げました。四方を重厚な壁に囲まれたもので、時に目を凝らして眺めても、良く見えない薄暗い照明の中、いかにも「支配され、抑制された社会」な空気が充満。舞台下手に設置された回り舞台(二重回しの外側だけもの)が、時代の流れを象徴するかのように、人々を乗せて、グルグル回ります。人々はその上で時代に逆らって歩くことによって、現状を維持したり、時には流れに逆らえずに流されてしまったり、何とも象徴的な設定です。クライマックスでは、壁が割れ、強烈な光の中へアルマンがマルグリットをお姫様抱っこして歩み出ていき、エンタメ追及というよりも、ややアート寄りの舞台。今回の演出テーマは「時代」と見ました。というのも、登場人物の影が薄いんです。ミュージカルよりも、オペラの演出の方が向いているんじゃないでしょうか。

 マルグリートとアルマンの恋は、占領下でのお偉いさんの愛人が、フランス人の20そこそこの一介のピアニストと二股をかける、というスリリングな状況にもかかわらず、切羽詰まったキリキリ感、ギリギリ感が乏しいんですもの。たぶん、これは、春野寿美礼がまだ女性を生々しく演じるには宝塚調から抜け出してない事、田代万里生が初ミュージカルとしては頑張っているけれど、芝居が一本調子で、かつボンボンっぽい平和な雰囲気を醸し出している事も大きく響いていると思います。実際、このカップル、ラブラブには見えませぬ。春野寿美礼はおっかなびっくりの歌唱で、感情表現まで行き着いてないし、田代万里生(田代誠のご子息! パパそっくり)はまだ音大生みたいな歌で、音は取れているけれど、まだ色のついてないお歌で、また、歌科出身にありがちですが、得意な音域と今まで使わなかった音域との響きの差がありすぎ。宝塚の娘役と、まだコントロールの効かない音大生の歌の組み合わせは、音量も歌唱スタイルもバランスが悪いです。この手の作品って、いかに二重唱を感動的に歌い上げるかが、ラブラブ感を観客に与えるのですが、全然かみ合わないアンサンブルゆえ、どちらも、恋人よりも自分が大好きなナルシストに見えちゃう!

 その点、歌は「何でミュージカルなのに出演することにしたの?」ではあるけれど、マルグリットへの愛と憎しみを表現していたオットー:寺脇康文に人間らしさを感じました。寺脇康文は大劇場役者ではないので、見栄のスケールが小さく、本来ならば、登場していてもいなくても舞台を支配する美味しい役を活かしきれなかった感。これはもちろん、歌唱力的にせっかくのナンバーが不発に終わってしまうこと、存在感を強くアピールするミュージカル役者の中に混ざると、アンサンブルに埋もれてしまい「あれ、居たの?」となるのが残念。

 この作品でもうけ役は実はアンサンブルの面々でした。お人形のような主演コンビ(「私はチャイナ・ドール」と歌うヒロインなので人形っぽくても良いんですが)を尻目に、存在感・人間臭さタップリ。いかに権力者取り入り、自分の生活を豊かにしようかというエゴ、保身のために自らの取るべき態度を思案する肝っ玉の小ささ、とれと同時に、要らなくなった人間はバッサリ切り捨てて「昨日の友は今日の敵」とばかりに豹変する人格など。個人として個性を表現するのではなく、時代を表現していただけの集団がいつの間にか個性を身に着け、ヒロインに対して影響を与えてく怖さが圧巻でした。これは、2月の宮本亜門版「ラ・トラヴィアータ」でも使われていた手法ですが(今年の流行?)ネット社会の今、観客に与えるインパクトは大です。

 今回はメイン・キャストがミュージカルに不慣れでいっぱいいっぱいな舞台だったので、ぜひ別キャストで観てみたい作品です。細やかな感情や、様々な複線が張られまくりのお芝居なので、役の上ではいっぱいいっぱいであっても、役者としては余裕のある状態で演じられたら、もっと面白いのではないでしょうか。そして、この作品には日生劇場は大きすぎ! これこそクリエ位の劇場で観たい作品でした。クリエだったら、ピアノの弾き語りも生音が通るはずだし、爆撃シーンも観客に迫力感たっぷりの効果をあげられるでしょうから。日生劇場公演の場合、せめて4000円位でB席を設定するべきでしょう。今日の席で9000円は暴利。


2009年03月21日(土)14:00-16:25
PARCO劇場「ストーン夫人のローマの春」@PARCO劇場

 全席指定 8000円 G列-20番 (パンフレット:1500円)

 演出:ロバート・アラン・アッカーマン

 カレン・ストーン:麻実れい
 ローマの貴族でありながら、男娼の斡旋している、コンテッサ:江波杏子
 ストーン夫人の夫、ミスター・ストーン:団時朗
 カレンの親友、クリストファー:今井朋彦
 カレンが溺れるパオロ:パク・ソヒ
 始終カレンにつきまとう若い男:鈴木信二

 時は第二次世界大戦後。場所はローマ。ブロードウェイのスター、カレン・ストーンは気の向かないまま夫が切望する「ロミオとジュリエット」でヒロインを演じるものの、あまりの年齢のギャップに酷評の嵐。これを機に引退しましょう、と夫と一緒にローマにやってくるものの、夫が急死。ブロードウェイへのカムバックへの声がかかるけれど、ローマでの一人暮らしに踏み切る。そんな彼女に近づいてくるのがコンテッサ。ローマ貴族でありながら、戦争により財産を失い、今は男娼を金持ちマダムに斡旋し、売上げの50%をピンハネして生計を立てている女性。そんな彼女がカレンに次々に男を紹介するけれど、カレンは年の差夫婦だったため、ほとんど夫婦の夜の生活なしで、こちら方面には興味なし。クリームのように口当たり良く、それでいてキッパリと「二度とお会いすることはないでしょう」と追い払う事が何度か。が、パオロにハマってしまい、ついにベッドインまで。が、パオロはしょせん男娼。最高の金額を出してくれる人であれば、男でも女でもかまわず春を売る男。彼に合わせて衣装を取り換え、髪を染め、ヘアスタイルを変え……とカタブツ女性が身を持ち崩していく過程が見もの、というお話。

 キャスティングが素晴らしいです。ゴージャスな女優を演じさせたらこの人の右に出る女優なんているのかしら?とすら思う麻実れいがカレン・ストーンという時点でこの公演が満足のいくものになるであろうことは予想してましたが、東宝ミュージカルにおける大地真央以上の衣装替え、ヘアスタイル替えに「プロデューサー、予算はりこみましたなぁ」とまずビックリ。小劇場公演とは思えない、贅沢三昧。全部で何着あったんでしょう。そして、どのドレスも見事に着こなしてしまうのが麻実れいならでは。ロングドレスは裾さばきが素晴らしいし、コートを着せれば後姿を拝むだけで溜息もの、セクシーでシンプルなドレスも彼女が着るとゴージャス。目の保養だけでもチケット代の元を取れます。そして「清く・正しく・美しく」の劇団出身の彼女ではありますが、すみれコードにひっかかる男娼をいとも自然にあしらってしまうあたり、小気味よく眺めることができます。が、第二幕になったら、退団後の女優さんって感じで、ビキニ一枚の男娼相手にもひるむことなく、大人の女性として愛欲に溺れていく過程、そして、お金の関係と知りつつも恋に溺れる過程、決定的な別れの後は、常に自分に付きまとっていた露出狂の浮浪者を部屋に呼び込む過程など、舞台を観ながら「えっ!?」「ひえぇ!!!」なお芝居のオンパレード。もちろん、百戦錬磨のベテラン女優ですもの、下品にはなりません。が、演技が、たたずまいが上品であればあるほど、エロスの香りがプンプン。思わず生唾ゴックン。でも、こんな芝居を当たり前のように演じる麻実れい、いかに今まで良い仕事をチョイスして演じてきたかの証明のような気がしませんか?

 そして、悲劇(?)の発端を作るコンテッサ(伯爵夫人という意味。なぜ知っているかというと「フィガロの結婚」のアルマヴィーヴァ伯爵夫人=コンテッサだから!)は江波杏子。ヨーロッパ貴族としてのプライド、敗戦後の時に食事にすら事欠く経済状況、アメリカの成金たちに媚びへつらう屈辱感、そんな成り上がりたちに男娼を紹介して道を踏み外させる復讐心などなど、実に複雑な感情の持ち主。でも、貴族として生き延びるための唯一の集団として、決して卑屈にならず、せいいっぱい強がってアゴを高くして生きる姿に凄味を感じます。麻実れいと並ぶと「どっちが貴族よ」な位取りの差はあれど、その精神性においては負けちゃいません。カレンを男娼によって性欲の世界へとひきずり降ろすあたり、確かに彼女の勝利かもしれないけれど、確実にコンテッサも何かを失っているんですよね。麻実れいvs江波杏子の女のプライドをかけた戦いが壮絶で、実にスリリング。

 そんなカレンの心の平和の源だったのがミスター・ストーン:団時朗。妻が愛おしいあまり、役選びについては冷静な目で見られない人で、60近くの人にジュリエットを演じさせるKYさんではありましたが、その財力と愛情(wituout性生活)で妻を包みこむ素敵な紳士。岡田眞澄亡き今、リッチな感じの漂う欧米紳士を演じさせたらこの方ピカ一。長身で恰幅が良くて、鷹揚で、ちょっとバタ臭いハンサム。ゴージャス麻実れいの相手役にこれ以上フィットする方も珍しいでしょう。

 と、アダルトチームがなかなか良い感じな中、若者たちは苦戦してます。イタリア貴族の美男子たち、という触れ込みなのですが、いかんせんお相手が麻実れいとあっては、太陽の前の月の如し。輝きが感じられませぬ。これは芝居以前に、スターオーラが各段に違いすぎなので、まったくもってお気の毒様。せいいっぱい、キザって、脱いで(!)、迫ってますが「坊や」の域から脱せられず、カレンが狂ってしまう相手に見えないのが難。かといって、セレブ感も乏しいので(鍛えているけれど、貴族というより労働者な体格)、フェロモン不足で完敗。パオロはもっと頑張っていただかないと。今回のカンパニーの中ではミスキャスト。相手が悪かったの、ごめんね。

 アッカーマンは舞台にコの字型の、そして透明な回廊を設置。舞台両脇が時に舞台そで、時に廊下、時に屋外となり、シンプルで狭いけれど、実に状況がわかりやすい装置。色合いもいかにもヨーロッパなオレンジがかったゴールドと白が基調で美しいです。そして、主芝居は中央の10m四方程度の狭いスペースで展開。と、狭い空間で、元が小説ということで、舞台転換を考えてない台本ゆえ、頻繁に場面転換が行われるのですが、何、転換といっても、椅子が出入りしたり、ちょっとした道具の向きが変わったりではあるのですが、いかんせん登場アンサンブルが多く、おまけにやたらと人物設定していて、実に鬱陶しい。ゼッフィレッリがアンサンブルの一人一人に芝居をつけても、大劇場での大芝居だと、その一人一人の芝居が一つの塊となって迫力につながるのだけれど、狭い空間にひしめき合うような人たちがあれこれ芝居しても、効果がさほど出てないような気がします。芝居の緊張感が途切れてしまうようで。。。真ん中が何があっても、本人が意識しなくても「アナタが主役!」な方なので事なきを得ましたけどね。

 何はともあれ、麻実れいありきの舞台であり、彼女ありきの衣装、彼女ありきの演出でした。女優として、凄い待遇、そして凄いお芝居。客入りがすこぶる悪いのに、衣装に装置に人件費にお金をかけまくった素晴らしい舞台、もっと大勢の目に触れてほしかったなぁ。


2009年03月21日(土)18:00-20:25
ホリプロ「回転木馬」@銀河劇場

 S席 12000円 1階-F列-14番 (パンフレット:1500円)

  演出 ジュリー ビリー スノウ キャリー マリン夫人 星の番人 ジガー ネティ カーニバルボーイ ルイーズ バスコム氏
1969年8月
東京宝塚劇場
エドワード・ロール 大原ますみ 真帆志ぶき 牧美佐緒 新三矢子 大路三千緒 曽我桂子 風さやか 高宮沙千   摩耶明美 岸香織
1982年8月
西武劇場
増見利清 大原ますみ 汀夏子 鳳城ひろき 夢まどか 山之内滋美 池田鴻 風美圭 玉梓真紀   管野まき
堀内慶子/td>
池田鴻
1995年6〜9月
帝国劇場
ニコラス・ハイトナー 涼風真世
鈴木ほのか
石川禅
宮川浩
林アキラ
岸田智史
吉岡小鼓音
佐渡寧子
大空眞弓
夏樹陽子
滝田裕介 市村正親
早川正
清水菜穂子
荒井洸子
森田健太郎
李波
大寺資二
下村由理恵
宮内真理子
渡部美咲
金田龍之介
2009年3〜4月
銀河劇場
ロバート・マックイーン 笹本玲奈 浦井健治 坂元健児 はいだしょうこ 風花舞 安原義人 川崎麻世 安奈淳 ※西島千博
中川賢
三木雄馬
玉城晴香 小宮健吾

 久し振りの「回転木馬〜カルーセル〜」の登場です。とにかく古い作品なので、ダンスはバレエだし、歌はシンプルだけれどクラシカルで音域は広いし、台本や振り付け、刈り込みを含めた演出の見せどころ満載。東京では四つ目のプロダクションになりますが、前回が帝劇でマクミラン振り付けという超ゴージャス公演だったので、今回の小劇場での公演はまた新鮮で楽しみにしていました。で、オーバチュアーに乗せて、カルーセル・ワルツのパートになると、舞台上部から星のような吊りものが降りてきます。ベビーベッドで頭上にぶら下げるアレですよ、アレ。でも、電飾がきらめき美しくキラキラ。なかなか良い感じ。

 が、ジュリーとキャリーの芝居で一気に台無し。今回、この二人が何とも幼稚で辟易。ジュリー=笹本玲奈が何とも垢ぬけなく、また芝居が小さくて一人だけ目線が舞台から客席に飛んでこないので、ま、飛んでくりゃ良いってわけでもないけれど、ヒロインとしての華不足。そして、台詞がボソボソと甲高いトーンで話すので、一本調子。夢見る少女がいきなり雇用主に楯ついて仕事は辞めちゃうわ、不良青年として名高いビリーともののはずみで結婚しちゃうわ、夫のDVに苦しめられながらも何故か無償の愛を注ぎ続けるわと、波乱万丈かつ唐突な人生を送る人物として、何か一本筋が通ってないと、なまじ存在感が薄いだけに「本人にはわかってるんでしょうけど」と取り残された気分。じゃ、お歌はというと、クラシカルな歌唱にかなり手こずっていて精彩なし。東宝のプリンセス、苦戦してます。ま、時にはこんな役にぶち当たるのも良いかも。実年齢はまだ若いんだけれど、娘時代よりも、母親になってからの方がしっくり似合うのはどうしたことでしょうね。

 キャリー:はいだしょうこ(千琴ひめか)は歌のおねえさんそのまんま。宝塚出身ではあるけれど(宙組とパンフに書かれていましたが、初舞台は宙組ながら、組配属は星組!)宝塚ではほとんどショーシンガーとしての活躍で、芝居はほとんど見てないのですが、声の出し方が非常に人工的かつ、地声での歌は素晴らしかったけれど、クラシック歌唱となるとかなり物足りないのが実情。宝塚の娘役は、男役を立てるためか、声量たっぷりに歌うということがほとんどないのだけれど、いざ外部で男優と歌うとまず声量のなさという壁にぶち当たります。芝居も自然体とは程遠いので、今後ミュージカルに出演する場合、かなり役が限定されるのではないでしょうか。

 通常のミュージカルとは逆に、今回の公演は女優陣が苦戦しまくりなのですが、ネティ:安奈淳もこれまたビックリのお歌を披露。元々音域の狭い人なのですが、低音からソプラノの領域まで歌いあげなければならないこの役はさすがに荷が重かったよう。声区のチェンジが滅茶苦茶で、音量から音色までまるで別物になってしまうのと、慣れない高音については音程は取れず、声はかすれてボロボロ。こんなに酷い歌のオトミさんは初めて。「六月みんな弾ける」ではメインヴォーカルなのに、声が出なくて、ナンバーを盛り上げられず、「人生ひとりではない」では、感動的に歌い上げてショーストップになりうる名曲なのに、聴いているこちらはあまりに気の毒な出来に「早く終わらないかなぁ」と。姉御肌の存在感や、低音での歌唱の豊かさは素晴らしいだけに「音を外さない」が売りだった彼女のこんな姿をみせられようとは、涙・涙です。

 一方、好調だったのがマリン夫人:風花舞。存在感タップリで、目の表情一つで、可愛い女から怖い女まで自由自在に演じ分ける余裕が素晴らしいこと! そして、ダンサーなだけに、立ち姿といい、歩き方といい、実に美しいんです。ブーツはいて、足音をコツコツとさせながら舞台を横切るだけで「格好良いなぁ!」と感嘆。なぜか、バレエシーンでは、おみ足見せまくりのレビュー衣装で乱入しちゃうし、女優陣では最高の輝き。ソロナンバーがあるわけでないのに、役自体が大きく、グレードアップしました。アッパレ!!

 男性陣はおおむね好調。浦井健治は王子的役を演じることが多かったけれど、「蜘蛛女のキス」のヴァレンティンといい、今回のビリーといい、意外にも男臭い役の方が似合いますね。今回はかなり濃いブラウンの肌色、ボッサボサのヘア、無造作に着崩したウェスタンシャツが何ともお似合い。決して名歌手ではないけれど、実直に歌いあげるスタイルが、クラシック調のこの作品にはフィット。

 そして、マッチョ野郎が売りの坂元健児が、これまた意外にもインドア・インテリのスノーに。こちらも可愛らしいほどに暖かな人物を造形していて、ビリーとスノーの個性の違いが鮮やかに浮かび上がり、素敵なコンビとなりました。歌は元気だったけど、歌えないよりずっと良いですわ。

 カーニバル・ボーイは今日は西島千博が演じる日ですが、中川賢と三木雄馬も登場してトリオで活躍。が、クラシックな作品で、歌も芝居ものんびりモードだったのに、いきなりモダン・バレエ。これはとっても違和感アリ。そりゃ、モダンを得意とする面々ですが、ここはやっぱりクラシックでしょう。演出と歌唱、ダンスの統一のなさが気になります。前回の帝劇が決定版ともいえるマクミラン振り付けの名場面だっただけに、単なるショーアップ場面でしかなかったのが残念。この三人組、バレエダンサーではあるのだけれど、積極的に芝居にも絡んでいて、カンパニーの一員としての仕事っぷりに好感。ダンサー同士でばかり絡んでいたけれど、アンサンブル芝居は、他の俳優もどんどん絡んで良いと思います。バレエの人って、この手のセリフはないけれど、雰囲気と動きで人間関係を表現するのが上手いんですよね。舞台上で気を抜かず、それでいて主役の邪魔をしないのには拍手!(西島氏はちょっと目立っちゃうけど)

 さて、演出ですが、1時間近く刈り込みをしているので、ナンバーのカット、セリフのカットがやたらとなされてます。でも、テンポアップして、全体を現代調にしているわけでもなく、のんびりした芝居のままなので、時に性急な印象も。これは、歌唱力から、ナンバーを朗々と聴かせられないというのもあるかもしれないのですが、セリフがこなれてないんです。実は歌詞も「あえて新訳にすることないんじゃない?」と思うほど、メロディと言葉がフィットしてないし、こういった部分、外国人演出家の場合、どこまで台詞がわかっているのかなと思ってしまいます。歌詞もセリフも粒が立たないんですもの。

 そして、肝心要のクライマックスで、ビリーとジュリーの娘ルイーズが、ジュリーに「知らない男の人にぶたれたの。でもいたくなかった、キスされたみたいだった」と訴えると、ジュリーが「強くぶたれてもちっとも痛くないこともあるのよ」と受け、ゴーストとなったビリーと無言で、でも確実に感情を交わし合い、ビリーが安心して成仏する件(すみません、有名作品なんで説明はしょります)、ここいらのセリフがカットされ、無言芝居もほとんどないまま、そして、ビリーとジュリーの心の交流が不明瞭のまま幕となるのはいただけませぬ。一番の見せ場、一番の落とし所を外すなんて、なんてこと!?!?



2009年03月22日(日)15:30-19:10
宝塚歌劇団花組「太王四神記」−チュシンの星のもとに− 千秋楽@東京宝塚劇場

 SS席 11000円 1階-6列-34番 (パンフレット:1000円)

 演出:小池修一郎

 ファヌン/タムドク:真飛聖
 カジン/キハ:桜乃彩音
 ヨン・ホゲ:大空祐飛
 ヤン王:星原美沙緒(専科)
 ヨン・ガリョ:夏美よう
 カグン将軍:高翔みず希
 ソノ部族長:眉月凰
 大神官:絵莉千晶
 ヒョンス/フッケ将軍:悠真倫
 プルキル(大長老):壮一帆
 セオ/スジニ:愛音羽麗
 ヒョンゴ:未涼亜希
 パソン:桜一花
 サリャン:華形ひかる
 チョロ:真野すがた
 チョ・ジュド:紫峰七海
 カクダン:望月理世
 セーム:花野じゅりあ
 チャピ/トラジ/産婆:初姫さあや
 イルス:日向燦
 スンノ部族長:紫陽レネ
 コ将軍:扇めぐむ
 カンノ部族長:夕霧らい
 チョク・ファン:祐澄しゅん
 チュムチ:朝夏まなと
 チャンミ:華耀きらり
 セドル:月央和沙
 ヒョンミョン:望海風斗
 メファ/ホゲ(少年):白華れみ
 モラン:華月由舞
 チュモン:嶺乃一真
 ポッコッ:芽吹幸奈
 ナリ:梅咲衣舞
 モンニョン:瞳ゆゆ
 タルビ/タムドク(少年):野々すみ花
 クカ:花蝶しほ
 スリョン:月野姫花

 MY楽はとっくに迎えていたつもりですが、急遽千秋楽も見せていただくことに(となぜか敬語www)。今回の作品は「二階席からがオススメ」と聞いていたので、二階席からしか観ていなかったのですが、一階席から観てビックリ。二階席からだと見切れてしまう、舞台奥の高所で、あれこれ芝居がなされていたとは! プロローグで、セオが子供を谷底へ投げ落とされたショックで化ける場面なんて、今まで台詞だけで説明だと思ってました。。。今日、観なかったら後悔ですヨ。そして、舞台奥のスクリーンにあれこれ映像が流れていたとは!!

 先月はクレーン車が登場してのラスト場面、帝劇の「SHOCK」と比べてショボイと申してしまいましたが(比べちゃいけなくても、ご近所ですからねぇ)、やはり宝塚、制約が大きいようです。銀橋より前に出てはいけないなど。正直、二階席からはちょこっとクレーンで上昇しても大した効果は感じなかったけれど、今日は頭上にまで伸びてくるような感じでナカナカ迫力。一階席だと逆光の照明で、クレーン車が見えないというのも大きいでしょうね。二階席からだと、まるでリモコンのおもちゃのように見えましたから。でも、でも、それでもやっぱりクレーン車が見えすぎ。「CATS」の天上への旅立ち、もしくは猫にごあいさつのシーンのように、装置がすっぽり隠れるまでの大量のスモークが必要ではないでしょうか。マシンが見えると、かなり白けますもの。ドライアイスではなく、スモークマシンを使用するようになってから、煙の濃度の薄さといい、効果半減ぶりといい、東宝劇場はもっとモクモクさせてほしいと思います。

 さて、今日は千秋楽ということもあり、卒業を迎える生徒は普段の衣装に花をつけての登場。群舞では気合いが入りまくりで、泣きそうになるのを必死でこらえて踊り込む姿が清々しいものです。組替生徒も含め、惜別の感情が劇場を支配する中、普段はアンチの生徒であったとしても、今日ばかりは素直に応援。去る者も、送り出す者も、明日からの希望に満ちていて良いですね〜。でもって、冷静に卒業式を眺める自分がいて、卒業生のごあいさつは2〜3人が適当かなと。退団者が多いと、ごあいさつの多さ、長さに、結婚披露宴の一部のスピーチを思い起こしてしまいますから。感動を与えるのは適度な長さでないと。


2009年03月24日(火)19:00-21:05
船橋市立葛飾中学校管弦楽部「特別演奏会」@習志野文化ホール

 全席自由 無料 27列-21番 (パンフレット:無料)

 指揮/テノール:安藤純
 指揮:田久保裕一
 管弦楽:千葉県船橋市立葛飾中学校管弦楽部

 J.シュトラウス:喜歌劇「こうもり」序曲
 サン=サーンス:歌劇「サムソンとデリラ」よりバッカナール
 オッフェンバック:喜歌劇「天国と地獄」序曲
 プッチーニ:歌劇「トスカ」より「星は光りぬ」
 プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ」
(休憩)
 チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調
(アンコール)
 J.シュトラウス:ラデッキー行進曲

 全国学校合奏コンクール全国大会優勝記念の特別演奏会です。開場5分後にホールに到着したにもかかわらず、座席がほとんどなし! 宝探し状態にして、奇跡的に空席を一つ見つけてなんとか着席。開演時間なんて、最後列後ろの通路、客席両脇の通路はビッシリと立ち見客。客席入口ドア前の空間なんて押すな押すなの大盛況。ものすごい熱気です。そして、舞台上は椅子・椅子・椅子。中学校の部活のオケとあなどるなかれ。4管編成・14型の弦楽器という、約100人編成という堂々たる陣容!! 新入生のパート分けがどのように行われているのかは存じませんが、楽器編成の割合といい、学年の割り振りといい、なかなかバランスのとれたオケ。プロ顔負けです。何てったって、マーラーだって演奏できちゃう編成なんですから!

 プログラムをいただいて、その本格的内容にまずは驚がく。序曲があり、ソリスト付きの曲があり、シンフォニーで締めたら、最後はアンコール。前半はオペラ関連の曲。日本一の栄冠を勝ち取った「こうもり」序曲は、アマチュアとしてはなかなか立派なもの。ウィンナ・ワルツ独特の三拍子のリズムも様になってます。オペレッタの序曲なので、名アリアのメドレーになっている曲ではありますが、テンポやリズムを自在に揺らし、すっかり自分たちの音楽としてこなれているのが心地良い演奏です。

 「こりゃすごい!」と感動したのですが、やはりアマチュア。得意・不得意の差が激しく、フランス物はいま一つ。「サムソンとデリラ」は中学生に男を誘惑する猛女の情念を表現されても困りますけど、色気皆無だし、「天国と地獄」もカンカンは盛り上がるものの、ソロの難しさに手こずり、そして、オペラアリアともなると、摩訶不思議なメロディラインや、歌に合わせて伸びたり詰まったりする演奏に四苦八苦。音楽で遊ぶのは高校生以降に持ち越しかしらん。ぜひ、これからも音楽を続け、楽しみの粋に達してくれると嬉しいな、と一観客なのに、すっかり保護者の気分。だって、保護者の方たちが、ワタクシと同世代に見えるんだもの!!!(きっとアラフォー)。

 もちろん、小学生オケに比べれば、かなり安定した演奏ですが、まだ遊びのある演奏は苦手なようで、真面目に弾き込む曲の方が得意みたいです。とはいえ、楽器を持って4〜6年(と勝手に想像。市川・船橋・習志野地区は小学生オケも全国大会レベルの強豪がズラリなのです!)でここまでの腕前になるのは立派な限り。でも、考えてみれば、今日のメンバーの中から3〜4年後には芸大に進学する人も出てくるでしょうし、それどころか、国際コンクールに入賞したり、プロのオケをバックにコンチェルトを演奏する人が出てもおかしくないわけですものね。

 ちなみに、オペラ・アリアの二曲については、歌い振りではなく、特別ゲストとして田久保裕一が登場! 思わず「おぉっ」と叫んでしまいましたさ。今でこそプロの指揮者ですが、僕が小学生の頃は「日本一の小学生オケ育成請負人」って感じのスターですもの。TBSこども音楽コンクールで、彼が指揮する谷津小学校の100人超のオケの演奏を初めて聞いた時「同じ小学生なのに、プロと同じことをしている!」と腰を抜かしそうになったもんです。

 さて、後半はチャイコフスキーのシンフォニー。弦楽器の分厚い音の重なりに、休憩前の不安は吹き飛びます。いかにも「しっかりさらってます」な演奏で、迷いのない演奏であり、体が自然に揺れての伸びやかさ。1stVnの最後列で演奏していた男の子が遠くからでも目をひきます。真面目に弾き込めばちゃんと盛り上がり、変化にも富んでいるチャイコフスキーのコンチェルトは、この団体に合ってますね。個人的には「こうもり」の演奏よりもこちらの演奏の方が良かったかと思ってます。もちろん、コンサート一曲目とコンサートラストの曲っていう差もありますけど。そして、アンコールは余裕を持ってラデッキー行進曲。定番だけれど、盛り上がって幕。中学生の音楽に対する真摯な姿勢、未来に向けての可能性の素晴らしさに心洗われるコンサートでした。満員御礼も納得の素晴らしい時間。

 蛇足ですが、休憩時間には「消防法は大丈夫か?」な程に膨れ上がった客席対策として、花道にありったけの椅子を並べたステージ・シートが登場。それでも、立ち見の人たちはワンサカなのですから凄い人気。このコンサート、開演時に校長先生の2〜3分のごあいさつがあり、休憩後に部長からのこれまた2〜3分のごあいさつがあるだけで、司会もなければ、他校からの花束贈呈や祝辞の読み上げはマッタクなし。オーソドックスにコンサートに徹しているのですが、卒業する三年生へのさりげない気配りが行き届いてます。実はこれ、宝塚歌劇の千秋楽公演にソックリなんです。部長のごあいさつなんて、組長orトップのごあいさつにソックリで、来場への感謝、無事コンサートを迎えられたことの感謝、支えてくれた人への御礼など、清々しいものでしたし、下級生から上級生へのお花の贈呈、卒業生たちへのはなむけの拍手が送られる演出など、定番なのにしらけることなかったのは、形式化したものではなく、舞台に、客席に愛情が溢れていたからに違いありません。素晴らしい三年間を過ごした生徒たちに大拍手!!



2009年03月26日(木)18:30-21:00
宝塚歌劇団月組「SAUDADE(サウダージ)」−Jにまつわる幾つかの所以−@昭和女子大学人見記念講堂

 A席 5000円 2階-G列-24番 (パンフレット:600円)

 演出:稲葉太地

 瀬奈 じゅん
 越乃 リュウ
 花瀬 みずか
 一色 瑠加
 桐生 園加
 音姫 すなお
 青樹 泉
 憧花 ゆりの
 麻月 れんか
 萌花 ゆりあ
 宇月 颯
 煌月 爽矢
 鳳月 杏

 ヨーロッパの田舎をイメージさせる色彩と音楽に乗せてスタートするこの作品。タイトルが個人的に「胡散臭いなぁwww」なのですが、ショー作品なので、とりあえずは目の前に展開する光景を気楽に鑑賞。組長・副組長を筆頭に、月組の割と中堅メンバーを従えて、トップの瀬奈じゅんが歌い踊ります。この人は、赤・黒・金といった、濃い色の衣装が実に良く似合いますね。月組はここ最近世代交代が激しいので、現在は中堅どころであっても、組長・副組長クラスであっても「若手」というイメージの面々。よって、遠めからだと個性が弱く、誰が誰だかわからない状態。唯一、青樹泉がガタイの良さで目立つ印象。

 舞台はほとんど暗転なく「あ、シルク・ドゥ・ソレイユを意識しているのかな」と思える、幻想的な場面が次々に繰り出されます。ストーリーは観客の感性に任され、あってないようなもの。ただ、予算の制限があるので、場面ごとの個性がちとわかりにくい傾向。この作品を観るのに、人見記念講堂の二階席は遠すぎました。観客動員数の問題はあるでしょうが、できればもっと小さな小屋で観たかったです。一階席からはどうだったんでしょう?

 休憩を挟んでの第二幕は瀬奈じゅんによる延々と長いソロナンバーでスタート。トップになって、かなり歌唱力がUPした彼女ですが、メリハリのない曲を延々と歌い続けられると、聴いてて飽きます。低音は囁くように、中音で声を張り上げ、高音はひっぱるように、という歌唱パターンが決まっているので、もっと短い曲や、変化の激しい曲をと思うのですが、作品の求める曲ですから致し方ありませぬ。で、この長いソロが終わるといきなりお芝居開始。この芝居が全然面白くなく、出演者が順番にあれこれしゃべるのだけれど、大劇場(客席数に関しては東宝劇場より大きい!)でこの芝居はなぁ、と。そして、今回はダンサーを揃えたせいか、月組の面々が「その学年でこんなに芝居が下手!? えっ!?そのお歌でソロですか・・・」なトホホ状態。どうやら、前半のショーは瀬奈じゅんが演じる「J」という役者の過去であり、それを踏まえた上での芝居らしいのですが、とにかくとっても不親切な作り。演出家として凝った作品を作りたいのでしょうが、宝塚の観客ってそんな作品を求めているのかなぁ。結局、自分が応援している○○さんがいかに格好良いか、きれいかっていうのを単純に求めているだけで、凝りまくってもそれを喜ぶ観客って少ないと思うんです。そのような作品を観たいならば、もっとキャリアも演技力もあるよその舞台を観にいきますって。感情移入もできず、ドラマティックな盛り上がりもなく、ただ出演者が延々と順番に(役の上でのパワーバランスなんてなく、トップの瀬奈じゅんも群衆の一人という恐ろしい設定)しゃべり続けるだけなので、宝塚歌劇の魅力が生きずじまい。

 こりゃ、困ったな、つまんないな、と弱り切っていたら、フィナーレはいきなりラテンメドレー。客席から登場した瀬奈じゅんのはじけっぷりに客席はやわらヒートアップ。無駄にキザるけれど、ポイント・ポイントでの切れ味が良く、時折フフッと笑う余裕っぷりが何とも魅力的。熱くでクサい男役スターの最後の一人として、待ってましたのショースター。陰々滅滅と歌い続けるのは苦手だけれど、激しく叫びあげる曲は得意ですし、次々と娘役を入れ替え、男役を率いて歌い踊る姿にて、ようやくトップの貫録。宝塚スターはまずエンターテイナーでなくっては!!!

 と、盛り上がっているのですが、困ったことが一つ。「客席降りされると、二階席からは何も見えないんですけど!」なんです。取り残されて白けます。東京公演の会場に合わせて調整してほしかったし、プロなら調整すべきだと思うんですよね。大阪のものをそのまま持ち込むのは演出家の手抜きってもんです。で、仕方がないので、客席前方の「観客の反応」をオペラグラスで観察するのですが、せっかく瀬奈じゅんが真横で歌い踊っているのに、好き過ぎて見られないのか(この気持ちわかる!)、全然反応せずに誰もいない舞台のカーテンを眺めているだけ。そして、瀬奈じゅんが後方に移動しても振り向くことなく、じーっと舞台を眺めている。。。とってもお行儀は良いけれど、この場合、スターに「Love×Love」目線を投げたり、感激の表情を浮かべるのが王道でしょう。近づいても白けるファンなもんだから、せっかく客席降りまでしている瀬奈じゅんが気の毒。って、あぁ、他の某アーティストに対する僕の態度と同じだぁ、とわが身を反省したのでした。

 とにもかくにも、瀬奈じゅんありきで間が持ったステージで、フィナーレのおかげで盛り上がってはいますが、宝塚歌劇としての魅力に乏しいステージでした。お子ちゃまから老人までを対象とした大衆演劇なんだから、スパイスとして芸術味を加えるならともかく、観客を翻弄するための演出だったら、よそでやってほしい。。。料理だって素材に合わせて調理法を変えるのですから、舞台なんて尚のこと。コクーンあたりで、もっと海千山千の俳優が上演したら面白かったんでしょうけど。辛口失礼。



2009年03月28日(土)14:00-16:55
神奈川県民ホール・びわ湖ホール・東京二期会・日本オペラ連盟
「プッチーニ:トゥーランドット」
@神奈川県民ホール

 D席 3000円 3階-13列-35番 (パンフレット:無料)

演出:粟國淳
指揮:沼尻竜典
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団

 トゥーランドット:横山恵子
 カラフ:水口 聡
 リュー:木下美穂子
 ティムール:志村文彦
 皇帝アルトゥム:近藤政伸
 ピン:晴 雅彦
 パン:大野光
 ポン:大槻孝志
 役人:与那城 敬

 オペラ「トゥーランドット」のあらすじはというと、愛を知らないトゥーランドット姫を王子カラフが愛に目覚めさせ、めでたし、めでたし、というのが定番ですが、常に居心地の悪さを感じていました。だって、王子は国を治めるのが本職なのにもかかわらず、回りの意見には一切耳を貸さず、自分の欲望のためとあらば、人民が皆殺しになろうと、父親が命の危険にさらされようと、父親の命の恩人(そして自分のことを愛している)リューが命を落とそうと、平気のへっちゃら。そして、トゥーランドットと結婚するだけでなく、トゥーランドットの旦那として、崇めてもらわないと気が済まぬという、KY野郎。そんな彼が王位についたところで「中国の今後は大丈夫だろうか?」と心配になるのが人情ってもの。決して「カラフ王子万歳、トゥーランドット姫万歳」となりゃしません。常に強者に同調し、その所業をそそのかすばかりの人民もなんとも不気味。

 が、今回の演出で一つの到達点を見た気がします。カラフ王子はトゥーランドットに憧れるよりも、かつて自分が持っていた権力を取り戻したい、という視点。となれば、トゥーランドットに一目ぼれしたのは、その豪華さと権力に惚れたのであり、彼女の謎に挑むのは、戦に敗れ流浪の民となっている王子の権力復権のチャンスであり(もはや失うものはありませんし)、そのためならば、人民が犠牲になろうと、父親や自分を愛してくれる女性(って奴隷ですが)命を落とそうと、それはいた仕方がないこと。そんな王子ですもの、父親が「危険だからやめてくれ」と懇願しようが、人民が死刑に脅えようが、ピン・パン・ポンの三大臣があの手この手で姫への求婚を取りやめるよう懇願しようとも、びくともしません。それどころか「結婚して婿になるのではなく、王になりたい」と野望を抱く……実は結構悪役キャラだったんですね。ちょっとした視点の変換ですが、これがもう面白くて、面白くて。

 方や、トゥーランドット姫はというと、銀が鉄道999の機械帝国じゃないけれど、これまた人情に薄く(いや、ローリン姫の生まれ変わりとして復讐をといきり立つあたり、人情に厚いの?)、紫禁城はさながら工場のよう。臣下たちはまるでロボットのような衣装に身を包み、帽子をかぶり、サングラスをかけ、表情はまったくわからない状態。「エリザベート」におけるトートダンサーズのような助演陣が大活躍(最近、この手の演出が流行りですね。ちょっと食傷気味)。機械ですもの「この宮殿の中で」と決まり切った口上を述べ、氷のような心で国を支配するのも納得。

 面白いのは、カラフの父も、トゥーランドットの父も、人情に厚く、身分や国籍に偏見を持たない心優しい人だということ。ちょっと前の日本では「うちの子に限って」の事件が多く、最近ではもはや親といえども制御不能な子供の事件が多発していますが、まさにその舞台化ともいえます。良し悪しはともかく、権力者が幅を利かせ、下々は頭を使わずそれに追従するだけ。ピン・パン・ポンは悪事は悪事と認識はしているけれど、権力の前では無力。そんな中、真っ当な意見を述べ、かつての国王に無償で奉仕を行い(時には彼のために物乞いを行い)、たった一度微笑みかけてくれた王子のために拷問にあって身を滅ぼす奴隷女リューが何とも人間臭く見えてきます。いえ、彼女だけが正義のために悪事に屈しなかった唯一の人。

 セルバンテスの「ドン・キホーテ」の一節(というか、ミュージカル「ラ・マンチャの男」の見せ場で「夢におぼれて現実を見ないのも狂気かもしれぬ。現実のみを追って夢を持たないのも狂気かもしれぬ。だが、一番憎むべき狂気とは、あるがままの人生に、ただ折り合いをつけてしまって、あるべき姿のために戦わないことだ!」という名台詞が吐露されるのですが、まさに歌劇「トゥーランドット」は狂気の世界。そんな中、奴隷女のリューただ一人が「騎士道」に準じて生きている姿に感銘を受けました。彼女のアリア「氷のようなお姫様の心も」は「見果てぬ夢」に匹敵する、ナンバーですね。

 そんなわけでトゥーランドットは「この宮殿の中で」を、カラフは「ネッスンドルマ」を、そして二人による謎解きのかけ合いで大いに盛り上がるけれど、ドラマ的には、リリカルなリューのアリアが最もドラマティックな効果をあげている気がします。今までは「地味な役だな」と思っていたリューという役、カラフが悪役もどきになったおかげで、実に面白い役に大出世。でもって、リューが死んだ時点で、いったん幕が降りて、とってつけたような音楽には、とってつけたようなフィナーレが演出されて幕となるのですが、トゥーランドットは多分、生まれて初めて敗北感に屈し(何しろリューは奴隷女なのですから!)、カラフは初めて無償の愛を知り(彼にとって愛は権力を得るためのまやかしでしかなかったから)、ようやく「共に生きてみよう」となるのだけれど、はたしてこの二人のKYカップル、愛に満ちた国家を築くことができるのか、それとも、結局は愛に生きることができずに国家が滅茶苦茶になるのか、どちらを創造するかで、幕切れの大合唱が歓喜の歌にも、空虚な歌にも聞こえてきます。非常にシニカルな演出。

 出演者はおおむね好演です。全キャスト日本人ということで、役によっては「日本人としてアダプトしているな」という歌唱もあるのですが、それはそれで、ちゃんと消化していて破たんのないあたり「かつては日本人だけでは上演できないと言われていたオペラを、頑張って上演ではなく、自分のものとして上演している姿」として非常に好感度大。体格も文化も違うんですもの、欧米のオペラハウスと同じように上演したって無理があるだけ。それならば、日本人ならではの新しい視点で、新しい響きで、定番オペラに新しい風を吹き込むのもアリではないかと思った次第です。今回は、個性なき人々が群衆となることで、誰にも制御できない個性を帯びて暴走する中、ただ一人リリカルな声で、地味なアリアを歌う奴隷女が、社会的・肉体的には弱々しいものの、精神的には誰よりも強くて、結果、世界を動かしてしまう面白さが圧巻でした。



2009年03月29日(日)14:00-16:30
新国立劇場バレエ団「Ballet the Chic バレエ・ザ・シック」@新国立劇場中劇場

 Z席 1500円 2階-3列-72番 (パンフレット:1000円)

指揮:渡邊一正(セレナーデ)
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団(セレナーデ)

 ジョージ・バランシンの『セレナーデ』
   寺島ひろみ、厚木三杏、堀口純
   森田健太郎、中村誠
 井口裕之『空間の鳥』
   真忠久美子
   貝川鐵夫、江本拓、八幡顕光、高木裕次、佐々木淳史、末松大輔
   アンダーシュ・ハンマル、泊陽平、清水裕三郎、野崎哲也、原健太、三船元維
(休憩)
 ナチョ・ドゥアト『ポル・ヴォス・ムエロ』
   湯川麻美子、遠藤睦子、西川貴子、本島美和、丸尾孝子、高橋有里
   吉本泰久、貝川鐵夫、陳秀介、冨川祐樹、芳賀望、末松大輔
(休憩)
 トワイラ・サープの『プッシュ・カムズ・トゥ・ショヴ』
   デニス・マトヴィエンコ
   厚木三杏、本島美和、西山裕子、山本隆之

 新国立劇場バレエ団の中劇場公演。オペラパレスでのグランド・バレエとはことなり、少人数のチームによる、小品集なのですが、これが面白いんです。プリンシパルやソリスト以外のダンサーにも見せ場が与えられ、全員が実に生き生きと踊っているのが幸せ。

 チャイコフスキーの弦楽セレナード(人材派遣会社のコマーシャルで使われていた、いかにも人生の一大事を表現しているかのようなドラマティックな音楽)に乗せて、女性ダンサーを中心に表現される「セレナーデ」は、ダンサー全員がブレも狂いもなく同じ動きで魅せる「これぞコールドバレエの極み」な芸で始まるのですが、やがてまるで残像映像を観ているかのように、時間差でちょっとずつずれた数人のフォーメーションとシースルーの衣装による何とも幻想的な場面を経て、最後は男性ダンサーも登場してのリフト技で幕。

 休憩なしに上演される「空間の鳥」は、新国バレエ団のダンサー、井口裕之振り付けによる素晴らしい作品。男性ダンサーが休むことなく激しく踊り狂う中、女神のように現れる真忠久美子が女神のようで、ちょっとベジャールの「ボレロ」を彷彿させる雰囲気。もちろん、音楽はより情熱的で激しいし、動きはより複雑。同僚ダンサーのための作品のせいか、パンフレットには「慣れない動きに苦労して」とあったけれど、過不足なく踊り上げていく過程が実に見事。もう限界とばかりに舞台上に倒れ込み、荒い息でゼーゼーいってる男性ダンサーを残して、涼やかに去っていく真忠久美子が美しい!! この作品はぜひとも再演していただきたいです。袴のような真っ赤な衣装の男と、海の底を思わせる青い衣装の女との対比も見事。

 休憩を挟んでの「ポル・ヴォス・ムエロ」は、古楽の音楽に、中世を思わせる衣装なのだけれど、ドゥアトの振り付けが「人間ってこんな動きもできるんだ」という不思議な動きの数々で、非常に激しいもの。それでいて、落ち着いた空気と静寂を感じるのはなぜなんでしょうね。舞台を眺めていると、人間が演じているようには見えなくなってきます。

 で、再び休憩を挟んでの本日のトリはトワイラ・サープの「プッシュ・カムズ・トゥ・ショヴ」で、音楽はいきなりアメリカン。陽気な三人のトリオが登場……のはずが、マトヴィエンコがいきなりミス・キャスト。彼は素敵なダンサーではあるけれど、表情に乏しく、ユーモアのセンスがないので、この手のお遊び系作品で、ショースターとしての素質を求められるととたんに魅力がなくなります。最近はヘアスタイルも変な帽子をかぶっているかのようなもので全然似合ってないし、バレエ・ダンサーなのだから、もっと見た目にも気を使わないと。芸もメイクも。「これがミーシャだったらなぁ」と思わずにはいられません。そんな彼を完全に食ってしまったのが厚木三杏。チャーミングな表情、色気とコケティッシュが共存した動きで、舞台のどこで踊っていても目をひきます。スタイルも良いし、とにかく素敵。ゴージャス系の役をぜひ彼女で観たい!!



2009年03月29日(日)22:00-24:10
映画「マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと」@TOHOシネマズ市川コルトンプラザ スクリーン7

 全席指定 当日レイトショー 1200円 H列-4番 (パンフレット:600円)
 監督:デヴィッド・フランケル

 ジョン:オーウェン・ウィルソン
 ジェニー:ジェニファー・アニストン
 セバスチャン:エリック・デイン
 ミス・コーンブラット:キャスリーン・ターナー
 アーニー・クライン:アラン・アーキン
 パトリック(10歳):ネイサン・ギャンブル
 リサ:ヘイリー・ベネット

 犬好きには笑いまくり、泣きまくりの素敵な映画。犬が主役の映画の多くは、感動的だったり、フィクションが強かったりするけれど、マーリーはどちらでもありません。飼い主にすら「このバカ犬がっ!」と叱られっぱなしのワンパク犬。何しろ、ワンコのしつけ教室ではあまりの暴走ぶりに放校となっちゃうし、去勢したっておとなしくなりゃしません。ちなみに、ワンコの仕付けや公共マナーへの意識の高さもアメリカならでは。

 でも「このバカ犬がっ(;`皿´)」と怒られながらも飼い主から愛情タップリに育てられ、弟分の子供たちからも慕われて、実に幸せなワンコの生涯。とりたててドラマティックなことはないけれど、どこの家庭にでもあるエピソードの積み重ねに共感。ま、マーリーについては、ラブラドール・レトリバーという大型犬にも関わらず、飼い主があまりに「可愛い、可愛い」と過保護にすぎてたのがおバカの原因なのですが、制御不能なバカ犬って、他人事だと最高(≧∇≦)

 そして、犬の飼い主の方ならばわかってくださると思うのですが、愛犬に対する「このバカ犬がっ( ̄・・ ̄) 」は最高の愛情表現なんですよね!!! 一緒にはしゃいでくれるし、悲しい時には黙って寄り添ってくれるし、時には信頼して頼ってくれ、言葉は発しないけれど、人間の言うことは通じているし(だからといって聞きわけが良いかというと別問題www)犬は家族です!!!

 それにしても、アメリカの住環境って恵まれてます。パパ=ジョンが、高層ビルだらけの都心へ便利に通勤できる通勤圏でありながら、自宅は森の中。マーリーは好き放題走り回れるし、庭にはプールがあるし(海沿いのお宅であってもプール付き!)。アメリカの豊かさを見せつけてくれます。羨ましい限りに豊かな環境です。でも、ケーキは不味そう。

 犬好きにとっては、大笑いして、一緒に泣いての最高に素敵な映画ですが、犬に興味のない人にとっては、あまりにたわいないエピソードの連続に飽きちゃうかも(現に近くの席からはイビキが聞こえましたし)。でもね、僕にとっては最高の映画。環境ビデオとして、自宅で流していたい位。マーリーがちび(我が家の愛犬でした)に見えてきちゃって、幸せいっぱい。スタッフ、キャストへのワンコへの愛情がたっぷりつまった、犬馬鹿による犬馬鹿のための映画です。



2009年03月31日(火)18:30-21:40
宝塚歌劇団星組「My dear New Orleans」「ア ビヤント」@東京宝塚劇場

 S席 宝塚友の会 会員割引 8000円 1階-22列-35番 (パンフレット:1000円)

 演出:植田景子(My dear New Orleans)/藤井大介(ア ビヤント)

 ジョイ・ビー:安蘭けい◆
 ルイーズ・デュアン(ルル):遠野あすか◆
 スティーヴン牧師:汝鳥伶(専科)
 シスター・サラ:美穂圭子(専科)
 エマ:英真なおき
 ジョセフィン:万里柚美
 Dr.ウィルソン:にしき愛
 フローラ:朝峰ひかり◆
 アンクル・ジェリー:紫蘭ますみ◆
 ポン引きのボブ:美稀千種
 ジュール・アンダーソン:立樹遥◆
 娼婦リタ:百花沙里
 アルバート・ジョーダン:涼紫央
 Mrs.ウィルソン:毬乃ゆい
 娼婦ステラ:涼乃かつき◆
 娼婦ベラ:星風エレナ◆
 セリー:琴まりえ
 アンリ:美城れん
 レオナード・デュアン(レニー):柚希礼音
 バディ:和涼華◆
 オリヴァー:彩海早矢
 娼婦ローズ:花愛瑞穂
 ニューオリンズ市長(Mr.Behrman):天緒圭花
 ベッシー:音花ゆり
 ラジオ局のディレクター:鶴美舞夕
 ゲイブ:夢乃聖夏
 セシリア:純花まりい
 マーティン:麻尋しゅん◆
 ライアン:水輝涼
 アイリーン・ハート:妃咲せあら
 エリック・ジョンソン:紅ゆずる
 ネティ:夢咲ねね
 新聞売り少年のレッドヘッド・ウィル:碧海りま
 スタンリー:壱城あずさ
 ピート:美弥るりか
 ビッグ・ノーズ・ジョー:如月蓮
 メイ:蒼乃夕妃
 少年時代のジョイ:天寿光希
 少女時代のルイーズ:稀鳥まりや
 リトル・サム:優香りこ
 ニコ:大輝 真琴
 ポリーン:音波みのり
 ジョー・コールマン:真風涼帆
 メリー:華雅りりか

 トップコンビ、安蘭けい&遠野あすかのサヨナラ公演。そして、同時退団者がズラリ(◆印をつけてみました)。トップの退団は、肩の力が抜けて、そのスターならではの「男役の集大成」となるのが魅力。安蘭けいは、男役としては華奢で小柄で、決して恵まれた人ではなかったけれど、そのハンデを芸でカバーしようとすることによる、様式美の男役だったと思います。僕の好みのスターではなかったけれど、トップとしてやるべきことをやった人ならではの清々しさを感じます。何しろ、高学年・高年齢になってからのトップ就任だったので、満を持してと言いましょうが「失敗作は許されない」という厳しい状況。たった二年の在位期間とはいえ、小劇場公演・全国ツアー・ブロードウェイミュージカルをはじめ、長期トップに負けないだけの実績を残したのはアッパレ。動員でも、クオリティでもハズレなしだったのは凄いこと。

 さて、サヨナラ公演の演目というと、得意技を駆使して、ひたすらエンターテインメントに徹するタイプ(ダンサー系トップスターに多い)と、最後の最後まで冒険に挑戦するタイプ(芝居好きトップスターに多い)に大別できますが、今回は歌手・安蘭けいを存分に歌わせようと、場所はニューオリンズ、安蘭けいはミュージシャンという設定。これ以上のお膳立てはありますまい。

 ……なのですが、サヨナラ公演にて、ハズレを引いてしまいました。いえ、動員は問題ありません。立ち見席も含めて毎公演完売です。が「彼女に合わない作品」なのです。歌唱力があるので、それなりに歌い上げていますが、彼女の声に合った曲ではありませぬ。男役として資質に恵まれてない安蘭けいは、勢いで魅せるタイプではなく、細く高めな声質を活かして、丁寧に繊細に歌い演じるスター。肉厚の声質、コーラスやオケを突き抜ける声量の求められる、ブラック・ミュージックやゴスペル調の曲は任違い。もちろん、トップを立ててナンボな宝塚ですから、オーケストレーションもかなり薄め&高めに調整されてます。台本も緻密かつ盛り上がり豊富に書き込まれたものではなく、「とりあえず歌わせれば良いでしょ」な作りがありありとしていて、果たして安蘭けいの魅力が発揮されていたかというとかなり疑問。

 ストーリーも、プロットは魅力的です。人種差別・貧富の差に屈することなく、一人の女性を愛し続けたミュージシャンと、好きな人に素直に愛情を表現できない状況の女の恋の障害とすれ違い。どんなにドラマティックに盛り上がるかと思いきや、全然盛り上がることなく、幕が降りてしまうという状況。サヨナラ公演と割り切って「ニューオリンズ=宝塚」と置き換えて、サヨナラ公演モードとして観る方は色々感じるものがあるでしょうが、そのイベント性に偏りすぎた台本は芝居としては退屈至極。さらに言うと、宝塚大劇場の環境や立地では泣けるであろう台詞も、日比谷の街だと結構むなしく響くことも多い気が。。。「バスタオルが必要な公演です」という評判を聞いてはいたけれど、ごめんなさい、そこまで感情移入はできませんでした。宝塚の男役としては最後のステージかもしれないけれど、これからは東京を中心に活躍してくれる予定ですので「ようこそ!」でもあるし(って、ホントに宝塚ファンなのかしらん?>自分) トップお披露目公演・サヨナラ公演は駄作が多いというジンクスそのまんまになってしまいました。

 とはいうものの、退団する生徒の一人一人に見せ場が与えられ、セピア色の色調の美しい舞台で、タカラジェンヌが最も美しく見える(と僕が思っている)、男はダンディで、女はセクシーな時代の作品ということで、退団者にとっては(そしてそんな生徒のファンにとっては)嬉しい公演には違いますまい。「サヨナラ公演を堪能したい」という人にとっては素敵で、反面「公演は公演として作品を楽しみたい」という人にとっては不完全燃焼。……と、観終わってから気づいても手遅れなんですが。

 さて、ショーは全編サヨナラモード。柚希礼音は華やかに力強く踊りまくり、次期トップとしての存在感をアピール。二年前の段階では、安蘭けいとの学年差、立樹遥・涼紫央ら上級生スターとのポジションへの考慮があり「大丈夫か?」な二番手就任でしたが、安蘭けいとの芸風や素質の違いを活かし、公演の度に大役が与えられ、近年稀にみる「美味しい二番手」を謳歌したスター。実に頼もしいスターになりました。(願わくば、常に足のポジションが緩んでいて立ち姿が美しくないのを矯正して欲しい。。。)。そして、三番手格で、歌にダンスにと大きな場面を任され、まだ蒼いまま今回の公演で退団となるのが悔やまれます。ポジションアップで、場面を任されることにより、どんなに大きなスターになり得たことかと悔まれます。でも、退団を発表して、彼女も肩から力が抜けた印象。その他、娘役も若手男役も、気の利いた箇所で見せ場が与えられ、それでいて、安蘭けいのカラーに支配された、座付きショー作家ならではの気遣い満載のショーとなりました。

 安蘭けいは、大羽根を背負ったプロローグに始まり、早変わり、ストーリーダンス、女役、次期トップへの引き継ぎ的場面、組子を従えての大コーラス、黒燕尾服のダンス、遠野あすかとのデュエットなどなど、宝塚のトップスターとしての見せ場をこれでもか!と与えられ、魅力という魅力を全部だしてみましたな幸せな作品に恵まれました。ショースターではないにもかかわらず、ここまでの作品を作ってもらい、きっちりまとめ上げて去っていくのですから、フィナーレのパレード直前に、銀橋中央でのストップモーションでは、今にもスタンディング・オベイションになるのではないかと思うほどの大盛り上がり。素晴らしいトップ生活だったと思います(傍目からもしんどそうなので、幸せかどうかはわかりませんが)。

 それにしても、サヨナラ公演をから元気で乗り切るトップは多い中、ここまで素直に寂しさを出してしまうトップは珍しいです。宝塚友の会優先公演だったので、終演後には組長および、安蘭けいのごあいさつがあったのですが、さっきまで元気に歌い踊っていたのがウソのように元気がなく、まるで火が消えたかのよう。いえいえ、まだ燃え尽きるには早いですから!!